JP2010270079A - 環境物質処理剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分を酸化物換算で1〜20重量%の範囲で含む酸化チタン系微粒子からなる環境物質処理剤であって、該酸化チタン系微粒子は平均粒子径が15〜100nmの範囲にある結晶性酸化チタン系微粒子と平均粒子径が15〜100nmの範囲にある無定型酸化チタン系微粒子との混合物である。前記結晶性酸化チタン微粒子と無定型酸化チタン微粒子との混合割合は50/50〜95/5の範囲にある。
【選択図】 なし
Description
さらに、近年、ヒトあるいはペット等について、清潔志向、衛生志向が高まり、具体的には、汗、体臭、口臭、加齢臭、足臭、脇の下臭等臭気の発生部位を除菌したり、発生する臭気を抑制したり除去することが求められている。これらは、単に居住環境にとどまらずヒトの集合する公共施設、民間施設に於いても同様である。
具体例として、ゼオライト粉末に抗菌性を有する銀、銅、亜鉛等の金属成分を担持した抗菌性組成物が知られている。(特開平2―225402号公報:特許文献1)
これら従来の消臭抗菌組成物は、食器、まな板、箸、食品包装材料等の生活用品、インテリア家具、カーテン、壁、襖、障子、タイル、カーペット、ソファー等の生活環境用品、あるいは化粧品等に用いられている。
従来、病院、養護施設などの建物、備品や医療機器を始めとして、広範囲の生活環境において使用されている衛生用品、調理用品などには、感染防止などの観点から消毒剤や殺ウィルス剤などが使用されている。殺ウィルス剤としては、1−アダマンタナミン塩酸塩、チオセミカルバジド、アラビノシルヌクレオシド、ヌクレオシド、2,3−ジデオキシヌクレオシド、ピロ燐酸誘導体等が知られている。しかし、ウィルス機系殺ウィルス剤は、特定のウィルスに対してしか効力がなく、さらに効果の持続性についても問題があった。
しかし、該無機系殺ウィルス剤は無機過酸化物系であるため一時的な殺ウィルス効果を有するものの、やはり長期間にわたってその効果を持続することができないと言う問題があった。
このため、本願出願人は、抗ウィルス性金属成分を含有する平均粒子径500nm以下のチタニアコロイド、シリカ・アルミナコロイド等の無機酸化物微粒子からなることを特徴とする抗ウィルス剤を開示している。(特開2003−221304号公報:特許文献7)
このようなアレルゲン不活化剤として銀、亜鉛等の抗アレルゲン性金属成分がチタニア、シリカ、アルミナ等の金属酸化物と複合粒子を形成したものが知られている。(特開2006−241431号公報:特許文献8、特開2006−241432号公報:特許文献9)
さらに、銀系化合物を含有するハウスダクト処理剤も知られている。(特開2006−183045号公報:特許文献10)
このため、従来は個別に最適化した複数の処理剤を製造して併用する必用があった。しかしながら併用する場合は全使用量が多くなるため、例えば、繊維に担持して使用する場合は剥離して脱離するため性能が低下する問題があった。
前記結晶性酸化チタン微粒子と無定型酸化チタン微粒子との混合割合が50/50〜95/5の範囲にあることが好ましく、前記結晶性酸化チタン微粒子がアナタース型酸化チタン微粒子であることが好ましい。
本発明の環境物質処理剤において酸化チタン系微粒子は、酸化チタン単独または酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアからなっている。
酸化チタン系微粒子中のシリカおよび/またはジルコニアの含有量は酸化物として0〜30重量%、さらには1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
酸化チタン系微粒子がシリカを含有しない場合はジルコニアの含有量にもよるが、安定性が不充分で、使用法にもよるが分散液とした場合、粒子が凝集し、繊維への付着性、担持性が低下する。また、粉体として用いる場合は、高分散しないので環境物質処理性能が不充分となる場合がある。
ここで、環境物質処理性能とは、抗菌性能、消臭性能、抗ウィルス性能、抗アレルゲン性能およびヒトまたは動物に使用した場合の除菌性能、消臭性能のいずれも有することを意味している。
酸化チタン系微粒子中のシリカの含有が酸化物として30重量%を越えても安定性等がさらに向上することもなく、酸化チタンの減少によって環境物質処理性能が不充分となる場合がある。
酸化チタン系微粒子がジルコニアを含有しない場合はシリカの含有量にもよるが、安定性が不充分となったり、耐光性、耐候性が得られない場合がある。
これに加えて使用法にもよるが、分散液とした場合粒子が凝集し、繊維への付着性、担持性が低下し、粉体として用いる場合は高分散しないので環境物質処理性能が不充分となる場合がある。塗膜の形成に用いる場合は塗膜の透明性が低下したり、基材との密着性が低下し、剥離する場合がある。
