JP2010219555A - 露光方法、デバイス製造方法、及び基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】液体を所望状態に維持して良好に露光処理できる露光方法を提供する。
【解決手段】基板P上に液体LQを配置し、液体LQを介して基板P上に露光光を照射して基板Pを露光する露光方法において、基板P上に液体LQを配置した後、基板Pから溶出した溶出物質を含む液体LQの露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をR、溶出物質が溶出される前の液体LQの露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をRとしたとき、R−R≦1.0×10−3の条件を満足するように、基板P上に配置された液体LQ中の溶出物質の濃度を設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体を介して基板を露光する露光方法及びデバイス製造方法、並びに液浸露光用の基板に関するものである。
本願は、2004年11月11日に出願された特願2004−327790号、2005年2月25日に出願された特願2005−50887号、及び2005年7月8日に出願された特願2005−200637号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
半導体デバイスや液晶表示デバイス等のマイクロデバイスの製造工程の一つであるフォトリソグラフィ工程では、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に投影露光する露光装置が用いられる。この露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に投影露光するものである。マイクロデバイスの製造においては、デバイスの高密度化のために、基板上に形成されるパターンの微細化が要求されている。この要求に応えるために露光装置の更なる高解像度化が望まれている。その高解像度化を実現するための手段の一つとして、下記特許文献1に開示されているような、投影光学系と基板との間の露光光の光路空間を液体で満たし、液体を介して露光処理を行う液浸法が案出されている。
国際公開第99/49504号パンフレット
液浸法に基づいて露光処理を行うとき、液体を所望状態に維持することが重要である。液体が所望状態に維持されない場合、露光光が基板上まで良好に到達できなくなる虞があり、露光精度の劣化を招く可能性がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、液体を所望状態に維持して良好に露光処理できる露光方法、及びその露光方法を用いるデバイス製造方法、並びに液浸露光用の基板を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は実施の形態に示す各図に対応付けした以下の構成を採用している。但し、各要素に付した括弧付き符号はその要素の例示に過ぎず、各要素を限定するものではない。
本発明の第1の態様に従えば、基板(P)上の液体(LQ)を介して基板(P)上に露光光(EL)を照射して基板(P)を露光する露光方法において、基板(P)から溶出した溶出物質を含む液体(LQ)の露光光(EL)の光路方向における1mmあたりの透過率をR、その溶出物質を含まない液体(LQ)の露光光(EL)の光路方向における1mmあたりの透過率をRとしたとき、
−R≦1.0×10−3の条件を満足するように、基板(P)上の液体(LQ)中の溶出物質の濃度を設定する露光方法が提供される。
本発明の第1の態様によれば、溶出物質に起因する液体の透過率の低下量が、1.0×10−3(0.1%)以下に抑えられるように、液体中の溶出物質の濃度を設定することで、液体は所望状態に維持され、露光光は基板上まで良好に到達することができる。
本発明の第2の態様に従えば、投影光学系(PL)と基板(P)との間の露光光(EL)の光路空間(K1)を液体(LQ)で満たし、投影光学系(PL)と液体(LQ)とを介して基板(P)上に露光光(EL)を照射して基板(P)を露光する露光方法において、光路空間(K1)に満たされた液体(LQ)の露光光(EL)の光路方向における透過率をR、予め定められた目標透過率をRとしたとき、
≧Rの条件を満足するように、基板(P)から液体(LQ)中に溶出物質が溶出したときの該液体(LQ)中の溶出物質の濃度を設定する露光方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、液体の目標透過率を満足するように、液体中の溶出物質の濃度を設定することで、液体は所望状態に維持され、露光光は基板上まで良好に到達することができる。
本発明の第3の態様に従えば、基板(P)上に液浸領域(LR)を形成し、液浸領域(LR)を形成する液体(LQ)を介して基板(P)上に露光光(EL)を照射して基板(P)を露光する露光方法において、基板(P)上の液体(LQ)中の基板(P)から溶出する溶出物質の許容濃度を、露光光(EL)の光路(K1)における露光光(EL)に対する液体(LQ)の透過率に基づいて設定する露光方法が提供される。
本発明の第3の態様によれば、露光光の光路における露光光に対する液体の透過率に基づいて、液体中の溶出物質の許容濃度を設定することで、液体は所望状態に維持され、露光光は基板上まで良好に到達することができる。
本発明の第4の態様に従えば、基板(P)上に液浸領域(LR)を形成し、液浸領域(LR)を形成する液体(LQ)及び光学部材(LS1)を介して基板(P)上に露光光(EL)を照射して基板(P)を露光する露光方法において、基板(P)上の液体(LQ)中の基板(P)から溶出する溶出物質の許容濃度を、露光光(EL)に対する光学部材(LS1)の液体接触面(LSA)の透過率に基づいて設定する露光方法が提供される。
本発明の第4の態様によれば、光学部材の液体接触面の透過率に基づいて、液体中の溶出物質の許容濃度を設定することで、液体は所望状態に維持され、露光光は基板上まで良好に到達することができる。
本発明の第5の態様に従えば、上記態様の露光方法を用いるデバイス製造方法が提供される。
本発明の第5の態様によれば、所望の性能を有するデバイスを製造することができる。
本発明の第6の態様に従えば、液体(LQ)を介して露光光(EL)が照射される液浸露光用の基板であって、基材(1)と、基材(1)上に被覆され光酸発生剤を含む感光材(2)とを有し、液体(LQ)と接触することによって液体(LQ)中に溶出する光酸発生剤の量は、2.2ng/cm以下である基板(P)が提供される。
本発明の第6の態様によれば、液体中に溶出する光酸発生剤の量を2.2ng/cm以下にすることで、液体を所望状態に維持し、露光光を基板上まで良好に到達させることができる。
本発明の第7の態様に従えば、液体(LQ)を介して露光光(EL)が照射される液浸露光用の基板であって、基材(1)と、基材(1)上に被覆され光酸発生剤を含む感光材(2)とを有し、液体(LQ)と接触することによって液体(LQ)中に溶出する光酸発生剤の量は、2.5ng/cm以下である基板(P)が提供される。
本発明の第7の態様によれば、液体中に溶出する光酸発生剤の量を2.5ng/cm以下にすることで、液体を所望状態に維持し、露光光を基板上まで良好に到達させることができる。
本発明の第8の態様に従えば、液体(LQ)を介して露光光(EL)が照射される液浸露光用の基板であって、基材(1)と、基材(1)上に被覆されアミン系物質を含む感光材(2)とを有し、液体(LQ)と接触することによって液体(LQ)中に溶出するアミン系物質の量は、1.1ng/cm以下である基板(P)が提供される。
本発明の第8の態様によれば、液体中に溶出するアミン系物質の量を1.1ng/cm以下にすることで、液体を所望状態に維持し、露光光を基板上まで良好に到達させることができる。
本発明によれば、液体を所望状態に維持して良好に露光処理することができる。
露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。 基板の一実施形態を示す断面図である。 液体に基板から溶出物質が溶出している様子を説明するための図である。 (A)は、光路空間に満たされた媒質と透過率との関係を説明するための図である。(B)は、光路空間に満たされた媒質と透過率との関係を説明するための図である。(C)は、光路空間に満たされた媒質と透過率との関係を説明するための図である。 光路空間に満たされた液体中の溶出物質の濃度分布を説明するための図である。 (A)は、光路空間と基板との移動軌跡の例を示す図である。(B)は、光路空間と基板との移動軌跡の例を示す図である。 ノズル部材の一実施形態を示す断面図である。 (A)は、光路空間における露光光の光路方向における距離と透過率との関係を説明するための図である。(B)は、光路空間における露光光の光路方向における距離と透過率との関係を説明するための図である。 実験装置の一例を示す概略構成図である。 浸漬処理に用いる浸漬装置の一例を示す図である。 浸漬処理により第2液体中に溶出物質が溶出している様子を説明するための模式図である。 基板に露光光が照射されている状態を示す模式図である。 熱処理が行われている基板の挙動を示す模式図である。 基板の別の実施形態を示す断面図である。 液体中への溶出物質の溶出が抑制されている様子を示す模式図である。 基板の移動状態を示す模式図である。 マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<露光装置>
まず、露光装置の一実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は露光装置EXを示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持する基板ホルダPHを有し、基板Pを保持した基板ホルダPHを移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板P上に投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLの像面側における露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすための液浸機構100を備えている。液浸機構100は、投影光学系PLの像面近傍に設けられ、液体LQを供給する供給口12及び液体LQを回収する回収口22を有するノズル部材70と、ノズル部材70に設けられた供給口12を介して投影光学系PLの像面側の空間に液体LQを供給する液体供給機構10と、ノズル部材70に設けられた回収口22を介して投影光学系PLの像面側の空間から液体LQを回収する液体回収機構20とを備えている。ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方において、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1を囲むように環状に形成されている。
露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に投影している間、液体供給機構10から供給した液体LQにより投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する局所液浸方式を採用している。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の下面LSAと、投影光学系PLの像面側に配置された基板P上面との間の露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによってマスクMのパターン像を基板Pに投影し、基板Pを露光する。制御装置CONTは、液体供給機構10を使って基板P上に液体LQを所定量供給するとともに、液体回収機構20を使って基板P上の液体LQを所定量回収することで、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ等の基材上に感光材(レジスト)を塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び露光光ELによるマスクM上の照明領域を設定する視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
本実施形態においては、液体供給機構10から供給する液体LQとして純水が用いられている。純水は、ArFエキシマレーザ光のみならず、例えば、水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能である。マスクステージMSTは、マスクMを真空吸着(又は静電吸着)により保持する。マスクステージMSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDの駆動により、マスクMを保持した状態で、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。マスクステージMST上には移動鏡91が設けられている。また、移動鏡91に対向する位置にはレーザ干渉計92が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計92によりリアルタイムで計測される。レーザ干渉計92の計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計92の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動し、マスクステージMSTに保持されているマスクMの位置制御を行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影するものであって、複数の光学素子で構成されており、それら光学素子は鏡筒PKで保持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4、1/5、あるいは1/8の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、本実施形態においては、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1は、交換可能であり、鏡筒PKより露出している。
