JP2014136828A - 皮膜体の製造方法及び皮膜体 - Google Patents

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Abstract

【課題】コールドスプレーで材料粒子を複数層に成膜する際に、より確実に層間の密着性を向上させる。
【解決手段】コールドスプレー法によって材料粒子12を基材表面10aに噴射して、該基材表面に該材料粒子の皮膜16、18を複数層に成膜させた皮膜体20の製造方法であって、基材表面に材料粒子を噴射して皮膜を形成する皮膜形成工程S10と、皮膜形成工程の後に、皮膜形成工程における材料粒子の噴射方向と異なる方向から材料粒子と同一の材料粒子を皮膜表面16aに噴射して該皮膜表面を洗浄する皮膜表面洗浄工程S20と、皮膜表面洗浄工程の直後に、皮膜形成工程における噴射方向と同一方向から材料粒子を皮膜表面に噴射して、該材料粒子による皮膜を積層する皮膜積層工程S30と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、コールドスプレーを用いた皮膜体の製造方法及び皮膜体に関する。
基材の表面に緻密で密着性の高い皮膜を形成するコーティング技術として、コールドスプレー(Cold Spray)法が知られている。この方法は、皮膜材料の融点又は軟化点よりも低い温度に設定した超音速で流れるガスに皮膜材料の粉末を同伴させて、当該粉末を基材の表面に衝突させる技術である。この方法では、粉末が高速で基材の表面に衝突した際に、固相状態のままで粉末粒子が塑性変形を起こして基材表面に堆積して、皮膜が形成される。
最近では、成膜性向上、皮膜特性向上を目的に成膜する際のガス温度が上昇する傾向にあるので、金属材料をコールドスプレーで成膜する際に、皮膜内部は、酸化物が殆どないものの、皮膜表面は、成膜後に高温状態のまま大気に曝されるため酸化し易い。このため、多層成膜の際に、図6に示すように、基材1の上に先に成膜した皮膜層2の表面に酸化物層3が形成された状態の上に次の皮膜層4が成膜することになるので、層間に酸化物が取り込まれる状態になってしまい、層間の密着性が確保できない問題が発生する。層間の密着性を確保するために、基材表面に酸化物が生じていない状態で確実に溶射を行う従来技術として、特許文献1には、溶射ガンとブラストガンを併設した装置でブラスト処理しながら溶射が可能な装置が開示されている。
特開平8−60332号公報
特許文献1に開示された溶射装置は、基材表面にブラスト処理を施して粗面化することによって、金属皮膜との密着性を向上させるには、有効である。しかしながら、基材表面にブラスト処理を施すことは、当該基材表面に砂、グリット等のブラスト材の残留が懸念され、また、加工工程を長期化し、且つ複雑化することになるので、好ましくない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コールドスプレーで材料粒子を複数層に成膜する際に、より確実に層間の密着性を向上させることの可能な、新規かつ改良された皮膜体の製造方法及び皮膜体を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、コールドスプレー法によって材料粒子を基材表面に噴射して、該基材表面に該材料粒子の皮膜を複数層に成膜させた皮膜体の製造方法であって、前記基材表面に前記材料粒子を噴射して前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、前記皮膜形成工程の後に、該皮膜形成工程における前記材料粒子の噴射方向と異なる方向から前記材料粒子と同一の材料粒子を前記皮膜の表面に噴射して該皮膜表面を洗浄する皮膜表面洗浄工程と、前記皮膜表面洗浄工程の直後に、前記皮膜形成工程における前記噴射方向と同一方向から前記材料粒子を前記皮膜の表面に噴射して、該材料粒子による皮膜を積層する皮膜積層工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、皮膜材料と同じ材料を使って皮膜表面のクリーニングをしながら皮膜を多層に成膜させて皮膜体を形成するので、各皮膜の層間に酸化膜が介在しなくなり、当該層間の密着性を向上させられる。