本発明では、酸化チタン系微粒子が前記範囲でジルコニアを含んでいると、金属成分に銀を用いた場合に、光化学反応や酸化作用による金属銀の凝集あるいは酸化を抑制することができ、褐色または黒色への変色を抑制することができる。これは、チタン、ジルコニウム等が紫外線吸収剤として作用して、銀成分の変色を防止する効果を有しているからである。
酸化チタン系微粒子中に無定型酸化チタン微粒子が含まれると、環境物質処理性能の内、ヒトまたは動物に使用した場合の除菌性能と消臭性能が向上する。その理由としては、ヒトまたは動物の細胞と接触して抗菌性能、消臭性能を有するリゾチウム蛋白質の生成が促進されるためと考えられる。
混合比率が50/50未満の場合は環境物質処理性能の内、抗菌性能、消臭性能、抗ウィルス性能、抗アレルゲン性能が不充分となる場合があり、95/5を越えるとヒトまたは動物に使用した場合の除菌性能、消臭性能が不充分となる場合がある。
酸化チタン系微粒子の平均粒子径が15nm未満の場合は、抗アレルゲン性能が不充分となる場合があり、100nmを越えると抗菌性能、消臭性能、抗ウィルス性能およびヒトまたは動物に使用した場合の除菌性能、消臭性能が低下する傾向がある。
なお、酸化チタン系微粒子の平均粒子径はレーザー光散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラップ)で測定することができる。
本発明の環境物質処理剤には銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分が含まれ、これらのなかでも銀、銅、亜鉛は、高い環境物質処理性能を有する環境物質処理剤が得られることに加えて、変色もなく人体に対する安全性等の観点から好ましい。
これらの金属成分は、酸化チタン系微粒子が予め金属成分を含む場合と、酸化チタン系微粒子に金属成分が担持される場合があり、さらにこれらの粒子が混合される場合がある。
抗菌性能、坑ウィルス性能、坑アレルゲン性能の観点からはイオンの形態が好ましく、酸化物であれば消臭性に優れ、加えて抗菌性を有する防臭抗菌性蛋白質生成能に優れるため極めて防臭性能、抗菌性能に優れた環境物質処理剤が得られる。
金属成分の含有量は酸化物換算で1〜20重量%、さらには2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
金属成分の含有量が酸化物換算で1重量%未満の場合は、金属成分の種類によっても異なるが、環境物質処理性能が不充分となる場合があり、例えば、抗菌性能は得られるものの消臭成分等他の性能が不充分となったり、その逆になる場合がある。
金属成分の含有量が酸化物換算で20重量%を越えてもさらに環境物質処理性能が向上することもなく、むしろ金属成分が高分散することなく凝集するためか性能が低下する場合がある。
本発明の環境物質処理剤を構成する酸化チタン系微粒子の製造方法については、前記酸化チタン系微粒子が得られれば特に制限はないが、本願出願人による特開2005−318999号公報等に記載された製造方法に準じて調製することができる。
(1)結晶性酸化チタン系微粒子の製造方法
まず、従来公知の方法によってチタン化合物を加水分解してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。オルソチタン酸のゲルは、例えば、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。
この段階で得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン酸粒子は、非晶質であることが好ましい。
ペルオキソチタン酸水溶液を調製するに際しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物を、必要に応じて約50℃以上、好ましくは60〜100℃の温度範囲で加熱し、撹拌することが好ましい。
また、この際、オルソチタン酸の濃度が高くなり過ぎると、その溶解に長時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あるいは得られるペルオキソチタン酸水溶液が粘調になることがある。このため、TiO 2濃度としては、約10重量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下であることが望ましい。
なお、金属成分の水溶液については、この工程で添加することもできるが、酸化チタン系微粒子を調製した後、後述する別の方法にて金属成分を担持することもできる。
金属成分の使用量は、最終的に得られる酸化チタン系微粒子中の金属成分の含有量が酸化物に換算して1〜20重量%、さらには2〜15重量%の範囲となるように用いる
ことが好ましい。
