JP3210611B2 - 樹脂塗装アルミニウム合金部材およびその製造方法 - Google Patents
樹脂塗装アルミニウム合金部材およびその製造方法Info
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Description
あるいはシリコン樹脂などの樹脂塗膜を形成したアルミ
ニウム合金部材に関するものであり、特にアルミニウム
合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成してからその陽極
酸化皮膜上に樹脂塗膜を形成したアルミニウム合金部材
に関するものである。
れた表面潤滑性を有するところから、アルミニウム合金
からなる基材の表面にフッ素樹脂塗膜を形成した部材
が、例えばフライパンや炊飯器等の厨房部品、あるいは
プリンタやファクシミリ、コピー機などの定着用ヒート
ロール、そのほか“こげつき”や汚れの付着の防止、あ
るいは傷付き防止が望まれる種々の用途に従来から広く
使用されている。
FE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂は、アルミニウ
ム合金に対する親和性がほとんどないため、アルミニウ
ム合金基材表面に直接フッ素樹脂を塗装、焼付けした場
合、基材表面に対するフッ素樹脂塗膜の密着性が弱く、
そこでフッ素樹脂塗装アルミニウム合金部材を製造する
にあたっては、一般に予めアルミニウム合金基材表面に
化学的エッチングによる粗面化処理や電気化学的エッチ
ングによる粗面化処理、あるいはブラッシングやブラス
トなどの機械的粗面化処理を施して微細な凹凸を形成し
ておき、その凹凸によるアンカー効果によってフッ素樹
脂塗膜の密着性を確保することが行なわれている。
やすいため、このピンホールを通じてアルミニウム合金
基材が腐食されやすく、そこでフッ素樹脂の塗装前に予
めアルミニウム合金基材表面に陽極酸化処理を施してお
き、フッ素樹脂塗膜の下地面を陽極酸化皮膜としておく
ことによって、耐食性を向上させることが従来から行な
われている。なおこの陽極酸化処理と前述のような基材
表面の粗面化処理とを併用する場合、陽極酸化処理前に
粗面化処理を行なって基材表面に微細な凹凸を形成し、
その後に陽極酸化処理を施すのが通常である。
ウム合金基材表面に粗面化処理を施し、陽極酸化皮膜を
形成してからフッ素樹脂の塗装、焼付けを行なえば、耐
食性が良好でしかもフッ素樹脂塗膜の密着性がある程度
良好なフッ素樹脂塗装アルミニウム合金部材が得られ
る。しかしながら実際にこのようにしてフッ素樹脂塗装
アルミニウム合金部材を製造した場合、必ずしも充分な
フッ素樹脂塗膜の密着性が得られるとは限らないのが実
情であった。
高めるべく、陽極酸化処理前の粗面化の程度を大きくす
れば、粗面の凹凸の程度や凹凸の形状によっては陽極酸
化皮膜が著しく脆弱化して剥落しやすくなり、その上に
フッ素樹脂塗膜を形成した場合に逆に素材に対するフッ
素樹脂塗膜の密着性が低下してしまうことがある。一
方、粗面化の程度が不足すれば、アンカー効果が充分に
得られないため、フッ素樹脂塗膜の充分な密着性を確保
することが困難となる。したがって陽極酸化処理前の粗
面化処理によっては、確実かつ安定して優れた密着性を
得ることは困難であった。
記同様な用途に用いられることがあるが、シリコン樹脂
の塗膜をアルミニウム合金基材表面に形成する場合に
も、フッ素樹脂塗膜の形成と同様な問題があった。
たもので、アルミニウム合金基材表面の陽極酸化皮膜上
にフッ素樹脂やそのほかシリコン樹脂などの樹脂を塗
装、焼付けした部材として、耐食性に優れるばかりでな
