JP2010265776A - 車両用手動変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両用手動変速機の制御装置において、変速時に駆動部品に係る高トルクを抑制しつつ、運転者による操作自由を確保することができる車両用手動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】入力軸回転速度Niに基づいて、許容回転速度差A(Ni)が設定されるため、クラッチ係合時に手動変速機16の回転要素をはじめとする駆動部品にかかるトルクによって耐久性が低下しない範囲において、運転者による操作自由度を確保することができる。例えば、運転者のシフト操作によってエンジンブレーキを発生させる場合において、許容回転速度差A(Ni)が手動変速機16の入力軸回転速度Niに基づいて好適に設定されることで、駆動部品の耐久性に影響が生じない範囲で、エンジンブレーキを適宜発生させることができる。
【選択図】図14

Description

本発明は、車両用手動変速機の制御装置に係り、特に、変速時における駆動部品にかかる負荷の抑制、および運転者による操作自由度の確保に関するものである。
エンジンと、手動変速機と、そのエンジンおよび手動変速機を選択的に接続するクラッチと、そのエンジンの回転速度と手動変速機の入力軸回転速度との差回転が許容回転速度差以下となるようにエンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御手段とを有する車両用手動変速機の制御装置が知られている。例えば、特許文献1の車両の変速時の制御装置がその一例である。特許文献1では、エンジン回転速度を制御することで、クラッチ係合時のエンジン回転速度を目標エンジン回転速度である、手動変速機の入力軸回転速度に同期させる技術が開示されている。
特開2008−267186号公報 特開昭63−13835号公報 特開昭63−13827号公報 特開平5−248536号公報 特開平10−339333号公報 特開2007−230271号公報
ところで、一般に手動変速機の入力軸回転速度とエンジンの回転速度との差回転(回転速度差)が大きい状態で、クラッチが係合されると、手動変速機の回転要素をはじめとする駆動部品に高トルクが負荷される。上記は、例えば急なエンジンブレーキを発生させる場合や運転者のミスシフトによる場合など、車速に対して低いギヤ段へシフト操作される場合に発生する。また、クラッチが解放された状態で、エンジン回転速度を大きく低下させた状態で、クラッチを係合する場合も同様に駆動部品に高トルクが負荷される。上記のように、駆動部品に高トルクが負荷されると、駆動部品の耐久性が低下する可能性が生じる。
これに対して、例えば特許文献1のように、手動変速機の入力軸回転速度とエンジン回転速度とが同期するようにエンジン回転速度を制御することで、クラッチ係合時に発生する高トルクを低減させて駆動部品に係る負荷を低減することができる。しかしながら、上記のように同期されると、運転者による操作自由度が減少する問題があった。すなわち、上記エンジン回転速度の同期が実施されると、駆動部品の耐久性低下が抑制される反面、運転者が必要とする駆動力変化(エンジンブレーキ)を十分に発生させることが困難となる問題があった。なお、上記課題は未公知であったため、上記課題を解決する好適な手段は未だ見出されていなかった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用手動変速機の制御装置において、変速時に駆動部品に係る高トルクを抑制しつつ、運転者による操作自由を確保することができる車両用手動変速機の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、手動変速機と、そのエンジンと手動変速機とを選択的に接続するクラッチと、そのクラッチ係合時においてエンジンの回転速度と手動変速機の入力軸回転速度との差回転が許容回転速度差以下となるようにそのエンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御手段とを、有する車両用手動変速機の制御装置において、(b)前記手動変速機の入力軸回転速度に基づいて、前記許容回転速度差が設定されることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用手動変速機の制御装置において、前記手動変速機の入力軸回転速度が大きい場合には、小さい場合と比較して前記許容回転速度差が小さくなることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両用手動変速機の制御装置において、前記手動変速機の入力軸回転速度が前記エンジンの許容回転速度よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、前記許容回転速度差が大きくなることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両用手動変速機の制御装置において、前記許容回転速度差が大きい場合には、小さい場合と比較して、前記クラッチの係合速度が遅くされることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用手動変速機の制御装置によれば、手動変速機の入力軸回転速度に基づいて、前記許容回転速度差が設定されるため、クラッチ係合時に手動変速機の回転要素をはじめとする駆動部品にかかるトルクによって耐久性が低下しない範囲において、運転者による操作自由度を確保することができる。例えば、運転者のシフト操作によってエンジンブレーキを発生させる場合において、許容回転速度差が手動変速機の入力軸回転速度に基づいて好適に設定されることで、駆動部品の耐久性に影響が生じない範囲で、エンジンブレーキを適宜発生させることができる。
また、請求項2にかかる発明の車両用手動変速機の制御装置によれば、前記手動変速機の入力軸回転速度が大きい場合には、小さい場合と比較して前記許容回転速度差が小さくなるものである。一般に、手動変速機の入力軸回転速度が大きい場合と小さい場合とでは、エンジン回転速度との差回転が同じであっても、入力軸回転速度が大きい場合の方が、駆動部品にかかるトルクが大きくなる。したがって、上記のように許容回転速度差が設定されることで、入力軸回転速度に応じた好適な許容回転速度差が設定されるため、駆動部品の耐久性を向上すると共に、運転者による操作自由度を入力軸回転速度に応じて確保することができる。
