JP2010144224A - 金属皮膜の改質処理方法及びアルミ基合金積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、コールドスプレー法で得られる金属皮膜の緻密化と高靭性化とを両立させることができる改質処理方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の金属皮膜の改質処理方法は、コールドスプレー法にて基材2の表面にアルミニウム基合金を積層した金属皮膜3に対して、この金属皮膜3が緻密化するようにショットピーニングを施すことを特徴とする。コールドスプレー法で得られた金属皮膜3に対してショットピーニングを施すと、靭性が高められた緻密化層4が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、コールドスプレー法によって基材の表面に形成された金属皮膜の改質処理方法、及びこの改質処理方法で得られるアルミ基合金積層体に関する。
従来、コールドスプレー(Cold Spray)法で基材の表面に皮膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、皮膜材料の融点又は軟化点よりも低い温度に設定した超音速で流れるガスに皮膜材料の粉末を同伴させることによって、この粉末を基材の表面に衝突させるものである。この方法では、粉末が高速で基材の表面に衝突した際に、固相状態のままで粉末の粒子が塑性変形することによって皮膜が形成される。このようなコールドスプレー法で形成された皮膜は、例えば溶射で得られた皮膜と比べて材料酸化物の巻き込みが少なく、緻密な膜とされている。
特開2006−179856号公報
しかしながら、コールドスプレー法で得られた皮膜においては、基材の表面に堆積した粉末の変形量が必ずしも一様ではないために、粉末の変形量が不十分な部分では堆積した粉末同士の間に明確な界面が形成される。したがって、高強度性を期待してコールドスプレー法で得られた積層体を使用すると、界面を形成した皮膜の不良部分が起点となって、積層体の破壊が進行する恐れがある。特に、疲労強度の向上を狙ってこの積層体を使用する場合には、その傾向が顕著となる。
そこで、粉末同士が界面を形成しないように皮膜を緻密化することも考えられるが、皮膜を緻密化すると、皮膜の強度が高められる反面、靭性が低下するという新たな問題が生じる。
そこで、本発明の課題は、コールドスプレー法で得られる金属皮膜の緻密化と高靭性化とを両立させることができる改質処理方法、及びこの改質処理方法で得られるアルミ基合金積層体を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の金属皮膜の改質処理方法は、コールドスプレー法にて基材の表面にアルミニウム基合金を積層した金属皮膜に対して、この金属皮膜が緻密化するようにショットピーニングを施すことを特徴とする。
一般に、ショットピーニングは、素材の表面に適用することで、その素材の強度を高める技術として知られている。そして、その素材は強度が高められる反面、高硬度化(低靭性化)することとなる。しかしながら、コールドスプレー法で得られた皮膜に対してショットピーニングを施すと、逆に靭性が高められることを本発明者らは新たに見出して本発明に到達した。つまり、本発明の改質処理方法によれば、コールドスプレー法で得られる金属皮膜の緻密化と高靭性化とを両立させることができる。
また、このような金属皮膜の改質処理方法においては、前記ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径が、100μm〜500μmであることが望ましい。
そして、前記課題を解決する本発明のアルミ基合金積層体は、前記した改質処理方法で処理された金属皮膜を有するアルミ基合金積層体であって、前記金属皮膜の表層に緻密化層が形成されていることを特徴とする。
また、このようなアルミ基合金積層体においては、前記緻密化層の厚さが、1μm〜150μmであることが望ましい。
本発明によれば、コールドスプレー法で得られる金属皮膜の緻密化と高靭性化とを両立させることができる改質処理方法、及びこの改質処理方法で得られるアルミ基合金積層体を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ここで参照する図面において、図1は、本発明の金属皮膜の改質処理方法(以下、単に「改質方法」ということがある)によって得られたアルミ基合金積層体の模式図である。
図1に示すように、後記する改質方法によって得られるアルミ基合金積層体1は、基材2の表面に、金属皮膜3を備えている。そして、金属皮膜3の表層には、緻密化層4が形成されている。
前記基材2としては、その表面に金属皮膜3を積層することができれば特に制限はなく、金属及び非金属のいずれであっても使用することができ、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタン、ステンレス、セラミクス、ガラス、木材等が挙げられる。中でもアルミニウムやマグネシウムを含むものが望ましく、特にアルミニウム合金が望ましい。
本実施形態での金属皮膜3は、後記するコールドスプレー法で得られたものであって、基材2の表面に積層されたアルミニウム合金で形成されている。このアルミニウム合金としては、特に制限はないが、準結晶粒子分散アルミニウム合金又はアモルファス粒子分散アルミニウム合金が望ましい。ちなみに、準結晶粒子分散アルミニウム合金及びアモルファス粒子分散アルミニウム合金のマトリクスは、アルミ結晶相又はアルミ過飽和固溶体相であることが望ましい。
金属皮膜3の厚さは、適宜変更することができるが、次に説明する緻密化層4の厚さに応じて適宜に設定することができ、2mm以下で設定すればよいが、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、2mmを超えてもよい。