基板ステージPSTは、基板Pを保持する基板ホルダPHを有し、投影光学系PLの像面側において、ベース部材BP上で移動可能である。基板ホルダPHは、例えば真空吸着等により基板Pを保持する。基板ステージPST上には凹部96が設けられており、基板Pを保持するための基板ホルダPHは凹部96に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部96以外の上面97は、基板ホルダPHに保持された基板Pの上面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面(平坦部)となっている。
基板ステージPSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDの駆動により、基板Pを基板ホルダPHを介して保持した状態で、ベース部材BP上でXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に基板ステージPSTは、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能である。したがって、基板ステージPSTに支持された基板Pの上面は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ステージPSTの側面には移動鏡93が設けられている。また、移動鏡93に対向する位置にはレーザ干渉計94が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計94によりリアルタイムで計測される。また、露光装置EXは、例えば特開平8−37149号公報に開示されているような、基板ステージPSTに支持されている基板Pの上面の面位置情報を検出する斜入射方式のフォーカス・レベリング検出系(不図示)を備えている。フォーカス・レベリング検出系は、基板Pの上面の面位置情報(Z軸方向の位置情報、及びθX及びθY方向の傾斜情報)を検出する。なお、フォーカス・レベリング検出系は、静電容量型センサを使った方式のものを採用してもよい。レーザ干渉計94の計測結果は制御装置CONTに出力される。フォーカス・レベリング検出系の検出結果も制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを駆動し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角(θX、θY)を制御して基板Pの上面を投影光学系PLの像面に合わせ込むとともに、レーザ干渉計94の計測結果に基づいて、基板PのX軸方向、Y軸方向、及びθZ方向における位置制御を行う。
次に、液浸機構100の液体供給機構10及び液体回収機構20について説明する。液体供給機構10は、液体LQを投影光学系PLの像面側の空間に供給するためのものであって、液体LQを送出可能な液体供給部11と、液体供給部11にその一端部を接続する供給管13とを備えている。供給管13の他端部はノズル部材70に接続されている。ノズル部材70の内部には、供給管13の他端部と供給口12とを接続する内部流路(供給流路)が形成されている。液体供給部11は、液体LQを収容するタンク、加圧ポンプ、供給する液体LQの温度を調整する温度調整機構、及び液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット等を備えている。液体供給部11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。なお、液体供給機構10のタンク、加圧ポンプ、温度調整機構、フィルタユニット等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
液体回収機構20は、投影光学系PLの像面側の空間から液体LQを回収するためのものであって、液体LQを回収可能な液体回収部21と、液体回収部21にその一端部を接続する回収管23とを備えている。回収管23の他端部はノズル部材70に接続されている。ノズル部材70の内部には、回収管23の他端部と回収口22とを接続する内部流路(回収流路)が形成されている。液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお、液体回収機構20の真空系、気液分離器、タンク等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
液体LQを供給する供給口12及び液体LQを回収する回収口22はノズル部材70の下面70Aに形成されている。ノズル部材70の下面70Aは、基板Pの上面、及び基板ステージPSTの上面97と対向する位置に設けられている。ノズル部材70は、第1光学素子LS1の側面を囲むように設けられた環状部材であって、供給口12は、ノズル部材70の下面70Aにおいて、投影光学系PLの第1光学素子LS1(投影光学系PLの光軸AX)を囲むように複数設けられている。また、回収口22は、ノズル部材70の下面70Aにおいて、第1光学素子LS1に対して供給口12よりも外側に設けられており、第1光学素子LS1及び供給口12を囲むように設けられている。
そして、制御装置CONTは、液体供給機構10を使って基板P上に液体LQを所定量供給するとともに、液体回収機構20を使って基板P上の液体LQを所定量回収することで、投影光学系PLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たし、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。液体LQの液浸領域LRを形成する際、制御装置CONTは、液体供給部11及び液体回収部21のそれぞれを駆動する。制御装置CONTの制御のもとで液体供給部11から液体LQが送出されると、その液体供給部11から送出された液体LQは、供給管13を流れた後、ノズル部材70の供給流路を介して、供給口12より投影光学系PLの像面側に供給される。また、制御装置CONTのもとで液体回収部21が駆動されると、投影光学系PLの像面側の液体LQは回収口22を介してノズル部材70の回収流路に流入し、回収管23を流れた後、液体回収部21に回収される。
基板Pを液浸露光するときには、制御装置CONTは、液浸機構100を使って投影光学系PLと基板ステージPSTに支持されている基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たし、投影光学系PLと液体LQとを介して基板P上に露光光ELを照射することによって、基板Pを露光する。
<基板>
次に、露光対象である基板Pの一例について図2を参照しながら説明する。図2において、基板Pは、基材1と、その基材1の上面1Aの一部に被覆された感光材2とを有している。基材1は、例えばシリコンウエハ(半導体ウエハ)を含むものである。感光材2は、基材1の上面1Aの中央部の殆どを占める領域に、所定の厚み(例えば200nm程度)で被覆されている。一方、基材1の上面1Aの周縁部1Asには感光材2は被覆されておらず、その上面1Aの周縁部1Asにおいては、基材1が露出している。また、基材1の側面1Cや下面(裏面)1Bにも感光材2は被覆されていない。本実施形態においては、感光材2として化学増幅型レジストが用いられている。化学増幅型レジストは、ベース樹脂、ベース樹脂中に含まれる光酸発生剤(PAG:Photo Acid Generator)、及びクエンチャーと呼ばれるアミン系物質を含む。
感光材2は、例えばスピンコート法等の所定の塗布方法によって基材1上に塗布される。スピンコート法等の所定の塗布方法で基材1上に感光材2を設けた場合、基材1の周縁部にも感光材2が塗布されてしまう。この部分は基板Pを搬送する搬送系の搬送アームや、基板Pを保管しておくキャリアの棚などの支持部に接触する。この機械的な接触により、感光材2が剥離する虞がある。感光材2が剥離すると、それが異物となって搬送アームやキャリアが汚染されるばかりでなく、その汚染物が清浄な基板Pと再び接触することによって汚染が拡大する可能性もある。また、基材1の周縁部において感光材2が中央部より盛り上がるように多量に塗布される現象が生じる場合がある。その基材1の周縁部の感光材2は剥離し易く、剥離した感光材2は異物となり、その異物が基板P上に付着するとパターン転写精度に影響を及ぼす。そこで、基材1上に所定の塗布方法で感光材2を設けた後、露光処理を行う前に、周縁部1Asの感光材2を例えば溶剤を使って除去する処理(所謂エッジリンス処理)が行われる。これにより、基材1(基板P)の周縁部においては感光材2が除去され、図2に示すように、その周縁部1Asにおいて基材1が露出する。
<露光方法の第1実施形態>
次に、液浸法に基づいて基板Pを露光する方法について説明する。図3は、投影光学系PLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1に液体LQが満たされている状態を示す図である。図3に示すように、液浸法に基づいて基板Pを露光する場合、基板P上には液体LQが配置される。本実施形態の感光材2は、化学増幅型レジストであり、上述のように、ベース樹脂、ベース樹脂中に含まれる光酸発生剤(PAG)、及びクエンチャーと呼ばれるアミン系物質を含んでいる。そのような感光材2が液体に接触すると、感光材2の一部の成分、具体的にはPAGやアミン系物質等が液体LQ中に溶出する。以下の説明において、基板Pから液体LQ中に溶出した物質(PAGやアミン系物質等)を適宜、「溶出物質」と称する。なお「溶出物質」は、PAGやアミン系の物質に限られず、感光材2に含まれる他の物質であってもよい。例えば「溶出物質」にアニオンを含めてもよい。
図4(A)〜図4(C)は、投影光学系PLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1に満たされた媒質とその媒質の透過率との関係を示す模式図である。以下の説明においては、投影光学系PL(第1光学素子LS1)の下面LSAと基板P上面との間の距離(ワーキングディスタンス)WDが1mmに設定されているものとし、露光光ELは、投影光学系PLの下面LSAと基板Pとの間の光路空間K1に満たされた厚み1mmの媒質中をZ軸方向に沿って進行するものとする。また、光路空間K1に満たされた媒質の厚み方向とZ軸方向とがほぼ一致しているとともに、露光光ELの光路方向(進行方向)とZ軸方向とがほぼ平行であるものとする。すなわち露光光ELは、投影光学系PLの下面LSAと基板Pとの間の光路空間K1に満たされた厚さ1mmの媒質中を、その厚み方向(Z軸方向、露光光ELの光路方向)に沿って進行するものとする。
図4(A)は、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1に気体(空気)が満たされた状態を示す図である。図4(A)において、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1の媒質(気体)に入射したときの露光光ELの光量、換言すれば投影光学系PLの下面LSAから射出したときの露光光ELの光量をIとし、光路空間K1の媒質(気体)から射出したときの露光光ELの光量、換言すれば基板P上に到達したときの露光光ELの光量をIとする。光量Iは、光路空間K1に満たされた厚み1mmの気体中を通過した後の露光光ELの光量である。その厚み1mmの気体の露光光ELに対する透過率をRとしたとき、R=I/Iである。ここでは、理想的に、透過率R=100%とする。
図4(B)は、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1に液体LQが満たされた状態を示す図である。図4(B)における液体LQは、基板PからPAG等の溶出物質が溶出される前の液体であって、ほぼ理想的な清浄度に維持されているものとする。以下の説明では、溶出物質が溶出される前の清浄な液体LQ、すなわち溶出物質を含まない液体LQを適宜「純粋液」と称する。図4(B)において、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1の媒質(純粋液)に入射したときの露光光ELの光量、換言すれば投影光学系PLの下面LSAから射出したときの露光光ELの光量をIとし、光路空間K1の媒質(純粋液)から射出したときの露光光ELの光量、換言すれば基板P上に到達したときの露光光ELの光量をIとする。光量Iは、光路空間K1に満たされた厚み1mmの純粋液中を通過した後の露光光ELの光量である。その厚み1mmの純粋液の露光光ELに対する透過率をRとしたとき、R=I/Iである。
上述したように、本実施形態においては液体LQとして純水が用いられており、厚み1mmの純粋液の透過率(1mmあたりの純粋液の透過率)Rは99%程度である。換言すれば、本実施形態においては、厚み1mmの純粋液の光吸収率は1%程度である。すなわち、本実施形態においては、光路空間K1を理想的な清浄度を有する液体(純粋液)で満たした場合であっても、そのときの透過率Rは、光路空間K1を気体で満たした場合の透過率Rに対して1%程度低下する(R−R=1%)。
図4(C)も、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1に液体LQが満たされた状態を示す図である。図4(C)における液体LQは、基板Pから溶出したPAG等の溶出物質を含む液体である。以下の説明では、溶出物質を含む液体を適宜「溶液」と称する。図4(C)において、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1の媒質(溶液)に入射したときの露光光ELの光量、換言すれば投影光学系PLの下面LSAから射出したときの露光光ELの光量をIとし、光路空間K1の媒質(溶液)から射出したときの露光光ELの光量、換言すれば基板P上に到達したときの露光光ELの光量をIとする。光量Iは、光路空間K1に満たされた厚み1mmの溶液中を通過した後の露光光ELの光量である。その厚み1mmの溶液の露光光ELに対する透過率をRとしたとき、R=I/Iである。
光路空間K1に満たされた液体LQ中に基板PからPAG等の溶出物質が溶出した場合、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnが上昇する。光路空間K1に満たされた液体LQの露光光ELに対する透過率Rは液体LQ中の溶出物質の濃度Dnに応じて変化し、濃度Dnの上昇に伴って液体LQの透過率Rは低下する。したがって、溶液の透過率Rは、純粋液の透過率Rよりも小さくなる。換言すれば、溶出物質を含む溶液の光吸収率は、純粋液の光吸収率に比べて大きくなる。