また、請求項3にかかる発明の車両用手動変速機の制御装置によれば、前記手動変速機の入力軸回転速度が前記エンジンの許容回転速度よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、前記許容回転速度差が大きくなるものである。このようにすれば、クラッチ係合時にエンジンのオーバーレブが発生する危険性がある場合には、許容回転速度差が大きく設定されるので、クラッチ係合後のエンジン回転速度がエンジンの許容回転速度よりも低くなり、クラッチ係合時のオーバーレブが防止される。
また、請求項4にかかる発明の車両用手動変速機の制御装置によれば、前記許容回転速度差が大きい場合には、小さい場合と比較して、前記クラッチの係合速度が遅くされるものである。このようにすれば、許容回転速度差が大きく設定されると、エンジンのオーバーレブが防止される反面、駆動部品に高トルクが負荷される可能性が高くなるが、クラッチの係合速度が遅くされることで、そのトルクを低減することができる。
本発明が適用された車両用駆動装置の概略構成を説明する骨子図である。 図1の手動変速機および終減速機の具体的構成を示す断面図である。 図1のクラッチの概略的な構造、およびクラッチを運転者のクラッチペダル操作に応じて係合、解放させる為の機構を概略的に示す図である。 図3の電子制御装置の制御作動の要部を説明するための機能ブロック線図である。 クラッチの係合が実施されたときのエンジン回転速度、入力軸回転速度、およびリングギヤトルク波形を実験的に測定した測定結果を示す図である。 クラッチの係合が実施されたときのエンジン回転速度、入力軸回転速度、およびリングギヤトルク波形を実験的に測定した測定結果を示す他の図である。 クラッチの係合が実施されたときのエンジン回転速度、入力軸回転速度、およびリングギヤトルク波形を実験的に測定した測定結果を示すさらに他の図である。 クラッチの係合が実施されたときのエンジン回転速度、入力軸回転速度、およびリングギヤトルク波形を実験的に測定した測定結果を示すさらに他の図である。 電子制御装置に予め記憶されている入力軸回転速度に基づいて設定される許容回転速度差に関する関係マップの一例である。 エンジンブレーキを発生させるためのシフト操作が実施されたときの入力軸回転速度およびエンジン回転速度の状態を説明するタイムチャートである。 電子制御装置に記憶されている、入力軸回転速度に基づいて設定されるエンジンの許容エンジン回転速度に関する関係マップの一例である。 電子制御装置に記憶されている、入力軸回転速度とエンジン回転速度との差回転に基づいて設定されるクラッチ係合速度に関する関係マップの一例である。 入力軸回転速度がオーバーレブ回転速度を越える状態でエンジンブレーキを発生させるためのシフト操作が実施されたときの入力軸回転速度およびエンジン回転速度の状態を説明するタイムチャートである。 電子制御装置の制御作動の要部すなわち例えばエンジンブレーキなど、運転者のシフト操作によって急な駆動力変化を発生させるに際して、クラッチ係合時に駆動部品にかかる発生トルクを許容発生トルクの範囲としつつ、駆動力変化を発生させる制御作動を説明するためのフローチャートである。
ここで、好適には、前記手動変速機の入力軸回転速度に応じて設定される許容回転速度差は、予め実験や計算によって求められ、クラッチ係合時に発生するトルクが、予め設定されている所定の許容発生トルクを越えない範囲となるように設定される。このようにすれば、クラッチ係合時において発生するトルクが前記許容発生トルクを越えないので、駆動部品の耐久性が向上すると共に、その範囲において運転者が必要とする駆動力変化(操作自由度)を得ることができる。
また、好適には、入力軸回転速度がエンジンの許容回転速度よりも大きい場合に設定される許容回転速度差は、予め実験や計算によって求められており、クラッチ係合後において、エンジン回転速度がエンジンの許容回転速度を越えないように設定されるものである。このようにすれば、クラッチ係合後にエンジン回転速度がエンジンの許容回転速度を超えないので、エンジンが好適に保護される。
また、好適には、前記クラッチの係合速度は、電気的に制御可能な可変オリフィスによって制御されるものである。このようにすれば、可変オリフィス内を通過するオイルの流量が電気式に制御可能となるので、そのオイルによって作動されるクラッチレリーズシリンダのストローク速度が制御可能となる。したがって、クラッチの係合速度を電気的に精度よく制御することができる。
また、好適には、前記クラッチを係合する際にクラッチの係合速度が制御される場合には、警告音を発生させる。このようにすれば、例えばクラッチの係合速度が制御されると、運転者の意図する駆動力変化と異なることとなり、運転者に違和感を与える可能性が生じる。これに対して、警告音を発生させることで、運転者に対して、駆動力変化による違和感の発生を知らせることができる。
また、好適には、前記手動変速機は、例えば前輪駆動方式(FF方式)、後輪駆動方式(FR方式)、および前後輪駆動方式(四輪駆動方式)等の駆動装置に適宜搭載される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の概略構成を説明する骨子図で、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、走行用駆動源としてのエンジン12、クラッチ14、車両用手動変速機16(以下、手動変速機16と記載)、および終減速機18等を備えている。
