以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
まず、上述した外部共振器型レーザについて、本発明者独自の知見も交えて少し詳しく説明する。
図1は、外部共振器型レーザ2の一例を説明する斜視図である。本図面も含め、以後同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図1に示すように、外部共振器型レーザ2は、一端に高反射膜4が形成され、他端に反射防止膜(図示せず)が形成された半導体レーザ6を具備している。この半導体レーザ6は、本来は、両端が反射防止膜で覆われるべき(進行波形)半導体光増幅器の一端を、高反射膜で覆った光素子である。
このため、半導体レーザ6は、単独ではレーザ発振しない。従って、半導体レーザ6を半導体レーザと呼ぶことは、適当ではない。しかし、非特許文献1との用語の統一を図るため、ここでは、「半導体レーザ」との用語が用いられる。
また、外部共振器型レーザ2は、Si基板8の上に積層されたSiO2層10に光導波路12が形成された平面光回路14を備えている。この光導波路12には、回折格子16が形成されている。
そして、半導体レーザ6は、Si基板8に設けられたテラスに固定され、反射防止膜の設けられた端面で光導波路12に光学的に接続している。
ここで、回折格子16は、分布ブラッグ反射器(distributed-bragg refelctor;以下、DBRと呼ばれる)として機能し、半導体レーザ6の高反射膜4と一体化して、レーザ発振に必要な光共振器5を形成する。一方、半導体レーザ6は、光利得媒体として機能する。
図2は、外部共振器型レーザ2の発振波長がどのように決まるかを、説明する図である。
図2の横軸は、波長である。図2の左縦軸は、回折格子16の反射率(光反射率)18である。一方、図2の右縦軸は、レーザ発振している共振器モード20の光強度である。
図2には、高反射膜4と回折格子16が形成する光共振器5に発生する共振器モード(縦モード)22であってレーザ発振していないモードも、破線で示されている。
外部共振器レーザ2では、光共振器5がDFBレーザに比べ格段に長くなるので、共振器モード間隔δλは狭くなる。従って、図2に示すように、回折格子16(DBR)が高い反射率を呈する波長帯域24には複数の共振器モードが共存する。
図2に示すように回折格子16(DBR)の反射率は、上記波長帯域24内で急峻に変化する。このため、外部共振器型レーザ2は、上記波長帯域24内に共存する複数の共振器モードの内で、反射率が最も高くなる共振器モード20でレーザ発振する。
このようにして波長が決定されたレーザ光は、半導体レーザ6とは反対側の光導波路端面から放射され、光ファイバ17に入射する。尚、光ファイバ17は、SiO2製である(以下の説明でも同じである。)。
図3には、図2で説明した状態より温度が上昇した状態に於ける、回折格子16の反射率18及び光共振器5の共振器モード22を説明する図である。横軸及び縦軸は、図2と同じである。
回折格子16の反射率18及び光共振器5の共振器モード22の温度変化は、回折格子16及び光共振器5を形成する、夫々の部材の屈折率の温度変化に依存する。
回折格子16は屈折率の温度変化率が小さい誘電体(SiO2)によって形成されている。このため、回折格子16の反射率18は、温度が変化しても殆ど変化しない。
一方、光共振器5の内部には、屈折率の温度変化率が大きい半導体で形成された半導体レーザ6が存在する。このため、素子温度が上昇すると共振器モード22は、全体として長波長側にシフトする。図3中に示されたδλTは、このような波長シフトを示している。
この共振器モード22の波長シフトによって、以下に説明するように、モードホップが起きる。
外部共振器型レーザ2の温度が上昇すると、図2においてレーザ発振していた共振器モード20は、図3に示すように、上記波長帯域24の長波長端の近傍に移動する。一方、図2において上記波長帯域24の短波長端近傍に存在していた共振器モード26が、反射帯域24の中央部に移動する(図3参照)。
このため、反射率が最大となる共振器モードが、共振器モード20から共振器モード26に変化する。その結果、共振器モード20でのレーザ発振が突然停止し、次数が一つ高い共振器モード26でのレーザ発振が開始する。すなわち、共振器モード20から共振器モード26へのモードホップが起きる。外部共振器型レーザの温度が下がった場合には、逆の過程を経てモードホップが起きる。
モードホップ前に発振していた共振器モード20の光強度と、モードホップ後の共振器モード26の光強度は通常一致しない。このため、モードホップが起きると、外部共振器型レーザ2の出力光強度が変動する。この出力光強度の変動が、外部共振器型レーザ2の出力光にノイズを発生させる。
モードホップに起因するノイズは、光通信に用いられるビットレート(数百MHz〜数十GHz)より低周波側に大きな雑音成分すなわちRIN(relative intensity noise)を有している。
同様に、通信に用いられる光信号も、ビットレートより低周波側に多くの周波数成分を有している。しかも、光信号の検出には、ビットレートより低周波側の信号成分が重要である。従って、光電変換後の信号処理(フィルター回路によるノイズ除去等)によって、モードホップに起因するノイズ(以下、モードホップノイズと呼ばれる)だけを取り除くことは困難である。このため、モードホップノイズが発生すると、伝送信号のエラー・レート(符号誤率)が増大する。
故に、外部共振器型レーザでは、モードホップノイズを抑制することが重要である。
そのための対策としては、外部共振器型レーザ2の温度を精密に制御して、モードホップが起きないようにすることが考えられる。しかし、そのような対処法は、精密な温度制御を必要としない外部共振器型レーザの利点を損なうものである。
更に付言するならば、モードホップが起きる温度は素子毎に異なっている。従って、モードホップが起きる温度は、素子毎に特定しなければならない。このような作業は、極めて煩雑であり、コスト高の原因になる。
そこで、本実施の形態の光送信装置では、複数の共振器モードで同時にレーザ発振が起きるようにして、モードホップが起きても出力光全体の強度変動が小さくなるようにしている。
図4は、本実施の形態のレーザ光生成装置(外部共振器型レーザ)を形成する回折格子の反射率27と、レーザ発振中の共振器モード28の関係を模式的に説明する図である。横軸及ぶ縦軸は、図2と同じである。
図4に示すように、本実施の形態で使用する回折格子の反射率27は、その最大値の近傍で略平坦である。このため、複数の共振器モードに対して反射率が略一定になる。従って、複数の共振器モードで、同時にレーザ発振が起きる。
図4に示した例では、6本の共振器モード28で同時にレーザ発振が起きている。しかも、夫々の共振器モードで発振しているレーザ光の光強度は略等しい。例えば、最大の発光強度で発振している共振器モードの光強度から3dB以内の光強度で、6本の共振器モードが同時にレーザ発振している。
このような状態で素子温度が上昇(或いは、降下)すると、レーザ発振している共振器モード28のうち最も長波長側(或いは、最も短波長側)に位置する共振器モードが、ある温度でレーザ発振を停止し、代わりに短波長側(或いは、長波長側)に、レーザ発振する共振器モードが新たに出現する。すなわち、レーザ発振している複数の共振器モードの一つが、レーザ発振していなかった共振器モードの一つと入れ替わるモードホップが起きる。
このようなモードホップでは、入れ替わる共振器モード間にレーザ発振強度の相違があっても、レーザ光全体の光強度の変化は僅かである。一方、単一の共振器モードでレーザ発振する従来の外部共振器型レーザでモードホップが起きると、レーザ光強度は大きく変動する。
すなわち、本実施の形態のレーザ光生成装置が発生するモードホップノイズは、単一の共振器モードでレーザ発振する外部共振器型レーザが発生するモードホップノイズより小さくなる。
ところで、図4に示すように複数の共振器モードを含むレーザ光(光信号)が受信側の光検出器に入力すると、共振器モード間隔δλに相当する周波数(以後、共振器モード間隔δfと呼ばれる;後述する式(2)参照)で振動する周波数成分が、光検出器が出力する電気信号に発生する。
良く知られているように、光検出器の出力は、入力光の電界強度の2乗に比例する。このため、波長の異なる2つの光信号が光検出器に入射すると、両光信号の周波数(=光速/λ)の差すなわち差周波で振動するビートノイズが発生する。
DFBレーザのビートノイズの周波数は、通常、数百GHzである。この周波数は、光信号を光電変換する受信機(光検出器と増幅器等によって形成される回路)の周波数帯域を大きく超えている。従って、DFBレーザのビートノイズが検出されることはない。
しかし、外部共振器型レーザの場合、共振器モード間隔δfが、光信号のビットレートに相当する周波数(以後、変調周波数と呼ぶ)以下になる場合がある。受信機の周波数帯域は、当然、光信号の変調周波数より高い。従って、このような場合、ビートノイズは受信機の出力に現れる。
尚、ビットレートに相当する周波数とは、ビットレートと同じ数値を持つ周波数である。例えば、10Gbit/sのビットレートに相当する周波数は、10GHzである。
例えば、非特許文献1に記載された例では、共振器モード間隔は8GHzである。従って、8Gbit/s以上のビットレートで光伝送を実行する場合には、光信号の変調周波数が、共振器モード間隔δfを超えてしまう。
このような場合には、ビート信号が受信信号(光受信機の出力)に混入してしまう。一方、受信信号は、変調周波数以下の周波数成分を含んでいる。しかも、このような周波数成分が、情報の伝達には重要である。従って、フィルタ回路等によって、受信信号からビートノイズだけを除去することもできない。
