JP2010144224A - 金属皮膜の改質処理方法及びアルミ基合金積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の金属皮膜の改質処理方法は、コールドスプレー法にて基材2の表面にアルミニウム基合金を積層した金属皮膜3に対して、この金属皮膜3が緻密化するようにショットピーニングを施すことを特徴とする。コールドスプレー法で得られた金属皮膜3に対してショットピーニングを施すと、靭性が高められた緻密化層4が得られる。
【選択図】図1
Description
そこで、粉末同士が界面を形成しないように皮膜を緻密化することも考えられるが、皮膜を緻密化すると、皮膜の強度が高められる反面、靭性が低下するという新たな問題が生じる。
一般に、ショットピーニングは、素材の表面に適用することで、その素材の強度を高める技術として知られている。そして、その素材は強度が高められる反面、高硬度化(低靭性化)することとなる。しかしながら、コールドスプレー法で得られた皮膜に対してショットピーニングを施すと、逆に靭性が高められることを本発明者らは新たに見出して本発明に到達した。つまり、本発明の改質処理方法によれば、コールドスプレー法で得られる金属皮膜の緻密化と高靭性化とを両立させることができる。
また、このような金属皮膜の改質処理方法においては、前記ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径が、100μm〜500μmであることが望ましい。
そして、前記課題を解決する本発明のアルミ基合金積層体は、前記した改質処理方法で処理された金属皮膜を有するアルミ基合金積層体であって、前記金属皮膜の表層に緻密化層が形成されていることを特徴とする。
また、このようなアルミ基合金積層体においては、前記緻密化層の厚さが、1μm〜150μmであることが望ましい。
金属皮膜3の厚さは、適宜変更することができるが、次に説明する緻密化層4の厚さに応じて適宜に設定することができ、2mm以下で設定すればよいが、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、2mmを超えてもよい。
本実施形態に係る改質方法は、基材2(図1参照)の表面にコールドスプレー法でアルミニウム基合金を積層して金属皮膜3(図1参照)を形成する皮膜形成工程と、この金属皮膜3が緻密化するようにショットピーニングを施す緻密化工程とを有している。
ラバルノズルに供給する作動ガスの温度は、使用されるアルミニウム合金の融点又は軟化点よりも低い温度に設定される。
そして、この皮膜形成工程では、基材2に衝突したアルミニウム合金粉末の粒子は塑性変形して金属皮膜3を形成する。
緻密化工程でのショットピーニングは、前記皮膜成形工程で得られた金属皮膜3の表層に対して行われる。
以上のような改質方法では、前記したように、コールドスプレー法を使用することで、加速された作動ガスにアルミニウム合金粉末が同伴して基材2に高速で衝突する。その結果、アルミニウム合金粉末の粒子は、基材2の表面で塑性変形して金属皮膜3を形成する。そして、この改質方法では、金属皮膜3にショットピーニングが施されることで、金属皮膜3の表層に緻密化層4が形成される。
そして、この金属皮膜3にショットピーニングが施されることによって、アルミニウム合金粉末の内部の歪みは更に増大する。
一方、このような内部の組織状態は、回復・再結晶の駆動力が高くなっている状態にある。
そして、ショットピーニングが施された際の加工発熱によって、前記した回復・再結晶が金属皮膜3内で発現し、金属皮膜3の表層が軟化する、言い換えれば、高靭性化した緻密化層4が形成されるものと考えられる。
したがって、本実施形態に係る改質方法によれば、コールドスプレー法によって形成された高強度で低延性の金属皮膜3の表層に、ショットピーニングによって高靭性の緻密化層4が形成されたアルミ基合金積層体1を製造することができる。つまり、この改質方法によれば、コールドスプレー法で得られる金属皮膜3の緻密化と高靭性化とを両立させることができる。
前記実施形態での改質方法は、各種機械部品としての利用可能なアルミ基合金積層体1の製造方法に適用できるほか、物品の表面を金属皮膜3で被覆して補修する方法に適用するものであってもよい。
(実施例1)
<コールドスプレー法による金属皮膜の形成>
ここでは、基材2(図1参照、以下、符号は省略する)として、アルミ鋳物2種A(AC2B:Al−Cu−Si)からなる、60mm×30mm×4mmのものを準備した。
この基材の表面に、コールドスプレー法によってアルミニウム合金粉末を噴射して厚さ600μmの金属皮膜3(図1参照、以下、符号は省略する)を形成した。この工程は、前記した皮膜形成工程に相当する。
使用したアルミニウム合金粉末は、組成がアルミニウム94.96原子%(90.46質量%)、鉄1.68原子%(3.31質量%)、クロム2.24原子%(4.11質量%)、チタン0.56原子%(0.95質量%)、及びコバルト0.56原子%(1.17質量%)であって準結晶粒子分散アルミニウム合金からなり、平均粒径が14.97μmであった。
