JP2011028218A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】保護層形成による感度の低下が抑制された電子写真感光体を提供する。
【解決手段】基体1と、感光層2と、酸素及びガリウムを含有する保護層3あって、外周面側に存在する第1の領域31、及び、前記第1の領域31よりも前記基体1に近い側に存在し、前記第1の領域31に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域32を有する保護層3と、をこの順に有する電子写真感光体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
電子写真法は、複写機やプリンター等に幅広く利用されている。
近年、電子写真法を利用した画像形成装置に使用される電子写真感光体(以下、「感光体」と称す場合がある)に関し、該感光体の感光層表面に表面層(保護層)を設ける技術が検討されている。
例えば、シリコンを主体とする非単結晶からなる光導電層を有する電子写真感光体であって、表面層にフッ化マグネシウムを主成分として含有させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、導電性基板上に有機感光層を形成し、この有機感光層上に特定の条件による触媒CVD法によりアモルファスシリコンカーバイドからなる表面保護層を成膜形成した電子写真感光体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、感光体の表面層として、アモルファス炭素中にガリウムを含有する表面層(例えば、特許文献3参照)や、ダイヤモンド結合を有するアモルファス窒化炭素を含む表面層(例えば、特許文献4参照)、非単結晶の水素化窒化物半導体を含む表面層(例えば、特許文献5参照)が知られている。
更には、酸素と13族元素とを含み最表面における酸素の含有量が15原子%を超える表面層(例えば、特許文献6参照)、酸素と13族元素とを含み元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.5以下である表面層(例えば、特許文献7参照)が知られている。
特開2003−29437号公報 特開2003−316053号公報 特開平2−110470号公報 特開2003−27238号公報 特開平11−186571号公報 特開2006−267507号公報 特開2008−268266号公報
本発明の課題は、保護層が、外周面側に存在する第1の領域よりも原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域を有しない場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制された電子写真感光体を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
基体と、
感光層と、
酸素及びガリウムを含有する保護層であって、外周面側に存在する第1の領域、及び、前記第1の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域を有する保護層と、
をこの順に有する電子写真感光体。
請求項2に係る発明は、
前記第2の領域は、原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.30以上1.50以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項3に係る発明は、
前記第2の領域が、更に、亜鉛を含有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4に係る発明は、
前記保護層の層厚が、1.0μm以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項5に係る発明は、
前記保護層は、前記第2の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記感光層に接し、前記第2の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい第3の領域を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項6に係る発明は、
前記保護層は、前記第1の領域である第1の層と、前記第2の領域である第2の層と、を有し、前記第1の層と前記第2の層との間に、原子数比〔酸素/ガリウム〕が前記第1の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以上であり前記第2の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以下である中間層を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項7に係る発明は、
前記第1の領域の外周面側表面における微小硬度が2GPa以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項8に係る発明は、
前記第1の領域を構成する元素のうち、ガリウム及び酸素の全元素量に対する各構成比の和が0.70以上であり、且つ前記第1の領域における原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.1以上1.5以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項9に係る発明は、
前記保護層の層厚が、1.5μm以上である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項10に係る発明は、
前記第2の領域の外周面側表面における微小硬度が、前記第1の領域の外周面側表面における微小硬度よりも高い請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項11に係る発明は、
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段から選択された少なくとも1つと、を備えたプロセスカートリッジ。
請求項12に係る発明は、
請求項1〜請求項10のいずれか1項に電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
請求項1に係る発明によれば、保護層が、外周面側に存在する第1の領域よりも原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域を有しない場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、第2の領域の原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.30以上1.50以下の範囲外である場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、第2の領域が亜鉛を含有しない場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、保護層の層厚が1.0μm未満である場合と比較して、耐久性が向上し、かつ、保護層形成による感度の低下が抑制される。
請求項5に係る発明によれば、前記第2の領域よりも前記基体に近い側に、前記第2の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい第3の領域を有しない場合と比較して、繰り返し使用時における残留電位が低減される。
請求項6に係る発明によれば、保護層が本構成を有しない場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制される。
請求項7に係る発明によれば、第1の領域の外周面側表面における微小硬度が2GPa以上でない場合と比較して、偏磨耗の発生が抑制される。
請求項8に係る発明によれば、第1の領域を構成する元素のうち、ガリウム及び酸素の全元素量に対する各構成比の和が0.70未満及び/又は第1の領域における原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.1以上1.5以下でない場合と比較して、偏磨耗の発生が抑制される。
請求項9に係る発明によれば、保護層の層厚が1.5μm以上でない場合と比較して、打痕状の傷の発生が抑制される。
請求項10に係る発明によれば、第2の領域の外周面側表面における微小硬度が第1の領域の外周面側表面における微小硬度以下である場合と比較して、打痕状の傷の発生が抑制される。
請求項11に係る発明によれば、電子写真感光体が本構成を有しない場合と比較して、電子写真感光体の感度の低下に起因する画像濃度の低下が抑制される。
請求項12に係る発明によれば、電子写真感光体が本構成を有しない場合と比較して、電子写真感光体の感度の低下に起因する画像濃度の低下が抑制される。
本実施形態の電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の電子写真感光体の層構成の別の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の電子写真感光体の層構成の別の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の電子写真感光体の層構成の別の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の電子写真感光体の保護層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図である。 本実施形態の電子写真感光体の保護層の形成に用いるプラズマ発生装置の例を示す概略模式図である。 本実施形態のプロセスカートリッジの基本構成の一例を示す概略構成図である。 本実施形態の画像形成装置の基本構成の一例を示す概略構成図である。 実施例における休止後のプリント画像の評価においてプリントするチャートの説明図である。
以下、本発明の電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置の実施形態について、詳細に説明する。
<電子写真感光体>
本実施形態の電子写真感光体は、基体と、感光層と、酸素及びガリウムを含有する保護層であって、外周面側に存在する第1の領域、及び、前記第1の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕(以下、「原子数比〔O/Ga〕」とも表記する)が大きい第2の領域を有する保護層と、をこの順に有する。
即ち、上記保護層は、層厚方向についての原子数比〔酸素/ガリウム〕の分布において、外周面側に存在する第1の領域と、前記第1の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域と、を有する構成となっている。
上記保護層は、必要に応じ、第1の領域及び第2の領域以外の領域を有していてもよい。
一般に、電子写真感光体の感光層表面に、酸素及びガリウムを有する保護層を形成すると、保護層形成により電子写真感光体の感度が低下する傾向がある。特に、前記保護層において、原子数比〔酸素/ガリウム〕を小さくし、層の抵抗を低くし残留電位を小さくすると、可視域全体での光吸収のため層が着色し、感度の低下が大きくなる傾向がある。