故に、図4を参照して説明したレーザ光生成装置を光源として、例えば10Gbit/s以上の高速光伝送を実行した場合、受信信号にビートノイズが発生し、エラー・レイト(符号誤率)を増大させてしまう。
そこで、本実施の形態では、反射鏡4と回折格子16が形成する光共振器5の長さを短くして、共振器モード間隔δfを光信号の変調周波数より高くしている。このようにすれば、フィルター回路等によって、受信信号からビートノイズを取り除くことができるので、エラー・レイトの増加を防止することができる。
尚、共振器モード間隔δfは、光信号の変調周波数fmより高いほど好ましい。例えば、共振器モード間隔δfは、光信号の変調周波数fmの2倍より高いことが好ましく、3倍より高いことが更に好ましく、4倍より高いことが最も好ましい。
但し、共振器モード間隔δfが広くなり過ぎると、回折格子の高反射帯域内に複数の共振器モードが存在し得なくなるので、共振器モード間隔δfは、例えば、変調周波数fm(例えば、10GHz)の10倍(例えば、100GHz)以下が好ましく、8倍以下が更に好ましく、6倍以下が最も好ましい。
図5は、本実施例に従う光送信装置30の要部を説明する斜視図である。図6(a)は、図5のA−A線に沿った断面を矢印の方向から見た図である。図6(b)は、A−A線に垂直な断面を説明する図である。
本実施例の光送信装置30は、レーザ光生成装置32と電気信号源34を具備している。
(1)レーザ光生成装置
(i)光増幅ユニット
本レーザ光生成装置32は、注入された電流によって光利得を発生する半導体層(活性層36)を第1のコア層37とする利得導波路38を含み、利得導波路38の第1の端面40に光反射面42が形成された光増幅ユニット44を具備している(図5及び図6参照)。
ここで、光増幅ユニット44は、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier ; SOA)の両端面に施される反射防止膜の一方を高光反射膜で置き換えた光増幅素子である。
光増幅ユニット44は、例えば図6(b)のように、半導体基板46の上に、下部クラッド層48と、活性層36と、上部クラッド層50と、電極層52が順次積層された半導体積層構造を有している。
ここで、半導体基板46は、例えば、n型InP製である。また、下部クラッド層48は、n型InP製である。また、活性層36は、InGaAsP製(又は、AlGaInAs製)の多重量子井戸で形成されている。また、上部クラッド層50は、p型InP製である。また、電極層52は、p型InGaAsP製である。
また、光増幅ユニット44は、直線状の活性層36の両脇を囲む、p型InP54とn型InP56が積層された電流ブロック層58を有している。この電流ブロック層58は、活性層36の両脇を囲むクラッド層としても機能する。
これらの半導体層すなわち下部クラッド層48、活性層36、上部クラッド50、及び電流ブロック層58は、利得導波路38を形成する。
また、光増幅ユニット44は、基板46の裏面に形成されたn電極60と、電極層52の上に形成されたp電極62を有している。
そして、利得導波路38の第1の端面40には、光反射面42となる高反射(high-reflection:HR)膜が形成されている。また、利得導波路38の第2の端面66には、反射防止(Anti-Reflection;AR)膜68が形成されている。尚、高反射膜の反射率は、例えば99%〜100%である。また、反射防止膜の反射率は、例えば0%〜1%である。
このような構成を有するので、光増幅ユニット44は、第2の端面66から入射した光を、利得導波路38によって増幅する。次に、光増幅ユニット44は、増幅された入射光を、光反射面42(高反射膜64)によって、略全て反射する。次に、光増幅ユニット44は、光反射面42で反射した光を、利得導波路38で再び増幅して、第2の端面から出射する。すなわち、光増幅ユニット44は、第2の端面66から入射した光を増幅し、再び第2の端面66から出射する機能を有する。
尚、本実施例では、光増幅ユニット44の光利得は、1.3μm近傍で利得が最も高くなる。また、光増幅ユニット44の光の導波方向に沿った長さは、400μmである。
(ii)光導波路ユニット
レーザ光生成装置32は、更に、光導波路78を含む光導波路ユニット80を有している(図5参照)。
図7は、光導波路ユニット80の断面を説明する図である。図7(a)は、光導波路78の光軸に沿った断面を、回折格子70が設けられた領域88で見た図である。一方、図7(b)は、光導波路78の光軸に垂直な断面を、回折格子70が設けられていない領域82で見た図である。
光導波路ユニット80は、図5及び図7に示すように、回折格子70が設けられた第2のコア層74を含む光導波路78を備えている。ここで、第2のコア層74は、その周囲を囲むクラッド層75と共に、光導波路78を形成している。尚、図5では、図面が複雑にならないように、光導波路の中心をなす第2のコア層に対して、光導波路を表す符合(78)が付されている。
また、光導波路78には、図6(a)に示すように、光増幅ユニット44の第2の端面66に対向する第3の端面76が形成されている。そして、光導波路78は、第3の端面76で光増幅ユニット44に光学的に結合している。ここで、光増幅ユニット44の利得導波路38と光導波路78の光軸は、略一致するように調整されている。
更に、光導波路78は、図5に示すように、第3の端面76とは反対側に設けられた第4の端面84で光ファイバ17に光学的に結合している。光送信装置30で生成された光信号は、この第4の端面84から出力され、光ファイバ17に送出される。
尚、図5に示す例では、回折格子70と第3の端面76の間の領域82では、光導波路78に回折格子が形成されていない。このように、回折格子70と第3の端面76は離隔していてもよいが、回折格子70が第3の端面76に接していてもよい。
次に、光導波路ユニット80の具体的構成及びその特性を詳しく説明する。
図7に示すように、光導波路ユニット80は、Si製の基板85と、この基板上に形成されたSiO2製の誘電体層86と、この誘電体層86に周囲を埋め込まれたSiO1-xNx(xは、0.55乃至0.65)製の誘電体層72を有している(図7参照)。
ここで、SiO1-xNx製の誘電体層72の屈折率は1.76であり、誘電体層72を埋め込むSiO2製の誘電体層86の屈折率は1.45である。従って、屈折率の高い誘電体層72はコア層として機能し、屈折率の低い誘電体層86はクラッド層として機能する。そして、誘電体層72及び誘電体層86は、等価屈折率1.54の光導波路78を形成する。
また、誘電体層72(第2のコア層74)は、幅1.2μmの平板状の部材であり、第3の端面76から第4の端面84に延在している。
誘電体層72は、図7(b)に示すように、幅が1.2μm高さ0.4μmの略矩形の断面構造を有している。誘電体層72は、上面に何も形成されていない第1の領域82と上面に回折格子70が形成された第2の領域88に分かれている。
第1の領域82は、第3の端面76から第2の領域88まで、377μm延在している。
第2の領域88は、第1の領域82の端から第4の端面84まで、約155μm延在している。第2の領域88では、誘電体層72の上面に深さ32nmの溝が周期的に形成されて、回折格子70となっている。この溝のピッチ(回折格子70のピッチ)は、約421nmである。また、溝が形成されている部分の割合(duty)は、50%である。
ここで、回折格子70の結合係数は、約125/cmである。また、回折格子70のブラッグ波長は、1.30μm(=2×1.54×421nm)である。
尚、図5では、光導波路78の幅が第2の領域88で周期的に変化するように描かれているが、実際には光導波路78の幅は一定であり、その高さが周期的に変化している。
次に、光ファイバ17とは反対側で、光導波路78を形成するクラッド層(誘電体層86)及びコア層(誘電体層72)が取り除かれて、Si基板85上にテラスが形成されている(図5及び図6参照)。このテラスの上には、金属製のパッド90が形成されている。そして、このパッド90の上には、光増幅ユニット44が載置され、光増幅ユニット44のn電極60がこのパッド90に電気的に接続されている。ここで、光増幅ユニット44は、パッド90に半田付されている。
このように、本レーザ光生成装置32では、Si基板85の上に、光増幅ユニット44と光導波路78が、ハイブリッド実装されている。
尚、光増幅ユニット44の第2の端面66と光導波路78の間には、10μmのギャップ96が設けられている(図6(a)参照)。また、光増幅ユニット44は、利得導波路(活性層)38の光軸が、光導波路ユニット80の第3の端面76の垂線に対して少し(数度)傾くように、パッド90の上に載置されている。従って、光増幅ユニット44から出射し、光導波路78には入射せずに第3の端面76で反射された光が、光増幅ユニット44には再入射することは殆どない。すなわち、光増幅ユニット44への戻り光は、殆どない。
ところで、回折格子70のように、光導波路のコア層の屈折率を周期的に変化させた回折格子は、分布ブラッグ反射器(distributed-bragg refelecur; DBR)と呼ばれている。分布ブラッグ反射器(DBR)には、その内部に実効的な反射端を定義することができる。そして、分布ブラッグ反射器からの反射光は、この実効的な反射端で反射されたものとして取り扱うことができることが知られている。
故に、光増幅ユニット44の光反射面42と回折格子70は、光共振器94を形成する。光共振器94には、実効的な反射端92と(光増幅ユニット44の)光反射面42の間の光学長に対応する共振器モードが発生する。一方、DBRは、ブラッグ波長を中心とする特定の波長範囲(反射帯域)内の光を強く反射する。このため、このような波長選択性を有するDBRによって光共振器94の一端が形成されたレーザ光生成装置32は、DBRの反射帯域内の共振器モードでレーザ発振する。
