JP2010243476A - イオンクロマトグラフィー装置用カラム、サプレッサー及びイオンクロマトグラフィー装置 - Google Patents

イオンクロマトグラフィー装置用カラム、サプレッサー及びイオンクロマトグラフィー装置 Download PDF

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Abstract


【課題】イオンクロマトグラフィー装置用として、イオン分解能を保持しながら低圧通液が可能な分離カラムを提供することにある。
【解決手段】有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.01〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であるイオンクロマトグラフィー装置用分離カラム。
【選択図】なし

Description

本発明は、発電所用水、半導体製造などの精密加工洗浄用水、食品加工用水、環境水質分析などの分野において、液中のイオン性物質の定量分析に使用されるイオンクロマトグラフィー装置用カラム、サプレッサー及びイオンクロマトグラフィー装置に関するものである。
イオンクロマトグラフィー装置は、種々の構成要素を組合わせて、1つの装置として用いられている。図14には、従来より用いられているイオンクロマトグラフィー装置の一例を模式的に示す。イオンクロマトグラフィー装置20は、試料液タンク21、試料ポンプ23、溶離液タンク22、溶離液ポンプ24、濃縮カラム25、分離カラム26、サプレッサー27、検出器28、バルブe、f、g、h、i及びこれら各構成要素を繋ぐ配管、その他に図示されていないがガードカラム、バルブ、脱気器、恒温槽、データ処理装置等により構成される。試料中のイオンを定量分析するには、まず、バルブe、iを開とし、バルブf、hを閉として、試料液タンク21より試料液ポンプ23にて試料液を送液して、濃縮カラム25の下流側から通液し、該カラムに充填されたイオン交換体に測定対象イオンを吸着させ、イオン吸着後の試料液は、濃縮カラムの上流側から排出させる。該操作は、濃縮カラムに吸着された測定対象イオンの濃度が、所定のイオン濃度倍率とするのに必要な量の試料液の通液が完了するまで継続する。当該操作と同時に並行して、バルブgを開とし、溶離液タンク22より溶離液ポンプ24にて溶離液を送液し、分離カラム26、サプレッサー27、検出器28を通液し、測定準備として溶離液による安定化を行う。試料液の濃縮カラム25への通液が完了すると、試料ポンプ23を停止し、バルブe、g、iを閉とし、バルブf、hを開とし、溶離液を濃縮カラム25の上流側から通液することにより、濃縮カラム25に吸着された測定対象イオンを溶離液により溶離させる。そして、測定対象イオンを含む溶離液を分離カラム26に導入することにより、分離カラム中で該測定対象イオンが展開され、各種イオンに分離される。当該測定対象イオンを含んだ溶離液を、さらにサプレッサー27に通液することにより、S/N比を向上させた後、検出器28に導入し、各種イオンを定量的に検出する。
イオンクロマトグラフィー用装置を構成する分離カラム、濃縮カラム及びサプレッサーは、設置する目的がそれぞれ異なり、目的に応じた性能が付与されている。
分離カラムは、測定対象イオンを各イオンごとに分離するものであり、通常内径2〜5mm、長さ200〜300mm程度であって、直径3〜20μm程度の粒状イオン交換体が充填される。当該イオン交換体のイオン交換容量は、一般に10〜30μg当量/ml程度、カラム全体では、10〜300μg当量である。また、必要に応じて、高価な分離カラムを異物の混入などによる損傷から保護するために、ガードカラムが分離カラムの前段に設置される。
濃縮カラムは、数μg/lから数ng/l程度の微量イオンの分析の際に、試料中の測定対象イオン濃度を数百倍から数千倍に濃縮して分離カラムに導入するため、分離カラムの前段に設置される。該カラムのサイズは、通常内径2〜5mm、長さ10〜50mm程度であって、直径30μm程度の粒状のイオン交換体が充填されている。当該イオン交換体のイオン交換容量は、一般的に10〜30μg当量/ml程度、カラム全体では、1〜10μg当量程度である。
サプレッサーは、分離カラムの後段に設置され、検出器での測定のS/N比を向上させるために用いられる。イオンクロマトグラフィー装置の検出器としては、通常導電率計が用いられているので、検出時にS/N比を向上させるためには、測定対象イオン以外の成分である溶離液中の溶離成分の導電率を低減すると共に、測定対象イオンをより導電率の高いものへと変換させている。サプレッサーには、測定対象イオンに応じたイオン交換体が用いられる。すなわち、測定対象イオンが陰イオンである場合には陽イオン交換体を、測定対象イオンが陽イオンである場合には陰イオン交換体を用いる。例えば、測定対象イオンが陰イオン(ここでは例として塩化物イオンを挙げる)であって、溶離液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、サプレッサーにはH形の陽イオン交換体が用いられる。当該陽イオン交換体は、溶離液中のナトリウムイオンを水素イオンに交換して低導電率の水を生成させ、かつ溶離してくる測定対象イオンについては、その対イオンをナトリウムイオンから水素イオンに交換させることで、溶存形態を塩化ナトリウムから、より高導電率の塩酸に変換させ、測定のS/N比を向上させるように作用する。
サプレッサーに使用するイオン交換体としては、粒状イオン交換体を用いた非連続再生型のものと、イオン交換膜を用いた連続再生型のものがある。また、連続再生型には、中空糸膜の内部に分離カラムからの流出液を通液し、外部に再生剤を流通させて連続再生するものと、平膜のイオン交換膜を2枚並行に配置し、膜間に分離カラムからの流出液を通液し、膜の外側に電極を配置し、直流の電圧を印加することにより、連続再生するものがある。このうち、連続電気式再生型が、サプレッサーカラムの交換や再生剤による再生を必要とせず、また操作が煩雑ではないため、分析コストや分析効率の点から有利である。
しかし、従来のイオンクロマトグラフィー装置の分離カラムにおいては、優れた分解能を実現するために、大きな理論段数を確保しなければならず、粒状イオン交換体の充填量を増やすことが必要である。そのため、通液時の圧力が高くなり、高圧送液用のポンプ、カラム、配管、バルブ等の特殊仕様の高価な装置や部品が必要となり、また、圧力を下げると通液速度が下がり、分析に長時間を要するという問題点がある。更に、直径がμmオーダーの粒状イオン交換体をカラム内に均一に充填するためには、特別な設備と熟練が必要である等の問題がある。
イオン交換膜を用いた連続再生型のサプレッサーにおいては、該イオン交換膜間を分離カラムからの流出液が通過する際に、先に流出した液と後から流出した液が混合し、分離カラムで一旦達成した各イオンの分離を損ない、分解能を低下させる。この問題を解決するために、従来より、平膜イオン交換膜の膜間に、測定対象イオンに対して不活性な材質、例えば、ポリエチレンなどによるメッシュを配置し、イオン交換膜間の流路を狭くしたものが用いられているが、該メッシュの目は、数十〜数百μmであり、かつ、該メッシュとイオン交換膜の間の流路が分離カラム内の数μmオーダーの隙間より広いため、当該分解能の低下を完全に防止することはできない。
カラムへの通液時の圧力の上昇についての問題点を解決するものとして、有機多孔質体を充填材として使用することが試みられている。特許文献1の特開2004−264045号公報には、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に半径が所定値のメソポアを有する連続気泡構造を有し、所定値の全細孔容積を有し、所定値のイオン交換容量を有する3次元網目構造を有する有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラム、濃縮カラム及びサプレッサーを有するイオンクロマトグラフィー装置が開示されている。これによれば、イオンクロマトグラフィー装置用として、特に低分子のイオンの分離性能及び濃縮性能が高い有用な分離カラム及び濃縮カラムを提供できる。また、このサプレッサーは、分離カラムから流出した測定対象イオンを含む溶離液がサプレッサーを通過する時に、分解能を低下させることがない。また、このイオンクロマトグラフィー装置は、通液速度を下げることなく、通液時の圧力を低くすることができ、且つ優れた分解能を有する。
特開2004−264045号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特開2004−264045号公報に記載のイオンクロマトグラフィー装置のカラムに使用される有機多孔質イオン交換体は、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。従って、断面に表れる骨格部面積が画像領域中25%以上の多孔質骨太骨格構造のモノリスを使用した、消費電力や分解能もよりよいイオンクロマトグラフィー装置の充填材が求められている。
従って、本発明の目的は、イオンクロマトグラフィー装置用として、特に低分子イオンの分離性能及び濃縮性能が高く、イオン分解能を保持することができる分離カラム又は濃縮カラムを提供し、分離カラムから流出した測定対象イオンを含む溶離液がサプレッサーを通過する時に、分解能を低下させることのないサプレッサーを提供し、更に該分離カラムや濃縮カラムを備えるイオンクロマトグラフィーを提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた比較的大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、中間体の有機多孔質体の骨格よりも太い骨格を有する骨太のモノリスが得られること、骨太のモノリスやそれにイオン交換基を導入したモノリスイオン交換体(以下、「第1のモノリスイオン交換体」とも言う。)は、イオンクロマトグラフィー装置のカラム用充填材として、低分子のイオンの分離性能や濃縮性能が高いことなどを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、芳香族ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、三次元的に連続した芳香族ビニルポリマー骨格と、その骨格相間に三次元的に連続した空孔とからなり、両相が絡み合った共連続構造の疎水性モノリスが得られること、この共連続構造のモノリスは、空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないこと、更にこの共連続構造の骨格が太いためイオン交換基を導入すれば、体積当りのイオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質イオン交換体が得られること、該モノリス状有機多孔質イオン交換体(以下、「第2のモノリスイオン交換体」とも言う。)は、第1のモノリスイオン交換体と同様に、イオンクロマトグラフィー装置のカラム用充填材として、低分子のイオンの分離性能や濃縮性能が高いことなどを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.01〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であるイオンクロマトグラフィー装置用分離カラムを提供するものである。