ところが、今回検討した結果、酸素及びガリウムを含む領域(第2の領域)の基体から離れた側に、相対的に原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい領域(第1の領域)を配置させることで、保護層形成による感度の低下が抑制されることが明らかとなった。この原因については、第1の領域が電荷注入領域としての機能を有し、第2の領域が電荷輸送領域としての機能を有する結果、残留電位を低減でき同時に光吸収が低下するため、と推測される。ただし、本実施形態はこの原因によって限定されることはない。
従って電子写真感光体を、上記本実施形態の構成とすることにより、保護層が、外周面側に存在する第1の領域よりも原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域を有しない場合と比較して、保護層形成による感度の低下が抑制される。
更に、上記本実施形態の構成とすることにより、残留電位が低減される。
本実施形態において、第1の領域及び第2の領域は、それぞれ、隣接する領域との界面が明確であっても、隣接する領域との界面が不明確であってもよい。
以下、隣接する領域との界面が明確である場合の第1の領域を「第1の層」といい、隣接する領域との界面が明確である場合の第2の領域を「第2の層」という。
即ち、前記保護層は、外周面側に存在する第1の層と、前記第1の層よりも基体に近い側に存在し、前記第1の層に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の層と、を有する形態であってもよい。
また、保護層が前記第1の層と前記第2の層とを有する場合、前記第1の層と前記第2の層との間に、原子数比〔酸素/ガリウム〕が、前記第1の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以上であり前記第2の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以下である中間層を有する形態が好ましい。
中間層を有する形態によれば、保護層形成による残留電位増加および感度の低下がより低減される。この原因は、第1の層から第2の層への電荷の輸送がより効果的に行われるためと推定される。但し、本形態はこの原因によって限定されることはない。
本実施形態において、保護層の組成や、原子数比〔酸素/ガリウム〕は、層厚方向の分布も含め、例えば、ラザフォードバックスキャタリング(RBS)により求める。
RBSは、例えば、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いる。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは109°である。
RBS測定は、具体的には以下のようにして行う。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定してもよい。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度が向上する。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素により決まる。
測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて層厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
なお、本実施形態のように感光層上に第2の領域と第1の領域とが連続して形成されている場合でも、上記測定方法により表層部分(第1の領域)の破壊を抑制しつつ、第1の領域、第2の領域の各々の元素組成が測定される。
また、保護層全体中における各元素の含有量については、例えば、二次電子質量分析法やXPS(X線光電子分光法)で測定する。
また、本実施形態における保護層は、必要に応じ、第1の領域及び第2の領域以外のその他の領域を有していてもよい。
例えば、前記第2の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記第2の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい第3の領域を有していてもよい。
第3の領域を有する形態では、保護層の層厚方向についての原子数比〔酸素/ガリウム〕の分布は、外周面側の第1の領域から、一旦、原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きくなり(第2の領域)、再び原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さくなる(第2の領域より感光層に近い第3の領域)、そして感光層に至る分布となる。
前記第3の領域を有する形態によれば、繰り返し使用時における残留電位が抑制される。即ち、電子写真感光体の繰り返し特性が向上する。この原因については、繰り返し使用により感光層で生じた正孔を、第3の領域に注入するためと推測される。但し、本形態はこの原因によって限定されることはない。
また、前記第3の領域は、他の領域との界面が明確な、第3の層であってもよい。
また、一般に、保護層の層厚を厚くすると電子写真感光体としての耐久性が向上する反面、保護層形成による感度の低下が大きくなる傾向がある。
本実施形態における保護層は、前述の通り、保護層形成による感度の低下を抑制する効果を有するため、保護層の層厚が厚い形態に好適である。即ち、本実施形態によれば、層厚を厚くしたときでも、保護層形成による感度の低下が抑制される。
従って、耐久性向上と、保護層形成による感度の低下抑制と、を両立させる観点より、保護層の層厚は1.0μm以上であることが好ましい。さらに、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上が更に好ましく、2.5μm以上が特に好ましい。
尚、保護層の層厚は特に1.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。保護層の層厚が1.5μm以上であることにより、打痕状の傷の発生が抑制される。ここで、上記打痕状の傷とは、トナー以外の異物、例えばキャリアが、感光体と転写体等との間に挟みこまれることによって生じる表面層の凹み状の傷である。一方、保護層の層厚が6.0μm以下であることにより、保護層形成による感度低下と、残留電位上昇と、がより低減される。
電子写真感光体の耐久性の確認方法としては、例えば、画像形成を繰り返し行った際の電子写真感光体の表面の傷の有無を調べる方法が挙げられる(傷が少ない程、耐久性が高い)。
また、画像形成を繰り返し行った際、形成された画像中に、電子写真感光体の表面の傷に起因する白筋状の画像欠陥があるかどうかを調べてもよい(白筋状の画像欠陥が少ない程、耐久性が高い)。
また、保護層における第2の領域は、原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.30以上1.50以下であることが好ましい。
この範囲であれば、第2の領域の着色が抑制され(即ち、透明性が向上し)、紫外から赤外までの波長領域(例えば、350nm以上800nm以下の波長領域)の光の透過率が向上する。その結果、帯電された電子写真感光体を除電するために、感光体外部から光を照射した際、保護層における該光の吸収が抑制される。従って、照射された光が効率よく感光層に到達するため、ひいては、電子写真感光体の感度が向上する。
更に、第2の領域における原子数比〔酸素/ガリウム〕を1.30以上1.50以下としても、第2の領域よりも基体から離れた側には、前述の第1の領域が存在するため、前述のとおり残留電位は抑制される。
また、保護層における第2の領域は、更に、亜鉛(Zn)を含有することが好ましい。
第2の領域が亜鉛を含有することにより、感度の低下がより抑制され、残留電位が更に抑制される。
この原因については、第2の領域に亜鉛を含有させることにより、該第2の領域の電荷輸送性が向上するためと推測される。ただし、本実施形態はこの原因によって限定されない。
残留電位抑制の観点から、第2の領域における亜鉛の含有量は、0.4原子%以上25原子%以下であることが好ましく、0.5原子%以上20原子%以下であることがより好ましく、10原子%以上20原子%以下であることが特に好ましい。
ここで、第2の領域における亜鉛の含有量は、第2の領域が、ガリウムと酸素と亜鉛とを含む場合には、これら3種類(ガリウムと酸素と亜鉛)の合計の原子数に対する亜鉛の原子数の割合(%)である。
また、感度の低下抑制の観点から、第2の領域における原子数比〔酸素/(ガリウム+亜鉛)〕は、1.00以上1.40以下であることが好ましい。
また、感度の低下抑制の観点から、第2の領域における原子数比〔亜鉛/ガリウム〕は、1.00以下であることが好ましく、0.01以上0.50以下であることがより好ましく、0.20以上0.50以下であることが特に好ましい。
感度の低下抑制の観点から、第2の領域における亜鉛の含有量は、0.4原子%以上25原子%以下であることが好ましく、0.5原子%以上20原子%以下であることがより好ましく、1原子%以上15原子%以下であることが特に好ましい。
第1の領域は、その微小硬度が2GPa以上であることが好ましく、更には4GPa以上がより好ましい。また、その上限値は15GPa以下であることが好ましく、更には10GPa以下であることがより好ましい。
上記微小硬度が2GPa以上であることにより、保護層自体の硬さが確保され、現像量に依存した感光体自体の偏摩耗の発生が抑制される。結果、例えば、保護層と下層の有機感光層との屈折率差が大きいことに起因する干渉の効果で、有機感光層への入射光量の変動が抑制され、ハーフトーン濃度のムラが抑制される。
一方、上記微小硬度が15GPa以下であることにより、層が脆くなり過ぎず繰り返し使用による機械的損傷、特にクラックの発生が抑制される。ここで、上記クラックとは、下地と表面層に生じる内部応力や機械的な変形によって生じる亀裂状の傷である。
ここで、微小硬度は、押し込み深さが、30nm以上40nm以下の範囲で行なわれた硬度値を用いる。連続剛性測定法(米国特許第4848141号明細書)により深さプロファイルを求めて、上記押し込み深さでの硬度値であってもよいし、上記範囲になる負荷による負荷−除荷曲線から求めた硬度値であってもよい。測定装置としては、MTSシステムズ社製 Nano Indenter DCMを用いる。圧子としては、ダイヤモンド製正三角錐圧子(Berkovic圧子)を用いる。
第1の領域は、構成する元素のうち、ガリウム及び酸素の全元素量に対する各構成比の和が0.70以上であり、且つ前記第1の領域における原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.1以上1.5以下であることが好ましい。これにより、保護層の硬度(微小硬度)が確保されやすくなり、偏磨耗の発生及びクラックの発生がより抑制される。
また、第2の領域の外周面側表面における微小硬度が、第1の領域の外周面側表面における微小硬度よりも高いことが好ましい。外周面側に存在する第1の領域よりも、より基体に近い側に存在する第2の領域の外周面側表面における微小硬度がより高い構成であることにより、感光体自体の耐傷性がより向上され、打痕状の傷の発生が抑制される。
(電子写真感光体の構成)
以下、本実施形態の電子写真感光体の構成について、図1乃至図4を参照して説明するが、本実施形態は図1乃至図4によって限定されることはない。
図1は、本実施形態の電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
図1中、1は基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2Bは電荷輸送層、3は保護層、31は第1の領域、32は第2の領域を表す。4は下引層である。
