JP5125393B2 - 電子写真用感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置 - Google Patents

電子写真用感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真用感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置に関するものである。
近年、電子写真法は、複写機やプリンター等の画像形成装置に幅広く利用されている。この電子写真法を利用した画像形成装置に使用される電子写真用感光体(以下、「感光体」と称す場合がある)は、装置内で様々な接触やストレスに曝されるために劣化を招くが、その一方で、画像形成装置のデジタル化やカラー化にともなって高い信頼性が求められている。
例えば、感光体の帯電プロセスに着目した場合、以下の問題がある。まず、非接触帯電方式では、放電生成物が感光体に付着して、画像ぼけなどが発生する。従って、感光体に付着した放電生成物を除去するために、例えば、現像剤中に研磨機能を持つ粒子を混合してクリーニング部でかきとるシステムが採用されたりする。しかしこの場合、感光体表面が磨耗により劣化する。
一方、近年、接触帯電方式が広く使用されているが、この方式においても感光体の磨耗が加速される場合がある。
よって、電子写真用感光体にはさらなる長寿命化が求められている。電子写真用感光体の長寿命化には、耐磨耗性の向上が必要であるため、感光体表面の硬度を大きくすることが求められる。しかしながら、表面の硬度が高いアモルファスシリコンからなる感光体では、放電生成物の付着などが発生し、画像ボケや画像ながれが発生し易く、この現象は特に高湿時に顕著である。
また、電子写真方式の画像形成装置の像保持体としては、近年、低コストであることから有機感光体が幅広く用いられている。しかし、有機感光体を感光体として用いた場合には、表面に接触して配置されたクリーニングブレードとの摩擦により摩耗するため、無機感光体に比べて寿命が短いことが問題である。
上記問題を解決するために、感光体表面に、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)や非晶質窒化炭素(CN)、非晶質窒化珪素などの硬質な膜を表面保護層として形成することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。このように、前記問題の発生を抑制するために、感光体の表面層として炭素系の材料が用いられる場合が多い。
また、この感光体の保護層を構成する材料のひとつとして、発明者等は既に、13族元素と酸素とを含む材料を提案している。これらの材料を保護層とする電子写真用感光体は、繰り返し使用において摩耗がほとんどなく、さらに電子写真用感光体として繰り返し使用したときに高い撥水性を長期にわたって維持するため、放電生成物の付着による画質低下などの問題の発生を抑制することができる(例えば、特許文献4参照)。
一方、近年、電子写真方式を利用した画像形成装置は、その出力の高速性、無版方式、分散機によるオンデマンド性などの特徴を有することから、より高速で出力できる装置のニーズが高い。このニーズに応えるために、高速応答性の感光体が求められており、高移動度の電荷輸送性材料が必要となってきている。
高速応答性の電子写真用感光体としては、アモルファスシリコン等の無機半導体を利用した無機感光体が知られているが、高帯電性、高感度化にも対応できる点では高速応答性を有する有機感光体の開発が望まれている。
この有機感光体の感光層を構成する電荷輸送層には、低分子電荷輸送性材料を高分子樹脂に分散した有機電荷輸送性材料が広く用いられている。一方、電荷輸送性材料として耐熱性や電荷輸送性に優れ、感光体用の電荷輸送性材料としても利用可能な高分子電荷輸送性材料も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
特開平9−101625号公報 特開2003−27238号公報 特開昭58−80647号公報 特開2006−267507号公報 特開2003−268090号公報
電荷輸送層を構成する材料として、低分子電荷輸送性材料を高分子樹脂に分散した有機電荷輸送性材料を用いた場合、高速応答性を得るために樹脂マトリックスに溶解分散させる低分子電荷輸送性材料の濃度を高くすることが好ましい。しかし、高濃度化には限界があり、低分子電荷輸送性材料の濃度が50質量%前後を超えると、低分子電荷輸送性材料が析出するようになる。このため、低分子電荷輸送性材料を用いて有機電子写真感光体の高速応答性を実現することは困難であった。
一方、高分子電荷輸送性材料は、電荷輸送機能を有する活性部を高分子中に結合させた分子構造を有しており、質量割合で高分子電荷輸送性材料中における活性部の割合を50質量%以上の高濃度にすることは極めて容易である。
本発明者らはこの点に着目し、電荷輸送層を構成する材料として高分子電荷輸送性材料を用いれば、高速応答性を有する有機感光体が実現できるものと考えた。しかし、分子中に含まれる活性部が多いため電子写真装置内で様々な酸化雰囲気では酸化劣化が進みやすく、感光体の寿命が短いという問題が有った。
一方、無機材料からなる表面層が絶縁性である場合は、表面層の膜割れ防止等の観点から膜厚を増加させると電気特性に悪影響を及ぼすことがある。すなわち、この絶縁性の表面層では、露光により感光層で発生した電荷が表面層を伝導できずに表面層/感光層界面に留まり、表面の帯電電荷と再結合できない。そして、表面層/感光層界面と表面とにそれぞれ残った電荷は残留電位となる。そして表面層膜厚が大きくなると、この残留電位は大きくなるので、繰り返し使用におけるプリント画像濃度低下などの問題が発生することがある。
また、この無機材料として特許文献4等に例示した13族元素と酸素とを含む材料を挙げることができる。
高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層上に、13族元素と酸素とを含む材料からなる表面層を設けた有機感光体を用いれば、高速応答性や長寿命を実現できる。
しかし、この有機感光体について本発明者らが鋭意検討したところ、この表面層を有機感光層の上に作製直後に電気特性を測定してみると、感光層内部に電荷が蓄積することによって残留電位が発生すると共に帯電除電の繰り返しによってこの残留電位がサイクルアップする。この残留電位は、放置によって徐々に減衰しあるいは感光体の使用と共に徐々に減衰することを確認した。この残留電位の発生および減衰は、感光体の繰り返し使用に伴い画像の濃度変化を招くことになる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高速応答性を有し、寿命が長く、且つ、作製直後においても残留電位の殆ど無く、サイクルアップの無い電子写真用感光体、並びにこれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
請求項1に係わる発明は、
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、
前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
請求項2に係わる発明は、
前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、0.9以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
請求項3に係わる発明は、
前記表面層における前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、前記表面層の最表面側ほど大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
請求項4に係わる発明は、
前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
(一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価のベンゼン環、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環、または、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素を表し、Arは置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、または、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、k,lは0または1を表し、mは0〜3の整数を表す。)
請求項5に係わる発明は、
前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。
(一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。)
請求項6に係わる発明は、
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、
且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
請求項7に係わる発明は、
基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
請求項1に記載の発明によれば、高速応答性を有し、寿命が長く、且つ、作製直後においても残留電位の殆ど無く、サイクルアップの無い電子写真用感光体が提供される。
請求項2に記載の発明によれば、作製直後においても残留電位がより抑制された電子写真用感光体が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、より寿命の長い電子写真用感光体が提供される。
請求項4に記載の発明によれば、高速応答性により優れ、且つ、電気特性の環境変動依存性の小さい電子写真用感光体が提供される。
請求項5に記載の発明によれば、高速応答性により優れ、且つ、電気特性の環境変動依存性の小さい電子写真用感光体が提供される。
請求項6に記載の発明によれば、高速応答性を有し、寿命が長く、且つ、作製直後においても残留電位の殆ど無く、サイクルアップの無い電子写真用感光体を用いたプロセスカートリッジが提供される。
請求項7に記載の発明によれば、高速応答性を有し、寿命が長く、且つ、作製直後においても残留電位の殆ど無く、サイクルアップの無い電子写真用感光体を用いた画像形成装置が提供される。
<<電子写真用感光体>>
本実施形態の電子写真用感光体は、基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする。
