JP2010180422A - アルミニウム合金の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Mgを含有するアルミニウム合金溶湯を調製する際、当該合金に、図1に示す4つの点A(Ca:18原子%、Sr:0原子%、Ba:82原子%)、点B(Ca:14原子%、Sr:34原子%、Ba:52原子%)、点C(Ca:33.8原子%、Sr:66.2原子%、Ba:0原子%)、点D(Ca:100原子%、Sr:0原子%、Ba:0原子%)を結ぶ直線で囲まれたD点を除いた範囲内の組成比でCa、Srおよび/またはBaを添加することにより、溶湯中のCa、Sr、Ba成分を、Ca:0.001〜0.5質量%、および、Sr:0.01〜2.8質量%とBa:0.01〜7.83質量%のいずれかもしくは両方を含むように調整する
【選択図】図1
Description
しかしながら、Beについては健康影響上の問題点が指摘されており、昨今、その使用を避ける手段が模索されている。
また特許文献1においては、Srの添加によるスラブの表面酸化減少効果が実証されている。しかし、高温の溶融状態における酸化減耗抑制効果については定かではない。
つまり、実用的にBeの代替案としてはCaしか実証されていない。
また例えば、Mg:0.5〜11.0質量%、Si:0.1〜24.0質量%、Fe:0.1〜1.8質量%、Cu:0.1〜4.5質量%、Mn:0.15〜0.6質量%を含む鋳物用アルミニウム合金の製造にも適用される。
さらに具体例として、Mg:0.5〜10.5質量%、Si:0.1〜18.0質量%、Fe:0.5〜1.8質量%、Cu:0.1〜5.0質量%、Mn:0.1〜0.6質量%を含むダイカスト用アルミニウム合金の製造にも適用できる。
またBeの排ガス処理や溶湯カバーフラックス除去作業などに掛かるコストを低減することができるため、アルミニウム合金の製造コストを下げることができる。
合金製造プロセスにおいて、合金溶湯は高温状態では酸化減耗が惹き起こされる。酸化の進行度合いは含有元素ごとに異なり、反応性の高い元素ほど酸化減耗の進行がはやい。アルミニウム合金においては、特に5000系をはじめとするAl-Mg系合金では、Mgの酸化減耗が進行しやすい。Al-Mg系合金は、Mgの量により合金特性が決定付けられるのであり、少量のMgが減少するだけでも合金特性に影響を与えるため、製造プロセスにおけるMg減耗防止は工業上の大きな課題である。従来、溶湯中のMgの減少量に応じて、それを補うために溶湯中のMg量を絶えず測定しなければならないが、本発明によりその負担を軽減もしくは省くことが可能になり、生産性や作業性の向上につながる。
Be代替技術としては無害なCa添加が公知である。しかしCaは、熱間割れや機械的特性・溶湯流動性を低下させるなど、添加量によっては合金特性に様々な悪影響を及ぼすことが知られている。
そこで、Ca、Srおよび/またはBaを組み合わせて添加することとした。Ca、Sr、Baはいずれも人体に無害な元素であり、複合添加とすることで、Ca、Sr、Baそれぞれの単独添加よりも酸化減耗抑制効果が高い。またCaの添加量を相対的に減らすことができるため、上記のCaの悪影響を減少させることにもなる。
本発明の複合添加技術は、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯であれば特に限定されることなく効果を発揮し、展伸材用合金、鋳物合金、ダイカスト合金など用途を問わずほぼ全てのAl-Mg系合金の製造に適用可能である。
なお、Ca、Sr、Baの複合添加による効果は、アルミニウム合金溶湯中のMgの酸化減耗を抑制するためのものである。そのため、Al-Mg系合金製造過程において、予めMg含有量を必要量よりも僅かに多く含ませたアルミニウム合金溶湯に添加して、酸化減耗によるMg含有量の低下を抑制するよりも、Mg含有量を調整する前に合金溶湯にCa、Sr、Baを添加し、その後にMg源を投入してMg含有量を調整することが好ましい。
また予め成分調整されたAl-Mg系合金インゴットに固体状態で添加して溶融することも可能である。
その他製造プロセスに関しては、既存の製造方法に従うものとする。
この複合添加剤として、図1に示す4つの点A(Ca:18原子%、Sr:0原子%、Ba:82原子%)、点B(Ca:14原子%、Sr:34原子%、Ba:52原子%)、点C(Ca:33.8原子%、Sr:66.2原子%、Ba:0原子%)、点D(Ca:100原子%、Sr:0原子%、Ba:0原子%)を結ぶ直線で囲まれたD点を除いた範囲内の組成比からなるCa、Sr、Baからなるものを用いる。
