JP2011064193A - エンジンおよびそれを備える鞍乗型車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンダヘッドにおいて排ガスの温度が高い位置に酸素濃度センサを設けても、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しを防止できエンジンの寸法を抑制できる、エンジンおよびそれを備える鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】エンジン36は、ヘッド本体65から外方に突出する突出部66を有するシリンダヘッド46と、ヘッド本体65に形成される燃焼凹部70と、燃焼凹部70から排ガスを排出するために燃焼凹部70から突出部66を貫通するように形成される排気通路80と、本体部118および検出部120を有する酸素濃度センサ50とを備える。酸素濃度センサ50は、本体部118および検出部120がシリンダ軸線Aの方向からみて突出部66と重なるようにかつ検出部120の少なくとも一部が排気通路80内に位置するように、突出部66に取り付けられている。
【選択図】図6
【解決手段】エンジン36は、ヘッド本体65から外方に突出する突出部66を有するシリンダヘッド46と、ヘッド本体65に形成される燃焼凹部70と、燃焼凹部70から排ガスを排出するために燃焼凹部70から突出部66を貫通するように形成される排気通路80と、本体部118および検出部120を有する酸素濃度センサ50とを備える。酸素濃度センサ50は、本体部118および検出部120がシリンダ軸線Aの方向からみて突出部66と重なるようにかつ検出部120の少なくとも一部が排気通路80内に位置するように、突出部66に取り付けられている。
【選択図】図6
Description
この発明は、エンジンおよびそれを備える鞍乗型車両に関し、より特定的には、排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサを有するエンジンおよびそれを備える鞍乗型車両に関する。
この種の従来技術として、たとえば特許文献1に示すような単気筒エンジンが提案されている。
図19(a)および(b)を参照して、特許文献1に開示された単気筒エンジンでは、シリンダヘッド1aは、その外周面に隆出部2aを有し、隆出部2aを貫通するように排気通路3aが形成されている。そして、排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ4aが、シリンダヘッド1aのシリンダヘッドカバー取付用のフランジ5aとシリンダヘッド1aの隆出部2aとの間の凹部においてエンジンのシリンダ軸線に対して傾斜するように、隆出部2aに取り付けられている。また、酸素濃度センサ4aは、その検出部が排気通路3a内に位置するように隆出部2aに取り付けられている。このような酸素濃度センサ4aは、排気通路3aを通過する高温の排ガスで加熱され、当該センサが活性化する温度にまで迅速に昇温される。したがって、ヒータレスの酸素濃度センサを実現することができる。
図19(a)および(b)を参照して、特許文献1に開示された単気筒エンジンでは、シリンダヘッド1aは、その外周面に隆出部2aを有し、隆出部2aを貫通するように排気通路3aが形成されている。そして、排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ4aが、シリンダヘッド1aのシリンダヘッドカバー取付用のフランジ5aとシリンダヘッド1aの隆出部2aとの間の凹部においてエンジンのシリンダ軸線に対して傾斜するように、隆出部2aに取り付けられている。また、酸素濃度センサ4aは、その検出部が排気通路3a内に位置するように隆出部2aに取り付けられている。このような酸素濃度センサ4aは、排気通路3aを通過する高温の排ガスで加熱され、当該センサが活性化する温度にまで迅速に昇温される。したがって、ヒータレスの酸素濃度センサを実現することができる。
また、従来技術の他の例が特許文献2において開示されている。
図20を参照して、特許文献2に開示された単気筒エンジンでは、シリンダ軸線の前方からみてシリンダヘッド1bの左側部には、カムシャフトを駆動するためのタイミングチェーンを収容する空間2bが形成されている。シリンダヘッド1bの下部には、排気ポート3bが右方向へ傾斜するように形成されている。そして、排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ4bが、その検出部が排気ポート3b内に位置するようにシリンダヘッド1bに取り付けられている。この単気筒エンジンにおいても、酸素濃度センサ4bは、排気ポート3bを通過する高温の排ガスで加熱され、当該センサが活性化する温度にまで迅速に昇温される。したがって、ヒータレスの酸素濃度センサを実現することができる。
図20を参照して、特許文献2に開示された単気筒エンジンでは、シリンダ軸線の前方からみてシリンダヘッド1bの左側部には、カムシャフトを駆動するためのタイミングチェーンを収容する空間2bが形成されている。シリンダヘッド1bの下部には、排気ポート3bが右方向へ傾斜するように形成されている。そして、排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ4bが、その検出部が排気ポート3b内に位置するようにシリンダヘッド1bに取り付けられている。この単気筒エンジンにおいても、酸素濃度センサ4bは、排気ポート3bを通過する高温の排ガスで加熱され、当該センサが活性化する温度にまで迅速に昇温される。したがって、ヒータレスの酸素濃度センサを実現することができる。
なお、図19および図20において、クランク軸方向を左右方向、シリンダ軸線方向を前後方向、クランク軸およびシリンダ軸線のいずれにも直交する方向を上下方向と定義している。
特許文献1における酸素濃度センサ4aは、シリンダヘッド1aをシリンダボディに結合するためのボス部6aや、シリンダヘッド1aの前方に設けられるシリンダヘッドカバーと干渉しないように配置されている。しかし、図19(b)に示すように、酸素濃度センサ4aはフランジ5aを避けてはいるものの、酸素濃度センサ4aの先端部がシリンダヘッド1aの左方向に張り出している。
また、特許文献2における酸素濃度センサ4bは、排気ポート3bの右側部から右方向へ延びるように設けられ、シリンダヘッド1bの左側部やシリンダヘッドカバーとの干渉を避けている。しかし、シリンダヘッド1bをシリンダ軸線方向からみると、酸素濃度センサ4bの先端部(図20でいえば右端部)が、シリンダヘッド1bの右方向に大きく張り出している。
このように特許文献1および2のいずれのエンジンにおいても、酸素濃度センサがシリンダヘッドの左方向または右方向に張り出してしまい、エンジンの寸法が大きくなってしまう。特に、単気筒エンジンまたはV型2気筒エンジンは本来、左右方向をコンパクトにできるという特性を有するが、かかる特性が大きく損なわれてしまう。
