JP5125393B2 - 電子写真用感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置 - Google Patents
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Description
一方、近年、接触帯電方式が広く使用されているが、この方式においても感光体の磨耗が加速される場合がある。
また、電子写真方式の画像形成装置の像保持体としては、近年、低コストであることから有機感光体が幅広く用いられている。しかし、有機感光体を感光体として用いた場合には、表面に接触して配置されたクリーニングブレードとの摩擦により摩耗するため、無機感光体に比べて寿命が短いことが問題である。
また、この感光体の保護層を構成する材料のひとつとして、発明者等は既に、13族元素と酸素とを含む材料を提案している。これらの材料を保護層とする電子写真用感光体は、繰り返し使用において摩耗がほとんどなく、さらに電子写真用感光体として繰り返し使用したときに高い撥水性を長期にわたって維持するため、放電生成物の付着による画質低下などの問題の発生を抑制することができる(例えば、特許文献4参照)。
高速応答性の電子写真用感光体としては、アモルファスシリコン等の無機半導体を利用した無機感光体が知られているが、高帯電性、高感度化にも対応できる点では高速応答性を有する有機感光体の開発が望まれている。
本発明者らはこの点に着目し、電荷輸送層を構成する材料として高分子電荷輸送性材料を用いれば、高速応答性を有する有機感光体が実現できるものと考えた。しかし、分子中に含まれる活性部が多いため電子写真装置内で様々な酸化雰囲気では酸化劣化が進みやすく、感光体の寿命が短いという問題が有った。
しかし、この有機感光体について本発明者らが鋭意検討したところ、この表面層を有機感光層の上に作製直後に電気特性を測定してみると、感光層内部に電荷が蓄積することによって残留電位が発生すると共に帯電除電の繰り返しによってこの残留電位がサイクルアップする。この残留電位は、放置によって徐々に減衰しあるいは感光体の使用と共に徐々に減衰することを確認した。この残留電位の発生および減衰は、感光体の繰り返し使用に伴い画像の濃度変化を招くことになる。
請求項1に係わる発明は、
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、
前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、0.9以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
前記表面層における前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、前記表面層の最表面側ほど大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、
且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
請求項2に記載の発明によれば、作製直後においても残留電位がより抑制された電子写真用感光体が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、より寿命の長い電子写真用感光体が提供される。
請求項4に記載の発明によれば、高速応答性により優れ、且つ、電気特性の環境変動依存性の小さい電子写真用感光体が提供される。
請求項5に記載の発明によれば、高速応答性により優れ、且つ、電気特性の環境変動依存性の小さい電子写真用感光体が提供される。
請求項7に記載の発明によれば、高速応答性を有し、寿命が長く、且つ、作製直後においても残留電位の殆ど無く、サイクルアップの無い電子写真用感光体を用いた画像形成装置が提供される。
本実施形態の電子写真用感光体は、基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする。
さらに、表面層として、13族元素、酸素及び水素を含む無機膜が感光層表面に形成されるため、優れた耐擦性を有する。加えて、無機膜は、画像形成装置内で発生したオゾンや窒素酸化物などの酸化性ガスに対するバリア性にも優れるため、高分子電荷輸送性材料の酸化劣化を抑制し、長期に渡って電気特性が安定で高速応答性も維持される。ゆえに、感光体の電気的・機械的寿命が長くなる。
また、酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることが必要であるが、0.9以上1.4以下とすることが好ましく、1.0以上1.4以下とすることがより好ましい。特に、元素組成比(酸素/13族元素)を1.0 以上1.35以下とすることにより、作製直後において発生する残留電位がより抑制される。
また、「酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)」を求めるために、後述するRBS(ラザフォードバックスキャタリング)測定を行う場合、最表面から深さ10nmの範囲を除いた領域で得られた測定値を利用する。
以下、まず本実施形態の電子写真用感光体の層構成の態様をより説明する。
本実施形態の電子写真用感光体の層構成は、基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層に積層されたものであれば特に限定されない。なお、必要に応じて、基体および感光層間に下引層を設けたり、表面層および感光層間に中間層を設けることができる。
本実施形態の感光体は、その層構成が基体上に感光層と表面層とがこの順に積層されたものである。感光層は、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する。電荷発生層は有機材料から形成され、これに含まれる有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでも良い。
また、感光層および表面層間に、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。中間層は、表面層の物性および感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、中間層を設ける場合には、中間層は、電荷をトラップする層として機能しても良い。
このように、表面層を形成する前に感光体表面に中間層を設けることで、表面層を形成するときの紫外線や、画像形成装置内で感光体が使用された場合のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光による感光層への影響が抑制される。
以下、各層についてより詳細に説明する。
表面層に含まれる13族元素としては、具体的には、Al,Ga,Inから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を用いることができる。二つ以上の元素を含むこともできる。
RBSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いた。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは109°±2°である。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定しても良い。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度を向上できる。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。 測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて膜厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
HFSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400を用い、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いた。HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle30°
参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用した。白雲母は水素濃度が6.5原子%±1原子%であることが知られている。なお、最表面に吸着しているHは、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって行うことができる。また、2次イオン質量分析法(SIMS)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光(AES)、蛍光X線元素分析(EDS)、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)、電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)、電子線エネルギー損失分光(EELS)などが挙げられるがこれらに限ったものではない。また、これらは単独、または2つ以上組み合わせて用いてもよい。
次に、表面層の形成方法について説明する。表面層の形成に際しては、感光層上に直接13族元素や酸素を含むように形成することができる。また感光層の表面をプラズマでクリーニングしても良い。
表面層の形成は、一般公知の薄膜形成方法を用いることができる。なお、有機感光層に表面層を形成する場合、基板の被成膜面である感光層の温度が150℃以下であることが好ましい。中でもプラズマCVDは、感光層表面に、本実施形態の無機薄膜を接着性よく形成できること、本実施形態の組成範囲の無機薄膜を原料の供給量により制御性良く形成すること、低温での形成が可能であること、などの点で好適である。その他には、触媒CVD、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、分子線堆積法などを用いることができるが、これらに限られるものではない。
図3中、10は成膜室、11は排気口、12は基体回転部、13は基体ホルダー、14は基体、15は電極、16はガス導入管、17はガスノズル、18はガス導入管、19は高周波電力供給部、20は高周波電源部である。
なお、基体14としては、予め感光層まで積層された感光体、あるいは、感光層上に中間層までが積層された感光体が用いられる。
なお、形成される膜中に含まれるガリウムと酸素との元素組成比を制御するためには、成膜室10に導入する酸素ガスとトリメチルガリウムガスとの比率を調整する。
放電による基体14表面の温度の上昇を避けたい場合には、基体14表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
具体的には、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管16、電極15を介して成膜室10内に導入することによってn型、p型等任意の導電型の表面層を得ることができる。
例えば、図3に示す成膜装置において、水素ガスと酸素ガスとを別々の位置から成膜装置内に導入する場合には、水素ガスの活性化状態と、酸素ガスの活性化状態とを各々独立して制御できるように、複数のプラズマ発生装置を設けてもよい。また、これに対して、装置の簡素化という点では、水素および酸素ガスの供給材料として、酸素と水素を同時に含むH2O等のガスを用いたり、酸素ガスと水素ガスを混合したガスを用いて、プラズマにより活性化することが好ましい。
また、キャリアガスとしてヘリウムなどの希ガスや、水素を組み合わせて用いれば、ヘリウムなどの希ガスと水素による基体14表面で成長している膜のエッチング効果により100℃以下の低温でも高温成長時と同等の水素の少ない非晶質の13族元素と酸素とを主に含む表面層を形成できる。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。プラズマの照射によって基体14表面の温度が上昇しないようにするためには高周波発振装置が好ましいが、熱の照射を防止する装置を設けても良い。
また、基体14の周りには複数の電極を設けても良いし、複数のガスノズルを設けても良い。さらに電極とガスノズルとを一対として設けても良い。
例えば、2種類のプラズマ発生手段をガス流に対して直列に設置する場合、図3に示す成膜装置を例に上げれば、ガスノズル17を電極として成膜室10内に放電を起こさせる第2のプラズマ発生装置として利用できる。この場合、ガス導入管18を介して、ガスノズル17に高周波電圧を印加して、ガスノズル17を電極として成膜室10内に放電を起こさせることができる。
次に、感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
電荷輸送層には、高分子電荷輸送性材料が含まれ、必要に応じてその他各種の添加剤が含まれていてもよい。電荷輸送層中には、高分子電荷輸送性材料が50質量%以上含まれていることが好ましく、80質量%以上含まれていることがより好ましく、高速応答性の観点からは、電荷輸送層が高分子電荷輸送性材料のみから構成されていることが好ましい。高分子電荷輸送性材料の含有量が50質量%未満では、十分な高速応答性と低残留電位との両立が得られなくなる場合がある。
なお、従来の有機感光体を構成する電荷輸送層には、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤が用いられていたが、本実施形態の感光体では、雰囲気ガスのバリア性の高い表面層が設けられているため、酸化防止剤を用いる必要がない。このため、酸化防止剤の添加を省くことができる分だけ、本来の電荷輸送層性を発現でき、高速応答性に優れる。
ベンゾフェノン系光安定剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを必要に応じて添加することもできる。
なお、電荷輸送層の膜厚は一般に5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
高分子電荷輸送性材料としては、電荷輸送機能を有する活性部を高分子中に結合させた分子構造を有する電荷輸送性の高分子材料であれば特に限定されない。
高分子電荷輸送性材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの電荷輸送性物質を活性部として高分子中に結合させた分子構造を有する電荷輸送性の高分子材料が挙げられる。これらの高分子電荷輸送性材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
