次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図1に、本発明の感光体の一例を示す。感光体10は、導電性支持体11上に、電荷発生物質、電荷輸送物質及び第一の樹脂を含む感光層12と、一般式
(式中、X及びYは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基又は置換若しくは無置換のヘテロシクロアルキル基であり、n及びmは、それぞれ独立に、1又は2である。)
で表される化合物、フィラーF及び第二の樹脂を含む保護層13が順次積層されており、感光層12と保護層13が連続した層構造を有し、保護層13の最大膜厚の平均値及び標準偏差を、それぞれD及びσとすると、式
σ≦D/5
を満たし、式
σ≦D/7
を満たすことが好ましい。
このとき、保護層13が一般式(1)で表される化合物を含むため、感光体10は、画像流れを抑制することができる。
保護層13中の一般式(1)で表される化合物の含有量は、0.5〜20質量%であることが好ましい。この含有量が0.5質量%未満であると、画像流れが発生することがあり、20質量%を超えると、残留電位が上昇することがある。
一般式(1)で表される化合物としては、特に限定されないが、以下の化合物が挙げられる。
また、感光層12と保護層13が連続した層構造を有するため、感光層12と保護層13の境界領域で明確な境界が見られない。感光層12と保護層13が連続した層構造を有するためには、第一の樹脂及び第二の樹脂が、同一の溶媒に可溶である必要がある。このような溶媒を含む塗布液を用いて、保護層13を形成すると、感光層12の表面に塗布液を塗布した際に、第一の樹脂と第二の樹脂が相溶し、連続した層構造が形成される。これにより、感光層12と保護層13の接着性が強くなり、感光体10を長期間使用した場合に、保護層13の剥離を抑制できる。また、感光体10を長期間使用した場合に、感光層12から保護層13への電荷輸送が阻害されず、露光部の電位の上昇を抑制できる。さらに、黒ベタ画像の端部における画像太り及びトナー飛散を抑制できる。
次に、保護層13の最大膜厚Dnについて説明する。保護層13の最大膜厚Dnは、感光体10の断面のSEM写真から求められる。具体的には、SEM写真の感光層12及び保護層13の膜厚方向に対して垂直な方向に、幅が100μmである任意の範囲を選択して20等分した後、20等分された各範囲から最大膜厚D1〜D20を求める。なお、最大膜厚Dnとは、保護層13の表面から最も離れたフィラーまでの距離である(図2参照)。また、保護層13の最大膜厚の平均値D及び標準偏差σは、D1〜D20から求められる。
このとき、σがD/5を超えると、保護層13に入射した光がフィラーFで散乱されるため、感光層12で発生する電荷が不均一になることに加え、発生した電荷がフィラーFでトラップされるため、保護層13に到達する電荷が不均一になる。また、感光体10を長期間使用した場合に、フィラーFの存在の有無により保護層13の摩耗速度が不均一になることから、画像ムラが顕在化しやすい。
本発明において、式
(2/3)D≦Dn≦(4/3)D
を満たすことが好ましい。
図3に、感光体10の変形例を示す。感光体20は、単層の感光層12の代わりに、電荷発生物質を含む電荷発生層22aと、電荷輸送物質及び第二の樹脂を含む電荷輸送層22bが順次積層されている感光層22が形成されている以外は、感光体10と同一の構成である。
図4に、感光体20の変形例を示す。感光体30は、導電性支持体11と電荷発生層12aの間に下引き層31が形成されている以外は、感光体20と同一の構成である。
なお、感光体10の導電性支持体11と感光層12の間に下引き層31を形成してもよい。
導電性支持体11としては、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以下であれば、特に限定されないが、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングすることにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの;アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板;アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板を押し出し、引き抜き等の工法で素管化した後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理をした管等が挙げられる。また、特開昭52−36016号公報に開示されているエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体11として用いることができる。
また、導電性支持体11は、導電性粉末が樹脂中に分散されている導電層が表面に形成されていてもよい。導電性粉末としては、特に限定されないが、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素粉末;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉末;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉末等が挙げられる。また、樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。導電層は、導電性粉末及び樹脂を、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶媒に分散させた塗布液を塗布することにより形成することができる。