それゆえに、この発明の主たる目的は、シリンダヘッドにおいて排ガスの温度が高い位置に酸素濃度センサを設けても、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しを防止できエンジンの寸法を抑制できる、エンジンおよびそれを備える鞍乗型車両を提供することである。
この発明の一の局面によれば、単気筒またはV型2気筒のエンジンであって、ヘッド本体およびヘッド本体から外方に突出する突出部を有するシリンダヘッドと、ヘッド本体に形成される燃焼凹部と、燃焼凹部から排ガスを排出するために燃焼凹部から突出部を貫通するように形成される排気通路と、排ガスの酸素濃度を検出するために本体部および本体部に設けられる検出部を有する酸素濃度センサとを備え、酸素濃度センサは、本体部および検出部がシリンダ軸線の方向からみて突出部と重なるようにかつ検出部の少なくとも一部が排気通路内に位置するように、突出部に取り付けられている、エンジンが提供される。
この発明では、シリンダヘッドはヘッド本体とヘッド本体から外方に突出する突出部とを有し、突出部を貫通するように排気通路が形成されている。そして、本体部および検出部がシリンダ軸線の方向からみて突出部と重なりかつ検出部の少なくとも一部が排気通路内に位置するように、酸素濃度センサが突出部に取り付けられている。これにより、排ガスの温度が高い位置に酸素濃度センサを設けても、酸素濃度センサがシリンダヘッドよりもさらに外方に突出することを防止できる。したがって、単気筒またはV型2気筒のエンジンは左右方向にコンパクトであるという特性を損なわず、単気筒またはV型2気筒のエンジンの寸法を抑制できる。なお、シリンダヘッドは突出部の分だけ外方に突出することになるが、その分シリンダヘッドに取り付けられる排気装置を短くできるので、エンジン廻りの構造が大きくなることはない。
好ましくは、酸素濃度センサは、本体部が検出部より前方に位置するように突出部に取り付けられている。この場合、本体部がシリンダボディの空気冷却用のフィンやクランクケースと干渉するのを避けることができ、酸素濃度センサを左右方向に張り出すことなく容易にシリンダヘッドに取り付けることができる。
また好ましくは、酸素濃度センサは、酸素濃度センサの中心軸線とシリンダ軸線とが平行になるように突出部に取り付けられている。この場合、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しを容易に防止できる。
さらに好ましくは、突出部はヘッド本体から少なくとも下方に突出している。この場合、ヘッド本体の下方のスペースを有効に利用して、突出部を設けることができる。
好ましくは、突出部は、シリンダ軸線方向からみて、ヘッド本体から斜め下方に突出している。この場合、突出部の長さを確保しつつシリンダヘッドをコンパクトに形成できる。
また好ましくは、酸素濃度センサは、シリンダ軸線方向からみて、ヘッド本体よりも左右方向に突出しないように配置されている。この場合、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しをより確実に防止でき、エンジンの寸法をさらに抑制できる。
さらに好ましくは、突出部は排気通路の下流端となる開口部を有し、開口部の中心は、シリンダ軸線方向からみて、ヘッド本体よりも左右方向において外方に位置しない。この場合、シリンダヘッドの外方への突出部の張り出しを抑制でき、エンジンの寸法をさらに抑制できる。
好ましくは、ヘッド本体の外周面は、シリンダ軸線の方向からみてヘッド本体の内方に凹む凹部を有し、突出部は凹部に形成されている。この場合、酸素濃度センサを凹部近傍で突出部に取り付けることができるので、シリンダヘッドの外方への突出部の突出を抑えることができる。したがって、シリンダヘッドをコンパクトに形成することができる。
また好ましくは、凹部は上方に凹んでいる。この場合、凹部に設けられる突出部の長さを確保しつつシリンダヘッドをコンパクトに形成できる。
さらに好ましくは、凹部は側方に凹んでいる。この場合、凹部に設けられる突出部の長さを確保しつつシリンダヘッドをコンパクトに形成できる。
好ましくは、凹部は、ヘッド本体の角部を凹ますように形成されている。この場合、凹部に設けられる突出部の長さを確保しつつシリンダヘッドをコンパクトに形成できる。
また好ましくは、シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーと、本体部の少なくとも前方を覆うためにシリンダヘッドカバーに設けられるセンサカバー部とをさらに含む。この場合、酸素濃度センサの前後を突出部とセンサカバー部とによって覆うことができる。したがって、エンジンを鞍乗型車両に搭載した場合、路面からの跳ね石等から酸素濃度センサを適切に保護することができる。また、酸素濃度センサは、シリンダ軸線の方向からみて突出部と重なるように突出部に取り付けられ、シリンダヘッドの近傍に位置しているので、センサカバー部は大きくならない。
さらに好ましくは、シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーを含み、シリンダヘッドはシリンダヘッドカバーが取り付けられるカバー取付面を有し、突出部は酸素濃度センサが取り付けられるセンサ取付面を有し、カバー取付面とセンサ取付面とは互いに平行に形成されている。この場合、カバー取付面とセンサ取付面とを容易に機械加工で形成することができる。
好ましくは、シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーをさらに含み、シリンダヘッドはシリンダヘッドカバーが取り付けられるカバー取付面を有し、突出部は酸素濃度センサが取り付けられるセンサ取付面を有し、カバー取付面とセンサ取付面とは同一平面上に位置している。この場合、カバー取付面とセンサ取付面とを機械加工で同時に形成でき、シリンダヘッドをさらに容易に得ることができる。
また好ましくは、シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーと、本体部に接続されかつシリンダヘッドカバーに沿って配される電線とをさらに含む。この場合、シリンダヘッドに形成された排気通路から離れるように電線を配することができる。したがって、排気通路からの排気の熱が電線に及ぼす影響は小さくなり、電線の劣化を抑制できる。また、電線をシリンダヘッドカバーに沿うように配することによって、エンジンから引き出される電線に必要なスペースを小さくできる。
さらに好ましくは、電線を保持するためにシリンダヘッドカバーに設けられる保持部を含む。この場合、保持部によって電線を容易にシリンダヘッドカバーに沿うように配することができ、配線が容易になる。
この発明に係るエンジンによれば、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しを防止できエンジンの寸法を抑制できる。したがって、この発明に係るエンジンを自動二輪車等の鞍乗型車両に適用すれば、鞍乗型車両が大きくなることを抑制できる。