例えば、テトラアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、珪酸アルカリの他、珪酸アルカリを脱アルカリして得られる酸性珪酸液、シリカゾル等が挙げられる。特に、シリカゾルは、分散性、分散安定性および結晶性の高い酸化チタン系微粒子が得られるので好ましい。
ケイ素化合物の使用量は、最終的に得られる無機酸化物微粒子中の珪素の含有量が酸化物(シリカ)に換算して30重量%以下、さらには1〜20重量%の範囲となるように用いることが好ましい。
例えば、テトラアルコキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物、塩化ジルコニウム等のジルコニウム塩、ジルコニアゾル等が挙げられる。
特に、ジルコニアゾルは、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の耐候性が高く、結晶性の高い結晶性酸化チタンを含んだ酸化チタン系微粒子が得られるので好ましい。
ジルコニウム化合物の使用量は、最終的に得られる酸化チタン系微粒子中のジルコニウムの含有量が酸化物(ジルコニア)に換算して30重量%以下、さらには1〜20重量%の範囲となるように用いることが好ましい。
ケイ素化合物および/またはジルコニウム化合物としては前記したと同様のものを用いることができ、なかでもシリカゾル、ジルコニアゾルは好適に用いることができる。
ケイ素化合物および/またはジルコニウム化合物の使用量は、前記したと同様に、最終的に得られる酸化チタン系微粒子中の珪素および/またはジルコニウムの含有量が酸化物に換算して30重量%以下、さらには1〜20重量%の範囲となるように用いることが好ましい。
水熱処理温度が280℃を超えると金属成分の含有量によっては環境物質処理性能が不充分となることがある。なお、水熱処理時間は、水熱処理温度によって異なるが、概ね1〜48時間の範囲である。
無定型酸化チタン系微粒子は、前記結晶性酸化チタン系微粒子の製造方法において、加熱処理温度を50〜80℃の範囲とし、水熱処理温度を100〜140℃、好ましくは100〜130℃の範囲とすれば製造することができる。
また、シリカおよび/またはジルコニアの含有量によっては水熱処理を実施することなく環境物質処理性能に優れた環境物質処理剤が得られる場合がある。
具体的には、負の電荷を有する酸化チタン系微粒子が分散した分散液に、金属塩水溶液を添加する方法が挙げられる。
酸化チタン系微粒子としては、前記製造方法において、金属成分を添加することなく調製して得られた酸化チタン系微粒子等は好適に用いることができる。
なお、前記した方法での金属成分の担持に際し、水を分散媒とする酸化チタン系微粒子分散液の濃度は酸化物として5重量%以下、好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
前述の方法で得られた水を分散媒とする金属成分を担持した酸化チタン系微粒子分散液は、公知の方法、例えば限外濾過膜を用いて、所望の濃度に調整される。
また、金属成分を担持した酸化チタン系微粒子分散液の分散媒である水は公知の方法により有機溶媒と置換して、有機溶媒を分散媒とする分散液とすることも可能である。
金属成分の含有量が酸化物換算で1重量%未満の場合は、金属成分の種類によっても異なるが、環境物質処理性能が不充分となる場合があり、金属成分の含有量が酸化物換算で20重量%を越えてもさらに環境物質処理性能が向上することもなく、むしろ金属成分が高分散することなく凝集するためか性能が低下する場合がある。
本発明の環境物質処理剤は、前記環境物質処理剤をヒトまたは動物上皮細胞と接触させて生成した防臭抗菌性蛋白質を含むものであることが好ましい。また、この防臭抗菌性蛋白質はリゾチウム蛋白質であることが好ましい。
ここで、リゾチウム蛋白質は細菌細胞壁を構成する多糖類を分解できる酵素であり、このため抗菌性能に優れ、細菌を死滅させたり、細菌の増殖を抑制できることから臭気成分の発生を防止あるいは抑制することができる。
動物上皮細胞としては、前記ヒト上皮細胞に対応した部位の上皮細胞が挙げられる。
ヒト上皮細胞または動物上皮細胞と環境物質処理剤(即ち、金属成分含有酸化チタン系微粒子)とを直接接触させる方法としては、例えば、ヒト上皮細胞(皮膚)または動物上皮細胞(皮膚)に金属成分含有酸化チタン系微粒子の分散液または粉体を塗布すればよい。
また、接触時間は、金属成分含有酸化チタン系微粒子の塗布量によっても異なるが、中間体的蛋白質、例えばリゾチウムmRNA(消臭性能、抗菌性能を有するリゾチウム蛋白質に変異する前の中間体的蛋白質)の生成には、概ね5〜120分間あれば充分である。
接触時間が5分間未満の場合は中間体的蛋白質の生成量が不充分であり、このため中間体的蛋白質が変位して生成するリゾチウム蛋白質の生成量も少なく、充分な環境物質処理性能が得られない場合がある。