図1に示す感光体は、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、保護層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。
保護層3は、外周面側に存在する第1の領域31、及び、前記第1の領域31よりも前記基体1に近い側に存在する第2の領域32を有して構成されている。
図1では、図示の都合上、第1の領域31と第2の領域32との境界が明確となっている(即ち、第1の領域31が第1の層であり、第2の領域32が第2の層である形態となっている)が、この境界は明確であることに限定されない。下記、図2及び図3中の第1の領域31と第2の領域32との境界、図3中の第2の領域32と第3の領域33との境界についても同様である。
図2は、本実施形態の電子写真感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図2中、6は感光層を表し、他は、図1中に示したものと同様である。
図2に示す感光体は、基体1上に、下引層4、感光層6、保護層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層6は、図1に示す電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である。
なお、感光層2及び感光層6は、有機高分子から形成されたものでもよいし、無機材料から形成されたものでもよいし、それらが組み合わされたものでもよい。
図3は、本実施形態の電子写真感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図3中、53は保護層を、31は第1の領域を、32は第2の領域を、33は第3の領域を、それぞれ表し、他は、図1中に示したものと同様である。
図3に示す感光体は、基体1上に、下引層4、感光層2、第3の領域33、第2の領域32、第1の領域31がこの順に積層された層構成を有している。
保護層53は、外周面側に存在する第1の領域31、前記第1の領域31よりも前記基体1に近い側に存在する第2の領域32、及び、第2の領域よりも前記基体1に近い側に存在する第3の領域33、を有して構成されている。
図4は、本実施形態の電子写真感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図4中、63は保護層を、41は第1の層を、42は第2の層を、44は中間層を、それぞれ表し、他は、図1中に示したものと同様である。
図4に示す感光体は、基体1上に、下引層4、感光層2、第2の層42、中間層44、第1の層41がこの順に積層された層構成を有している。
保護層63は、外周面側に存在する第1の層41、前記第1の層41よりも前記基体1に近い側に存在する第2の層42、第1の層41と第2の層42との間に存在する中間層44を有して構成されている。
図4に示す感光体は、更に、感光層2と第2の層42との間に、前述の第3の領域を有していてもよい。
以下、本実施形態の電子写真感光体の構成要素である、保護層、感光層、基体について説明する。
(保護層)
本実施形態における保護層は、前述のとおり、酸素(O)及びガリウム(Ga)を含有する層であり、基体上に設けられた感光層の更に上に設けられる層である。
前記保護層は、例えば、電子写真感光体の表面の傷を抑制すること、研磨バラツキを抑制すること、窒素酸化物などの吸着を抑制すること、オゾンや窒素酸化物による酸化雰囲気に対する耐性を向上すること、等の目的で設けられる層である。保護層は、透明性が高く緻密で硬度に優れた膜であることが好ましい。
本実施形態における保護層は、表面電荷を表面にトラップしても、また内部にトラップするものでもよい。また表面電荷を積極的に注入させるものでもよい。保護層の内部に電荷を注入する場合には有機感光層との界面に電荷がトラップする構成を有することが好ましい。また、負帯電で表面層が電子を注入する場合には正孔輸送層の表面が電荷トラップの機能を果たしてもよいし、電荷注入阻止とトラップのための層を設けてもよい。正帯電性の場合にも同様に構成される。
本実施形態における保護層は、酸素(O)及びガリウム(Ga)を含有する、微結晶膜、多結晶膜、非晶質膜などの非単結晶膜であることが好ましい。
これらの中で非晶質は表面の平滑性で特に好ましいが、微結晶膜は硬度の点でより好ましい。
さらに、保護層の成長断面は柱状構造をとっていてもよいが、滑り性の観点からは平坦性の高い構造が好ましく、非晶質が好ましい。
感光層との密着性を高めつつ、表面の滑りを良くするためには、感光層との界面側の領域(例えば、第2の領域)を微結晶膜とし、表面側の領域(例えば、第1の領域)を非晶質膜としてもよい。
保護層中には、さらに導電型の制御のために、例えば、n型の場合、C、Si、Ge、Snから選ばれる1つ以上の元素を含んでいてもよい。また、例えば、p型の場合、N、Be、Mg、Ca、Srから選ばれる1つ以上の元素を含んでいてもよい。
また、前記保護層は、酸素(O)及びガリウム(Ga)以外に、水素及びハロゲン元素の少なくとも1種を含むことが好ましい。
保護層が、微結晶、多結晶、非晶質の場合には、結合欠陥や転位欠陥や結晶粒界の欠陥などが多くなる傾向があるが、層中に水素やハロゲン元素を含むことで、結合欠陥の不活性化が行われるため好ましい。
水素やハロゲン元素は、結晶内の結合欠陥や結晶粒界の欠陥などに取り込まれ、電気的な補償を行う。このため、光キャリア発生やキャリアの拡散や移動に関係するトラップが少なくなり、反応活性点が少なくなり、より安定な保護層が構成される。
保護層中における「水素及びハロゲン元素の少なくとも1種」の含有量は、5原子%以上25原子%以下であることが好ましく、10原子%以上25原子%以下であることがより好ましい。
保護層中における水素の含有量は、例えば、ハイドロジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することにより求める。また、赤外吸収スペクトルによって推定してもよい。
HFSは、加速器としてNEC社の3SDH Pelletronを用い、エンドステーションとしてCE&A社のRBS−400を用い、システムとしてCE&A社の3S−R10を用いる。
解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いる。
HFSの測定条件は、以下の通りである。
He++イオンビームエネルギー:2.275eV
検出角度160°入射ビームに対してGrazing Angle30°である。
HFS測定は、He++イオンビームに対して検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾う。この時検出器をアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことがよい。定量は参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによっておこなう。参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用する。
白雲母は水素濃度が6.5原子%であることが知られている。
最表面に吸着しているHは、例えば、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって補正を行う。
−第1の領域−
本実施形態における第1の領域は、保護層のうち、外周面側(支持体から離れた側)に存在する領域である。
第1の領域の組成には特に限定はないが、例えば、ガリウム及び酸素を含有する組成が挙げられる。
第1の領域がガリウム及び酸素を含有する場合、原子数比〔O/Ga〕は、1.00以上1.35未満であることが好ましく、1.10以上1.30以下であることがより好ましい。
また、第1の領域は、感光体の感度の低下をより効果的に低減する観点から、水素を含んでいてもよい。
第1の領域における水素の含有量は、5原子%以上25原子%以下が好ましく、10原子%以上25原子%以下がより好ましい。
その他、第1の領域の好ましい形態は、保護層の好ましい形態として前述したとおりである。
第1の領域は、前述のとおり、導電型の制御のためにn型の元素やp型の元素を含むことがあるが、この場合、第1の領域を、電荷注入阻止層としてもよいし、電荷注入層としてもよい。電荷注入層とした場合には、第2の領域や感光層表面で電荷がトラップされる。
負帯電の場合、n型層は電荷注入層として機能し、p型層は電荷注入阻止層として機能する。正帯電の場合、n型層は電荷注入阻止層として機能し、p型層は電荷注入層として機能する。
−第2の領域−
本実施形態における第2の領域は、保護層のうち、前記第1の領域よりも基体に近い側に存在し、前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい領域である。
第2の領域の組成は、前述の通り、ガリウム及び酸素(及び、必要に応じ亜鉛)を含有する組成である。
第2の領域は、更に、感光体の感度の低下をより効果的に低減する観点から、水素を含んでいてもよい。
第2の領域における水素の含有量は、5原子%以上25原子%以下が好ましく、10原子%以上25原子%以下がより好ましい。
その他、第2の領域の好ましい形態は、保護層の好ましい形態として前述したとおりである。
−第3の領域−
第3の領域は、保護層中、必要に応じて設けられる領域であり、前記第2の領域よりも基体に近い側に(好ましくは感光層と接して)存在する領域であり、前記第2の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい領域である。
第3の領域の組成には特に限定はないが、例えば、ガリウム及び酸素を含有する組成が挙げられる。
第3の領域がガリウム及び酸素を含有する場合、原子数比〔O/Ga〕は、1.00以上1.40未満であることが好ましく、1.10以上1.35以下であることがより好ましい。
また、第3の領域は、感光体の感度の低下をより効果的に低減する観点から、水素を含んでいてもよい。
第3の領域における水素の含有量は、5原子%以上25原子%以下が好ましく、10原子%以上25原子%以下がより好ましい。
その他、第3の領域の好ましい形態は、保護層の好ましい形態として前述したとおりである。
−中間層−
中間層は、保護層中、必要に応じて設けられる層であり、保護層が第1の層と第2の層とを有する場合において、前記第1の層と前記第2の層との間に、原子数比〔酸素/ガリウム〕が前記第1の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以上であり前記第2の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以下である組成で設けられる層である。
中間層の組成は、ガリウム及び酸素(及び、必要に応じ亜鉛)を含有する組成である。
中間層は、更に、感光体の感度の低下をより効果的に低減する観点から、水素を含んでいてもよい。
中間層における水素の含有量は、5原子%以上25原子%以下が好ましく、10原子%以上25原子%以下がより好ましい。
その他、中間層の好ましい形態は、保護層の好ましい形態として前述したとおりである。
本実施形態における保護層は、第1の領域、第2の領域、第3の領域、中間層以外にも、必要に応じ、その他の層又は領域を有していてもよい。
(保護層の形成方法)
次に、前述した保護層の形成方法について説明する。
保護層の形成には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、有機金属気相成長法、分子線エキタピシー法、蒸着、スパッタリング等の公知の気相成膜法が利用される。
