以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用されたハイブリッド車両10(以下、車両10という)を構成するエンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。
図1において、車両用動力伝達装置16(以下、動力伝達装置16という)は、車体にボルト止め等によって取り付けられる非回転部材としての図示しないトランスミッションケース内において、エンジン12側から順番に、噛合クラッチ(ドグクラッチ)からなるエンジン切離クラッチ装置(エンジン切離クラッチ)K0、第2電動機MG2、及び自動変速機18等を備えている。また、動力伝達装置16には、自動変速機18の出力回転部材である変速機出力軸20に連結されたプロペラシャフト22と、そのプロペラシャフト22に連結された差動歯車装置24と、その差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等とが備えられている。上記動力伝達装置16において、エンジン12の動力は、エンジン切離クラッチ装置K0が接続された場合に、エンジン12のクランク軸とエンジン切離クラッチ装置K0とを連結するエンジン連結軸28から、エンジン切離クラッチ装置K0、第2電動機MG2、自動変速機18、プロペラシャフト22、差動歯車装置26、及び1対の車軸26等を順次介して1対の駆動輪14へ伝達されるようになっている。なお、動力伝達装置16には、エンジン12のクランク軸に一体的に連結されたロータ30を有する第1電動機MG1が備えられている。
また、車両10には、図示していないが、例えば、自動変速機18の変速作動を制御する油圧制御回路と、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動を制御するインバータと、そのインバータを介して第1電動機MG1、第2電動機MG2との間で電力を授受する蓄電装置等とが備えられている。
自動変速機18は、例えば複数組の遊星歯車装置および複数の摩擦係合装置(クラッチ、ブレーキ)を備える有段式の自動変速機、有効径が可変の一対可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けられた無段変速機、或いはシフトセレクトアクチュエータによって複数対のギヤ対が自動的に選択される常時噛合型平行軸式変速機などにより構成されている。
第1電動機MG1および第2電動機MG2は、電気エネルギから機械的な動力を発生させる発動機としての機能および機械的なエネルギーから電気エネルギを発生させる発電機としての機能を有する所謂モータジェネレータである。上記第1電動機MG1は、例えば、エンジン12の始動時においてエンジン12を回転駆動(クランキング)させたり、エンジン12の回転速度、エンジン12から出力されるトルクを制御する。上記第2電動機MG2は、エンジン12に替えて或いはエンジン12に加えて、上記インバータを介して上記蓄電装置から供給される電力により走行用の動力を発生する。第1電動機MG1は、エンジン12のクランク軸に動力を入出力可能に動力伝達装置16に配設されており、第2電動機MG2は、エンジン切離クラッチ装置K0から駆動輪14の間に動力を入出力可能に動力伝達装置16に配設されている。
エンジン切離クラッチ装置K0は、図1に示すように、エンジン連結軸28の端部に一体的に設けられ、外周に第1外周嵌合歯32aを有する略円板形状の第1歯車32と、第2電動機MG2のロータ34に一体的に連結された第2電動機連結軸36の端部に一体的に設けられ、外周に第2外周嵌合歯38aを有する略円板形状の第2歯車38と、それら第1外周嵌合歯32aおよび第2外周嵌合歯38aと嵌合可能な内周歯40aが形成されて軸線C1方向に移動可能に設けられたスリーブ40と、そのスリーブ40を軸線C1方向に移動させるアクチュエータ42とを備える噛み合い式の噛合クラッチ(断接装置)である。つまり、エンジン切離クラッチ装置K0は、第1歯車32と第2歯車38との間を選択的に連結するための嵌合クラッチ、すなわち、エンジン12から駆動輪14の間を接続または切り離す噛合クラッチである。なお、上記アクチュエータ42は、後述する電子制御装置(制御装置)44から出力される指令信号によってスリーブ40を軸線C1方向に駆動させる。なお、エンジン切離クラッチ装置K0では、好適には、よく知られた同期機構が設けられている。
以上のように構成されたエンジン切離クラッチ装置K0では、図1に示すようにそのエンジン切離クラッチ装置K0が切り離された状態の時には、第1歯車32と第2歯車38との接続が遮断されるので、駆動輪14にはエンジン12からの動力が伝達されない。一方、アクチュエータ42によってスリーブ40が軸線C1方向に移動させられて、第1外周嵌合歯32aおよび第2外周嵌合歯38aが共にそのスリーブ40の内周歯40aと噛み合うと、エンジン切離クラッチ装置K0が接続され、第1歯車32と第2歯車38とが接続される。これによって、駆動輪14にエンジン12からの動力が伝達される。
上述のように構成されたハイブリッド車両10では、例えば運転者から要求される要求駆動力が第2電動機MG2の出力のみで賄える範囲の場合に、走行モードをモータ走行モード(EV走行モード)とし、エンジン切離クラッチ装置K0を切り離した状態で、エンジン12を停止させて第2電動機MG2のみを走行用の駆動源として走行するモータ走行(EV走行)が行われる。また、上記モータ走行中において、例えば運転者から要求される要求駆動力が少なくともエンジン12の出力を用いないと賄えない範囲になると、第1電動機MG1を用いてエンジン12を回転駆動(クランキング)させると共に電子スロットル弁の開閉制御、燃料供給制御、点火時期制御を実行させてエンジン12を始動させる。その後、第1電動機MG1を制御してエンジン連結軸28と第2電動機連結軸36との回転数を略一致すなわちエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数を略一致させると共にエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiを略零にさせて、エンジン切離クラッチ装置K0を接続させる。これによって、上記走行モードが上記モータ走行モードからエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行モード(HV走行モード)に切り換えられ、エンジン切離クラッチ装置K0を接続した状態で、エンジン12および第2電動機MG2を走行用の駆動源として走行するハイブリッド走行(HV走行)が行われる。また、上記ハイブリッド走行中において、例えば運転者から要求される要求駆動力が第2電動機MG2の出力のみで賄える範囲になると、エンジン切離クラッチ装置K0のエンジン連結軸28(第1歯車32)のトルクすなわちエンジン12と第1電動機MG1との合計トルクが略零になるように制御されて、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される。そして、その後エンジン燃料カットが行われてエンジン12が停止する。これによって、車両10の走行が上記ハイブリッド走行から上記モータ走行に切り換えられる。
