以下、本発明の露光装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスク(レチクル)Mを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTと、制御装置CONTに接続され、露光動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRYとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体1を供給する液体供給機構10と、基板P上の液体1を回収する液体回収機構30とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体1により投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の少なくとも一部に液浸領域AR2を形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部の光学素子2と基板Pの表面(露光面)との間に液体1を満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影し、基板Pを露光する。
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向(所定方向)における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向、所定方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
基板Pは、デバイスの基材(半導体ウエハやガラス基板)上にフォトレジスト層、あるいはこのフォトレジスト層の上層に設けられるトップコート層(保護層)からなる膜部材SPを設けたものである。したがって、基板P上の最上層に設けられた膜部材SPは、液浸露光時において液体1に接触する液体接触面を形成する。フォトレジスト層としては、例えば、東京応化工業株式会社製P6111が用いられ、トップコート層としては、例えば、東京応化工業株式会社製TSP−3Aが用いられる。これらの膜部材の材料特性、特に、用いる液体との濡れ性又は接触角に応じて、液浸条件が決定される。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域IAをスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域IAは照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態では、ArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。また、投影光学系PLには、この投影光学系PLの結像特性(光学特性)を調整可能な結像特性制御装置3が設けられている。結像特性制御装置3は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子の一部を移動可能な光学素子駆動機構、及び鏡筒PK内の複数の光学素子間のうちの特定の空間の圧力を調整する圧力調整機構を含んで構成されている。光学素子駆動機構は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうちの特定の光学素子を光軸AX方向に移動したり、光軸AXに対して傾斜する。結像特性制御装置3は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは結像特性制御装置3を介して、投影光学系PLの投影倍率や像面位置を調整可能である。
本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子2は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられている。また、先端部の光学素子2は鏡筒PKより露出しており、液浸領域AR2の液体1は光学素子2に接触する。これにより、金属からなる鏡筒PKの腐蝕等が防止されている。
また、露光装置EXは、フォーカス検出系4を有している。フォーカス検出系4は、発光部4aと受光部4bとを有し、発光部4aから液体1を介して基板P表面(露光面)に斜め方向から検出光を投射し、その反射光を受光部4bで受光する。制御装置CONTは、フォーカス検出系4の動作を制御するとともに、受光部4bの受光結果に基づいて、所定基準面に対する基板P表面のZ軸方向における位置(フォーカス位置)を検出する。また、基板P表面における複数の各点での各フォーカス位置を求めることにより、フォーカス検出系4は基板Pの傾斜方向の姿勢を求めることもできる。
基板ステージPSTは、基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ52と、Zステージ52を支持するXYステージ53と、XYステージ53を支持するベース54とを備えている。基板ステージPSTはリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。基板ステージPSTのXYステージ53を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。
基板ステージPST(Zステージ52)上には移動鏡55が設けられている。また、移動鏡55に対向する位置にはレーザ干渉計56が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計56によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計56の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを介してXYステージ53を駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。