図5は、本実施形態の電子写真感光体の保護層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図であり、図5(A)は、成膜装置を側面から見た場合の模式断面図を表し、図5(B)は、図5(A)に示す成膜装置のA1−A2間における模式断面図を表す。図5中、10は成膜室、11は排気口、12は基材回転部、13は基材支持部材、14は基体、15はガス導入管、16はガス導入管15から導入したガスを噴射する開口を有するシャワーノズル、17はプラズマ拡散部、18は高周波電力供給部、19は平板電極、20はガス導入管、21は高周波放電管部である。
図5に示す成膜装置において、成膜室10の一端には、不図示の真空排気装置に接続された排気口11が設けられており、成膜室10の排気口11が設けられた側と反対側に、高周波電力供給部18、平板電極19および高周波放電管部21からなるプラズマ発生装置が設けられている。
このプラズマ発生装置は、高周波放電管部21と、高周波放電管部21内に配置され、放電面が排気口11側に設けられた平板電極19と、高周波放電管部21外に配置され、平板電極19の放電面と反対側の面に接続された高周波電力供給部18とから構成されたものである。なお、高周波放電管部21には、高周波放電管部21内にガスを供給するためのガス導入管20が接続されており、このガス導入管20のもう一方の端は、不図示の第1のガス供給源に接続されている。
なお、図5に示す成膜装置に設けられたプラズマ発生装置の代わりに、図6に示すプラズマ発生装置を用いてもよい。図6は、図5に示す成膜装置において利用されるプラズマ発生装置の他の例を示す概略模式図であり、プラズマ発生装置の側面図である。図6中、22が高周波コイル、23が石英管を表し、20は、図5中に示すものと同様である。このプラズマ発生装置は、石英管23と、石英管23の外周面沿って設けられた高周波コイル22とからなり、石英管23の一方の端は成膜室10(図6中、不図示)と接続されている。また、石英管23のもう一方の端には、石英管23内にガスを導入するためのガス導入管20が接続されている。
図5において、平板電極19の放電面側には、放電面と略平行な棒状のシャワーノズル16が接続されており、シャワーノズル16の一端は、ガス導入管15と接続されており、このガス導入管15は成膜室10外に設けられた不図示の第2のガス供給源と接続されている。
また、成膜室10内には、基材回転部12が設けられており、円筒状の基材14が、シャワーノズルの長手方向と基材14の軸方向とが略平行に対面するように基材支持部材13を介して基材回転部12に取りつけられるようになっている。成膜に際しては、基材回転部12が回転することによって、基材14が周方向に回転する。なお、基材14としては、例えば、予め感光層まで積層された感光体、感光層上に第2の領域までが積層された感光体、感光層上に第3の領域までが積層された感光体、等が用いられる。
保護層の形成は、例えば、以下のように実施する。
まず、酸素ガス(または、ヘリウム(He)希釈酸素ガス)、ヘリウム(He)ガス、及び必要に応じ水素(H)ガスを、ガス導入管20から高周波放電管部21内に導入すると共に、高周波電力供給部18から平板電極19に、13.56MHzのラジオ波を供給する。この際、平板電極19の放電面側から排気口11側へと放射状に広がるようにプラズマ拡散部17が形成される。ここで、ガス導入管20から導入されたガスは成膜室10を平板電極19側から排気口11側へと流れる。平板電極19は電極の周りをアースシールドで囲んだものでもよい。
次に、トリメチルガリウムガスをガス導入管15、活性化手段である平板電極19の下流側に位置するシャワーノズル16を介して成膜室10に導入することによって、基材14表面にガリウムと酸素とを含む非単結晶膜を成膜する。
基材14としては、例えば、感光層が形成された基体を用いる。
また、第2の領域として、亜鉛を含む形態の第2の領域を成膜する際には、ガス導入管15から導入するガスとして、例えば、トリメチルガリウムガスと有機亜鉛(例えば、ジメチル亜鉛またはジエチル亜鉛)ガスとを用いる。このとき、トリメチルガリウムと、有機亜鉛と、は別々の容器から気体としてガス導入管15に導入する。
保護層の成膜時の基材14表面の温度は、有機感光層を有する有機感光体を用いる場合には、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、30℃以上100℃以下が特に好ましい。
基材14表面の温度が成膜開始当初は150℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には有機感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、この影響を考慮して基材14の表面温度を制御することが好ましい。
また、アモルファスシリコン感光体を用いる場合には、保護層の成膜時の基材14表面の温度は、例えば、30℃以上350℃以下とされる。
基材14表面の温度は加熱および/または冷却手段(図中、不図示)によって制御してもよいし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基材14を加熱する場合にはヒータを基材14の外側や内側に設置してもよい。基材14を冷却する場合には基材14の内側に冷却用の気体または液体を循環させてもよい。
放電による基材14表面の温度の上昇を避けたい場合には、基材14表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
また、トリメチルガリウムガスの代わりにアルミニウムを含む有機金属化合物やジボラン等の水素化物を用いることもでき、これらを2種類以上混合してもよい。
例えば、保護層の形成の初期において、トリメチルインジウムをガス導入管15、シャワーノズル16を介して成膜室10内に導入することにより、基材14上に窒素とインジウムとを含む膜を成膜すれば、この膜が、継続して成膜する場合に発生し、感光層を劣化させる紫外線を吸収する。このため、成膜時の紫外線の発生による感光層へのダメージが抑制される。
また、保護層には、その導電型を制御するためにドーパントを添加してもよい。
成膜時におけるドーパントのドーピングの方法としては、n型用としてはSiH,SnHを、p型用としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、などをガス状態で使用する。また、ドーパント元素を表面層中にドーピングするには、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用してもよい。
具体的には、例えば、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管15、シャワーノズル16を介して成膜室10内に導入することによって、n型、p型等の導電型の保護層を得る。
図5及び図6を用いて説明した成膜装置では、放電エネルギーにより形成される活性窒素又は活性水素を、活性装置を複数設けて独立に制御してもよいし、NHなど、窒素原子と水素原子を同時に含むガスを用いてもよい。さらにHを加えてもよい。また、有機金属化合物から活性水素が遊離生成する条件を用いてもよい。
このようにすることで、基材14表面上には、活性化された、炭素原子、ガリウム原子、窒素原子、水素原子、等が制御された状態で存在する。そして、活性化された水素原子が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。
このため、三次元的な結合を構成する硬質膜(保護層)が形成される。
図5及び図6に示す成膜装置のプラズマ発生手段は、高周波発振装置を用いたものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波発振装置を用いたり、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式の装置を用いてもよい。また、高周波発振装置の場合は、誘導型でも容量型でもよい。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。プラズマの照射によって基材14表面の温度上昇を抑制するためには高周波発振装置が好ましいが、熱の照射を防止する装置を設けてもよい。
2種類以上の異なるプラズマ発生装置(プラズマ発生手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起されるようにすることが好ましい。また、放電する領域と、成膜する領域(基体が設置された部分)とに圧力差を設けてもよい。これらの装置は、成膜装置内をガスが導入される部分から排出される部分へと形成されるガス流に対して直列に配置してもよいし、いずれの装置も基体の成膜面に対向するように配置してもよい。
例えば、2種類のプラズマ発生手段をガス流に対して直列に設置する場合、図5に示す成膜装置を例に上げれば、シャワーノズル16を電極として成膜室10内に放電を起こさせる第2のプラズマ発生装置として利用される。この場合、例えば、ガス導入管15を介して、シャワーノズル16に高周波電圧を印加して、シャワーノズル16を電極として成膜室10内に放電を起こさせる。あるいは、シャワーノズル16を電極として利用する代わりに、成膜室10内の基材14と平板電極19との間に円筒状の電極を設けて、この円筒状電極を利用して、成膜室10内に放電を起こさせる。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧近傍(70000Pa以上110000Pa以下)で行ってもよい。大気圧近傍で放電を行う場合にはキャリアガスとしてHeを使用することが望ましい。
なお、表面層等の形成に際しては、上述した方法以外にも、通常の有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法が使用されるが、これらの方法による成膜に際しても、活性窒素および/または活性水素、活性酸素を使用することは低温化に有効である。この場合、窒素原料としてはN,NH,NF,N、メチルヒドラジンなどの気体、液体を気化したり、あるいは、キャリアガスでバブリングしたものが利用される。酸素原料としては酸素、HO,CO,CO,NO,NOなどが使用される。
本実施形態における保護層の形成は、例えば、成膜室10に基体上に感光層を形成した基材14を設置し、各々組成の異なる混合ガスを導入して、第2の領域、第1の領域を連続的に形成する。必要に応じ、第2の領域の形成前に第3の領域を形成する。また、必要に応じ、第2の領域と第1の領域との間に中間層を形成する。
また、各領域(または各層)の形成を別個独立に行ってもよい。
また、成膜条件としては、例えば高周波放電により放電する場合、低温で良質な成膜を行うには、周波数として10kHz以上50MHz以下の範囲とすることが好ましい。また、出力は基体の大きさに依存するが、基体の表面積に対して0.01W/cm以上0.2W/cm以下の範囲とすることが好ましい。基体の回転速度は0.1rpm以上500rpm以下の範囲が好ましい。
各領域(または各層)の成膜条件は同一としてもよいが、例えば、第2の領域の形成を低温で行うため出力を低めとし、第1の領域の形成を出力を高めにして行ってもよい。
(基体及び感光層)
感光層は、本実施形態の電子写真感光体において、基体と保護層との間に設けられる層である。
本実施形態の電子写真感光体は、その層構成が、基体上に感光層と保護層とがこの順に積層されたものであれば特に限定されず、基体と感光層の間に必要に応じて下引層等を設けてもよい。また、感光層は、2層以上であってもよく、更に、機能分離型であってもよい。さらに、本実施形態の電子写真感光体は、感光層がシリコン原子を含むいわゆるアモルファスシリコン感光体であってもよい。