緻密化層4は、コールドスプレー法で得られた金属皮膜3に後記するショットピーニングを施して形成されたものであって、コールドスプレー法で得られた金属皮膜3の表層が緻密化、かつ高靭性化して形成されたものである。つまり、ショットピーニングの影響を受けていない、より深部の金属皮膜3部分よりも、表層の緻密化層4は緻密性及び靭性が高められている。言い換えれば、緻密化層4は、ショットピーニングの影響を受けて密度が高められると共に、硬度(例えばHv)が低下している。
緻密化層4の厚さは、アルミ基合金積層体1の用途に応じて適宜に設定することができるが、1μm〜150μmであることが望ましい。緻密化層4の厚さをこの範囲となるように制御することで、金属皮膜3における緻密性及び靭性といった皮膜特性をより確実に向上させることができると共に、より容易にかつ確実に金属皮膜3を改質する(緻密化及び高靭性化する)ことができる。
次に、本実施形態に係る改質方法について説明する。
本実施形態に係る改質方法は、基材2(図1参照)の表面にコールドスプレー法でアルミニウム基合金を積層して金属皮膜3(図1参照)を形成する皮膜形成工程と、この金属皮膜3が緻密化するようにショットピーニングを施す緻密化工程とを有している。
コールドスプレー法は、後記するアルミニウム合金粉末を基材2の表面に噴射して金属皮膜3を形成するものである。
本実施形態におけるコールドスプレー法では、ラバルノズルにアルミニウム合金粉末及び作動ガス(プロセスガス)が供給されることによって、作動ガスが加速されると共に、加速された作動ガスにアルミニウム合金粉末が同伴する。
前記アルミニウム合金粉末としては、前記した金属皮膜3を構成する素材からなるものでよく、具体的には、前記したように、アルミニウム合金からなるものが望ましく、中でも準結晶粒子分散アルミニウム合金又はアモルファス粒子分散アルミニウム合金が望ましい。
このようなアルミニウム合金粉末の粒子径は、アルミ基合金積層体1(図1参照)の用途に応じて適宜に設定することができるが、200μm以下のものが望ましく、150μm以下のものがより望ましい。また、平均粒子径は、0.1〜50μmが望ましい。
前記作動ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、空気等が挙げられる。ラバルノズルに供給する作動ガスの圧力は、後記するアルミニウム合金粉末の速度に応じて調節される。
ラバルノズルに供給する作動ガスの温度は、使用されるアルミニウム合金の融点又は軟化点よりも低い温度に設定される。
皮膜形成工程では、アルミニウム合金粉末を同伴させる作動ガスの速度が、基材2に衝突したアルミニウム合金粉末の粒子が塑性変形可能な速度となるように設定される。つまり、この速度は、いわゆる臨界速度以上に設定される。
そして、この皮膜形成工程では、基材2に衝突したアルミニウム合金粉末の粒子は塑性変形して金属皮膜3を形成する。
次に、皮膜形成工程の後に実施される緻密化工程について説明する。
緻密化工程でのショットピーニングは、前記皮膜成形工程で得られた金属皮膜3の表層に対して行われる。
ショットピーニングとしては、高圧空気でショット材を高速で投射するエアショットピーニング装置を使用することができる。このショットピーニングは、これに限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、例えば、超音波式ショットピーニング装置を使用するものであってもよい。
ショットピーニングに使用するショット材としては、例えば、金属、セラミック、ガラス等の材料からなる粒子が挙げられる。このショット材は球形のものが望ましい。そして、ショット材は、金属皮膜3の硬度よりも高いものが選択される。
ショット材の粒子径(以下、ショット粒子径という)は、使用するショット材の材料によって適宜に設定することができる。ちなみに、鋼系材料からなるショット材のショット粒子径は、100μm〜500μmが望ましく、150μm〜400μmが更に望ましい。このような範囲にショット粒子径を設定したショット材を使用することで、金属皮膜3の剥離や欠損等の損傷を低減しつつ、金属皮膜3をより確実に緻密化することができる。
ショットピーニングのショット圧力、及びショット時間は、緻密化層4(図1参照)の厚さが、1μm〜150μmとなるように調節することが望ましい。
この緻密化工程においては、金属皮膜3にショットピーニングが施されることによって、金属皮膜3の表層に緻密化層4が形成されることとなる。このように緻密化層4が形成されることで、前記したアルミ基合金積層体1(図1参照)は完成するが、本実施形態に係る改質方法においては、緻密化工程の後にアルミ基合金積層体1に熱処理を施してもよい。このように熱処理を施すことで、緻密化層4を有する金属皮膜3の皮膜特性が更に改善される。
次に、本発明の改質方法の原理について説明しつつ、この改質方法及びアルミ基合金積層体の作用効果について説明する。
以上のような改質方法では、前記したように、コールドスプレー法を使用することで、加速された作動ガスにアルミニウム合金粉末が同伴して基材2に高速で衝突する。その結果、アルミニウム合金粉末の粒子は、基材2の表面で塑性変形して金属皮膜3を形成する。そして、この改質方法では、金属皮膜3にショットピーニングが施されることで、金属皮膜3の表層に緻密化層4が形成される。
このような改質方法においては、コールドスプレー法で金属皮膜3を形成した際に、塑性変形したアルミニウム合金粉末の内部に大きな歪みを蓄積している。
そして、この金属皮膜3にショットピーニングが施されることによって、アルミニウム合金粉末の内部の歪みは更に増大する。
一方、このような内部の組織状態は、回復・再結晶の駆動力が高くなっている状態にある。