また、本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.01〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しているイオンクロマトグラフィー装置用分離カラムを提供するものである。
また、本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填した濃縮カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であるイオンクロマトグラフィー装置用濃縮カラムを提供するものである。
また、本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填した濃縮カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しているイオンクロマトグラフィー装置用濃縮カラムを提供するものである。
また、本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填したサプレッサーであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であるイオンクロマトグラフィー装置用サプレッサーを提供するものである。
また、本発明は、有機多孔質イオン交換体を充填したサプレッサーであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しているイオンクロマトグラフィー装置用サプレッサーを提供するものである。
また、本発明は、少なくとも前記分離カラム及び前記濃縮カラムを組み込んでなるイオンクロマトグラフィー装置であって、分離カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の開口の直径又は空孔の径が、濃縮カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の開口の直径よ又は空孔の径り小さいイオンクロマトグラフィー装置を提供するものである。
本発明によれば、イオンクロマトグラフィー装置用として、特に低分子のイオンの分離性能及び濃縮性能が高い有用な分離カラム及び濃縮カラムを提供できる。また、本発明のサプレッサーは、分離カラムから流出した測定対象イオンを含む溶離液がサプレッサーを通過する時に、分解能を低下させることがない。
第1のモノリスイオン交換体におけるモノリスのSEM画像である。 図1のモノリスの表面における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 図1のモノリスの断面(厚み)方向における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 参考例1〜11及び参考例20〜23の差圧係数と体積当たりのイオン交換容量の相関を示す図である。 図1のSEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写したものである。 第2のモノリスイオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。 共連続構造におけるモノリス中間体のSEM画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体のSEM画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の表面における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の断面(厚み)方向における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 共連続構造を有する他のモノリスカチオン交換体のSEM画像である。 参考例20で得た有機多孔質体のSEM写真である。 本発明の実施の形態例の連続電気再生型サプレッサーのフロー図である。 イオンクロマトグラフィー装置の模式図である。 実施例4で得たクロマトグラムである。 実施例8で得たクロマトグラムである。 比較例4で得たクロマトグラムである。
本発明の実施の形態におけるイオンクロマトグラフィー用分離カラム(以下、単に分離カラムと言う)、イオンクロマトグラフィー用濃縮カラム(以下、単に濃縮カラムと言う)及びイオンクロマトグラフィー用サプレッサー(以下、単にサプレッサーと言う)のそれぞれに用いる有機多孔質イオン交換体は、「第1のモノリスイオン交換体」又は「第2のモノリスイオン交換体」である。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
<第1のモノリスイオン交換体の説明>
第1のモノリスイオン交換体は、モノリスにイオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水潤状態で平均直径0.01〜300μm、好ましくは0.1〜300μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。モノリスイオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。開口の平均直径が0.01μm未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径を算出することもできる。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行なうのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図1及び図5を参照して説明する。また、図5は、図1のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図1及び図5中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号52)」であり、図1に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図5中の符号53)である。図5の断面に表れる骨格部面積は、矩形状の写真領域51中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
SEM写真において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
また、第1のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/g、好適には0.8〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、開口の平均直径及び全細孔容積が上記範囲にあり、且つ骨太の骨格であるため、これをイオンクロマトグラフィー装置の分離カラム、濃縮カラム、サプレッサーに用いた場合、モノリスの強度が高く、且つ通水差圧が小さく、導電性や分解能が向上する。なお、本発明では、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水潤状態でも、同じである。
なお、第1のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜1MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.5MPa/m・LVであることが好ましい。
第1のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が分離カラムに用いるもので0.01〜5mg当量/ml、サプレッサーおよび濃縮カラムに用いるもので0.4〜5mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。分離カラムとして体積当りのイオン交換容量が0.01mg当量/ml未満であると分離カラムの分解能低下があり、サプレッサーおよび濃縮カラムとして体積当りのイオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、濃縮カラムの分解能の低下や、サプレッサーに使用する消費電力の上昇があるため好ましくない。なお、本発明のモノリスイオン交換体の重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくなく、特に、イオン交換体の場合にはイオン交換基導入量が減少してしまうため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体のイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMA等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
(第1のモノリスイオン交換体の製造方法)
第1のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、を行なうことにより得られる。
第1のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくない。
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で0.005〜200μmである。開口の平均直径が0.005μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、流体とモノリスやモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が40倍を超えると、開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜50モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、50モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくないなお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、イオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスイオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
上記モノリスにイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、上記の方法によりモノリスに三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体は、骨太のモノリスにイオン交換基が導入されるため例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第1のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