図8は、回折格子70の反射率と波長の関係を説明する図である。
図8の縦軸は反射率であり、横軸は波長である。一方、縦軸は、対数表示となっている。
図8に示すように、回折格子70の反射率は、ブラッグ波長1.3μmで最大なる。この波長に於ける反射率すなわち反射率の最大値は、90%である。
この最大値から0.1dB以内(反射率89.8%以内)に反射率が存在する波長範囲98(高反射帯域と呼ばれる)の幅は2nmである。本発明者が種々検討したところ、このような高反射帯域に含まれる共振器モードは同時にレーザ発振し、且つ最も強くレーザ発振する共振器モードの発光強度の3dB以内の発光強度でレーザ発振する。
ところで、光共振器の共振器モードの間隔は、次式で表すことができる。
ここで、式(1)は、共振器モード間隔δλを波長で表示した式である。一方、式(2)は、共振器モード間隔δfを周波数で表示した式である。
λcは中心波長である。cは光速である。iは、光共振器94に含まれる屈折率の異なる領域を区別するための添え字である。例えば、i=1は利得導波路38を表し、i=2はギャップ96を表す。そして、Li及びNiは、夫々の領域の長さ及び実効屈折率である。
ここで、実効屈折率Niは、下記式(3)で表すことができる。
尚、n
iは夫々の領域の等価屈折率である。また、λは波長である。
ここで、利得導波路38(光増幅ユニット44)及び光導波路78(光導波路ユニット80)の等価屈折率は、夫々3.3及び1.54である。これらの値と上述した各領域の長さを式(1)に代入すると、共振器モード間隔0.393nmが得られる。
尚、本実施例では回折格子70の実効的な反射端92は、回折格子70の光ファイバ17側の端に位置している。また、実効屈折率Nは、等価屈折率に等しいとする。以下の実施例においても、特に断らない限り同じである。
従って、上記波長範囲内には少なくても5本(=2nm/0.393nm)の共振器モードが存在する。そして、各共振器モードは同時にレーザ発振し、しかも最も強く発光している共振器モードの光強度の3dB以内の光強度でレーザ発振する。
すなわち、本レーザ光生成装置32は、光反射面42と回折格子70が形成する光共振器94の複数の共振器モードでレーザ発振する。
尚、回折格子70は屈折率の温度変化率が小さい誘電体で形成されているので、光送信装置30の信号光の中心波長は、環境温度が変わっても殆ど変化しない。従って、本実施例の光送信装置では、温度制御は行われない。すなわち、本光送信装置は、温度制御装置を必要としない。或いは、本光送信装置で温度制御を実施するとしても、簡易な温度制御で十分である。
(2)電気信号源
電気信号源34は、光増幅ユニット44に電気的に接続されている。具体的には、電気信号源34の正極は、光増幅ユニット44のp電極62に接続されている。一方、電気信号源34の負極は、光増幅ユニット44のn電極60が半田付けされたパッド90に接続されている。
電気信号源34は、送信すべき情報に対応した電気信号を光増幅ユニット44に印加して、上記情報に対応した電流を半導体層(活性層36)に注入する。注入された電流は、活性層に光利得を発生させる。
図9は、電気信号源34が、光増幅ユニット44に印加する電気信号100の一例を説明する図である。図9の左上には、光増幅ユニット44の活性層36に注入する電流(注入電流)とレーザ光生成装置32の光出力の関係を説明する図が示されている。縦軸は光出力(出力光の光強度)であり、横軸は注入電流である。ここで、縦軸に付されたIthは、レーザ光生成装置32の閾値電流を表している。一方、Ibは、電気信号100に重畳されるバイアス電流を表している。
図9の下半分には、電気信号源34が光増幅ユニット44に印加する電気信号100の時間変化を説明する図が示されている。この図では、上から下に向かって時間が経過するように、電気信号100の時間変化が図示されている。また、電気信号100の水平方向の位置は、左上の図の横軸(注入電流)に対向している。同図中に示されたビット列(・・101・・)は、電気信号100の原信号を表している。尚、電気信号100は、RZ(retuen to zero)信号である。
図9の右上には、レーザ光生成装置32の光出力(光信号102)の時間変化を説明する図が示されている。この図には、左から右に向かって時間が経過するように、光出力102の時間変化が図示されている。また、光出力102の垂直方向の位置は、左上の図の縦軸(光出力)に対応している。
図9の下半分の図に示すように、電気信号源34が活性層に注入する電流には、レーザ光生成装置32の閾値電流Ithより僅かに大きなバイアス電流Ibが重畳されている。電気信号100の強度が原信号“1”に対応する期間の前半、電気信号源34は、光増幅ユニット44の活性層36に電流Ib+Ipを注入する。一方、電気信号100の強度が原信号“1”に対応する期間の後半、電気信号源34は、光増幅ユニット44の活性層36に電流Ibを注入する。更に、電気信号100の強度が原信号“0”に対応する全期間中、電気信号源34は、活性層36に電流Ibを注入する。
そして、レーザ光生成装置32は、図9の右上の図に示すように、電気信号100に従って、光出力(発光強度)の大きな第1の状態104と、第1の状態より発光強度が小さい第2の状態106の間を往復して、光信号102を発生する。
尚、バイアス電流Ibは、閾値電流以下でもよい。或いは、バイアス電流Ibは、電気信号100に重畳されなくてもよい。これらの場合には、第2の状態106ではレーザ発振は起きない。
本実施例の電気信号源34が生成する電気信号100のビットレートは、10Gbit/sである。一方、レーザ光生成装置32の共振器モード間隔δfは、70GHzである。
すなわち、レーザ光生成装置32の共振器モードの間隔に相当する周波数(70GHz)は、電気信号100のビットレート(10Gbit/s)に対応する周波数(10GHz)より高くなっている。
ところで、電気信号100がNRZ(non retuen to zero)信号の場合には、電気信号100が最も頻繁にON−OFFしても、電気信号100の周波数(例えば、5GHz)はビットレート(例えば、10GHz)の1/2にしかならない。この場合、共振器モード間隔δfは、電気信号100の周波数の2倍以上になるので、ビートノイズはより小さくなる。
(3)動 作
先ず、電気信号源34が、電流(Ib+Ip)を活性層に注入する。電流が注入されると、活性層36は光利得を発生する。この時、活性層36は、同時に光(自然放出光)を発生する。この光は、反射率が略0%の反射防止膜68が形成された第2の端面66から出射して、ギャップ96を伝播した後、光導波路78に入射する(図6(a)参照)。
光導波路78に入射した光は、光導波路78を伝播し、回折格子70に入射する(図5参照)。回折格子70に入射した光は、図8を参照して説明した反射率特性に従って、回折格子70で反射され、光導波路78を逆行して活性層36に再入射する。
活性層36に再入射した光は、反射率が略100%の光反射面42(高反射膜64)によって反射され、進行方向を逆転して再び光導波路78に入射する(図6(a)参照)。この間、光は活性層36によって増幅される。
その後、上記光は、光共振器94の中を何度も往復して、レーザ光に成長する。但し、レーザ光に成長しうる光は、光共振器94を一往復する間の位相変化が2πの整数に等しい光(共振器モード)だけである。更に、このような光のうち、回折格子70における反射率が十分に大きな光だけが、活性層36から受ける利得が活性層36の吸収損失やミラー損失等を上回って、レーザ光となる。
例えば、本実施例のレーザ光生成装置32では、上述したように、1.3μmを中心波長とする高反射帯域98内で5本の共振器モードが同時に発振する(図8参照)。しかも、高反射帯域98内では反射率に差が殆どないのいで、これら5本の共振器モードで発光するレーザ光の光強度比は、3dB以内(0dB〜−3dB)にある(ここで、「レーザ光の光強度比」とは、最も強く発光している共振器モードの発光強度に対する、各共振器モードの発光強度の比のことである。)。尚、図8には、最大反射率から5dB以内の反射率を呈する波長の範囲152が示されている。以後、「反射帯域」という用語は、このような波長範囲を意味するものとする。
次に、電気信号源34が電流Ibを活性層に注入したとする。この場合も、電流(Ib+Ip)を活性層に注入した時と同様に、レーザ光生成装置32では、
高反射帯域98の内側で5本の共振器モードが同時にレーザ発振する(但し、Ib>Ithの場合)。且つ、これら5本の共振器モードで発振するレーザ光の光強度比も、3dB以内にある。但し、この時(第2の状態106)の発光強度は、最初の状態(活性層にIb+Ipを注入した状態;第1の状態104)より発光強度が弱い(図9参照)。尚、第2の状態106は、活性層に注入される電流が閾値電流Ib以下の非レーザ発振状態であってもよい。
良く知られているように、複数の共振器モードでレーザ発振するファブリペロー型レーザは、注入電流が少ないほど、より多くの共振器モードで発振する。本実施例のレーザ光生成装置32も、ファブリペロー型レーザと同じように、注入電流が少ないほどより多くの共振器モードで発振しやすくなる。従って、注入電流の少ない第2の状態106は、第1の状態104より多くの共振器モードで発振しやすい状態である。従って、第1の状態104に於いて5本の共振器モードでレーザ発振している本実施例では、第2の状態106でも少なくても5本の共振器モード(且つ、3dB以内の光強度比)でレーザ発振する。
以上説明したように、本レーザ光生成装置32は、光反射面42と回折格子70が形成する光共振器94の複数の共振器モードでレーザ発振する。
更に、本レーザ光生成装置32は、電気信号100に従って、最も強く発光している共振器モードの3dB以内の光強度で発光(レーザ発振)する他の共振器モードが存在する第1の状態と、第1の状態より発光強度が小さい第2の状態の間を往復して、光信号104を発生する。