また、制御装置CONTは基板ステージ駆動装置PSTDを介して基板ステージPSTのZステージ52を駆動することにより、Zステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置を制御する。すなわち、Zステージ52は、フォーカス検出系4の検出結果に基づく制御装置CONTからの指令に基づいて動作し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角を制御して基板Pの表面(露光面)を投影光学系PL及び液体1を介して形成される像面に合わせ込む。
基板ステージPST(Zステージ52)上には、基板Pを囲むように補助プレート57が設けられている。補助プレート57は基板ホルダに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さの平面を有している。ここで、基板Pのエッジと補助プレート57との間には1〜2mm程度の隙間があるが、液体1の表面張力によりその隙間に液体1が流れ込むことはほとんどなく、基板Pの周縁近傍を露光する場合にも、補助プレート57により投影光学系PLの下に液体1を保持することができる。
液体供給機構10は、基板P上に液浸露光用の液体1を供給するものであって複数種の液体1を供給可能である。本実施形態において、液体供給機構10は第1の液体である純水と第2の液体であるフッ素系オイル(フッ素系流体)との2種類の液体1を供給可能である。液体供給機構10は、第1の液体(純水)を送出可能な第1液体供給部11及び第2液体供給部12と、第2の液体(フッ素系オイル)を送出可能な第3液体供給部21及び第4液体供給部22と、第1液体供給部11及び第3液体供給部21に接続され、第1の液体(純水)及び第2の液体(フッ素系オイル)のうちいずれか一方を選択し、この選択した液体1を基板P上に供給する第1配管系15と、第2液体供給部12及び第4液体供給部22に接続され、第1の液体(純水)及び第2の液体(フッ素系オイル)のうちいずれか一方を選択し、この選択した液体1を基板P上に供給する第2配管系16とを有している。
図2は液体供給機構10及び液体回収機構30の概略構成を示す平面図である。図1及び図2に示すように、第1配管系15は、第1液体供給部11及び第3液体供給部21のいずれか一方から送出された液体1を流通する供給管19を備えており、この供給管19の一端部は管17、18を介して第1液体供給部11及び第3液体供給部21のそれぞれに接続されている。一方、供給管19の他端部は、複数の分岐管13Bを介して複数の第1供給部材13のそれぞれに接続されている。複数の第1供給部材13はY軸方向に並んで配置されており、その供給口13Aを基板Pの表面に向けて近接させている。本実施形態において、第1供給部材13は5つ並んで配置されている。そして、これら第1供給部材13は、Y軸方向(非走査方向)を長手方向とするスリット状(矩形状)に設定された投影光学系PLの投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられている。
管17、18には弁17A、18Aがそれぞれ設けられており、弁17A、18Aの動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、弁17A、18Aを使って、管17を開放するとともに管18を閉塞し、第1液体供給部11を駆動することにより、第1液体供給部11から第1の液体(純水)を管17、供給管19、及び第1供給部材13を介して供給口13Aより基板P上に供給する。一方、制御装置CONTは、弁17A、18Aを使って、管18を開放するとともに管17を閉塞し、第3液体供給部21を駆動することにより、第3液体供給部21から第2の液体(フッ素系オイル)を管18、供給管19、及び第1供給部材13を介して供給口13Aより基板P上に供給する。
第2配管系16は、第2液体供給部12及び第4液体供給部22のいずれか一方から送出された液体1を流通する供給管25を備えており、この供給管25の一端部は管23、24を介して第2液体供給部12及び第4液体供給部22のそれぞれに接続されている。一方、供給管25の他端部は、複数の分岐管14Bを介して複数の第2供給部材14のそれぞれに接続されている。複数の第2供給部材14はY軸方向に並んで配置されており、その供給口14Aを基板Pの表面に近接させている。第2供給部材14は、第1供給部材13同様、5つ並んで配置されている。そして、これら第2供給部材14は投影領域AR1に対して走査方向他方側(+X側)に設けられている。
管23、24には弁23A、24Aがそれぞれ設けられており、弁23A、24Aの動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、弁23A、24Aを使って、管23を開放するとともに管24を閉塞し、第2液体供給部12を駆動することにより、第2液体供給部12から第1の液体(純水)を管23、供給管25、及び第2供給部材14を介して供給口14Aより基板P上に供給する。一方、制御装置CONTは、弁23A、24Aを使って、管24を開放するとともに管23を閉塞し、第4液体供給部22を駆動することにより、第4液体供給部22から第2の液体(フッ素系オイル)を管24、供給管25、及び第2供給部材14を介して供給口14Aより基板P上に供給する。
上記第1〜第4の各液体供給部11、12、21、22のそれぞれは、液体1を収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えており、これら各液体供給部11、12、21、22の液体供給動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは、各液体供給部11、12、21、22による基板P上に対する単位時間あたりの液体供給量をそれぞれ独立して制御可能である。また、各液体供給部11、12、21、22のそれぞれは液体の温度調整機構を有しており、装置が収容されるチャンバ内の温度とほぼ同じ23℃の液体1を基板P上に供給するようになっている。