前記のように、低分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層上に、13族元素と酸素とを含む材料からなる表面層を設けた有機感光体の場合、この有機感光体の作製直後の電気特性では、表面層部分に発生する残留電位の他に、感光層内部による残留電位が発生し、繰り返しによって残留電位が増加(以下「サイクルアップ」という場合がある)するという傾向がある。この残留電位は放置や感光体の使用と共に時間をかけて徐々に減衰するが、この残留電位の発生およびその残留電位の緩慢な減衰とサイクルアップは、複写機やプリンターでの感光体の繰り返し使用に伴い画像の濃度が変化するという問題を招く。
有機感光体の作製直後の残留電位の発生およびその残留電位の緩慢な減衰が発生する具体的なメカニズムは明らかでない。しかし、表面層成膜時の光熱ストレスによって発生したトラップが、電荷輸送層及び表面層間の内部応力に起因して発生する内部電場によって捕捉され、時間の経過と共に徐々に緩和されるためであることが原因として推定される。
また本発明者らは、感光層内の残留電位のサイクルアップは、表面層界面の電荷蓄積が大きく関っており、上述した如く13族元素等を含んでなる表面層の構成元素やその組成比を制御することにより、有機感光体の作製直後の感光層内の電荷蓄積による残留電位の発生を抑制できることを見出した。しかしながらこの残留電位の抑制と緩和は感光体の場所ムラがあり、画像ムラとして発生する問題が有った。
表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95未満である場合、及び/または、酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9 未満の場合には画像流れが発生してしまい、また酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.5を超える場合には、有機感光体の作製直後の残留電位の発生およびその残留電位のサイクルアップが発生してしまい感光体の繰り返し使用に伴い画像の濃度が変化し、ムラが発生する。
また、本発明では、このような表面層形成時に感光層内部に形成されるトラップの減少とトラップの感光層内部での捕捉を減少させるため電荷輸送層を構成する材料として高分子電荷輸送性材料を用いている。このため、本実施形態の感光体は高速応答性を有するとともに、感光層内部での残留電位の発生とサイクルアップを抑制することができ、感光層内部電荷蓄積のムラによる画像ムラの発生も抑制することができる。
さらに、表面層として、13族元素、酸素及び水素を含む無機膜が感光層表面に形成されるため、優れた耐擦性を有する。加えて、無機膜は、画像形成装置内で発生したオゾンや窒素酸化物などの酸化性ガスに対するバリア性にも優れるため、高分子電荷輸送性材料の酸化劣化を抑制し、長期に渡って電気特性が安定で高速応答性も維持される。ゆえに、感光体の電気的・機械的寿命が長くなる。
なお、表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和は0.95以上であることが必要であるが、0.97以上であることが好ましく、0.99以上であることが最も好ましい。
また、酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることが必要であるが、0.9以上1.4以下とすることが好ましく、1.0以上1.4以下とすることがより好ましい。特に、元素組成比(酸素/13族元素)を1.0 以上1.35以下とすることにより、作製直後において発生する残留電位がより抑制される。
ここで、上述した「酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)」とは、最表面から深さ10nmの範囲を除いた、表面層の膜厚方向に平均化された値を意味する。最表面から深さ10nmの範囲を含まないのは、汚染による炭素等の影響をなくすことと、自然酸化の影響を除くためである。なお、最表面から10nm以内の深さで自然酸化により化学量論比の絶縁膜が形成されていても、感光体の電気特性に与える悪影響はほとんどない。なお、最表面から少なくとも深さ10nmの範囲を除いた領域で、元素組成比は膜厚方向に対して異なった値を有していてもよい。この場合、「酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)」とは、膜厚方向に対して平均化された値を意味する。
また、「酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)」を求めるために、後述するRBS(ラザフォードバックスキャタリング)測定を行う場合、最表面から深さ10nmの範囲を除いた領域で得られた測定値を利用する。
一方、表面層の硬度を高めて耐擦性を向上させ、感光体の寿命をさらに長くするには、表面層における前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)を、前記表面層の最表面側ほど大きくすることが好ましい。
<感光体の層構成>
以下、まず本実施形態の電子写真用感光体の層構成の態様をより説明する。
本実施形態の電子写真用感光体の層構成は、基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層に積層されたものであれば特に限定されない。なお、必要に応じて、基体および感光層間に下引層を設けたり、表面層および感光層間に中間層を設けることができる。
本実施形態の感光体は、その層構成が基体上に感光層と表面層とがこの順に積層されたものである。感光層は、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する。電荷発生層は有機材料から形成され、これに含まれる有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでも良い。
また、感光層および表面層間に、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。中間層は、表面層の物性および感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、中間層を設ける場合には、中間層は、電荷をトラップする層として機能しても良い。
感光層上に、後述する方法により表面層を形成する場合、熱以外の短波長電磁波の照射により感光層が分解したりすることを防ぐため、感光層表面には、表面層を形成する前に紫外線などの短波長光吸収層を予め設けてもよい。
また、紫外線吸収剤を含む層(例えば、高分子樹脂に分散させた層を塗布等を利用して形成される層)を感光層表面に設けても良い。
このように、表面層を形成する前に感光体表面に中間層を設けることで、表面層を形成するときの紫外線や、画像形成装置内で感光体が使用された場合のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光による感光層への影響が抑制される。
表面層は、非晶性あるいは結晶性のいずれでもよいが、感光体表面の滑りを良くするためには、表面層が非晶質性であることが好ましい。
図1は、本実施形態の感光体の層構成の一例を示す模式断面図であり、図1中、1は基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2Bは電荷輸送層、3は表面層を表す。図1に示す感光体は、基体1上に、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、表面層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。
図2は、本実施形態の感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図2中、1は基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2Bは電荷輸送層、3は表面層、4は下引層、5は中間層を表す。図2に示す感光体は、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、中間層5、表面層3がこの順に積層された層構成を有する。
以下、各層についてより詳細に説明する。
<表面層>
表面層に含まれる13族元素としては、具体的には、Al,Ga,Inから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を用いることができる。二つ以上の元素を含むこともできる。
また、表面層に含まれる水素の含有量は1原子%以上30原子%以下が好ましく、5原子%以上20原子%以下がより好ましい。水素が1原子%に満たないと、酸素欠損における前記13族元素の電子を電気的に不活性化する効果が不十分となる場合がある。また30原子%を超えると、水素が13族元素に2原子以上結合する確立が増加して三次元構造を保つことができず硬度や化学的安定性とくに耐水性などに不十分となる場合がある。
本実施形態における表面層は、前記のように酸素と13族元素と水素とを主な構成元素とするが、これ以外の元素が不純物として含まれていてもよい。しかしながら、多量の不純物は電気特性に影響することがあるので、少ない方が良い。具体的には、不純物は5原子%未満が好ましく、1原子%以下が好ましい。特に、窒素原子が含まれる場合には、窒素原子の含有量は1原子%以下とすることが望ましい。
表面層における、13族元素や酸素等の元素の含有量は、膜厚方向の分布も含めてRBSにより以下のようにして求めることができる。
RBSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いた。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは109°±2°である。
RBS測定は、具体的には以下のように行った。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定しても良い。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度を向上できる。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。 測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて膜厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
また、前記水素量はハイドロジェンフォワードスキャタリング(以下、「HFS」という場合がある)により、以下のようにして求めることができる。
HFSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400を用い、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いた。HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle30°
HFS測定は、He++イオンビームに対して検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾うことが可能である。この時検出器を薄いアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことが良い。定量は参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによって行う。
参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用した。白雲母は水素濃度が6.5原子%±1原子%であることが知られている。なお、最表面に吸着しているHは、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって行うことができる。また、2次イオン質量分析法(SIMS)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光(AES)、蛍光X線元素分析(EDS)、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)、電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)、電子線エネルギー損失分光(EELS)などが挙げられるがこれらに限ったものではない。また、これらは単独、または2つ以上組み合わせて用いてもよい。
なお、深さ方向の元素組成データに関しては、表面からの深さプロファイルのデータを取得する方法、表面を真空中でスパッタリングなどによりエッチングしながら表面を測定する方法、断面サンプルを作製して、断面の組成マッピングにより測定する方法が考えられるが、それぞれの分析手法にあった方法を用いればよい。
本実施形態における表面層の膜厚は、0.1μm以上2.0μm以下であることが望ましい。0.1μmに満たないと、機械強度が不足して、感光体として走行中に傷が入ったりすることがある。また、例えば通常化学量論比の酸化ガリウムは可視領域では透明であるが、O/Ga組成比が0.9以上1.5以下に制御された本実施形態の材料では、可視領域に吸収があるため、膜厚が2.0μmを超えると吸収により静電潜像形成時の感光層への露光量が不足してしまう場合がある。表面層の膜厚は0.1μm以上1.0μm以下とすることがより好適である。
−表面層の形成方法−
次に、表面層の形成方法について説明する。表面層の形成に際しては、感光層上に直接13族元素や酸素を含むように形成することができる。また感光層の表面をプラズマでクリーニングしても良い。
表面層の形成は、一般公知の薄膜形成方法を用いることができる。なお、有機感光層に表面層を形成する場合、基板の被成膜面である感光層の温度が150℃以下であることが好ましい。中でもプラズマCVDは、感光層表面に、本実施形態の無機薄膜を接着性よく形成できること、本実施形態の組成範囲の無機薄膜を原料の供給量により制御性良く形成すること、低温での形成が可能であること、などの点で好適である。その他には、触媒CVD、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、分子線堆積法などを用いることができるが、これらに限られるものではない。
図3は、本実施形態の感光体の表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図であり、図3Aは、成膜装置内部を側面から見た場合の側面図を表し、図3Bは、図3Aに示す成膜装置のA1−A2間における断面図を表す。
図3中、10は成膜室、11は排気口、12は基体回転部、13は基体ホルダー、14は基体、15は電極、16はガス導入管、17はガスノズル、18はガス導入管、19は高周波電力供給部、20は高周波電源部である。
図3に示す成膜装置は、円筒状の成膜室10を有し、成膜室10の外周面には、円筒軸の中央部の高さに排気口11が設けられている。さらに、この排気口11は不図示の真空排気装置に接続されている。また、成膜室10の成膜室10の排気口11が設けられた側と反対側には、高周波電源部20、高周波電力供給部19および電極15からなるプラズマ発生装置が設けられている。このプラズマ発生装置は、成膜室10内に、成膜室10の軸方向と平行な方向に伸びた縦長形状の電極15と、成膜室10外に、成膜室10の外周面から離れた位置に設けられた高周波電源部20と、高周波電源部20と電極15とを接続する高周波電力供給部19とから構成されている。
成膜室10の下部には、不図示の駆動源に接続された基体回転部12が設けられている。また、成膜室10内の底面側には基体回転部12に接続された基体ホルダー13が設けられている。基体ホルダー13は、円筒状の基体14の一方の端を基体14の内周面側から支持することにより、基体14を、その軸方向が成膜室10の軸方向と一致するように保持するものである。そして、基体回転部12を回転させることによって基体14をその周方向に回転させることができる。
なお、基体14としては、予め感光層まで積層された感光体、あるいは、感光層上に中間層までが積層された感光体が用いられる。
電極15は、上端から下端まで、基体14と向き合う面が基体14の外周面と一定の距離を保って対向するように配置されており、その内部は筒状となっている。そして、電極15の上端は、第2のガス供給用のガス導入管16が接続されており、電極15内の空洞部にガスが導入できるようになっている。また、電極15には、内部に導入されたガスが外部へと放出できるように、縦方向に等間隔にガス孔が設けられている。なお、ガス導入管16のもう一方の端は、成膜室10外に設けられた不図示の第2のガス供給源に接続されている。電極部はアースシールドにより囲まれていてもよい。
また、電極15に隣接する位置には、基体14の軸方向と平行に伸びたガスノズル17が設けられている。このガスノズル17は、上端から下端まで、基体14の外周面と一定の距離を保って対向するように配置されており、ガスノズル17の中央部には第1のガス供給用のガス導入管18に接続されている。なお、ガス導入管18のもう一方の端は、成膜室10外に設けられた不図示の第1のガス供給源に接続されている。
図3に示す成膜装置を用いた表面層の形成は、例えば以下のように実施することができる。HガスとHeガスと酸素ガスとをガス導入管16から電極15に導入する。この状態で、13.56MHzのラジオ波を電極15に供給すると、電極15および基体14間にプラズマが形成される。ここで、ガス導入管16から電極15を通って導入されたガスは成膜室10を電極15側から排気口11側へと流れる。
次に、キャリアガスも兼ねたHガスとトリメチルガリウムガスとの混合ガスをガス導入管18からガスノズル17を介して成膜室10に導入する。これにより、基体14表面にガリウムと酸素と水素を含む非単結晶膜が成膜される。
なお、形成される膜中に含まれるガリウムと酸素との元素組成比を制御するためには、成膜室10に導入する酸素ガスとトリメチルガリウムガスとの比率を調整する。
成膜時の表面層の形成温度は特に限定されないが、表面層の成膜時の基体14表面の温度は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。なお、基体14表面の温度が成膜開始当初は100℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には有機材料から構成される感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、この影響を考慮して基体14の表面温度を制御することが好ましい。
基体14表面の温度は加熱および/または冷却手段(図中、不図示)によって制御しても良いし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基体14を加熱する場合にはヒータを基体14の外側や内側に設置しても良い。基体14を冷却する場合には基体14の内側に冷却用の気体または液体を循環させても良いし、電極を冷却してもよい。
放電による基体14表面の温度の上昇を避けたい場合には、基体14表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
13族元素を含むガスとしてはトリメチルガリウムガスの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物やジボランの等の水素化物を用いることもでき、これらを2種類以上混合してもよい。
また、表面層には、その導電型を制御するためにドーパントを添加することができる。成膜時におけるドーパントのドーピングの方法としてはn型用としてはSiH,SnHを、p型用としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、などをガス状態で使用できる。また、ドーパント元素を表面層中にドーピングするには、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することもできる。
具体的には、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管16、電極15を介して成膜室10内に導入することによってn型、p型等任意の導電型の表面層を得ることができる。
なお、13族元素の供給材料として水素原子を含む有機金属化合物を用い、13族元素と酸素とを主に含む表面層を形成する場合、成膜室10内には活性水素が存在することが好ましい。活性水素は、キャリアガスとして使用する水素ガスや有機金属化合物に含まれる水素原子から供給されるものでもよい。
例えば、図3に示す成膜装置において、水素ガスと酸素ガスとを別々の位置から成膜装置内に導入する場合には、水素ガスの活性化状態と、酸素ガスの活性化状態とを各々独立して制御できるように、複数のプラズマ発生装置を設けてもよい。また、これに対して、装置の簡素化という点では、水素および酸素ガスの供給材料として、酸素と水素を同時に含むHO等のガスを用いたり、酸素ガスと水素ガスを混合したガスを用いて、プラズマにより活性化することが好ましい。
また、キャリアガスとしてヘリウムなどの希ガスや、水素を組み合わせて用いれば、ヘリウムなどの希ガスと水素による基体14表面で成長している膜のエッチング効果により100℃以下の低温でも高温成長時と同等の水素の少ない非晶質の13族元素と酸素とを主に含む表面層を形成できる。
上記に例示した方法により、活性化された水素、酸素、希ガスおよび13族元素が基体14表面上に存在し、さらに、活性化された希ガスや水素が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。それゆえ、基体14表面には、水素含有量が少なく、酸素と13族元素が三次元的な結合を構成する硬質膜からなる表面層が低温で形成される。