従って、本光送信装置30では、レーザ発振している複数の共振器モードの内の1本だけがモードホップを起こすので、モードホップノイズは小さい。更に、モードホップに関与する共振器モード(モードホップ前後の共振器モード)の発光強度の変化も小さいので、モードホップノイズはより小さくなる。
また、上記「(2)電気信号源」で説明したように、共振器モード間隔δf(70GHz)が電気信号100の変調周波数(10GHz)より高いので、共振器モード間の差周波に基づくビートノイズが、光信号のエラー・レートを増大させることもない。
更に、本実施例では、回折格子70及び回折格子を囲むクラッド層75は、半導体に比べ屈折率の温度変化が一桁程度小さい誘電体によって形成されている。従って、回折格子70のブラッグ波長等は、素子温度が変化しても殆ど変化しな。故に、レーザ光生成装置32の発振波長は、光送信装置30が設置された環境の温度(環境温度)が変化しても、殆ど変化しない。故に、本光送信装置30は、十分な冷却能力を備えた熱電変換素子や複雑な温度制御回路等を用いる、精密な温度制御を必要としない。
尚、レーザ光生成装置32の温度が著しく変化すると、高反射帯域内で発振する共振器モードの数や光強度比等が変わることがある。この場合には、光送信装置30の使用温度範囲内で、上記条件(発光光強度比が3dB以内の共振器モードが同時に複数レーザ発振する)が満たされればよい。
更に、上述した例では、同時にレーザ発振する共振器モードの発光強度比(レーザ光の光強度比)を、3dBを以内に制限した。その理由は、発光強度比が小さいほど、モードホップノイズの抑制効果が大きくなるからである。従って、発光強度比は小さいほど好ましい。例えば、共振器モードの発光強度比は、3dB以内が好ましく、更に好ましくは2dB以内であり、最も好ましくは1dB以内である。但し、このような制限を設けなくても、本光送信装置30は、モードホップノイズを低減するという効果を発揮する。
上述したように、同時にレーザ発振する共振器モードの数は、複数であればよい。但し、モードホップノイズを効果的に抑制するためには、共振器モードの数は多いほど好ましい。例えば、同時にレーザ発振する共振器モードの数は、3本以上が好ましく、更に好ましくは5本以上であり、最も好ましくは10本以上である。
しかし、同時にレーザ発振する共振器モードの数が増え過ぎると、レーザ光生成装置32の出力光のスペクトル幅が広くなり過ぎる。このような光送信装置をWDMに使用しようとすると、1波長チャネル当たり波長幅が広くなり過ぎて、設定可能な波長チャネル数が減少してしまう。従って、同時にレーザ発振する共振器モードの数は、例えば、35本(=共振器モード間隔δf/変調周波数)=355GHz/10GHz)以下が好ましい。この共振器モードの数としては、30本以下が更に好まく、20本以下が最も好ましい。
(4)製造方法
まず、Si製の基板85の上に、化学気相成長 (Chemical Vapor Deposition)によって、厚さ3μmのSiO2層が堆積される。
次に、このSiO2層の上に、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)によって、厚さ0.4μmのSiO1-xNx(xは、0.55乃至0.65)膜が堆積される。
次に、このSiO1-xNx膜が、フォトリソグラフィ技術とRIE法(Reactive Ion Etching)によって、幅1.2μmの細長い平板に加工される。細長い平板は、最終的には、第2のコア層74になる。
次に、このSiO1-xNx膜の回折格子70の形成予定位置に、電子線露光技術とRIE法によって、421nmの周期で繰り返される溝が形成される。この溝の深さは32nmであり、溝が形成されない部分の割合(duty)は50%である。このようにSiO1-xNx膜に溝が周期的に形成されて、回折格子70となる。
次に、回折格子70が形成されたSiO1-xNx膜とSiO2層の上に、更に厚さ3μmのSiO2が、CVD法によって堆積される。
次に、光増幅ユニット44の搭載予定位置で、堆積したSiO2層及びSiO1-xNx層をエッチングして、Si基板85の表面を露出される。このSi基板85の露出部が、テラスである。
次に、このテラスに、金属製のパッド90が、金属膜の蒸着とリフトオフによって形成される。
最後に、光増幅ユニット44がパッド90に半田付けされる。この際、光増幅ユニット44の利得導波路(活性層)38の光軸が、光導波路ユニット80の第3の端面76の垂線に対して少し(数度)傾くようにする。
本実施例の光送信装置107では、光導波路ユニット108の第2のコア層74を埋め込む誘電体層の上半分が紫外線硬化型のエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂と呼ばれる)によって形成されている(図5参照)。その他の構成及び動作は、実施例1の光送信装置30と略同じである。従って、共通する部分に関する説明は省略される。
図10は、本実施例の光導波路ユニット108の断面を説明する図である。図10(a)は、光導波路111の光軸に沿った断面を、回折格子70が設けられた領域88で見た図である。一方、図10(b)は、光導波路108の光軸に垂直な断面を、回折格子70が設けられていない領域82で見た図である。
本実施例では、Si基板85の上に積層された厚さが3μmの第1のSiO2層110の上に、厚さが0.4μmで幅が1.2μmの第2のコア層74が形成されている。更に、この第2のコア層74及び第1のSiO2層110を、厚さ0.1μmの第2のSiO2層112が被覆している。
そして、この第2のSiO2層112の上に、厚さが1.5μm以上のエポキシ樹脂114が積層されている。すなわち、本実施例では、第2のコア層74を囲むクラッド層が、第1のSiO2層110、第2のSiO2層112、及びエポキシ樹脂114によって形成されている。
本実施例で使用するエポキシ樹脂114の屈折率は、SiO2と同じ1.45である。エポキシ樹脂114等の高分子材料は、温度上昇に対して屈折率が低下する(屈折率の温度変化係数が負となる)材料である。一方、SiO2等の誘電体は、温度上昇に対して屈折率が増加する(屈折率の温度変化係数が正となる)材料である。
すなわち、本実施例では、第2のコア層74を囲むクラッド層の一部(上半分)が、温度上昇に対して屈折率が低下する材料(エポキシ樹脂)で形成されている。
上述したように、エポキシ樹脂114とSiO2の屈折率は、略同じである。更に、回折格子70の構造(ピッチ、溝の深さ、及びDuty)も含めて、第2のコア層74の構造は、実施例1の第2のコア層と同じである。
従って、本実施例の導波路ユニット108の光学的特性は、実施例1の導波路ユニット80の光学的特性と同じである。例えば、回折格子70の反射率の波長依存性(反射率特性)は、図8を参照して説明した実施例1の回折格子と同じである。また、共振器モード間隔も、実施例1と略同じ0.39nmである。従って、レーザ光生成装置109は、実施例1と同様に、高反射帯域98に属する5本の共振器モードでレーザ発振する。これら5本の共振器モードで発光するレーザ光の光強度比も、実施例1と同じように3dB以内である。更に、レーザ光生成装置109の共振器モード間隔δf(70GHz)も、実施例1と同様に、電気信号100の変調周波数(10GHz)より高い。
故に、本実施例の光送信装置107は、実施例1の光送信装置30と同様の効果を発揮する。加えて、本光送信装置107が送出する信号光の波長の温度変化率は、以下に説明するように、実施例1の光送信装置30が送出する信号光の波長の温度変化率より一桁程度小さい。
第2のコア層74及びクラッド層の下半分は、誘電体によって形成されている。誘電体の屈折率nは、温度が上昇すると増加する。誘電体の屈折率nの温度係数dn/dT(degree-1)は、+10-5程度である。
一方、エポキシ樹脂のような高分子材料(ポリマー)の屈折率nは、温度が上昇すると低下する。例えば、エポキシ樹脂の屈折率nの温度係数dn/dT(degree-1)は、−10-4程度である。
ところで、本実施例の光導波路111では、導波光は殆ど第2のコア層74に閉じ込められ、エポキシ樹脂製のクラッド層の上半分に漏れ出る導波光の割合は10%程度である。
このため、第2のコア層74及びクラッド層の下半分を形成する誘電体の屈折率変化(+10-5程度)を、クラッド層の上半分を形成するエポキシ樹脂の屈折率変化(−10-4程度)が打ち消すので、光導波路111の等価屈折率の温度変化は、実施例1より一桁程度小さくなる。
従って、回折格子70のブラッグ波長の温度変化も実施例1より一桁程度小さい。よって、本実施例では、レーザ光生成装置109が生成するレーザ光の発振波長(光信号の波長)は、実施例1のレーザ光生成装置32の発振波長(光信号の波長)より、温度変化率が一桁程度小さくなる。
本実施例の光導波路ユニット108の製造方法は、以下の通りである。
まず、実施例1の光導波路ユニット80の製造方法と同様に、Si基板85の上にSiO2製の下部クラッド層(クラッド層の下半分)と、回折格子70が設けられた第2のコア層74が形成される。
次に、この下部クラッド層及び第2のコア層74の上に、紫外線硬化エポキシ樹脂が塗布される。次に、溶剤を気化させるためのエポキシ樹脂の加熱処理と、エポキシ樹脂への紫外線照射が行われる。この紫外線照射によって、エポキシ樹脂が硬化する。
その後は、実施例1の製造方法と同様に、Si基板85表面の露出と、この露出面(テラス)へのパッド90の形成が行われる。更に、このパッド90に光増幅ユニット44が半田付されて、光導波路ユニット108が完成する。