このように、液体供給機構10は、配管系15、16を使って、複数種(ここでは2種)の液浸露光用の液体1を選択的に使用するための液体供給動作を行う。そして、図2に示すように、液体1が満たされた液浸領域AR2は投影領域AR1を含むように基板P上の一部に形成される。液体供給機構10は、複数の第1、第2供給部材13、14の供給口13A、14Aのそれぞれより、投影領域AR1の両側で液体1を同時に供給する。
以下の説明では、液体供給機構10は液浸露光用の液体1として純水を供給するものとする。純水は、露光光ELがArFエキシマレーザ光であっても透過可能である。また、純水は紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。また、投影光学系PLの先端の光学素子2は蛍石で形成されている。蛍石は純水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2aのほぼ全面に液体1を密着させることができる。すなわち、本実施形態においては光学素子2の液体接触面2aとの親和性が高い液体(水)1を供給するようにしているので、光学素子2の液体接触面2aと液体1との密着性が高く、光学素子2は水との親和性が高い石英であってもよい。また光学素子2の液体接触面2aに親水化(親液化)処理を施して、液体1との親和性をより高めるようにしてもよい。
液体回収機構30は基板P上の液体1を回収するものであって、基板Pの表面に近接して配置された回収口31A、32Aを有する複数の第1、第2回収部材31、32と、この第1、第2回収部材31、32のそれぞれに回収管33A、34Aを介して接続された第1、第2液体回収部33、34とを備えている。回収管33Aは複数の第1回収部材31のそれぞれに接続され、回収管34Aも複数の第2回収部材32のそれぞれに接続されているが、図2ではその図示を一部省略している。複数の第1回収部材31は、投影領域AR1の−X側において、略円弧状に配置されており、その回収口31Aを基板Pの表面に向くように配置されている。また、複数の第2回収部材32は、投影領域AR2の+X側において、略円弧状に配置されており、その回収口32Aを基板Pの表面に向くように配置されている。そして、これら複数の第1、第2回収部材31、32は、液体供給機構10の第1、第2供給部材13、14、及び投影領域AR1を取り囲むように配置されている。
第1、第2液体回収部33、34は例えば真空ポンプ等の吸引装置、及び回収した液体1を収容するタンク等を備えており、基板P上の液体1を第1、第2回収部材31、32、及び回収管33A、34Aを介して回収する。第1、第2液体回収部33、34の液体回収動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは第1、第2液体回収部33、34による単位時間あたりの液体回収量(回収力)を制御可能である。第1、第2供給部材13、14の供給口から基板P上に供給された液体1は、投影光学系PLの先端部(光学素子2)の下端面と基板Pとの間に濡れ拡がるように供給される。また、投影領域AR1に対して第1、第2供給部材13、14の外側に流出した液体1は、この第1、第2供給部材13、14より投影領域AR1に対して外側に配置されている第1、第2回収部材31、32の回収口より回収される。
図3は、第1供給部材13を拡大断面図である。図3(a)において、第1供給部材13は、本体部材40と、本体部材40の下方において本体部材40に対してスライド可能なスライド部材41と、スライド部材41の下端部である供給口13Aに設けられ、スライド部材41に対してX方向にスライドすることにより供給口13Aの大きさを変更可能なシャッタ部材42とを備えている。スライド部材41及びシャッタ部材42は不図示の駆動装置によりスライド移動される。そして、図3(b)に示すように、スライド部材41が本体部材40に対して+X方向に移動することにより、供給口13Aの位置が+X側に移動し、図3(c)に示すように、スライド部材41が本体部材40に対して−X方向に移動することにより、供給口13Aの位置が−X側に移動する。また、図3(d)に示すように、シャッタ部材42が供給口13Aの内側に向かって移動することにより、供給口13Aが小さくなる。
そして、第2供給部材14、第1回収部材31、及び第2回収部材32のそれぞれは、第1供給部材13と同等の構成を有している。したがって、第2供給部材14はその供給口14Aの位置及び大きさを変更可能であり、同様に、第1、第2回収部材31、32のそれぞれはその回収口31A、32Aの位置及び大きさを変更可能である。
図4は、第1、第2供給部材13、14の液体供給位置、及び第1、第2回収部材31、32の液体回収位置が変更される様子を示す模式図である。制御装置CONTは、第1、第2供給部材13、14の駆動装置、及び第1、第2回収部材31、32の駆動装置を駆動することにより、図4(a)に示すように、第1、第2供給部材13、14による液体供給位置を投影光学系PLの投影領域AR1に対して近づけることができるとともに、第1、第2回収部材31、32による液体回収位置を投影領域AR1に対して離すことができる。また、図4(b)に示すように、制御装置CONTは、第1、第2供給部材13、14の駆動装置、及び第1、第2回収部材31、32の駆動装置を駆動することにより、第1、第2供給部材13、14による液体供給位置を投影領域AR1に対して離すことができるとともに、第1、第2回収部材31、32による液体回収位置を投影領域AR1に対して近づけることができる。そして、第1、第2供給部材13、14による液体供給位置、及び第1、第2回収部材31、32による液体回収位置は、それぞれ独立して調整可能となっている。