さらに、導電性支持体11は、円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂に導電性粉末を分散させた熱収縮チューブが設けられていてもよい。
電荷発生層22aは、電荷発生物質を、必要に応じて、樹脂と共に、溶媒中に分散させた塗布液を導電性支持体11上に塗布した後、乾燥することにより形成することができる。
電荷発生物質としては、特に限定されないが、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ、二種併用してもよい。中でも、アゾ顔料及びフタロシアニン系顔料が好ましく、一般式
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基又はシアノ基であり、Cp1及びCp2は、それぞれ独立に、一般式
(式中、R3は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基であり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又は水酸基であり、Zは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環又は置換若しくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な基である。)
で表されるカップラー残基である。)
で表されるアゾ顔料及びCuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
樹脂としては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
樹脂の添加量は、電荷発生物質100質量部に対して、通常、0〜500質量部であり、10〜300質量部が好ましい。
溶媒としては、特に限定されないが、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましい。
塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、浸漬塗布法、スプレーコート法、ビートコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等が挙げられる。
電荷発生層22aの膜厚は、通常、0.01〜5μmであり、0.1〜2μmが好ましい。
電荷輸送層22bは、電荷輸送物質及び第一の樹脂を溶媒中に溶解又は分散させた塗布液を電荷発生層22a上に塗布した後、乾燥することにより形成することができる。
電荷輸送物質には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等の正孔輸送物質;クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子輸送物質が挙げられ、二種以上併用してもよい。
第一の樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアレート、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
電荷輸送物質の添加量は、樹脂100質量部に対して、通常、20〜300質量部であり、40〜150質量部が好ましい。
塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、浸漬塗布法、スプレーコート法、ビートコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等が挙げられる。
電荷輸送層22bの膜厚は、解像度及び応答性を考慮すると、5〜25μmであることが好ましい。
感光層12は、電荷発生物質、電荷輸送物質及び第一の樹脂を、必要に応じて、電荷発生層22aで例示した樹脂と共に、溶媒中に溶解又は分散させた塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成することができる。
溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
電荷発生物質の添加量は、樹脂100質量部に対して、通常、5〜40質量部である。また、電荷輸送物質の添加量は、樹脂100質量部に対して、通常、10〜190質量部であり、50〜150質量部が好ましい。
塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、浸漬塗布法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等が挙げられる。
感光層12の膜厚は、通常、5〜25μmである。
下引き層31は、樹脂を溶媒中に溶解又は分散させた塗布液を導電性支持体11上に塗布した後、乾燥することにより形成することができる。このとき、モアレを防止したり、残留電位を低減させたりするために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物粉末を塗布液に添加してもよい。
樹脂は、下引き層31上に電荷発生層22a又は感光層12の塗布液を塗布することを考慮すると、電荷発生層22a又は感光層12の塗布液に含まれる溶媒に対して耐性を有することが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を硬化させた樹脂等が挙げられる。
溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、浸漬塗布法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等が挙げられる。
これら以外の下引き層31としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等が挙げられる。また、アルミニウム製の導電性支持体11を陽極酸化することにより形成された酸化アルミニウムや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機化合物;SiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機化合物を蒸着したものが挙げられる。
下引き層31の膜厚は、通常、0.1〜50μmであり、1〜5μmが好ましい。
保護層13は、一般式(1)で表される化合物、フィラー及び第二の樹脂を溶媒中に分散させた保護層用塗布液を感光層12又は22上に塗布した後、乾燥することにより形成することができる。なお、溶媒は、第一の樹脂を可溶である。
第二の樹脂としては、特に限定されないが、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。
フィラーFとしては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等の有機フィラー;銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末、シリカ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物粉末、チタン酸カリウム粉末等の無機フィラーが挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、フィラーFの硬度を考慮すると、無機フィラーが好ましく、金属酸化物粉末がさらに好ましく、酸化アルミニウム粉末が特に好ましい。
フィラーFの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが好ましい。フィラーFの平均一次粒径が0.01μm未満であると、保護層13の耐摩耗性が低下することがあり、0.5μmを超えると、光の透過率が低下することがある。
保護層13中のフィラーFの含有量は、通常、1〜50質量%であり、5〜30質量%が好ましい。フィラーFの含有量が1質量%未満であると、保護層13の耐摩耗性が低下することがあり、50質量%を超えると、残留電位が上昇したり、保護層13の光の透過率が低下したりすることがある。
フィラーFの保護層用塗布液中の平均粒径は、通常、0.01〜1μmであり、0.01〜0.5μmが好ましい。フィラーFの保護層用塗布液中の平均粒径が0.01μm未満であると、保護層13の耐摩耗性が低下することがあり、1μmを超えると、光の透過率が低下することがある。
フィラーFは、分散性を考慮すると、表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、特に限定されないが、フィラーの絶縁性を維持できることから、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等が挙げられる。また、これらの表面処理剤とシランカップリング剤を併用してもよい。これら以外の表面処理剤としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリコーン樹脂、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
フィラーFの表面処理量は、平均一次粒径によって異なるが、通常、3〜30質量%であり、5〜20質量%が好ましい。表面処理量が3質量%未満であると、フィラーFの分散性を向上させる効果が得られないことがあり、30質量%を超えると、残留電位が上昇することがある。
保護層13は、残留電位を低減したり、応答性を改良したりするため、電荷輸送層22bで例示した電荷輸送物質をさらに含んでもよい。保護層13中の電荷輸送物質は、濃度勾配を有していてもよい。このとき、保護層13の耐摩耗性を向上させるために、表面側の電荷輸送物質の濃度を低くすることが好ましい。
保護層13の膜厚は、通常、0.1〜10μmであり、1〜8μmが好ましい。
感光層12又は22上に保護層用塗布液をスプレー塗布する条件で、感光層12又は(下引き層31及び)感光層22が形成された導電性支持体11に保護層用塗布液をスプレー塗布した後、保護層用塗布液をスプレー塗布した環境で60分間放置した時の塗布膜の質量をA、塗布膜の乾燥質量をBとすると、式
1.2<A/B<2.0
を満たす。なお、塗布膜の乾燥質量とは、塗布膜中の溶媒の含有量が1000ppm以下である質量を意味する。また、保護層用塗布液をスプレー塗布した環境としては、温度、排気エアー量等が挙げられ、導電性支持体11がドラム状である場合は、導電性支持体11の回転数も含まれる。
A/Bが1.2以下であると、保護層用塗布液をスプレー塗布したときの霧化状態が、不安定となり、霧化中に、保護層用塗布液の一部が固形化することがある。一方、A/Bが2.0以上であると、保護層用塗布液に含まれる溶媒が電荷輸送層22b又は感光層12に含まれる第一の樹脂を過度に溶解又は膨潤させ、σがD/5を超えることがある。
次に、A及びBの測定方法について説明する。まず、感光層12又は(下引き層31及び)感光層22が形成された導電性支持体11の質量(M1)を測定する。次に、感光層12又は(下引き層31及び)感光層22が形成された導電性支持体11上に保護層用塗布液をスプレー塗布する。そして、保護層用塗布液をスプレー塗布した環境で60分間放置し、塗布膜が形成された導電性支持体11の質量(M2)を測定する。さらに、塗布膜を乾燥させ、塗布膜が形成された導電性支持体11の質量(M3)を測定する。このとき、A及びBは、それぞれM2−M1及びM3−M1となる。