手動変速機16は、終減速機18と共に共通のハウジング20内に配設されてトランスアクスルを構成しており、そのハウジング20内に所定量だけ充填された潤滑油に浸漬され、終減速機18と共に潤滑されるようになっている。手動変速機16は、平行な1対の入力軸24、出力軸26間にギヤ比が異なり、且つ常時噛み合う複数対の変速ギヤ対28a〜28eが配設されると共に、それらの変速ギヤ対28a〜28eに対応して複数の噛合クラッチ30a〜30eが設けられた平行軸式常時噛合型変速機構と、それらの噛合クラッチ30a〜30eの3つのクラッチハブスリーブ32a、32b、32cの何れかを選択的に移動させて変速段を切り換えるシフト・セレクトシャフト34とを備えており、前進5速の変速段が成立させられるようになっている。入力軸24および出力軸26にはさらに後進ギヤ対36が配設され、図示しないカウンタシャフトに配設された後進用アイドル歯車と噛み合わされることにより後進変速段が成立させられるようになっている。なお、入力軸24は、スプライン部35によってクラッチ14のクラッチ出力軸37に連結されていると共に、出力軸26には、出力歯車38が配設されて終減速機18のリングギヤ40と噛み合わされている。図2は、上記手動変速機16および終減速機18の具体的構成を示す断面図で、図1、図2共に、入力軸24、出力軸26、およびリングギヤ40の軸心を共通の平面内に示した展開図である。
上記噛合クラッチ30a〜30eは何れも常時噛合式の同期噛合クラッチであり、シフト・セレクトシャフト34によって、噛合クラッチ30eが係合されることにより変速比(入力軸24の回転数/出力軸26の回転数)が最も大きい第1変速段が成立させられ、噛合クラッチ30dが係合されることにより変速比が2番目に大きい第2変速段が成立させられ、噛合クラッチ30cが係合されることにより変速比が3番目に大きい第3変速段が成立させられ、噛合クラッチ30bが係合されることにより変速比が4番目に大きい第4変速段が成立させられ、噛合クラッチ30aが係合されることにより変速比が最も小さい第5変速段が成立させられる。
終減速機18は傘歯車式のもので、図1に示される1対のサイドギヤ42R、42Lにはそれぞれドライブシャフト44R、44Lがスプライン嵌合などによって連結され、左右の前輪(駆動輪)46R、46Lを回転駆動させる。
図3に、図1のクラッチ14の概略的な構造、およびクラッチ14を運転者のクラッチペダル操作に応じて係合、解放させる為の機構を概略的に示す。クラッチ14は、エンジン12のクランクシャフト50に取り付けられたフライホイール52、クラッチ出力軸37に配設されたクラッチディスク56、クラッチハウジング58に配設されたプレッシャプレート60、プレッシャプレート60をフライホイール52側へ付勢することによりクラッチディスク56を挟圧して動力伝達するダイヤフラムスプリング62、クラッチアクチュエータとして機能するクラッチレリーズシリンダ64、そのクラッチレリーズシリンダ64によりレリーズフォーク66を介してフライホイール52側(図の左方向)へ移動させられることにより、ダイヤフラムスプリング62の内端部をフライホイール52側(図の左方向)へ変位させてクラッチ14を解放(遮断)するレリーズスリーブ68を有して構成されている。
そして、クラッチペダル70が運転者によって踏み込まれると、支点72を中心にクラッチペダル70が回動させられることにより、クレビス74を介してプッシュロッド75が軸方向に移動させられ、クラッチマスターシリンダ76内のオイルがパイプ78内を通ってクラッチレリーズシリンダ64へ供給される。このオイルによってクラッチレリーズシリンダ64のピストンが移動させられ、レリーズフォーク66を介してレリーズスリーブ68がダイヤフラムスプリング62を押圧することで、クラッチ14が解放させられる。また、クラッチペダル70の踏み込みが解除されると、オイルはクラッチマスターシリンダ76側へ移動する。
また、パイプ78には、パイプ78内を通るオイルの流量を調整するための可変オリフィス80が設けられている。この可変オリフィス80の開度Eが調節されることでオイルの流量が調節されることにより、クラッチレリーズシリンダ64のピストン移動速度、すなわちクラッチ14の係合速度Dが調節可能となる。さらに、本実施例では、例えばソレノイドバルブ82(電磁弁)によってその可変オリフィス80の開度Eが電気的に調節可能に構成されている。そして、ソレノイドバルブ82は電子制御装置84によって制御され、電子制御装置84の指令に基づいて可変オリフィス80の開度Eが制御される。
電子制御装置84は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。電子制御装置84には、エンジン回転速度センサ86からエンジン回転速度Neを表す信号、入力軸回転速度センサ88から手動変速機16の入力軸24の回転速度(入力軸回転速度Ni)を表す信号、ストローク速度センサ90からクラッチレリーズシリンダ64のピストンの移動速度SV(ストローク速度SV)すなわちクラッチ係合速度Dを表す信号が供給される。また、図示しない車速センサからの車速Vを表す信号、スロットル弁開度センサからスロットル弁開度θTHを表す信号、吸入空気量センサから吸入空気量Qを表す信号、エンジン冷却水温センサからエンジン水温を表す信号、レバーポジションセンサからレバーポジションを表す信号、アクセル開度センサからアクセル開度Accを表す信号、ブレーキスイッチからフットブレーキのON、OFFを表す信号等が供給される。
そして、上記信号に従って、電子制御装置84は、燃料噴射弁94の燃料噴射量や噴射時期を制御したり、図示しないイグナイタにより点火プラグの点火時期を制御したり、電動モータ等のスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁96の開度θTHを開閉制御したりして、エンジン12の出力状態を制御する。また、電子制御装置40は、レノイドバルブ82を制御することにより、ストローク速度SVを電気的に制御することで、クラッチ14の係合速度Dを電気的に制御する。
ところで、運転者によって急なエンジンブレーキが発生させられる場合や、運転者のシフトミスによって、車速に対して低速ギヤ段へ変速させられる場合などにおいて、クラッチ係合時に手動変速機16の回転要素をはじめとするの駆動部品に許容発生トルクを越える高トルクが負荷されると、駆動部品の耐久性が低下する可能性が生じる。これに対して、本実施例では、クラッチ14の係合時において駆動部品の耐久性が低下しない範囲内で運転者の要求する駆動力変化(エンジンブレーキ)を発生させるようにエンジン回転速度Neを制御することで、駆動部品の耐久性向上および運転者の操作自由度向上を両立させる。以下、上記制御について説明する。