<第2のモノリスイオン交換体の説明>
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された平均太さが水潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水潤状態で0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された太さが1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μm、好ましくは0.1〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相61と連続する空孔相62とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造60である。この連続した空孔62は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
第2のモノリスイオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質イオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質イオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。三次元的に連続した空孔の直径が0.01μm未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、流体と有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が不均一になるので好ましくない。また、骨格の太さが1μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下する、機械的強度が低下する等の欠点が生じるため好ましくなく、一方、骨格の太さが大き過ぎると、イオン交換特性の均一性が失われ、イオン交換帯長さが長くなってしまうため好ましくない。
上記記連続構造体の空孔の水潤状態での平均直径は、公知の水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスイオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態での平均直径(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径を算出することもできる。また、上記記連続構造体の骨格の水潤状態での平均太さは、乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水潤状態での平均太さ(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水潤状態の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の骨格の水潤状態の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続した棒状骨格の太さが10μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、100μmを超えると、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。モノリスイオン交換体の壁部の定義及び測定方法などは、モノリスと同様である。
また、第2のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、流体の処理量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りの吸着容量が低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、流体との接触が極めて均一で接触面積も大きいため、イオン交換帯長さが短く、かつ低圧力損失下で流体の透過が可能となるため、イオン交換体として優れた性能を発揮することができる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水潤状態でも、同じである。
なお、第2のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜1MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.5MPaMPa/m・LVである。
第2のモノリスイオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
第2のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が分離カラムに用いるもので0.01〜5mg当量/ml、サプレッサーおよび濃縮カラムに用いるもので0.3mg当量/ml以上、好ましくは0.4〜1.8mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。分離カラムとして体積当りのイオン交換容量が0.01mg当量/ml未満であると分離カラムの分解能低下があり、サプレッサーおよび濃縮カラムとして体積当りのイオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、濃縮カラムの分解能の低下や、サプレッサーに使用する消費電力の上昇があるため好ましくない。なお、第2のモノリスイオン交換体の乾燥状態における重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第2のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基としては、第1のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基と同様であり、その説明を省略する。第2のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。均一分布の定義は、第1のモノリスイオン交換体の均一分布の定義と同じである。
(第2のモノリスイオン交換体の製造方法)
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にイオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
第2のモノリスイオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、第1のモノリスイオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスイオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル未満とすることが好ましい。
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第1のモノリスイオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には6〜25ml/gである。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第2のモノリスイオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で0.005〜100μmである。開口の平均直径が5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできず体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤は、第1のモノリスイオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、骨太骨格のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
反応容器の内容積は、第1のモノリスイオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.005〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。モノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
重合条件は、第1のモノリスイオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスイオン交換体における、モノリスにイオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体は、共連続構造のモノリスにイオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量を大きくでき、濃縮カラムや分離カラムの分解能を向上させたり、サプレッサーに使用する消費電力を低下させることが可能である。
本発明に係る分離カラムは、測定対象イオンをイオンごとに分離するものであるので、高いイオン分解能が要求される。また、理論段数を多くするため、分離カラムが長くなり、イオンクロマトグラフィー用装置の構成要素中、最も通液時の圧力上昇に与える影響が大きいことから、通液をした際に圧力上昇が小さいこと、更に、分析時間ができる限り短いことも要求される。
本発明に係る分離カラムは充填材として、第1のモノリスイオン交換体又は第2のモノリスイオン交換体を使用するため、通液をした際の圧力上昇が小さく、更に、イオン交換帯長さも短くできる。分離カラムのイオン交換容量は0.1〜5000μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体、好ましくは1〜1000μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体、更に好ましくは10〜500μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体である。イオン交換容量は、分解能と分析時間に影響を与え、これらは相反する関係にある。イオン交換容量が小さいと分析時間は短いが分解能が低下し、反対にイオン交換容量が大きいと分解能は高いが分析時間が長くなる。従って、両者のバランスを考慮したイオン交換容量とする。このような性状を有する有機多孔質イオン交換体を分離カラムに用いることにより、分離性能に優れたカラムとすることができる。
本発明に係る濃縮カラムは、微量イオンの分析の際に、試料中の測定対象イオン濃度を数百倍から数千倍に濃縮して分離カラムに導入するために、分離カラムの前段に設置されるものである。濃縮カラムには、分解能を高めるため、測定対象イオンをできる限り同時に分離カラムに導入できること、及び多量の試料液を通液することから、通液速度が速いことが要求される。