保護層用塗布液に含まれる溶媒は、沸点が50〜80℃である溶媒と沸点が130〜160℃である溶媒の混合溶媒であることが好ましい。沸点が50〜80℃である溶媒を保護層用塗布液が含むため、A/Bを2.0よりも小さくすることができ、沸点が130〜160℃である溶媒を保護層用塗布液が含むため、A/Bを1.2よりも大きくすることができる。
沸点が50〜80℃である溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等が挙げられ、沸点が130〜160℃である溶媒としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルフェニルエーテル等が挙げられる。
通常、放置された導電性支持体11を加熱乾燥するが、130〜160℃で10〜60分間乾燥することが好ましい。乾燥する温度が130℃未満である場合又は乾燥する時間が10分間未満である場合、保護層13中の溶媒の含有量が1000ppmを超えることがある。一方、乾燥する温度が160℃を超える場合又は乾燥する時間が60分間を超える場合、電荷発生物質の結晶化度や結晶系が変化することがある。
保護層用塗布液の固形分濃度は、3〜6質量%であることが好ましい。固形分濃度が3質量%未満であると、保護層用塗布液に含まれる溶媒が電荷輸送層22b又は感光層12に含まれる第一の樹脂を過度に溶解又は膨潤させ、σがD/5を超えることがある。一方、固形分濃度が6質量%を超えると、保護層用塗布液をスプレー塗布したときの霧化状態が、不安定となり、霧化中に、保護層用塗布液の一部が固形化することがある。
スプレーガンの口径は、0.5〜0.8mmであることが好ましい。これにより、保護層用塗布液をスプレー塗布したときの霧化状態を制御することができる。
スプレーガンの吐出量は、5〜25cc/分であることが好ましい。吐出量が5cc/分未満であると、生産性が低下することがあり、25cc/分を超えると、保護層用塗布液に含まれる溶媒が電荷輸送層22b又は感光層12に含まれる第一の樹脂を過度に溶解又は膨潤させ、σがD/5を超えることがある。
スプレーガンの吐出圧は、1.0〜3.0kg/cm2であることが好ましい。吐出圧が1.0kg/cm2未満であると、保護層用塗布液をスプレー塗布したとき、液滴が不均一になることがあり、3.0kg/cm2を超えると、保護層用塗布液をスプレー塗布したとき、液滴が跳ね返ることがある。
スプレーガンと感光層12又は22が形成された導電性支持体11の距離は、3〜15cmであることが好ましい。この距離が3cm未満であると、保護層用塗布液をスプレー塗布したときの霧化状態が不安定になることがあり、15cmを超えると、保護層用塗布液の付着効率が低下することがある。
導電性支持体11がドラム状である場合、導電性支持体11の回転数は、120〜640rpmであり、ガン送り速度は、5〜40mm/秒であることが好ましい。これにより、感光層12又は22が形成された導電性支持体11に、スパイラル状の異常構造が発生することを抑制できる。
ガン送り1回あたりの保護層13の膜厚は、0.5〜2.0μmであることが好ましい。ガン送り1回あたりの保護層13の膜厚が0.5μm未満であると、生産性が低下することがあり、2.0μmを超えると、保護層用塗布液に含まれる溶媒が電荷輸送層22b又は感光層12に含まれる第一の樹脂を過度に溶解又は膨潤させ、σがD/5を超えることがある。なお、ガン送り1回あたりの塗布膜の膜厚とは、保護層13の膜厚を、スプレーガンを送った回数で割った値である。
保護層用塗布液を塗布する方法としては、スプレーコート法に限定されず、浸漬塗布法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等が挙げられる。
本発明において、感光層12、電荷発生層22a、電荷輸送層22b、保護層13、下引き層31の塗布液には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤、分散安定剤、沈降防止剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、艶消し剤等をさらに含んでいてもよい。中でも、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を、一般式(1)で表される化合物と組み合わせることにより感光体の耐久性をさらに向上させることができる。このため、感光層12又は22は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をさらに含むことが好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2'−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
アミン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−エチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジオクチルジフェニルアミン、4,4'−ジオクチルジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