好ましくは、シリンダ軸線は前方斜め上方に傾斜している。この場合、下方へのエンジンの張り出しを抑えることができる。したがって、このような構成は、単気筒またはV型2気筒のエンジンを含む鞍乗型車両に好適に用いられる。
この発明において、シリンダヘッドに関して「外方」とは、シリンダ軸線に直交しかつシリンダ軸線から放射状に延びる方向をいい、左右方向だけではなく上下方向をも含む。
また、「本体部および検出部がシリンダ軸線の方向に突出部と重なる」とは、シリンダ軸線の方向からみて、本体部および検出部が突出部の輪郭からはみ出さないことをいう。
この発明の上述の目的およびその他の目的、特徴、局面および利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
この発明によれば、シリンダヘッドにおいて排ガスの温度が高い位置に酸素濃度センサを設けても、シリンダヘッドの外方への酸素濃度センサの張り出しを防止できエンジンの寸法を抑制できる。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
なお、この発明に係るエンジンについては、クランク軸方向を左右方向、シリンダ軸線方向を前後方向、クランク軸およびシリンダ軸線のいずれにも直交する方向を上下方向と定義する。この発明の実施形態に係る自動二輪車については、乗員がハンドルに向かって自動二輪車のシートに着座した状態を基準として、左右方向、前後方向および上下方向を定義する。図面における十字状の矢印は方向を示すものであり、「F」は前方、「Rr」は後方、「U」は上方、「Lo」は下方、「R」は右方、「L」は左方をそれぞれ表わす。
なお、この発明に係るエンジンについては、クランク軸方向を左右方向、シリンダ軸線方向を前後方向、クランク軸およびシリンダ軸線のいずれにも直交する方向を上下方向と定義する。この発明の実施形態に係る自動二輪車については、乗員がハンドルに向かって自動二輪車のシートに着座した状態を基準として、左右方向、前後方向および上下方向を定義する。図面における十字状の矢印は方向を示すものであり、「F」は前方、「Rr」は後方、「U」は上方、「Lo」は下方、「R」は右方、「L」は左方をそれぞれ表わす。
図1は、この発明の一実施形態に係るエンジン36を備えた所謂スクータ型の自動二輪車10を示す左側面図である。
図1を参照して、自動二輪車10は、車体フレーム12を含む。車体フレーム12の前部の上方および下方にはそれぞれ、ハンドル14および前輪16が設けられている。車体フレーム12の後部上方には乗員が着座するシート18が設けられている。ハンドル14とシート18との間において車体フレーム12に沿うように、乗員が足を置くためのフットレスト20が設けられている。フットレスト20は、シート18に着座した乗員の右足を置く部分と左足を置く部分が同じ高さで連続するように形成されている。これによって、ハンドル14とシート18との間でフットレスト20の上方には、大きな空間が形成される。車体フレーム12は、フットレスト20の下方を通るように設けられている。
車体フレーム12は、左右に離間して配置される一対のフレーム22を含む(図3参照)。一対のフレーム22は、互いに左右方向に所定間隔を有して設けられ、後方斜め上方に延びている。一対のフレーム22にリンク機構24を介してパワーユニット26が、上下揺動自在に支持されている。
リンク機構24は、一対のフレーム22を連結するピボット軸28と、ピボット軸28とパワーユニット26とを連結しかつピボット軸28を中心として上下方向に揺動自在に設けられるリンク部材30とを有する。
パワーユニット26はシート18の下方に設けられ、パワーユニット26の後部とフレーム22とはリアクッションユニット32によって連結されている。パワーユニット26の後端部には後輪34が設けられている。
図2は、パワーユニット26、後輪34およびその近傍を示す左側面図である。図3は、車体フレーム12、パワーユニット26、後輪34およびその近傍をシリンダ軸線Aの前方からみた図解図である。
パワーユニット26は、たとえば空冷式単気筒のエンジン36と、変速機や減速機等を含む動力伝動装置(図示せず)が収容された伝動ケース38とを備える。
自動二輪車10の側面視において、エンジン36はフレーム22と交差している。エンジン36は、クランク軸40と、クランクケース42と、シリンダボディ44と、シリンダヘッド46と、シリンダヘッドカバー48とを有する。クランクケース42、シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、車両前後方向の後方から前方に向かってこの順で、かつエンジン36のシリンダ軸線A上に設けられている。クランクケース42、シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、隣りの部材と接続されている。図1および図2に示すように、シリンダ軸線Aは、車両前後方向に対して前方斜め上方に傾斜しており、この実施形態では若干傾斜している。
クランクケース42は、左右方向に延びるクランク軸40を回転可能に支持する。図3に示すように、クランクケース42の右部は、フレーム22の後方に設けられている。また、パワーユニット26がフレーム22と干渉することなく上下方向に揺動可能となるように、シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、シリンダ軸線A方向からみて、左右の一対のフレーム22の間に設けられている。
伝動ケース38は、フレーム22の後方であって、クランクケース42の左方に設けられている。伝動ケース38の後端部には、後輪34が回転自在に取り付けられている。後輪34は、エンジン36の後方に、伝動ケース38と車両幅方向に並ぶように設けられている。エンジン36で発生した駆動力は、動力伝達装置を介して後輪34に伝達される。
後述するように、シリンダヘッド46には、エンジン36の燃焼室90(シリンダヘッド46の燃焼凹部70)から排出される排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ50、およびエンジン36を流れるエンジンオイルの温度を検出するための油温センサ52が設けられている。また、シリンダヘッド46の上面には、エンジン36の吸気通路74を介して燃焼室90へ空気を供給するための吸気装置54が接続されている。シリンダヘッド46の下部には、エンジン36の燃焼室90から排気通路80を介して排ガスを排出するための排気装置56が接続されている。
図4〜図8を参照して、エンジン36について詳細に説明する。
図4は、エンジン36をシリンダ軸線Aの前方からみた図解図である。図5は、エンジン36の要部を示す右側面図である。図6は、エンジン36の要部を示す斜視図である。図7は、図4のI−I線部分断面図解図である。図8は、図5のII−II線断面図である。
図4は、エンジン36をシリンダ軸線Aの前方からみた図解図である。図5は、エンジン36の要部を示す右側面図である。図6は、エンジン36の要部を示す斜視図である。図7は、図4のI−I線部分断面図解図である。図8は、図5のII−II線断面図である。