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターンの像を投影光学系PLと液浸領域AR2の液体1とを介して基板P上に投影露光する方法について説明する。
ここで、本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光するものであって、走査露光時には、投影光学系PLの先端部直下のスリット状(矩形状)の投影領域AR1に、照明領域IAに応じたマスクMの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対して、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ53を介して基板Pが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、基板P上には複数のショット領域が設定されており、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピング移動によって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域SAに対する走査露光処理が順次行われる。
また、図5に示すブロック図のように、記憶装置MRYには、液浸露光を行うための液浸条件に関する情報が記憶されている(液浸条件データベース)。具体的には、記憶装置MRYは、液浸露光時において基板P上の液体1に接触する液体接触面に形成されている膜部材SPと液体1との親和性と、その親和性に対応する液浸条件との関係が複数マップデータとして記憶されている。ここで、膜部材SPと液体1との親和性に関する情報は、膜部材SPに対する液体1の接触角情報を含む。更に、記憶装置MRYには、液体1の材料特性(例えば揮発性や粘性、密度、表面張力など)に応じた液浸露光条件が予め記憶されている。なお、後述するように、種々の膜部材SPとそれらの膜部材SPに好適な液体種を予め調査しておき、膜部材SPとその膜部材に好適な液体種の組合わせ並びにその組合わせに最適な液浸条件を記憶装置MRYに保存しておいてもよい。
液浸露光処理を行うに際し、露光処理されるべき基板Pの膜部材情報が入力装置60を介して制御装置CONTに入力される。入力される膜部材情報には、膜部材SPと液体1との接触角に関する情報が含まれている。制御装置CONTは、入力された膜部材情報(接触角に関する情報)に応じて、記憶装置MRYに予め記憶されている、膜部材SPと液体1との親和性(接触角)とその親和性(接触角)に対応する液浸条件との関係(マップデータ)を参照し、露光処理されるべき基板Pに対する最適な液浸条件を選択し、決定する。
ここで、液浸条件は、液浸露光用の液体1の基板P上への供給条件を含む。また、液体1の供給条件は、基板P上に対する液体供給位置に関する条件、及び単位時間あたりの液体供給量に関する条件を含む。
更に、液浸条件は、液浸露光用の液体1の基板P上からの回収条件を含む。また、液体1の回収条件は、基板P上での液体回収位置に関する条件、及び単位時間あたりの液体回収量(液体回収力)に関する条件を含む。
例えば、制御装置CONTは、膜部材SPに対する液体1の接触角に応じて、液体供給機構10の液体供給量及び液体回収機構30の液体回収量を調整する。 具体的には、膜部材SPに対する液体1の接触角が大きい場合、膜部材SPは液体1に対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、基板P(膜部材SP)上に液体1を供給した際、この液体1は過剰に濡れ拡がらない。したがって、この膜部材SPに対して液体1を供給する場合、液体供給機構10は、例えば単位時間あたりの液体供給量を多くする。こうすることにより、基板P(膜部材SP)表面に対して液体1を良好に濡れ拡がらせることができ、液浸領域AR2を円滑に形成できる。また、膜部材SPが撥液性を有する場合、走査露光のために基板Pを走査移動すると、液体1が基板P(膜部材SP)に対して剥離を生じやすくなるが、液体供給量を多くすることで、液体1の剥離の発生を抑えることができる。
また、膜部材SPが液体1に対して撥液性(撥水性)である場合、液体1は過剰に濡れ拡がらないので、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を比較的回収しやすい。したがって、液体回収機構30は、液体回収力(液体回収部の駆動力)、すなわち単位時間あたりの液体回収量を低減しても液体1を円滑に回収できる。したがって、液体回収部の駆動に起因する振動の発生を抑制することができる。
一方、膜部材SPに対する液体1の接触角が小さい場合、膜部材SPは液体1に対して親液性(親水性)を有していることになるので、基板P(膜部材SP)上に液体1を供給した際、この液体1は濡れ拡がりやすい。したがって、この膜部材SPに対して液体1を供給する場合、液体供給機構10は、例えば単位時間あたりの液体供給量を少なくしても、基板P(膜部材SP)表面に対して液体1を良好に濡れ拡がらせることができ、液浸領域AR2を円滑に形成できる。また、液体供給量を低減できるので、液体1の浪費を抑え、液体供給部の駆動に起因する振動の発生を抑制することができる。
また、膜部材SPが液体1に対して親液性(親水性)である場合、液体1は基板P(膜部材SP)上で濡れ拡がりやすいので、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を回収しづらくなる可能性がある。したがって、液体回収機構30は、液体回収力(液体回収部の駆動力)、すなわち単位時間あたりの液体回収量を多くする。こうすることにより、液体回収機構30は液体1を円滑に回収できる。