アモルファスシリコン感光体の場合には、表層部として本実施形態における保護層を用いれば、高湿時の画像ボケが防止され、耐久性と高画質とが両立される。
特に、感光層が、有機感光材料等の有機材料を含むいわゆる有機感光体であることが好ましい。有機感光体の場合、磨耗が起こりやすいが、表層部に本実施形態における保護層を用いれば、磨耗が抑制される。
まず、本実施形態の電子写真感光体が、有機感光体である場合の好ましい構成について、その概要を説明する。
感光層を形成する有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでもよい。感光層と第1の領域との間に設けられる第2の領域は、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から、第1の領域の物性および感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、第2の領域は、電荷をトラップする領域として機能してもよい。
有機感光体の場合には、感光層は、図1、図3、及び図4に示すように電荷発生層と電荷輸送層に分かれた機能分離型でもよいし、図2に示すように機能一体型であってもよい。機能分離型の場合には感光体の表面側に電荷発生層を設けたものでもよいし、表面側に電荷輸送層を設けたものでもよい。
感光層上に、前述の方法により保護層を形成する場合、熱以外の短波長電磁波の照射により感光層が分解したりすることを防ぐため、感光層表面には、保護層を形成する前に紫外線などの短波長光吸収層を予め設けてもよい。また、短波長光が感光層に照射されないように、保護層を形成する初期の段階で、バンドギャップの小さい層を最初に形成してもよい。感光層側に設けられるバンドギャップの小さい層の組成としては、例えば、Inを含んだ13族元素比はGaIn(1−X)(0≦X≦0.99)が好適である。
また、紫外線吸収剤を含む層(例えば、高分子樹脂に分散させた層を塗布等を利用して形成される層)を感光層表面に設けてもよい。
このように、保護層を形成する前に感光体表面に紫外線吸収剤を含む層を設けることで、保護層を形成するときの紫外線や、画像形成装置内で感光体が使用された場合のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光による感光層への影響が低減される。
次に、本実施形態の電子写真感光体、がアモルファスシリコン感光体である場合の好ましい構成について、その概要を説明する。
アモルファスシリコン感光体は、正帯電用でも負帯電用の感光体でもよい。
例えば、基体上に、電荷注入阻止層(下引層)と、光導電層と、電荷注入阻止表面層と、をこの順に設けたものが使用される。
本実施形態における保護層は、電荷注入阻止表面層上に形成される。
また、感光層の最上層(保護層側の層)としては、例えば、p型アモルファスシリコン層、n型アモルファスシリコン層、Si1−X:H層、Si1−X:H層、Si1−X:H層、アモルファスカーボン層、などが用いられる。
次に、本実施形態の電子写真感光体を構成する基体および感光層の詳細や、必要に応じて設けられる下引層の詳細について、電子写真感光体が機能分離型の感光層を有する有機感光体である場合について説明する。
−基体−
基体としては、導電性基体が用いられる。
なお、本明細書中において「導電性」とは、体積抵抗率が1013Ω・cm未満である性質を指し、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上である性質を指す。
導電性基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、基体の形状は、円筒形であることが好ましい。
また、導電性基体として金属製パイプ基体を用いる場合、当該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておいてもよい。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラが抑制される。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、アルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性基体として用いることが好ましい。
以下、表面に陽極酸化処理を施した導電性基体の製造方法について説明する。
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JISH4080に規定されている合金番号1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm以上4A/dm以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
このようにしてアルミニウム基体上に成膜された陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、皮膜形成後にその物性値が経時的に変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。前記金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、例えば、脱イオンされた洗浄液を用いる。また、多段階の洗浄工程のうち、いずれか1工程において、ブラシ等の接触部材を用いた物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
以上のようにして形成される導電性基体表面の陽極酸化皮膜の膜厚は、3μm以上15μm以下程度の範囲内であることが好ましい。陽極酸化皮膜上には多孔質陽極酸化膜のポーラスな形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は本実施形態の電子写真感光体においては1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体が得られる。
このように得られた導電性基体は、陽極酸化処理により基体上に成膜された陽極酸化皮膜が高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)が抑制されるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象が抑制される。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作製後における物性値の経時変化が抑制される。また、封孔処理後に導電性基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により導電性基体表面に付着した金属塩等が除去され、この導電性基体を用いて作製した感光体を備えた画像形成装置により画像を形成した場合に地汚れの発生が抑制される。
−下引層−
次に、下引層について説明する。下引層を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独または2種以上を混合して用いてもよいし、さらに上述の結着樹脂と混合して用いてもよい。
有機シラン化合物(シリコン原子を含有する有機金属化合物)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましく使用される。
その他、下引層としては、例えば、特開2008−076520号公報中段落0113から段落0136までに記載された下引層等、公知の下引層が用いられる。
−感光層:電荷輸送層−
次に、感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示される。即ち2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物を含む基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用する。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては特に限定はないが、結着樹脂は、特に電荷輸送材料と相溶性を有し適当な強度を有するものであることが望ましい。
この結着樹脂の例として、ビスフェノールAやビスフェノールZ,ビスフェノールC,ビスフェノールTPなどを含む各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用する。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂の分子量は、感光層の層厚や溶剤などの成膜条件によって選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000以上30万以下の範囲内が好ましく、2万以上20万以下の範囲内がより好ましい。
電荷輸送層は、上記電荷輸送材料及び結着樹脂を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布し乾燥することによって形成される。電荷輸送層形成用塗布液の形成に使用される溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル、あるいはこれらの混合溶剤などが用いられる。電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1乃至1:5の範囲内が好ましい。また電荷輸送層の層厚は一般に5μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、10μm以上40μm以下の範囲であることがより好ましい。
電荷輸送層および/または後述する電荷発生層は、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
電荷輸送層は、例えば、上記に示した電荷輸送材料及び結着樹脂を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって形成する。電荷輸送層形成用塗布液の調整に用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2ーブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或るいは直鎖状エーテル等、あるいはこれらの混合溶媒を用いる。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加してもよい。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1乃至1:5であることが好ましい。また電荷輸送層の層厚は一般には5μm以上50μm以下の範囲内とすることが好ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がより好ましい。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布は、感光体の形状や用途に応じて、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法などの塗布法を用いて行う。乾燥は、室温(例えば、20℃以上30℃以下)での指触乾燥の後に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、30℃以上200℃以下の温度域で5分以上2時間の範囲の時間で行うことが望ましい。