シリンダボディ44は、その外側面に空気冷却用のフィン58を有し、その内部にシリンダ軸線Aの方向に延びる円柱状のシリンダボア60を有する。シリンダボア60内には往復動可能にピストン62が設けられている。ピストン62は、コンロッド64を介してクランク軸40に連結されている。なお、シリンダ軸線Aとは、シリンダボア60の中心軸線である。
シリンダヘッド46は、ヘッド本体65と突出部66とを有する。突出部66は、ヘッド本体65の外周面に設けられ、ヘッド本体65の外方に突出する。図4および図6を参照して、ヘッド本体65の外周面は、シリンダ軸線Aの方向からみてヘッド本体65の内方に凹む湾曲状の凹部68を有する。すなわち、凹部68は、ヘッド本体65の下面65aより上方に凹んでいる。また、凹部68は、側方(この実施形態では、ヘッド本体65の右面65bより左方)に凹んでいる。さらに、凹部68は、ヘッド本体65の角部を凹ますように形成されている。さらに言い換えれば、凹部68は、ヘッド本体65の外周面において、シリンダ軸線A方向に延びるように形成されている。
突出部66は、シリンダ軸線Aの前方からみて、凹部68に形成されている。突出部66は、シリンダ軸線Aの前方からみて、ヘッド本体65から右斜め下方向に突出するように形成されている。なお、酸素濃度センサ50は、シリンダ軸線Aの方向からみて、ヘッド本体65よりも左右方向に突出しないように配置されている。
図7に示すように、シリンダヘッド46に含まれるヘッド本体65の後方端部には燃焼凹部70が形成されている。燃焼凹部70とシリンダヘッド46の上面の開口部72とは吸気通路74を介して連通されている。吸気通路74の燃焼凹部70に面する開口が吸気ポート76となる。開口部72には吸気装置54が接続されている。燃焼凹部70と突出部66の開口部78とは排気通路80を介して連通されている。排気通路80の燃焼凹部70に面する開口が排気ポート82となる。突出部66の開口部78には排気装置56が接続されている。排気装置56はその端部にフランジ部84を有し、スタッドボルト86およびナット88を用いてフランジ部84が突出部66に取り付けられている。
図4を参照して、エンジン36をシリンダ軸線Aの前方からみると、シリンダヘッド46に形成されている排気通路80は、上下方向(クランク軸40およびシリンダ軸線Aのいずれにも直交する方向)に対して傾斜して下方に延びるように形成される。より具体的には、エンジン36をシリンダ軸線Aの前方からみると、シリンダヘッド46に形成されている排気通路80は、燃焼室90(燃焼凹部70)および排気ポート82から右斜め下方に延びるように形成されている。また、排気通路80の下流端となる突出部66の開口部78は、上下方向に対して傾斜した方向を向いている。より具体的には、排気通路80の下流端となる突出部66の開口部78は、右斜め下方を向いている。さらに、開口部78の中心79は、シリンダ軸線Aの方向からみて、ヘッド本体65よりも左右方向において外方に位置しない。このように排気通路80は、突出部66にも形成されている。排気通路80は、エンジン36の左側部分に設けられている伝達部材98および回転部材100(後述)から離れる方向に延びている。なお、燃焼室90は、シリンダボア60とピストン62とによって囲まれた空間と燃焼凹部70とによって形成される。
エンジン36において、空気は、吸気装置54および吸気通路74を通って燃焼室90に導かれる。排ガスは、燃焼室90から排気通路80および排気装置56を通って排出される。
図7を参照して、エンジン36は、動弁装置92と、吸気バルブ94と、排気バルブ96とをさらに含む。
動弁装置92は、伝達部材98と、回転部材100と、カム軸102と、カム104と、アーム部材106,108とを含む。伝達部材98は、たとえば金属チェーンを含み、クランク軸40の回転を回転部材100に伝達するためにクランク軸40と回転部材100とを連結する。回転部材100は、たとえばスプロケットからなり、伝達部材98によって回転される。回転部材100によってカム軸102が回転され、カム軸102上に設けられたカム104によってアーム部材106,108が揺動される。そして、アーム部材106によって吸気バルブ94が吸気ポート76を開閉し、アーム部材108によって排気バルブ96が排気ポート82を開閉する。
シリンダヘッド46は、シリンダヘッドカバー48が取り付けられるカバー取付面110を有する。図4〜図6に示すように、たとえば複数(この実施形態では2つ)のボルトなどの締結部材111を、シリンダヘッドカバー48の前面から取り付けることによって、シリンダヘッド46にシリンダヘッドカバー48が固定されている。このようにして、カバー取付面110にシリンダヘッドカバー48を取り付けることによって、シリンダヘッド46にシリンダヘッドカバー取付用のフランジが不要となる。したがって、酸素濃度センサ50をシリンダ軸線A方向に延びるように設けることができる。締結部材111としては、スタットボルトとナットや、リベットなどの一般的な締結部材を用いることができる。
突出部66はセンサ取付面112を有し、センサ取付面112には酸素濃度センサ50が取り付けられている。
カバー取付面110とセンサ取付面112とは互いに平行に形成されている。
ここで注目すべきは、排気通路80を通る排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ50が、シリンダ軸線Aの方向からみてシリンダヘッド46の突出部66と重なるように、突出部66のセンサ取付面112に取り付けられていることである。「酸素濃度センサ50がシリンダ軸線Aの方向に突出部66と重なる」とは、シリンダ軸線Aの方向からみて、酸素濃度センサ50が突出部66の輪郭からはみ出さないことをいう。後述するように、酸素濃度センサ50の中心軸線Bは、シリンダ軸線Aと平行でもよいし、シリンダ軸線Aに対して傾斜していてもよい。
センサ取付面112には、排気通路80に連通する取付孔114がシリンダ軸線Aに平行に形成されている。取付孔114は雌ねじ部116を有する。
酸素濃度センサ50は、柱状の本体部118と、本体部114と同軸上にかつ本体部114の一端に設けられる円柱状の検出部120とを含む。酸素濃度センサ50は、軸方向の長さが半径より大きい柱状に形成されている。本体部118は雄ねじ部122を有する。この実施形態では、本体部118の直径は、一定ではなく軸方向の位置によって異なっている。
酸素濃度センサ50が突出部66に取り付けられるとき、検出部120が取付孔114に挿入されて排気通路80内に臨むように、雄ねじ部122が雌ねじ部116にねじ込まれる。酸素濃度センサ50は、シリンダ軸線Aの方向からみて本体部118および検出部120がシリンダヘッド46の突出部66と重なるように、突出部66に取り付けられている。また、酸素濃度センサ50は、凹部68に沿うように突出部66に取り付けられている。言い換えれば、柱状の酸素濃度センサ50は、凹部68の延びる方向に沿って設けられている。酸素濃度センサ50の取り付け状態において、酸素濃度センサ50の中心軸線Bとシリンダ軸線Aとが平行になり、検出部120の少なくとも一部は、排気通路80内に位置している。