図4は、電子制御装置84の制御作動の要部を説明するための機能ブロック線図である。なお、図において、一点鎖線で囲まれる各手段が電子制御装置84の機能を示すものである。オーバーレブ判定手段102は、入力軸回転速度センサ88によって検出される入力軸回転速度Niが、エンジン12の予め設定されている所定のオーバーレブ回転速度B以上か否かを判定する。なお、オーバーレブ回転速度Bは、エンジン12に固有に設定される許容回転速度(エンジンの許容回転速度)であり、エンジン回転速度Neがオーバーレブ回転速度Bを越えた場合に、エンジン12の耐久性に影響が生じる回転速度の閾値に設定されている。
許容回転速度差設定手段104は、入力軸回転速度センサ88によって検出された入力軸回転速度Niに基づい、クラッチ14の係合時において発生するトルクが所定の許容発生トルクTcr以下となるように、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの許容回転速度差を設定する。ここで、許容回転速度差設定手段104は、オーバーレブ判定手段102の判定結果に基づいて、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度Bを越える場合、すなわちクラッチ係合時にエンジン12がオーバーレブされる可能性のある場合、許容回転速度差の設定方法を変更する。
まず、オーバーレブ判定手段102が否定された場合、すなわち入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度B未満である場合の許容回転速度差設定手段104の制御作動について説明する。上記の場合、クラッチ14が係合されてもエンジン回転速度Neがオーバーレブ回転速度Bを越えることはない。このとき、許容回転速度差設定手段104は、記憶手段106に予め記憶されている入力軸回転速度Niに基づく関係マップや関係式等に基づいて許容回転速度差A(Ni)を設定する。ここで、入力軸回転速度Niが大きくなるに従って、同じ許容回転速度差A(Ni)であってもクラッチ係合時において駆動部品に負荷されるトルクが大きくなることが計算および実験によって知られている。下式(1)は、クラッチ係合時において発生する発生トルクTocの関係を示す関係式である。ここで、Iiが手動変速機16や終減速機18等の駆動系の総慣性モーメントを示しており、ωiが入力軸回転速度Niを角速度で示しており、Ieがエンジン12の慣性モーメントを示しており、ωeがエンジン回転速度Neを角速度で示しており、kが発生トルク算出時の係数をそれぞれ示している。
Toc=(Ii×ωi2−Ie×ωe2)×k・・・・(1)
式(1)より、発生トルクTocは、入力軸24の角速度ωiすなわち入力軸回転速度Niが大きくなるに従って大きくなる。また、エンジン12の角速度ωeすなわちエンジン回転速度Neが大きくなるに従って発生トルクTocは小さくなる。したがって、入力軸回転速度Niが大きくなるに従って、発生トルクTocが大きくなることから、それに応じてエンジン回転速度Neを大きくすることで、発生トルクTocが小さくなる。言い換えれば、入力軸回転速度Niが大きい場合、小さい場合と比べてエンジン回転速度Neを大きくする、すなわち許容回転速度差(A(Ni)=Ni−Ne)を小さくすることで発生トルクTocが小さくなる。
図5乃至図8は、異なる条件下において、クラッチ14の係合が実施されたときのエンジン回転速度Ne、入力軸回転速度Ni、およびリングギヤトルク波形を実験的に測定した測定結果を示す図である。なお、リングギヤトルクは、図1のリングギヤ40を駆動部品の代表部品とし、そのリングギヤ40にかかるトルク(発生トルクTocに対応)に相当する。なお、上記リングギヤトルクは、例えばロードセル等によって検出される。
図5は、クラッチ14が解放された状態で実線で示す入力軸回転速度Niが7000rpm程度で回転中に、破線で示すエンジン回転速度Neが3000rpm程度となった際にクラッチ14を係合させた場合のリングギヤ40のトルク波形を示している。図に示すように、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが4000rpm程度となったときにクラッチ14の係合が開始されると、リングギヤ40に−3000N・m(−3800N・m程度)を越えるトルクが負荷される。なお、リングギヤトルクが負のトルクになるのは、エンジンブレーキが生じることから、車両停止側へのトルクとなるためである。
また、図6においては、クラッチ14が解放された状態で入力軸回転速度Niが7000rpm程度で回転中に、エンジン回転速度Neが4000rpm程度となった際にクラッチ14を係合させた場合のリングギヤ40のトルク波形を示している。図に示すように、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが3000rpm程度となったときにクラッチ14の係合が開始されると、リングギヤ40に−3000N・mを越える(−3200N・m程度)トルクが負荷される。
さらに、図7においては、クラッチ14が解放された状態で入力軸回転速度Niが7000rpm程度で回転中に、エンジン回転速度Neが4800rpm程度となった際にクラッチ14を係合させた場合のリングギヤ40のトルク波形を示している。図に示すように、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが2200rpm程度となったときにクラッチ14の係合が開始されると、リングギヤ40に−3000N・m程度のトルクが負荷される。
図5乃至図7より、入力軸回転速度Niが同じ回転速度(7000rpm)でクラッチ14の係合が開始されても、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが大きくなると、発生トルクToc(リングギヤトルク)が大きくなることが示される。
図8は、クラッチ14が解放された状態で入力軸回転速度Niが4000rpm程度で回転中であって、エンジン回転速度Neが1000rpm程度で回転している際にクラッチ14を係合させた場合のリングギヤ40のトルク波形を示している。図に示すように、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが3000rpmであっても、リングギヤトルクが3000N・m以下となる。すなわち、図6および図8を比較するとわかるように、同じ差回転ΔNであっても、入力軸回転速度Niが大きい程、発生トルクTocが大きくなる。なお、上記は、入力軸回転速度Niが大きいと、駆動系のイナーシャエネルギ(慣性エネルギ)が大きくなることに起因するものである。