く、樹脂塗膜の密着性が確実かつ安定して優れた樹脂塗
装アルミニウム合金部材を提供することを目的とするも
てのある。
するべく本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、ア
ルミニウム合金基材表面の陽極酸化皮膜を、特定の厚
み、特定の硬さを有する封孔処理を施した皮膜として、
その皮膜に網目の径が特定の範囲内にあるネット状のク
ラックを形成し、そのネット状クラックに樹脂を侵入含
浸させることによって、耐食性と密着性とを兼ね備えた
樹脂塗装アルミニウム合金部材が得られることを見出
し、この発明をなすに至ったのである。
ルミニウム合金部材は、アルミニウム合金からなる基材
の表面層に、封孔処理が施された2〜30μmの膜厚の
陽極酸化皮膜が形成されており、かつこの陽極酸化皮膜
は、その硬さHvが膜厚T(μm)に応じ、 180≦Hv≦5T+250 を満たすように定められており、さらに前記陽極酸化皮
膜上に樹脂塗膜層が形成されており、また前記陽極酸化
皮膜にはネット状クラックが形成されていて、そのネッ
ト状クラックにおける各単位網目部分の最大径が5〜3
00μmの範囲内とされ、しかもそのネット状クラック
内に前記樹脂塗膜層から連続する樹脂が侵入含浸されて
いることを特徴とするものである。
ロビッカース硬さ)を意味するものとする。
ム合金部材の製造方法は、アルミニウム合金からなる基
材の表面に、硫酸浴を用いて浴温が20℃を越え35℃
以下でかつ電流密度が0.5A/dm2 以上の条件で陽
極酸化処理を施した後、封孔処理を行なって、厚みが2
〜30μmで硬さHvが膜厚T(μm)に対し、 180≦Hv≦5T+250 を満たす陽極酸化皮膜を形成し、しかる後、陽極酸化皮
膜表面に樹脂を塗装、焼付けして樹脂塗膜層を形成し、
これによって、陽極酸化皮膜にネット状クラックが形成
されていてかつネット状クラックの単位網目部分の最大
径が5〜300μmの範囲内にあり、しかもそのネット
状クラック内に前記樹脂塗膜層から樹脂が連続して侵入
含浸されている樹脂塗装アルミニウム合金部材を得るこ
とを特徴とするものである。
ム合金部材の製造方法は、請求項2に記載の樹脂塗装ア
ルミニウム合金部材の製造方法において、前記樹脂の焼
付けを、160℃以上で行なうことを特徴とするもので
ある。
ム合金部材の構成および作用について説明する。
の模式的な断面を図1に示し、また樹脂塗膜層を除去し
た状態での陽極酸化皮膜の表面状況(クラック発生状
況)を模式的に図2に示す。
表面部分には封孔処理を施された陽極酸化皮膜2が形成
され、その陽極酸化皮膜2上にフッ素樹脂あるいはシリ
コン樹脂等の樹脂塗膜層3が形成されている。そして前
記陽極酸化皮膜2には、図2に模式的に示すようなネッ
ト状のクラック4が形成されている。ここで、ネット状
のクラックとは、各クラックが陽極酸化皮膜の表面に平
行な面内において連続しており、かつそのクラックが多
数の箇所で前記面内において2方向以上に分岐して、し
かもその分岐した先のクラックもさらに連続しかつ2ケ
所以上に分岐している構造のクラックを意味する。具体
的には、亀甲状、モザイク状、格子状、その他各種不定
形状をなす種々の網目形状が複合したもの、ということ
ができる。
ラック4内には、図1に示すようにその上の樹脂塗膜層
3から連続する樹脂3Aが侵入含浸されている。ここ
で、ネット状クラック内への樹脂の侵入含浸は、樹脂塗
膜層を形成するための樹脂塗装焼付け時になされるが、
塗装焼付け処理後の冷却時に基材、陽極酸化皮膜が収縮
してクラックの開口度が縮小される際にクラック内の樹
脂が締め付けられ、しかもクラック内の樹脂はネット状