本体部118の他端部には、電線124のコネクタ125が接続されている。この実施形態では、本体部118に対して電線124は着脱自在である。酸素濃度センサ50の検出部120は、たとえば安定化ジルコニウムを含んで構成され、所定のセンサ活性化温度以上において正確な検出が可能となる。検出部120の少なくとも一部は、高温の排ガスが流通する排気通路80内に位置しているので、検出部120は排ガスによって加熱される。そのため、酸素濃度センサ50は迅速にセンサ活性化温度に達することができる。したがって、酸素濃度センサ50としては、検出部120を加熱するための別個の加熱手段が不要なヒータレスのセンサを用いることができるので、酸素濃度センサ50は小さくかつ安価となる。
酸素濃度センサ50による検出信号は、電線124を介してエンジン制御装置126に送られる。エンジン制御装置126は、送られた検出信号に基づいて、燃焼室90に供給される燃料の空燃比を最適な状態に制御する。具体的には、エンジン制御装置126が、吸気装置54に設けられた燃料噴射弁128を駆動し、燃焼室90に供給される空気に燃料が噴射される。
また、図4、図6および図8に示すように、シリンダヘッド46は、その側面に、油温センサ取付用のボス部130を有する。ボス部130は、シリンダヘッド46の右側面の上部に形成されている。ボス部130のボス穴132は、シリンダヘッド46の内部に形成されたオイル通路134につながっている。オイル通路134は、シリンダ軸線Aと平行に形成されている。また、シリンダヘッド46内にはカム軸102の受け部136が形成されている。受け部136とボス穴132とはオイル通路138によって連通されている。このようなボス部130に油温センサ52が取り付けられている。
クランクケース42によって支持されているクランク軸40が回転するとクランクケース42内のアイドラギヤを介してオイルポンプが駆動される。すると、オイルは、オイルポンプから、クランクケース42に形成されたオイル通路、クランクケース42とシリンダボディ44との接触面に形成されたオイル通路、シリンダボディ44に形成されたオイル通路、シリンダヘッド46に形成されたオイル通路134を通って、カム軸102および動弁装置92に供給される。また、オイルは、オイルポンプからクランク軸40およびオイルクーラーへ供給される。このようにオイルポンプから直接つながるラインには、クランク軸40の回転中には常にオイルが強制的に供給される。
油温センサ52は、燃焼室90に近く、クランク軸40の回転中には常にオイルが流れている位置に設けられている。したがって、クランク軸40の回転中には、油温センサ52によって、燃焼室90の温度すなわちエンジン36の温度を正確にかつ安定して検出できる。油温センサ52による検出値は、燃料噴出量の設定や補正に用いられる。
このようなエンジン36を有する自動二輪車10によれば、シリンダヘッド46は、ヘッド本体65の外周面のうち、右斜め下の面に突出部66を有し、排気通路80が燃焼室90から右斜め下方に延びて突出部66を貫通するように形成されている。突出部66の下流端の開口部78は右斜め下を向いている。そして、酸素濃度センサ50の本体部118と検出部120とがシリンダ軸線Aの方向からみて突出部66と重なりかつ検出部120の少なくとも一部が排気通路80内に位置するように、酸素濃度センサ50が突出部66に取り付けられている。
これにより、排ガスの温度が高い位置にすなわちシリンダヘッド46の突出部66に、酸素濃度センサ50を設けても、酸素濃度センサ50がシリンダヘッド46よりも外方(特に、左右方向)に張り出すことを防止できる。したがって、単気筒のエンジン36は左右方向にコンパクトであるという特性を損なわず、単気筒のエンジン36の寸法を抑制できる。また、酸素濃度センサ50はシリンダヘッドカバー48より前方に突出しない。そのため、酸素濃度センサ50がエンジン36の前後方向においても張り出すことを防止できる。さらに、エンジン36では、動弁装置92の前端部が排気通路80より前方に位置しているので、突出部66のセンサ取付面112からシリンダヘッドカバー48の前面までのシリンダ軸線A方向の距離は十分に長くなる。より具体的には、突出部66のセンサ取付面112からシリンダヘッドカバー48の前面までのシリンダ軸線A方向の距離は、酸素濃度センサ50のうちセンサ取付面112から露出している部分の長さより大きくなる。したがって、酸素濃度センサ50に接続された電線124がエンジン36の前方に大きく突出することはなく、電線124の配線に必要なスペースを小さくできる。なお、シリンダヘッド46は突出部66の分だけ外方に突出することになるが、その分シリンダヘッド46に取り付けられる排気装置52を短くできるので、エンジン廻りの構造が大きくなることはない。
特に、この実施形態のエンジン36では、突出部66のセンサ取付面112からシリンダヘッドカバー48の前面までのシリンダ軸線A方向の距離が十分に長く、かつ酸素濃度センサ50はその軸方向の長さが半径より大きい柱状に形成されている。このような構成であれば、酸素濃度センサ50をシリンダ軸線A方向からみて突出部66と重なるようシリンダヘッド46に取り付けることは容易であり、この発明は特に効果的である。
酸素濃度センサ50は、本体部118が検出部120より前方に位置するように突出部66に取り付けられている。したがって、本体部118がシリンダボディ44の空気冷却用のフィン58やクランクケース42と干渉することを避けることができ、酸素濃度センサ50を左右方向に張り出すことなくシリンダヘッド46に容易に取り付けることができる。
酸素濃度センサ50は、中心軸線Bがシリンダ軸線Aに対して平行となるようにシリンダヘッド46に取り付けられている。これによって、酸素濃度センサ50の左右方向および下方への張り出しを容易に防止できる。
突出部66は、ヘッド本体65から少なくとも下方に突出している。したがって、ヘッド本体65の下方のスペースを有効に利用して、突出部66を設けることができる。
突出部66は、シリンダ軸線A方向からみて、ヘッド本体65から斜め下方に突出している。これによって、突出部66の長さを確保しつつシリンダヘッド46をコンパクトに形成できる。
酸素濃度センサ50は、シリンダ軸線A方向からみて、ヘッド本体65よりも左右方向に突出しないように配置されている。これによって、シリンダヘッド46の外方への酸素濃度センサ50の張り出しをより確実に防止でき、エンジン36の寸法をさらに抑制できる。
突出部66は排気通路80の下流端となる開口部78を有し、開口部78の中心79は、シリンダ軸線A方向からみて、ヘッド本体65よりも左右方向において外方に位置しない。したがって、シリンダヘッド46の外方への突出部66の張り出しを抑制でき、エンジン36の寸法をさらに抑制できる。