濃縮カラムにおいて、第1のモノリスイオン交換体又は第2のモノリスイオン交換体は、共に開口(メソポア径)又は空孔(以下、「開口」と「空孔」を纏めて「開口」とも言う。)を大きく採ると、通液速度を速くできる。また、濃縮カラムのイオン交換容量は1.0μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体以上、好ましくは50〜5000μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体である。イオン交換容量を大きくすることにより、測定対象イオンを吸着した時のバンド幅を狭くすることができるため、吸着操作の終了後、溶離液で吸着イオンを溶離して分離カラムに導入する時に、測定対象イオンの幅を小さくすることができ、分解能を高くすることができる。イオン交換容量が1.0μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体未満であると、吸着時のバンド幅が広くなるため分解能が低くなる。このような性状を有する有機多孔質イオン交換体を濃縮カラムに用いることにより、濃縮性能に優れたカラムとすることができる。
本発明に係る分離カラム及び濃縮カラムは、第1又は第2のモノリスイオン交換体を所定の容器に挿入可能な形状に切り出したものを充填するか、又は該容器内で第1又は第2のモノリスイオン交換体を製造して得られる。当該容器内で第1又は第2のモノリスイオン交換体を製造する方法としては、油中水滴型(W/O)エマルジョンを該容器内で形成させる方法、あるいは別容器で形成させたエマルジョンを該容器に充填した後、重合及びイオン交換基の導入を行う方法が挙げられる。容器の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、円柱状、円盤状、キャピラリー等が均一な通液を達成する上で好ましい。
本発明に係るサプレッサーは、検出時におけるS/N比を高くするため、溶離成分の導電率を低減すると共に、分離カラムで一旦達成した各イオンの分離を損なわないことが要求される。
サプレッサーに用いる第1又は第2のモノリスイオン交換体は、上記の開口、全細孔容積及びイオン交換容量を有する。すなわち、体積当りのイオン交換容量が大きいため、連続電気再生型サプレッサーとして用いた場合、電流が流れ易く消費電力を低下させることが可能となる。また、全細孔容積が小さい、すなわち空隙率が小さいため、分離カラムから先に流出した液と後から流出した液がサプレッサー内で混合することを防ぐことができるため、分離カラムでの分離を損なわない。特に第1のモノリスイオン交換体は、従来の油中水滴型エマルジョンから作製される連続気泡構造のモノリスと比較して、骨太骨格で、全細孔容積が小さいため、分離カラムでの分離を損なうことがない。また、イオン交換容量は1.0μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体以上、好ましくは50〜5000μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体である。イオン交換容量を大きくすることにより、溶離液中の対イオンを十分にプロトン又は水酸化物イオンに変換することができ、溶離液成分の導電率を低くすることができる。イオン交換容量が1.0μg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体未満であると、溶離液中の対イオンの変換が不十分となり、その結果S/N比が低下する点で好ましくない。
本発明のサプレッサーとしては、第1又は第2のモノリスイオン交換体を充填したカラムをそのままサプレッサーとして用いる形態又は連続電気再生型サプレッサーとして用いる形態が挙げられる。連続電気再生型サプレッサーとしては、分離カラム流出液中の溶離成分の導電率を低下させ、且つ該流出液中の測定対象イオン成分の導電率を高くし、S/N比を向上させるものであれば、特に限定されず、横置き円柱型、円筒型及び平板型等が挙げられる。このうち、図13に示した横置き円柱型が、液体の均一な通液と電気透析作用による円滑なイオン排除を達成する上で好ましい。図13中、連続電気再生型サプレッサー10は、円柱型の容器15に、第1又は第2のモノリスイオン交換体11を充填し、横置き形態の両端に一対のイオン交換膜12、更にその外側に一対の電極13a、13bを備える電極室14a、14bからなる。ここで、イオン交換膜12a、12bは分離カラムからの溶出液から排除すべきイオンを透過し、測定対象イオンを透過しない極性のイオン交換膜、すなわち充填されている有機多孔質イオン交換体11と同じ極性のイオン交換膜を用いる。例えば、測定対象イオンが陰イオンであって、溶離液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、サプレッサーには陽イオン交換体が充填され、その外側に一対の陽イオン交換膜が配設される。該陽イオン交換膜は、陰極側においては、第1又は第2のモノリス陽イオン交換体に捕捉されて電気透析作用によって陰極側へ泳動してくるナトリウムイオンを陰極室に排出するとともに、陽極側においては、測定対象となる陰イオンの陽極室への泳動を防ぎ、陰イオンを検出器に流入させるように作用する。電極室14a、14bには、酸又はアルカリである再生剤、純水又は検出器より排出される測定排液が電極液として通液される。これにより、第1又は第2のモノリス陽イオン交換体に捕捉された流出液a中のイオン、水の電気分解により電極で発生する水素ガス又は酸素ガスをサプレッサー外へ排出することができる。通液方法としては、特に制限されず、各電極について独立に通液する方法、あるいは図13に示すように、cから通液してdから排出するように、一方の電極室から他方の電極室へ直列に順次通液する方法が挙げられる。また、電極液の通液方向としては、電極室の下部から上部に向けて通液することが、水素ガス又は酸素ガスの気泡が抜け易く、試料液に気泡が混入し検出器に流入してノイズを発生することもない点で好ましい。
連続電気再生型サプレッサーで用いるイオン交換膜としては、陽イオン又は陰イオンのいずれかを選択的に透過させ、膜両面の液を隔離できるものであれば特に限定されないが、陽イオン交換膜としては、例えば、フッ素樹脂母体にスルホン基を導入した強酸性陽イオン交換膜、Nafion 117やNafion 350(デュポン社製)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン基を導入した強酸性陽イオン交換膜、又はネオセプタ CMX(徳山曹達社製)等を用いることができる。また、陰イオン交換膜としては、例えば、フッ素樹脂母体に陰イオン交換基を導入したアニオン交換膜、TOSFLEXIE−SA、 TOSFLEX IE−DF、 TOSFLEX IE−SF(東ソー社製)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とするアニオン交換膜、又はネオセプタ AMH(徳山曹達社製)等を用いることができる。
連続電気再生型サプレッサーで使用する電極としては、金属、合金、金属酸化物、あるいはこれらのいずれかに他のいずれかをメッキ又はコーティングした物、焼結炭素等の導電性材料を用いることができる。該電極の形状としては、板状、パンチングメタル、メッシュ等が挙げられる。特に、陽極の材質としては、耐酸性に優れ、酸化されにくいものであることが好ましく、例えばPt、Pd、Ir、β−PbO、NiFe等を好適に用いることができ、陰極の材質としては、耐アルカリ性に優れたものであることが好ましく、例えばPt、Pd、Au、炭素鋼、ステンレス、Ag、Cu、グラファイト、ガラス質カーボン等が好ましい。
電極とイオン交換膜は両者が接触していることが、運転時の電圧を下げることができる点で好ましい。この場合、陽極側のイオン交換膜としては、フッ素樹脂母体のイオン交換膜を使用することが、酸化作用によるイオン交換膜の劣化を防止することができる点で好ましい。フッ素樹脂母体以外のイオン交換膜を使用する場合は、ポリオレフィン製のメッシュ等の不導体のスペーサーを電極とイオン交換膜の間に挿入することにより、酸化作用による膜の酸化劣化を防止することができる。また、フッ素樹脂母体のイオン交換膜であっても、第4級アンモニウム基などの陰イオン交換基をもつ陰イオン交換膜の場合は、該陰イオン交換基が、陽極により酸化を受けるので、スペーサーを挿入することが好ましい。本発明のサプレッサーを用いると、分離カラムから先に流出した液と後から流出した液が、サプレッサー内で混合することを防ぐことができ、従来のものに比べ、分解能を向上させることができる。
本発明のイオンクロマトグラフィー装置は、少なくとも前記濃縮カラム及び前記分離カラムを組み込んでなり、好ましくは前記濃縮カラム、前記分離カラム及び前記サプレッサーを組み込んでなる。このイオンクロマトグラフィー装置において、分離カラム及び濃縮カラムに使用される第1又は第2のモノリスイオン交換体は、前記特性を有すると共に、更に分離カラムのメソポアの開口径が、濃縮カラムのメソポアの開口径より小さく、且つ分離カラムに充填された第1又は第2のモノリスイオン交換体のイオン交換容量が、濃縮カラムのイオン交換容量より小さいことが、分離性能と濃縮性能を顕著に発揮できると共に、分離カラムの分離能を高め、分析時間を短縮することができる点で好ましい。
本発明のイオンクロマトグラフィー装置において、分離カラムの前段には、必要に応じてガードカラムを設置することができる。ガードカラムは、異物の混入などによる損傷から分離カラムを保護するため、必要に応じて分離カラムの前段に設置される小カラムであり、異常発生時には、分離カラムを保護すると共に、自身は損傷を受けて交換される。ガードカラムは、通常運転時においては、分離カラムと同様にイオンの分離に関わっており、前記分離カラム保護のために分離カラムの一部を別カラムとしたものと見做すことができる。従って、ガードカラムには分離カラムと同様の第1又は第2のモノリスイオン交換体を用いることができる。
溶離液としては、従来と同様の酸又はアルカリの使用が可能であり、例えば、分離カラムの充填剤が有機多孔質陰イオン交換体の場合は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び四ほう酸ナトリウムなどのアルカリを単独または混合して用いることができ、また、分離カラムの充填剤が有機多孔質陽イオン交換体の場合には、硝酸、硫酸、塩酸及び酒石酸などの酸を単独または混合して用いることができる。
一般的に、従来の粒状イオン交換体を充填した分離カラムを用いるイオンクロマトグラフィー装置では、溶離液の濃度がmMオーダーの酸またはアルカリが選択されるが、本発明に係る0.5mg当量/g乾燥有機多孔質イオン交換体程度以上の高いイオン交換容量を有する第1又は第2のモノリスイオン交換体を充填した分離カラムの場合、溶離液は数十mMから1M程度の濃度の酸又はアルカリとすることが、測定対象イオンの溶離に時間がかかることがなく、分析時間を短縮することができる点で好ましい。なお、この場合、サプレッサーにおいて排除すべきイオン量が増加するので、イオン排除能力に優れた本発明の連続電気再生型サプレッサーを用い、電流値を溶離液中の排除すべきイオン量に比例させて増加させることが好ましい。