車両10には、図1に例示するような電子制御装置44が備えられている。電子制御装置44は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両10の駆動状態を車両の走行状態に応じて制御する。また、電子制御装置44には、各種センサによって検出される情報が供給される。例えば、エンジン回転速度センサ46によって検出されるエンジン回転数NE(rpm)、第2電動機回転速度センサ48によって検出される第2電動機回転数Nm2(rpm)、アクセル開度センサ50によって検出されるアクセルペダル52の操作量であるアクセル開度Acc、スロットル開度センサ54によって検出されるスロットル開度θth、吸入空気量センサ56によって検出される吸入空気量Q、車速センサ58によって検出される車速V等が供給される。
図2は、電子制御装置44に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図2に示すMG1トルク設定制御部60は、例えば運転者からの要求駆動トルク(要求駆動力)Tiの変化に基づいて上記モータ走行モードから上記ハイブリッド走行モードへの切換えが実行され第1電動機MG1によりエンジン12が始動された場合に、エンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数を同期すると共にそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiを略零にするように、第1電動機MG1のトルクTM1を制御する。
クラッチ嵌合判定部62は、MG1トルク設定制御部60でエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数が同期し且つエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零となると、エンジン切離クラッチ装置K0の接続操作が開始されたか否かを判定、すなわちアクチュエータ42によってスリーブ40が軸線C1方向に移動させられたか否かを判定する。例えば、クラッチ嵌合判定部62では、エンジン切離クラッチ装置K0の開始操作が開始されたか否かを、電子制御装置44からアクチュエータ42に供給される指令信号に基づいて判定する。
TE、TE脈動量推定部64は、クラッチ嵌合判定部62でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されたと判定されると、エンジントルクTEの平均値(平均TE)と、そのエンジントルクTEの脈動の振幅dTeをエンジン12のポンピング状態、燃焼状態の関連値から推定する。TE、TE脈動量推定部64では、例えば、上記脈動の振幅dTeは、気筒内空気量が少ないほど、または点火時期の遅角量が多いほど、小さいと推定されるようになっている。なお、上記気筒内空気量は、例えば、エンジン始動後の経過時間t、エンジン回転数NE、吸入空気量Q、スロットル開度θth等から推定される。また、TE、TE脈動量推定部64において、エンジントルクTEは、例えば、エンジン回転数NEとアクセル開度Accとからマップを用いて推定される。
TE、TE脈動量判定部66は、TE、TE脈動量推定部64でエンジントルクTEの平均値と、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeとが推定されると、その推定されたエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であるか否かを判定し、且つ、その推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1以下であるか否かを判定する。なお、上記所定値ΔT1は、例えば、歯打ち音(異音)の抑制を必要とするエンジントルクTEの脈動の振幅dTeであるかを判定するために実験的に定められた判定値である。また、上記所定値T1は、例えば、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの平均値が正領域になるか負領域になるかを判定するために実験的に定められた判定値である。
上限値、下限値設定部68は、TE、TE脈動量判定部66で推定されたエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であると判定され且つ推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1以下であると判定されると、実験的に定められたエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの上限値Aを設定する。また、上限値、下限値設定部68は、TE、TE脈動量判定部66で推定されたエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であると判定され且つ推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1より大きいすなわち所定値T1以下ではないと判定されると、実験的に定められたエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの下限値Bを設定する。