増殖して臭気発生原因となる菌としては、表皮ぶどう状球菌、黄色ぶどう状球菌等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、臭気成分としてはアンモニア、イソ吉草酸、酢酸、ノネナール、アセチルメチルカービノール、エチルヘキサノン、ジメチルマロニック酸等が挙げられる。
本発明の環境物質処理剤の使用方法は、従来公知の抗菌剤、消臭剤、坑ウィルス剤等と同様に使用することができる。
例えば、環境物質処理剤粉体を直接塗布する方法、環境物質処理剤分散液を直接塗布する方法、環境物質処理剤塗料を塗布して塗膜を形成する方法、環境物質処理剤をマスターバッチ樹脂に含有させた樹脂基材として使用する方法、環境物質処理剤分散液を繊維、不織布、フィルター等に付着あるいは担持して使用する方法等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
硫酸チタニル2水塩結晶(テイカ(株)製:TM結晶)6.25kgを水33.75kgに溶解した。ついで、濃度15重量%のアンモニア水をpHが約7になるまで加え、オルトチタン酸のゲルを調製し、濾過し、100kgの純水を掛けて洗浄した。洗浄したオルトチタン酸のゲルを水に分散させ全量160kgのスラリーとした。ついで、スラリーを50℃に昇温し、濃度35重量%の過酸化水素水12.32kgを加え、10分間攪拌した後、90℃に昇温し、2時間加熱処理してTiO2として濃度1.2重量%のペルオキソチタン酸水溶液を調製した。
銀含有酸化チタン系微粒子(1)中のAg2O含有量は4.8重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は25nmであった。
銀含有酸化チタン系微粒子(1a)中のAg2O含有量は4.8重量%であった。また、結晶性は無定型で、平均粒子径は25nmであった。
得られた環境物質処理剤(1)について、(1)抗菌性能、(2)消臭性能、(3)坑ウィスル性能、(4)坑アレルゲン性能、(5-1)リゾチウム蛋白生成能、(5-2)消臭性能を評価し、以下に示す実施例および比較例の結果と共に表に示した。
大腸菌試験:50mlのリン酸緩衝液に大腸菌(Escherichia coli IFO 3972)を懸濁させ、環境物質処理剤(1)0.1gを添加し、室温で1時間、330rpmで攪拌した後、生菌数(B)を測定した。
別途、上記において環境物質処理剤(1)を添加しない空試験として、大腸菌添加1時間後の生菌数(A)を測定し、増減値差(LogA−LogB)として評価し、結果を表に示した。
なお、前記リン酸緩衝液とは、リン酸2水素カリウム34gを1000mlの精製水に溶解し、水酸化ナトリウムでpHを7.2に調製した液を濃度0.85重量%の塩化ナトリウム水溶液で800倍に希釈した溶液である。
黄色ぶどう球菌試験:大腸菌に代えて黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureuse IFO 12732)を用いた以外は上記大腸菌試験と同様にして評価し、結果を表に示した。
臭気成分としてアセトアルデヒド、アンモニアおよび硫化水素を用いた。
アセトアルデヒド
環境物質処理剤(1)を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した環境物質処理剤(1)粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度14ppmのアセトアルデヒド臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:92L)にてアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒドの減少率を消臭率として表に示した。
環境物質処理剤(1)を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した環境物質処理剤(1)粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度100ppmのアンモニア臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:3LA)にてアンモニア濃度を測定し、アンモニアの減少率を消臭率として表に示した。
環境物質処理剤(1)を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した環境物質処理剤(1)粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度4ppmの硫化水素臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:4LT)にて硫化水素濃度を測定し、硫化水素の減少率を消臭率として表に示した。