上記特性に基づいて、許容回転速度設定手段104が許容回転速度差A(Ni)を設定する際に使用される入力軸回転速度Niに基づく関係マップが実験乃至は計算によって作成され、記憶手段106に記憶される。
図9は、記憶手段106に予め記憶されている入力軸回転速度Niに基づいて設定される許容回転速度差A(Ni)に関する関係マップの一例である。図において、横軸が目標となる許容回転速度差A(Ni)を示しており、縦軸がその許容回転速度差A(Ni)で発生する発生トルクTocを示している。また、Tcrは許容発生トルクを示しており、この許容発生トルクTcrを越えないように、許容回転速度差A(Ni)が決定される。なお許容発生トルクTcrは、予め実験的に求められるものであり、例えば手動変速機16をはじめとする駆動部品の耐久性が低下しないトルク値の閾値に設定されている。したがって、発生トルクTocが許容発生トルクTcrとなる(図9において許容発生トルクTcrの線上)許容回転速度差A(Ni)に設定されると、クラッチ係合時に駆動部品の耐久性が低下しない限度において、最大限の駆動力変化(減速力、エンジンブレーキ力)を発生させることが可能となる。
図9より、例えば、入力軸回転速度Niが3000rpmの場合、許容回転速度差がA(3000)rpm以下に設定される。また、入力軸回転速度Niが5000rpmの場合、許容回転速度差A(5000)rpm以下に設定される。また、入力軸回転速度Niが7000rpmの場合、許容回転速度差がA(7000)rpm以下に設定される。上記関係マップに基づいて許容回転速度差A(Ni)が設定される。例えば、許容発生トルクTcrが3000N・mであった場合、図7より、入力軸回転速度Niが7000rpmでは、許容回転速度差A(7000)は、2200rpm程度となる。なお、図9にも示すように、入力軸回転速度Niが大きくなる場合には、小さい場合と比較して、許容回転速度差が小さくなる。また、図9においては、入力軸回転速度Niが3000、5000、および7000rpmの3例のみ示されているが、実際には他の入力軸回転速度Niに対してもさらに細かく設定されている。
そして、エンジン回転速度制御手段108は、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neの差回転ΔNが許容回転速度差設定手段104によって設定された許容回転速度差A(Ni)となるようにエンジン回転速度Neを制御する。具体的には、エンジン回転速度制御手段108は、電子スロットル弁96のスロットル弁開度θTH、や燃料噴射弁94によって燃料噴射量を制御することにより、エンジン回転速度Neを制御する。なお、エンジン回転速度Neは、例えばエンジン回転速度センサ86によって逐次検出され、許容回転速度差A(Ni)と差回転ΔNとの偏差に基づいてフィードバック制御される。
図10は、エンジンブレーキを発生させるためのシフト操作が実施されるに際して、許容回転速度設定手段104に基づくエンジン回転速度制御手段108が実施されたときの入力軸回転速度Niおよびエンジン回転速度Neの状態を説明するタイムチャートである。図10において、t1時点で運転者のクラッチペダル70の踏み込み操作によってクラッチ14が遮断(解放)され、エンジンブレーキを発生させるために低速ギヤ段にシフト操作されると、t2時点において手動変速機16の噛合クラッチ30による回転同期が開始される。したがって、t2時点〜t3時点の間では、実線で示す入力軸回転速度Niが上昇する。このとき、許容回転速度差設定手段104が実施され、入力軸回転速度Niに基づいて許容回転速度差A(Ni)が設定され、その許容回転速度差A(Ni)となるように、エンジン回転速度制御手段108によってエンジン回転速度Neが制御される。t3時点では、噛合クラッチ30による同期が完了すると、入力軸回転速度Niの回転速度上昇が停止する。そして、t4時点において差回転ΔNが許容回転速度差A(Ni)となり、t5時点において、運転者によるクラッチペダル操作によってクラッチ14が係合が係合される。このとき、t5時点で発生する発生トルクTocが許容発生トルクTcr以下となる。また、設定された許容回転速度差A(Ni)に応じたエンジンブレーキ(駆動力変化)が発生する。上記より、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度B未満の場合、エンジン回転速度制御108のみによる制御が実施される。
次に、オーバーレブ判定手段102が肯定された場合、すなわち入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度B以上である場合の許容回転速度差設定手段104による制御について説明する。上記の場合も同様に許容回転速度差設定手段104は、記憶手段106に予め記憶されている入力軸回転速度Niに基づく関係マップ(入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度B以上時に適用される)や関係式等に基づいて、エンジン回転速度Neの目標回転速度となる許容エンジン回転速度C(Ni)を設定する。なお、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度Bを越える場合には、許容回転速度差A(Ni)ではなく、許容エンジン回転速度C(Ni)としたが、許容エンジン回転速度C(Ni)は入力軸回転速度Niに基づいて設定されるので、実質的には許容回転速度差A(Ni)を設定することと同意である。すなわち、オーバーレブ判定手段102肯定時の許容回転速度差A(Ni)は、入力軸回転速度Niと狙い回転速度C(Ni)との差(=Ni−C(Ni))となる。