MG1トルク設定制御部60は、クラッチ嵌合判定部62でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されたと判定され、且つTE、TE脈動量判定部66で推定されたエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1より小さいすなわち所定値ΔT1以上ではないと判定されると、第1電動機MG1で実行されているエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数を同期させると共にそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiを略零にさせるトルク制御を停止する。例えば、第1電動機MG1のトルクTM1を零にする。
また、MG1トルク設定制御部60は、クラッチ嵌合判定部62でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されたと判定され、且つTE、TE脈動量判定部66でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であると判定され、且つ上限値、下限値設定部68でエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの上限値Aが設定されると、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが設定された上限値Aを超えないようにすなわちその入力トルクTKiの脈動範囲が負領域となるように第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが設定され、その設定された付加トルクであるトルクTM1が出力されるように第1電動機MG1を制御する。例えば、MG1トルク設定制御部60では、下記に示す式(1)に従って第1電動機MG1のトルクTM1を決定する。例えば、上記第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクは、負(マイナス)である。
TM1<上限値A−(エンジントルクTE+脈動の振幅dTe) ・・・(1)
また、MG1トルク設定制御部60は、クラッチ嵌合判定部62でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されたと判定され、且つTE、TE脈動量判定部66でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であると判定され、且つ上限値、下限値設定部68でエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの下限値Bが設定されると、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが下限値Bを超えないようにすなわちその入力トルクTKiの脈動範囲が正領域となるように第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが設定され、その設定された付加トルクであるトルクTM1が出力されるように第1電動機MG1を制御する。例えば、MG1トルク設定制御部60では、下記に示す式(2)に従って第1電動機MG1のトルクTM1を決定する。例えば、上記第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクは、正(プラス)である。
TM1>下限値B−(エンジントルクTE−脈動の振幅dTe) ・・・(2)
MG2トルク設定制御部70は、TE、TE脈動量判定部66でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であると判定され、且つMG1トルク設定制御部60でエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが上限値A或いは下限値Bを超えないように第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが決定されると、その決定された付加トルクとエンジントルクTEとの和と、運転者の要求する要求駆動トルク(要求駆動力)Tiとの差に基づいて第2電動機MG2のトルクTM2を設定、すなわち上記付加トルクが相殺されるように第2電動機MG2のトルクTM2を設定し、その設定したトルクTM2が出力されるように第2電動機MG2を制御する。
図3は、電子制御装置44において、エンジン切離クラッチ装置K0の接続時にそのエンジン切離クラッチ装置K0から発生する歯打ち音(異音)の抑制を実行する車両10の走行制御の制御作動の一例を説明するフローチャートである。なお、図3は、例えば運転者からの要求駆動トルクTiの変化に基づいてモータ走行モードからハイブリッド走行モードへの切換えが実行されて第1電動機MG1によりエンジン12が始動され、その後、第1電動機MG1によってエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数が同期させられると共にそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるように制御された後の制御作動を説明するフローチャートである。
図3に示すように、先ず、MG1トルク設定制御部60およびクラッチ嵌合判定部62に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、第1電動機MG1によってエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数が同期させられると共にエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零にさせられると、エンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始されたか否かが判定される。このS1の判定が否定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始されていない場合には、MG1トルク設定制御部60に対応するS2において、上記S1と同様にエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数が同期すると共にそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零となるように第1電動機MG1のトルクTM1が制御される。