環境物質処理剤(1)を使用して、以下の方法でウイルス不活化試験を行った。
(a)試験ウイルス:インフルエンザウイルスA型(H1N1)
(b)使用細胞:MDCK(NBL−2)細胞ATCC CCL−34株(大日本製薬(株)),犬の正常腎細胞
(c)使用培地
・細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mLカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたものを使用した。
・細胞維持培地:以下の組成の培地を使用した。
(Eagle MEM 1000mL、7.0%NaHCO 32mL、L−グルタミン(29.2g/L) 10mL、100xMEM用ビタミン液 30mL、10%アルブミン 20mL、トリプシン 2mL)
細胞の培養:細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
ウイルスの接種:単層培養後にフラスコ内から細胞培養培地を除き、ウイルスを接種した。次に、細胞維持培地を加えて37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で3〜5日間培養した。
ウイルス浮遊液の調製:培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、80%以上の細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。
次に、凍結融解を1回行った後、培養液を遠心分離(3000rpm/min,10min)し得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。
環境物質処理剤(1)を各濃度になるようにダルペッコPBS(−)に添加して試験液とした。
(f)試験操作
異なる濃度の試験液10mLにウイルス浮遊液0.1mLを添加し、室温で1時間保存後、1mLを細胞維持培地に接種した(以下試料液という)。細胞増殖培地を用いてMDCK細胞を組織培養用シャーレ内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地3mLを加えた。次に、試料液1mLを接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、最小発育素子濃度の試験結果を表に示す。
アレルゲンとして、ダニアレルゲン(Derf1)、スギ花粉アレルゲン(Cryj1)を用い、各々蒸留水に溶解して濃度100ng/mlのアレルゲン水溶液を調製した。
試験方法
アレルゲン溶液に1重量%になるように環境物質処理剤(1)分散液を添加し、25℃、60分処理後、アレルゲン濃度を酵素免疫測定法(サンドイッチELISA法)で測定した。
評価方法
環境物質処理剤(1)分散液を添加したアレルゲン溶液中のアレルゲン濃度を測定し、環境物質処理剤(1)分散液を添加しなかったアレルゲン溶液の濃度と比較した減少効果を下記式にて求めた。
低減率(%)=(B−A)/Bx100
A:試料反応後のアレルゲン溶液中のアレルゲン濃度
B:試料未反応のアレルゲン溶液中のアレルゲン濃度
環境物質処理剤(1)分散液について、リゾチウムタンパク質の生成能を下記の方法により測定し、結果を表に示した。
リゾチウムタンパク質の生成
環境物質処理剤(1)分散液5μg/mLにヒト上皮細胞(A549)片を浸漬し、1時間経過した後、細胞内および細胞外に分泌されたリゾチウムタンパク質の発現量をウェスターン ブロッティング法(Western Blotting法)により測定し、結果を表に示した。なお、リゾチウムタンパク質の発現量は、環境物質処理剤(1)分散液を塗布しなかった場合のリゾチウムタンパク質の発現量を基準の1とし、対比して示した。
環境物質処理剤(1)分散液を臭気を発する脇部に塗布し、2時間後に、塗布前との臭気性の対比を行い、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
全く臭気が感じられなかった : ◎
臭気の大幅な低下が認められ、臭気が僅かに残存していた : ○
臭気の低下が認められたが、臭気が残存していた。 : △
塗布前と変化が認められなかった : ×
実施例1において、銀含有酸化チタン系微粒子(1)分散液と銀含有酸化チタン系微粒子(1a)分散液との重量比が60/40となるように混合した以外は同様にして環境物質処理剤(2)分散液を得た。環境物質処理剤(2)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
実施例1において、銀含有酸化チタン系微粒子(1)分散液と銀含有酸化チタン系微粒子(1a)分散液との重量比が90/10となるように混合した以外は同様にして環境物質処理剤(3)分散液を得た。環境物質処理剤(3)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
