JP2010148448A - スポーツ用品、及びスポーツ用品の製造方法 - Google Patents

スポーツ用品、及びスポーツ用品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】小型、軽量化を図り、かつ表面部分で剥離や磨耗などが生じ難いスポーツ用品を提供する。
【解決手段】本発明のスポーツ用品は、チタン系材料で構成された本体部材1の表面に炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成している。そして、炭素ドープ酸化チタン層2Aは、チタンと炭素が結合した状態が含まれると共に、チタン系材料よりも硬度が高く形成されており、その表面は、研磨工程によって凹凸が研磨された状態に処理されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、釣り用品、ゴルフクラブ用品、テニス(ラケット)用品、自転車の部品などのスポーツ用品、及びそのようなスポーツ用品の製造方法に関する。
従来、スポーツ用品の一例である釣り用品に関し、釣竿やリール、或いはそれらを構成している部品として、炭化珪素(SIC)などのセラミックスが使用されることがある。このようなセラミックスは、硬度が高く、耐摩耗性に優れるため、例えば、釣糸ガイドやラインローラなど、釣糸が接触する部分に用いられている。また、例えば、特許文献1には、母材をセラミックスで構成し、表面に金属などのコーティング層を形成した釣り用品が開示されている。
特開平1−265841号
上記したセラミックスは、衝撃に弱いため、肉厚を厚く形成する必要があり、それにより、重量が重く、大型化するという欠点がある。例えば、釣竿に装着される釣糸ガイドの内、穂先ガイドの釣糸挿通部分にセラミックスによる部品を取着することを考慮すると、ある程度の肉厚を確保する必要があることから、穂先ガイド全体の重量が重くなると共に大型化してしまい、繊細なアタリを感知する穂先竿としては好ましくない構成となってしまう。
また、上記した特許文献1に開示されているように、セラミックスの表面に金属コーティング層を形成すると、腐食や磨耗が生じたときなどに金属コーティング層が剥離して釣糸を傷付ける等の問題がある。そして、これらの問題は、釣り用品に限られず、他物との接触がなされたり、軽量化が要請される各種のスポーツ用品にも該当する。
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、小型、軽量化を図り、かつ表面部分で剥離や磨耗などが生じ難いスポーツ用品、及びそのようなスポーツ用品の製造方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明に係るスポーツ用品は、チタン系材料で構成された本体部材の表面に炭素ドープ酸化チタン層を形成するのであり、前記炭素ドープ酸化チタン層は、チタンと炭素が結合した状態が含まれると共に、前記チタン系材料よりも硬度が高く形成されており、その表面は、研磨工程によって凹凸が研磨された状態に処理されていることを特徴とする。
上記した構成のスポーツ用品は、チタン系材料の表面を、所定の深さに亘って、炭素ドープ酸化チタン層に改質する(チタンと炭素が結合した状態が含まれる)ことを特徴とする。すなわち、セラミックスのような部材を装着するのではなく、スポーツ用品を構成する本体部材としてチタン系の材料を用いるのであり、単に、その表面自体を改質することによって、表面の硬度を高め、かつ耐摩耗性を向上することから、軽量化、及び小型化が図れるようになる。特に、その表面は、研磨工程によって凹凸が研磨された状態に処理することから、他物が接触しても、引っ掛かることがなく円滑に摺動するようになり、耐摩耗性の向上が図れるようになる。
上記したようなスポーツ用品は、例えば、チタン系材料で構成された本体部材を研磨する第1研磨工程と、前記本体部材の表面に炭素ドープ酸化チタン層を形成する工程と、前記炭素ドープ酸化チタン層を形成した際に生じる表面の凹凸を平坦状に研磨する第2研磨工程と、によって製造することが可能である。
この場合、本体部材を構成するに際しては、上記の第1研磨工程を施すことによって、予め他物と接触する部分を滑らかな状態にしておくことができ、このような滑らかな状態で炭素ドープ酸化チタン層が形成される。もちろん、例えば、他物が接触しない部分であれば、このような第1研磨工程を実施しない構成であっても良い。そして、上記の第2研磨工程を施すことによって、表面にある凹凸が研磨されて平坦状になることから、表面の剥離が防止されて耐摩耗性が向上すると共に、外観の向上も図れるようになる。