クラックに沿って面方向に連続、分岐したネット状をな
しているため、そのクラック内の樹脂と一体化している
樹脂塗膜層が陽極酸化皮膜に対して強力に保持され、極
めて高い密着性を示すことになる。
は、各単位網目部分の最大径L(図2参照)が、5〜3
00μmの範囲内にあることが必要である。単位網目部
分の最大径Lが5μm未満ではクラックの分布密度が高
くなり過ぎて陽極酸化皮膜が脆くなり、そのため逆に密
着性が低下してしまう。一方、逆に300μmを越える
場合には、陽極酸化皮膜への樹脂食い込み部分の分布密
度が少な過ぎて、樹脂塗膜層の充分な密着力向上効果が
得られない。
0μmの範囲内であることが必要である。陽極酸化皮膜
の膜厚が2μm未満ではネット状クラックを形成するこ
とが困難となり、また仮にネット状クラックが形成され
たとしてもその深さが浅く、それに伴なって樹脂の侵入
深さも小さくなるため、充分な密着力を得ることができ
ない。一方陽極酸化皮膜の膜厚を30μmを越えて厚く
しても、耐食性は飽和し、コスト上昇を招くだけであ
る。なお陽極酸化皮膜の厚みは、2〜30μmの範囲内
でも、特に10〜25μmの範囲内が好ましく、この範
囲内の場合にはネット状クラックの各単位網目部分の最
大径Lが20〜50μm程度となり、かつ樹脂を喰わえ
込む深さも充分となるため、樹脂塗膜層の密着性が特に
良好となる。
化皮膜の硬さが重要であり、前述のような単位網目部分
の最大径が5〜300μmの範囲内のネット状クラック
を形成するためには、陽極酸化皮膜が比較的軟質であっ
て、特に皮膜厚みT(μm)に応じ、マイクロビッカー
ス硬さHvで表される皮膜硬さが、[5T+250]の
値以下であることが必要であることが本発明者等の研究
によって判明した。但し、陽極酸化皮膜が過度に軟質で
その硬さHvが180未満では耐食性が著しく低下する
から、皮膜硬さHvは180以上であることも必要であ
る。結局、陽極酸化皮膜の硬さHvは、皮膜厚みT(μ
m)に応じて、 180≦Hv≦5T+250 を満たすことが必要である。この適正範囲を図示すれ
ば、図3の斜線領域内となる。
50]の値を越える場合には、発生するクラックがネッ
ト状とならずに一方向に進行しやすくなり、またたとえ
ネット状クラックが形成されたとしてもその単位網目部
分の最大径が300μmを越えやすくなり、その結果充
分な樹脂塗膜層の密着性が得られなくなる。そしてこれ
らの不都合な現象の発生の程度は、陽極酸化皮膜の膜厚
Tにも依存し、膜厚Tが薄いほどこれらの不都合な現象
が生じやすくなる。したがってこの発明では、皮膜硬さ
の上限を前述のように膜厚Tに応じて定めた。
膜の方が適正なネット状クラックを形成し易い理由は次
のように考えられる。
酸化皮膜に対して封孔処理を行なうことによりネット状
クラックの芽(起点)が形成され、その後の樹脂の塗装
焼付けのための加熱によってクラックがネット状に生
成、成長するが、陽極酸化皮膜が軟質であるということ
は、陽極酸化皮膜の内部や表面の欠陥が多いことを意味
し、その場合には封孔処理時に水和および物理的に吸着
される水分の量が多くなるため、封孔処理における陽極
酸化皮膜の体積膨張の割合が大きくなってクラックの芽
の発生数が多くなる。そしてその後の樹脂焼付け時の熱
膨張差によりクラックが発生する際においても、欠陥が
多い皮膜であるためクラックが伝播しやすくなり、その
結果ネット状クラックを容易に形成することができるの
である。さらに、封孔処理時に水和および物理的に吸着
されている水分は、樹脂焼付け時の加熱により離脱する
から、樹脂焼付け時には陽極酸化皮膜の収縮が起こり、
この収縮が原因となるクラックの発生、成長もあるが、
軟質の陽極酸化皮膜では、前述のように封孔処理時に水