本発明のイオンクロマトグラフィー装置を用いて、試料中のイオンを定量分析する方法としては、公知の方法を適用することができる。具体的には、図14のイオンクロマトグラフィー装置を用いた分析方法と同じであり、その説明を省略する。
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例1)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が比較例の図12のものと比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。結果を表1及び表2にまとめて示す。表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、I工程で得られたモノリス中間体、II工程で用いた有機溶媒を示す。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は27gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸145gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.67mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は2.2ml/gであった。また、該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さは、LV=20m/hにおいて22mmであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.016MPa/m・LVであった。その結果を表2にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。結果を図2及び図3に示す。図2は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図3は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図2及び図3より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例2〜11)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の種類と使用量、有機溶媒の種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例2〜11のSEM画像(不図示)及び表2から、参考例2〜11のモノリスの開口の平均直径は22〜70μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25〜50μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%と骨太のモノリスであった。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。参考例2〜11のモノリスカチオン交換体の開口の平均直径は46〜138μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚みも45〜110μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%であり、イオン交換帯長さも従来のものよりも短く、差圧係数も低い値を示した。また、体積当りの交換容量も大きな値を示した。また、参考例8のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例8で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ45kPa、50kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは25%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
参考例12及び13
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法で参考例4と同じ組成・構造のモノリスを製造した。なお、参考例13は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例12と同様の方法で行ったものである。その結果を表1及び表2に示す。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
参考例12及び参考例13のアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量、水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚み、骨格部面積(SEM写真の写真領域中に占める割合)、全細孔容積、イオン交換帯長さ及び差圧係数などを表2にまとめて示した。
次に、多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩素原子の分布状態を観察した。その結果、塩素原子はアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例14)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図7)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは17μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。その結果を表3及び4にまとめて示す。表4中、骨格の太さは骨格の直径で表した。
(共連続構造モノリス状カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径75mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は18gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体を一部切り出し、乾燥させた後、その内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスカチオン体は共連続構造を維持していることを確認した。そのSEM画像を図8に示す。また、該カチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.4倍であり、体積当りのイオン交換容量は水湿潤状態で0.74mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスの連続空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ24μmであり、骨格の直径は14μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.052MPa/m・LVであった。更に、該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは16mmであり、市販の強酸性カチオン交換樹脂であるアンバーライトIR120B(ロームアンドハース社製)の値(320mm)に比べて圧倒的に短いばかりでなく、従来の連続気泡構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体の値に比べても短かった。その結果を表4にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。その結果を図9及び図10に示す。図9及び図10共に、左右の写真はそれぞれ対応している。図9は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図10は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図9左側の写真中、左右傾斜して延びるものが骨格部であり、図10左側の写真中、2つの円形状は骨格の断面である。図9及び図10より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例15〜17)>
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例14と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。なお、参考例17は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例14と同様の方法で行ったものである。その結果を表3及び表4に示す。
(共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例14と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表4に示す。また、得られた共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の内部構造は、不図示のSEM画像及び表4から参考例15〜17で得られたモノリスカチオン交換体はイオン交換体長さは従来のものよりも短く、差圧係数も小さい値を示した。また、単位体積当りの交換容量も従来より大きな値を示した。また、参考例15のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例15で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ23kPa、15kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは50%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
参考例18及び19
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表4に示す配合量に変更した以外は、参考例14と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。なお、参考例19は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例18と同様の方法で行ったものである。その結果を表3及び表4に示す。
(共連続気泡構造を有するモノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