光路空間K1に満たされた液体LQに露光光ELを照射した場合、通過する露光光ELのエネルギー、あるいは基板Pで反射した露光光ELのエネルギーを吸収することによって、液体LQの温度が上昇する可能性がある。液体LQの温度上昇量は液体LQの透過率に応じて異なる。液体LQの透過率が小さい場合、液体LQの温度上昇量(温度変化量)は大きくなる。光路空間K1に満たされた液体LQが温度上昇(温度変化)した場合、液体LQの露光光ELに対する屈折率が変化する。光路空間K1に満たされた液体LQの露光光ELに対する屈折率が変化すると、フォーカス位置が変動したり、収差が発生したりするなど、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性が変動(劣化)する。また、液体LQに温度分布が生じると、それに伴って屈折率分布が生じ、この屈折率分布によっても投影光学系PL及び液体を介した結像特性が変動(劣化)する。また、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)に伴って、その液体LQに接触している第1光学素子LS1の温度も変化し、例えば第1光学素子LS1が熱変形する等の不都合が生じる可能性がある。したがって、液浸法においては、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)や温度分布の発生を抑えることが重要である。そのため、光路空間K1に満たされる液体LQの透過率を可能な限り大きくすることが望ましい。
したがって、光路空間K1に満たされる液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを低減することが望ましく、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを管理して、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)や温度分布の発生を抑えることが重要である。上述のように、液体LQの露光光ELに対する透過率Rは液体LQ中の溶出物質の濃度Dnに応じて変化するため、液体LQ中の溶出物質の許容濃度Dnrを、露光光ELの光路空間K1における露光光ELに対する液体LQの透過率Rに基づいて設定することにより、液体LQの温度上昇(温度変化)を抑え、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を所望状態に維持することができる。本実施形態においては、光路空間K1における露光光ELに対する液体LQの透過率Rに基づいて液体LQ中の溶出物質の許容濃度Dnrを予め定め、光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを許容濃度Dnr以下に維持することで、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を所望状態に維持する。
本実施形態においては、純粋液の1mmあたりの透過率をR、溶液の1mmあたりの透過率をRとしたとき、
−R≦1.0×10−3 …(1)
の条件を満足するように、基板P上に配置された液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定する。図4(C)においては、透過率Rが98.9%以上となるように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)が設定される。すなわち、許容濃度Dnrを満たすような感光材の膜が表面に形成されている基板が、露光対象の基板Pとして基板ステージPSTにロードされ、その基板P上に液浸領域LRを形成する。こうすることにより、露光光ELが照射された場合でも、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)や温度分布の発生を抑え、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を維持することができる。また、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを許容濃度Dnr以下に抑えることで、露光装置EXを構成する各種部材のうち、液体LQに接触する部材、具体的には第1光学素子LS1やノズル部材70等が、溶出物質に起因して汚染することも抑制することができる。また、第1光学素子LS1の汚染が抑制されているので、露光光ELを基板Pまで良好に到達させることができる。また、第1光学素子LS1が汚染した場合には、第1光学素子LS1を洗浄したり、汚染していない新たなものと交換したりする等のメンテナンス処理を実行することが考えられるが、第1光学素子LS1の汚染を抑制することで、メンテナンス処理の実行回数を低減することができる。また、基板Pへ到達する露光光ELのエネルギー低下を抑えることができるため、露光装置EXのスループット低下を防止できる。
一般に、液体は気体に比べて光吸収係数が大きく、温度変化しやすい。また、露光光ELに対する液体の屈折率変化の温度依存性は、気体の屈折率変化の温度依存性に比べてはるかに大きい。例えば1℃の温度変化が生じた場合の純水の屈折率変化量は、空気の屈折率変化量に対して約120倍も大きいと言われている。また、液体の屈折率変化の温度依存性は、石英等からなる第1光学素子LS1の屈折率変化の温度依存性よりも大きい。つまり、光路空間K1に満たされた液体LQの温度変化量(温度上昇量)が僅かであっても、液体LQの露光光ELに対する屈折率は大きく変化してしまう。そのため、所望の結像特性を得るためには、光路空間K1に満たされた液体LQの温度変化を十分に抑えることが重要である。本実施形態においては、上記(1)式の条件を満足するように、基板P上に配置された液体LQ中の溶出物質の許容濃度Dnrを予め設定し、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを許容濃度Dnr以下に抑えることで、液体LQの透過率変化に伴う温度変化を抑え、所望の結像特性を維持することができる。
また上述したように、光路空間K1に満たされた液体LQ中にPAG等の溶出物質が含まれている場合、その液体LQに接触している第1光学素子LS1が汚染して曇りが生じるなどの不都合が生じる可能性がある。そして、その光路空間K1に満たされた液体LQに露光光ELが照射されることにより、光化学反応によって液体LQに接触している第1光学素子LS1の汚染(曇り)が促進される可能性がある。本実施形態のように、液体LQ中のPAG等を含む溶出物質の濃度Dnを十分に抑えることにより、上述のような汚染(曇り)の発生を防止することもできる。
上記(1)式の条件を満足するための許容濃度Dnrは、例えば実験あるいはシミュレーションによって求めることができる。そして、液体(溶液)LQの透過率Rは、溶出物質の特性(物性、種類)に応じて変化する可能性があるため、PAG等を含む感光材2の特性(物性、種類)に応じて、許容濃度Dnrを設定することが望ましい。例えば、第1の特性を有する第1溶出物質を含む溶液を第1溶液、第2の特性を有する第2溶出物質を含む溶液を第2溶液とした場合、第1溶液中の第1溶出物質の濃度Dnと、第2溶液中の第2溶出物質の濃度Dnとが同じ値であっても、第1溶液の透過率RP1と第2溶液の透過率RP2とが互いに異なる場合がある。濃度Dnと濃度Dnとが同じ値であって、例えば第1溶液の透過率RP1が第2溶液の透過率RP2よりも高い場合には、第1溶液に関する許容濃度Dnrを高い値に設定することができる。すなわち、第1溶液中の第1溶出物質の濃度Dnを第2溶液中の第2溶出物質の濃度Dnより高くしても(第1溶液を濃くしても)、第1溶液は上記(1)式を満足するような所望の透過率R(RP1)を得ることができる。
このように、感光材2(PAGおよびアミンを含む)の特性や感光材2に含まれる物質の構成など、感光材2に関する情報に応じて、許容濃度Dnrを最適に設定することができる。また、図2に示したように、基材1の周縁部1Asに液体LQが接触した場合、基材1からも液体LQ中に物質が溶出する可能性がある。そして、基材1から溶出した溶出物質(シリコンを含む)に起因して、液体(溶液)LQの透過率Rが変化する可能性がある。その場合も、基材1の特性(物性、種類)に応じて、液体LQの透過率Rが変化する可能性がある。そこで、感光材2及び基材1を含む基板Pに関する情報に応じて、許容濃度Dnrを設定し、その許容濃度Dnr以下となるように濃度Dnを設定することで、上記(1)式の条件を満足し、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を所望状態にすることができる。
そして、後述するように、基板Pに対して浸漬処理等の所定の処理を行うことで、上記(1)式の条件を満足するように濃度Dnを設定することができる。
なおここでは、純粋液を理想的な清浄度を有する液体とし、液体供給機構10はその理想的な液体を供給可能であることを前提として説明したが、純粋液の清浄度は液体供給機構10の能力などに応じて変化する。すなわち、透過率Rは、液体供給機構10(液体供給機構10の能力、例えば脱気能力など)に応じて定められ、液体供給機構10の能力によっては、透過率Rが99%程度とはならない可能性がある。そのような場合においても、液体供給機構10(液体供給機構10の能力)に応じた透過率Rに対して上記(1)式を満足するような溶液中の溶出物質の濃度Dnを設定することで、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を所望状態にすることができる。
<露光方法の第2実施形態>
ところで、上述の第1実施形態においては、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)や温度分布の発生を抑えるために、(1)式の条件を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを設定している。ところが、(1)式の条件は、光路空間K1に満たされる液体LQの流れなどを考慮していない。図1等を参照して説明したように、露光装置EXは、露光光ELの照射中に、液浸機構100を使って、光路空間K1に対する液体LQの供給及び回収動作を行っている。また、露光光ELの照射中には、光路空間K1に対して基板Pが移動される。光路空間K1に満たされた液体LQには、液浸機構1による液体LQの供給及び回収動作、及び基板Pの移動等によって流れが生じる。その生じた液体LQの流れによって、光路空間K1の液体LQが冷却されることが分かった。したがって、PAG等の溶出物質によって光路空間K1の液体LQの透過率Rが低下しても、液体LQの流れによる冷却効果によって、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇が抑えられることが分かった。
そこで、純粋液の1mmあたりの透過率をR、溶液の1mmあたりの透過率をRとしたとき、
−R≦1.0×10−2 …(1’)
の条件を満足するように、基板P上に配置された液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定した場合であっても、液体LQの流れによる冷却効果によって、光路空間K1に満たされた液体LQの温度上昇(温度変化)や温度分布の発生を抑え、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を維持できることが分かった。例えば、図4(C)においては、透過率Rが98%以上となるように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)が設定される。
そして、液体LQの流れによる冷却効果は、液体LQの供給及び回収動作や基板Pの移動速度等に応じて変化するため、上記(1’)式の条件を満足するための許容濃度Dnrを、単位時間当たりの液体供給量及び回収量、あるいは基板Pの移動速度等を考慮して、例えば実験あるいはシミュレーションによって最適に設定することができる。例えば、基板Pの移動速度を高速化した場合には、(1’)式の条件を満足する範囲内において、許容濃度Dnrを比較的高い値に設定することができる。また、液体(溶液)LQの透過率Rは、溶出物質の特性(物性、種類)に応じて変化する可能性があるため、感光材2に関する情報に応じて、許容濃度Dnrを最適に設定することができる。
そして、後述するように、物質の溶出が抑制されている感光材を採用したり、基板Pに対して浸漬処理等の所定の処理をしたりすることで、上記(1’)式の条件を満足するように濃度Dnを設定することができる。
<露光方法の第3実施形態>
上述のように、光路空間K1に満たされた液体LQ中に溶出物質が含まれている場合、液体LQに接触する第1光学素子LS1の液体接触面(下面)LSAが汚染する(曇る)可能性があり、露光光ELの照射によりその曇りの度合いが経時的に大きくなる可能性がある。第1光学素子LS1の下面LSAが曇ると、第1光学素子LS1の露光光ELの透過率が低下したり、照射された露光光ELのエネルギーを吸収し、第1光学素子LS1が熱変形等を引き起こしたりする虞がある。したがって、曇りの発生を極力抑える必要がある。第1光学素子LS1の曇り(汚染)に起因する露光光ELの透過率の低下量(第1光学素子LS1の曇りの度合い)は、液体LQ中の溶出物質の濃度に応じて変化する。そこで、基板P上の液体LQ、すなわち光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を、第1光学素子LS1の下面LSAの透過率に基づいて設定するようにしてもよい。具体的には、第1光学素子LS1の下面LSAの曇りに起因する透過率の低下量が、予め定められた条件を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定する。
本実施形態においては、第1の時点での第1光学素子LS1の液体接触面LSAの透過率をR、第1の時点から溶出物質を含む液体LQに接触して所定時間経過後(例えば1年後)の第2の時点における第1光学素子LS1の液体接触面LSAの透過率をR’としたとき、
−R’≦1.0×10−3 …(2)
の条件を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定する。(2)式の条件を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定することで、曇りに起因して第1光学素子LS1が熱変形したり、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性が変動(劣化)する等の不都合を防止できる。
ところで、例えば上述の(1)、(1’)式の条件を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを設定したとしても、換言すれば、(1)、(1’)式を満足するように、基板P(感光材2)から液体LQ中に溶出する溶出物質の量を抑えたとしても、第1光学素子LS1の下面LSAが曇って、(2)式を満足できないことが考えられる。