その他、電荷輸送層としては、例えば、特開2008−076520号公報中段落0137から段落0150までに記載された電荷輸送層等、公知の電荷輸送層を用いる。
−感光層:電荷発生層−
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型で用いてもよい。
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が好ましい。この場合、感光層に光が照射されると、感光層に含まれるフタロシアニン化合物がフォトンを吸収してキャリアを発生させる。このとき、フタロシアニン化合物は、高い量子効率を有するため、吸収したフォトンを効率よく吸収してキャリアを発生させる。
更にフタロシアニン化合物の中でも、下記(1)から(3)までに示すフタロシアニンがより好ましい。すなわち、
(1)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型のクロルガリウムフタロシアニン。
(3)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型のチタニルフタロシアニン。
これらのフタロシアニン化合物は、特に、光感度が高いだけでなく、その光感度の安定性も高いため、これらフタロシアニン化合物を含む感光層を有する感光体は、高速な画像形成及び繰り返し再現性が要求されるカラー画像形成装置の感光体として好適である。
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断される。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが例示される。
即ち、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂およびその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、質量比で、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。また電荷発生層の厚みは、一般には0.01μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましく0.05μm以上2.0μm以下の範囲内であることがより好ましい。
また電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。電荷発生層に用いられる電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピークリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法が用いられる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いる。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合には、例えば、混合溶媒として結着樹脂を溶かす溶媒を使用する。但し、感光層が、導電性基体側から、電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に形成した層構成を有する場合に、浸漬塗布のように下層を溶解しやすい塗布方法を利用して電荷発生層を形成する際には、電荷輸送層等の下層を溶解しない溶媒を用いることが望ましい。また、比較的下層の侵食性の少ないスプレー塗布法やリング塗布法を利用して電荷発生層を形成する場合には溶媒の選択範囲が広がる。
<プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
次に、本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、本実施形態の電子写真感光体を用いたものであれば特に限定されないが、具体的には、本実施形態の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段から選択された少なくとも1つとを一体として有するものであり、画像形成装置本体に脱着自在である構成を有するものであることが好ましい。
また、本実施形態の画像形成装置は、本実施形態の電子写真感光体を用いたものであれば特に限定されないが、具体的には、本実施形態の電子写真感光体と、この電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段(静電潜像形成手段)と、静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段とを備えた構成を有するものである。なお、本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本実施形態の電子写真感光体であることが好ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
本実施形態のプロセスカートリッジや画像形成装置は、感度の低下が抑制された本実施形態の電子写真感光体を備えるため、電子写真感光体の感度の低下に起因する画像濃度の低下が抑制される。
図7は、本実施形態のプロセスカートリッジの基本構成の一例を示す概略構成図である。
図7に示すプロセスカートリッジ100は、電子写真感光体107とともに、帯電手段108、現像手段111、クリーニング手段113、露光のための開口部105、及び除電器114を取り付け、ケース101、取り付けレール103を用いて組み合せて一体化したものである。そして、このプロセスカートリッジ100は、転写手段112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とを含む画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
図8は、本実施形態の画像形成装置の基本構成の一例を示す概略構成図である。
図8に示す画像形成装置200は、電子写真感光体207と、電子写真感光体207を接触方式により帯電させる帯電手段208と、帯電手段208に接続された電源209と、帯電手段208により帯電される電子写真感光体207を露光する露光手段210と、露光手段210により露光された部分を現像する現像手段211と、現像手段211により電子写真感光体207に現像された像を転写する転写手段212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。
本実施形態のプロセスカートリッジや、画像形成装置の電子写真感光体のクリーニング手段としては特に限定されるものではないが、クリーニングブレードであることが好ましい。クリーニングブレードは、他のクリーニング手段と比べると感光体表面を傷つけ、また、磨耗を促進しやすいものである。しかし、本実施形態のプロセスカートリッジや、画像形成装置においては、感光体として本実施形態の電子写真感光体を用いているため、長期に渡る使用においても、感光体表面の傷の発生や磨耗が抑制される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
〔実施例1〕
≪電子写真感光体の作製≫
まず、以下に説明する手順により、アルミニウム(Al)基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
<下引層の形成>
ジルコニウム化合物(商品名:マツモト製薬社製オルガノチックスZC540)20質量部、シラン化合物(商品名:日本ユニカー社製A1100)2.5質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)10質量部およびブタノール45質量部を攪拌混合して得た溶液を、外径84mmのAl製基体表面に塗布し、150℃10分間加熱乾燥することにより、層厚1.0μmの下引層を形成した。
<電荷発生層の形成>
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬法により下引層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、層厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
<電荷輸送層の形成>
次に、下記構造式(1)で表される化合物を2質量部、および、繰り返し単位が下記構造式(2)で表される高分子化合物(粘度平均分子量:39000)3質量部をクロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を、浸漬法により電荷発生層上に塗布し、110℃で40分間加熱して層厚20μmの電荷輸送層を形成し、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体(以下、「ノンコート感光体(1)」と称す場合がある)を得た。
<保護層の形成>
(第2の層の形成)
ノンコート感光体(1)表面への第2の層の形成は、図5に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体(1)を、成膜装置の成膜室10内の基材支持部材13に載せ、排気口11を介して成膜室10内を、圧力が0.1Paになるまで真空排気した。
次に、He希釈20%酸素ガス(20sccm)、Heガス(100sccm)、及びHガス(500sccm)を、ガス導入管20から直径50mmの電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図6中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットしチューナでマッチングを取り電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、トリメチルガリウムガス(3sccm)を、ガス導入管15を介してシャワーノズル16から成膜室10内のプラズマ拡散部17に導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室10内の反応圧力は40Paであった。
この状態で、ノンコート感光体(1)を100rpmの速度で回転させながら120分間成膜し、ノンコート感光体(1)の電荷輸送層表面に層厚3.5μmの第2の層を形成した。
(第1の層の形成)
次に、高周波放電を停止し、He希釈20%酸素ガスの流量を1sccmに変更した後、再び高周波放電を開始した。
この状態で、第2の層を形成したノンコート感光体(1)を100rpmの速度で回転させながら30分間成膜し、第2の層上に、層厚0.3μmの第1の層を形成した。
以上により、ノンコート感光体(1)の電荷輸送層上に、保護層として、第2の層及び第1の層をこの順に有する電子写真感光体(保護層付き電子写真感光体1)を得た。
なお、保護層(第2の層及び第1の層)の成膜に際しては、ノンコート感光体(1)の加熱処理は行わなかった。また、成膜時の温度をモニターするために、成膜前に予めノンコート感光体の表面に貼り付けておいた温度測定用ステッカー(Wahl社製、テンプ・プレート P/N101)の色を、第1の層の成膜後に確認したところ、45℃であった。
また、第1の層の層厚及び第2の層の層厚は、以下の分析用試料膜を用いて、触針段差測定によって求めた。
分析用試料膜を形成する基板としては、5mm×10mmにカットされた厚さ400μmのSiウェハーを用いた。
前記Siウェハー表面の一部にポリイミド製粘着テープを貼り付け、該粘着テープを貼り付けた側の面に、前記第1の層の成膜と同条件にて、第1の層の分析用試料膜を形成した。