図11は、記憶手段106に予め記憶されている入力軸回転速度Niに基づいて設定されるエンジン12の許容エンジン回転速度C(Ni)に関する関係マップの一例である。図において、横軸が入力軸回転速度Niであり、縦軸がエンジン12の許容エンジン回転速度C(Ni)である。なお、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度B未満の領域では、図9に示す関係マップが適用される。図11において、例えば入力軸回転速度NiがNaであった場合、許容エンジン回転速度C(Na)となる。そして、エンジン12の許容エンジン回転速度C(Ni)が設定されると、エンジン回転速度制御手段108は、エンジン回転速度Neがその許容エンジン回転速度C(Ni)となるように回転速度制御を実施する。具体的には、エンジン回転速度制御手段108は、例えばエンジン回転速度センサ86によってエンジン回転速度Neを逐次検出し、狙い回転速度C(Ni)とエンジン回転速度Neとの偏差に基づいてフィードバック制御を実行する。なお、上記許容エンジン回転速度C(Ni)は、予め実験または計算によって求められるものであり、クラッチ14が係合されたときのエンジン12および入力軸24の回転速度がオーバーレブ回転速度Bを超えない回転速度Ntotalとなるように設定される。
また、クラッチ係合前のエンジン12および入力軸24の回転状態および係合後の回転状態は下式(2)の関係でも示される。ここで、Iiが手動変速機16や終減速機18等の駆動系の慣性モーメントを示しており、ωiが入力軸回転速度Niを角速度で示しており、Ieがエンジン12の慣性モーメントを示しており、ωeがエンジン回転速度Neを角速度で示しており、ωtotalがクラッチ係合後のエンジン12および入力軸24の回転速度Ntotalを角速度で示している。
Ii×ωi2+Ie×ωe2=(Ii+Ie)×ωtotal2・・・・・(2)
上記式(2)より、エンジン回転速度Neを小さくすることで、係合後の角速度ωtotol(すなわち回転速度Ntotal)が小さくなる。したがって、入力軸回転速度Niが大きくなるに従って、エンジン回転速度Neの目標となる許容エンジン回転速度C(Ni)を低くする、すなわち許容回転速度差A(Ni)を大きくすることで、回転速度Ntotalがオーバーレブ回転速度Bを越えることが防止される。
ここで、図11の関係マップに基づいて設定される狙い回転速度C(Ni)および入力軸回転速度Niの差で算出される許容回転速度差A(Ni)は、図9の関係マップに基づいて設定される許容回転速度差A(Ni)よりも大きく設定されている。すなわち、入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度Bよりも大きい場合には、オーバーレブ回転速度B以下の場合と比べて許容回転速度差A(Ni)が大きくなるように関係マップが設定されている。上記より、入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度Bよりも大きい場合、許容回転速度差A(Ni)が大きくなるので、クラッチ14の係合時において係合時の発生トルクTocが許容発生トルクTcrを越える可能性が生じる。
これに対して、図4に示すクラッチ係合速度制御手段110(以下、係合速度制御手段110と記載)は、係合時の差回転ΔNに応じてクラッチ係合速度Dを制御する。具体的には、係合速度制御手段110は、差回転ΔNが大きい場合には、小さい場合と比較してクラッチ14の係合速度Dを遅くすることで、発生トルクTocの高トルク化を抑制する。
図12は、記憶手段106に予め記憶されている差回転ΔN(=Ni−Ne)に基づいて設定されるクラッチ係合制限速度Dmaxに関する関係マップの一例である。なお、図12に示す関係マップは、予め実験的または計算的に求められる。図において、横軸が目標となるクラッチ係合制限速度Dmaxを示しており、縦軸がクラッチ係合時に発生する発生トルクTocを示している。また、Tcrは、許容発生トルクを示している。したがって、発生トルクTocが許容発生トルクTcr以下となるように、クラッチ係合制限速度Dmaxが設定される。
図12より、例えば差回転ΔNが2000rpmの場合、クラッチ係合制限速度DmaxがD(2000)となる。また、差回転ΔNが4000rpmの場合、クラッチ係合制限速度DmaxがD(4000)となる。また、差回転ΔNが8000rpmの場合、クラッチ係合制限速度DmaxがD(8000)となる。すなわち、差回転ΔNが大きくなるに従って、クラッチ係合制限速度Dmaxが遅くなる。なお、図12においては、差回転ΔNが2000、4000、および8000rpmの3例のみ示されているが、実際には他の差回転ΔNにおいてもさらに細かく設定される。
そして、係合速度制御手段110は、図12の関係マップから求められたクラッチ係合制限速度Dmax以下となるように、クラッチ14の係合速度Dを制御(制限)する。具体的には、係合速度制御手段110は、図3に示す可変オリフィス80をソレノイドバルブ82によって制御することで、オイルの流量を調節してクラッチ係合速度Dを制御(制限)する。具体的には、例えばストローク速度センサ90によって検出されるストローク速度SVに基づいて実際のクラッチ係合速度Dが逐次算出され、算出された実際のクラッチ係合速度が設定されたクラッチ係合制限速度Dmax以下となるように制御される。したがって、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度Bを越える場合、エンジン回転速度制御手段108およびクラッチ係合速度制御110による協調制御が実施される。
図13は、入力軸回転速度Niがオーバーレブ回転速度Bを越える状態でクラッチ係合が実施されるときの入力軸回転速度Niおよびエンジン回転速度Neの状態を説明するタイムチャートである。図13において、t1時点において運転者のクラッチペダル70の踏み込み操作によってクラッチ14が遮断(解放)され、エンジンブレーキを発生させるために低速ギヤ段へシフト操作されると、t2時点において手動変速機16の噛合クラッチ30による同期が開始される。したがって、t2時点〜t4時点の間では、実線で示す入力軸回転速度Niが上昇する。このとき、許容回転速度差設定手段104が実施され、図9に示す関係マップから入力軸回転速度Niに基づいて許容回転速度差A(Ni)が設定され、その許容回転速度差A(Ni)となるように、エンジン回転速度制御手段108によってエンジン回転速度Neが制御される。ここで、t3時点において、入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度Bを越えると、許容回転速度差設定手段104は、エンジン回転速度Neの目標回転速度を変更する。