本発明によれば、小型、軽量化を図り、かつ表面部分で剥離や磨耗などが生じ難いスポーツ用品が得られるようになる。
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。
なお、本発明の実施形態を説明するにあたって、最初に、スポーツ用品(ここでは釣り用品とする)の表面に炭素ドープ酸化チタン層を形成して表面を改質する手法について説明し、次いで、そのような手法によって製造された具体的なスポーツ用品の例(釣り用品として釣糸が摺動する釣糸ガイドを例示する)について説明する。
図1から図4は、釣り用品を構成する本体部材の表面を改質した状態を示しており、図1は、模式的な側面図、図2は、釣糸を摺接させた状態を模式的に示した拡大断面図、図3は、炭素ドープ酸化チタン層を形成した状態を模式的に示す拡大断面図、そして、図4は、図3に示す状態において、所定の研磨処理を施した状態を模式的に示す拡大断面図である。
本発明に係る本体部材1には、チタン系の材料、すなわちチタン(純Ti)や、公知の種々のチタン合金(例えば、βチタン(Ti−15v−3Cr−3Sn−3Al)や、α−βチタン(Ti−6Al−4V)など)が用いられる。なお、本体部材1については、必要となる部分にチタンやチタン合金を使用していれば良く、その他の部分については、チタンやチタン合金と異なる金属材料や樹脂材料等を組み合わせて用いることが可能である。
そして、例えば、後述する釣糸ガイド(ガイドリング)のように、釣糸を案内、又は釣糸が接触する部分等の、チタンやチタン合金表面2に、以下のような手順によって炭素ドープ酸化チタン層2Aが形成される。
具体的に本体部材1として、釣糸ガイド(ガイドリング)を用いるとすると、最初に、上記したチタン系材料によって、所定の形状(釣糸ガイドとしての形状)に加工する。この場合、加工された釣糸ガイドについては、例えば、バレル研磨や化学研磨等の研磨工程(第1研磨工程)によって、炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成する前に、表面を滑らかな状態に研磨しておくことが好ましい。すなわち、このような第1研磨工程を施すことにより、形成される炭素ドープ酸化チタン層2Aの表面を、できるだけ平滑化しておくことが可能となる。なお、使用する部位によっては、このような第1研磨工程を施さなくても良い。
次いで、所定の手法により、表面2に炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成する。具体的には、例えば、前記した本体部材1を燃焼室内に保持しておき、炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を直接当てることで高温加熱処理すること、或いは、本体部材1を、炭化水素を主成分とするガスの燃焼ガス雰囲気中で高温加熱処理すること、或いは、本体部材1の表面を、炭化水素を主成分とするガス雰囲気中で高温加熱処理すること、等の手法により、本体部材1の表面2に炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成することが可能である。
このように形成される炭素ドープ酸化チタン層2Aは、本体部材1を構成しているチタンと炭素が結合した状態(Ti−C結合)、すなわち、本体部材よりも硬度が高い結合状態を含んでおり、炭素をドープすることで、チタン系金属の表面が改質されて、硬度の向上が図れるようになる。
この場合、表面に形成される炭素ドープ酸化チタン層2Aは、その層の深さ(表面からの厚さ)が0.1μm以上又は0.5μm以上、好ましくは0.5μm〜20μm、更に好ましくは1.0μm〜20μmの範囲となるように形成される。
上記した厚さの改質状態が得られるように、炭化水素を主成分とするガスは、炭化水素を少なくとも50容量%含んでいれば良く、適宜、空気、水素、酸素などを混合したものとすれば良い。換言すれば、形成される炭素ドープ酸化チタン層2Aは、原子レベルで炭素含有量が0.5at%〜20at%、好ましくは、1at%〜15at%あれば、釣り用品として十分な性能を発揮することが可能となる。