実施例1において、別途、9.2gの硝酸亜鉛Zn(NO3)2・6H2Oに水 9200gを加えて調製した濃度1.0重量%の硝酸亜鉛水溶液を硝酸銀水溶液と混合して供給した以外は同様にして、固形分濃度10重量%の安定な銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(2)分散液を得た。銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(2)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(2)中のAg2O含有量は4.7重量%、ZnO含有量は4.7重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は25nmであった。
実施例4において、ペルオキソチタン水溶液を95℃で1時間加熱し、シリカゾル、ジルコニアゾルを加えた後に135℃で16時間水熱処理した以外は同様にして固形分濃度10重量%の安定な銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(3)分散液を得た。銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(3)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(3)中のAg2O含有量は4.7重量%、ZnO含有量は4.7重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は16nmであった。
実施例4において、ペルオキソチタン水溶液を95℃で1時間加熱し、シリカゾル、ジルコニアゾルを加えた後に175℃で16時間水熱処理した以外は同様にして固形分濃度10重量%の安定な銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(4)分散液を得た。銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(4)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
環境物質処理剤(4)中のAg2O含有量は4.7重量%、ZnO含有量は4.7重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は40nmであった。
硫酸チタニル2水塩結晶(テイカ(株)製:TM結晶)6.25kgを水33.75kgに溶解した。ついで、濃度15重量%のアンモニア水をpHが約7になるまで加え、オルトチタン酸のゲルを調製し、濾過し、100kgの純水を掛けて洗浄した。洗浄したオルトチタン酸のゲルを水に分散させ全量160kgのスラリーとした。ついで、スラリーを50℃に昇温し、濃度35重量%の過酸化水素水12.32kgを加え、10分間攪拌した後、90℃に昇温し、2時間加熱処理してTiO2として濃度1.0重量%のペルオキソチタン酸水溶液を調製した。
ついで、155℃で16時間水熱処理した後、希釈し、固形分濃度1重量%の酸化チタン微粒子分散液を調製した。酸化チタン微粒子の結晶性はアナタース型で、平均粒子径は18nmであった。
上記で調製した固形分としての濃度が1重量%の酸化チタン微粒子分散液4.0kgをビーカーに採取し、これを撹拌しながら50℃に加温した。このときの酸化チタン微粒子分散液のpHは7.9であった。この酸化チタン微粒子分散液に前記硝酸銀水溶液を10g/分の速度でペリスタポンプにて添加した。硝酸銀水溶液の添加でコロイド溶液のpHが低下し始めたところで、陰イオン交換樹脂(三菱化学製)を当初のpH7.9を維持するように少量ずつ添加し、全硝酸銀水溶液の添加が終了するまで、この操作を継続した。陰イオン交換樹脂の全使用量は101.0gであり、また、酸化チタン微粒子分散液の最終pHは8.1であった。この酸化チタン微粒子分散液を限外濾過膜装置でTiO2重量の200倍の水で洗浄した後、濃縮して、固形分濃度10重量%の銀含有酸化チタン系微粒子(5)分散液を調製した。
銀含有酸化チタン系微粒子(5)中のAg2O含有量は5.1重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は18nmであった。
ついで、この酸化チタン微粒子分散液に硝酸銀水溶液を添加した以外は同様にして固形分濃度10重量%の銀含有酸化チタン系微粒子(7a)分散液を調製した。銀含有酸化チタン系微粒子(7a)中のAg2O含有量は5.1重量%であった。
ついで、前記固形分濃度10重量%の銀含有酸化チタン系微粒子(5)分散液と固形分濃度10重量%の銀含有酸化チタン系微粒子(7a)分散液とを固形分の重量比が75/25となるように混合して環境物質処理剤(7)分散液を得た。環境物質処理剤(7)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