なお、図3に示す成膜装置に設けられたプラズマ発生装置は、高周波発振装置を用いたものである。しかし、プラズマ発生装置としては、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波発振装置を用いたり、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式の装置をもちいてもよい。また、高周波発振装置の場合は、誘導型でも容量型でも良い。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。プラズマの照射によって基体14表面の温度が上昇しないようにするためには高周波発振装置が好ましいが、熱の照射を防止する装置を設けても良い。
また、基体14の周りには複数の電極を設けても良いし、複数のガスノズルを設けても良い。さらに電極とガスノズルとを一対として設けても良い。
2種類以上の異なるプラズマ発生装置(プラズマ発生手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要がある。また、放電する領域と、成膜する領域(基体が設置された部分)とに圧力差を設けても良い。これらの装置は、成膜装置内をガスが導入される部分から排出される部分へと形成されるガス流に対して直列に配置してもよいし、いずれの装置も基体の成膜面に対向するように配置してもよい。
例えば、2種類のプラズマ発生手段をガス流に対して直列に設置する場合、図3に示す成膜装置を例に上げれば、ガスノズル17を電極として成膜室10内に放電を起こさせる第2のプラズマ発生装置として利用できる。この場合、ガス導入管18を介して、ガスノズル17に高周波電圧を印加して、ガスノズル17を電極として成膜室10内に放電を起こさせることができる。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧近傍(0.1MPa〜1330Pa)で行っても良い。大気圧近傍で放電を行う場合にはキャリアガスとしてHeを使用することが望ましい。
なお、表面層の形成に際しては、上述した方法以外にも、通常の有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法を使用することが出来るが、これらの方法による成膜に際しても、活性水素、活性酸素を使用することは低温化に有効である。
<感光層>
次に、感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
−電荷輸送層−
電荷輸送層には、高分子電荷輸送性材料が含まれ、必要に応じてその他各種の添加剤が含まれていてもよい。電荷輸送層中には、高分子電荷輸送性材料が50質量%以上含まれていることが好ましく、80質量%以上含まれていることがより好ましく、高速応答性の観点からは、電荷輸送層が高分子電荷輸送性材料のみから構成されていることが好ましい。高分子電荷輸送性材料の含有量が50質量%未満では、十分な高速応答性と低残留電位との両立が得られなくなる場合がある。
電荷輸送層及び/または後述する電荷発生層は、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
なお、従来の有機感光体を構成する電荷輸送層には、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤が用いられていたが、本実施形態の感光体では、雰囲気ガスのバリア性の高い表面層が設けられているため、酸化防止剤を用いる必要がない。このため、酸化防止剤の添加を省くことができる分だけ、本来の電荷輸送層性を発現でき、高速応答性に優れる。
なお、光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
電荷輸送層は、上記に示した高分子電荷輸送性材料及び必要に応じて用いられる各種添加剤を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送層形成用塗布液の調整に用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル等、またはこれ等の混合溶媒を用いることができる。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを必要に応じて添加することもできる。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布は、感光体の形状や用途に応じて、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法などの塗布法を用いて行うことが出来る。乾燥は、例えば室温(20℃乃至30℃)での指触乾燥の後に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、30℃以上200℃以下の温度域で5分以上2時間以下の範囲の時間で行うことが望ましい。
なお、電荷輸送層の膜厚は一般に5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
−高分子電荷輸送性材料−
高分子電荷輸送性材料としては、電荷輸送機能を有する活性部を高分子中に結合させた分子構造を有する電荷輸送性の高分子材料であれば特に限定されない。
高分子電荷輸送性材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの電荷輸送性物質を活性部として高分子中に結合させた分子構造を有する電荷輸送性の高分子材料が挙げられる。これらの高分子電荷輸送性材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
なお、より優れた高速応答性が得られ、且つ、電気特性の環境変動依存性を小さくする観点からは、高分子電荷輸送性材料は、下記一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含むことが好ましい。
この場合、分子中に占める一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造(但し、ベンゼン環の両サイドに結合する−(O)−(T)−で示される部分を除いた構造)の質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
質量割合が、50質量%未満では、分子中に含まれる活性部の割合が少なくなりすぎるため、高速応答性が得られなくなる場合がある。なお、質量割合の上限は特に限定されないが、大き過ぎる場合は、高分子電荷輸送性材料の合成自体が困難となるため実用上は95質量%以下であることが好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価のベンゼン環、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環、または、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素を表し、Arは置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、または、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、k,lは0または1を表し、mは0〜3の整数を表す。
なお、当該多核芳香族炭化水素及び縮合芳香族炭化水素とは、具体的には以下に定義される芳香族炭化水素であることを意味する。
すなわち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、芳香環同士が炭素―炭素結合によって結合している炭化水素を表す。具体的には、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また、「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、芳香環同士が1対の炭素原子を共有している炭化水素を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
また、複素環は、その環骨格を構成する原子数(Nr)が、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれてもよい。特に5員環構造をもつ複素環として、チオフェン、ピロール及びフラン、または、前記化合物の3位および4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が好ましく用いられ、6員環構造を持つ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。
ベンゼン環、多核芳香族炭化水素または縮合芳香族炭化水素の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
ここで、Xは、(1)置換もしくは未置換の2価のベンゼン環、(2)置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、(3)置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、(4)置換もしくは未置換の2価の複素環、または、(5)複素環を含む置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素を表す。なお、(2)〜(5)に示す基に含まれる芳香環(および複素環)数は2〜10が好ましく、2〜5がさらに好ましい。
また、Xは、下記一般式(III−1)、(III−2)または(III−3)で示される基を表すことが特に好ましい。このビフェニル構造もしくはターフェニル構造を有する高分子電荷輸送性材料はモビリティーが高いため、より優れた高速応答性が得られる。
Arは、(1)置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、または、(2)置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水を表す。なお、なお、(1)(2)に示す基に含まれる芳香環(および複素環)数は2〜10が好ましく、2〜8が好ましい。
これらの中でも、置換もしくは未置換のビフェニル基、置換もしくは未置換のターフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基、置換もしくは未置換のフルオレニル基、置換もしくは未置換のフェナントレニル基、または置換もしくは未置換のピレニル基が好適である。