また、上述の第1、第2実施形態においては、光路空間K1に満たされた液体LQ中の露光光ELの光路方向(Z軸方向)の濃度Dnがほぼ均一であることを前提として、(1)、(1’)式を導出している。ところが、基板Pから溶出した溶出物質は、瞬時に液体LQ中に均一に拡散するわけではなく、図5に示すように、基板P表面近傍に高濃度領域Aを形成する。一方、基板P表面近傍に溶出物質の高濃度領域Aが形成されている状態においても、投影光学系PLの液体接触面である第1光学素子LS1の下面LSA近傍においては、溶出物質の低濃度領域Aが形成される。ここで、高濃度領域Aの厚み(Z軸方向の大きさ)は薄く、例えば0.1mm程度である。一方、低濃度領域Aの厚みは厚く、ワーキングディスタンスWDの大部分を占める。
すなわち、第1、第2実施形態においては、基板Pから液体LQ中に所定量の溶出物質が溶出したときの液体LQ中の溶出物質の平均濃度をDnとしていたが、第1光学素子LS1の下面LSA近傍での液体LQ中の溶出物質の濃度を含む低濃度領域Aの液体LQ中の溶出物質の濃度Dnは、平均濃度Dnよりも十分に小さい値となる。すなわち、Dn=R×Dnとした場合、R<1となる。一方、高濃度領域Aの液体LQ中の溶出物質の濃度Dnは、平均濃度Dnよりも大きい値となる。
したがって、第1光学素子LS1の液体接触面LSAには、低濃度領域Aの液体LQ(濃度の低い溶液)しか接触しないため、液体LQの平均濃度Dnが比較的大きい値でも、第1光学素子LS1の液体接触面LSAの曇りの発生を抑えることができる。
そして、液体LQと接触することによって基板Pから液体LQ中に溶出するPAGの量(許容量)を、2.2ng/cm以下にするとともに、基板Pから液体LQ中に溶出するアミン系物質の量(許容量)を、1.1ng/cm以下にすることで、第1光学素子LS1の曇りを抑制できることが分かった。
また、低濃度領域Aの液体LQ中の溶出物質の濃度Dnは、例えば基板P(基板ステージPST)の移動速度(スキャン速度)に応じて変動する。すなわち、図16の模式図に示すように、基板Pの移動に伴って液体LQの下層領域(すなわち高濃度領域A)に剪断力が発生し、高濃度領域Aに存在する溶出物質が回収口22まで移動するため、基板Pの移動速度を高速化することで、高濃度領域Aに存在する溶出物質が第1光学素子LS1の下面LSA近傍まで拡散する前に、その溶出物質を回収口22を介して素早く回収することができる。したがって、液体LQ中の低濃度領域Aの濃度Dnの上昇を抑えることができる。一例として、所定のノズル部材を用いて光路空間K1に対する液体LQの供給及び回収を行いつつ、光路空間K1に対して基板Pを600mm/secで移動した場合のシミュレーションを行った結果、平均濃度Dnに対して、低濃度領域Aの濃度Dnは約1/73(R=1/73)になるという結果を得た。
このように、基板Pの移動速度を高速化することで、第1光学素子LS1の下面LSA近傍での液体LQ中の溶出物質の濃度、すなわち低濃度領域Aの濃度Dnの上昇を抑えることができる。そして、低濃度領域Aの濃度Dnは、基板Pの移動速度に応じて変化するため、上記(2)式の条件を満足するための許容濃度Dnrを、基板Pの移動速度を考慮して、例えば実験あるいはシミュレーションによって最適に設定することができる。例えば、基板Pの移動速度を高速化した場合には、基板Pから液体LQ中に溶出する溶出物質の量が多くなって高濃度領域Aの濃度Dnの値が大きくなり、これに伴って平均濃度Dn(許容濃度Dnr)の値が大きくなっても、第1光学素子LS1の下面LSA近傍での液体LQ中の溶出物質の濃度を抑えることができるため、(2)式の条件を満足する範囲内において、許容濃度Dnrを比較的高い値に設定することができる。また、第1光学素子LS1の透過率R’は、溶出物質の特性(物性、種類)に応じて変化する可能性があるため、感光材2に関する情報に応じて、許容濃度Dnrを最適に設定することができる。
<露光方法の第4実施形態>
また、低濃度領域Aの液体LQ中の溶出物質の濃度Dn、ひいては平均濃度Dnと低濃度領域Aの濃度Dnとの比Rは、ノズル部材70の構造(形状)や、液浸機構100による光路空間K1に対する単位時間当たりの液体供給量及び回収量、あるいは基板Pの移動条件(移動速度、移動軌跡等を含む)に応じて変動する可能性がある。例えば、所定方向(X軸方向)に関する光路空間K1に対する基板Pの移動距離に応じて、低濃度領域Aの濃度Dn(比R)が変動する。具体的には、図6(A)に示すように、所定方向(X軸方向)に関する光路空間K1に対する基板Pの移動距離が長いほうが、図6(B)に示すように、基板Pの移動距離が短い場合に比べて、光路空間K1に満たされている液体LQの攪拌が抑えられるため、高濃度領域Aから低濃度領域Aへの液体LQの移動を抑えて、低濃度領域Aの濃度Dn(比R)を小さくすることができる。ここで、図6(A)及び図6(B)の矢印y1は、基板Pと光路空間K1(投影光学系PLの投影領域AR、光軸)とを相対移動させたときの移動軌跡を示しており、基板P上に設定された領域SHは、マスクMのパターンが転写されるショット領域を示している。そして、ノズル部材70の構造、光路空間K1に対する単位時間当たりの液体供給量及び回収量、及び基板Pの移動条件(移動速度、移動軌跡等を含む)を適宜調整することにより、比R(=Dn/Dn)を、1/10〜1/1000に変動させることができる可能性がある。
また、例えば図7に示す構造を有するノズル部材70の場合、比R(=Dn/Dn)を低減することができる。図7において、ノズル部材70は、光路空間K1に対して液体LQを供給する供給口12と、液体LQを回収する回収口22とを有している。ノズル部材70の内部には、供給口12と供給管13とを接続する供給流路14、及び回収口22と回収管23とを接続する回収流路24が形成されている。供給流路14は、ノズル部材70の一部を貫通するスリット状の貫通孔によって形成されている。回収流路24は、光路空間K1に対して供給流路14の外側に設けられている。
ノズル部材70は、第1光学素子LS1の下面LSAと対向する上面79を有する底板78を有している。底板78の一部は、Z軸方向に関して、投影光学系PLの第1光学素子LS1の下面LSAと基板P(基板ステージPST)との間に配置されている。また、底板78の中央部には、露光光ELが通過する開口76が形成されている。開口76は、露光光ELが照射される投影領域ARよりも大きく形成されている。本実施形態においては、開口76は、露光光ELの断面形状(すなわち投影領域AR)に応じた平面視略矩形状に形成されている。
ノズル部材70の底板78のうち、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と対向する下面77は、XY平面と平行な平坦面となっている。下面77は、ノズル部材70のうち、基板ステージPSTに保持された基板Pに最も近い位置に設けられている。液体LQは、底板78の下面77と基板Pの表面との間に保持される。
底板78は、第1光学素子LS1の下面LSA及び基板P(基板ステージPST)とは接触しないように設けられており、第1光学素子LS1の下面LSAと底板78の上面79との間には所定のギャップを有する空間が設けられている。以下の説明においては、第1光学素子LS1の下面LSAと底板78の上面79との間の空間を含むノズル部材70の内側の空間を適宜、内部空間SPと称する。
供給口12は、内部空間SPに接続する位置に設けられている。本実施形態においては、供給口12は、露光光ELの光路空間K1の外側において、光路空間K1を挟んだX軸方向両側のそれぞれの所定位置に設けられている。供給管13及び供給流路14は、複数(2つ)の供給口12に対応するように複数設けられている。また、不図示ではあるが、ノズル部材70は、内部空間SPの気体を外部空間(大気空間)に排出(排気)する排出口を備えている。排出口は、内部空間SPの気体、すなわち投影光学系PLの像面周囲の気体と接続されており、内部空間SPの気体は、排出口を介して外部空間に排出(排気)可能となっている。
回収口22は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する位置に設けられている。回収口22には、複数の孔を有する多孔部材25を備えている。多孔部材25は、例えばチタン製のメッシュ部材、あるいはセラミックス製の多孔体によって構成可能である。多孔部材25は、基板ステージPSTに保持された基板Pと対向する下面26を有している。多孔部材25の基板Pと対向する下面26はほぼ平坦である。多孔部材25は、その下面26が基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(すなわちXY平面)とほぼ平行になるように回収口22に設けられている。液体LQは、回収口22に配置された多孔部材25を介して回収される。また、底板78の下面77と多孔部材25の下面26とはほぼ面一に設けられている。
露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすために、制御装置CONTは、液体供給部11及び液体回収部21のそれぞれを駆動する。液体供給部11から送出された液体LQは、供給管13を流れた後、ノズル部材70の供給流路14を介して、供給口12より内部空間SPに供給される。供給口12から内部空間SPに供給された液体LQは、内部空間SPを満たした後、開口76を介してノズル部材70(下面77)と基板P(基板ステージPST)との間の空間SGに流入し、露光光ELの光路空間K1を満たす。このように、本実施形態においては、供給口12から第1光学素子LS1と底板78との間の内部空間SPに液体LQが供給される。供給口12から内部空間SPに供給された液体LQは、開口76に向かって流れ、空間SGに流入する。また、真空系を含む液体回収部21は、回収流路24を負圧にすることにより、ノズル部材70(回収口22)と基板Pとの間の空間SGに存在する液体LQを、回収口22を介して回収することができる。露光光ELの光路空間K1に満たされている液体LQは、ノズル部材70の回収口22を介して回収流路24に流入し、回収管23を流れた後、液体回収部21に回収される。
第1光学素子LS1の下面LSA近傍、すなわち内部空間SPにおいては、供給口12から開口76へ向かう液体LQの流れが生成される。また、第1光学素子LS1と基板Pとの間に配置された底板78によって、基板Pから溶出した溶出物質を含む液体LQが、第1光学素子LS1の下面LSAに接触することが抑制されている。また、内部空間SPには供給口12から清浄な液体LQが供給され、ノズル部材70と基板Pとの間の空間SGから内部空間SPへ向かって流れる液体LQの量は少ないので、第1光学素子LS1の下面LSA近傍(内部空間SP)での液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを、平均濃度Dnよりも十分に小さい値にすることができる。また、液体LQの流れによって、光路空間K1の液体LQ中の溶出物質の濃度の上昇を抑えることもできる。
そして、図7に示すような構造を有するノズル部材70においては、平均濃度Dnに対して、内部空間SPの濃度Dn、すなわち低濃度領域Aの濃度Dnは約1/80(R=1/80)になり、液体LQと接触することによって基板Pから液体LQ中に溶出するPAGの量(許容量)を、2.5ng/cm以下にすることで、第1光学素子LS1の曇りを抑制できることが分かった。
また、液浸領域LRに対して基板PをXY方向に移動しつつ露光する場合において、基板P上の局所的な一部の領域のそれぞれが液体LQと接触する時間が1秒程度である場合、液体LQと接触することによって基板Pから液体LQ中に溶出するPAGの量(許容量)を、2.5ng/cm/s以下に設定することができる。
<露光方法の第5実施形態>
上述の第1、第2実施形態においては、液体1mmあたりの透過率Rが上記(1)、(1’)式の条件を満足するように、その液体の1mmあたりの溶出物質の濃度Dnを管理(設定)する場合について説明した。ところで、光路空間K1を所定の媒質で満たした場合、投影光学系PLの下面LSAから射出したときの露光光ELの光量と、基板P上に到達したときの露光光ELの光量との比である透過率は、ワーキングディスタンスWD、すなわち光路空間K1において露光光ELが通過する媒質の厚みに応じて変化する。そのため、ワーキングディスタンスWDに応じて、溶液中の溶出物質の濃度Dnを設定することができる。このことについて、図8(A)及び図8(B)を参照しながら説明する。
図8(A)は、ワーキングディスタンスWDが1mmに設定されている状態を示す図、図8(B)は、ワーキングディスタンスWDが3mmに設定されている状態を示す図である。図8(A)、図8(B)のそれぞれにおいて、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1には液体LQが満たされている。
光路空間K1に満たされた液体LQが純粋液であり、上述の実施形態のように純粋液1mmあたりの透過率Rが99%であるとすると、ワーキングディスタンスWD(純粋液の厚み)が1mmの場合、光路空間K1の純粋液に入射したときの露光光ELの光量Iと、光路空間K1の純粋液から入射したときの露光光ELの光量Iとの比である透過率Rは99%である。一方、ワーキングディスタンスWD(純粋液の厚み)が3mmの場合、光路空間K1の純粋液に入射したときの露光光ELの光量Iと、光路空間K1の純粋液から射出したときの露光光ELの光量Iとの比である透過率Rは97%となる。このように、透過率Rは媒質(純粋液)の厚み(露光光ELの光路方向における距離)に応じて変化する。したがって、基板P上において所望の光量(目標光量)Iを得るためには、ワーキングディスタンスWD(液体LQの厚み)に応じて、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを管理(設定)する必要がある。すなわち、光路空間K1に満たされる液体LQを純粋液としたとき、ワーキングディスタンスWDが3mmの場合には、基板P上での光量Iは、光路空間K1の純粋液に入射するときの光量Iに対して97%なので、基板P上で所望の光量(目標光量)Iを得るためには、PAG等の溶出物質に起因する透過率低下を極力抑える必要がある。すなわち、ワーキングディスタンスWDが3mmの光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを極力抑える必要がある。一方、ワーキングディスタンスWDが1mmの場合には、基板P上での光量Iは、光路空間K1の純粋液に入射したときの光量Iに対して99%なので、PAG等の溶出物質に起因する透過率の低下量がある程度大きくても、基板P上で所望の光量(目標光量)Iを得ることができる。すなわち、ワーキングディスタンスWDが1mmの光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質の濃度Dnはある程度高い値であっても許容される。