実施例1と同様にして固形分濃度10重量%の銀含有酸化チタン系微粒子(1a)分散液からなる安定な環境物質処理剤(R1)分散液を得た。
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の安定な銀含有酸化チタン系微粒子(1)の分散液を環境物質処理剤(R2)分散液とした。
実施例4において、ペルオキソチタン水溶液を95℃で1時間加熱し、シリカゾル、ジルコニアゾルを加えた後に125℃で16時間水熱処理した以外は同様にして固形分濃度10重量%の安定な銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子分散液を得た。銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(R3)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
銀、亜鉛含有酸化チタン系微粒子(R3)中のAg2O含有量は4.7重量%、ZnO含有量は4.7重量%であった。また、結晶性はアナタース型で、平均粒子径は8nmであった。
実施例1において、ペルオキソチタン水溶液を95℃で1時間加熱し、シリカゾル、ジルコニアゾルを加えた後に155℃で16時間水熱処理した以外は同様にして固形分濃度10重量%の安定な銀含有酸化チタン系微粒子(R4)分散液を得た。銀含有酸化チタン系微粒子(R4)分散液は1ケ月放置しても安定であった。
銀含有酸化チタン系微粒子(R4)中のAg2O含有量は4.7重量%であった。結晶性はアナタース型で、平均粒子径は120nmであった。
SiO2濃度20重量%のシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:USBB120、平均粒子径15nm)20gと純水380gの混合物を80℃に加温した。シリカゾルのpHは10.7であった。該シリカゾルにSiO2として1.5重量%の珪酸ソーダ水溶液とAl2O3として0.5重量%のアルミン酸ソーダ水溶液1500gとを同時に添加して、pH12.3のシリカ・アルミナ複合酸化物コロイド溶液とした後、限外濾過膜で濃縮して固形分22.2重量%のコロイド溶液を調製した。一方、酸化銀0.27gを20gの水に懸濁し、ついで5重量%のアンモニア水を酸化銀が溶解するまで加え、さらに、水を加えてAg2O濃度0.5重量%に調製した。この銀アンミン錯塩水溶液を前記コロイド溶液に添加して十分に撹拌し、95℃で4時間熟成して、銀成分が担持されたシリカ・アルミナ複合酸化物微粒子が分散したコロイド溶液を調製した。このコロイド水溶液を限外濾過膜装置でシリカ・アルミナ重量の200倍の水で洗浄した後、濃縮して、固形分濃度3重量%の銀含有シリカ・アルミナ微粒子が分散した安定な環境物質処理剤(R5)を調製した。
環境物質処理剤(R5)中のAg2O含有量は5.0重量%であった。また、結晶性は無定型で、平均粒子径は15.5nmであった。
Claims (7)
- 銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分を酸化物換算で1〜20重量%の範囲で含む酸化チタン系微粒子からなる環境物質処理剤であって、該酸化チタン系微粒子は平均粒子径が15〜100nmの範囲にある結晶性酸化チタン系微粒子と平均粒子径が15〜100nmの範囲にある無定型酸化チタン系微粒子との混合物であることを特徴とする環境物質処理剤。
- 前記酸化チタン系微粒子が酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアからなる請求項1に記載の環境物質処理剤。
- 前記酸化チタン系微粒子が単独の酸化チタンからなる請求項1に記載の環境物質処理剤。
- 前記結晶性酸化チタン微粒子と無定型酸化チタン微粒子との混合割合が50/50〜95/5の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の環境物質処理剤。
- 前記結晶性酸化チタン微粒子がアナタース型酸化チタン微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の環境物質処理剤。
- 前記環境物質処理剤をヒトまたは動物上皮細胞と接触させて生成した防臭抗菌性蛋白質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の環境物質処理剤。
- 前記防臭抗菌性蛋白質がリゾチウム蛋白質であることを特徴とする請求項6に記載の環境物質処理剤。
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