シリンダヘッド本体65の外周面は、シリンダ軸線Aの方向からみて、ヘッド本体65の内方に凹む凹部68を有し、突出部66は凹部68に形成されている。このようにすれば、酸素濃度センサ50を凹部68近傍で突出部66に取り付けることができるので、シリンダヘッド46の外方への突出部66の突出を抑えることができる。したがって、シリンダヘッド46をコンパクトに形成することができる。
凹部68は、上方および側方に凹んでいる。また、凹部68は、ヘッド本体65の角部を凹ますように形成されている。したがって、凹部68に設けられる突出部66の長さを確保しつつシリンダヘッド46をコンパクトに形成できる。
カバー取付面110とセンサ取付面112とは互いに平行となるように形成されている。これによって、カバー取付面110とセンサ取付面112とを容易に機械加工で形成することができる。
シリンダ軸線Aは前方斜め上方に傾斜しているので、下方へのエンジン36の張り出しを抑えることができる。したがって、このような構成は、単気筒またはV型2気筒のエンジンを含む鞍乗型車両に好適に用いられる。
なお、上述の実施形態では、リンク機構24を採用しているが、リンク機構24を設けることなく、パワーユニット26を車体フレーム12に上下揺動自在に直接設けてもよい。
伝達部材88は、たとえばゴム製のベルトによって構成されてもよい。その場合、回転部材90はプーリーとなる。
図9は、この発明の他の実施形態に係るエンジン36aをシリンダ軸線Aの前方からみた図解図である。
エンジン36aでは、酸素濃度センサ50に代えて電線124aを有する酸素濃度センサ50aが用いられ、電線124に代えて電線124bが用いられ、シリンダヘッドカバー48に保持部140が形成されている。その他の構成については図4〜図7に示すエンジン36と同様であるので、その重複した説明は省略する。
酸素濃度センサ50aでは、その本体部118aの内部で電線124aの一端が接続され、電線124aが本体部118aから引き出されている。電線124aの他端は、電線124bを介してエンジン制御装置126に接続されている。なお、電線124aおよび124bはそれぞれ、コネクタ125aおよび125bを有する。コネクタ125aと125bとを接続することによって、電線124aと124bとが接続される。
シリンダヘッドカバー48の前面には、複数(この実施形態では4つ)の保持部140が設けられている。これらの保持部140によって、酸素濃度センサ50aの本体部118に接続されている電線124aが保持されている。保持部140は、シリンダヘッドカバー48に一体的に形成されても、別部品として形成されてよい。また、保持部140は、電線124aをシリンダヘッドカバー48に押し付けるような接着性または粘着性のテープ状のものでもよい。さらに、保持部140は、電線124aを通しかつ保持することができる略C字状またはU字状をしたものであってもよい。また、図9に一点鎖線で示すように、保持部140は、シリンダヘッドカバー48の右側面に形成されてもよい。さらに、保持部140は、シリンダヘッドカバー48の左側面、上面または下面のいずれに形成されてもよい。
このように保持部140で電線124aをシリンダヘッドカバー48に沿うように保持することによって、シリンダヘッド46に形成された排気通路80から離れるように電線124aを配することができる。したがって、排気通路80からの排気の熱が電線124aに及ぼす影響は小さくなり、電線124aの劣化を抑制できる。また、電線124aをシリンダヘッドカバー48に沿うように配することによって、エンジン36aから引き出される電線124aに要するスペースを小さくできる。また、保持部140を用いることによって、電線124aを容易に配することができる。
なお、保持部140は先の実施形態において用いられてもよい。この場合、保持部140によって、酸素濃度センサ50に接続される電線124が保持される。
図10は、エアシュラウド142が取り付けられたエンジン36を示す一部省略右側面図である。
図10に示すように、図4〜図7に示すエンジン36にエアシュラウド142を取り付け、エアシュラウド142の表面に保持部140を形成し、酸素濃度センサ50に接続される電線124を保持部140によって保持するようにしてもよい。さらに、保持部140は、シリンダヘッド46に設けられてもよい。
図11(a)はセンサカバー部144が形成されたシリンダヘッドカバー48の要部およびその近傍を、シリンダ軸線Aの前方からみた図解図であり、(b)はその斜視図である。
図11(a)および(b)に示すように、シリンダヘッドカバー48のうち酸素濃度センサ50近傍の隅部に、センサカバー部144が一体的に形成されてもよい。
センサカバー部144は、酸素濃度センサ50の本体部118の前方を覆うカバー前部146と、本体部118の外方の一部を覆うカバー側部148とを有する。ここで、本体部118の「外方」とは、酸素濃度センサ50の中心軸線Bに直交しかつ中心軸線Bから放射状に延びる方向をいう。
このようなセンサカバー部144が形成されたシリンダヘッドカバー48を有するエンジン36を、自動二輪車10に搭載した場合、路面からの跳ね石等から酸素濃度センサ50を適切に保護することができる。また、酸素濃度センサ50は、シリンダ軸線A方向からみて突出部66と重なるように、突出部66に取り付けられ、シリンダヘッド46の近傍に位置している。したがって、センサカバー部144は大きくならない。
図12(a)はセンサカバー部144aが形成されたシリンダヘッドカバー48の要部およびその近傍を、シリンダ軸線Aの前方からみた図解図であり、(b)はその斜視図である。
図12(a)および(b)に示すように、シリンダヘッドカバー48のうち酸素濃度センサ50近傍の隅部に、別体のセンサカバー部144aが、たとえばボルトなどの締結部材150によって取り付けられてもよい。センサカバー部144aは、酸素濃度センサ50の本体部118の前方を覆うカバー前部146aと、本体部118の外方の一部を覆うカバー側部148aとを有する。
この場合も、センサカバー部144が形成されたシリンダヘッドカバー48を有するエンジン36を用いる場合と同様の効果が得られる。
なお、締結部材150はボルトに限定されず、締結可能な任意の部材を用いることができる。また、シリンダヘッドカバー48に取り付けられたセンサカバー部144aが回転することを防止するために、たとえば突起状の回転止め(図示せず)がシリンダヘッドカバー48に設けられてもよい。
酸素濃度センサとして図9に示す酸素濃度センサ50aを用いる場合においても、センサカバー144,144aがシリンダヘッドカバー48に形成されてもよい。
また、センサカバー部144,144aは、酸素濃度センサ50の本体部118の少なくとも前方を覆うように、それぞれカバー前部146,146aを有していればよい。
図13は、この発明のその他の実施形態に係るエンジン36bを示す部分断面図解図である。