参考例18及び参考例19のアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量、水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の連続空孔の平均直径、モノリスと同様の方法で求めた骨格の太さ、全細孔容積、イオン交換帯長さ及び差圧係数などを表4にまとめて示した。また、得られた共連続構造を有するモノリスアニオン交換体の内部構造はSEM画像(不図示)により観察した。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩素原子の分布状態を観察した。その結果、塩素原子はアニオン交換体の表面のみならず、内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
参考例20
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体(公知品)の製造)
特開2002−306976号記載の製造方法に準拠して連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。すなわち、スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、SMO1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した有機多孔質体の内部構造を表すSEMは、図12と同様の構造であった。図12から明らかなように、当該有機多孔質体は連続マクロポア構造を有しているが、連続マクロポア構造体の骨格を構成する壁部の厚みは実施例に比べて薄く、また、SEM画像から測定した壁部の平均厚みは5μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%であった。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体の開口の平均直径は29μm、全細孔容積は、8.6ml/gであった。その結果を表5にまとめて示す。表1、2及び5中、メソポア直径は開口の平均直径を意味する。また、表1〜5中、厚み、骨格直径、空孔の値はそれぞれ平均を示す。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体(公知品)の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。有機多孔質体の重量は6gであった。これにジクロロメタン1000mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸30gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を得た。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.22mg当量/mlと参考例1〜19に比べて小さな値を示した。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体のメソポアの平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ46μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚み8μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%、全細孔容積は、8.6ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.013MPa/m・LVであった。結果を表5にまとめて示す。また、参考例20で得られたモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(従来のモノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例20で得られたモノリスカチオン交換体について、参考例8の評価方法と同様の方法で引張試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ28kPa、12kPaであり、参考例8のモノリスカチオン交換体に比べて低い値であった。また、引張破断伸びも17%であり、本発明のモノリスカチオン交換体よりも小さかった。
参考例21〜23
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体の製造)
スチレンの使用量、ジビニルベンゼンの使用量、SMOの使用量を表5に示す配合量に変更した以外は、参考例20と同様の方法で、従来技術により連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。結果を表5に示す。また、参考例23のモノリスの内部構造は不図示のSEMにより観察した。なお、参考例23は全細孔容積を最小とする条件であり、油相部に対してこれ以下の水の配合では、開口が形成できない。参考例21〜23のモノリスはいずれも、開口径が9〜18μmと小さく、骨格を構成する壁部の平均厚みも15μmと薄く、また、骨格部面積はSEM画像領域中最大でも22%と少なかった。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、参考例20と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を製造した。結果を表5に示す。開口直径を大きくしようとすると壁部の厚みが小さくなったり、骨格が細くなったりする。一方、壁部を厚くしたり、骨格を太くしようとすると開口の直径が減少する傾向が認められた。その結果、差圧係数を低く押さえると体積当りのイオン交換容量が減少し、イオン交換容量を大きくすると差圧係数が増大した。
なお、参考例1〜11及び参考例20〜23で製造したモノリスイオン交換体について、差圧係数と体積当りのイオン交換容量の関係を図4に示した。図4から明らかなように、参考例1〜11に対して公知の参考例20〜23は差圧係数とイオン交換容量のバランスが悪いことがわかる。一方、参考例1〜11は体積当りのイオン交換容量が大きく、更に差圧係数も低いことがわかる。
参考例24
II工程で用いる有機溶媒の種類をポリスチレンの良溶媒であるジオキサンに変更したことを除いて、参考例1と同様の方法でモノリスの製造を試みた。しかし、単離した生成物は透明であり、多孔構造の崩壊・消失が示唆された。確認のためSEM観察を行ったが、緻密構造しか観察されず、連続マクロポア構造は消失していた。
実施例
<製造例1;濃縮カラム用(第1のモノリスイオン(アニオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)5.0gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO混合物を、過硫酸カリウム0.48gを溶解させた180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下、公転回転数1800rpm/自転回転数600rpmにて撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は6.3μm、全細孔容積は8.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の壁部の平均厚みは28μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は3.5μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
得られたアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.59mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ5.6μmであり、同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは45μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.2ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<製造例2;分離カラム用(第1のモノリスイオン(アニオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
スチレン19.9gに代えて、スチレン17.9gとクロロメチルスチレン2.0gを用いたことを除いて、製造例1と同様の方法でモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は6.0μm、全細孔容積は8.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
スチレン49.0gに代えて、スチレン44.1gとクロロメチルスチレン4.9gを用いたことを除いて、製造例1と同様の方法でモノリスを製造した。得られたスチレン/クロロメチルスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.4モル%含有したモノリス(乾燥体)は、壁部の平均厚み28μm、断面で表れる骨格部面積28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は3.0μm、全細孔容積は2.0ml/gであった。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
得られたアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.05倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.05mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ3.2μmであり、同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは29μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.0ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<製造例3;サプレッサー用(第1のモノリスイオン(カチオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
攪拌回転数を公転回転数2000rpm/自転回転数670rpmに変更したことを除いて、製造例1と同様の方法でモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は5.2μm、全細孔容積は8.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