和および物理的に吸着される水分の量が多くなるため、
樹脂焼付け時の加熱による水分の離脱も多くなり、その
ため陽極酸化皮膜の収縮が激しくなって、ネット状クラ
ックをより形成しやすくなる。
が、フッ素樹脂を用いる場合には、耐摩耗性、摺動潤滑
性等の点から10〜70μmの範囲内であることが好ま
しい。10μm未満ではこれらの効果が充分に得られ
ず、一方70μmを越えて厚くすることは、経済的に無
駄となるだけである。
組成は、基本的に特に限定されるものではなく、要は最
終的な用途、要求特性に応じて最適のものを選択すれば
良いが、陽極酸化処理−封孔処理−樹脂塗装焼付け処理
のプロセスによって陽極酸化皮膜にネット状のクラック
を生ぜしめやすいアルミニウム合金を用いることが望ま
しい。
部材の製造方法について説明する。
の製造にあたっては、常法によって製造されたアルミニ
ウム合金基材に対して、基本的には先ず陽極酸化処理を
施せば良いが、樹脂塗膜層の密着性をより向上させるた
め、あるいは樹脂塗装後の表面をマット状に調整するた
め、陽極酸化処理前に、必要に応じて予備処理として基
材表面に粗面化処理を施しても良い。
液あるいはアルカリエッチング液を用いた化学的粗面化
処理、あるいは電解エッチングを利用した電気化学的粗
面化処理、さらにはブラッシングやブラスト等の機械的
エッチングのいずれを用いても、あるいはこれらのいく
つかを組合せても良い。
クラックを形成させるためには、硫酸浴電解を適用し
て、高い浴温でかつ小電流密度で処理することが望まし
い。具体的には、浴温は20℃を越え35℃以下とし、
電流密度は0.5A/dm2 以上とする。浴温が20℃
以下では適正なネット状クラックを形成しにくくなり、
一方浴温が35℃を越えれば電解中における陽極酸化皮
膜の溶解が激しくなる。また電流密度が0.5A/dm
2 未満でもネット状クラックを形成しにくくなり、また
所定の厚みの皮膜を得るめたには要する電解時間が長く
なってしまう。なお電流密度の上限は特に規定しない
が、一般には3.0A/dm2 以下が好ましい。
なう必要がある。すなわち、封孔処理を行なっておくこ
とによってネット状クラックの芽(起点)を形成させ、
その後の樹脂の塗装焼付けにおいてネット状クラックを
発生、成長させることが可能となるのである。
の芽を充分に生成させるためには、80℃以上で10分
以上の浸漬処理、あるいは常圧下または加圧下での5分
以上の蒸気封孔処理を適用することが望ましい。浸漬封
孔の場合、蒸留水を用いるか、あるいは酢酸Ni、硫酸
Co等の封孔助剤を添加した封孔液を用いれば良い。こ
の浸漬処理の場合、封孔液の温度が80℃以下では、最
終的に単位網目部分の最大径が5〜300μmの範囲内
のネット状クラックを形成するための芽を生成させるこ
とが困難となり、また封孔処理の時間が10分未満でも
同様である。一方蒸気封孔の場合、処理時間が5分未満
でも同様に単位網目部分の最大径が5〜300μmの範
囲内のネット状クラックの芽を形成することが困難とな
る。
樹脂の塗装、焼付けを行なって、樹脂塗膜層を形成す
る。このような樹脂の焼付けのための加熱時において
は、基材のアルミニウム合金が熱膨張して、陽極酸化皮
膜との熱膨張差により、その前の封孔処理で生じたクラ
ックの芽が成長して相互に連続し、単位網目部分の最大
径が5〜300μmの範囲内の微細なネット状クラック
が形成される。ここで、上述のような基材のアルミニウ
ム合金の熱膨張によって、焼付け時における陽極酸化皮
膜の表面におけるクラックの開口幅は平均1μm以上と
なり、溶融した樹脂がクラック内に容易に侵入し、クラ
ック内に樹脂が充填されることになる。そして焼付け終