上記S1の判定が肯定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始された場合には、TE、TE脈動量推定部64に対応するS3において、エンジントルクTEの平均値およびエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが推定される。次に、TE、TE脈動量判定部66に対応するS4において、上記S3で推定されたエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上であるか否かが判定される。このS4の判定が否定される場合すなわちエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1より小さい場合には、MG1トルク設定制御部60に対応するS5において、上記S1から実行されていたエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数を同期させる第1電動機MG1でのトルク制御が停止させられる。
上記S4の判定が肯定される場合すなわちエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上である場合には、TE、TE脈動量判定部66に対応するS6において、上記S3で推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1以下であるか否かが判定される。上記S6の判定が肯定される場合すなわち推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1以下である場合には、上限値、下限値設定部68に対応するS7において、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの上限値Aが設定される。また、上記S6の判定が否定される場合すなわち推定されたエンジントルクTEの平均値が所定値T1より大きい場合には、上限値、下限値設定部68に対応するS8において、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの下限値Bが設定される。
次に、MG1トルク設定制御部60およびMG2トルク設定制御部70に対応するS9において、上記S7で設定された上限値Aを超えないようにすなわちエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの脈動範囲が負領域となるように、或いは上記S8で設定された下限値Bを超えないようにすなわち入力トルクTKiの脈動範囲が正領域となるように第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが決定されると共に、その決定された付加トルクを相殺するように第2電動機MG2のトルクTM2が設定される。そして、上記のように設定されたトルクTM1、TM2が出力されるように第1電動機MG1および第2電動機MG2が制御される。
図4および図5は、エンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始された後のエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiおよびその平均値(平均TKi)、運転者の要求駆動トルクTi、第1電動機MG1のトルクTM1、第2電動機MG2のトルクTM2を示す図であり、図4は図3のフローチャートに示すような制御作動が実行されていない場合を示すものであり、図5は図3のフローチャートに示すような制御が実行されている場合を示すものである。なお、図4および図5では、エンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始される前は共に第1電動機MG1によりエンジン切離クラッチ装置K0の入出力軸の回転数が同期させられると共にそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるように制御されている。また、図4および図5では、エンジン切離クラッチ装置K0に設けられた同期機構が作動することによってt1時点〜t2時点でそのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの脈動の振幅が減衰している。
図4に示すように、エンジン切離クラッチ装置K0の接続が開始された後には、エンジントルクTEの脈動によりエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが、正領域および負領域の両方へまたがって変化し、エンジン切離クラッチ装置K0において、例えば第2外周嵌合歯38aとスリーブ40の内周歯40aとの間のバックラッシュ、およびその第2外周嵌合歯38aとエンジン切離クラッチ装置K0に設けられた同期機構のシンクロナイザーリングとの間のバックラッシュが開いたり詰まったりするので、エンジン切離クラッチ装置K0から歯打ち音が発生する。
図5に示すように、エンジン切離クラッチK0の接続が開始された後には、第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが下限値Bを超えないように出力され、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが正領域となるので、上記バックラッシュが詰まった状態となりエンジン切離クラッチ装置K0から歯打ち音が好適に抑制される。また、第1電動機MG1のトルクTM1すなわち付加トルクが出力されても、その付加トルクが相殺されるように第2電動機MG2で負トルクがかけられるので、車両10の駆動トルクが運転者の要求する要求駆動トルクTiに対応するものとなり運転者の違和感が発生しない。