具体的には、入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度Bを越えると、許容回転速度差設定手段104は、図11に示す関係マップに基づいてエンジン12の許容エンジン回転速度C(Ni)を設定する。そして、エンジン回転速度制御手段108は、その許容エンジン回転速度C(Ni)となるように、エンジン回転速度Neを制御する。そして、t4時点において噛合クラッチ30による同期が完了すると、入力軸回転速度Niの回転速度上昇が停止する。t5時点ではエンジン回転速度Neが許容エンジン回転速度C(Ni)に到達し、運転者のクラッチペダル操作によってクラッチ14が係合させられる。このときクラッチ係合速度制御手段110は、t5時点における差回転ΔN(=Ni−Ne)に基づいて、発生トルクTocが許容発生トルクTcr以下となるクラッチ係合制限速度Dmaxを設定し、クラッチ係合速度Dがクラッチ係合制限速度Dmax以下となるようにクラッチ係合速度Dを制御(制限)する。
このとき、クラッチ係合速度Dが通常時よりも遅くなることから、運転者の意図する駆動力変化(エンジンブレーキ)とは異なるので、運転者に違和感を感じさせる可能性が生じる。これに対して、クラッチ係合速度制御手段110は、例えば図4に示すブザー等の警告音発生手段112に対して警告音を発生させる命令を出力する。そして、警告音発生手段112は、警告音発生装置114から警告音を発生させて、運転者に対して違和感の発生を警告する。なお、警告音は、例えばブレーキペダルのオン操作が検出された場合や、エンジン回転速度Neが入力軸回転速度Niと等しくなった場合(クラッチ係合完了)に停止される。
そして、クラッチ14の係合が完了すると、エンジン12および入力軸24の回転速度Ntotalがオーバーレブ回転速度Bよりも小さくなると共に、クラッチ係合時に発生する発生トルクTocが許容発生トルクTcrよりも小さくなる。
図14は、電子制御装置84の制御作動の要部すなわち例えばエンジンブレーキなど、運転者のシフト操作によって急な駆動力変化を発生させるに際して、クラッチ係合時に駆動部品にかかる発生トルクTocを許容発生トルクTcrの範囲としつつ、駆動力変化を発生させる制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、図14においては、走行中に運転者によってクラッチペダル70が踏み込まれることで、クラッチ14が解放(遮断)された状態で、低速ギヤ段へのシフト操作が実施されたときから開始される。
まず、許容回転速度差設定手段104および記憶手段106に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、入力軸回転速度Niに基づいて設定される許容回転速度差A(Ni)とエンジン回転速度Neとの和が、入力軸回転速度Niよりも大きいか否かが判定される。SA1が否定される場合、その状態でクラッチ14が係合されても発生トルクTocが許容発生トルクTcr以下となると判断され、通常通りクラッチ14が係合されて本ルーチンが終了させられる。一方、SA1が肯定されると、オーバーレブ判定手段102に対応するSA2において、入力軸回転速度Niが予め設定されているオーバーレブ回転速度B以上か否かが判定される。SA2が否定されると、許容回転速度差設定手段104、記憶手段106、およびエンジン回転速度制御手段108に対応するSA7において、例えば図9に示すような関係マップから入力軸回転速度Niに基づいて許容回転速度差A(Ni)が設定され、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔNが許容回転速度差A(Ni)となるように、エンジン回転速度Neが制御される。そして、差回転ΔNが許容回転速度差A(Ni)となった状態でクラッチ14の係合が実施されることで、発生トルクTocが許容発生トルクTcr以下の範囲において、駆動力変化(エンジンブレーキ)が得られることとなる。なお、上記は図10のタイムチャートにおいて、t2時点〜t5時点の間の制御に対応している。
一方、SA2が肯定されると、許容回転速度差設定手段104、記憶手段106、およびエンジン回転速度制御手段108に対応するSA3において、例えば図11に示す関係マップから入力軸回転速度Niに基づいて、許容エンジン回転速度C(Ni)が設定され、エンジン回転速度Neがその許容エンジン回転速度Neとなるように制御される。そして、エンジン回転速度Neが許容エンジン回転速度C(Ni)となった後に運転者のクラッチペダル操作によるクラッチ係合が実施されるが、クラッチ係合に際して、クラッチ係合速度制御手段110に対応するSA4において、入力軸回転速度Niとエンジン回転速度Neとの差回転ΔN(=Ni−Ne)に応じたクラッチ係合制限速度Dmaxが設定される。そして、SA5において、エンジン回転速度Neが、SA3において設定された許容エンジン回転速度C(Ni)よりも大きいか否かが判定される。SA5が否定される場合、SA1に戻って再び同様の制御が実施される。一方、SA5が肯定される場合、警告音発生手段112およびクラッチ係合速度制御手段110に対応するSA6において、SA4において設定されたクラッチ係合制限速度Dmaxを上限速度としてクラッチ係合が実施される。また、これに併せて警告音が発生させられる。なお、上記警告音は、運転者の意図する駆動力(減速力)変化が実際の変化と異なることを運転者に知らせるためのものである。
上述のように、本実施例によれば、手動変速機19の入力軸回転速度Niに基づいて、許容回転速度差A(Ni)が設定されるため、クラッチ係合時に手動変速機16の回転要素をはじめとする駆動部品にかかるトルクによって耐久性が低下しない範囲において、運転者による操作自由度を確保することができる。例えば、運転者のシフト操作によってエンジンブレーキを発生させる場合において、許容回転速度差A(Ni)が手動変速機16の入力軸回転速度Niに基づいて好適に設定されることで、駆動部品の耐久性に影響が生じない範囲で、エンジンブレーキを適宜発生させることができる。