したがって、光路空間K1に配置された液体(溶液)LQの露光光ELの光路方向における透過率をR(=I/I)、予め定められた目標透過率をR(=I/I)としたとき、
≧R …(2’)
の条件を満足するように、基板Pから液体LQ中に溶出物質が溶出したときの液体LQ中の溶出物質の濃度Dn(許容濃度Dnr)を設定する。こうすることにより、露光光ELを所望の光量Iで基板P上に到達させることができる。
このように、ワーキングディスタンスWD(液体LQの厚み)に応じて、液体LQ中の溶出物質の濃度Dn、ひいては基板Pから液体LQへの溶出物質の溶出量を設定することができる。そして、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを最適に設定することにより、露光装置の機種やプロセス条件によってワーキングディスタンスWDが変化しても、光路空間K1に満たされた液体LQは所望の透過率Rを維持することができる。
上記(2’)式の条件を満足するための許容濃度Dnrは、例えば実験あるいはシミュレーションによって求めることができる。液体(溶液)LQ中の溶出物質の濃度Dnを許容濃度Dnr以下に抑えることで、上記(2’)式の条件を満足させることができる。そして、上述の実施形態同様、溶液の透過率Rは、基板P(感光材2)の特性に応じて変化する可能性があるため、基板Pに関する情報に応じて、許容濃度Dnrを最適に設定することができる。
そして、後述するように、基板Pに対して浸漬処理等の所定の処理を行うことで、上記(2’)式の条件を満足するように濃度Dnを設定することができる。
第5実施形態における濃度Dn(許容濃度Dnr)とは、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1に満たされた液体LQ中のZ軸方向(露光光ELの光路方向)における平均濃度を意味する。基板Pから溶出した溶出物質は、瞬時に液体LQ中に均一に拡散するわけではなく、基板P表面近傍に高濃度領域を形成する。すなわち、基板P表面近傍に溶出物質の高濃度領域が形成されている状態においても、投影光学系PLの下面LSA近傍の溶出物質の濃度は低い場合がある。そのような場合でも、液体LQ中のZ軸方向(露光光ELの光路方向)における平均濃度が許容濃度Dnr以下であれば、基板P上に露光光ELを所望の光量Iで到達させることができる。
<実施例1>
以下、液体LQ中の溶出物質の許容濃度を求めるために行った実験の一例について説明する。本実施例では、予め定められた所定の仕様(目標条件)を満足するような液体LQ中のPAGの許容濃度及び許容溶出量を求める場合を例にして説明する。そして、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1における液体LQの厚み(ワーキングディスタンスWD)を3mmに設定した場合において、純粋液を介した露光光ELの光量Iと、溶液を介した露光光ELの光量Iとの比を99.9%以上(I/I≧99.9%)にすることを仕様(目標条件)とする。
図9は、実験に用いた実験装置300の一例を示す図である。図9において、実験装置300は、実験対象である液体LQを満たす容器301と、容器301を含む循環系で液体LQを循環する循環装置302とを備えている。容器301は、筒状部材301Bと、その筒状部材301Bの上端部に接続した上板301Aと、下端部に接続した下板301Cとを備えている。上板301A及び下板301Cのそれぞれは、露光装置EXの第1光学素子LS1と同じ材料(ここでは石英)で形成されており、ArFエキシマレーザ光を透過可能である。上板301Aの下面と、その上板301Aの下面に対向する下板301Cの上面との間の距離dは任意に設定可能である。
実験では、容器301の上板301Aの下面と下板301Cの上面との間の距離(液体LQの厚み)dを所定値に設定し、その容器301に液体(純粋液、溶液)LQを満たした状態で、上板301Aを介して液体LQに光量Iの実験用ビームを入射し、液体LQを通過した実験用ビームの光量(I、I)を測定する。具体的には、容器301に純粋液を満たした状態で実験用ビームを照射し、純粋液を通過した実験用ビームの光量Iを測定するとともに、容器301に溶液を満たした状態で実験用ビームを照射し、溶液を通過した実験用ビームの光量Iを測定した。
実験用ビームは、露光光ELと同じArFエキシマレーザ光である。実験用ビームを照射するときには、循環装置302を使って、容器301を含む循環系で液体LQを循環する。循環装置302は、循環する液体LQの温度調整を行う機能を備えている。容器301を含む循環系で液体LQを温度調整しながら循環しつつ、上板301Aを介して液体LQに実験用ビームを照射することにより、実験用ビームの照射による液体LQの温度上昇(温度変化)を抑えることができる。なお、本実施例においては、実験用ビームの光束の直径は8mm、上板及び下板の直径は30mm程度である。
実験対象である溶液はPAGの水溶液であって、溶液中のPAGは予め所定濃度に設定されている。また、PAGは所定の特性(物性)を有しており、本実験ではその分子量が565のPAGを用いている。また、PAG固有の物性値としては、分子量の他に吸光係数aも挙げられる。光量I、Iと吸光係数aとの間には、
/I=exp(−acd) …(3)の関係が成立する。ここで、
a:吸光係数、
c:液体中の溶出物質(PAG)の濃度、
d:液体(媒質)の厚み、である。実験装置300における上板301Aの下面と下板301Cの上面との間の距離(液体の厚み)dは、露光装置EXにおける投影光学系PLと基板Pとの間のワーキングディスタンスWDに相当する。実験条件として濃度c及び媒質の厚みdを適宜設定し(例えば、厚みd=1mm、濃度c=1%)、その実験条件の下で光量I、Iを測定することにより、予め求められている光量Iと上記(3)式とに基づいて吸光係数aを導出することができる。本実施例では、吸光係数a≒0.012787という結果を得た。
こうして求めた吸光係数a(≒0.012787)を(3)式に代入した後、その(3)式に上述の仕様となる数値(d=3mm、I/I=99.9%)を当てはめて解くことにより、上述の仕様を満足するためのPAGの濃度(許容濃度)cを求めることができる。本実施例では、上述の仕様を満足するための液体LQ中のPAGの濃度(許容濃度)は約25ppb(2.5×10−6%)となる。すなわち、露光装置EXにおいてワーキングディスタンスWDを3mmとし、上述の所定の物性を有するPAGを使用した場合、光路空間K1に満たされた液体LQ中のPAGの濃度を25ppb以下とすることにより、上述の仕様を満足することができる。そして、この濃度(25ppb)に設定された液体LQが露光装置EXにおける光路空間K1に満たされることにより、ワーキングディスタンスWDが3mmの場合において、光量Iと光量Iとの比(I/I)を99.9%以上にすることができる。
次に、図1を参照して説明した露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光するとき、上記仕様を満足するための基板Pから溶出するPAGの単位面積あたりの許容溶出量を求める。ノズル部材70の供給口12から供給される液体の単位時間あたりの供給量を0.5リットル/分とし、1枚の基板Pを液浸露光する時間を20秒とする(すなわちスループット180枚/時=3枚/分)。すると、1枚の基板Pを液浸露光処理するときに使用する液体LQの量は約160g(0.5リットル÷3枚)である。したがって、上記仕様を満足するために、1枚の基板Pの液浸露光処理中に基板Pより液体LQ中に溶出しても許容されるPAGの総重量は4.0×10−6g(160g×25ppb)となる。すなわち、基板P1枚当たりの露光処理時間(20秒)中に感光材2から溶出してもよいPAGの総重量は4.0×10−6gである。
基板Pが直径300mmの円形状である場合、基板Pの面積は約706cmとなるので、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、約5.7×10−9g/cm(4×10−6g/706cm)となる。PAGの分子量は565なので、約1.0×10−11モル/cm(5.7×10−9g/cm÷565)となる。すなわち、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、1.0×10−11モル/cmである。
なお仕様が、液体LQの厚み(ワーキングディスタンスWD)=1mmである場合において、I/I ≧99.9%である場合には、上述の露光方法の第5実施形態で説明したように、液体LQ中のPAGの濃度は濃くてよく、その場合の液体LQ中のPAGの濃度(許容濃度)は、75ppb程度(25ppb×3)となる。同様に、液体LQの厚み(ワーキングディスタンスWD)を1mmとした場合には、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は大きくてよく、3.0×10−11モル/cm程度でよい。
なお上述したように、基板P(感光材2)からは、PAGの他にアミン系物質等も溶出する可能性があるため、上記と同様の手順でアミン系物質の濃度を設定してやればよい。例えばアミン系物質固有の物性値である分子量が521であって、上述の実験と同様の実験を行った結果、吸光係数a≒0.007098392と導出された場合、ワーキングディスタンスWD=3mmの条件においては、そのアミン系物質の濃度は約135ppb以下に設定すればよい。
一方、基板Pから液体LQ中に溶出する溶出物質としてのアミン系物質はPAGに比べて少なく、液体LQの透過率の低下は、主にPAGに起因すると考えられる。したがって、液体LQ中のPAGの濃度を主に管理(設定)することで、基板Pから液体LQ中へ溶出した溶出物質に起因する透過率の低下、及びその透過率の低下に伴う液体LQの温度上昇を良好に抑制することができる。
<実施例2>
本実施例では、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1における液体LQの厚み(ワーキングディスタンスWD)を5mmに設定した場合において、純粋液を介した露光光ELの光量Iと、溶液を介した露光光ELの光量Iとの比を99%以上(I/I≧99%)にすることを仕様(目標条件)とする。実験には図9を参照して説明した実験装置300を用い、実験条件も実施例1とほぼ同等である。
本実施例で用いたPAGの分子量は、実施例1同様、565である。また、PAGの吸光係数a≒0.012787である。実施例1同様、吸光係数aを(3)式に代入した後、その(3)式に上述の仕様となる数値(d=5mm、I/I=99%)を当てはめて解くことにより、上述の仕様を満足するためのPAGの濃度(許容濃度)cを求めることができる。本実施例では、上述の仕様を満足するための液体LQ中のPAGの濃度(許容濃度)は約157ppb(15.7×10−6%)となる。すなわち、露光装置EXにおいてワーキングディスタンスWDを5mmとし、上述の所定の物性を有するPAGを使用した場合、光路空間K1に満たされた液体LQ中のPAGの濃度を157ppb以下とすることにより、上述の仕様を満足することができる。そして、この濃度(157ppb)に設定された液体LQが露光装置EXにおける光路空間K1に満たされることにより、ワーキングディスタンスWDが5mmの場合において、光量Iと光量Iとの比(I/I)を99%以上にすることができる。
次に、図1を参照して説明した露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光するとき、上記仕様を満足するための基板Pから溶出するPAGの単位面積あたりの許容溶出量を求める。ノズル部材70の供給口12から供給される液体の単位時間あたりの供給量を0.5リットル/分とし、1枚の基板Pを液浸露光する時間を20秒とする(すなわちスループット180枚/時=3枚/分)。すると、1枚の基板Pを液浸露光処理するときに使用する液体LQの量は約160g(0.5リットル÷3枚)である。したがって、上記仕様を満足するために、1枚の基板Pの液浸露光処理中に基板Pより液体LQ中に溶出しても許容されるPAGの総重量は25.0×10−6g(160g×157ppb)となる。すなわち、基板P1枚当たりの露光処理時間(20秒)中に感光材2から溶出してもよいPAGの総重量は25.0×10−6gである。
基板Pが直径300mmの円形状である場合、基板Pの面積は約706cmとなるので、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、約35.0×10−9g/cm(25×10−6g/706cm)となる。PAGの分子量は565なので、約6.0×10−11モル/cm(35.0×10−9g/cm÷565)となる。すなわち、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、6.0×10−11モル/cmである。
<実施例3>
液体LQ中に溶出物質が含まれている場合、上述したように、液体LQに接触する第1光学素子LS1が汚染される(曇る)可能性があり、露光光ELの照射によりその曇りの度合いが経時的に大きくなる可能性がある。第1光学素子LS1が曇ると、照射された露光光ELのエネルギーを吸収し、熱変形等を引き起こす虞がある。したがって、曇りの発生を極力抑える必要がある。第1光学素子LS1の曇り(汚染)に起因する露光光ELの透過率の低下量(第1光学素子LS1の曇りの度合い)は、液体LQ中の溶出物質の濃度に応じて変化する。そこで、第1光学素子LS1の曇りに起因する透過率の低下量が、予め定められた仕様を満足するように、液体LQ中の溶出物質の濃度を設定するようにしてもよい。
以下、曇りに関する仕様(目標条件)を満足するための許容濃度を求めるために行った実験の一例について説明する。本実施例では、予め定められた仕様を満足するような液体LQ中のPAGの許容濃度及び許容溶出量を求める場合を例にして説明する。そして、第1の時点における露光光ELの光量をI、第1の時点から所定時間経過後(ここでは1年後)の第2の時点における光量をI’としたとき、光量Iと光量I’との比(I’/I)を99.9%以上とすることを仕様(目標条件)とする。
実験は、図9を用いて説明した実験装置300を使って行い、容器301の上板301Aの下面と下板301Cの上面との間の距離(液体の厚み)dを所定値に設定し、所定濃度(ここでは400ppm)に設定されたPAGの水溶液を、容器301を含む循環系で温度調整しながら循環しつつ、実験用ビームを上板301Aを介して液体LQに照射した。実験用ビームは30分間照射した。PAGを含む溶液にArFエキシマレーザ光(実験用ビーム)が照射されると、光化学反応により上板301Aに曇りが生じた。