そして、基材の表面に対するアルミニウム合金粉末の噴射は、スプレーガンのトラバース速度を100mm/sに設定し、トラバースピッチを2mmに設定し、トラバース回数(重ね数)を4回に設定して行った。ちなみに、アルミニウム合金粉末の噴射量は、10g/minに設定した。
次に、コールドスプレー法によって得られた金属皮膜にショットピーニングを施すことによって、金属皮膜の表層に緻密化層4(図1参照、以下、符号は省略する)を有するアルミ基合金積層体1(図1参照、以下、符号は省略する)を製造した。この工程は、前記した緻密化工程に相当する。
ここでのショットピーニングは、高圧空気でショット材を高速で投射するエアショットピーニング装置を使用した。
このショットピーニングは、球形のショット材を使用した。このショット材の材料(以下、ショット粒子種という)は、工具鋼であった。このショット材の粒子径(以下、ショット粒子径という)は100μmであった。
そして、このエアショットピーニング装置でのショット圧力は、0.6MPaに設定し、ショット時間は30secに設定した。
ショットピーニングが施された後の金属皮膜の最大皮膜厚さ(以下、単に「最大皮膜厚さ」という)は596μm(緻密化層を含む)となった。そして、金属皮膜の表層に形成された緻密化層の厚さ(以下、「ショット影響厚さ」ということがある)は、6μmであった。
実施例1で行ったショットピーニングにおける、前記したショット粒子種、ショット粒子径、ショット圧力、ショット時間、最大皮膜厚さ、及びショット影響厚さを次の表1に記した。
実施例2から実施例15では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対して、表1に示す条件でショットピーニングを施した。金属皮膜の表層に形成された最大皮膜厚さ、及びショット影響厚さを表1に示す。
比較例1では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対しては、ショットピーニングを施さなかった。
比較例2から比較例13では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対して、表1に示す条件でショットピーニングを施したが、比較例2から比較例13では、金属皮膜の表層に緻密化層が形成されなかった。つまり、比較例2から比較例13では、金属皮膜が緻密化するようにショットピーニングが行われなかった。
更に具体的に説明すると、比較例2から比較例3では、緻密化層が形成される程度にショットピーニングが実効しなかった。
そして、比較例8及び比較例13では金属皮膜の一部又は全部が剥離して緻密化層が形成されるようにショットピーニングが実効しなかった。
<ショットピーニングによる金属皮膜の緻密化>
表1に示すように、実施例1から実施例15では、ショットピーニングによって金属皮膜の表層に緻密化層が形成された。これに対して、比較例1から比較例13では緻密化層が形成されなかった。
以上のことから、ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径(表1の「ショット粒子径」参照)は100μm〜500μmが望ましいことが確認された。
実施例7及び実施例11で製造されたアルミ基合金積層体の緻密化層における靭性を評価した。
ここでは、実施例7及び実施例11で製造されたアルミ基合金積層体において、図3(b)及び図5(b)に示す、ショット影響部(緻密化層)のビッカース硬度と、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍(金属皮膜の緻密化層界面近傍)のビッカース硬度とが測定された。
そして、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍における任意の2点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ267.5、及び254.6であった。
そして、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍における任意の2点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ261.1、及び248.2であった。
2 基材
3 金属皮膜
4 緻密化層
Claims (4)
- コールドスプレー法にて基材の表面にアルミニウム基合金を積層した金属皮膜に対して、この金属皮膜が緻密化するようにショットピーニングを施すことを特徴とする金属皮膜の改質処理方法。
- 前記ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径が、100μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属皮膜の改質処理方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の改質処理方法で処理された金属皮膜を有するアルミ基合金積層体であって、前記金属皮膜の表層に緻密化層が形成されていることを特徴とするアルミ基合金積層体。
- 前記緻密化層の厚さが、1μm〜150μmであることを特徴とする請求項3に記載のアルミ基合金積層体。
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