次に、粘着テープを剥がし、前記Siウェハー表面に、非着膜部(粘着テープを貼り付けた箇所)と、着膜部(粘着テープを貼り付けていない箇所)と、を設けた。
次に、非着膜部と着膜部との段差を、触針段差測定器(東京精密社製サーフコム550A)により測定し、第1の層の層厚を求めた。
第2の層の層厚も、第1の層の層厚と同様の方法によって求めた。
(第1の層の分析・評価)
厚さ300μmのSi基板上に、前記第1の層の成膜と同条件にて分析用の試料膜を形成した。
形成された第1の層(試料膜)について、膜の組成をラザフォード・バック・スキャタリング(RBS)とハイドロジェン・フォワードスキャタリング(HFS)とを用いて測定した。
原子数比〔O/Ga〕及び水素含有量(GaとOとHとの総原子数に対するHの原子数の比率;原子%)は表1に示すとおりであった。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第1の層は非晶質であることがわかった。
更に、第1の層(試料膜)の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
次に、厚さ0.5mmの石英基板上に、前記第1の層の成膜と同条件にて試料膜を形成し、目視で着色を確認したところ、第1の層は薄い茶色に着色していた。
また、石英基板上に成膜した第1の層について、780nmにおける透過率を、紫外−可視自記分光光度計(日立社製)により測定したところ、95%であった。
(第2の層の分析・評価)
第1の層の分析・評価と同様の手法により、第2の層の分析・評価を行った。
原子数比〔O/Ga〕及び水素含有量(GaとOとHとの総原子数に対するHの原子数の比率;原子%)は表1に示すとおりであった。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
また、紫外−可視吸収測定を行った結果、第2の層のバンドギャップは4.4eVであった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は透明であり、780nmにおける透過率は、95%であった。
≪評価≫
上記で作製した、保護層付き電子写真感光体1について以下の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
<残留電位>
まず、上述の保護層形成前の電子写真感光体(ノンコート感光体(1))と、保護層付き電子写真感光体1と、に対して、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用い、感光体の表面を走査しながら40rpmで回転させながら、スコロトロン帯電器により−700Vに負帯電させた状態で照射した後の、表面の残留電位を測定した。
その結果、ノンコート感光体(1)の残留電位が−10Vであるの対し、保護層付き感光体1の残留電位は−70V以下であった。
<保護層形成による感度の低下>
まず、保護層付き電子写真感光体1に対して、上述の方法によりスコロトロン帯電器により−700Vに負帯電させた。
次に、負帯電した保護層付き電子写真感光体1に対し、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を照射して除電を行い、単位光量当りの電位減衰率(V・m/mJ)を求め、保護層付き電子写真感光体1の感度A(V・m/mJ)とした。
保護層付き電子写真感光体1の感度の測定と同様にして、保護層形成前の電子写真感光体(ノンコート感光体(1))の感度B(V・m/mJ)を測定した。
下記式1により保護層形成による感度の低下率を求めた。
保護層形成による感度の低下率(%)=((感度B−感度A)/感度B)×100
・・・式1
次に、露光用の光の波長を400nmから800nmまで100nm間隔で変化させ、各波長について、保護層形成による感度の低下率(%)を求めた。
以上で得られた、各波長における感度の低下率(%)から、下記評価基準に従って、保護層形成による感度の低下を評価した。
−評価基準−
A:波長領域全域にわたり、保護層形成による感度の低下率は10%未満であり、保護層形成による感度の低下が抑制されていた。
B:波長領域全域にわたり、保護層形成による感度の低下率が、10%以上30%未満であるが、保護層形成による感度の低下が、実用上の許容範囲内であった。
C:波長800nmにおける感度の低下率が30%以上35%以下であり、保護層形成による感度の低下が実用上の許容範囲内であった。
D:波長800nmにおける感度の低下率が35%を超えており、保護層形成による感度の低下が実用上の許容範囲を超えていた。
<繰り返し画質評価>
保護層付き電子写真感光体1を、富士ゼロックス社製DocuCentre Color 500に取り付けて、高温高湿環境(28℃、80%RH)下で、連続2万枚のプリントテストを行い、以下の評価を行った。
なお、画質評価を行うためのリファレンスとして、ノンコート感光体(1)についてもDocuCentre Color 500に取り付けて、同様の画像を形成した。
(白筋)
画像上の白筋欠陥を2万枚プリント終了後の画像について評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
A:白筋状の画像欠陥は全く見られない。
B:感光体の傷に起因すると考えられる白筋状の画像欠陥がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:感光体の傷に起因すると考えられる白筋状の画像欠陥が見られる多数見られ、実用上の許容範囲を超えていた。
(画像濃度)
1000枚プリント後に、エリアカバレッジ100%のベタ画像を100枚連続で印画し、得られた画像について、下記評価基準に従って画像濃度を評価した。
−評価基準−
A:100枚を超えて印画後も画像濃度低下が全くみられない。
B:90枚を超えて100枚以下において、印画後に画像濃度低下がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:70枚を超えて90枚以下において、印画後に画像濃度低下がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
D:70枚以下において、一見して画像濃度低下が起こっており、実用上許容範囲を超えていた。
(画像ボケ)
画像ボケは、2万枚プリント後に、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部分のみを水拭きした。
その後、ハーフトーン画像(画像密度30%)をプリントし、ハーフトーン画像中に感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応するような濃度差の有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:濃度差の有無が全くみられない。
B:濃度差の有無がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:一見して濃度差が確認でき、実用上の許容範囲を超えていた。
(傷)
2万枚プリントテスト後の感光体表面を目視により観察し、表面の傷の有無を調べた。
評価基準は以下のとおりである。
−評価基準−
A:表面の傷が全くみられない。
B:表面の傷がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:一見して表面の傷が確認でき、実用上の許容範囲を超えていた。
<繰り返し使用時の残留電位(RP)の増加>
まず、上記画質評価における2万枚のプリントテスト前に、保護層付き電子写真感光体1について、波長780nmにおける残留電位を測定した。
次に、上記画質評価における2万枚のプリントテスト後に、保護層付き電子写真感光体1について、波長780nmにおける残留電位を測定した。
これらの結果に基づき、繰り返し使用時の残留電位の増加(増加率(%))を、下記評価基準に従って評価した。
なお、下記表3および表4中では、残留電位を「RP」と表記する。
−評価基準−
A:2万枚のプリントテストによる残留電位の増加が10%未満であり、繰り返し使用時の残留電位の低下が抑制されていた。
B:2万枚のプリントテストによる残留電位の増加が10%以上30%未満であり、繰り返し使用時の残留電位の増加が、実用上の許容範囲内であった。
C:2万枚のプリントテストによる残留電位の増加が30%以上であり、繰り返し使用時の残留電位の増加が、実用上の許容範囲を超えていた。
<休止後のプリント画像の評価>
保護層付き電子写真感光体1を、富士ゼロックス社製DocuCentre Color 500に取り付けて、高温高湿環境(28℃、80%RH)下で、図9に示した、A3用紙52に帯状のベタ画像部54を有するチャート(以下「走行チャート」という)を連続1万枚プリントし、電源を落とした。12時間放置後、電源を入れA3全面30%ハーフトーン画像を10枚プリントした。このハーフトーン画像10枚に関して、1枚目と10枚目の画像サンプルの面内画像濃度に差がないかどうか、目視で判定した。評価基準は以下の通りである。
A:1枚目の画像サンプル、10枚目の画像サンプルともに濃度差はみられない。
B:1枚目の画像サンプルにはわずかな濃度差があるが問題にならない程度であり、10枚目の画像サンプルには濃度差はみられない。
C:1枚目の画像サンプルには濃度差が問題になる程度であり、10枚目の画像サンプルにはわずかな問題にならない程度の濃度差がある。
D:1枚目の画像サンプルにも10枚目の画像サンプルにも問題になる程度の濃度差がある。
<偏磨耗の発生>
感光体における偏磨耗の発生の有無について、以下の試験を行い評価を行った。
上記休止後のプリント画像の評価テストが終わった感光体を、目視で観察し、図9に示す走行チャートのベタ画像部に対応する位置とそれ以外の位置とで、膜に見られる光干渉色の違いの有無を判断した。
<打痕状の傷の発生>
感光体における打痕状の傷の発生の有無について、以下の試験を行い評価を行った。
キーエンス社製マイクロスコープVHX−100に、ユニバーサルズームレンズを組み合わせて、400倍の倍率で、上記休止後のプリント画像の評価テストが終わった感光体の走行チャートのソリッド画像(画像)位置とソリッド画像部以外(非画像)位置とで、各々10視野観察し、打痕状の傷をカウントし、単位面積あたりの平均打痕密度を得た。尚、評価基準は以下の通りである。
A:画像位置/非画像位置とも打痕状の傷がまったくみられない
B:非画像位置には打痕がまったくみられないが、画像位置では打痕が密度100個/mm未満ある
C:非画像位置では打痕が密度100個/mm未満あり、画像位置では打痕が100個/mm以上ある
D:非画像位置でも画像位置でも打痕が密度100個/mm以上ある
〔実施例2〕
実施例1中、第2の層の形成において、He希釈20%酸素ガスの流量を10sccmに変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体2を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は薄く黄色に着色しており、780nmにおける透過率は85%であった。
〔実施例3〕
実施例1中、第2の層の形成において、He希釈20%酸素ガス(20sccm)、Heガス(100sccm)、及びHガス(500sccm)を、He希釈20%酸素ガス(7sccm)及びHeガス(200sccm)に変更し、さらに、成膜時間を180分間に変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体3を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は薄く茶色に着色しており、780nmにおける透過率は70%であった。