また、制御装置CONTは、膜部材SPに対する液体1の接触角に応じて、液体供給機構10の液体供給位置及び液体回収機構30の液体回収位置を調整することができる。
例えば、膜部材SPに対する液体1の接触角が大きい場合、膜部材SPは液体1に対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、基板P(膜部材SP)上に液体1を供給した際、この液体1は濡れ拡がりにくくなるので、走査露光するために基板Pを液体1に対して移動する際、基板P(膜部材SP)に対する液体1の剥離が生じやすくなる可能性がある。したがって、液体供給機構10は、その液体供給位置を投影光学系PLの投影領域AR1より離れた位置に、すなわち、液体供給位置の投影光学系PLの投影領域AR1に対する距離を長くして、液浸領域AR2を大きく形成することにより、基板Pを走査移動した際に液体1の剥離の発生を抑えることができる。液体供給位置の調整は、図3を参照して説明したように、供給部材13、14の本体部材40に対してスライド部材41をスライドさせればよい。
また、液体1が膜部材SPに対して撥液性(撥水性)である場合、過剰に濡れ拡がらないので、上述したように、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を比較的回収しやすい。したがって、液体回収機構30は、その液体回収位置を投影光学系PLの投影領域AR1に近い位置に、すなわち、液体回収位置の投影光学系PLの投影領域AR1に対する距離を短くしても、液体1を円滑に回収できる。したがって、液体回収機構30が占有するスペースをコンパクト化できる。
一方、膜部材SPに対する液体1の接触角が小さい場合、膜部材SPは液体1に対して親液性(親水性)を有していることになるので、基板P(膜部材SP)上に液体1を供給した際、この液体1は濡れ拡がりやすい。したがって、この膜部材SPに対して液体1を供給する場合には、液体供給機構10は、その液体供給位置を投影光学系PLの投影領域AR1に近い位置に、すなわち、液体供給位置の投影光学系PLの投影領域AR1に対する距離を短くすることにより、液体1の外側への漏洩を抑えることができる。
また、液体1が膜部材SPに対して親液性(親水性)である場合、液体1は基板P(膜部材SP)上で濡れ拡がりやすいので、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を回収しづらくなる可能性がある。したがって、液体回収機構30は、その液体回収位置を投影光学系PLの投影領域AR1より離れた位置に、すなわち、液体回収位置の投影光学系PLの投影領域AR1に対する距離を長くすることにより、液体回収機構30は液体1を円滑に回収できる。つまり、液体1が濡れ拡がりやすい場合には、液体供給位置に対して離れた位置で液体回収することで、供給された液体1の流れの勢いが低減された状態で回収することになるため、膜部材SPに対して親液性を有する液体1を回収する際には、液体供給位置と離れた位置、すなわち、投影領域AR1と離れた位置に液体回収位置を設定することが好ましい。
また、制御装置CONTは、膜部材SPに対する液体1の接触角に応じて、液体供給機構10の液体供給口13A、14Aの大きさ及び液体回収機構30の液体回収口の大きさ31A、32Aを調整することができる。
例えば、膜部材SPに対する液体1の接触角が大きい場合、膜部材SPは液体1に対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、基板Pに対して液体1は剥離を生じやすい。この場合、液体供給口13A、14Aを小さくすることにより、基板P上に供給される液体1の流れの勢いが増すため、剥離の発生を抑えることができる。液体供給口の大きさの調整は、図3を参照して説明したように、供給部材13、14のシャッタ部材42を移動すればよい。
また、液体1が膜部材SPに対して撥液性(撥水性)である場合、上述したように、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を比較的回収しやすい。したがって、液体回収機構30は、その液体回収口31A、32Aを小さくすることができる。液体回収口31A、32Aを小さくすることにより、液体1を回収する際に、空気を噛み込みにくくなるので、液体回収機構30は基板P上の液体1を円滑に回収することができる。
一方、膜部材SPに対する液体1の接触角が小さい場合、膜部材SPは液体1に対して親液性(親水性)を有していることになるので、液体供給口13A、14Aを大きくして液体1を基板P上に供給しても円滑に液浸領域AR2を形成することができる。
また、液体1が膜部材SPに対して親液性(親水性)である場合、液体1は基板P(膜部材SP)上で濡れ拡がりやすいので、液体回収機構30は基板P(膜部材SP)上の液体1を回収しづらくなる可能性がある。そこで、液体回収口31A、32Aを大きくして、広い範囲で液体1を回収することで、基板P上の液体1を円滑に回収することができる。
以上説明したように、膜部材SPに対する液体1の接触角(親和性)に対応する最適な液浸条件(供給・回収量、供給・回収位置等)が予め求め、この最適な液浸条件に関する情報を記憶装置MRYに記憶しておくことにより、制御装置CONTは、入力装置60を介して入力された露光処理されるべき基板Pの膜部材SPに関する情報(液体1に関する膜部材SPの接触角情報)に基づいて、複数記憶されている液浸条件のなかから最適な液浸条件を選択して決定し、この選択した液浸条件に基づいて、上述したように、液体供給・回収量や、液体供給・回収位置を設定する。そして、制御装置CONTは、基板Pに対して液浸露光を行う。