製造例1と同様の方法で、モノリスを製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)は、壁部の平均厚み28μm、断面で表れる骨格部面積28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は2.5μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は27gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸145gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ4.0μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは45μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は2.2mlであった。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかった。
<製造例4;濃縮カラム用(第2のモノリスイオン(アニオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
スチレン5.46g、ジビニルベンゼン0.11g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.39gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO混合物を、過硫酸カリウム0.24gを溶解させた180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下、公転回転数1800rpm/自転回転数600rpmにて撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は8.6μm、全細孔容積は21.3ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約30mmの円盤状に切断して2.4gを分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した。その結果、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであり、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは4.0μm、全細孔容積は2.7ml/gであった。
(モノリスアニオン交換体の製造)
製造例1と同様の方法で、モノリスアニオン交換体を製造した。得られたアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.56mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の三次元的に連続した空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ6.4μmであり、同様の方法で求めた骨格の太さは13μm、全細孔容積は、2.7ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<製造例5;分離カラム用(第2のモノリスイオン(アニオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
スチレン5.46gに代えて、スチレン4.91gとクロロメチルスチレン0.55gを用いたことを除いて、製造例1と同様の方法でモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は8.2μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
(モノリスの製造)
スチレン39.2gに代えて、スチレン35.3gとクロロメチルスチレン3.9gを用いたことを除いて、製造例1と同様の方法でモノリスを製造した。得られたスチレン/クロロメチルスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.4モル%含有したモノリス(乾燥体)は、共連続構造を有しており、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであり、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは4.0μm、全細孔容積は2.5ml/gであった。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
得られたアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.05倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.06mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の三次元的に連続した空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ4.2μmであり、同様の方法で求めた骨格の太さは8μm、全細孔容積は、2.5ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<製造例6;サプレッサー用(第2のモノリスイオン(カチオン)交換体)>
(モノリス中間体の製造)
攪拌回転数を公転回転数2000rpm/自転回転数670rpmに変更したことを除いて、製造例4と同様の方法でモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は7.1μm、全細孔容積は21.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
製造例4と同様の方法で、モノリスを製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)は、共連続構造を有しており、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであり、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは3.5μm、全細孔容積は2.7ml/gであった。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径75mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は18gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスカチオン交換体の三次元的に連続した空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ5.6μmであり、同様の方法で求めた骨格の太さは13μm、全細孔容積は、2.7ml/gであった。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかった。
(濃縮カラムAの作成)
製造例1のモノリスアニオン交換体を切り出し、内径3.0mm、長さ10mmのカラムに充填した。0.5N水酸化ナトリウム水溶液を通液速度1ml/分で10分間通液し、続いて純水で1ml/分で20分間通水洗浄して、陰イオン交換体をOH形とした後、3.5mM炭酸ナトリウムと0.4mM炭酸水素ナトリウムの1:1混合水溶液を2ml/分で20分間通液し、平衡化して濃縮カラムを得た。平衡化は35℃の恒温槽内で行った。平衡化の終点における通液圧力は、25kPaであった。
(分離カラムAの作成)
製造例2のモノリスアニオン交換体を切り出し、内径4.0mm、長さ150mmのカラムに充填した。0.5N水酸化ナトリウム水溶液を通液速度1ml/分で20分間通液し、続いて純水で1ml/分で30分間通水洗浄して、陰イオン交換体をOH形とした後、3.5mM炭酸ナトリウムと0.4mM炭酸水素ナトリウムの1:1混合水溶液を1.5ml/分で20分間通液し、平衡化して分離カラムを得た。平衡化は、35℃の恒温槽内で行った。平衡化の終点における通液圧力は、0.32MPaであった。
(サプレッサーAの作成)
製造例3のモノリスカチオン交換体を円柱状に切り出して、内径3mmの円柱状のカラムに充填層の長さが10mmとなるように充填した。横置き円柱状有機多孔質陽イオン交換体の両端に陽イオン交換膜であるNafion 117(デュポン社製)を密着させ、更に外側両端に白金メッシュよりなる電極をイオン交換膜に接触させて配設し、図13に示す流路を形成するように該当箇所に分離カラムからの流出液の通液ノズルを設け、電極室に通液するための配管を設置し、図13のように構成されるサプレッサーAを作成した。サプレッサーAの通液差圧は36kPaであった。
(イオンクロマトグラフィー装置Aの作製)
実施例1の濃縮カラムA、実施例2の分離カラムA及び実施例3のサプレッサーAを図14に示したように接続してイオンクロマトグラフィー装置を作製した。濃縮カラム、分離カラム、サプレッサー及び検出器は、恒温槽内に設置し35℃に保持した。また、サプレッサーの操作電圧は2.2Vとした。
(イオンクロマトグラフィー装置を用いたイオン定量分析)
試料液は市販のイオンクロマトグラフィー用標準液を混合し、純水で希釈して所定濃度として用いた。比較例4については、試料液中の各イオン濃度は、フッ化物イオン1.25μg/l、塩化物イオン2.5μg/l、亜硝酸イオン3.25μg/l、臭化物イオン2.5μg/l、硝酸イオン7.5μg/l、リン酸イオン7.5μg/l、硫酸イオン10μg/lである。また実施例4及び8については硝酸イオン7.5μg/l、リン酸イオン7.5μg/l、硫酸イオン10μg/lである。また、溶離液としては、3.5mM炭酸ナトリウムと0.4mM炭酸水素ナトリウム1:1混合水溶液を用いた。
試料液タンクより試料液ポンプにて試料液を、濃縮カラムの分離カラム側(下流側)から通液速度2ml/分で5分間通液し、濃縮カラムに充填された有機多孔質陰イオン交換体に試料液中に含有される前記各イオンを吸着させて濃縮した。このとき同時に、溶離液タンクより溶離液ポンプにて溶離液を通液速度1.5ml/分にて送液して、分離カラム、サプレッサー、検出器を通液させ、溶離液による当該部分の安定化を行った。サプレッサーでは、電極間に50mAの直流電流を通電し、電極室にはそれぞれ純水を通水した。
前記濃縮の完了後、試料液ポンプを停止し、かつバルブを切り替えて溶離液を濃縮カラムの上流側から通液速度1.5ml/分にて供給し、濃縮カラム、分離カラム、サプレッサー、検出器に通液した。濃縮カラムに吸着濃縮された前記各イオンを溶離液によって溶離させ、分離カラムで展開して各イオン成分を分離し、サプレッサーでS/N比を向上させた後に、検出器で定量的に検出した。得られたクロマトグラムを図15に示す。
(濃縮カラムBの作成)
製造例1のモノリスイオン交換体に代えて、製造例4のモノリスイオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で濃縮カラムBを作製した。濃縮カラムBの通液圧力は、19kPaであった。
(分離カラムBの作成)