硫黄系酸化防止剤としては、特に限定されないが、3,3−チオジプロピオン酸ジラウリル、3,3−チオジプロピオン酸ジトリデシイル、3,3−チオジプロピオン酸ジミリスチル、3,3−チオジプロピオン酸ジステアリル、3,3−チオプロピオン酸ラウリルステアリル、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキル(C12〜C14))チオプロピオネート)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
図5に、本発明の画像形成装置の一例を示す。画像形成装置100において、感光体101は、ドラム状である。感光体101は、除電ランプ102を用いて除電された後、帯電器103を用いて、正(又は負)に帯電させ、イレーサ104を用いて、不要な電荷を除去する。次に、露光器(不図示)を用いて、帯電した感光体101に光Lを照射し、正(又は負)の静電潜像が形成された後、現像器105を用いて、静電潜像をトナーで現像し、トナー像が形成される。このとき、負(又は正)極性のトナーで現像すると、ポジ画像が形成され、正(又は負)極性のトナーで現像すると、ネガ画像が形成される。さらに、感光体101に形成されたトナー像は、転写前帯電器106を用いて帯電された後、レジストローラ107から供給された転写紙Pに、転写帯電器108を用いて転写される。トナー像が転写された転写紙Pは、分離帯電器109を用いて帯電された後、分離爪110を用いて感光体101から分離される。一方、感光体101に残留したトナーは、クリーニング前帯電器111を用いて帯電された後、クリーニングブラシ112及びクリーニングブレード113を用いて、感光体101から除去される。クリーニングブラシ112としては、特に限定されないが、ファーブラシ、マグファーブラシ等を用いることができる。
帯電器103、転写前帯電器106、転写帯電器108、分離帯電器109、クリーニング前帯電器111としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等を用いることができる。また、除電ランプ102、イレーサ104、露光器(不図示)の光源としては、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等を用いることができる。このとき、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等を用いてもよい。
図6に、画像形成装置100の変形例を示す。画像形成装置200において、感光体201は、エンドレスベルト状であり、駆動ローラ201a及び201bを用いて駆動される。感光体201は、除電ランプ202を用いて除電された後、帯電器203を用いて帯電される。次に、露光器204を用いて、帯電した感光体201に光を照射し、静電潜像が形成された後、現像器(不図示)を用いて、静電潜像をトナーで現像し、トナー像が形成される。さらに、感光体201に形成されたトナー像は、転写帯電器205を用いて、転写紙(不図示)に転写される。一方、感光体201に残留したトナーは、クリーニング前露光器206を用いて露光された後、クリーニングブラシ207を用いて、感光体201から除去される。このとき、クリーニング前露光器206は、感光体201の導電性支持体の側に配置されており、導電性支持体は、透光性を有する。
帯電器203、転写帯電器205としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等を用いることができる。また、除電ランプ202、露光器204、クリーニング前露光器206の光源としては、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等を用いることができる。このとき、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等を用いてもよい。
なお、クリーニング前露光器206は、感光体201の感光層の側に配置されていてもよい。また、除電ランプ202及び露光器204は、感光体201の導電性支持体の側に配置されていてもよい。さらに、帯電した感光体201を露光する前にプレ露光してもよいし、感光体201に形成されたトナー像を転写する前に露光してもよい。
このような画像形成装置は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよい。このとき、画像形成装置は、画像形成装置の本体に着脱自在なプロセスカートリッジを有していてもよい。
図7に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ300は、ドラム状の感光体301、帯電器302、露光器303、現像器304及びクリーニングブラシ305を有する。
図8に、画像形成装置100の変形例として、フルカラー画像形成装置400を示す。ドラム状の感光体401は、図中、反時計回りに回転駆動されながら、除電ランプ402を用いて除電された後、帯電器403を用いて帯電される。次に、露光器(不図示)を用いて、帯電した感光体401に光Lを照射し、静電潜像が形成される。このとき、フルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の情報に分解した単色の画像情報に基づいて、単色の静電潜像が形成される。このため、リボルバ現像ユニット404が配設されている。リボルバ現像ユニット404は、ドラム状の筺体の中に、イエロー現像器404Y、マゼンタ現像器404M、シアン現像器404C及びブラック現像器404Bを有しており、筐体が回転することにより、各色の現像器を感光体401に対向する現像位置に順次移動させる。