液浸露光処理を行う際には、制御装置CONTは、基板搬送系を使って基板Pを基板ステージPSTにロードした後、液体供給機構10を駆動して基板P上に対する液体供給動作を開始する。液浸領域AR2を形成するために液体供給機構10の第1、第2液体供給部11、12のそれぞれから送出された液体1は、第1、第2配管系15、16を流通した後、第1、第2供給部材13、14を介して基板P上に供給され、投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2を形成する。第1、第2供給部材13、14の供給口13A、14Aは投影領域AR1のX軸方向(走査方向)両側に配置されており、制御装置CONTは、液体供給機構10の供給口13A、14Aより投影領域AR1の両側で基板P上への液体1の供給を同時に行う。これにより、基板P上に供給された液体1は、少なくとも投影領域AR1より広い範囲の液浸領域AR2を基板P上に形成する。
本実施形態において、投影領域AR1の走査方向両側から基板Pに対して液体1を供給する際、制御装置CONTは、液体供給機構10の第1、第2液体供給部11、12の液体供給動作を制御し、走査方向に関して、投影領域AR1の手前から供給する単位時間あたりの液体供給量を、その反対側で供給する液体供給量よりも多く設定する。例えば、基板Pを+X方向に移動しつつ露光処理する場合、制御装置CONTは、投影領域AR1に対して−X側(すなわち供給口13A)からの液体量を、+X側(すなわち供給口14A)からの液体量より多くし、一方、基板Pを−X方向に移動しつつ露光処理する場合、投影領域AR1に対して+X側からの液体量を、−X側からの液体量より多くする。
また、制御装置CONTは、液体回収機構30の第1、第2液体回収部33、34を制御し、液体供給機構10による液体1の供給動作と並行して、基板P上の液体回収動作を行う。これにより、第1、第2供給部材13、14の供給口13A、14Aより投影領域AR1に対して外側に流れる基板P上の液体1は、第1、第2回収部材33、34の回収口31A、32Aより回収される。このように、液体回収機構30は、投影領域AR1を取り囲むように設けられている回収口31A、32Aにより基板P上の液体1の回収を行う。
ここで、制御装置CONTは、基板Pの移動条件も考慮して、液浸条件を選択して決定することができる。例えば、基板Pを移動しながら走査露光する場合、基板Pの膜部材SPが液体1に対して親液性を有している場合には、液体1を走査方向一方側からのみ供給することによっても、液体1は基板P上で良好に濡れ拡がって、液浸領域AR2を円滑に形成することができる。例えば、基板Pを+X方向に移動しながら液浸露光する際、液体供給機構10は第1供給部材13から液体1を供給し、第2供給部材14からの液体供給を停止する、あるいは第2供給部材14からの液体供給量を第1供給部材13からの液体供給量より少なくするといったことができる。一方、基板Pの膜部材SPが液体1に対して撥液性を有している場合には、液体1を走査方向両側から供給することで、液浸領域AR2を円滑に形成することができる。
また、制御装置CONTは、基板Pの移動条件に応じて制御装置CONTは、基板PのX軸方向(走査方向)に関する速度又は加速度に応じて、液浸条件を決定する。例えば、基板Pの走査速度(あるいは加速度)が高速であれば、制御装置CONTは基板Pに対する液体供給量を増大するとともに、基板P上の液体回収力を増大する。一方、基板Pの走査速度(あるいは加速度)が比較的低速であれば、制御装置CONTは基板Pに対する液体供給量を減少し、基板P上の液体回収力を低減しても、液浸領域AR2を円滑に形成することができる。
また、基板Pの走査速度(あるいは加速度)が高速化することにより、液体1の剥離が生じやすくなるので、液体供給機構10は、単位時間あたりの液体供給量を多くするとともに、その供給位置を投影光学系PLの投影領域AR1より離れた位置に設定して液浸領域AR2を大きくし、剥離の発生を抑えることができる。同様に、基板Pの走査速度(あるいは加速度)が高速化するに従い、基板P上の液体1を回収しづらくなるので、液体回収機構30による液体回収力を増大するとともに、この回収位置を投影光学系PLの投影領域AR1から離れた位置に設定して、液体1の流れの勢いが低減された位置で液体1を回収することで、液体1を円滑に回収することができる。
更に、制御装置CONTは、基板Pの走査方向(X軸方向)及びステップ移動方向(Y軸方向)を含む基板Pの移動方向に応じても、液浸条件を決定する。例えば、基板PがY軸方向にステップ移動する際には、液体供給機構10による液体回収動作を停止、あるいは走査露光時に比べて液体供給量を低減する。あるいは、制御装置CONTは、投影領域AR1を囲むように配置された複数の回収部材31、32のうち、投影領域AR1に対してY方向側にある回収部材31、32からの液体回収量を多くするといった制御が可能である。
また、制御装置CONTは、膜部材SPに応じて、液浸条件の1つである液体供給口13A、14Aの形状や、液体回収口31A、32Aの形状を変えることもできる。上記実施形態では、シャッタ部材42を駆動することで供給口あるいは回収口を、幅の広いスリット形状(略正方形状)と幅の狭いスリット形状(長方形状)との間で変更可能であるが、例えば、膜部材SPに応じて、円形状や楕円形状、あるいは多角形状にする等、種々の形状を選択し、供給口及び回収口の形状を決定する。
ところで、上述したように、本実施形態の露光装置EXは、第1の液体である純水と、第2の液体であるフッ素系オイルとを切り替えて基板P上に供給可能である。制御装置CONTは、露光処理されるべき基板Pの膜部材SPに応じて、基板P上に供給する液体1を変える。例えば、膜部材SPが、アミン系物質等の純水に溶けやすいものである場合、液浸露光用の液体1としてフッ素系オイルを使うことが好ましい。したがって、入力装置60を介して、膜部材SPに関する情報が入力されたら、制御装置CONTは、液体供給機構10を制御して、基板Pに供給する液体1を選択する。そして、制御装置CONTは、使用する液体1に応じて、液浸条件を決定する。