〔実施例4〕
実施例3中、第2の層の形成において、成膜時間を60分間に変更した以外は実施例3と同様にして保護層付きの電子写真感光体4を作製し、実施例3と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層はうすく黄色に着色しており、780nmにおける透過率は80%であった。
〔実施例5〕
実施例1中、第2の層の形成において、He希釈20%酸素ガスの流量を40sccmに、トリメチルガリウムガス(3sccm)をトリメチルガリウムガス(2.4sccm)及びジエチル亜鉛(0.6sccm)に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体5を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は透明であり、780nmにおける透過率は95%であった。
〔実施例6〕
実施例5中、第2の層の形成において、トリメチルガリウムガス(2.4sccm)及びジエチル亜鉛(0.6sccm)を、トリメチルガリウムガス(2.1sccm)及びジエチル亜鉛(0.9sccm)に変更した以外は実施例5と同様にして保護層付きの電子写真感光体6を作製し、実施例5と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は透明であり、780nmにおける透過率は95%であった。
〔実施例7〕
実施例5において、ノンコート感光体(1)の代わりに、以下のようにして作製したノンコート感光体(2)を用いた以外は実施例5と同様にして保護層付きの電子写真感光体7を作製し、実施例5と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
得られた保護層付きの電子写真感光体は、粘着テープによっても保護層が剥離せず、接着性は良好であった。表面性も、保護層形成前であるノンコート感光体(2)の表面よりも平滑で、かつ、すべりが良かった。
−ノンコート感光体(2)の作製−
Al基体上に、3μmのn型のSiの電荷注入阻止層と、20μmのi型アモルファスシリコン光導電層と、0.5μmのp型のSiの電荷注入阻止表面層と、をこの順にプラズマCVDにより形成し、負帯電型のアモルファスシリコン感光体であるノンコート感光体(2)を作製した。
〔実施例8〕
実施例1中、第2の層の形成後であって第1の層形成前に、中間層を形成した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体8を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
ここで、中間層の成膜条件は、He希釈20%酸素ガスの流量を8sccmに変更し、成膜時間を層厚0.1μmとなるように変更した以外は第2の層と同様の条件である。
〔実施例9〕
実施例1中、ノンコート感光体(1)表面への第2の層の形成前に、ノンコート感光体(1)表面へ第3の層を形成した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体9を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
なお、中間層の成膜条件は、He希釈20%酸素ガスの流量を8sccmに変更し、成膜時間を層厚0.05μmとなるように変更した以外は第2の層と同様の条件である。
〔実施例10〕
実施例1中、第1の層の形成において、トリメチルガリウムガスの流量を6sccmに、He希釈20%酸素ガスの流量を1.5sccmに、成膜時間を20分に変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体10を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第1の層は非晶質であることがわかった。
更に、第1の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第1の層は薄く茶色に着色しており、780nmにおける透過率は93%であった。
〔実施例11〕
実施例1中、第1の層の形成において、トリメチルガリウムガスの流量を9sccmに、He希釈20%酸素ガスの流量を2.0sccmに、成膜時間を15分に変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体11を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第1の層は非晶質であることがわかった。
更に、第1の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第1の層は薄く茶色に着色しており、780nmにおける透過率は92%であった。
〔実施例12〕
実施例1中、第2の層の形成において、成膜時間を38分に変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体12を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は透明で、780nmにおける透過率は95%であった。
〔実施例13〕
実施例1中、第2の層の形成において、トリメチルガリウムガスの流量を6sccmにし、成膜時間を80分に変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体13を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線が見られず、第2の層は非晶質であることがわかった。
更に、第2の層の表面はステンレス鋼で擦っても傷がつかなかった。
石英基板上に形成された第2の層は薄く黄色に着色しており、780nmにおける透過率は92%であった。
〔比較例1〕
実施例1中、第2の層の形成において、He希釈20%酸素ガスの流量を1sccmに、成膜時間を240分間に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体C−1を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、石英基板上に成膜した第2の層(分析用の試料膜)は、茶色く着色しており、780nmにおける透過率は40%であった。
〔比較例2〕
実施例1中、第1の層の形成において、He希釈20%酸素ガスの流量を2sccmに変更し、かつ、第2の層の形成において、He希釈20%酸素ガスの流量を1sccmに成膜時間を180分間に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして保護層付きの電子写真感光体C−2を作製し、実施例1と同様の分析及び評価を行った。
分析及び評価の結果を下記表に示す。
また、石英基板上に成膜した第2の層(分析用の試料膜)は、茶色く着色しており、780nmにおける透過率は50%であった。
上記表に示すように、保護層の構成を、最表面を含む第1の領域と前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域とを有する構成とした実施例1乃至実施例13では、保護層形成による感度の低下が抑制されており、感度低下に伴う画像濃度低下も抑制されていた。
また、実施例1乃至実施例13では、残留電位も低減されていた。
一方、比較例1及び比較例2では、感度が著しく低下しており、画像濃度が低かった。
また、比較例1及び比較例2は、成長速度(成膜速度)も遅く、生産性も低いことがわかった。
1 基体
2 感光層
2A 電荷発生層
2B 電荷輸送層
3、53、63 保護層
4 下引層
10 成膜室
11 排気口
12 基材回転部
13 基材支持部材
14 基材
15、20 ガス導入管
16 シャワーノズル
17 プラズマ拡散部
18 高周波電力供給部
19 平板電極
21 高周波放電管部
22 高周波コイル
23 石英管
31 第1の領域
32 第2の領域
33 第3の領域
41 第1の層
42 第2の層
44 中間層
100 プロセスカートリッジ
107、207 電子写真感光体
108、208 帯電手段
111、211 現像手段
112、212 転写手段
113、213 クリーニング手段
114、214 除電器
115、215 定着装置
200 画像形成装置
210 露光手段

Claims (12)

  1. 基体と、
    感光層と、
    酸素及びガリウムを含有する保護層であって、外周面側に存在する第1の領域、及び、前記第1の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記第1の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が大きい第2の領域を有する保護層と、
    をこの順に有する電子写真感光体。
  2. 前記第2の領域は、原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.30以上1.50以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記第2の領域が、更に、亜鉛を含有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記保護層の層厚が、1.0μm以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記保護層は、前記第2の領域よりも前記基体に近い側に存在し、前記感光層に接し、前記第2の領域に比べて原子数比〔酸素/ガリウム〕が小さい第3の領域を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記保護層は、前記第1の領域である第1の層と、前記第2の領域である第2の層と、を有し、前記第1の層と前記第2の層との間に、原子数比〔酸素/ガリウム〕が前記第1の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以上であり前記第2の層の原子数比〔酸素/ガリウム〕以下である中間層を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記第1の領域の外周面側表面における微小硬度が2GPa以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  8. 前記第1の領域を構成する元素のうち、ガリウム及び酸素の全元素量に対する各構成比の和が0.70以上であり、且つ前記第1の領域における原子数比〔酸素/ガリウム〕が1.1以上1.5以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  9. 前記保護層の層厚が、1.5μm以上である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  10. 前記第2の領域の外周面側表面における微小硬度が、前記第1の領域の外周面側表面における微小硬度よりも高い請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段から選択された少なくとも1つと、を備えたプロセスカートリッジ。
  12. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
    前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
    を備えた画像形成装置。
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