Xとしては、以下の基(IV−1)〜(IV−2)から選択された基が好適に挙げられる。
基(IV−1)〜(IV−2)中、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、aは0または1を意味し、Vは下記の基(V−1)〜(V−10)から選択された基を表す。但し、基(V−1)〜(V−10)中、bは、1〜10の整数を意味し、cは1〜3の整数を意味する。
Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝状炭化水素基を表すが、炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基および3〜7の2価の分枝状炭化水素基より選択されることが好ましい。Tの具体的な構造例を以下に示す。
以下に、一般式(I−1)に示される構造の具体例を表1〜表29に、一般式(I−2)に示される構造の具体例を表30〜表55に示す。なお、これら表中にはmの記載は無いが、Tの欄が「−」の場合はm=0を、Tの欄に何らかの炭化水素基の記載がある場合はm=1を示す。
ここで、一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含む高分子電荷輸送性材料において、繰り返し構造を連結する連結部の構造は特に限定されないが、例えば、エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造などが挙げられる。
一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含む高分子電荷輸送性材料のより具体的な例としては、例えば、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルが挙げられる。
一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。
一般式(II−1)、(II−2)におけるYおよびZは、具体的には、下記の基が好適に挙げられる。すなわち Y及びZとしては、それぞれ独立に下記の基(VI−1)〜(VI−7)から選択された基が好適に挙げられる。
基(VI−1)〜(VI−7)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、dおよびeはそれぞれ独立に1〜10の整数を表し、fおよびgは、それぞれ独立に0、1または2の整数を意味し、hおよびiはそれぞれ独立に0または1を意味し、Vは基(IV−1)〜(IV−2)中におけるVと同意義を有する。
一般式(II−1)、(II−2)おける重合度(p)は、5〜5000であるが、成膜性、電気特性の安定性等の理由から、10〜1000の範囲が好ましい。また、重量平均分子量Mwは、10000〜300000の範囲にあるのが好ましい。
一般式(II−1)、(II−2)に示す電荷輸送性ポリエステルについて、表56、表57に具体例を示す。
なお、Zの欄が「−」であるものは一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示し、その他は一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示す。以下、各化合物番号を付した具体例、例えば、15の番号を付した具体例は「例示化合物(15)」という。
−電荷発生層−
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が好ましい。この場合、感光層に光が照射されると、感光層に含まれるフタロシアニン化合物がフォトンを吸収してキャリアを発生させる。このとき、フタロシアニン化合物は、高い量子効率を有するため、フォトンを効率よく吸収してキャリアを発生させられる。
更にフタロシアニン化合物の中でも、下記(1)〜(3)に示すフタロシアニンがより好ましい。すなわち、
(1)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、
(3)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン。
これらのフタロシアニン化合物は、特に、光感度が高いだけでなく、その光感度の安定性も高いため、これらフタロシアニン化合物を含む感光層を有する感光体は、高速な画像形成及び繰り返し再現性が要求されるカラー画像形成装置の感光体として好適である。
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものを例示することができる。即ちビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂およびその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いることが可能である。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、質量比で、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。また電荷発生層の厚みは、一般には0.01μm以上5μm以下であることが好ましく0.05μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
また電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。電荷発生層に用いられる電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法を用いることができる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合には、混合溶媒として結着樹脂を溶かす溶媒を使用する。但し、感光層が、基体側から、電荷輸送層2Bと電荷発生層とをこの順に形成した層構成を有する場合に、浸漬塗布のように下層を溶解しやすい塗布方法を利用して電荷発生層を形成する際には、電荷輸送層等の下層を溶解しない溶媒を用いることが望ましい。また、比較的下層の侵食性の少ないスプレー塗布法やリング塗布法を利用して電荷発生層を形成する場合には溶媒の選択範囲が広げられる。
<基体>
基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性(500Ω/□以下、以下同様)の金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
また、基体として金属製パイプ基体を用いる場合、該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラが防止される。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウェットホーニング等が挙げられる。
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを基体として用いることが好ましい。
以下、表面に陽極酸化処理を施した基体の製造方法について説明する。
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS H4080(2006)に規定されている合金番号1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm以上4A/dm以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
このようにしてアルミニウム基体上に成膜された陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、皮膜形成後にその物性値が経時的に変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。この金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、可能な限りきれいな(脱イオンされた)洗浄液が用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち、いずれか1工程において、ブラシ等の接触部材を用いた物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
以上のようにして形成される基体表面の陽極酸化皮膜の膜厚は、3μm以上15μm以下程度の範囲内であることが好ましい。陽極酸化皮膜上には多孔質陽極酸化膜のポーラスな形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は、本実施形態の感光体においては1nm以上100nm以下であることが好ましい。以上のようにして、陽極酸化処理された基体1が得られる。
このように得られた基体は、陽極酸化処理により基体上に成膜された陽極酸化皮膜が高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この基体を用いた感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止するとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止する。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作製後における物性値の経時変化が防止される。また、封孔処理後に基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この基体を用いて作製した感光体を備えた画像形成装置により画像を形成した場合に地汚れの発生が防止される。
<下引層>
本実施形態の感光体には、必要に応じて、基体および感光層間に下引層を設けることができる。
下引層を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独または2種以上を混合したり、さらに上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
有機シリコン化合物(シリコン原子を含有する有機金属化合物)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましく使用される。
有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムを含有する有機金属化合物)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
有機チタン化合物(チタンを含有する有機金属化合物)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物(アルミニウムを含有する有機金属化合物)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