記憶装置MRYには、この膜部材SPと液体(第2の液体)1との親和性と、その親和性に対応する液浸条件との関係も記憶されている。制御装置CONTは、露光処理されるべき基板P(膜部材SP)に応じて、液体供給・回収量や液体供給・回収位置を含む液浸条件を決定する。
なお前述の膜部材SPに応じて基板P上に供給する液体1を変更する場合には、膜部材SPとその膜部材SPに好適な液体種の組合わせ並びにその組合わせを用いる場合の液浸条件を記憶装置MRYに保存しておくことができる。こうすることで、露光装置のオペレータが膜部材SPを選定(入力)すれば、液体種を含めた液浸条件が自動的に決定されることになる。すなわち、液体種の選定は液浸条件の一つと見ることもできる。なお、膜部材SPとしては、フォトレジストの材料、製造主、品番などを記憶させておくことができる。
また、基板P上に供給する液体1の材料特性によって液浸条件を変えてもよい。例えば、液体1が揮発しやすい液体である場合には、単位時間あたりの液体供給量を多くする。これにより、揮発しやすい液体1であっても、液浸領域AR2を円滑に形成できる。また、揮発しやすい液体1の場合、揮発することで基板P上より除去されるので、例えば液体回収力を低減することもできる。つまり、制御装置CONTは、基板P上に供給される液体1の材料特性のうち揮発性に応じて、液浸条件を調整することができる。
また、基板P上に供給する液体1の粘性が高い場合には、例えば基板Pに対する基板ホルダによる基板保持力を大きくするといったように、制御装置CONTは、液体1の材料特性のうち粘性に応じて、液浸露光条件を調整することができる。つまり、液体1の粘性が高いと、走査露光した際に、液体1の粘性により基板Pが液体1に引っ張られる現象が生じる場合が考えられ、これにより露光中において基板ホルダに対して基板Pの位置がずれてしまう不都合が生じる可能性がある。したがって、制御装置CONTは、液体1の粘性に応じて、基板ホルダによる基板Pの保持力を調整する。具体的には、基板ホルダが真空吸着孔を介して基板Pを真空吸着保持する構成のものである場合には、制御装置CONTは基板Pに対する真空吸着力を増大する。一方、液体1の粘性が低い場合には、走査露光中に基板Pの位置がずれる可能性が低くなるので、制御装置CONTは、基板Pの反りを考慮して基板Pに対する真空吸着力を低減するといった制御が可能である。
更に、液体1が変わることにより、液体1の比熱も変わるため、例えば露光光ELの光量を調整したり、あるいは、液体1の温度変化に伴う液体1の屈折率変化を考慮して、基板Pのフォーカス位置及び傾斜を制御することができる。例えば、フォーカス検出系4によるフォーカス位置検出結果を補正するといったことができる。
また液体1と膜部材SPとの親和性(接触角)が変わることにより、液体1が基板Pに及ぼす圧力も変わるため、液体1が基板Pに及ぼす圧力変化も考慮して、基板Pのフォーカス位置及び傾斜を制御することもできる。
また、液体1を変更することにより、投影光学系PL及び液体1を介した像の結像特性が変化することが考えられる。この場合、制御装置CONTは、記憶装置MRYに予め記憶されている液体1の材料特性及び光学特性に基づいて、結像特性制御装置3を駆動することで、液体1が変更したことによる結像特性の変化を補正することができる。更に、制御装置CONTは、基板ステージPSTのZ軸方向の位置やθX、θY方向の姿勢を調整することで 液体1の変更に伴って変化した像面位置に基板Pの表面を合わせ込むこともできる。
記憶装置MRYに記憶されているマップデータは随時更新することができる。つまり、更に異なる種類の膜部材SPを有する基板Pを露光するときや、新たな種類の液体1を使うときには、この新たな膜部材SPや液体1について例えば実験を行って前記マップデータを作成し、記憶装置MRYに記憶されているマップデータを更新すればよい。また、マップデータの更新は、例えばインターネットを含む通信装置を介して、露光装置EX(記憶装置MRY)に対して遠隔地より行うことも可能である。
なお、上述の実施形態においては、液体供給機構10は、膜部材SPに応じて2種類の液体を供給可能であるが、1種類の液体だけを供給する構成であってもよいし、3種類以上の液体を供給できるようにしてもよい。
また上述の実施形態においては、膜部材SPと液体1との親和性と、その親和性に対応する液浸条件との関係を記憶装置MRYに記憶しているが、使用する膜部材SPの種類及び使用する液体1の種類が予めわかっている場合には、膜部材SPと液浸条件との関係を記憶装置MRYに記憶しておき、オペレータなどによって選択(入力)された膜部材SPの情報から直ちに液浸条件が決定されるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、膜部材SPと液体1との接触角(親和性)に応じて液浸条件を決定する場合に、基板Pの移動条件(例えば、走査露光における基板Pの速度又は加速度又はその両方)も考慮するようにしているが、膜部材SPと液体1との接触角(親和性)に基づいて、基板Pの移動条件(例えば、走査露光における基板Pの速度又は加速度又はその両方)を決定するようにしてもよい。例えば、膜部材SPの液体1に対する親和性が比較的高い場合には、走査露光における基板Pの速度や加速度を大きくする。膜部材SPと液体1との親和性が比較的高い場合には、液体1が基板P上で濡れ拡がりやすいため、基板Pの速度や加速度を大きくしても液浸領域AR2を円滑に形成することができる。逆に、膜部材SPの液体1に対する親和性が比較的低い場合には、走査露光における基板Pの速度や加速度を小さくする。膜部材SPの液体1に対する親和性が比較的低い場合には、液体1が基板P上で濡れ拡がりにくいため、基板Pの速度や加速度を大きくしすぎると液体1の剥離などが生じて、投影光学系PLと基板Pとの間を液体1で十分に満たせない可能性があるからである。
また、膜部材SPに応じて決定された液浸条件に基づいて基板Pの移動条件を決定することもできる。例えば、膜部材SPに応じて決定された液体回収機構30の液体回収力が小さい場合には、基板Pの走査速度や加速を小さくすることよって、液体1の剥離や漏洩を防止することができる。