また、本実施例によれば、手動変速機16の入力軸回転速度Niが大きい場合には、小さい場合と比較して許容回転速度差A(Ni)が小さくなるものである。一般に、手動変速機16の入力軸回転速度Niが大きい場合と小さい場合とでは、エンジン回転速度Neとの差回転ΔNが同じであっても、入力軸回転速度Niが大きい場合の方が、駆動部品にかかるトルクが大きくなる。したがって、上記のように許容回転速度差A(Ni)が設定されることで、入力軸回転速度Niに応じた好適な許容回転速度差A(Ni)が設定されるため、駆動部品の耐久性を向上すると共に、運転者による操作自由度を入力軸回転速度Niに応じて確保することができる。
また、本実施例によれば、手動変速機16の入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度B(許容回転速度)よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、許容回転速度差A(Ni)が大きくなるものである。このようにすれば、クラッチ係合時にエンジン12のオーバーレブが発生する危険性がある場合には、許容回転速度差A(Ni)が大きく設定されるので、クラッチ係合後のエンジン回転速度Neがエンジン12のオーバーレブ回転速度Bよりも低くなり、クラッチ係合時のオーバーレブが防止される。
また、本実施例によれば、許容回転速度差A(Ni)が大きい場合には、小さい場合と比較して、クラッチ14の係合速度Dが遅くされるものである。このようにすれば、許容回転速度差A(Ni)が大きく設定されると、エンジン12のオーバーレブが防止される反面、駆動部品に高トルクが負荷される可能性が高くなるが、クラッチ14の係合速度Dが遅くされることで、そのトルクを低減することができる。
また、本実施例によれば、手動変速機16の入力軸回転速度Niに応じて設定される許容回転速度差A(Ni)は、予め実験や計算によって求められ、クラッチ係合時に発生するトルクが、予め設定されている所定の許容発生トルクTcrを越えない範囲となるように設定される。このようにすれば、クラッチ係合時において発生する発生トルクTocが許容発生トルクTcrを越えないので、駆動部品の耐久性が向上すると共に、その範囲において運転者が必要とする駆動力変化(操作自由度)を得ることができる。
また、本実施例によれば、入力軸回転速度Niがエンジン12のオーバーレブ回転速度B(許容回転速度)よりも大きい場合に設定される狙い回転速度C(Ni)は、予め実験や計算によって求められており、クラッチ係合後において、エンジン回転速度Neがエンジン12のオーバーレブ回転速度B(許容回転速度)を越えないように設定されるものである。このようにすれば、クラッチ係合後にエンジン回転速度Neがエンジンのオーバーレブ回転速度B(許容回転速度)を超えないので、エンジン12が好適に保護される。
また、本実施例によれば、クラッチ14の係合速度Dは、電気的に制御可能な可変オリフィス80によって制御されるものである。このようにすれば、可変オリフィス80内を通過するオイルの流量が電気式に制御可能となるので、そのオイルによって作動されるクラッチレリーズシリンダ64のストローク速度SVが制御可能となる。したがって、クラッチ14の係合速度Dを電気的に精度よく制御することができる。
また、本実施例によれば、クラッチ14を係合する際にクラッチ14の係合速度Dが制御される場合には、警告音を発生させる。このようにすれば、例えばクラッチ14の係合速度Dが制限されると、運転者の意図する駆動力変化と異なることとなり、運転者に違和感を与える可能性が生じる。これに対して、警告音を発生させることで、運転者に対して、駆動力変化による違和感の発生を知らせることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、前輪駆動を基本とする車両用駆動装置に本発明が適用されているが、必ずしも前輪駆動方式(FF方式)に限定されず、後輪駆動方式(FR方式)や四輪駆動方式の駆動装置であっても本発明を適用することができる。
また、前述の実施例において、図14に示すステップSA1およびSA2の順序を逆にしても構わない。
また、前述の実施例において、図14に示すSA6の警告音は必ずしも必要なものではなく、省略して実施しても構わない。
また、前述の実施例では、許容回転速度A(Ni)や許容エンジン回転速度C(Ni)は予め記憶されている関係マップに基づいて設定されたが、例えば予め設定されている関係式等に基づいて許容回転速度A(Ni)や許容エンジン回転速度C(Ni)が設定されても構わない。
また、前述の実施例では、図9および図12においてそれぞれ3つの例のみが示されているが、実際には、さらに細かく設定されるものである。また、補間等を用いて、所定の入力軸回転速度Niや差回転ΔNでの許容回転速度A(Ni)やクラッチ係合速度Dをさらに精度良く算出するものであっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:エンジン
14:クラッチ
16:手動変速機
108:エンジン回転速度制御手段
Ne:エンジン回転速度
Ni:入力軸回転速度
A(Ni):許容回転速度差
C(Ni):許容エンジン回転速度
B:オーバーレブ回転速度(エンジンの許容回転速度)

Claims (4)

  1. エンジンと、手動変速機と、該エンジンと該手動変速機とを選択的に接続するクラッチと、該クラッチ係合時において該エンジンの回転速度と該手動変速機の入力軸回転速度との差回転が許容回転速度差以下となるように該エンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御手段とを、有する車両用手動変速機の制御装置であって、
    前記手動変速機の入力軸回転速度に基づいて、前記許容回転速度差が設定されることを特徴とする車両用手動変速機の制御装置。
  2. 前記手動変速機の入力軸回転速度が大きい場合には、小さい場合と比較して前記許容回転速度差が小さくなることを特徴とする請求項1の車両用手動変速機の制御装置。
  3. 前記手動変速機の入力軸回転速度が前記エンジンの許容回転速度よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、前記許容回転速度差が大きくなることを特徴とする請求項1または2の車両用手動変速機の制御装置。
  4. 前記許容回転速度差が大きい場合には、小さい場合と比較して、前記クラッチの係合速度が遅くされることを特徴とする請求項3の車両用手動変速機の制御装置。
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