製造例2のモノリスイオン交換体に代えて、製造例5のモノリスイオン交換体を用いた以外は、実施例2と同様の方法で分離カラムBを作製した。分離カラムBの通液差圧は、0.32MPaであった。
(サプレッサーBの作成)
製造例3のモノリスカチオン交換体に代えて、製造例6のモノリスカチオン交換体を使用した以外は、実施例3と同様に行い、サプレッサーBを作成した。通液差圧は、22kPaであった。
(イオンクロマトグラフィー装置Bの作製)
サプレッサーAに代えてサプレッサーBを、濃縮カラムAに代えて濃縮カラムBを、分離カラムAに代えて分離カラムBをそれぞれ使用した以外は、実施例4と同様に行い、イオンクロマトグラフィー装置Bを作製し、イオン定量分析を行なった。得られたクロマトグラムを図16に示す。
比較例1
(有機多孔質体Aの製造)
スチレン7.26g、ジビニルベンゼン1.81g、ソルビタンモノオレート3.89gを混合し、均一に溶解させた。次に当該スチレン、ジビニルベンゼン及びソルビタンモノオレート混合物を、180gの純水に過硫酸カリウム0.24gを溶解させた水溶液に添加し、遊星式攪拌装置である真空攪拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて13.3kPaの減圧下、底面直径と充填物の高さの比が1:1、公転回転数1800回転/分、自転回転数600回転/分で5分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、装置内を窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水およびソルビタンモノオレエートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を14モル%含有した有機多孔質体の内部構造は、図12のSEMと同様のものであった。図12から明らかなように、当該有機多孔質体は連続気泡構造を有しており、マクロポアおよびメソポアの大きさが均一であることがわかる。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体Aの細孔分布曲線はシャープであり、細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は1.5μm、主ピークの半値幅(W)は0.6μm、W/R値は0.40であった。なお、当該有機多孔質体Aの全細孔容積は、16ml/gであった。
(有機多孔質陽イオン交換体Aの製造)
前記有機多孔質体Aを切断して、5.9gを分取し、ジクロロエタン800mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸30.1gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗して有機多孔質陽イオン交換体Aを得た。この有機多孔質陽イオン交換体Aのイオン交換容量は、4.8mg当量/g乾燥有機多孔質陽イオン交換体であった。この有機多孔質陽イオン交換体Aの内部構造は、連続気泡構造を有しており、乾燥状態のサンプルを用いて、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は1.5μm、主ピークの半値幅(W)は0.6μm、W/R値は0.40であった。また、全細孔容積は、16ml/gであった。
比較例1
(サプレッサーCの作成)
製造例3のモノリスカチオン交換体に代えて、上記の有機多孔質陽イオン交換体Aを使用した以外は、実施例3と同様に行い、サプレッサーCを作成した。サプレッサーの通水差圧は50kPaであった。
製造例7
(有機多孔質体Bの製造)
スチレン7.26gに代えて、p−クロロメチルスチレン0.91g及びスチレン6.35gを用いたことを除いて、有機多孔質体Aの製造方法と同様の方法で有機多孔質体Bを製造した。その結果、メソポアの分布は有機多孔質体Aと同様にシャープであり、細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は1.7μm、主ピークの半値幅(W)は0.7μm、W/R値は0.41であった。なお、当該有機多孔質体Bの全細孔容積は、16ml/gであった。
(有機多孔質陰イオン交換体Bの製造)
前記有機多孔質体Bを切断して、6.0gを分取し、ジオキサン800mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、ジメチルアミノエタノール50gを添加した後再び昇温し、40℃で24時間反応させた。反応終了後、多量の水中に反応物を投入し、水洗して有機多孔質陰イオン交換体を得た。当該有機多孔質陰イオン交換体Bのイオン交換容量は、0.3mg当量/g乾燥有機多孔質陰イオン交換体であった。上記有機多孔質陰イオン交換体Bの内部構造は、連続気泡構造を有しており、乾燥状態のサンプルを用いて、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は1.7μm、主ピークの半値幅(W)は0.7μm、W/R値は0.41であった。また、全細孔容積は、16ml/gであった。
比較例2(分離カラムの作成)
前記有機多孔質陰イオン交換体Bを切り出し、内径4.0mm、長さ150mmのカラムに充填した。0.5N水酸化ナトリウム水溶液を通液速度1ml/分で20分間通液し、続いて純水で1ml/分で30分間通水洗浄して、陰イオン交換体をOH形とした後、3.5mM炭酸ナトリウムと0.4mM炭酸水素ナトリウムの1:1混合水溶液を1.5ml/分で20分間通液し、平衡化して分離カラムを得た。平衡化は、35℃の恒温槽内で行った。平衡化の終点における通液圧力は、0.45MPaであった。
製造例8(有機多孔質体Cの製造)
遊星式攪拌装置である真空攪拌脱泡ミキサーを用いて攪拌する原料を、p−クロロメチルスチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01g、ソルビタンモノオレート2.25g及びアゾビスイソブチロニトリル0.26gを混合し、均一に溶解させ、当該混合物を180gの純水に加えたものとする以外は、有機多孔質Aの製造方法と同様の方法で有機多孔質体Cを製造した。その結果、メソポアの分布は有機多孔質Bと同様にシャープであり、細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は4.6μmであった。
(有機多孔質イオン交換体Cの製造)
前記有機多孔質体Bに代えて、前記有機多孔質体Cを用いた以外は、有機多孔質陰イオン交換体Bの製造方法と同様の方法で製造した。当該有機多孔質陰イオン交換体のイオン交換容量は3.5mg当量/g乾燥有機多孔質陰イオン交換体であり、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線の主ピークのピークトップの半径(R)は4.5μmであった。なお、この有機多孔質イオン交換体A〜Cは特開2004−264045号公報の実施例で使用されたものである。
比較例3(濃縮カラムの作成)
前記有機多孔質陰イオン交換体Cを切り出し、内径3.0mm、長さ10mmのカラムに充填した。0.5N水酸化ナトリウム水溶液を通液速度1ml/分で10分間通液し、続いて純水で1ml/分で20分間通水洗浄して、陰イオン交換体をOH形とした後、3.5mM炭酸ナトリウムと0.4mM炭酸水素ナトリウムの1:1混合水溶液を2ml/分で20分間通液し、平衡化して濃縮カラムを得た。平衡化は35℃の恒温槽内で行った。平衡化の終点における通液圧力は、0.05MPaであった。
比較例4(イオンクロマトグラフィー装置の作製)
比較例1〜3の濃縮カラム、分離カラム及びサプレッサーを図14に示したように接続してイオンクロマトグラフィー装置を作製した。濃縮カラム、分離カラム、サプレッサー及び検出器は、恒温槽内に設置し35℃に保持した。また、サプレッサーの操作電圧は2.7Vとした。得られたクロマトグラムを図17に示す。
10 サプレッサー
11 有機多孔質イオン交換体
12a、12b イオン交換膜
13a、13b 電極
14a、14b 電極室
15 容器
a 分離カラムからの流出液
b 処理液
c 電極室への通液水
d 電極室からの排出液
20 イオンクロマトグラフィー装置
21 試料タンク
22 溶離液タンク
23 試料ポンプ
24 溶離液ポンプ
25 濃縮カラム
26 分離カラム
27 サプレッサー
28 検出器
e、f、g、h、i バルブ

Claims (8)

  1. 有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.01〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用分離カラム。
  2. 有機多孔質イオン交換体を充填した分離カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.01〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用分離カラム。
  3. 有機多孔質イオン交換体を充填した濃縮カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用濃縮カラム。
  4. 有機多孔質イオン交換体を充填した濃縮カラムであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用濃縮カラム。
  5. 有機多孔質イオン交換体を充填したサプレッサーであって、該有機多孔質イオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径0.01〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用サプレッサー。
  6. 有機多孔質イオン交換体を充填したサプレッサーであって、該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が0.01〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置用サプレッサー。
  7. 少なくとも請求項1記載の分離カラム及び請求項3記載の濃縮カラムを組み込んでなるイオンクロマトグラフィー装置であって、分離カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の開口の直径が、濃縮カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の開口の直径より小さいものであることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置。
  8. 少なくとも請求項2記載の分離カラム及び請求項4記載の濃縮カラムを組み込んでなるイオンクロマトグラフィー装置であって、分離カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の空孔の径が、濃縮カラムに充填される有機多孔質イオン交換体の空孔の径より小さいものであることを特徴とするイオンクロマトグラフィー装置。
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