また、下引層を形成するための下引層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。なお2種以上の溶媒を混合する場合に使用できる溶媒としては、混合溶媒として結着樹脂を溶かす事ができる溶媒であれば、いかなるものでも使用することができる。
下引層の形成は、まず、下引層用塗布剤および溶媒を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、基体表面に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。下引層を形成する場合には、その膜厚は0.1μm以上3μm以下となるように形成することが好ましい。下引層の膜厚をこの膜厚範囲内とすることにより、電気的な障壁を過剰に強くすることなく減感及び繰り返しによる電位の上昇が防止される。
このようにして基体上に下引層を形成することにより、下引層上に形成される層を塗布形成する際の濡れ性の改善を図るとともに、この下引層が電気的なブロッキング層としての機能も果たすことになる。
上記により形成された下引層の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(但し、nは下引層よりも外周側に設けられる層の屈折率)以上1倍以下程度の範囲内の粗度を有するように調整することが可能である。表面粗さの調整は、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより下引層の表面粗さを調整して作製した感光体を画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像をより防止する。
なお、樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウェットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成の画像形成装置に用いられる感光体では、レーザ入射光は感光体の極表面近傍で吸収され、さらに感光層中で散乱されるため、下引層の表面粗さの調整は強くは必要とされない。
また、下引層形成用塗布液に、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えることも好ましい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジルコニウムキレート化合物の具体例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
チタニウムキレート化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
これらの添加物は、単独で用いることもできるが、複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることもできる。
また、上述した下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させておくことが好ましい。電子受容性物質の具体例としては、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体がより好ましく用いられる。これにより、感光層における光感度の向上や残留電位の低減を図るとともに、繰り返し使用した場合の光感度の劣化を低減することができ、下引層に電子受容性物質を含む感光体を備えた画像形成装置により形成したトナー像の濃度ムラが防止される。
また、上述した下引層用塗布剤の代わりに下記に説明する分散型下引層用塗布剤を用いることも好ましい。これにより、適度に下引層の抵抗値を調整することにより残留電荷の蓄積を防ぐとともに、下引層の膜厚をより厚くすることが可能となるため感光体の耐リーク性、特に接触帯電時のリークが防止される。
この分散型下引層用塗布剤としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性の金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性の物質等を結着樹脂に分散したものが挙げられる。導電性の金属酸化物としては、平均1次粒径0.5μm以下の金属酸化物粒子が好ましく用いられる。平均1次粒径が大きすぎる場合には局部的な導電路形成を起こしやすく、電流のリークが発生しやすく、その結果かぶりの発生や帯電器からの大電流のリークが生じる場合がある。下引層はリーク耐性の向上のために適切な抵抗値に調整されることが必要である。そのため、上述の金属酸化物粒子は、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗を有することが好ましい。
なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こす場合ある。従って、中でも上記の範囲内の抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粒子がより好ましく用いられる。また、金属酸化物粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。この際使用可能なカップリング剤としては上述の下引層形成用塗布液と同様の材料を用いることができる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
この金属酸化物粒子の表面処理においては、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物粒子表面に全面隙間無く均一にカップリング剤を吸着させられる。次に、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって粒子を漏れなく均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けの効果によりカップリング剤を硬化させ金属酸化物粒子と堅固な化学反応を起こさせる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法を用いる場合においては、乾式法と同様に、まず、金属酸化物粒子を加熱乾燥して、金属酸化物粒子の表面吸着水を除去する。この表面吸着水を除去する方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。次に、金属酸化物粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで粒子を漏れなく均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
金属酸化物粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。電子写真特性は表面処理後に金属酸化物粒子に表面処理剤が付着している量によって影響される。シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析により測定される(シランカップリング剤に起因する)Si強度と、使用されている金属酸化物の主たる金属元素強度とから求められる。この蛍光X線分析により測定されるSi強度は用いられる金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5倍以上1.0×10−3倍以下であることが好ましい。この範囲を下回った場合、かぶりなどの画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合、残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすくなる場合がある。
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性の樹脂などが挙げられる。
中でも下引層上に形成される層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子と結着樹脂との比率は所望する感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
上述した方法により表面処理された金属酸化物粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
この分散型下引層用塗布剤により下引層を形成する方法は、上述した下引層用塗布剤を用いて下引層を形成する方法と同様に行うことができる。
<中間層>
中間層としては、例えば、帯電器により感光体表面を帯電させる際に、帯電電荷が感光体表面から対抗電極である感光体の基体にまで注入して帯電電位が得られなくなることを防止するために必要に応じて表面層および電荷発生層間に電荷注入阻止層を形成することができる。
電荷注入阻止層の材料としては上記に列挙したシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いることができる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001μm以上5μm以下程度で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して設定される。
<<プロセスカートリッジおよび画像形成装置>>
次に、本実施形態の感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、本実施形態の感光体と、この感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、トナー像を転写媒体(記録媒体または中間転写体)に転写した後の感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、トナー像を転写媒体に転写した後の感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とする。
また、本実施形態の画像形成装置は、本実施形態の感光体と、この感光体表面を帯電する帯電手段と、帯電した感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする。
なお、画像形成装置には、トナー像を転写した後の感光体表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレード等の除去手段など、その他公知の手段が設けられていてもよい。また、トナー像の転写は、感光体から記録媒体へと直接転写する方式であってもよいが、中間転写ベルト等の中間転写体を介して感光体から記録媒体へと転写する中間転写方式であってもよい。本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応して感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよい。