そして、ショットピーニングが施された際の加工発熱によって、前記した回復・再結晶が金属皮膜3内で発現し、金属皮膜3の表層が軟化する、言い換えれば、高靭性化した緻密化層4が形成されるものと考えられる。
したがって、本実施形態に係る改質方法によれば、コールドスプレー法によって形成された高強度で低延性の金属皮膜3の表層に、ショットピーニングによって高靭性の緻密化層4が形成されたアルミ基合金積層体1を製造することができる。つまり、この改質方法によれば、コールドスプレー法で得られる金属皮膜3の緻密化と高靭性化とを両立させることができる。
そして、このような改質方法で得られたアルミ基合金積層体1は、表層が緻密性及び靭性に優れているので、応力集中が発生しやすい表層からの破壊の発生を効果的に抑制することができる。特に、このアルミ基合金積層体1は、熱疲労強度に優れることとなる。
本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態での改質方法は、各種機械部品としての利用可能なアルミ基合金積層体1の製造方法に適用できるほか、物品の表面を金属皮膜3で被覆して補修する方法に適用するものであってもよい。
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
(実施例1)
<コールドスプレー法による金属皮膜の形成>
ここでは、基材2(図1参照、以下、符号は省略する)として、アルミ鋳物2種A(AC2B:Al−Cu−Si)からなる、60mm×30mm×4mmのものを準備した。
この基材の表面に、コールドスプレー法によってアルミニウム合金粉末を噴射して厚さ600μmの金属皮膜3(図1参照、以下、符号は省略する)を形成した。この工程は、前記した皮膜形成工程に相当する。
使用したアルミニウム合金粉末は、組成がアルミニウム94.96原子%(90.46質量%)、鉄1.68原子%(3.31質量%)、クロム2.24原子%(4.11質量%)、チタン0.56原子%(0.95質量%)、及びコバルト0.56原子%(1.17質量%)であって準結晶粒子分散アルミニウム合金からなり、平均粒径が14.97μmであった。
コールドスプレー法では、長さが150mmのラバルノズルをスプレーガンとして使用すると共に、このスプレーガンには400℃の作動ガス(ヘリウム)を3MPaで供給した。また、スプレーガンの噴出口と基材の表面との距離は、20mmに設定した。
そして、基材の表面に対するアルミニウム合金粉末の噴射は、スプレーガンのトラバース速度を100mm/sに設定し、トラバースピッチを2mmに設定し、トラバース回数(重ね数)を4回に設定して行った。ちなみに、アルミニウム合金粉末の噴射量は、10g/minに設定した。
<ショットピーニングによる金属皮膜の緻密化>
次に、コールドスプレー法によって得られた金属皮膜にショットピーニングを施すことによって、金属皮膜の表層に緻密化層4(図1参照、以下、符号は省略する)を有するアルミ基合金積層体1(図1参照、以下、符号は省略する)を製造した。この工程は、前記した緻密化工程に相当する。
ここでのショットピーニングは、高圧空気でショット材を高速で投射するエアショットピーニング装置を使用した。
このショットピーニングは、球形のショット材を使用した。このショット材の材料(以下、ショット粒子種という)は、工具鋼であった。このショット材の粒子径(以下、ショット粒子径という)は100μmであった。
そして、このエアショットピーニング装置でのショット圧力は、0.6MPaに設定し、ショット時間は30secに設定した。
ショットピーニングが施された後の金属皮膜の最大皮膜厚さ(以下、単に「最大皮膜厚さ」という)は596μm(緻密化層を含む)となった。そして、金属皮膜の表層に形成された緻密化層の厚さ(以下、「ショット影響厚さ」ということがある)は、6μmであった。
実施例1で行ったショットピーニングにおける、前記したショット粒子種、ショット粒子径、ショット圧力、ショット時間、最大皮膜厚さ、及びショット影響厚さを次の表1に記した。
(実施例2から実施例15)
実施例2から実施例15では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対して、表1に示す条件でショットピーニングを施した。金属皮膜の表層に形成された最大皮膜厚さ、及びショット影響厚さを表1に示す。
図2から図7に実施例で製造した得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真を示す。
図2(a)は、実施例4で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図2(b)は、図2(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図2(c)は、図2(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図2(a)中の皮膜の厚さ(520μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図2(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示している。
図3(a)は、実施例7で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図3(b)は、図3(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図3(c)は、図3(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図3(a)中の皮膜の厚さ(520μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図3(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示し、図3(c)中のHvは後記するビッカース硬度の測定ポイントを示している。