実験では、上板301Aに曇りが生じていない状態での、液体LQを通過後の実験用ビームの光量Iを測定するとともに、露光光ELの照射開始から30分後であって、上板301Aに曇りが生じている状態での液体LQを通過後の実験用ビームの光量I’を測定した。上板301Aに曇りが生じる前の光量Iと、曇りが生じた後の光量I’との比は75.2%であった(I’/I=75.2%)。
光量I、I’と、吸光係数aと、液体中のPAGの濃度cと、液体の厚みdとの間には、
’/I=exp(−acd) …(4)の関係が成立する。上述の実験結果を(4)式を使って表すと、
0.752=exp(−acd) …(5)となる。(5)式を変形すると、
acd=log(0.752) …(6)となる。
一方、上述の仕様は、光量Iと光量I’との比が99.9%以上(I’/I≧99.9%)になることである。したがって、仕様を(4)式を使って表すと、
0.999=exp(−acd) …(7)となる。(7)式を変形すると、
acd=log(0.999) …(8)となる。
(6)式及び(8)式において、吸光係数a及び液体の厚みdはそれぞれ同じ値である。一方、実験結果である(6)式の濃度cと、上記仕様を満足するための(8)式の濃度cとは異なる値である。(6)、(8)式より、
log(0.999)/log(0.752)≒1/285 …(9)となる。したがって、(6)式の濃度cを1/285に低減することにより、上述の仕様を満足することができる。すなわち、実験におけるにおける透過率(光量Iと光量I’との比)の低下量が上記仕様を満足するためには、濃度cは約1.4ppm(400ppm/285)以下となる必要がある。
ここで、上述のように、実験では実験用ビームを30分間照射しているが、実験用ビームを射出するArFエキシマレーザ装置は、パルス発振により実験用ビームを射出し、そのパルス数は30分間において1.4×106である。一方、露光装置EXの露光光ELの光源(ArFエキシマレーザ装置)もパルス発振で露光光ELを射出するものであり、そのパルス数が1年間において1.0×1010である場合、実験装置300と露光装置EXとのパルス数の比は7000(1.4×106÷1.0×1010)である。したがって、露光装置EXにおいては、光路空間K1に満たされる液体LQ中のPAGの濃度を0.2ppb(1.4ppm/7000)程度に低減することにより、上記仕様を満足することができる。この濃度(0.2ppb)に設定された液体LQが露光装置EXにおける光路空間K1に満たされることにより、第1光学素子LS1の曇りを抑え、第1光学素子LS1に曇りが発生する前の光量(第1の時点での光量)Ip’と、曇りが発生した後の光量(第2の時点での光量)Iとの比を99.9%以上(I’/I≧99.9%)にすることができる。
次に、図1を参照して説明した露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光するとき、上記仕様を満足するための基板Pから溶出するPAGの単位面積あたりの許容溶出量を求める。ノズル部材70の供給口12から供給される液体の単位時間あたりの供給量を0.5リットル/分とし、1枚の基板Pを液浸露光する時間を20秒とする(すなわちスループット180枚/時=3枚/分)。すると、1枚の基板Pを液浸露光処理するときに使用する液体LQの量は約160g(0.5リットル÷3枚)である。したがって、上記仕様を満足するために、1枚の基板Pの液浸露光処理中に基板Pより液体LQ中に溶出しても許容されるPAGの総重量は32×10−9g(160g×0.2ppb)となる。すなわち、基板P1枚当たりの露光処理時間(20秒)中に感光材2から溶出してもよいPAGの総重量は32×10−9gである。
基板Pが直径300mmの円形状である場合、基板Pの面積は約706cmとなるので、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、約45×10−12g/cm(32×10−9g/706cm)となる。PAGの分子量は565なので、約80×10−15モル/cm ≒1.0×10−13モル/cm(45×10−12g/cm÷565)となる。すなわち、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、1.0×10−13モル/cmである。
なお上述したように、基板P(感光材2)からは、PAGの他にアミン系物質等も溶出する可能性があるため、上記と同様の手順でアミン系物質の濃度を設定してやればよい。例えばアミン系物質固有の物性値である分子量が521であって、上述の実験と同様の実験を行った結果、光量Iと光量I’との比が約24.4%であった場合、そのアミン系物質の濃度は約2.0×10−14モル/cm以下に設定すればよい。
一方、基板Pから液体LQ中に溶出する溶出物質としてのアミン系物質はPAGに比べて少なく、第1光学素子LS1の曇りの発生は、主にPAGに起因すると考えられる。したがって、液体LQ中のPAGの濃度を主に管理(設定)することで、基板Pから液体LQ中へ溶出した溶出物質に起因する第1光学素子LS1の曇りを良好に抑制することができる。
<実施例4>
上述の実施例3は、光路空間K1の液体LQ中の溶出物質の濃度が均一である場合における液体LQ中のPAGの許容濃度及び許容溶出量を求めている。本実施例においては、図5等を参照して説明したように、光路空間K1の液体LQ中に高濃度領域A及び低濃度領域Aのそれぞれが形成される場合における液体LQ中のPAGの許容濃度及び許容溶出量を求める。本実施例においては、平均濃度Dnと低濃度領域Aの濃度Dnとの比R(=Dn/Dn)を1/73とする。
仕様(目標条件)としては、実施例3同様、第1の時点における露光光ELの光量をI、第1の時点から所定時間経過後(ここでは1年後)の第2の時点における光量をI’としたとき、光量Iと光量I’との比(I’/I)を99.9%以上とすることを仕様(目標条件)とする。
実施例3においては、濃度cは約1.4ppmとされたが、本実施例では、比Rを考慮して、許容される濃度cは、102.2ppm(1.4ppm×73)となる。
実施例3同様、実験用ビームを射出するArFエキシマレーザ装置のパルス数は30分間において1.4×106である。一方、露光装置EXの露光光ELの光源(ArFエキシマレーザ装置)のパルス数が1年間において1.0×1010である場合、実験装置300と露光装置EXとのパルス数の比は7000(1.4×106÷1.0×1010)である。したがって、露光装置EXにおいては、光路空間K1に満たされる液体LQ中のPAGの濃度を14.6ppb(102.2ppm/7000)以下に抑えることにより、上記仕様を満足することができる。この濃度は光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質(PAG)の平均濃度であるため、低濃度領域Aにおいては、比Rに応じた値、すなわち0.2ppb(14.6ppb/73)となる。そして、この濃度に設定された液体LQが露光装置EXにおける光路空間K1に満たされることにより、第1光学素子LS1の曇りを抑え、第1光学素子LS1に曇りが発生する前の光量(第1の時点での光量)Ip’と、曇りが発生した後の光量(第2の時点での光量)Iとの比を99.9%以上(I’/I≧99.9%)にすることができる。
次に、図1を参照して説明した露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光するとき、上記仕様を満足するための基板Pから溶出するPAGの単位面積あたりの許容溶出量を求める。本実施例では、1枚の基板Pを液浸露光処理するときに使用する液体LQの量を約110gとする。したがって、上記仕様を満足するために、1枚の基板Pの液浸露光処理中に基板Pより液体LQ中に溶出しても許容されるPAGの総重量は1606×10−9g(110g×14.6ppb)となる。すなわち、基板P1枚当たりの露光処理時間(20秒)中に感光材2から溶出してもよいPAGの総重量は1606×10−9gである。
基板Pが直径300mmの円形状である場合、基板Pの面積は約706cmとなるので、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、約2.2×10−9g/cm(1606×10−9g/706cm)となる。本実施形態においては、分子量500のPAGを用いたので、約4.4×10−12モル/cm(2.2×10−9g/cm÷500)となる。すなわち、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、4.4×10−12モル/cmである。
なお上述したように、基板P(感光材2)からは、PAGの他にアミン系物質等も溶出する可能性があるため、PAGの溶出許容量と同様の手順でアミン系物質の溶出許容量を設定することができる。例えばアミン系物質固有の物性値である分子量が500であって、上述の実験と同様の実験を行った結果、光量Iと光量I’との比が約56.8%であった場合、平均濃度Dnと低濃度領域Aの濃度Dnとの比R(=1/73)を考慮した、そのアミン系物質の溶出許容量は、約1.1×10−9g/cm(約2.2×10−12モル/cm)以下となる。
なお、上述の各実施例においては、光路空間K1に満たされた液体LQの透過率Rに基づく基板Pから液体LQへの溶出物質の許容溶出量と、第1光学素子LS1の液体接触面LSAの透過率R’に基づく基板Pから液体LQへの溶出物質の許容溶出量とを求めているが、許容溶出量の小さい方、すなわち、第1光学素子LS1の液体接触面LSAの透過率R’に基づく基板Pから液体LQへの溶出物質の許容溶出量を、基板Pから液体LQへの溶出物質の許容溶出量として設定すればよい。
<実施例5>
本実施例においては、図7を参照して説明したようなノズル部材70を用いた場合における液体LQ中のPAGの許容濃度及び許容溶出量を求める。本実施例においては、平均濃度Dnと低濃度領域Aの濃度Dnとの比R(=Dn/Dn)を1/80とする。
仕様(目標条件)としては、実施例4同様、第1の時点における露光光ELの光量をI、第1の時点から所定時間経過後(ここでは1年後)の第2の時点における光量をI’としたとき、光量Iと光量I’との比(I’/I)を99.9%以上とすることを仕様(目標条件)とする。
本実施例では、比Rを考慮して、許容される濃度cは、112.0ppm(1.4ppm×80)となる。
実験用ビームを射出するArFエキシマレーザ装置のパルス数は30分間において1.4×106である。一方、露光装置EXの露光光ELの光源(ArFエキシマレーザ装置)のパルス数が1年間において1.0×1010である場合、実験装置300と露光装置EXとのパルス数の比は7000(1.4×106÷1.0×1010)である。したがって、露光装置EXにおいては、光路空間K1に満たされる液体LQ中のPAGの濃度を16.0ppb(112.0ppm/7000)以下に抑えることにより、上記仕様を満足することができる。この濃度は光路空間K1に満たされた液体LQ中の溶出物質(PAG)の平均濃度であるため、低濃度領域Aにおいては、比Rに応じた値、すなわち0.2ppb(16.0ppb/80)となる。そして、この濃度に設定された液体LQが露光装置EXにおける光路空間K1に満たされることにより、第1光学素子LS1の曇りを抑え、第1光学素子LS1に曇りが発生する前の光量(第1の時点での光量)Ip’と、曇りが発生した後の光量(第2の時点での光量)Iとの比を99.9%以上(I’/I≧99.9%)にすることができる。
次に、図1を参照して説明した露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光するとき、上記仕様を満足するための基板Pから溶出するPAGの単位面積あたりの許容溶出量を求める。本実施例では、1枚の基板Pを液浸露光処理するときに使用する液体LQの量を約110gとする。したがって、上記仕様を満足するために、1枚の基板Pの液浸露光処理中に基板Pより液体LQ中に溶出しても許容されるPAGの総重量は1760×10−9g(110g×16.0ppb)となる。すなわち、基板P1枚当たりの露光処理時間(20秒)中に感光材2から溶出してもよいPAGの総重量は1760×10−9gである。
基板Pが直径300mmの円形状である場合、基板Pの面積は約706cmとなるので、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、約2.5×10−9g/cm(1760×10−9g/706cm)となる。本実施形態においては、分子量500のPAGを用いたので、約5.0×10−12モル/cm(2.5×10−9g/cm÷500)となる。すなわち、基板Pの単位面積あたりのPAGの許容溶出量は、5.0×10−12モル/cmである。
なお、上述の実施形態においては、第1時点での光量Iと第2時点での光量I’との比(I/I’)を99.9%以上にすることを目標条件としているが、この目標条件を小さく、例えば99.5%とすることによって、PAG、アミン等の許容溶出量を増やすことができる。
また、上述したように、基板Pからアニオンが溶出する場合には、アニオンの許容溶出量を、PAGやアミンと同様にして求めることができる。例えば、アニオンの許容溶出量を10ng/cm以下にすることができる。
<上記条件を満足するための処理の第1実施形態>
上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式を満足するためには、PAG、アミンなどの液体LQ中への溶出が少ない感光材2を用いることが望ましいが、所定の処理を施すことによって、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式を満足できる場合もある。
次に、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足するための処理の第1実施形態について説明する。本実施形態においては、基板P上に液浸領域LRを形成するための液体LQを配置する前に、基板Pを別の第2液体LQ’で浸漬する。以下の説明において、感光材2に含まれる物質のうち液体LQ中に溶出する可能性のある物質(PAGやアミン系物質等)を適宜「所定物質」と称する。なお上述のように、液体LQ中に溶出した後の物質は適宜「溶出物質」と称する。