この場合、分子中に占める一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造(但し、ベンゼン環の両サイドに結合する−(O)l−(T)m−で示される部分を除いた構造)の質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
質量割合が、50質量%未満では、分子中に含まれる活性部の割合が少なくなりすぎるため、高速応答性が得られなくなる場合がある。なお、質量割合の上限は特に限定されないが、大き過ぎる場合は、高分子電荷輸送性材料の合成自体が困難となるため実用上は95質量%以下であることが好ましい。
すなわち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、芳香環同士が炭素―炭素結合によって結合している炭化水素を表す。具体的には、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また、「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、芳香環同士が1対の炭素原子を共有している炭化水素を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
これらの中でも、置換もしくは未置換のビフェニル基、置換もしくは未置換のターフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基、置換もしくは未置換のフルオレニル基、置換もしくは未置換のフェナントレニル基、または置換もしくは未置換のピレニル基が好適である。
なお、Zの欄が「−」であるものは一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示し、その他は一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示す。以下、各化合物番号を付した具体例、例えば、15の番号を付した具体例は「例示化合物(15)」という。
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
(1)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、
(3)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン。
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性(500Ω/□以下、以下同様)の金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS H4080(2006)に規定されている合金番号1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm2以上4A/dm2以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
本実施形態の感光体には、必要に応じて、基体および感光層間に下引層を設けることができる。
下引層を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独または2種以上を混合したり、さらに上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
なお、樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウェットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成の画像形成装置に用いられる感光体では、レーザ入射光は感光体の極表面近傍で吸収され、さらに感光層中で散乱されるため、下引層の表面粗さの調整は強くは必要とされない。
これらの添加物は、単独で用いることもできるが、複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることもできる。
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物粒子表面に全面隙間無く均一にカップリング剤を吸着させられる。次に、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって粒子を漏れなく均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けの効果によりカップリング剤を硬化させ金属酸化物粒子と堅固な化学反応を起こさせる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
中でも下引層上に形成される層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子と結着樹脂との比率は所望する感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
この分散型下引層用塗布剤により下引層を形成する方法は、上述した下引層用塗布剤を用いて下引層を形成する方法と同様に行うことができる。
中間層としては、例えば、帯電器により感光体表面を帯電させる際に、帯電電荷が感光体表面から対抗電極である感光体の基体にまで注入して帯電電位が得られなくなることを防止するために必要に応じて表面層および電荷発生層間に電荷注入阻止層を形成することができる。
電荷注入阻止層の材料としては上記に列挙したシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いることができる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001μm以上5μm以下程度で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して設定される。
次に、本実施形態の感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、本実施形態の感光体と、この感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、トナー像を転写媒体(記録媒体または中間転写体)に転写した後の感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、トナー像を転写媒体に転写した後の感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とする。
なお、画像形成装置には、トナー像を転写した後の感光体表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレード等の除去手段など、その他公知の手段が設けられていてもよい。また、トナー像の転写は、感光体から記録媒体へと直接転写する方式であってもよいが、中間転写ベルト等の中間転写体を介して感光体から記録媒体へと転写する中間転写方式であってもよい。本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応して感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよい。