本実施例では、高分子材料(ポリマー)として紫外線硬化型のエポキシ樹脂が用いられているが、その他の高分子材料、例えば紫外線硬化型のアクリレート、フッ素化ポリイミド、ベンゾシクロブテン、重水素化シリコーン、重水素化PMMA(ポリメチルメタクリレート)等が用いられてもよい。
また、上半分だけでなく、クラッド層全体が、高分子材料(ポリマー)で形成されてもよい。
本実施例の光送信装置115では、実施例2と同様に、光導波路ユニットのクラッド層の上半分が、ポリマー(エポキシ樹脂等)によって形成されている。更に、本実施例では、光導波路ユニット116の第2のコア層がシリコン(Si)で形成されている。その他の構成は、実施例1の光送信装置と略同じである。従って、実施例1と共通する部分に関する説明は行われない。
図11は、本実施例の光導波路ユニット116の断面を説明する図である。図11(a)は、本光導波路122の光軸に沿った断面を、回折格子118が設けられた領域88で見た図である。一方、図11(b)は、光導波路122の光軸に垂直な断面を、同じく、回折格子118が設けられた領域88で見た図である。
本実施例では、Si基板85の上に厚さ3μmの第1のSiO2層110が積層され、更にその上にSi製の第2のコア層117が形成されている。尚、Siの屈折率は、3.44である。
回折格子118が形成されている領域88では、第2のコア層117の幅及び厚さは、夫々0.28μm及び0.24μmである。そして、第2のコア層117の上には、SiN膜が287nmの周期(ピッチ)で形成されている。SiN膜の厚さは15nmであり、幅は第2のコア層117と同じ0.28μmである。一方、SiN膜120の光軸方向の長さは、SiN膜の形成周期の半分の144nmである。
一方、回折格子118が形成されていない領域82では、第2のコア層117の幅は、0.4〜0.5μmである。一方、第2のコア層117の厚さは、回折格子118が形成されている領域88と同じ0.24μmである。
回折格子118が形成されていない領域82の長さは、215μmである。一方、回折格子118が形成されている領域88の長さは、実施例1と同じ155μmである。
そして、第1のSiO2層110及び第2のコア層117の上には、実施例2と同様、厚さが1.5μm以上のエポキシ樹脂114が積層されている。
このように、第1のSiO2層110及びエポキシ樹脂114が、第2のコア層117を囲むクラッド層を形成している。
本実施例では、第2のコア層117が、温度上昇すると屈折率が増加する半導体(Si)で形成されている。また、第2のコア層を囲むクラッド層117の上半分が、温度が上昇すると屈折率が低下する材料(エポキシ樹脂)で形成されている。
ところで、回折格子118が形成されている領域88の等価屈折率の平均値は2.26である。従って、回折格子118のブラック波長は、実施例1と同じ1.3μm(=2×2.26×287nm)である。また、回折格子118の結合係数κも、実施例1と略同じ124/cmである。
このように、本実施例の回折格子118のブラッグ波長、結合係数κ、及び回折格子118の長さLBは、実施例1と略同じである。このため、回折格子118の反射率の特性は、図8を参照して説明した実施例1の回折格子70の特性と略同じである。また、共振器モード間隔も、実施例1と略同じ0.39nmである。
よって、レーザ光生成装置123は、実施例例1と同じように、高反射帯域98に属する5本の共振器モード(発光強度比は3dB以内)でレーザ発振する。更に、レーザ光生成装置109の共振器モードの間隔δf(69GHz)も、実施例例1と同じように、電気信号100の変調周波数(10GHz)より高い。これら5本の共振器モードで発光するレーザ光の光強度比も、実施例1と同じように3dB以内である。
故に、本実施例の光送信装置115は、実施例1の光送信装置30と同様の効果を発揮する。加えて、本光送信装置115が送出する信号光の波長の温度変化率は、実施例1の光送信装置30の信号光の波長の温度変化率より一桁程度小さい。
第2のコア層117を形成する半導体(Si)の屈折率nは、温度が上昇すると増加する。上述したように、半導体の屈折率の温度係数dn/dT(degree-1)は、+10-4程度である。
一方、エポキシ樹脂のような高分子材料(ポリマー)の屈折率nは、温度が上昇すると低下する。例えば、エポキシ樹脂の屈折率の温度係数dn/dT(degree-1)は、−10-4程度である。
ところで、第2のコア層117の厚さ及び幅が共に1μm以下なので、導波光の50%程度が第2のコア層117を囲むクラッド層に滲み出す。このため、第2のコア層117を形成するSiと、クラッド層の上半分を形成するエポキシ樹脂の屈折率の温度変化が相殺して、光導波路122の等価屈折の温度変化が小さくなる。
このため、本光送信装置115が送出する信号光の波長の温度変化率は、実施例1の光送信装置30の信号光の波長の温度変化率より一桁程度小さくなる。
上述したよう、第2のコア層117の厚さ及び幅は共に1μm以下である。このようなコア層を有する光導波路122を曲げた場合、曲率半径は数μmになる。従って、後述する実施例6で説明するような、曲がり光導波路を有する光導波路ユニットに、本実施例の光導波路を適用すれば、光導波路ユニットのサイズを小さくすることができる。
ところで、実施例1乃至3では、回折格子は光導波路ユニットに形成され、半導体製の光増幅ユニットから分離している。このような構造では、回折格子が形成される光導波路の材料を適宜選択することにより、回折格子のブラッグ波長の温度変化率を小さくすることができる。従って、装置の環境温度が変化しても、光信号発生装置の信号光の波長が殆ど変化しないようにすることができる。故に、精密な温度制御を必要としない光送信装置を実現することができる。
次の説明は、光導波路ユニット116の製造方法に関する。
まず、Si基板上に、SiO2膜とSi(単結晶)膜が順次積層されたSOI(silicon on insulator)基板が用意される。
次に、このSi膜の上に、PCVD法によってSiN膜が堆積される。次に、このSiN膜が電子線露光技術とRIEによって加工され、回折格子の形成予定位置に、周期的に配置されたSiN膜を形成される。
更に、電子線露光技術とRIEによって、Si膜が加工されて第2のコア層が形成される。
その後、第2のコア層及びSiO2膜の上に、クラッド層の上半分となるエポキシ樹脂層が形成される。
その後の製造方法は、実施例2の製造方法と同じである。
本実施例は、回折格子の反射率特性を単峰性にすることにより、レーザ発振に寄与しない自然放出光(特に、増幅された自然放出光)によるノイズを抑制した光送信装置に関する。本実施例では、第2のコア層に形成される回折格子の形態が特殊である。その他の構成及び動作は、実施例1の光送信装置30と略同じである。従って、共通する部分に関する説明は行われない。
図12は、回折格子126が形成された第2のコア層128の平面図である。図12に示すように、本実施例では第2のコア層128の幅が、周期的に増減を繰り返している。しかも、第2のコア層128の幅の振幅は、図12に示すように、回折格子126の中央から両端に向かって漸減し、両端ではゼロとなっている。一方、第2のコア層128には、実施例1のような溝は形成されない。
第2のコア層128の幅が増減する周期131は、412nmである。幅が広くなっている部分129の、幅の増減周期131に対する割合(duty)は、50%である。コア層の幅の最大値130は、1.5μmである。一方、コア層の幅の最小値133は、1.2μmである。また、回折格子128の長さは、257μmである。
クラッド層の材質(SiO2)及び構成は、実施例1と同じである。また、第2のコア層128の材質(SiO1-xNx)、厚さ(0.4μm)、回折格子128の形成されていない領域82に於ける幅(1.2μm)も、実施例1と同じである。従って、光導波路134の等価屈折は、実施例1と同じ1.54である。
図13は、本回折格子126の結合係数κの分布を説明する図である。縦軸は結合係数κである。横軸は、光軸に沿った位置座標である。
図13に示しように、結合係数κは、回折格子の中央部で最も強く、170/cmである。結合係数κは、回折格子の両端に向かって漸減し0/cmになる。図12に示すように、第2のコア層128の幅は、回折格子の中央部で最大になる。従って、結合係数κも回折格子の中央で最大になる。一方、幅130の振幅が最少になる回折格子の両端で、結合係数κが最少になる。
図14は、回折格子126の反射率と波長の関係を説明する図である。
図14の縦軸は反射率であり、横軸は波長である。尚、縦軸は対数表示となっている。
図14に示すように、回折格子126の反射率は、実施例1の回折格子70と同じく、波長1.3μmで最大値となる。また、反射率の最大値も、実施例1と同じ90%である。また、反射率の最大値(90%)から0.1dB以内(反射率89.8%以内)に反射率が存在する高反射帯域98の幅も、実施例1と同じ2nmである。
更に、光共振器136の共振器モード間隔も、実施例1と同じ0.393nm(70GHz)である。よって、レーザ光生成装置141の共振器モード間隔δf(70GHz)は、電気信号源34の変調周波数(10GHz)より高くなる。
故に、本光送信装置121は、実施例1の光送信装置30と同様の効果を発揮する。加えて、本光送信装置121は、以下に説明するように、レーザ発振に寄与しない自然放出光(特に、増幅された自然放出光)によるノイズを抑制することができる。
図8に示すように、実施例1の回折格子の反射率と波長の関係(反射率特性)には、主反射帯138に付随してサイドローブ140が発生する。このようなサイドローブ140内の共振器モードでは、レーザ発振は起きないが、増幅された自然放出光、所謂ASE(Amplified Spontaneous Emission)が発生する。よく知られているように、ASEは、レーザ光のノイズ源となる。