図10は、浸漬装置30を示す図である。浸漬装置30は、基板Pに関する情報に基づいて、予め定められた所定の浸漬条件で、基板Pを第2液体LQ’に浸漬する。図10において、浸漬装置30は、基板Pの下面(基材1の下面1B)の中央部を保持するホルダ部31と、ホルダ部31に接続する軸部33と、基板Pを保持したホルダ部31を軸部33を介して回転する回転機構32と、液体の飛散を防止するためにホルダ部31に保持された基板Pの周囲を囲むように設けられたリング状部材34と、供給部材35の供給口35Aを介して基板P上に第2液体LQ’を供給する液体供給部36とを備えている。ホルダ部31の上面にはバキューム装置の一部を構成する真空吸着孔が設けられており、ホルダ部31は基板Pの下面中央部を吸着保持する。回転機構32は、モータ等のアクチュエータを含み、ホルダ部31に接続された軸部33を回転することで、ホルダ部31に保持された基板Pを回転する。回転機構32は、基板Pを保持したホルダ部31を単位時間当たり所定の回転数で、図中、θZ方向に回転する。供給部材35は、ホルダ部31に保持された基板Pの上方に配置されており、第2液体LQ’を供給する供給口35Aを有している。液体供給部36から送出された第2液体LQ’は、供給部材35の供給口35Aを介して、基板Pの上方より、基板Pの上面に供給される。また、供給部材35は、不図示の駆動機構により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向に移動可能となっている。すなわち、供給部材35は、ホルダ部31に保持された基板Pに対して相対的に移動可能となっている。浸漬装置30は、供給部材35を基板Pに対して相対的に移動することによって、基板Pの表面全体を第2液体LQ’で浸漬することができる。また、浸漬装置30は、供給部材35を基板Pに対して相対的に移動することにより、基板Pに対して第2液体LQ’を供給する方向や、供給口35Aと基板Pとの距離等を調整することができる。また、液体供給部36は、供給部材35の供給口35Aを介して基板P上に第2液体LQ’を連続的あるいは間欠的に供給可能である。また、液体供給部36は、供給する第2液体LQ’の温度や、単位時間当たりに供給する第2液体LQ’の量(流量、流速を含む)等を調整可能である。なお、供給部材35と基板Pとの相対的な移動は、供給部材35の移動に限らず、基板Pを動かしてもよいし、その両方を動かすようにしてもよい。
浸漬装置30は、ホルダ部31に保持された基板Pに対して、供給部材35の供給口35Aより第2液体LQ’を供給し、基板Pを第2液体LQ’に浸漬する。基板Pのうち基材1の上面1Aに被覆された感光材2は、供給部材35より供給された第2液体LQ’によって十分に浸漬される。
本実施形態においては、浸漬装置30は、回転機構32によってホルダ部31に保持された基板Pを、図中、θZ方向に回転しながら、ホルダ部31に保持された基板Pに対して供給部材35をX軸方向に相対的に移動しつつ、供給部材35より第2液体LQ’を連続的に供給する。これにより、基板Pの上面のほぼ全面に第2液体LQ’が供給される。したがって、浸漬装置30は、感光材2のほぼ全面を第2液体LQ’で浸漬することができる。また、ホルダ部31に保持された基板Pの周囲にはリング状部材34が設けられているので、リング状部材34によって基板Pの回転に起因する第2液体LQ’の飛散を防止することができる。
本実施形態において、浸漬処理に用いられる第2液体LQ’は、液浸露光処理のために基板P上に供給される液体LQと同じものである。すなわち、本実施形態においては、第2液体LQ’は、液体LQ同様、所定の純度(清浄度)及び所定の温度に管理された純水である。もちろん、液体LQに基板Pを浸けたときに溶出する物質を予め溶出させることができるものであれば、第2液体LQ’は液体LQと異なるものであってもよい。例えば、第2液体LQ’としてオゾン水を用いることができる。
図11は、基板Pの感光材2が第2液体LQ’に浸漬されている状態を示す模式図である。感光材2が液体に接触すると、感光材2の一部の成分、具体的にはPAGやアミン系物質等が液体中に溶出する。
図11において、感光材2は第2液体LQ’に浸漬されており、感光材2からは、PAGやアミン系物質等の所定物質が第2液体LQ’中に溶出する。ここで、感光材2の上面と第2液体LQ’とが接触したとき、感光材2の上面から所定厚み(例えば5〜10nm程度)の第1領域2Uに存在する所定物質(PAGやアミン系物質等)は、第2液体LQ’中に溶出するものの、その下層の第2領域2Sに存在する所定物質は、第2液体LQ’中にほぼ溶出しないことが確認されている。また、感光材2の上面と第2液体LQ’とを接触させてから、所定時間(例えば数秒〜数十秒程度)経過後においては、第1領域2Uから第2液体LQ’に対して溶出する所定物質はほぼ存在しない。すなわち、感光材2の上面と第2液体LQ’とを接触させてから所定時間経過後においては、感光材2の第1領域2Uに存在する所定物質はほぼ溶出し尽くした状態となり、感光材2から第2液体LQ’に所定物質がほぼ溶出しなくなる。そして、この所定時間は感光材2に応じて変化する。
したがって、後述するように、第2液体LQ’で所定時間浸漬処理された後の基板P(感光材2)上に液浸領域LQを形成するための液体LQが配置されても、基板P(感光材2)から液体LQに所定物質が殆ど溶出しない。
基板Pに対する浸漬処理が行われた後、基板P上の第2液体LQ’の除去処理が行われる。第2液体LQ’の除去処理を行う際、浸漬装置30は、液体供給部36による第2液体LQ’の供給を停止し、あるいは供給量を徐々に少なくしながら、基板Pを保持したホルダ部31を回転機構32で回転する。浸漬装置30は、回転機構32を使って基板Pを単位時間当たり所定の回転数で回転することにより、基板Pに付着していた第2液体LQ’を遠心力の作用によって基板Pより飛散させて除去する。
基板Pを浸漬処理するための浸漬条件は、基板Pに関する情報に応じて設定される。浸漬条件には、基板Pを第2液体LQ’に浸漬する浸漬時間が含まれる。また、基板Pに関する情報には感光材2の情報が含まれる。感光材2の情報には、感光材2を形成する形成材料に関する情報や、第2液体LQ’中への感光材2の一部の所定物質の溶出時間が含まれる。なお、感光材2を形成する形成材料とは、上述のベース樹脂、PAG、アミン系物質等を含むものである。感光材2と第2液体LQ’とを接触させてから、感光材2(感光材2の第1領域2U)より所定物質がほぼ全て溶出するまでの時間(溶出時間)は、感光材2を形成する形成材料の物性、PAG等の所定物質の含有量などに応じて変化する。また、感光材2と第2液体LQ’とを接触させてから、所定物質の溶出が開始されるまでの時間(溶出時間)も、感光材2に応じて変化する。したがって、浸漬時間を含む浸漬条件を、感光材2の情報を含む基板Pに関する情報に応じて最適に設定することにより、上述の所定物質を感光材2(第1領域2U)から第2液体LQ’中にほぼ全て溶出させることができる。
また、浸漬条件には、第2液体LQ’の除去条件も含まれる。第2液体LQ’の除去条件としては、回転機構32による基板Pの単位時間当たりの回転数(回転速度)、回転加速度、基板Pの回転を実行している時間(回転時間)等が挙げられる。あるいは、第2液体LQ’の除去条件として、回転機構32の回転速度プロファイルや回転加速度プロファイル等も挙げられる。第2液体LQ’の除去条件により、第2液体LQ’が基板Pに接触している時間(すなわち浸漬時間)や基板P上での第2液体LQ’の移動速度等が変化する。そのため、基板Pに関する情報に応じて、除去条件を最適に設定することによっても、上述の所定物質を感光材2(第1領域2U)から第2液体LQ’中にほぼ全て溶出させることができる。
また、浸漬条件としては、供給する第2液体LQ’の温度も挙げられる。また、本実施形態のように、供給部材35の供給口35Aより基板Pに対して第2液体LQ’を供給する形態の場合には、浸漬条件として、供給する第2液体LQ’の単位時間当たりの量(流量、流速を含む)、第2液体LQ’を供給するときの供給圧力、基板Pに対して第2液体LQ’を流す方向も挙げられる。
第2液体LQ’を基板P上より除去した後、基板Pの温度調整が行われる。基板P上に残留した第2液体LQ’を除去するとき、第2液体LQ’の気化熱に起因して、基板Pが温度変化し、所望温度に対して異なる温度となる可能性がある。したがって、第2液体LQ’を除去するときの気化熱に起因する基板Pの温度変化を補償するために、基板Pの温度調整が行われる。
基板Pの温度調整が行われた後、基板Pが露光装置EXの基板ホルダPHに搬送(ロード)される。制御装置CONTは、液浸機構100を使って、上に液体LQの液浸領域LRを形成する。そして、制御装置CONTは、液浸機構100を使って、基板P上に対する液体LQの供給及び基板P上からの液体LQの回収を行いつつ、液体LQを介して基板P上に露光光ELを照射し、基板Pを液浸露光する。
本実施形態においては、液浸領域LRを形成するための液体LQを基板P上に配置する前に、基板Pを第2液体LQ’に浸漬したので、上述したように、第2液体LQ’で浸漬処理された感光材2に、再び液体LQを接触させた場合においても、液体LQに対して感光材2から溶出する溶出物質の量を十分に抑えることができる。したがって、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを十分に低下することができ、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足することができる。
また、感光材2の第1領域2UにはPAGが殆ど存在しないが、図12の模式図に示すように、基板Pの感光材2に照射された露光光ELは、第1領域2Uを通過し、PAGが存在する第2領域2Sに到達することができる。
基板Pの液浸露光が終了した後、制御装置CONTは、液体供給機構10による液体LQの供給を停止するとともに、液体回収機構20の駆動を継続し、基板P上及び基板ステージPST上の液体LQを回収して除去する。露光処理済みの基板Pは、基板ホルダPHからアンロードされた後、PEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる熱処理(ポストベーク)を施される。化学増幅型レジストにおいては、露光光ELの照射によりPAGから酸が発生する。そして、露光光ELを照射された後の化学増幅型レジストに対してポストベークを行うことにより、露光光ELの照射領域(マスクMのパターン)に応じた領域に、アルカリ可溶性が発現する。
図13は、ポストベーク(PEB)が行われている感光材2の挙動の模式的に示した図である。浸漬装置30による浸漬処理により、感光材2の第1領域2UにはPAGが殆ど存在しないため、感光材2に露光光ELを照射した後、感光材2の第1領域2Uにおいては、PAGに起因する酸は殆ど発生しない。一方、感光材2の第2領域2SにはPAGが十分に存在するため、露光光ELの照射により、第2領域2Sにおいては、PAGから酸が十分に発生する。このような状態の感光材2を含む基板Pに対してポストベークを施すと、図13に示すように、第2領域2Sにある酸が第1領域2Uに拡散する現象が生じる。すなわち、露光後においては、第1領域2Uには酸が殆ど存在していないが、ポストベークを行うことにより、第1領域2Uには、第2領域2Sに存在する酸が補われる。そして、第1領域2Uに酸が補われた状態で、ポストベークを更に継続することにより、感光材2のうち、露光光ELの照射領域(マスクMのパターン)に応じた領域に、アルカリ可溶性を発現することができる。そして、ポストベークを施された基板Pは、現像処理を施される。これにより、基板P上には所望のパターンが形成される。
<上記条件を満足するための処理の第2実施形態>
次に、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足するための処理の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、基板Pを薄膜で覆うことによって、溶出物質の溶出を抑え、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足する。
図14に示すように、基板Pは、感光材2を覆う薄膜3を備えている。この薄膜3としては、反射防止膜(top ARC)や、トップコート膜(保護膜)などが挙げられる。また、薄膜3は、感光材2上に形成された反射防止膜を覆っているトップコート膜の場合もある。トップコート膜は、液体から感光材2を保護するものであって、例えばフッ素系の撥液性材料で形成されている。
図15の模式図に示すように、薄膜3を設けることにより、基板Pが液体LQに接触しても、感光材2から液体LQに対する溶出物質の溶出を抑制することができる。したがって、基板P上に液浸領域LRを形成するための液体LQが配置された場合でも、その液体LQ中の溶出物質の濃度Dnを抑え、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足することができる。
<上記条件を満足するための処理の第3実施形態>
次に、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足するための処理の第3実施形態について説明する。本実施形態においては、液浸機構100による単位時間あたりの液体供給量及び液体回収量の少なくとも一方を調整することで、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足する。すなわち、制御装置CONTは、液浸機構100による単位時間あたりの液体供給量及び液体回収量のそれぞれを多くし、液体LQの流速を高めることで、基板Pから液体LQ中にPAG等の溶出物質が溶出しても、液体LQの流れによって溶出物質を拡散し、露光光ELの光路空間K1に溶出物質が留まる状態を防止することができる。また、液浸機構100による単位時間あたりの液体供給量及び液体回収量のそれぞれを多くし、基板P上に清浄な液体(純粋液)LQを常時多量に供給することで、液体LQ中の溶出物質の濃度Dnの上昇を抑えることができ、ひいては液体LQの温度変化及び屈折率変化を抑えることができる。
<上記条件を満足するための処理の第4実施形態>
次に、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足するための処理の第4実施形態について説明する。本実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光するとき、その移動速度を調整することで、上記(1)、(1’)、(2)、(2’)式の条件を満足する。上述のように、本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを同期移動しつつマスクMのパターンを基板Pに露光する走査型露光装置である。制御装置CONTは、基板P(基板ステージPST)の移動速度を調整することによって、投影光学系PLに対する基板Pの移動速度を調整する。