このようにして、感光体401に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの静電潜像が順次形成された後、リボルバ現像ユニット404を用いて、各色のトナーで順次現像し、各色のトナー像が形成される。感光体401に形成された各色のトナー像は、感光体401と中間転写ベルト405が接触する中間転写ニップで、中間転写バイアスローラー405aのバイアスにより、中間転写ベルト405に順次転写されて重ね合わされ、フルカラートナー像が形成される。このとき、中間転写ベルト405は、中間転写バイアスローラー405a、バックアップローラ405b、ベルト駆動ローラ405c及び張架ローラ405dにより張架されており、ベルト駆動ローラ405cの回転駆動により、図中、時計回りに無端移動される。なお、感光体401に残留したトナーは、クリーニングユニット406を用いて、除去される。クリーニングユニット406は、クリーニングバイアスが印加されるクリーニングローラ406aを用いて、トナーを除去する。
一方、レジストローラ407は、給紙カセット(不図示)から搬送されてきた転写紙Pを、中間転写ベルト405に形成されたフルカラートナー像に重ね合わせられるタイミングで、中間転写ベルト405と転写ベルト408が接触する2次転写ニップに搬送する。中間転写ベルト405に形成されたフルカラートナー像は、2次転写ニップで、バイアスローラー408aのバイアスにより、転写紙Pに転写される。このとき、転写ベルト408は、ベルト駆動ローラ408b、張架ローラ408c及び408dにより張架されており、ベルト駆動ローラ408bの回転駆動により、図中、反時計回りに無端移動される。
フルカラートナー像が転写された転写紙Pは、転写ベルト408を用いて、搬送ベルト409に搬送される。搬送ベルト409は、転写紙Pを定着器410内に搬送する。定着器410は、加熱ローラ410aとバックアップローラ410bが接触する定着ニップに転写紙Pを挟み込みながら搬送し、転写紙Pにフルカラートナー像が定着される。
なお、転写ベルト408及び搬送ベルト409には、転写紙Pを吸着させるためのバイアスが印加されている。また、転写紙Pを除電する帯電器(不図示)や、中間転写ベルト405、転写ベルト409及び搬送ベルト409を除電する3つの帯電器(不図示)が配設されている。さらに、中間転写ベルト405は、クリーニングユニット406と同様の構成のクリーニングユニット(不図示)を備えており、中間転写ベルト405に残留したトナーが除去される。
帯電器403、転写紙Pを除電する帯電器や、中間転写ベルト405、転写ベルト409及び搬送ベルト409を除電する3つの帯電器としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等を用いることができる。また、除電ランプ402、露光器の光源としては、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等を用いることができる。このとき、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等を用いてもよい。
図9に、画像形成装置400の変形例として、タンデム方式の画像形成装置500を示す。画像形成装置500は、各色の感光体401、除電ランプ402、帯電器403、現像器504及びクリーニングユニット405を備えている以外は、画像形成装置400と略同一の構成である。
以下、本発明を実施例により説明するが、これにより、本発明の態様が限定されるものではない。なお、部は、質量部を意味する。
[実施例1]
アルキッド樹脂ベッコゾール1307−60−EL(大日本インキ化学工業社製)3部、メラミン樹脂スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製)2部、酸化チタンCR−EL(石原産業社製)20部及びメチルエチルケトン100部からなる下引き層用塗布液を調製した。
化学式
で表されるビスアゾ顔料5部、ポリビニルブチラールXYHL(UCC社製)1部、2−ブタノン100部及びシクロヘキサノン200部からなる電荷発生層用塗布液を調製した。
ビスフェノールZ型ポリカーボネート1部、化学式
で表される電荷輸送物質(A)1部及びテトラヒドロフラン10部からなる電荷輸送層用塗布液を調製した。
電荷輸送物質(A)3部、化学式(1−1)で表される化合物0.3部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部、テトラヒドロフラン150部及びシクロヘキサノン60部からなる保護層用塗布液を調製した。
外径が40mm、長さが340mmであるアルミニウム製の導電性支持体に、下引き層用塗布液を浸漬塗布した後、加熱乾燥し、膜厚が3.5μmである下引き層を形成した。
下引き層が形成された導電性支持体に、電荷発生層用塗布液を浸漬塗布した後、加熱乾燥し、膜厚が0.2μmである電荷発生層を形成した。
電荷発生層が形成された導電性支持体に電荷輸送層用塗布液を浸積塗布した後、加熱乾燥し、膜厚が20μmである電荷輸送層を形成した。
電荷輸送層が形成された導電性支持体を回転させながら、スプレーガンA−100(明治機械社製)を用いて、保護層用塗布液を以下の塗布条件で塗布し、130℃で20分間乾燥して、保護層を形成し、感光体を得た。
塗布条件
吐出量:16cc/分
吐出圧:3.0kg/cm2
電荷輸送層が形成された導電性支持体の回転数:150rpm
ガン送り速度:17mm/秒
電荷輸送層が形成された導電性支持体とスプレーガンの距離:5cm
塗布回数:3回
[実施例2]