本実施例の回折格子の反射率特性には、図14に示しように、このようなサイドローブは存在しない。従って、本実施例では、サイドローブ内に発生するASEに起因するノイズを防止することができる。
次の説明は、光導波路ユニット124の製造方法に関する。
本光導波路ユニット124の製造方法は、実施例1の光導波路ユニット80の製造方法と略同じである。但し、本実施例では、第2のコア層128となるSiO1-xNx膜が、回折格子の形成予定領域で幅が周期的に増減するように加工される(図12参照)。SiO1-xNx膜の加工は、電子線露光技術とRIEを用いて行われる。本工程以外の製造方法は、実施例1の製造方法と略同じである。
図15は、本実施例に従う光送信装置142の要部を説明する斜視図である。図16は、図15のA−A線に沿った断面を矢印の方向から見た図である。本光送信装置142の構成及び動作は、実施例1の光送信装置30と共通する部分が多い。従って、共通する部分については、説明を省略する。
本実施例では、光導波路ユニット143を形成する回折格子144の反射率の最大値が、略100%である。一方、図16に示しように、光増幅ユニット146の第1の端面40(光導波路ユニット143とは反対側の端面)には、実施例1とは異なり、高反射膜は形成されていない。
本実施例では、第1の端面40は、へき開された状態のままである。よって、第1の端面40は、反射率約30%の光反射面42として機能する。
光増幅ユニット146の第1のコア37(活性層36)は、このヘキ開面で、光ファイバ17に光学的に結合している(図16参照)。すなわち、本光送信装置142は、第1の端面40(光反射面42)から光信号を出力する。尚、光増幅ユニット146の長さは、300μmである。
本実施例の回折格子144は、実施例1と同様、SiO1-xNx(0≦x≦1)製の第2のコア層145に溝が周期的に形成された光学部材である(図16参照)。また、回折格子144は、実施例1と同様、SiO2製のクラッド層75に囲まれている。
但し、本回折格子144は、実施例1の回折格子70とは異なり、光導波路ユニット143側の第3の端面76(光増幅ユニット143側の端面)に直接接続している(図15及び図16参照)。
本回折格子144のピッチ及びジュティー(duty)は、412nm及び50%である。これらは、実施例1の回折格子70のピッチ及びジュティーと同じである。一方、本回折格子144の溝の深さは、25nmである。この深さは、実施例1の溝の深さ(32nm)より浅い。また、回折格子144の結合係数κは、80/cmである。この結合係数は、実施例1の結合係数(125/cm)より小さい。
一方、回折格子144の長さLは、725μmである。この長さは、実施例例1の回折格子の長さ(155μm)より長い。
従って、本回折格子のκ・Lは、5.8である。一方、実施例1の回折格子70のκ・Lは、1.9である。このように、本回折格子のκ・Lは、実施例1の回折格子70のκ・Lより格段に大きい。このため、本回折格子144の反射率の最大値は、略100%になる。一方、本回折格子144では、結合係数κが小さいので、反射帯域の幅が狭くなる。
図17は、回折格子144の反射率と波長の関係を説明する図である。縦軸(対数表示)は反射率であり、横軸は波長である。
図17に示すように、回折格子144の反射率の最大値は略100%である(図17参照)。この高い反射率により、後述する本実施例に特有の効果が発揮される。
一方、反射率が、最大値(略100%)から0.1dB以内(反射率が99.8%以内)になる高反射帯域150の幅は、実施例1と同じ2nmである。また、共振器モード間隔も、実施例1と略同じ0.40nm(71GHz)である。
従って、実施例1と同じように、本実施例でも、高反射帯域150内に5本(=2nm/0.4nm)の共振器モードが形成される。更に、レーザ光生成装置148の共振器モードの間隔δf(71GHz)も、実施例1と同じように、電気信号源34の変調周波数(10GHz)より高い。故に、本実施例の光送信装置142も、実施例1の光送信装置30と同様の効果を発揮する。
加えて、本光送信装置142は、複数の共振器モードで安定にレーザ発振するとい効果を発揮する。
本実施例の回折格子144では、図17に示すように、波長と反射率の関係を示す曲線が、最大反射率(略100%)の近傍で略平坦(フラットトップ)になっている。このような場合、レーザ光生成装置148は、複数の共振器モードで安定にレーザ発振する。よって、本光送信装置142は、複数の共振器モードで安定にレーザ発振する。
更に、本光送信装置142をWDM用の光送信装置(以下、WDM光送信装置と呼ばれる)に適用した場合、多数の波長チャネルが設定可能になるという効果を、本光送信装置142は発揮する。
上述したように、高反射帯域150の内部では、複数の共振器モードが確実にレーザ発振する。しかし、高反射帯域150の外側でも、レーザ発振が起きる場合がある。
このため、光送信装置142をWDMに適用する場合、隣接する波長チャネルに光が漏れないように、波長チャネルの幅は高反射帯150の幅より広く設定しなければならない。波長チャネルの幅としては、例えば、反射率の最大値(略100%)の5dB以内に反射率が存在する波長範囲すなわち波長帯域152が好ましい。
ところで、波長帯域152の幅は、回折格子の結合係数κに比例する。従って、結合係数κを小さくすれば、反射帯域152を狭くすることができる。しかし、反射率と波長の関係を示す反射率曲線がフラットトップでないと、反射帯域内に占める高反射帯域の割合が小さくなる。このような場合、反射帯域を狭くすると、高反射帯域が狭くなり過ぎてしまう。その結果、高反射帯域内で安定にレーザ発振する共振器モードの数が減少し、モードホップノイズが増加してしまう。
一方、本実施例の回折格子144では、反射率曲線がフラトトップなので、反射帯域152内に占める高反射帯域150の割合は大きい。従って、本実施例の回折格子144によれば、必要な高反射帯域150の幅を確保しつつ、反射帯域152の幅を狭くすることができる。
例えば、実施例1の回折格子では、幅2nmの高反射帯域98を確保するために、幅9nmの反射帯域152が設けられている(図8参照)。一方、本実施例によれば、3nm幅の反射帯域152を設けるだけで、実施例1と同じ幅(2nm)の高反射帯域150を確保することができる(図17参照)。
故に、本光送信装置142をWDM光送信装置に適用した場合、1波長チャネル当たりの波長範囲が狭くなるので、多数の波長チャネルの設定が可能になる。
尚、反射率曲線が完全なフラトトップでなくても、本光送信装置142は、このような効果を発揮する。このような効果が発揮されるためには、回折格子の反射率の最大値が90%より高いことが好ましく、反射率の最大値が95%より高いことが更に好ましく、反射率の最大値が98%より高いことが最も好ましい。
図18は、本実施例の光送信装置154の要部を説明する斜視図である。本光送信装置154の構成及び動作は、実施例5の光送信装置142の構成及び動作と共通するが部分がある。従って、共通する部分についての説明は行われない。
光増幅ユニット156の構成は、実施例1の光増幅ユニット44と略同じである。但し、光増幅ユニット156の素子長は、300μmである(実施例5と同じ)。
また、電気信号源34の構成は、実施例1の電気信号源34と同じである。
光導波路ユニット158は、光合波器(カプラ)160を具備している。
図19は、光合波器160の構成を説明する平面図である。
光合波器(カプラ)160は、光導波路ユニット158の第3の端面76と回折格子161の間、すなわち光導波路78の中間に設けられている(図18参照)。また、光合波器(カプラ)160は、第3の端面76に光学的に接続された第1の光入力口162、第2の光入力口164、回折格子161に光学的に接続された第1の光出力口166、及び第2の光出力口168を有している。光合波器160は、図18及び図19から明らかなように、2入力2出力の多モード干渉(multi-mode interference ; MMI)結合器である。尚、MMI等の光結合器は、光出力口に光が入力しても光結合器として機能する。すなわち、光入力口及び光出力口との名称は、便宜的なものである。
また、光導波路ユニット158は、回折格子161と同一構造の他の回折格子170が形成され、光合波器(カプラ)160の第2の光出力口168に光学的に接続された他の光導波路172を具備している(図18参照)。
ここで、回折格子161及び他の回折格子170の構成は、実施例5の回折格子144と同じである。すなわち、回折格子161及び他の回折格子170の反射率の最高値は、略100%である。従って、回折格子161及び他の回折格子170の反射率曲線は、フラットトップになっている。
また、光導波路ユニット158は、光合波器(カプラ)160第2の光入力口164に光学的に接続され、光信号を出力する出力導波路174を具備している。
ここで、出力導波路174は屈曲部176を有している。出力導波路174は、この屈曲部176で180°方向を転換した後、光増幅ユニット156とは反対側に延在し、第5の端面184に到達する。そして、出力導波路174は、この第5の端面184で、光ファイバ17に光学的に結合している。
そして、光導波路ユニット158では、回折格子161から光結合器(カプラ)160の第1の光出力口166に至る第1の光路180の光学長と、他の回折格子170から第2の光出力口168に至る第2の光路182の光学長が一致しない。更に、両光学長の差が、光送信装置154が出力する光信号の波長λを整数倍して4で除した値(0, 0.25λ, 0.5λ, 0.75λ, 1.0λ,・・・)には一致しないように光導波路が形成されている。
本実施例では、この光路長の差は、228nmである。228nmは、光送信装置154が生成する信号光の波長(1.3μm)の略1/6である。尚、各光路の物理的長さの差は、148nm(=228nm/1.54)である。