図16は、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1を液体LQで満たした状態で、投影光学系PLに対して基板Pが移動している状態を示す模式図である。制御装置CONTは、基板ステージPSTの移動速度を速くすることで、基板Pから液体LQ中に溶出した溶出物質が液浸領域LRの液体LQ全体に拡散することを防止でき、基板Pから溶出した溶出物質が投影光学系PLの下面LSAまで達したり、露光光ELの光路空間K1に留まる状態を防止できる。上述のように、基板P(感光材2)からのPAG等の溶出物質は、瞬時に液体LQ中に均一に拡散するわけではなく、基板P表面近傍に高濃度領域を形成する。この状態で基板Pが移動することにより、基板Pの移動に伴って液体LQの下層領域(すなわち高濃度領域)に剪断力が発生し、高濃度領域に存在する溶出物質を回収口22まで移動させることができる。そして、基板Pの移動速度を高速化することで、高濃度領域に存在する溶出物質が液体LQ中を拡散する前に、その溶出物質を回収口22を介して素早く回収することができる。したがって、液体LQ中の溶出物質の濃度上昇を抑えることができ、ひいては液体LQの温度変化及び屈折率変化を抑えることができる。特に、本実施形態の方法によれば、液体LQ中に高濃度領域が形成されるものの、その高濃度領域中の溶出物質の拡散を防止できるため、光路空間K1に満たされた液体LQ中のZ軸方向(露光光ELの光路方向)での溶出物質の平均濃度を低減することができる。したがって、本実施形態の方法によれば、特に上記(2’)式の条件を満足させることができる。
なお、上述した各実施形態においては、感光材2として化学増幅型レジストを使用した場合を例にして説明したが、PAGを含まない例えばノボラック樹脂系レジストであってもよい。その場合においても、基板P上に配置された液体LQ中の溶出物質の濃度を(1)、(1’)、(2)、(2’)式を満足するように設定することにより、露光光ELを基板P上まで良好に到達させることができる。
また、上述した各実施形態においては、説明を簡単にするために、基材1に感光材2が塗布されている場合について説明したが、既にいくつかの露光工程を経て、基材1上にパターン層が形成されている場合には、パターン層を形成する材料の液体中への溶出を考慮してもよい。
上述したように、本実施形態における液体は純水である。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44程度と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍程度に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
なお、上述したように液浸法を用いた場合には、投影光学系の開口数NAが0.9〜1.3になることもある。このように投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイポール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。特に、直線偏光照明法とダイポール照明法との組み合わせは、ライン・アンド・スペースパターンの周期方向が所定の一方向に限られている場合や、所定の一方向に沿ってホールパターンが密集している場合に有効である。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ45nm程度のパターン)を、直線偏光照明法とダイポール照明法とを併用して照明する場合、照明系の瞳面においてダイポールを形成する二光束の外接円で規定される照明σを0.95、その瞳面における各光束の半径を0.125σ、投影光学系PLの開口数をNA=1.2とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を150nm程度増加させることができる。
また、直線偏光照明と小σ照明法(照明系の開口数NAiと投影光学系の開口数NApとの比を示すσ値が0.4以下となる照明法)との組み合わせも有効である。
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになる。この場合、上述の直線偏光照明を用いることが望ましいが、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もあるが、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在(周期方向が異なるライン・アンド・スペースパターンが混在)する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ63nm程度のパターン)を、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法(輪帯比3/4)とを併用して照明する場合、照明σを0.95、投影光学系PLの開口数をNA=1.00とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を250nm程度増加させることができ、ハーフピッチ55nm程度のパターンで投影光学系の開口数NA=1.2では、焦点深度を100nm程度増加させることができる。
更に、上述の各種照明法に加えて、例えば特開平4−277612号公報や特開2001−345245号公報に開示されている累進焦点露光法や、多波長(例えば二波長)の露光光を用いて累進焦点露光法と同様の効果を得る多波長露光法を適用することも有効である。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子LS1が取り付けられており、この光学素子により投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
また、上述の実施形態の投影光学系は、先端の光学素子の像面側の光路空間を液体で満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子のマスク側の光路空間も液体で満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、本実施形態の液体は水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体と接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体LQの極性に応じて行われる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、特開平11−135400号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報や特開平10−303114号公報などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクにかえて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いてもよい。
また、国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(USP5,874,820)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図17に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する処理を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…基材、2…感光材、3…薄膜、30…浸漬装置、70…ノズル部材、100…液浸機構、EL…露光光、EX…露光装置、K1…光路空間、LQ…液体、P…基板、PL…投影光学系

Claims (30)

  1. 基板上の液体を介して前記基板上に露光光を照射して前記基板を露光する露光方法において、
    前記基板から溶出した溶出物質を含む液体の前記露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をR
    前記溶出物質を含まない液体の前記露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をRとしたとき、
    −R≦1.0×10−3
    の条件を満足するように、前記基板上の液体中の溶出物質の濃度を設定する露光方法。
  2. 前記基板は、基材と該基材上に被覆された感光材とを有し、
    前記基板に関する情報に応じて、前記濃度を設定する請求項1記載の露光方法。
  3. 前記基板に関する情報は、前記感光材の情報を含む請求項2記載の露光方法。
  4. 前記溶出物質は、前記感光材から溶出する物質を含む請求項2又は3記載の露光方法。
  5. 前記条件を満足するために、前記基板上に前記液体を配置する前に、前記基板を第2の液体で浸漬する請求項1〜4のいずれか一項記載の露光方法。
  6. 前記条件を満足するために、前記基板を薄膜で覆う請求項1〜5のいずれか一項記載の露光方法。
  7. 前記基板上に対する液体の供給及び前記基板上からの液体の回収を行いつつ露光し、
    前記条件を満足するために、単位時間あたりの液体供給量及び液体回収量の少なくとも一方を調整する請求項1〜6のいずれか一項記載の露光方法。
  8. 前記液体は、投影光学系と前記基板との間の前記露光光の光路空間に配置される請求項1〜7のいずれか一項記載の露光方法。
  9. 前記溶出物質は光酸発生剤を含む請求項1〜8のいずれか一項記載の露光方法。
  10. 投影光学系と基板との間の露光光の光路空間を液体で満たし、前記投影光学系と前記液体とを介して前記基板上に露光光を照射して前記基板を露光する露光方法において、
    前記光路空間に満たされた液体の前記露光光の光路方向における透過率をR
    予め定められた目標透過率をRとしたとき、
    ≧Rの条件を満足するように、前記基板から前記液体中に溶出物質が溶出したときの該液体中の溶出物質の濃度を設定する露光方法。
  11. 前記条件を満足するために、前記光路空間に液体を満たす前に、前記基板を第2の液体で浸漬する請求項10記載の露光方法。
  12. 前記条件を満足するために、前記基板を薄膜で覆う請求項10又は11記載の露光方法。
  13. 前記基板上に対する液体の供給及び前記基板上からの液体の回収を行いつつ露光し、
    前記条件を満足するために、単位時間あたりの液体供給量及び液体回収量の少なくとも一方を調整する請求項10〜12のいずれか一項記載の露光方法。
  14. 前記投影光学系と前記基板とを相対的に移動しつつ露光し、
    前記条件を満足するために、前記移動速度を調整する請求項10〜13のいずれか一項記載の露光方法。
  15. 前記溶出物質は光酸発生剤を含む請求項10〜14のいずれか一項記載の露光方法。
  16. 基板上に液浸領域を形成し、前記液浸領域を形成する液体を介して前記基板上に露光光を照射して前記基板を露光する露光方法において、
    前記基板上の液体中の前記基板から溶出する溶出物質の許容濃度を、前記露光光の光路における前記露光光に対する液体の透過率に基づいて設定する露光方法。
  17. 前記基板上に液浸領域を形成した後、前記基板から溶出した溶出物質を含む液体の前記露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をR
    前記溶出物質が溶出される前の液体の前記露光光の光路方向における1mmあたりの透過率をRとしたとき、
    −R≦1.0×10−2
    の条件を満足するように、前記液体中の溶出物質の許容濃度を設定する請求項16記載の露光方法。
  18. 基板上に液浸領域を形成し、前記液浸領域を形成する液体及び光学部材を介して前記基板上に露光光を照射して前記基板を露光する露光方法において、
    前記基板上の液体中の前記基板から溶出する溶出物質の許容濃度を、前記露光光に対する前記光学部材の液体接触面の透過率に基づいて設定する露光方法。
  19. 第1の時点での前記光学部材の前記液体接触面の透過率をR
    前記第1の時点から前記溶出物質を含む液体に接触して所定時間経過後の第2の時点における前記光学部材の前記液体接触面の透過率をR’としたとき、
    −R’≦1.0×10−3
    の条件を満足するように、前記液体中の溶出物質の許容濃度を設定する請求項18記載の露光方法。
  20. 前記溶出物質は、前記基板上の感光材に含まれる光酸発生剤を含み、
    前記基板から液体中に溶出する前記光酸発生剤の許容量は、2.2ng/cm以下である請求項19記載の露光方法。
  21. 前記溶出物質は、前記基板上の感光材に含まれる光酸発生剤を含み、
    前記基板から液体中に溶出する前記光酸発生剤の許容量は、2.5ng/cm以下である請求項19記載の露光方法。
  22. 前記光学部材と前記基板との間に、前記露光光が通過する開口を有する所定部材を配置し、前記光学部材と前記所定部材との間に液体を供給することによって、前記光学部材と前記基板との間の前記露光光の光路空間を液体で満たす請求項21記載の露光方法。
  23. 前記溶出物質は、前記基板上の感光材に含まれるアミン系物質を含み、
    前記基板から液体中に溶出する前記アミン系物質の許容量は、1.1ng/cm以下である請求項19〜22のいずれか一項記載の露光方法。
  24. 前記許容濃度は、前記基板の移動速度を考慮して設定される請求項16〜23のいずれか一項記載の露光方法。
  25. 前記液体が純水である請求項16〜24のいずれか一項記載の露光方法。
  26. 請求項1〜25のいずれか一項記載の露光方法を用いるデバイス製造方法。
  27. 液体を介して露光光が照射される液浸露光用の基板であって、
    基材と、前記基材上に被覆され光酸発生剤を含む感光材とを有し、
    前記液体と接触することによって前記液体中に溶出する前記光酸発生剤の量は、2.2ng/cm以下である基板。
  28. 液体を介して露光光が照射される液浸露光用の基板であって、
    基材と、前記基材上に被覆され光酸発生剤を含む感光材とを有し、
    前記液体と接触することによって前記液体中に溶出する前記光酸発生剤の量は、2.5ng/cm以下である基板。
  29. 液体を介して露光光が照射される液浸露光用の基板であって、
    基材と、前記基材上に被覆されアミン系物質を含む感光材とを有し、
    前記液体と接触することによって前記液体中に溶出する前記アミン系物質の量は、1.1ng/cm以下である基板。
  30. 前記液体が純水である請求項27〜29のいずれか一項記載の基板。
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