了後の冷却過程でアルミニウム合金基材が収縮するに伴
なって陽極酸化皮膜表面のクラックの開口幅が狭くな
り、クラック内の樹脂が強固に喰え込まれた状態とな
り、そのクラック内の樹脂に一体的に連続する塗膜層が
高い密着力で保持されることになる。
従って行なえば良く、例えば樹脂微粒子の懸濁液を塗布
または吹付けたりすれば良い。また塗装後の焼付けのた
めの加熱温度は、樹脂の種類によっても異なるが、フッ
素樹脂の場合、一般には300〜400℃の温度で10
〜60分程度加熱するのが通常である。なお樹脂の焼付
け時において適正なネット状クラックを形成するために
は、焼付けのための加熱温度を160℃以上とすること
が望ましい。
ラックがネット状に形成される理由については、次のよ
うに考えられる。
るにあたっては皮膜が体積膨張し、その後に封孔処理を
行なうことによって陽極酸化皮膜がさらに体積膨張す
る。しかしながら、陽極酸化皮膜と基材のアルミニウム
合金との界面は強固に密着しているため、陽極酸化皮膜
が平面方向に膨張することはできない。そのため封孔処
理を行なった後の陽極酸化皮膜は、平面方向に全方位か
ら均等に圧縮力を受けている。そしてこの圧縮力によっ
てクラックの芽(起点)が形成され、ネット状に割れる
ようなクラックの芽となる。その後、樹脂の塗装焼付け
時の加熱によって前述のようにアルミニウム合金基材が
熱膨張し、皮膜との熱膨張差によってクラックが生成、
成長して連続的なネット状クラックとなるのである。ま
た樹脂の塗装焼付け時には皮膜中に含まれる水分が離脱
して皮膜の収縮も生じ、これもネット状クラックの生
成、成長に寄与する。
(μm)に応じて[5T+250]以下となるように軟
質に設定しておくことおよび陽極酸化処理を施しておく
ことが、適正なネット状クラックを形成するために重要
である。
質な陽極酸化皮膜では、封孔処理時に水和および物理的
に吸着される水分が多くなり、封孔処理における皮膜の
体積膨張が大きくなってクラックの芽の数が多くなり、
またその後の樹脂焼付け時においても皮膜の欠陥が多い
ためにクラックの伝播が生じやすくなり、さらには塗装
焼付け時の加熱により皮膜から離脱する水分量も多くな
って塗装焼付け加熱時の皮膜の収縮も激しくなり、これ
らが総合的に作用して、適正なネット状クラックを形成
することが可能となるのである。
面内全方位の圧縮力が充分に与えられないため、その後
の樹脂塗装焼付けにおいて仮にクラックが生じたとして
も、全方向に連続するネット状クラックとはならない。
したがって陽極酸化処理皮膜の硬さ条件と封孔処理のい
ずれが欠けても、この発明で目的とする単位網目部分の
最大径が5〜300μmの範囲内の適正なネット状クラ
ックを形成することは困難となるのである。
とし、表1の条件符号A,B,Cに示すそれぞれの条件
で粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理をその順に施し
た。さらに陽極酸化皮膜の表面にPFA樹脂を20μm
の厚みで塗布した後、380℃で30分の焼付けを行な
った。
の基材表面の粗度(Rz)を測定するとともに、陽極酸
化処理および封孔処理後の陽極酸化皮膜表面の硬さH
v、皮膜厚みを調べた。また最終的に樹脂の塗装、焼付
けを行なった後に改めて表面の塗膜層を除去して陽極酸
化皮膜表面のクラック発生状況を調べた。さらに塗膜層
の密着性(耐剥離性)評価として、JIS 5400に
準拠した手かき法による鉛筆引っかき値を調べた。これ
らの結果を表1中に併せて示す。なお表1中において
「クラック径」は、ネット状のクラックが形成された場
合における単位網目部分の最大径を示し、また「クラッ