図13を参照して、エンジン36bに含まれるシリンダヘッド46aでは、シリンダヘッドカバー48が取り付けられるカバー取付面110と、酸素濃度センサ50が取り付けられるセンサ取付面112aとは、同一平面上に位置している。すなわち、カバー取付面110とセンサ取付面112aとは、互いに面一に形成されている。その他の構成については図7に示すエンジン36と同様であるので、その重複した説明は省略する。
この場合、カバー取付面110とセンサ取付面112aとを機械加工で同時に形成でき、シリンダヘッド46aをさらに容易に得ることができる。
図14は、この発明のさらにその他の実施形態に係るエンジン36cをシリンダ軸線Aの前方からみた図解図である。
図14に示すエンジン36cでは、突出部66を有するシリンダヘッド46に代えて、突出部66aを有するシリンダヘッド46bが用いられている。
エンジン36cをシリンダ軸線Aの前方から見ると、突出部66aはシリンダヘッド46bから下方に突出し、排気通路80aの下流端となる開口部78aは左斜め下方を向くように形成されている。また、シリンダヘッド46bに形成されている排気通路80aは、燃焼室90および排気ポート82から下方に延びるように形成されている。その他の構成については、図4に示すエンジン36と同様であるので、その重複した説明は省略する。
エンジン36cについても、エンジン36と同様の効果が得られる。
図15は、突出部66に酸素濃度センサ50を傾斜させて取り付けた状態の要部を示す図解図である。図16は、図15に示すIII−III線断面図解図である。
図15および図16に示すように、酸素濃度センサ50は、その中心軸線Bがシリンダ軸線Aに対して傾斜するように設けられてもよい。これと対比するために、中心軸線Bがシリンダ軸線Aと平行になるように設けられた酸素濃度センサ50が二点鎖線で示されている。
シリンダ軸線Aの方向から見て、酸素濃度センサ50の本体部118および検出部120がシリンダヘッド46の突出部66と重なる限りにおいて、シリンダ軸線Aに対する中心軸線Bの傾斜角度は任意でよい。言い換えれば、図16を参照して、本体部118および検出部120が線Cと線Dとの間からはみ出さない範囲で、酸素濃度センサ50はシリンダ軸線Aに対して傾斜するように設けられてもよい。線Cは、突出部66の一端に接しかつシリンダ軸線Aに平行な直線であり、線Dは、突出部66の他端に接しかつシリンダ軸線Aに平行な直線である。
なお、シリンダ軸線Aの方向からみて、本体部118が線Cと線Dとの間に位置していればよく、本体部118に接続される電線124(124a)が、線Cと線Dとの間からはみ出していてもよい。
図17(a)は、この発明の他の実施形態に係るV型2気筒のエンジン36dを示す側面図解図であり、(b)はエンジン36dをシリンダ軸線の前方からみた図解図である。
エンジン36dでは、酸素濃度センサ50は、各気筒のシリンダヘッド46にそれぞれ取り付けられている。なお、片方の気筒のシリンダヘッド46だけに酸素濃度センサ50を取り付けて、エンジン36dを制御してもよい。
このように、この発明は、単気筒のエンジンだけではなく、左右方向に複数の気筒が並んでいないV型2気筒のエンジンにも同様に適用できる。
図18は、この発明の他の実施形態に係る自動二輪車10aを示す左側面図である。
自動二輪車10aは、車体フレーム152の下方にエンジン36eが設けられた所謂アンダーボーン型の自動二輪車である。
図18を参照して、自動二輪車10aは車体フレーム152を含む。車体フレーム152は、ヘッドパイプ154と、メインフレーム156と、シートフレーム158とを含む。ヘッドパイプ154は、車体フレーム152の前端部の車幅方向中心に設けられている。メインフレーム156は、ヘッドパイプ154から車幅方向中心を後方斜め下方に延びている。シートフレーム158は、メインフレーム156から後方斜め上方に延びている。
フロントフォーク160は、左右操向可能にヘッドパイプ154によって支持されており、フロントフォーク160の下端部に前輪162が回動可能に支持されている。フロントフォーク160の上端部には操向ハンドル164が取り付けられている。
空冷式単気筒のエンジン36eは、クランク軸166を車幅方向に向けてメインフレーム156に懸架支持されている。エンジン36eは、車体フレーム152に対して揺動することなく固定されている。エンジン36eの後端部にリヤアーム168が上下揺動可能に支持され、リヤアーム168の後端部に後輪170が支持されている。シートフレーム158の上方にはシート172が設けられている。車体フレーム152やエンジン36eの左右側方は車体カバー174によって覆われている。
エンジン36eは、クランク軸166および変速機(図示せず)が収容されたクランクケース176と、シリンダボディ44と、シリンダヘッド46と、シリンダヘッドカバー48とを含む。シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、エンジン36に含まれているものと同じものである。
クランクケース176、シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、車両前後方向の後方から前方に向かってこの順で、かつエンジン36eのシリンダ軸線A上に設けられている。クランクケース176、シリンダボディ44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48は、隣りの部材と接続されている。シリンダ軸線Aは、車両前後方向に対して前方斜め上方に傾斜しており、この実施形態では若干傾斜している。自動二輪車10aでは、後輪170はチェーン駆動される。
シリンダヘッド46の上面には、吸気通路74に連通するように吸気装置178が接続されている。また、図4に示すエンジン36と同様に、シリンダヘッド46の突出部66には、排気通路80に連通するように排気装置56が接続されている。
エンジン36eを備えた自動二輪車10aにおいても、自動二輪車10と同様の効果が得られる。
なお、エンジン36a〜36dのようなエンジン、図11および図12に示すようなセンサカバー付きのシリンダヘッドカバー、図15および図16に示すようなシリンダ軸線Aに対して傾斜した酸素濃度センサが、自動二輪車10aに適用されてもよい。
上述の実施形態において、シリンダ軸線Aと車両前後方向とがなす角度は特に限定されない。当該角度はゼロであってもよい。すなわち、シリンダ軸線Aと車両前後方向とが一致していてもよい。また、この発明は、シリンダ軸線Aが鉛直またはほぼ鉛直に沿って設けられるエンジンに対しても適用することができる。この発明に係るエンジンは水冷式であってもよい。
酸素濃度センサ50は、本体部118が検出部120より後方に位置するように、突出部66に取り付けられてもよい。この場合、本体部118の前方および後方がそれぞれ、シリンダヘッド46およびクランクケース42で覆われる。酸素濃度センサ50がこのように取り付けられたエンジンを自動二輪車に搭載した場合、路面からの跳ね石等から酸素濃度センサ50を適切に保護することができる。また、酸素濃度センサ50に含まれる本体部118の直径は、略一定に形成されてもよい。検出部120の直径は、軸方向の位置によって異なってもよい。酸素濃度センサ50aについても同様である。