また、上記実施形態では、膜部材SPと液体1との接触角(親和性)を予め実験等により求めておき、この求めた接触角に対応する液浸条件を記憶装置MRYに記憶しておく構成であるが、露光処理前に、基板P上の液体接触面に形成される膜部材SPと液体1との親和性を、露光装置EXに設けられた計測装置で計測し、この計測結果に基づいて液浸条件を決定するようにしてもよい。
図6は、膜部材SPと液体1との親和性を計測する計測装置(計測手段)70を示す模式図である。本実施形態において、計測装置70は基板Pの搬送経路上に設けられている。図6(a)において、計測装置70は、基板搬送系の一部を構成するローダ用ハンド71に保持されている基板P表面に液体1の液滴を滴下可能な滴下部72と、液体1の液滴を検知可能な検知部73とを備えている。ローダ用ハンド71は露光処理されるべき基板Pを基板ステージPSTにロードする。ローダ用ハンド71は、ローダ用ハンド71を軸方向に回転する回転駆動部74により、基板Pを保持した状態で回転可能となっている。この回転駆動部74の駆動は制御装置CONTに制御される。また検知部73は、液滴の検知信号を制御装置CONTに出力する。
膜部材SPと液体1との親和性(接触角)を計測する際には、ローダ用ハンド71が基板Pを水平に保持した状態で、この基板Pの膜部材SPに対して滴下部72より液体1の液滴が滴下される。液体1の液滴が基板Pの膜部材SP上に配置されたら、ローダ用ハンド71を図6中の矢印rで示す方向に回転することによって、保持した基板Pを傾斜させる。基板Pを傾斜させるにしたがって、図6(b)に示すように、液体1が基板P(膜部材SP)表面から転がるように落下する。落下した液体1は検知部73に検知される。検知部73の検知信号は制御装置CONTに出力され、制御装置CONTは、このときの基板Pの傾斜角度(転落角)θを、回転駆動部74の駆動量より求める。転落角θは、基板Pを水平面に対して傾けたときに基板Pの膜部材SP表面の液体1の液滴が転がり落ちる角度である。この転落角θは、膜部材SPに対する液体1の接触角に対応する。例えば、転落角θが小さい場合には、膜部材SPは液体1に対して撥液性であって、接触角は大きい。したがって、この転落角θを求めることにより、制御装置CONTは、膜部材SPに対する液体1の接触角を求めることができる。制御装置CONTは、計測装置70で計測した接触角に基づいて液浸条件を設定し、ローダ用ハンド71で基板ステージPST上にロードされた基板Pに対して液浸露光を行う。
なお、本実施形態では、図3を参照して説明したように、供給部材13、14及び回収部材31、32のそれぞれにスライド機構を設け、スライド機構を駆動することで液体供給位置及び液体回収位置の変更を行っているが、図7に示すように、供給部材及び回収部材の一部をフレキシブルチューブ80で構成し、このチューブ80を曲げることで、図7(a)、(b)に示すように、その供給位置及び回収位置を変更するようにしてもよい。
なお、上記実施形態における露光装置EXは、液体1として純水とフッ素系オイルとを切り替えて使用可能であるが、純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44であるため、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
液体1と接触する光学素子を、レンズより安価な平行平面板とすることにより、露光装置EXの運搬、組立、調整時等において投影光学系PLの透過率、基板P上での露光光ELの照度、及び照度分布の均一性を低下させる物質(例えばシリコン系有機物等)がその平行平面板に付着しても、液体1を供給する直前にその平行平面板を交換するだけでよく、液体1と接触する光学素子をレンズとする場合に比べてその交換コストが低くなるという利点がある。即ち、露光光ELの照射によりレジストから発生する飛散粒子、または液体1中の不純物の付着などに起因して液体1に接触する光学素子の表面が汚れるため、その光学素子を定期的に交換する必要があるが、この光学素子を安価な平行平面板とすることにより、レンズに比べて交換部品のコストが低く、且つ交換に要する時間を短くすることができ、メンテナンスコスト(ランニングコスト)の上昇やスループットの低下を抑えることができる。
なお、液体1の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体1で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体1を満たす構成であってもよい。
一方、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体1としてはF2レーザ光を透過可能な上記フッ素系オイル等のフッ素系流体であることが好ましい。この場合、液体1と接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体1としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体1の極性に応じて行われる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(US S/N 08/416,558)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図8に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…液体、10…液体供給機構、13A、14A…供給口(供給位置)、 15、16…配管系、30…液体回収機構、 31A、32A…回収口(回収位置)、70…計測装置(計測手段)、AR1…投影領域、AR2…液浸領域、CONT…制御装置、 EX…露光装置、MRY…記憶装置、P…基板、PL…投影光学系、SP…膜部材