なお、本実施形態の感光体は、雰囲気ガスに対するガスバリア性が高く且つ耐擦性に優れた表面層を有するため、帯電手段として、オゾン等の酸化性ガスが発生するスコロトロン等の非接触型帯電装置を用い、除去手段として、感光体表面の磨耗や傷を招きやすいクリーニングブレードを用いることが好適である。また、本実施形態の感光体は、高速応答性を有する。このため本実施形態の画像形成装置は、高速出力(プロセススピードで400mm/s以上2000mm/sの範囲を意味し、好適には500mm/s以上1600mm/sの範囲)しても高品位な画像が形成される。また、接触型帯電器を用いる場合でもよい。
次に、画像形成装置の具体例を図面を用いてより詳細に説明する。図4は、本実施形態画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図4に示すように、本実施形態の画像形成装置82は、所定方向(図4中、矢印D方向)に回転する電子写真用感光体80を備えている。電子写真用感光体80の周囲には、電子写真用感光体80の回転方向に沿って、帯電装置(帯電手段)84、露光装置(露光手段)86、現像装置(現像手段)88、転写装置(転写手段)89、除電装置81、及びクリーニング部材87が設けられている。
帯電装置84は、電子写真用感光体80の表面を所定電位に帯電する。露光装置86は、帯電装置84によって帯電された電子写真用感光体80の表面を露光することにより、画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置88は、静電潜像を現像するためのトナーを含む現像剤を予め貯留すると共に、貯留された現像剤を電子写真用感光体80表面に供給することにより静電潜像を現像してトナー像を形成する。
転写装置89は、電子写真用感光体80上に形成されたトナー像を、電子写真用感光体80および転写装置89間で記録媒体83を挟持搬送することにより、記録媒体83に転写する。記録媒体83に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって記録媒体83表面に定着される。
除電装置81は、電子写真用感光体80表面に付着した帯電されている付着物を除電する。クリーニング部材87は、電子写真用感光体80の表面に接触するように設けられ、電子写真用感光体80表面との摩擦力によって、表面の付着物を除去する。
なお、図4に示す実施形態において、感光体80と、帯電装置84、現像装置88、クリーニング部材87、除電装置81からなる群より選択される少なくとも一つとからなる部分が一体となって構成された部分(プロセスカートリッジ)が、画像形成装置82本体に対して脱着自在であってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
まず、以下に説明する手順により、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
−下引層の形成−
平均粒径70nmの酸化亜鉛(テイカ社製)100質量部をテトラヒドラフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、焼き付けを行いシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛顔料を得た。
前記表面処理した酸化亜鉛60質量部とアリザリン0.6質量部と硬化剤ブロック化イソシアネート(スミジュール3173:住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(BM−1:積水化学社製)15質量部とをメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジウラレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145:GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引層塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材(直径84mm、長さ330mm)上に塗布し、170℃40分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬法により下引層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
−電荷輸送層の形成−
例示化合物(19)7質量部を、モノクロロベンゼン38質量部に溶解し、得られた塗布液を、電荷発生層が形成されたAl製円筒基板上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃において1時間加熱乾燥、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。これにより有機感光体(ノンコート感光体)を得た。
−表面層の形成−
ノンコート感光体表面への表面層の形成は、図3に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して成膜室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、HeガスとHe希釈5%酸素ガスとメタンガスとを図示しない混合装置にて混合したガスをガス導入管16を介して、長さ350mmの電極15内に512sccm(Heガス350sccm、水素ガス150sccm、He希釈5%酸素4sccm,メタンガス 8sccm導入し、高周波電力供給部19および高周波電源部20により、13.56MHzのラジオ波を出力150Wにセットしチューナでマッチングを取り電極15で放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、トリメチルガリウムガス(TMGガス)をガス導入管18を介してガスノズル17から成膜室10内に、2.0sccmとキャリアガスとして水素50sccmを導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室10内の反応圧力は30Paであった。
この状態で、ノンコート感光体を100rpmの速度で回転させながら60分間成膜し、膜厚0.5μmの水素を含むGaO膜を形成し電荷輸送層表面に表面層が設けられた有機感光体を得た。なお、成膜に際しては、ノンコート感光体の加熱処理は行わなかった。 また、同じ条件にて、Al箔を基体に貼り付けて表面層のみを形成したサンプルも作製した。この時、成膜時の温度をモニターするために、成膜前に予め基体表面に貼り付けておいた温度測定用ステッカー(Wahl社製、TEMP-PLATE、101-4V-037)の色を、成膜後に確認したところ、42℃であった。
主要な感光体作製条件を表58に示す。
−表面層の分析・評価−
Al箔上に形成された表面層の組成をラザフォード・バック・スキャタリングを用いて測定した。ガリウムと酸素元素はガリウム1.0に対して、酸素は0.974の比であった。酸素は表面層全体に分布しており、表面層中に含まれる水素はハイドロジェン・フォワードスキヤタリング法で測定し全体の20at%含まれることが分かった。ガリウムと酸素と水素と炭素のみから構成されており、ガリウムと酸素と水素の全体に占める割合は0.96であった。表面層の元素組成を表59に示す。
RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはハローパターンのみが見え、膜は非晶質膜であることがわかった。
以上の分析・評価結果から、ノンコート感光体表面に形成された表面層は、非晶質膜で、水素を含んだ酸化ガリウムであることが分かった。
−感光体作製後の残留電位特性評価−
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、表面層の形成から1日後に、常温常湿環境(25℃、50RH%)にて、表面層形成前のノンコート感光体、基体表面に貼り付けて固定したAl箔上に形成した表面層、および、表面層を設けた感光体について、それぞれ40rpmで回転させながら、スコロトロン帯電器(富士ゼロックス社製、DocuCentre Color 500用の帯電器(スコロトロン帯電器))により帯電処理した。なお、これら3つのサンプルに対する帯電処理は、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。
そして、この時の帯電後の帯電電位と、露光後の残留電位とを各々測定した。
その結果、Al箔上に形成した表面層の帯電電位は、膜厚1μm当たりに換算すると、−10V/μmであることが確認された。またノンコート感光体の帯電電位は−700V、残留電位は−10V、表面層を設けた感光体の帯電電位は−700V、残留電位は−50Vであった。なお、表面層を設けた感光体の残留電位は、Al箔上に形成した表面層の帯電電位と比較して感光層部よりも40V高いだけであった。続いて100回の帯電露光除電を繰り返した時の残留電位の上昇幅(ΔVr)は−20Vであった
続いて、上記帯電・露光処理から1週間後に、残留電位を測定したところ、ノンコート感光体の残留電位は−10V、表面層を設けたこの感光体の残留電位は−10Vであった。
さらに、上記帯電・露光処理から2週間後に、残留電位を測定したところ、ノンコート感光体の残留電位は−10V、表面層を設けた感光体の残留電位は−10Vであった。
このことから、帯電・露光処理から1週間経過した後は、残留電位が−10Vで安定することがわかった。
表面層を設けた感光体について、帯電電位V0(1D)と、表面層の形成から1日後の残留電位Vr(1D)と、100回の帯電露光除電処理を繰り返した後の残留電位の上昇幅ΔVrと、帯電・露光処理から1週間後の残留電位Vr(7D)とを表60に示す。
−画像形成テスト後の残留電位特性の評価−
表面層が形成された感光体を、画像形成装置(富士ゼロックス社製、DocuCenter Color500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。続いて、この感光体を取り出して、帯電処理を、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。帯電後の帯電電位V0(100K)と、露光後の残留電位Vr(100K)とを各々測定した。結果を表60に示す。
−感光体作製後の高速応答性の評価−
表面層を形成してから1週間経過した後に、表面層を設けた感光体について、帯電処理を、ノンコート感光体の帯電電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器に流す電流量を制御して、実施した。