図4(a)は、実施例10で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図4(b)は、図4(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図4(c)は、図4(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図4(a)中の皮膜の厚さ(520μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図4(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示している。
図5(a)は、実施例11で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図5(b)は、図5(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図5(c)は、図5(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図5(a)中の皮膜の厚さ(450μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図5(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示し、図5(c)中のHvは後記するビッカース硬度の測定ポイントを示している。
図6(a)は、実施例12で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図6(b)は、図6(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図6(c)は、図6(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図6(a)中の皮膜の厚さ(280μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図6(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示している。
図7(a)は、実施例13で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図7(b)は、図7(a)中の基材と皮膜(金属皮膜)との界面近傍における拡大写真、図7(c)は、図7(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。なお、図7(a)中の皮膜の厚さ(120μm)は金属皮膜の平均厚さを示し、図7(b)中の「ショット影響部」の用語は表1中の「ショット影響厚さ」を示している。
(比較例1)
比較例1では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対しては、ショットピーニングを施さなかった。
図8(a)は、比較例1で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、図8(b)は、図8(a)中の皮膜(金属皮膜)における表層の拡大写真である。
(比較例2から比較例13)
比較例2から比較例13では、金属皮膜を実施例1と同様に基材の表面に形成した。そして、この金属皮膜に対して、表1に示す条件でショットピーニングを施したが、比較例2から比較例13では、金属皮膜の表層に緻密化層が形成されなかった。つまり、比較例2から比較例13では、金属皮膜が緻密化するようにショットピーニングが行われなかった。
更に具体的に説明すると、比較例2から比較例3では、緻密化層が形成される程度にショットピーニングが実効しなかった。
そして、比較例8及び比較例13では金属皮膜の一部又は全部が剥離して緻密化層が形成されるようにショットピーニングが実効しなかった。
図9は、比較例8で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真である。なお、図9中の皮膜(最大174μm)は表1に示す最大皮膜厚さを示している。
(実施例及び比較例で得られたアルミ基合金積層体の評価)
<ショットピーニングによる金属皮膜の緻密化>
表1に示すように、実施例1から実施例15では、ショットピーニングによって金属皮膜の表層に緻密化層が形成された。これに対して、比較例1から比較例13では緻密化層が形成されなかった。
図8(a)に示すように、比較例1では、コールドスプレー法で形成された皮膜(金属皮膜)にショットピーニングが施されていないので緻密化層が認められない。そして、図8(a)及び(b)に示すように、皮膜(金属皮膜)の表層、中心、及び基材との界面近傍のそれぞれにおいて、コールドスプレー法で噴射したアルミニウム合金粉末の個々の輪郭が明瞭に観察され、比較例1のアルミ基合金積層体はアルミニウム合金粉末同士の接合状態が不十分であることが確認された。
これに対して、図2から図7に示すように、実施例4、実施例7、実施例10、実施例11、実施例12、及び実施例13では、各図中に示すショット影響部の厚さで緻密化層の形成が確認された。そして、各ショット影響部(緻密化層)では、ショット影響部より下方の皮膜(金属皮膜)と比較してアルミニウム合金粉末が大きく変形することで緻密化していることが確認された。そして、図7に示す実施例13では、ショット影響部(緻密化層)におけるアルミニウム合金粉末の個々の輪郭が確認されない程度に緻密化した。