上述のように、本実施例の車両10の電子制御装置44によれば、エンジン切離クラッチ装置K0の接続に際して、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeが所定値ΔT1以上で歯打ち音の発生が予測される場合には、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの脈動範囲が正領域および負領域の一方となるように第1電動機MG1からの付加トルクを出力するので、エンジン切離クラッチ装置K0の第2外周嵌合歯38aとスリーブ40の内周歯40aとの間のバックラッシュおよびその第2外周嵌合歯38aとエンジン切離クラッチ装置K0に設けられた同期装置のシンクロナイザーリングとの間のバックラッシュが詰まった状態が保たれる。これによって、エンジン切離クラッチ装置K0の接続において、そのエンジン切離クラッチ装置K0から発生する歯打ち音が抑制される。同時に、第1電動機MG1からの付加トルクが出力されても、その付加トルクを相殺するように第2電動機MG2のトルクTM2が制御されるので、車両10の駆動トルクが要求駆動トルクTiに対応するものとなり運転者の違和感が発生しない。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施例の車両10の電子制御装置では、前述の実施例1の電子制御装置44で実行された上記モータ走行モードから上記ハイブリッド走行モードへの切換制御すなわちエンジン切離クラッチ装置K0の接続制御に加えて、上記ハイブリッド走行モードから上記モータ走行モードへの切換制御すなわちエンジン切離クラッチ装置K0の切離制御が実行される点で相違し、それ以外は実施例1の電子制御装置44と略同様の機能を有している。
図6は、本実施例の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図6に示すクラッチ嵌合判定部72は、エンジン切離クラッチ装置K0で第1歯車32の第1外周嵌合歯32aおよび第2歯車38の第2外周嵌合歯38aにスリーブ40の内周歯40aが嵌合しているか否かを判定、すなわちエンジン切離クラッチ装置K0が接続しているか否かを判定する。
クラッチ解放操作判定部74は、クラッチ嵌合判定部72でエンジン切離クラッチ装置K0が接続していると判定されると、例えば運転者からの要求駆動トルクTiの変化に基づいてハイブリッド走行モードからモータ走行モードへの切換えが実行されて、エンジン切離クラッチ装置K0の解放(エンジン12の停止)操作中であるか否かを判定する。例えば、クラッチ解放操作判定部74では、運転者からの要求駆動トルクTiの変化に基づいてハイブリッド走行モードからモータ走行モードへの切換えが実行されるとエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中であると判定する。
TE脈動低下処理部76は、クラッチ嵌合判定部72でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されていると判定され、且つクラッチ解放操作判定部74でエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中であると判定されると、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングを制御する。例えば、TE脈動低下処理部76では、スロットル開度θthは小さく、エンジン点火時期は遅く、バルブタイミングは実圧縮比が小さくなるように制御して、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeを小さくさせる。
MG1トルク設定制御部78は、TE脈動低下処理部76でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるようにスロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御されると、そのTE脈動低下処理部76でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように操作されたエンジン状態でのエンジントルクTEの平均値を推定して、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるようにすなわち零に向かうように第1電動機MG1のトルクTM1を設定し、その設定されたトルクTM1が出力されるように第1電動機MG1を制御する。例えば、MG1トルク設定制御部76では、例えば下記に示す式(3)となるように第1電動機MG1のトルクTM1を設定する。
TM1=−(上記エンジントルクTEの平均値) ・・・(3)
また、MG1トルク設定制御部78は、クラッチ嵌合判定部72でエンジン切離クラッチ装置K0が解放されていると判定されると、第1電動機MG1のトルクTM1を零にする。また、MG1トルク設定制御部78は、クラッチ嵌合判定部72でエンジン切離クラッチ装置K0が接続されていると判定され、且つクラッチ解放操作判定部74でエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中ではないと判定されると、第1電動機MG1のトルクTM1を零にする。
エンジン停止部80は、クラッチ解放操作判定部74でエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中であると判定され、且つTE脈動低下処理部76でエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるようにスロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御され、且つMG1トルク設定制御部78でエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるように第1電動機MG1のトルクTM1が制御されると、アクチュエータ42によってスリーブ40を移動させてエンジン切離クラッチ装置K0を切り離し、その後エンジン燃料カットを実行して、エンジン12を停止させる。