また、上記した高温加熱処理は、本体部材1の表面2に、上記した深さの炭素ドープ酸化チタン層2Aが形成される程度、好ましくは、本体部材1の表面温度が900℃〜1500℃、好ましくは1000℃〜1200℃となるように加熱処理すれば良い。すなわち、表面温度が900℃よりも低いと、炭素ドープ酸化チタン層2Aの厚さが薄くなる傾向となり、1500℃よりも高くなると、冷却時に部材本体表面から薄膜の剥離が生じる傾向が現れる。
また、加熱処理時間については、冷却時に表面が剥離を発生しない程度の時間とされ、加熱温度との相関関係があり最適条件に調整することとなるが、600秒以下に設定しておくことが好ましい。すなわち、600秒を超えて加熱処理を行うと、冷却時に部材本体表面から薄膜の剥離が生じる傾向が現れるようになる。
上記したような工程により、本体部材1の表面2に炭素ドープ酸化チタン層2Aが形成される。このような炭素ドープ酸化チタン層2Aは、表面側から炭素をドープして加熱処理を行うことから、炭素とチタンが結合した状態の割合(Ti−C結合の割合)が、表面側に比較的多く存在しており、釣糸が摺接する表面側の硬度が、本体部材を構成するチタン系材料と比較して向上された状態となっている。
前記炭素ドープ酸化チタン層2Aの表面を拡大すると、図3に示すように、凹凸2aが形成されると共に、凹部(微小凹部)2bが所々に形成された状態となっている。この場合、凹凸2aや凹部2bは、炭素と結合できなかったチタン原子や、チタン原子以外の不純物によって生じると考えられる。特に、凹部2bについては、上記した第1研磨工程で研磨できなかった大きい凹部が原因の場合もあり、炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成した後も、そのままその凹部が残ることで発生するものと推測される。
そして、このような凹凸2aや凹部2bは、釣糸が摺動した際に摩擦抵抗となったり、或いは、表面部分を剥がす要因(表面部分の粒子を剥がす要因)となる。また、凹部2bについては、その表面(凹凸となっている表面)との境界部分(エッジ部分)2cが、不均一な状態(尖っていたり、段状になっていたり、凹凸になっている等)となっていることがあるため、摺動する釣糸を傷つけたり、摩擦抵抗の要因となる。
このため、上記した炭素ドープ酸化チタン層2Aを形成した後に、更に、表面を研磨する研磨工程(第2研磨工程)を施す。この場合、第2研磨工程では、従来の釣糸ガイドに使用されているSICガイドリングの研磨表面程度に、表面に光沢を有する滑らかな面となる程度に研磨することが好ましい。具体的には、表面粗度に関する数値(JIS B0601−2001)がRa0.01〜1.0程度になっていれば、以下のように、凹凸が研磨されて表面の平滑状態が得られるようになる。
なお、第2研磨工程は、上記した第1研磨工程と同様、バレル研磨を用いることが可能である。このようなバレル研磨工程は、例えば、回転バレル、遠心バレルを用いることによって実施される。
具体的には、バレル研磨工程は、前記炭素ドープ酸化チタン層2Aを維持した状態で行われ、表面に光沢を有するように滑らかに、かつ表面硬度がより高い状態(炭素とチタンが結合した状態の割合(Ti−C結合の割合)が、層の厚さ方向でみて表面側に相対的に多く存在する状態)まで実行される。
図4に示すように、バレル研磨工程を施した後の表面は、図3で存在していた凹凸2aが研磨されて表面2a´が平滑な状態とされており、また、図3で存在していた凹部2bは、完全に研磨されて消滅することはないものの、そのエッジ部分2c´は、湾曲状(R状)に研磨された状態となっている。これにより、図2に模式的に示すように、釣糸Sが表面に摺接しても、上記のように凹凸2aが研磨されて平滑化した表面2a´となっており、かつエッジ部分2c´が湾曲状(R状)に研磨されているため、釣糸Sを傷付けることなく滑らかに案内して、耐摩耗性のある表面状態とすることが可能となる。なお、凹部2bは、上記した第2研磨工程において、粒子の不均一性などが原因で一部が剥落することで生じる可能性もあるが、その研磨工程により、エッジ部分2c´は湾曲状に研磨される。
また、上記した第2研磨工程を施すことにより、表面硬度をより高くすることが可能となる。これは、表面領域を研磨することにより、炭素とチタンが結合されなかった部分(不完全結合部分であり研磨され易い)が研磨され、これにより表面側にTi−C結合の割合が多く存在するようになったことで硬度の向上が図れたものと推測される。この場合、最終的な表面硬度については、ビッカース硬度(HV)で1000より高い値に研磨処理されていることが好ましい。なお、硬度が高くなることで耐摩耗性の向上が図れるため、特に、釣糸が摺接するような部分に用いる場合は、1200以上、更には1500以上となるように研磨処理されていることが好ましい。