塗布条件のうち、吐出量を18cc/分、吐出圧を2.5kg/cm2、ガン送り速度を14mm/秒に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[実施例3]
塗布条件のうち、吐出量を12.5cc/分、塗布回数を4回に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[実施例4]
塗布条件のうち、吐出量を9cc/分、電荷輸送層が形成された導電性支持体の回転数を120rpm、ガン送り速度を16mm/秒、塗布回数を5回に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[実施例5]
電荷輸送物質(A)3部、化学式(1−1)で表される化合物0.4部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用い、塗布条件のうち、吐出量を15cc/分、吐出圧を2.0kg/cm2、電荷輸送層が形成された導電性支持体の回転数を250rpm、ガン送り速度を18mm/秒に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[実施例6]
塗布条件のうち、吐出量を8cc/分、吐出圧を3.0kg/cm2、電荷輸送層が形成された導電性支持体の回転数を180rpm、ガン送り速度を16mm/秒、塗布回数を5回に変更した以外は、実施例5と同様にして、感光体を得た。
[実施例7]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−2)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例8]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−3)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例9]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−4)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例10]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−5)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例11]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−6)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例12]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−7)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例13]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−8)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[実施例14]
化学式(1−1)で表される化合物の代わりに、化学式(1−9)で表される化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例1]
電荷輸送物質(A)3.3部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部、テトラヒドロフラン150部及びシクロヘキサノン60部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例2]
電荷輸送物質(A)3部、化学式
で表される酸化防止剤(A)0.3部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部、テトラヒドロフラン150部及びシクロヘキサノン60部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例3]
電荷輸送物質(A)3.2部、酸化防止剤(A)0.1部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部、テトラヒドロフラン150部及びシクロヘキサノン60部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例4]
電荷輸送物質(A)3.25部、酸化防止剤(A)0.05部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部、テトラヒドロフラン150部及びシクロヘキサノン60部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例5]
電荷輸送物質(A)3.4部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例6]
電荷輸送物質(A)3部、化学式
で表される酸化防止剤(B)0.4部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例7]
電荷輸送物質(A)3.2部、酸化防止剤(B)0.1部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例8]
電荷輸送物質(A)3.25部、酸化防止剤(B)0.05部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例9]