この発明に用いられる酸素濃度センサは、ヒータレスまたはヒータ付きのいずれであってもよい。ヒータ付きタイプの酸素濃度センサを用いた場合であっても、酸素濃度センサの消費電力を抑えることができる。
シリンダヘッドの外周面において酸素濃度センサに沿うように形成された凹部は、湾曲状に限定されない。たとえば、凹部は、シリンダヘッドの外周面隅部をシリンダ軸線方向にV字状に切り欠いたものであってもよい。
シリンダヘッドに形成される排気通路の位置は、エンジンが搭載される鞍乗型車両に応じて適宜設計されてよい。
突出部は、ヘッド本体から少なくとも下方に突出していることが好ましい。たとえば、突出部は、シリンダ軸線方向からみて、ヘッド本体から右斜め方向、下方または左斜め下方のいずれの方向に突出していてもよい。
上述の実施形態では、この発明に係るエンジンを、図1に示すスクータ型や図18に示すアンダーボーン型(水平シリンダ型)の自動二輪車に適用した場合について説明した。しかし、この発明はこれに限定されない。この発明に係るエンジンは、たとえばモータサイクル型など、水平シリンダ型ではない自動二輪車にも適用できる。また、この発明に係るエンジンは、スノーモービル、不整地走行車両(ALL−TERRAIN VEHICLE)などの、他の任意の鞍乗型車両に適用できる。
この発明に係るエンジンを鞍乗型車両に適用すれば、シリンダヘッドにおいて排ガスの温度が高い位置に酸素濃度センサを取り付けても、エンジンの寸法を抑制でき、鞍乗型車両が大きくなることを抑制できる。
以上、この発明の好ましい実施形態について説明されたが、この発明の範囲および精神を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であることは明らかである。この発明の範囲は、添付されたクレームのみによって限定される。
10,10a 自動二輪車
36,36a,36b,36c,36d,36e エンジン
40 クランク軸
42 クランクケース
44 シリンダボディ
46,46a,46b シリンダヘッド
48 シリンダヘッドカバー
50,50a 酸素濃度センサ
65 ヘッド本体
66,66a 突出部
68 凹部
70 燃焼凹部
72,78,78a 開口部
79 開口部の中心
80,80a 排気通路
110 カバー取付面
112,112a センサ取付面
118,118a 本体部
120 検出部
124,124a,124b 電線
140 保持部
144,144a センサカバー部
A シリンダ軸線
B 中心軸線
36,36a,36b,36c,36d,36e エンジン
40 クランク軸
42 クランクケース
44 シリンダボディ
46,46a,46b シリンダヘッド
48 シリンダヘッドカバー
50,50a 酸素濃度センサ
65 ヘッド本体
66,66a 突出部
68 凹部
70 燃焼凹部
72,78,78a 開口部
79 開口部の中心
80,80a 排気通路
110 カバー取付面
112,112a センサ取付面
118,118a 本体部
120 検出部
124,124a,124b 電線
140 保持部
144,144a センサカバー部
A シリンダ軸線
B 中心軸線
Claims (18)
- 単気筒またはV型2気筒のエンジンであって、
ヘッド本体および前記ヘッド本体から外方に突出する突出部を有するシリンダヘッドと、
前記ヘッド本体に形成される燃焼凹部と、
前記燃焼凹部から排ガスを排出するために前記燃焼凹部から前記突出部を貫通するように形成される排気通路と、
前記排ガスの酸素濃度を検出するために本体部および前記本体部に設けられる検出部を有する酸素濃度センサとを備え、
前記酸素濃度センサは、前記本体部および前記検出部がシリンダ軸線の方向からみて前記突出部と重なるようにかつ前記検出部の少なくとも一部が前記排気通路内に位置するように、前記突出部に取り付けられている、エンジン。 - 前記酸素濃度センサは、前記本体部が前記検出部より前方に位置するように前記突出部に取り付けられている、請求項1に記載のエンジン。
- 前記酸素濃度センサは、前記酸素濃度センサの中心軸線と前記シリンダ軸線とが平行になるように前記突出部に取り付けられている、請求項1に記載のエンジン。
- 前記突出部は前記ヘッド本体から少なくとも下方に突出している、請求項1に記載のエンジン。
- 前記突出部は、前記シリンダ軸線方向からみて、前記ヘッド本体から斜め下方に突出している、請求項4に記載のエンジン。
- 前記酸素濃度センサは、前記シリンダ軸線方向からみて、前記ヘッド本体よりも左右方向に突出しないように配置されている、請求項5に記載のエンジン。
- 前記突出部は前記排気通路の下流端となる開口部を有し、前記開口部の中心は、前記シリンダ軸線方向からみて、前記ヘッド本体よりも左右方向において外方に位置しない、請求項1に記載のエンジン。
- 前記ヘッド本体の外周面は、前記シリンダ軸線の方向からみて前記ヘッド本体の内方に凹む凹部を有し、
前記突出部は前記凹部に形成されている、請求項1に記載のエンジン。 - 前記凹部は上方に凹んでいる、請求項8に記載のエンジン。
- 前記凹部は側方に凹んでいる、請求項8に記載のエンジン。
- 前記凹部は、前記ヘッド本体の角部を凹ますように形成されている、請求項8に記載のエンジン。
- 前記シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーと、
前記本体部の少なくとも前方を覆うために前記シリンダヘッドカバーに設けられるセンサカバー部とをさらに含む、請求項1に記載のエンジン。 - 前記シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーをさらに含み、
前記シリンダヘッドは前記シリンダヘッドカバーが取り付けられるカバー取付面を有し、
前記突出部は前記酸素濃度センサが取り付けられるセンサ取付面を有し、
前記カバー取付面と前記センサ取付面とは互いに平行に形成されている、請求項1に記載のエンジン。 - 前記シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーをさらに含み、
前記シリンダヘッドは前記シリンダヘッドカバーが取り付けられるカバー取付面を有し、
前記突出部は前記酸素濃度センサが取り付けられるセンサ取付面を有し、
前記カバー取付面と前記センサ取付面とは同一平面上に位置している、請求項1に記載のエンジン。 - 前記シリンダヘッドの前方に設けられるシリンダヘッドカバーと、
前記本体部に接続されかつ前記シリンダヘッドカバーに沿って配される電線とをさらに含む、請求項1に記載のエンジン。 - 前記電線を保持するために前記シリンダヘッドカバーに設けられる保持部をさらに含む、請求項15に記載のエンジン。
- 請求項1から16のいずれかに記載のエンジンを備える、鞍乗型車両。
- 前記シリンダ軸線は前方斜め上方に傾斜している、請求項17に記載の鞍乗型車両。
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