ク幅」はネット状クラックが形成されずに一方向に連続
するクラックが形成された場合における隣り合うクラッ
クの平均間隔を示す。これらについては後に示す表2〜
表4においても同様である。
この発明の範囲内の例、条件符号Cは陽極酸化皮膜の硬
さHvが高過ぎた比較例である。本発明例A,Bではい
ずれも適正な範囲内のネット状クラックを形成すること
ができ、陽極酸化皮膜に対する樹脂塗膜層の密着性も良
好であった。但し、本発明例Bの場合は、本発明例Aの
場合よりもネット状クラックの単位網目部分の最大径
(クラック径)が若干大きいため、本発明例Aの場合よ
りも樹脂塗膜層の密着性が劣っていた。一方比較例Cの
場合は、陽極酸化皮膜の硬さが高過ぎたため、ネット状
クラックが形成されずに、一方向に連続するクラックが
生じてしまい、この場合には樹脂塗膜層の密着性が著し
く劣っていた。
−0.1%Si合金の圧延板を基材とし、表2の条件符
号D,E,Fに示すそれぞれの条件で陽極酸化処理、封
孔処理をその順に施した。さらに陽極酸化皮膜の表面に
PFA樹脂を20μmの厚みで塗布した後、380℃で
30分の焼付けを行なった。
(Rz)を測定するとともに、実施例1と同様に陽極酸
化処理および封孔処理後の陽極酸化皮膜表面の硬さH
v、皮膜厚み、陽極酸化皮膜表面のクラック発生状況、
塗膜層の鉛筆引っかき値を調べた。これらの結果を表2
中に併せて示す。
この発明の範囲内の例、条件符号Fは陽極酸化皮膜の硬
さHvが高過ぎた比較例である。本発明例D,Eではい
ずれも適正な範囲内のネット状クラックを形成すること
ができ、陽極酸化皮膜に対する樹脂塗膜層の密着性も良
好であった。一方比較例Fの場合は、陽極酸化皮膜の硬
さが高過ぎたため、ネット状クラックの単位網目部分の
最大径(クラック径)が300μmを大幅に越えてしま
い、この場合には樹脂塗膜層の密着性が劣っていた。
件符号G,Hに示すそれぞれの条件で陽極酸化処理、封
孔処理をその順に施した。さらに陽極酸化皮膜の表面に
PFA樹脂を20μmの厚みで塗布した後、380℃で
30分の焼付けを行なった。
(Rz)を測定するとともに、実施例1と同様に陽極酸
化処理および封孔処理後の陽極酸化皮膜表面の硬さH
v、皮膜厚み、陽極酸化皮膜表面のクラック発生状況、
塗膜層の鉛筆引っかき値を調べた。これらの結果を表3
中に併せて示す。
囲内の例、条件符号Hは陽極酸化皮膜の硬さHvが高過
ぎた比較例である。本発明例Gでは適正な範囲内のネッ
ト状クラックを形成することができ、陽極酸化皮膜に対
する樹脂塗膜層の密着性も良好であった。一方比較例H
の場合は、陽極酸化皮膜の硬さが高過ぎたため、ネット
状クラックが形成されずに、一方向に連続するクラック
が生じてしまい、この場合には樹脂塗膜層の密着性が著
しく劣っていた。
合金の圧延板を基材とし、表4の条件符号I,Jに示す
それぞれの条件で粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理
をその順に施した。さらに陽極酸化皮膜の表面にPFA
樹脂を20μmの厚みで塗布した後、380℃で30分
の焼付けを行なった。
に粗面化処理直後の基材表面の粗度(Rz)を測定する
とともに、陽極酸化処理および封孔処理後の陽極酸化皮
膜表面の硬さHv、皮膜厚み、陽極酸化皮膜表面のクラ
ック発生状況、塗膜層の鉛筆引っかき値を調べた。これ
らの結果を表4中に併せて示す。
囲内の例、条件符号Jは陽極酸化皮膜の硬さHvが高過
ぎた比較例である。本発明例Iでは適正な範囲内のネッ
ト状クラックを形成することができ、陽極酸化皮膜に対
する樹脂塗膜層の密着性も良好であった。一方比較例J
の場合は、ネット状クラックは形成されたが、陽極酸化