図4に示すように、本実施形態の画像形成装置82は、所定方向(図4中、矢印D方向)に回転する電子写真用感光体80を備えている。電子写真用感光体80の周囲には、電子写真用感光体80の回転方向に沿って、帯電装置(帯電手段)84、露光装置(露光手段)86、現像装置(現像手段)88、転写装置(転写手段)89、除電装置81、及びクリーニング部材87が設けられている。
転写装置89は、電子写真用感光体80上に形成されたトナー像を、電子写真用感光体80および転写装置89間で記録媒体83を挟持搬送することにより、記録媒体83に転写する。記録媒体83に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって記録媒体83表面に定着される。
まず、以下に説明する手順により、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
平均粒径70nmの酸化亜鉛(テイカ社製)100質量部をテトラヒドラフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、焼き付けを行いシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛顔料を得た。
前記表面処理した酸化亜鉛60質量部とアリザリン0.6質量部と硬化剤ブロック化イソシアネート(スミジュール3173:住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(BM−1:積水化学社製)15質量部とをメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジウラレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145:GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引層塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材(直径84mm、長さ330mm)上に塗布し、170℃40分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬法により下引層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
例示化合物(19)7質量部を、モノクロロベンゼン38質量部に溶解し、得られた塗布液を、電荷発生層が形成されたAl製円筒基板上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃において1時間加熱乾燥、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。これにより有機感光体(ノンコート感光体)を得た。
ノンコート感光体表面への表面層の形成は、図3に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して成膜室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、HeガスとHe希釈5%酸素ガスとメタンガスとを図示しない混合装置にて混合したガスをガス導入管16を介して、長さ350mmの電極15内に512sccm(Heガス350sccm、水素ガス150sccm、He希釈5%酸素4sccm,メタンガス 8sccm導入し、高周波電力供給部19および高周波電源部20により、13.56MHzのラジオ波を出力150Wにセットしチューナでマッチングを取り電極15で放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、トリメチルガリウムガス(TMGガス)をガス導入管18を介してガスノズル17から成膜室10内に、2.0sccmとキャリアガスとして水素50sccmを導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室10内の反応圧力は30Paであった。
主要な感光体作製条件を表58に示す。
Al箔上に形成された表面層の組成をラザフォード・バック・スキャタリングを用いて測定した。ガリウムと酸素元素はガリウム1.0に対して、酸素は0.974の比であった。酸素は表面層全体に分布しており、表面層中に含まれる水素はハイドロジェン・フォワードスキヤタリング法で測定し全体の20at%含まれることが分かった。ガリウムと酸素と水素と炭素のみから構成されており、ガリウムと酸素と水素の全体に占める割合は0.96であった。表面層の元素組成を表59に示す。
以上の分析・評価結果から、ノンコート感光体表面に形成された表面層は、非晶質膜で、水素を含んだ酸化ガリウムであることが分かった。
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、表面層の形成から1日後に、常温常湿環境(25℃、50RH%)にて、表面層形成前のノンコート感光体、基体表面に貼り付けて固定したAl箔上に形成した表面層、および、表面層を設けた感光体について、それぞれ40rpmで回転させながら、スコロトロン帯電器(富士ゼロックス社製、DocuCentre Color 500用の帯電器(スコロトロン帯電器))により帯電処理した。なお、これら3つのサンプルに対する帯電処理は、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。
その結果、Al箔上に形成した表面層の帯電電位は、膜厚1μm当たりに換算すると、−10V/μmであることが確認された。またノンコート感光体の帯電電位は−700V、残留電位は−10V、表面層を設けた感光体の帯電電位は−700V、残留電位は−50Vであった。なお、表面層を設けた感光体の残留電位は、Al箔上に形成した表面層の帯電電位と比較して感光層部よりも40V高いだけであった。続いて100回の帯電露光除電を繰り返した時の残留電位の上昇幅(ΔVr)は−20Vであった
さらに、上記帯電・露光処理から2週間後に、残留電位を測定したところ、ノンコート感光体の残留電位は−10V、表面層を設けた感光体の残留電位は−10Vであった。
このことから、帯電・露光処理から1週間経過した後は、残留電位が−10Vで安定することがわかった。
表面層が形成された感光体を、画像形成装置(富士ゼロックス社製、DocuCenter Color500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。続いて、この感光体を取り出して、帯電処理を、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。帯電後の帯電電位V0(100K)と、露光後の残留電位Vr(100K)とを各々測定した。結果を表60に示す。
表面層を形成してから1週間経過した後に、表面層を設けた感光体について、帯電処理を、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。
但し、環境条件は、高温高湿環境(28℃、80%RH)および低温低湿環境(10℃、15%RH)とした。また、帯電、露光を連続的に実施し、露光から現像器が位置すると想定した場所に設置した電位測定器(電位測定プローブとしてModel 555P−1(トレック社製)を、表面電位計としてModel 334(トレック社製)を用いた)により、残留電位を測定した。この時、感光体の回転速度を変えることにより、露光位置から電位測定器が位置するまでの感光体表面の移動時間を30msおよび200msの2水準とし、各々の移動時間における残留電位を測定した。