ここで、回折格子161及び他の回折格子170に加え、光合波器160、他の光導波路172、及び出力導波路174は、実施例5の回折格子144と同様に、SiO1-xNx膜をRIEで加工して形成されている。また、回折格子161等を囲むクラッド層も、実施例5と同様にSiO2で形成されている。
以上の説明から明らかなように、本実施例の光導波路ユニット158には、回折格子161,170と合波器160によって反射型のマッハ・ツェンダ干渉計が形成されている。尚、光導波路ユニット158第3の端面76から、回折格子161に至る光路に沿った長さは、200μmである。
以下の説明は、レーザ光生成装置178の動作に関する。
電気信号源34から電流が光増幅ユニット156に注入されると、光増幅ユニット156の活性層36は光利得を形成すると共に自然放出光を発生する(図6参照)。活性層36で発生した光(自然放出光)は、第2の端面66から出射して、光導波路ユニット158の光導波路78に入射する。
光導波路78に入射した光は、光合波器(MMIカプラ)160によって等しく分割され、第1の光出力口166及び第2の光入力口168に出力される。光合波器160によって分割された光は夫々、回折格子161及び他の回折格子170に入射し、図17を参照して説明した反射特性に従って反射される。図17に示すように、高反射帯域150内の光は略100%反射される。
夫々の回折格子161,170で反射された光は、進んできた光路を逆行して、光合波器(MMIカプラ)160の第1の光出力口166及び第2の光出力口168に夫々再入射する。光合波器(MMIカプラ)160に再入射した光は合波されて干渉し、第1の光入力口162及び第2の光入力口164から出射される。
この時、回折格子161から光合波器160の第1の光出力口166に至る第1の光路180の光学長と、他の回折格子170から光合波器160の第2の光出力口168に至る第2の光路182の光学長の差Δによって、光合波器(MMIカプラ)160の出力が変化する。光学長の差Δがゼロの場合には、光合波器160に再入射した光は、全て第2の光入力口164から出射される。一方、光学長の差Δが1/4λの場合には、光は全て第1の光入力口162から出射される。
本実施例のレーザ光生成装置178では、光学長の差Δが略λ/6に設定されている。この場合、光増幅ユニット156に接続された第1の光入力口162には、合波された光の80%が出射される。一方、第2の光入力口168からは、残りの20%の光が出射される。
第1の光入力口162から出射された光は、光増幅ユニット156の活性層36に再入射する。再入射した光は、反射率が略100%の光反射面42(高反射膜64)によって反射され、進行方向を逆転して再び光導波路78に入射する(図6参照)。この間、光は活性層36によって増幅される。
その後、上記光は、回折格子161,170と光反射面42(高反射膜64)によって形成される光共振器の間を往復して、レーザ光に成長する。そして、生成されたレーザ光の一部が出力導波路174に分岐されて、光ファイバ17に出力される。
ここで、回折格子161,170のブラッグ波長は1.3μmである。また、共振器モード間隔は、0.35nm(62GHz)である。また、高反射率帯150の幅は、2nmである。
従って、レーザ光生成装置178は、実施例5のレーザ光生成装置148と同じように、1.3μmを中心として、光強度比が3dB以内の5本の共振器モードでレーザ発振する。また、レーザ光生成装置178の共振器モードの間隔δf(62GHz)は、実施例5と同じように、電気信号源34の変調周波数(10GHz)より高い。
更に、回折格子161,170の反射率の最高値は略100%である。
故に、本実施例の光送信装置154は、実施例5の光送信装置142と同様の効果を発揮する。加えて、本光送信装置154は、以下に説明するように、誘電体製の出力導波路174で光ファイバ17に光学的に結合しているので、光ファイバへの結合が容易になる。
光導波路間の結合は、双方の等価屈折率が近いほど容易である。実施例5では、光増幅ユニット146と(SiO2製の)光ファイバ17が光学的に結合している(図15参照)。ここで、光増幅ユニット146は半導体製であり、光ファイバ17は誘電体製である。半導体と誘電体は屈折率が大きく異なるので、光増幅ユニット146と光ファイバ17を高い結合率で光結合することは容易ではない。
本実施例では、出力導波路174及び(SiO2製の)光ファイバ17の双方とも誘電体で形成されているので、両者の光結合率を高くすることは容易である。従って、位置合わせも容易である。すなわち、本光送信装置154と光ファイバ17の光結合は容易である。
ところで、WDM光送信装置では、アレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating ;AWG)合波器によって、信号光が波長多重化されて出力される。
本光送信機154の出力導波路174の断面構造は、このアレイ導波路回折格子と同じである。従って、本光送信装置154とAWG合波器を、同一基板上に集積化することはが容易である。
図20は、本実施例の光送信装置186の要部を説明する斜視図である。
本光送信装置186の構成は、実施例1の光送信装置30の構成と一部共通する。従って、共通する部分については、説明を省略する。
図20に示すように、本実施例の光送信装置186は、光増幅ユニット198を具備している。
光増幅ユニット198の構造は、図6を参照して説明した実施例1の光増幅ユニット44と略同じ構造である。但し、素子長が1000μmであり、実施例1の光増幅ユニット44より長い。尚、実施例1の光増幅ユニット44の素子長は、400μmである。
更に、本実施例の光送信装置186は、回折格子202の形成された光導波路204と光変調器190を有する光導波路ユニット188を具備している。
光導波路204の構成は、実施例1の光導波路78と略同じである。但し、回折格子202の結合係数κが51/cmであり、実施例1の回折格子70の結合係数κ(125/cm)より小さい。また、回折格子202の長さは379μmである。また、光増幅ユニット198側の第3の端面76と回折格子202の間の距離は、153μmである。
光変調器190には、(光増幅ユニット198に対向する)第3の端面76とは異なる端部で光導波路204が光学的に結合している。すなわち、光変調器190の入力端192は、回折格子202に接続されている。一方、光変調器190の出力端194は、出力導波路196に接続されている。そして、出力導波路196は、光ファイバ17に光学的に接続されている。
図20から明らかなように、光変調器190は、マッハ・ツェンダ型の光変調器である。図20に示すように、光変調器190を形成する光導波路は、一旦分岐して平行な一対の光導波路になった後、合流して再び1本の光導波路になる。本実施例の光変調器190は、分岐した一対の光導波路の一方(又は双方)に電流が注入されて、その屈折率が変化するように形成されている。この屈折率変化によって導波光の位相が変化して、入射光が変調される。
図21は、信号光の進行方向に垂直な光変調器190の断面を説明する図である(非特許文献2)。図21には、上記一対の光導波路の一方の断面が図示されている。
光変調器190では、Si製のコア層206がSiO2製のクラッド層208によって囲まれている。コア層206を形成するSiは、ノンドープである。一方、コア層206の両側には、コア層206より薄いSi層210,212が延在している。一方のSi層210はn型であり、他方のSi層212はp型である。すなわち、n型Si層210及びp型Si層212は、コア層206を挟んでpn接合を形成している。
クラッド層208には、ビアホール214が形成されている。ビアホール214には金属が充填され、この金属によって、n型Si層210及びp型Si層121が、それぞれクラッド層208の表面に形成された電極216に接続されている。
また、本光送信装置186は、電気信号を印加して、光変調器190を駆動する電気信号源218を具備している。この電気信号によって上記pn接合が順バイアスされると、コア層206に電流が注入される。注入された電流はコア層206の屈折率を低下させる。このため、電気信号が印加された一方の光導波路と、電気信号が印加されなかった他方の光導波路の間で光路長に差が生じ、光信号が変調される。
また、本光送信装置186は、光増幅ユニット198の利得導波路に直流電流を供給する電流供給源220を具備している。
本実施例では、回折格子202が形成された光導波路204と光増幅ユニット198の光反射面42によって、光共振器220が形成されている。従って、光共振器220の一部を形成する光増幅ユニット198に電流供給源220から直流電流が供給されると、光共振器220で連続レーザ発振が起きて、直流レーザ光が生成される。
このレーザ光は、入力端192から変調器190に入射する。変調器190は、電気信号源218によって印加される電気信号に従って、入射したレーザ光を変調する。変調されたレーザ光は、出力端194から出射され出力導波路196に入射する。レーザは出力導波路196によってレーザ光生成装置200の端部まで導かれ、光ファイバ17に入射する。
図22は、回折格子202の反射率と波長の関係を説明する図である。図22の縦軸は反射率であり、横軸は波長である。
図22に示すように、回折格子202の反射率は、波長1.3μmで最大値となる。この反射率の最大値は、実施例1と同じ90%である。ここで、回折格子202の高反射帯域98(最大値反射率の0.1dB以内に反射率が存在する波長範囲)の幅は1nmである。また、上記光共振器220の共振器モード間隔は0.2nm(36GHz)である。
従って、高反射帯域98内には、5本の共振器モードが存在する。また、共振器モード間隔(36GHz)は、電気信号源218の変調周波数(10GHz)より十分に高い。