皮膜の硬さが高過ぎたため、ネット状クラックの網目部
分の最大径(クラック径)が1000μmと著しく大き
くなり、樹脂塗膜層の密着性も劣ってしまった。
を適切に調整しかつ封孔処理を施しておくことによっ
て、封孔処理−樹脂塗装焼付けを通じて陽極酸化皮膜に
単位網目部分最大径が5〜300μmの範囲内の適切な
ネット状クラックを形成し、さらに表面の樹脂塗膜層か
ら一体に連続する樹脂を、その下側の陽極酸化皮膜に形
成されたネット状クラック内に侵入含浸させて、樹脂塗
膜層を強固に固定することができるため、樹脂塗膜層の
密着性が確実かつ安定して優れ、しかも陽極酸化皮膜の
存在により耐食性も優れた樹脂塗装アルミニウム合金部
材を得ることができる。
例を示す模式的な縦断面図である。
ける樹脂を除去した状態での陽極酸化皮膜の表面のクラ
ック発生状況の一例を模式的に示す平面図である。
適正な範囲を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 アルミニウム合金からなる基材の表面層
に、封孔処理が施された2〜30μmの膜厚の陽極酸化
皮膜が形成されており、かつこの陽極酸化皮膜は、その
硬さHvが膜厚T(μm)に応じ、 180≦Hv≦5T+250 を満たすように定められており、さらに前記陽極酸化皮
膜上に樹脂塗膜層が形成されており、また前記陽極酸化
皮膜にはネット状クラックが形成されていて、そのネッ
ト状クラックにおける各単位網目部分の最大径が5〜3
00μmの範囲内とされ、しかもそのネット状クラック
内に前記樹脂塗膜層から連続する樹脂が侵入含浸されて
いることを特徴とする、樹脂塗膜層の密着性に優れた樹
脂塗装アルミニウム合金部材。 - 【請求項2】 アルミニウム合金からなる基材の表面
に、硫酸浴を用いて浴温が20℃を越え35℃以下でか
つ電流密度が0.5A/dm2 以上の条件で陽極酸化処
理を施した後、封孔処理を行なって、厚みが2〜30μ
mで硬さHvが膜厚T(μm)に対し、 180≦Hv≦5T+250 を満たす陽極酸化皮膜を形成し、しかる後、陽極酸化皮
膜表面に樹脂を塗装、焼付けして樹脂塗膜層を形成し、
これによって、陽極酸化皮膜にネット状クラックが形成
されていてかつネット状クラックの単位網目部分の最大
径が5〜300μmの範囲内にあり、しかもそのネット
状クラック内に前記樹脂塗膜層から樹脂が連続して侵入
含浸されている樹脂塗装アルミニウム合金部材を得るこ
とを特徴とする、樹脂塗装アルミニウム合金部材の製造
方法。 - 【請求項3】 請求項2に記載の樹脂塗装アルミニウム
合金部材の製造方法において、 前記樹脂の焼付けを、160℃以上で行なうことを特徴
とする、樹脂塗装アルミニウム合金部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28792197A JP3210611B2 (ja) | 1997-10-03 | 1997-10-03 | 樹脂塗装アルミニウム合金部材およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP28792197A JP3210611B2 (ja) | 1997-10-03 | 1997-10-03 | 樹脂塗装アルミニウム合金部材およびその製造方法 |
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---|---|
JPH11104560A JPH11104560A (ja) | 1999-04-20 |
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