続いて、帯電処理後のサンプルを40rpmで回転させながら、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用いて、表面を露光した。
但し、環境条件は、高温高湿環境(28℃、80%RH)および低温低湿環境(10℃、15%RH)とした。また、帯電、露光を連続的に実施し、露光から現像器が位置すると想定した場所に設置した電位測定器(電位測定プローブとしてModel 555P−1(トレック社製)を、表面電位計としてModel 334(トレック社製)を用いた)により、残留電位を測定した。この時、感光体の回転速度を変えることにより、露光位置から電位測定器が位置するまでの感光体表面の移動時間を30msおよび200msの2水準とし、各々の移動時間における残留電位を測定した。
表60に、高温高湿環における残留電位差ΔVr(H/H)(=移動時間30msにおける残留電位−移動時間200msにおける残留電位)と、高温高湿環における残留電位差ΔVr(L/L)(=移動時間30msにおける残留電位−移動時間200msにおける残留電位)とを示す。
なお、ΔVr(H/H)、ΔVr(L/L)は、これらの値が小さいほど、感光体の応答性が高いことを意味し、ΔVr(H/H)とΔVr(L/L)との差が小さいほど、応答性の環境依存性が小さいことを意味する。
−画像形成テスト後の高速応答性の評価−
表面層が形成された感光体を、画像形成装置(富士ゼロックス社製、Docucenter Color500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。続いて、この感光体を取り出して「感光体作製後の高速応答性の評価」の場合と同様の評価を実施して、ΔVr(H/H)、ΔV(L/L)を測定した。結果を表60に示す。なお、使用した画像形成装置は、スコロトロン帯電器を備えたものである。
−感光体傷−
感光体を画像形成装置(富士ゼロックス社、DocuCetre Color 500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。その後、感光体表面の10点平均粗さ(Rz)を、表面粗さ計(東京精密(株)製Surfcom1400A)により測定した。結果を表60に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
○:Rzが3.0μm以下。
△:Rzが3.0μmを超え3.5μm未満。
×:Rzが3.5μm以上(画像上に白筋発生)。
−画像ボケ−
表面層を形成した感光体を画像形成装置(富士ゼロックス社、DocuCetre Color 500)に取り付け、連続10万枚の画像形成テストを実施した。その後、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部分のみを水拭きした。
その後、ハーフトーン画像(画像密度30%)をプリントし、ハーフトン画像中に感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応する濃度差が目視で確認できるか否かにより判断し、濃度差が一見して容易に確認できる場合は画像ボケが発生しているものと判断した。結果を表60に示す。
(実施例2〜4、実施例6〜9、比較例13)
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。なお、表面層の成膜時間は、実施例1の感光体と同じの膜厚が得られるように調整した。表面層の組成等を表59に示す。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて評価を行った。結果を表60に示す。
(実施例5)
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。表面層の組成等を表59に示す。
なお、形成した表面層は2層構造を有するものである。ここで表58中の「第1層」は、電荷輸送層上に成膜した層を意味し、その膜厚が0.4μmとなるように成膜時間を調整した。また、「第2層」は、第1層目上に成膜した層を意味し、その膜厚が0.1μmとなるように成膜時間を調整した。この2層構造を有する表面層の全膜厚は、実施例1と同じ膜厚とした。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。
(比較例4)
実施例1において、表面層の成膜条件を表58に示す条件に変更し、且つ、電荷輸送層を以下に示す手順で形成した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして表面層を形成した感光体と、ノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層とをそれぞれ作製した。なお、表面層の成膜時間は、実施例1の感光体と同様の膜厚が得られるように調整した。表面層の組成等を表59に示す。
続いてこれらのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。
−電荷輸送層の形成−
まず、下記構造式(1)で示される化合物(低分子電荷輸送材料)2質量部と、下記構造式(2)で示される高分子化合物(粘度平均分子量:39000)3質量部とを、クロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を浸漬法により電荷発生層表面に塗布し、110℃で40分間加熱して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
(比較例5)
実施例1において、感光体の作製条件を表58に示す条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法と条件にて同様にして電荷輸送層まで形成したノンコート感光体(評価用の感光体)を作製した。続いてこのサンプルを用いて、実施例1と同じ方法と条件にて同様の評価を行った。結果を表60に示す。


本実施形態の感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の感光体の層構成の他の例を示す模式断面図である。 本実施形態の感光体の表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図である。 本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 基体
2 感光層
2A 電荷発生層
2B 電荷輸送層
3 表面層
4 下引層
5 中間層
10 成膜室
11 排気口
12 基体回転部
13 基体ホルダー
14 基体
15 電極
16 ガス導入管
18 ガス導入管
19 高周波電力供給部
20 高周波電源部
80 感光体
81 除電装置
82 画像形成装置
83 記録媒体
84 帯電装置
86 露光装置
87 クリーニング部材
88 現像装置
89 転写装置

Claims (7)

  1. 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、
    前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
  2. 前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、0.9以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
  3. 前記表面層における前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、前記表面層の最表面側ほど大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
  4. 前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(I−1)および(I−2)から選択される少なくとも1種の構造を、繰り返し構造として含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。

    (一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価のベンゼン環、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環、または、複素環を含む置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素を表し、Arは置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、または、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、k,lは0または1を表し、mは0〜3の整数を表す。)
  5. 前記高分子電荷輸送性材料が、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。

    (一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。)
  6. 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
    該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段、前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面の付着物を除去する除去手段、および、前記トナー像を転写媒体に転写した後の前記電子写真用感光体表面を除電する除電手段からなる群より選択された少なくとも一つと、を一体に有し、
    且つ、画像形成装置本体に脱着自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 基体と、電荷発生層および高分子電荷輸送性材料を含む電荷輸送層を有する感光層と、Gaを含む13族元素、酸素および水素を含む表面層とがこの順に積層され、前記表面層を構成する元素のうち、前記13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が0.9以上1.5以下である電子写真用感光体と、
    該電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真用感光体表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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