また、上記した第2研磨工程の後、その表面の凹部2bに撥水性を有する材料を充填させることが好ましい。例えば、フッ素樹脂やフッ素塗料を塗布し、その後、表面を研磨することで、凹部2bに撥水性を有する材料を充填することが可能である。或いは、溶剤の比率を多くしたフッ素樹脂を吹き付け塗装することで、凹部2bに撥水性材料を充填するようにしても良い。このような構成では、本来、凹部となっている部分が撥水性を維持することから、水分の付着が防止され、釣糸の摺動性をより向上することが可能となる。
上記した工程によって表面が改質されたチタン系材料は、以下のような特徴を備えており、釣り用品としての機能の向上が図れるようになる。
同一形状のSICリングと、改質された表面を有するチタン系材料のリングに対して同一の釣糸の摺動試験を実施して熱だまりの状態を測定したところ、後者の釣糸案内面は、前者よりも1度以上温度が低くなっており、熱だまりし難い構造であることが確認された。これは、放熱性が良く、特に釣糸が強い抵抗を持って接触する部位(例えば釣糸ガイド)では、釣糸を切れ難い構造とすることが可能となる。
また、改質された表面は、SICによる部材と比較して光を照射した際の触媒作用(光触媒作用)が良好な結果が得られた。これにより、防臭、防菌、防汚等の向上が図れるようになる。
次に、上記したように表面が改質された釣り用品の実施形態を具体的に説明する。
図5から図8は、釣り用品の一例である釣糸ガイドを示す図であり、図5は、正面図、図6は、右側面図、図7は、釣糸ガイドを釣竿に配置した状態を示す図、そして、図8は、釣糸ガイドを構成するフレームと筒部の組み立て状態を説明する図である。
釣糸ガイド5は、釣竿Rに嵌入される開口11が形成された筒部10と、この筒部10に保持され、釣糸が挿通されるフレーム(本体部材)20とを備えている。
前記筒部10は、例えば、合成樹脂等の素材によって一体形成されており、釣竿Rに嵌入された際、図7で示すように釣糸Sが矢印方向に抜け易い外形状(穂先側に移行するに連れて膨らむ形状)を有すると共に、その元竿側は、釣竿Rの外表面と段差が生じないように形成されている。また、筒部10には、穂先側に、フレーム20の固定部22が圧入固定される回り止め突起12が形成されている。
前記フレーム20は、板状の形状を有しており、チタン系の材料によって一体形成されている。フレーム20には、上方側に円形で釣糸が挿通される釣糸案内部21が形成されており、下方側には、筒部10の回り止め部12に圧入固定される固定部(開口)22が形成されている。フレーム20の上方側は、図7に示すように、穂先側に傾斜されており、前記筒部10の形状と一体となって釣糸Sが矢印方向に抜け易いよう構成されている。
なお、フレーム20には、必要に応じて肉抜き孔部24を形成しておき、軽量化を図ることが好ましい。
上記したフレーム20は、打ち抜き加工し、その後、上方側を屈曲することで形成することが可能であり、上述した第1研磨工程を施した後、その表面全体に、炭素ドープ酸化チタン層が形成されている。そして、炭素ドープ酸化チタン層を形成した後は、上記したバレル研磨(第2研磨工程)を施して、表面に発生している凹凸を研磨している。
このように構成されるフレーム20を、筒部10の回り止め部12に圧入固定することで、図5に示すような釣糸ガイド5が作成される。
フレーム20に形成される釣糸案内部21の内周面(釣糸案内面)21aは、リールから繰り出される釣糸が摺動する部分であり、この部分の表面は、上述した製造工程を経て炭素ドープ酸化チタン層2Aとなっている(図1,図2,図4参照)。内周面(釣糸案内面)21aの表面に炭素ドープ酸化チタン層2Aが形成されることで、上述したように、硬度の向上が図れ、耐摩耗性の向上が図れることから、従来のように、SICガイドリングを取着する必要がなくなり、フレーム20を可能な限り小さくすることが可能となる。すなわち、図6において、内周面(釣糸案内面)21aの内径Dを、従来のSICガイドリングと同じにしても、釣糸案内部21そのものがフレーム20と一体形成されているため、釣糸案内部21の周囲の幅Wを可能な限り小さくすることが可能となる。
この結果、本実施形態の釣糸ガイドによれば、従来よりも小型、軽量化が図れると共に挿通される釣糸を傷付けることのない構成が得られるようになる。したがって、穂先竿に装着される釣糸ガイドを考慮した場合、硬度及び耐摩耗性の向上が図れて軽量化が達成できることから、魚信感度に優れた穂先竿とすることが可能になる。