なお、ΔVr(H/H)、ΔVr(L/L)は、これらの値が小さいほど、感光体の応答性が高いことを意味し、ΔVr(H/H)とΔVr(L/L)との差が小さいほど、応答性の環境依存性が小さいことを意味する。
表面層が形成された感光体を、画像形成装置(富士ゼロックス社製、Docucenter Color500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。続いて、この感光体を取り出して「感光体作製後の高速応答性の評価」の場合と同様の評価を実施して、ΔVr(H/H)、ΔV(L/L)を測定した。結果を表60に示す。なお、使用した画像形成装置は、スコロトロン帯電器を備えたものである。
感光体を画像形成装置(富士ゼロックス社、DocuCetre Color 500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。その後、感光体表面の10点平均粗さ(Rz)を、表面粗さ計(東京精密(株)製Surfcom1400A)により測定した。結果を表60に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
○:Rzが3.0μm以下。
△:Rzが3.0μmを超え3.5μm未満。
×:Rzが3.5μm以上(画像上に白筋発生)。
表面層を形成した感光体を画像形成装置(富士ゼロックス社、DocuCetre Color 500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。その後、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部分のみを水拭きした。
その後、ハーフトーン画像(画像密度30%)をプリントし、ハーフトン画像中に感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応する濃度差が目視で確認できるか否かにより判断し、濃度差が一見して容易に確認できる場合は画像ボケが発生しているものと判断した。結果を表60に示す。
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。なお、表面層の成膜時間は、実施例1の感光体と同じの膜厚が得られるように調整した。表面層の組成等を表59に示す。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて評価を行った。結果を表60に示す。
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。表面層の組成等を表59に示す。
なお、形成した表面層は2層構造を有するものである。ここで表58中の「第1層」は、電荷輸送層上に成膜した層を意味し、その膜厚が0.4μmとなるように成膜時間を調整した。また、「第2層」は、第1層目上に成膜した層を意味し、その膜厚が0.1μmとなるように成膜時間を調整した。この2層構造を有する表面層の全膜厚は、実施例1と同じ膜厚とした。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。
実施例1において、表面層の成膜条件を表58に示す条件に変更し、且つ、電荷輸送層を以下に示す手順で形成した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。なお、表面層の成膜時間は、実施例1の感光体と同様の膜厚が得られるように調整した。表面層の組成等を表59に示す。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。
まず、下記構造式(1)で示される化合物(低分子電荷輸送材料)2質量部と、下記構造式(2)で示される高分子化合物(粘度平均分子量:39000)3質量部とを、クロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を浸漬法により電荷発生層表面に塗布し、110℃で40分間加熱して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして電荷輸送層まで形成したノンコート感光体(評価用の感光体)を作製した。続いてこのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。
2 感光層
2A 電荷発生層
2B 電荷輸送層
3 表面層
4 下引層
5 中間層
10 成膜室
11 排気口
12 基体回転部
13 基体ホルダー
14 基体
15 電極
16 ガス導入管
18 ガス導入管
19 高周波電力供給部
20 高周波電源部
80 感光体
81 除電装置
82 画像形成装置
83 記録媒体
84 帯電装置
86 露光装置
87 クリーニング部材
88 現像装置
89 転写装置
Claims (7)
- 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、
前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする電子写真用感光体。 - 前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、0.9以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
- 前記表面層における前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、前記表面層の最表面側ほど大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
- 前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
(一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価のベンゼン環、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環、または、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素を表し、Arは置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、または、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、k,lは0または1を表し、mは0〜3の整数を表す。) - 前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。
(一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。) - 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、
且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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