各直線で囲まれる領域から外れた組成比のものを用いると、後述のように、Ca、Sr、Baの含有量が規定値から外れ、所期の酸化減耗抑制効果が得られなくなる。
Ca:0.001〜0.5質量%
Ca添加による酸化減耗抑制効果は、0.001質量%以上の含有によって得られる。したがって、Ca添加量下限値は0.001質量%とする。しかし、Ca含有量が0.5質量%を超える程に多くなると、用途に係らず熱間割れや機械的特性・溶湯の流動性低下など負の影響が強く出ることになるので、その上限値は0.5質量%とする。
Sr添加による酸化減耗抑制効果は、0.01質量%以上の含有によって得られる。したがって、Sr添加量下限値は0.01質量%とする。またCa添加量との比率上、上限値は2.8質量%とする。Caを0.5質量%単独添加したとき、その酸化減耗抑制効果を上回るための最大のSr添加量は2.8質量%であり、これを超えるとCa単独添加時の酸化減耗抑制効果を下回ってしまう。よってSrの上限値は2.8質量%とする。
Ba添加による酸化減耗抑制効果は、0.01質量%以上の含有によって得られる。したがって、Ba添加量下限値は0.01質量%とする。またCa添加量との比率上、上限値は7.83質量%とする。Caを0.5質量%単独添加したとき、その酸化減耗抑制効果を上回るための最大のBa添加量は7.83質量%であり、これを超えるとCa単独添加時の酸化減耗抑制効果を下回ってしまう。よってBaの上限値は7.83質量%とする。
本発明の複合添加技術を適用するAl-Mg系合金の具体例としては、Mg:0.5質量%以上、Si:0.1〜24.0質量%、Cu:0.04〜5.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、その他不可避元素から成るアルミニウム合金に適用可能である。
以下の元素およびその組成については、本発明の複合添加技術に影響を及ぼさない。言い換えれば、以下の元素を含有する範囲内のアルミニウム合金であれば、本発明の複合添加技術は適用可能である。
Mg含有量が0.5質量%よりも少ないと、本発明のMg酸化減耗抑制効果を得ることが困難であるため、下限値は0.5質量%とする。また展伸材用合金としては6.0質量%により耳割れや粒間腐食が起こされやすくなるため、6.0質量%を上限とする。また合金用途上、鋳物用合金においては11.0質量%、ダイカスト用合金では10.5質量%をそれぞれ上限値とするのが好ましい。11.0質量%を超える含有量では鋳造割れが引き起こされやすくなるほか、用途の幅が狭くなるという問題もあるため、上限値は11.0質量%であることが好ましい。
Siを添加することで熱膨張係数が小さくなり、硬度が増すため耐摩耗性が向上する。しかし、Siの添加量が過剰になると粗大なSi結晶が生成し、加工性が低下する。そこでこの作用を発現させるには0.1質量%以上含有させるとよい。規格範囲の用途として、用途の幅が広い合金組成とするために、展伸材用合金では6.0質量%、鋳物用合金では24.0質量%、ダイカスト用合金では18.0質量がそれぞれ上限値として好ましい。
Cuは強度を向上させる作用を有する。この作用は0.04質量%以上の含有により顕著となる。しかしながら合金規格上、展伸材用合金では0.2質量%、鋳物用合金では4.5質量%、ダイカスト用合金では5.0質量%をそれぞれ上限値とするのが好ましい。
Mnは再結晶粒を微細化し強度を向上させる作用を有する。その作用は0.1質量%以上の含有で顕著となる。しかしながら、その含有量が多いと成形性が低下するため、展伸材用合金としては2.0質量%、鋳物用合金およびダイカスト用合金では0.6質量%を上限値とするのが好ましい。
得られた合金溶湯からインゴットを作成した後、試験試料として重量270mgの6.8mmφ×2.7mmの円柱型の試料にそれぞれ加工した。
Ca、Ba、Srの重量および組成比率を様々に調整したのち添加した、試料(A〜Z)ごとにおけるCa、Ba、Srの含有比率(質量%)と耐酸化性指標とを表した測定結果を表1に併せて記す。
各参考試料の成分組成および耐酸化性指標を表2に示す。
なお、Beを単独添加した試料のBe含有量は0.006質量%であった。
表1および表2で示された結果を、Ca含有量を基準に耐酸化性指標を整理すると図2の通りとなる。
図2から、Ca単独添加に比べて、CaとSrおよび/またはBaの複合添加の方が耐酸化性に優れていることが理解できる。