電荷輸送物質(A)3.28部、酸化防止剤(B)0.02部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部、テトラヒドロフラン170部及びシクロヘキサノン50部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。
[比較例10]
塗布条件のうち、吐出量を26cc/分、吐出圧を2.5kg/cm2、ガン送り速度を10mm/秒、塗布回数を1回に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。得られた感光体の表面は、スパイラル状となった。
[比較例11]
塗布条件のうち、吐出量を24cc/分、ガン送り速度を10mm/秒、塗布回数を1回に変更した以外は、実施例5と同様にして、感光体を得た。得られた感光体の表面は、スパイラル状となった。
[比較例12]
電荷輸送物質(A)3部、化学式(1−1)で表される化合物0.3部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、シリカ微粒子KMPX100(信越化学工業社製)3部及びテトラヒドロフラン92部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を、リングコート法を用いて、塗布速度3.0mm/秒で塗布した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例13]
電荷輸送物質(A)3部、化学式(1−1)で表される化合物0.4部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート4部、アルミナ微粒子AA03(住友化学社製)3部及びテトラヒドロフラン90部からなる保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を、リングコート法を用いて、塗布速度3.0mm/秒で塗布した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[比較例14]
ビスフェノールA型ポリカーボネート1部、電荷輸送物質(A)1部及びジクロロメタン12部からなる電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を用いて、膜厚が22μmである電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。得られた感光体は、感光層と保護層が不連続な層構造を有していた。
[比較例15]
ビスフェノールA型ポリカーボネート1部、電荷輸送物質(A)1部及びジクロロメタン12部からなる電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を用いて、膜厚が22μmである電荷輸送層を形成した以外は、実施例6と同様にして、感光体を得た。得られた感光体は、感光層と保護層が不連続な層構造を有していた。
[比較例16]
保護層を形成せず、電荷輸送層の膜厚を28μmとした以外は、実施例1と同様にして、感光体を得た。
[感光層と保護層の層構造の観察]
ミクロトームを用いて、実施例及び比較例の感光体を、感光層及び保護層の膜厚方向に切断した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2000倍に拡大し、切断面のSEM写真を撮影し、保護層の最大膜厚の平均値D及び標準偏差σを求めた。評価結果を表1に示す。なお、σ≦D/7であるものを◎、D/7<σ≦D/5であるものを○、D/5<σであるものを×として、判定した。
[A/Bの測定]
下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層が形成された導電性支持体を回転させながら、実施例及び比較例の塗布条件で保護層用塗布液を塗布した後、保護層用塗布液を塗布した環境で60分間放置し、加熱乾燥することにより、A/Bを求めた。評価結果を表1に示す。
[画像形成]
実施例及び比較例の感光体を、デジタルフルカラー複写機ImagioMPC5000(リコー社製)のブラックステーションに搭載し、22℃、50%RHの環境下で、16万枚の通紙試験(A4横、連続通紙、画像面積7%)を行い、初期、8万枚、16万枚通紙時の画像(ハーフトーン、ベタ画像の端部、画像流れ)、ベタ画像を形成する際の露光部の電位、摩耗量を評価した。
画像は、日本画像学会発行テストチャートNO.3を用いて、画像を出力し、目視及び光学顕微鏡観察を用いて評価した。評価結果を表2に示す。なお、ハーフトーンは、非常に良好なものを◎、ややザラツキ感があるものを○、全体的にざらつき感があるものを△、画像ムラがあるものを×として、判定した。また、ベタ画像の端部は、良好なものを○、端部にやや太りが見られるものを△、ちりが見られるものを×として、判定した。さらに、画像流れは、良好なものを○、文字太りが見られるものを△、全体的に画像流れが発生しているものを×として、判定した。
露光部の電位は、表面電位計Model344(Trek社製)を用いて、測定した。評価結果を表3に示す。
摩耗量は、Fisherscope渦電流式膜厚計MMSを用いて、感光体の20点の膜厚の平均値を測定し、初期に対する膜厚の減少量を求めた。評価結果を表3に示す。
なお、比較例14及び15の感光体は、それぞれ2500枚及び3200枚通紙時に、保護層が剥離したため、通紙試験を中止した。また、比較例16の感光体は、8万枚通紙時の摩耗量が大きいため、通紙試験を中止した。
以上のことから、実施例の感光体は、耐摩耗性に優れ、画像流れを抑制できることがわかる。