また、本実施形態の釣糸ガイドでは、炭素ドープ酸化チタン層を形成する前と後の両方で研磨工程を施しているため、極めて滑らかな釣糸案内面を形成可能となり、釣糸をスムーズに案内することができる。また、糸切れや釣糸の傷付きを防止でき、長期間に亘って釣糸を使用することが可能となる。
また、上記のように炭素ドープ酸化チタン層を形成する前と後の両方で研磨工程を施すことにより、層の厚さを均一化できると共に硬度の高い表面にすることができ、釣糸の接触による釣糸案内面の表面の磨耗を遅らせることができる。しかも、釣糸案内面のどの部分に釣糸が接触しても局部的に磨耗が進行することを防止できる。
さらに、本実施形態では、炭素ドープ酸化チタン層の硬度の高いエリアを釣糸案内面の表面として使用したことで、釣糸の接触による釣糸案内面の磨耗をより確実に遅らせることができ、長期に亘って釣糸をスムーズに案内することが可能となる(従来の金属材料では、長期間、釣糸をスムーズに案内することはできない)。
また、上記した構成では、図5及び図8に示すように釣糸案内部21の厚さT(ここでの厚さは釣糸が摺動する方向の厚さとなる)を、フレーム20の厚さtよりも肉厚(T>t)に形成しておくことが好ましい。すなわち、釣糸が接触する部分は、釣糸が摺接するに連れて耐摩耗性が不足することが考えられるが、その部分を予め肉厚にしておくことで、小型、軽量化を図りつつ、効率的に硬度の向上、及び耐摩耗性の向上が図れるようになる。
図9は、上記した釣糸ガイドの別の実施形態を示す図である。
この実施形態の釣糸ガイド5は、釣糸が挿通される部分をリング状に構成し(ガイドリング26;本体部材)、これをフレーム20とは別体構造として、フレーム20に形成された開口に取着している。
ガイドリング26は、チタン系材料で構成されており、上述した実施形態と同様な手順により、表面に炭素ドープ酸化チタン層が形成されている。この場合、炭素ドープ酸化チタン層は、上述したように、その層厚が、0.1μm以上又は0.5μm以上、好ましくは0.5μm〜20μm、更に好ましくは1.0μm〜20μmの範囲となるため、ガイドリング26自体の肉厚(T1)は、0.3mm〜0.8mmの範囲で形成することが可能となる。すなわち、従来のSICリングと比較しても、その肉厚を薄く形成することができるため、フレーム20の部分の小型、軽量化を図ることが可能となる。
このような構成のガイドリング26は、板状に形成されたフレーム(傾斜が形成されていないフレーム)20の開口に、接着、圧入等によって固定することができる。また、フレーム20の表面には、炭素ドープ酸化チタン層が形成されていないため、フレーム自体に屈曲性を持たせることが可能になると共に、フレーム部分を所望の形状(図では略ストレート形状)にして、釣糸が引っ掛かって応力が作用しても破損し難い構成とすることが可能となる。
また、本実施形態においても、ガイドリング26の厚さT(釣糸が摺動する方向の厚さとなる)を、フレーム20の厚さtよりも肉厚(T>t)に形成しており、これにより、上記した実施形態と同様、小型、軽量化を図りつつ、効率的に硬度の向上、及び耐摩耗性の向上が図れるようになる。
なお、ガイドリング26の断面形状が円形であれば、上記した肉厚T1、及び厚さTは同じとなる。
図10は、上記した釣糸ガイドの更に別の実施形態を示す図である。
この実施形態では、フレーム20Aの基端側を屈曲させ、釣竿の表面に糸止め固定される脚部20aを一体形成している。
このように、ガイドリング26を別体として、その表面に上記したような炭素ドープ酸化チタン層を形成し、これをフレーム20Aの開口に固定することで、フレーム20Aの使用材料を適宜変形することが可能となり、例えば、釣竿が大きく撓む部分においても、上述した実施形態と同様な効果を奏する釣糸ガイドを装着することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、本体部材として用いられるチタン系材料については、用いられる部位に応じて変更することができ、また、表面に形成される炭素ドープ酸化チタン層の深さや硬度についても、必要に応じて適宜、変形することが可能である。
本発明は、各種の釣り用品に適用することが可能である。例えば、上記した釣糸ガイド以外にも、釣竿に使用する口金リングや釣糸案内部分、竿先に付ける各種部品(穂先ガイドや中通し釣竿のトップガイドなど)、リールに使用されるラインローラ、スプール、ベールアーム等の部品、その他、各種の釣りに使用される製品や構成部品に適用することが可能である。