そして、前記したように、比較例2から比較例3では、緻密化層が形成される程度にショットピーニングが実効せず、比較例8及び比較例13では金属皮膜の一部又は全部が剥離して緻密化層が形成されるようにショットピーニングが実効しなかった。比較例13では、図9に示すように、皮膜(緻密化層を含む金属皮膜)が消失している。
以上のことから、ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径(表1の「ショット粒子径」参照)は100μm〜500μmが望ましいことが確認された。
<緻密化層の高靭性化>
実施例7及び実施例11で製造されたアルミ基合金積層体の緻密化層における靭性を評価した。
ここでは、実施例7及び実施例11で製造されたアルミ基合金積層体において、図3(b)及び図5(b)に示す、ショット影響部(緻密化層)のビッカース硬度と、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍(金属皮膜の緻密化層界面近傍)のビッカース硬度とが測定された。
図3(c)に示すように、実施例7で製造されたアルミ基合金積層体のショット影響部(緻密化層)における任意の2点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ244.5、及び223.5であった。
そして、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍における任意の2点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ267.5、及び254.6であった。
そして、図5(c)に示すように、実施例11で製造されたアルミ基合金積層体のショット影響部(緻密化層)における任意の1点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ211.6であった。
そして、ショット影響部(緻密化層)の最深部近傍における任意の2点で測定したビッカース硬度(Hv.)は、それぞれ261.1、及び248.2であった。
ちなみに、図示しないが、比較例1のショットピーニングを施していない皮膜(金属皮膜)における平均のビッカース硬度(Hv.)は、267であった。また、コールドスプレー法で使用したアルミニウム合金粉末を温間で固化成形したバルク材のビッカース硬度(Hv.)は、170であった。つまり、コールドスプレー法で形成した金属皮膜は、硬度が高くなって靭性が低下していることが確認された。
そして、図3(c)及び図5(c)に示すビッカース硬度(Hv.)の測定結果から明らかなように、ショット影響部(緻密化層)のビッカース硬度(Hv.)は、ショットピーニングを施さないもの(比較例1)のビッカース硬度(Hv.)と比較して一段と低下していた。
つまり、一般に、素材の硬度を高めることが知られているショットピーニングは、コールドスプレー法で得られた皮膜(金属皮膜)に適用すると、逆に、その硬度を低下させて靭性を高めることが確認された。このことは、前記したようにショットピーニングが施された際の加工発熱によって、回復・再結晶が金属皮膜内で発現し、金属皮膜の表層が軟化する、言い換えれば、高靭性化した緻密化層が形成されたものと考えられる。
本発明の金属皮膜の改質方法によって得られたアルミ基合金積層体の模式図である。 (a)は、実施例4で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、実施例7で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、実施例10で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、実施例11で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、実施例12で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、実施例13で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の基材と皮膜との界面近傍における拡大写真、(c)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 (a)は、比較例1で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真、(b)は、(a)中の皮膜における表層の拡大写真である。 比較例8で得られたアルミ基合金積層体の光学顕微鏡写真である。
符号の説明
1 アルミ基合金積層体
2 基材
3 金属皮膜
4 緻密化層

Claims (4)

  1. コールドスプレー法にて基材の表面にアルミニウム基合金を積層した金属皮膜に対して、この金属皮膜が緻密化するようにショットピーニングを施すことを特徴とする金属皮膜の改質処理方法。
  2. 前記ショットピーニングに使用した鋼系材料からなるショット材の粒子径が、100μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属皮膜の改質処理方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の改質処理方法で処理された金属皮膜を有するアルミ基合金積層体であって、前記金属皮膜の表層に緻密化層が形成されていることを特徴とするアルミ基合金積層体。
  4. 前記緻密化層の厚さが、1μm〜150μmであることを特徴とする請求項3に記載のアルミ基合金積層体。
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