故に、本実施例の光送信装置186は、実施例1の光送信装置30と同様の効果を発揮する。加えて、本実施例の光送信装置186によってWDM光送信装置の各波長チャネルが形成された場合、WDM光送信装置の波長チャネル数が増加するという効果が発揮される。
WDM光送信装置の各波長チャネルが本光送信装置186によって形成された場合、以下に説明するように、波長チャネルの幅を、回折格子202の反射帯域幅に等しい1nmに設定することできる。一方、実施例1の光送信装置30によってWDM光送信装置を構築した場合、設定可能な波長チャネルの幅は、回折格子70の反射帯域幅に等しい2nmである。従って、本実施例の光送信装置186によってWDM光送信装置を構築すれば、波長チャネル数が2倍になる。
このように1波長チャネルの幅を狭く設定可能な理由は、回折格子202の反射帯域152(最大値反射率の5dB以内に反射率が存在する波長範囲)の幅が1nmと、実施例1の回折格子の半分であることに起因する(図22及び図8参照)。
図22に示すように、本実施例の回折格子202の反射率曲線は、実施例1の回折格子70と反射率曲線と同じように、フラットトップではない。このため、反射帯域152を狭くすると、同時に高反射帯域98の幅も狭くなり、高反射帯域内98に存在する共振器モードの数が減ってしまう。このような共振器モードの減少は、モードホップノイズの増加をもたらす。
そこで、本実施例では光共振器220の光学長(共振器長)を長くして、共振器モード間隔を狭くしている。
しかし、共振器長が長くなるとミラー損失が減少し、光共振器内に発生する光子の寿命が長くなる。その結果、レーザ光生成装置200の緩和振動数が増大する。このため、レーザ光生成装置(レーザ発振器)を直接変調して信号光を生成する、実施例1乃至実施例6の光送信装置では、共振器モード間隔をあまり狭くすることはできない。ところで、反射帯域152には、モードホップノイズの低減のため、複数の共振器モードを収容することが要求される。従って、反射帯域152の幅も、あまり狭くすることができない。
一方、本実施例の光送信装置186では、光増幅ユニット198と光共振器220によって生成した連続レーザ光(CW光)を光変調器190で変調して、信号光を形成する。従って、本光送信装置186の変調帯域は、レーザ光生成装置200の緩和振動数によって制限されない。
故に、本光送信装置186の変調帯域は、光共振器220を長くして共振器モード間隔を狭くしても、狭くはならない。従って、本光送信装置186では、共振器モード間隔を狭くして、高反射帯域98内に、必要な数だけ共振器モードを確保することができる。
よって、本伝送装置186をWDM光送信装置に適用した場合、波長チャネルの幅を必要なだけ狭くすることが可能なので、波長チャネル数を多くすることができる。
更に、本光送信装置186の光増幅ユニット198には、レーザ光を変調するための電気信号が印加されない。このため、光増幅ユニット198の電気容量が増加しても、光送信装置186の変調帯域が狭くなることはない。故に、本実施例の光送信装置186では、光増幅ユニット198を長くすることが可能になっている。光増幅ユニット198を長くすることには、以下のような利点がある。
本実施例では、光導波路204でなく等価屈折率が大きい光増幅ユニット198を長くして、共振器モード間隔を狭くしている。従って、レーザ光発生装置200全体の長さの増加が抑制されている。
更に、本実施例では、利得媒体として機能する光増幅ユニット198が長くなっているので、光送信装置186の最大出力が大きくなっている。
図23は、本実施例に従うWDM光送信装置222の要部を説明する斜視図である。
WDM光送信装置222は、Si製の基板224の上に集積化された4つの光送信装置226を具備している。光送信装置226の構成は、実施例1で説明した光送信装置30と略同じである。但し、回折格子70のピッチは、実施例1の光送信装置30とは異なっている。
光送信装置226の回折格子70のピッチは、光送信装置ごとに異なっている。各光送信装置226の回折格子70のピッチは、短い方から順に418.07nm、420.01nm、421.96nm、及び423.90nmである。これらのピッチに対応して、各回折格子のブラッグ波長も夫々異なっている。各回折格子のブラッグ波長は、短い方から順に、1291nm、1297nm、1303nm、及び1309nmである。
また、WDM光送信装置222は、複数の光送信装置226が出力する光信号を波長多重化する波長多重ユニット(λ―MUX)228を具備している。波長多重ユニット228は、図23に示すように、複数の光送信装置226と共に同一基板224の上に集積化されている。波長多重ユニット228は、例えばAWG合波器である。
波長多重ユニット228の複数の入力部230は、夫々、各光送信装置226の出力端(回折格子70の端部)に接続されている。一方、波長多重ユニット228の出力部は、光ファイバ17に光学的に接続している。
尚、図23中に示された破線は、WDM光送信装置222を機能別に区切った境界を示している。この破線は、WDM光送信装置222の物理的な境界を示してはいない。
各光送信装置226は、実施例1で説明した動作に従って光信号を生成する。従って、各光送信装置226は、夫々の回折格子70のブラッグ波長を中心とする複数の共振器モードで発振する。
故に、各光送信装置226が生成する光信号の中心波長は、短い方から順番に、1291nm、1297nm、1303nm、及び1309nmである。各波長の間隔は、6nmである。
これらの光信号は、夫々、波長多重ユニット228の入力部230に入射する。波長多重ユニット228は、入射した光信号を一つにまとめて、出力部232から光ファイバ17に出射する。以上の説明から明らかなように、本WDM光送信装置222の波長チャネル数は4つであり、波長チャネル幅は6nmである。
ここで、光送信装置226が生成する光信号は、その回折格子70の高反射帯域98内で安定にレーザ発振する複数の共振器モードによって形成されている(図8参照)。しかし、実施例7で説明したように、この高反射帯域外の共振器モードでレーザ発振が起きる場合がある。
一方、反射帯域152の外側の共振器モードで、レーザ発振が起きる場合は極めて少ない。また、このような共振器モードでレーザ発振が起きたとしても、その発光強度は極めて弱い。
従って、各光送信装置226が生成する光信号は、実質上、反射帯域152の内部に存在する共振器モードのみによって形成されている。
本実施例では、WDM光送信装置222の波長チャネル幅が、この反射帯域152の幅に一致している。故に、各光送信装置226が生成する光信号は、波長多重ユニット228によって多重化されても、WDM信号の受信側で容易に分離することが可能である。
本WDM光送信装置222は、実施例1の光送信装置と同様の効果を発揮する。加えて、本WDM光送信装置222は、各波長チャネルの中心波長の設定精度が、DFBレーザを光源とするWDM光送信装置より高いという効果を発揮する。
一般的に、等価屈折率の制御は、半導体光導波路より誘電体光導波路の方が容易である。故に、ブラッグ波長の制御も、DFBレーザより、回折格子が誘電体製の光導波路で形成された本実施例の光送信装置226の方が容易である。よって、本WDM光送信装置222の各波長チャネルの中心波長の設定精度は、DFBレーザを光源とするWDM光送信装置より高い。
実施例1乃至8で説明した光送信装置が生成する光信号は、複数の共振器モードによって形成されている。従って、実施例1乃至8で説明した光送信装置は、長距離光通信よりは短距離光通信に適している。具体的には、チップ間光通信、ボード間光通信、及び光LAN等、1cm〜1kmの距離で光信号を送受信する短距離光通信に適している。
図24は、実施例8のWDM光送信装置222を用いて構築した光LAN234(optical local network)の概念図である。本光LAN234は、サーバやPC(personal computer)等の情報処理装置236と、これら情報処理装置236に接続され、ある情報処理装置236から出力された信号を受信し他の情報処理装置236に送信するハブ238によって形成されている。尚、上記信号の送受信は、ハブ238,239の間でも行われる。
夫々の情報処理装置236及びハブ238,239には、構内等の短距離(1m〜100m)で装置間を光信号で接続する光送受信モジュール240(光トランシーバ)が搭載されている。
図24に示すように、情報処理装置236には、少なくても一つの光送受信モジュール240が搭載され、ハブ238に搭載された複数の光送受信モジュール240と光ファイバ対242によって接続されている。
図25は、光送受信モジュール240の概念図である。光送受信モジュール240は、実施例8で説明したWDM光送信装置222と、波長多重化された光信号を分離して検出するWDM受信装置246によって形成されている。
光送受信モジュール240では、電気信号248によって供給される情報を、WDM光送信装置222が光信号に変換し、更に波長多重してWDM光信号250として光ファイバ対242の一方に出力する。一方、WDM受信装置246は、光ファイバ対246の他方を伝播してきたWDM光信号252を受信して、波長多重されたWDM光信号を個々の光信号に分離した後、光電変換して電気信号235として出力する。
本光LAN234では、ハブ238,239と情報処理装置240(又は他のハブ239)の間の通信が、光送受信モジュール240で生成されたWDM光信号によって行われる。従って、高速大容量の通信が可能になる。
そして、光送受信モジュール240の光送信部は、精密な温度制御を必要とせず、且つ実施例8で説明した低ノイズのWDM光送信装置222で形成されている。従って、本実施例によれば、低価格且つ低ノイズの光LANを構築することができる。