また、本発明は、上記した釣り用品以外にも、ボール、芝生、砂など様々な他物が接触するゴルフクラブ用品、テニス(ラケット)用品、自転車の部品などの各種スポーツ用品に適用することが可能である。例えば、ゴルフクラブ用品におけるクラブヘッドのように中空部分がある場合であっても、上記した本体部材の表面だけではなく、中空部分に炭素ドープ酸化チタン層を形成しても良い。こうすることで、外観品質や外側表面の物性や性能に影響を与えることなく、本体部材の硬度や剛性などの性能向上が可能となる。
なお、クラブヘッドの場合、炭素ドープ酸化チタン層は、中空側の表面と外側表面の両方に設けても良い。更に、クラブヘッドのソール部、クラウン部、トウ側及びヒール側のサイド部、バック部、及びフェース部の3部分以上、又はクラブヘッド全体の形状を形成した後に前記炭素ドープ酸化チタンそうを形成することで、より効果的に硬度、曲げ剛性などの性能を向上することができる。この場合、中空側の表面については、外部に露出しないことから、炭素ドープ酸化チタン層を形成した後の第2研磨工程を省略しても良い。また、厳密に炭素ドープ酸化チタン層の厚さを管理する必要が無ければ、第1研磨工程を省略しても良い。
釣り用品を構成する本体部材の表面を改質した状態を示す模式的な側面図。 釣糸を摺接させた状態を模式的に示した拡大断面図。 炭素ドープ酸化チタン層を形成した状態を模式的に示す拡大断面図。 図3に示す状態において、所定の研磨処理を施した状態を模式的に示す拡大断面図。 釣り用品の一例である釣糸ガイドを示す正面図。 釣糸ガイドを示す右側面図。 釣糸ガイドを釣竿に配置した状態を示す図。 釣糸ガイドを構成するフレームと筒部の組み立て状態を説明する図。 釣糸ガイドの第2の実施形態を示す図。 釣糸ガイドの第3の実施形態を示す図。
符号の説明
1 本体部材
2A 炭素ドープ酸化チタン層
5 釣糸ガイド
10 筒部
20 フレーム(本体部材)
26 ガイドリング(本体部材)

Claims (9)

  1. チタン系材料で構成された本体部材の表面に炭素ドープ酸化チタン層を形成したスポーツ用品であって、
    前記炭素ドープ酸化チタン層は、チタンと炭素が結合した状態が含まれると共に、前記チタン系材料よりも硬度が高く形成されており、その表面は、研磨工程によって凹凸が研磨された状態に処理されていることを特徴とするスポーツ用品。
  2. 前記炭素ドープ酸化チタン層の表面硬度は、ビッカース硬度で1000より高くなるように前記研磨工程が施されていることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。
  3. 前記炭素ドープ酸化チタン層は、表面からの厚さが0.1μm以上形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスポーツ用品。
  4. 前記炭素ドープ酸化チタン層は、炭素とチタンが結合した状態の割合が、厚さ方向でみて表面側の方が内部側よりも相対的に多くなるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
  5. 前記炭素ドープ酸化チタン層の表面に形成される凹部に、撥水性を有する材料を充填したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
  6. 前記本体部材は、釣糸が接触する釣り用品を構成する釣糸案内部を有すると共に、少なくとも前記釣糸案内部に前記炭素ドープ酸化チタン層を形成し、
    前記釣糸案内部の厚さを、前記本体部材よりも肉厚に形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
  7. チタン系材料で構成された本体部材を研磨する第1研磨工程と、
    前記本体部材の表面に炭素ドープ酸化チタン層を形成する工程と、
    前記炭素ドープ酸化チタン層を形成した際に生じる表面の凹凸を平坦状に研磨する第2研磨工程と、
    を有することを特徴とするスポーツ用品の製造方法。
  8. 前記第2研磨工程は、バレル研磨であることを特徴とする請求項7に記載のスポーツ用品の製造方法。
  9. 前記第2研磨工程の後、その表面の凹部に撥水性を有する材料を充填させる工程を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のスポーツ用品の製造方法。
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