上記図2に示す結果より、Ca添加量制限の課題を解決することが可能になる。すなわち、それぞれの合金試料におけるCaの含有量が同じであっても、BaやSrとの複合添加とした方が、酸化減耗抑制効果が格段に表れていることがわかる。例えば、Ca単独添加として0.1質量%添加した合金と同じ程度の酸化減耗抑制効果を得たい場合、BaおよびSrと組み合わせた複合添加とすれば、Caの添加量は0.056質量%程度に少なくすませることができ、さらにはBaおよびSrの含有比を変化させることで、Ca単独添加0.1質量%で得られる酸化減耗抑制効果よりも大きな効果を得ることが可能になる。
そして、表3をもとに、試料が重量で2%酸化されるまでの時間を相対的に表すと図1の通りとなる。すなわち、表1で示した試料A〜Zについて、Ca、Sr、Baの原子数比での構成比を表す三角グラフ中にプロットし、試料が重量で2%酸化されるまでの時間を、Ca単独添加で得られる2%酸化時間を100%としたとき、同レベル、150%レベル、200%レベル、および300%レベルの酸化減耗抑制効果として得られる点を結ぶと図1に示す通りとなる。
また、図1のD点はCaのみを添加した事例を示すものであり、表3で示される効果から見て、Ca単独添加で得られる酸化減耗抑制効果を100%とすると、それと同等の酸化減耗抑制効果を発揮する複合添加のパターンは、図1の点A、B、C、Dを結ぶ直線上に示され、Ca単独添加よりも高い酸化減耗抑止効果を発揮する複合添加パターンは、前記点A、B、C、Dを結ぶ直線で囲まれる内側に示されることになる。
なお本発明は、合金溶湯中のCa、Sr、Ba含有量を特定の比率に調整する手段を用いた、酸化減耗を抑制させるアルミニウム合金の製造方法に関するものであり、合金溶湯中における、Ca,Srおよび/またはBaの3元素の含有比は、特に図1のABCD(より高い効果を得たい場合はEFGHI、JKLMNO、PQRSのいずれかでもよい)の範囲内におさめることが好ましい。それは、前記組成比のCa・Sr・Baは、固体状態の合金表面における耐酸化性の効果を発揮する可能性があるため、Ca・Sr・Baの合金溶湯中の組成比と固体状態の組成比とにズレがない方が好ましいと考えられるためである。また、加工後の合金などを二次合金として再び溶融状態にした際にも、Ca、Sr、Baが所定の比率で合金に含有されていれば、合金溶湯の酸化減耗抑制効果を得ることができる。
表4に示すAl-Mg系合金溶湯に、Ca、Ba、Srを表5に示す配合比で添加し、実施例1と全く同じ態様で、各試験試料の酸化重量を計測した。そして、実施例1と同様に2%酸化重量増加が引き起こされるまでの時間を比較した。その結果を表5に併せて掲載した。
表6に示すAl-Mg系合金溶湯に、Ca、Ba、Srを表7に示す配合比で添加し、実施例1と全く同じ態様で、各試験試料の酸化重量を計測した。そして、実施例1と同様に2%酸化重量増加が引き起こされるまでの時間を比較した。その結果を表7に併せて掲載した。
表8に示すAl-Mg系合金溶湯に、Ca、Ba、Srを表9に示す配合比で添加し、実施例1と全く同じ態様で、各試験試料の酸化重量を計測した。そして、実施例1と同様に2%酸化重量増加が引き起こされるまでの時間を比較した。その結果を表9に併せて掲載した。
その結果を表5に併せて示す。
Claims (3)
- Mgを含有するアルミニウム合金の製造方法であって、当該合金に、図1に示す4つの点A(Ca:18原子%、Sr:0原子%、Ba:82原子%)、点B(Ca:14原子%、Sr:34原子%、Ba:52原子%)、点C(Ca:33.8原子%、Sr:66.2原子%、Ba:0原子%)、点D(Ca:100原子%、Sr:0原子%、Ba:0原子%)を結ぶ直線で囲まれたD点を除いた範囲内の組成比でCa、Srおよび/またはBaを添加することにより、溶湯中のCa、Sr、Ba成分を、Ca:0.001〜0.5質量%、および、Sr:0.01〜2.8質量%とBa:0.01〜7.83質量%のいずれかもしくは両方を含むように調整することを特徴とするアルミニウム合金の製造方法。
- 合金溶湯中のCa、Srおよび/またはBa成分を調整した後、Mg成分を追加投入し、所定のMg含有量に調整する請求項1に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- Mgを含有するアルミニウム合金が、0.5質量%以上のMgを含有する合金である請求項1または2に記載のアルミニウム合金の製造方法。
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