図7は、本実施例の電子制御装置において、エンジン切離クラッチ装置K0の切離時にそのエンジン切離クラッチ装置K0から発生する歯打ち音(異音)の抑制を実行する車両10の走行制御の制御作動の一例を説明するフローチャートである。なお、図7は、例えば運転者からの要求駆動トルクTiの変化に基づいてハイブリッド走行モードからモータ走行モードへの切換えが実行されて、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離されその後エンジン12が停止するまでを説明するフローチャートである。
図7に示すように、先ず、クラッチ嵌合判定部72に対応するS10において、エンジン切離クラッチ装置K0が接続されているか否かが判定される。このS10の判定が否定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0が切り離されている場合には、MG1トルク設定制御部78に対応するS11において、第1電動機MG1のトルクTM1が零にさせられる。
上記S10の判定が肯定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0が接続されている場合には、クラッチ解放操作判定部74に対応するS12において、運転者からの要求駆動トルクTiの変化に基づいてハイブリッド走行モードからモータ走行モードへの切換えが実行されてエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中であるか否かが判定される。上記S12の判定が否定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中ではないと判定される場合には、MG1トルク設定制御部78に対応するS13において、第1電動機MG1のトルクTM1が零にさせられる。
上記S12の判定が肯定される場合すなわちエンジン切離クラッチ装置K0が解放操作中であると判定される場合には、TE脈動低下処理部76に対応するS14において、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御される。
次に、MG1トルク設定制御部78およびエンジン停止部80に対応するS15において、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるように第1電動機MG1のトルクTM1が制御され、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される。その後、エンジン燃料カットが実行されて、エンジン12が停止する。
図8および図9は、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される時のエンジントルクTEおよびその平均値(平均TE)、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiおよびその平均値(平均TKi)、第1電動機MG1のトルクTM1を示す図であり、図8は図7のフローチャートに示すような制御作動が実行されていない場合を示すものであり、図9は図7のフローチャートに示すような制御が実行されている場合を示すものである。
図8に示すように、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される時には、そのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの脈動の振幅dTKiが比較的大きいので、そのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが正領域および負領域の両方へまたがって変化すると、エンジン切離クラッチ装置K0から比較的大きな歯打ち音が発生する。
図9に示すように、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される時には、図7のS14において、エンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御されるので、そのエンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiの振幅dTKiが例えば図8に比べて好適に小さくなる。このため、エンジン切離クラッチ装置K0から発生する歯打ち音が抑制される。また、上記のようにエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度θth、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御されると、エンジントルクTEの平均値が負領域になるが、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが略零になるようにすなわち零に向かうように第1電動機MG1のトルクTM1が制御されるので、運転者への違和感が発生しない。
上述のように、本実施例の車両10の電子制御装置によれば、エンジン切離クラッチ装置K0を切り離す際には、エンジン12のエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度、エンジン点火時期、バルブタイミングを制御するとともに、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが零に向かうように第1電動機MG1のトルクTM1を制御する。これにより、エンジン切離クラッチ装置K0が切り離される際には、エンジン12のエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように制御されるので、エンジン切離クラッチ装置K0から発生する歯打ち音が好適に抑制される。また、エンジン12のエンジントルクTEの脈動の振幅dTeが小さくなるように、スロットル開度、エンジン点火時期、バルブタイミングが制御されても、エンジン切離クラッチ装置K0の入力トルクTKiが零に向かうように第1電動機MG1のトルクTM1が制御されるので、運転者への違和感が発生しない。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、その他の態様においても適用される。
本実施例において、エンジン切離クラッチ装置K0には、同期機構が設けられていたが、その同期機構は必ずしも設けられていなくても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。