このとき、本発明の一態様では、前記皮膜表面洗浄工程では、前記皮膜形成工程における前記噴射方向と異なる方向となるように、前記基材表面に対して60度より小さい角度をなす方向から前記材料粒子を前記皮膜表面に噴射することとしてもよい。
このようにすれば、皮膜表面洗浄工程で噴射した材料粒子が皮膜表面上に付着せずに、皮膜表面を摩耗させながら洗浄することができる。
また、本発明の一態様では、前記皮膜表面洗浄工程における前記材料粒子を噴射する位置は、前記皮膜形成工程及び前記皮膜積層工程における前記材料粒子を噴射する位置と10mm以上離れていることとしてもよい。
このようにすれば、皮膜表面洗浄工程における材料粒子の噴射の影響を受けずに、皮膜積層工程で皮膜を効率的に積層させられる。
また、本発明の一態様では、前記皮膜表面洗浄工程では、前記皮膜形成工程及び前記皮膜積層工程における前記材料粒子を噴射する際の流速よりも小さい流速で前記材料粒子を噴射することとしてもよい。
このようにすれば、皮膜表面洗浄工程で材料粒子を噴射した際に、当該材料粒子が先に成膜した皮膜を大幅に摩耗させずに、皮膜表面を洗浄できる。
また、本発明の一態様では、前記皮膜表面洗浄工程では、400〜800m/秒の流速で前記材料粒子を噴射することとしてもよい。
このようにすれば、皮膜表面洗浄工程で材料粒子を噴射した際に、当該材料粒子が先に成膜した皮膜の表面を大幅に摩耗させずに、的確に洗浄できる。
また、本発明の他の態様は、コールドスプレー法によって材料粒子を基材表面に噴射して、該基材表面に前記材料粒子の皮膜を複数層に成膜させた皮膜体であって、前記材料粒子によって前記基材表面上に成膜させた一の皮膜と、前記一の皮膜の酸化膜を介せずに前記一の皮膜の上に前記材料粒子によって成膜させた他の皮膜と、を備え、前記他の皮膜は、前記一の皮膜を成膜させた後に前記材料粒子で前記一の皮膜の表面を洗浄した直後に前記一の皮膜の表面に成膜させたことを特徴とする。
本発明の他の態様によれば、層間の密着性を確保することによって、耐久性が向上した複数層の皮膜体が得られる。
以上説明したように本発明によれば、コールドスプレーで材料粒子を複数層に成膜する際に、より確実に層間の密着性を向上させることができる。
本発明の一実施形態における皮膜体の製造方法に用いるコールドスプレー装置の概略を説明する説明図である。 (a)〜(c)は、本実施形態における皮膜体の製造方法の動作説明図である。 本実施形態の皮膜体の製造方法における皮膜形成・積層時と皮膜洗浄時のスプレーノズルの位置関係を説明する図である。 本実施形態における皮膜体の製造方法の動作フローを示すフローチャートである。 本実施形態における皮膜体の製造方法による成膜の一実施例を示す表である。 従来における皮膜体の製造方法の動作説明図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態における皮膜体の製造方法で使用されるコールドスプレー装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における皮膜体の製造方法に用いるコールドスプレー装置の概略を説明する説明図である。
コールドスプレー装置100は、材料粒子12を作動ガス14によりガスの音速から超音速で基材10の表面に固体状態で衝突させて皮膜を成膜するコールドスプレー法を利用した装置である。材料粒子12は、特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、クロム、チタン、亜鉛、モリブデン、マグネシウム、鉄、タンタル、ニオブ、金、銀、珪素、これらの合金、ステンレス、はんだ、ポリマーやサーメット等を挙げられる。基材10としては、例えば、鉄、鋳鉄、ステンレス、銅、黄銅、ニッケル、錫、鉛、コバルト、チタン、アルミニウム、クロム、金、銀、白金、パラジウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛の何れかの金属、又はこれらの合金、金属の酸化物等、適宜のものを選択することができる。コールドスプレー後に熱処理する場合には、基材10は、皮膜を形成する材料と略同等、あるいはそれ以上の融点又は軟化点の材料が望ましい。
コールドスプレー装置100は、図1に示すように、作動ガス14を加熱するガス加熱器102と、基材10に噴射する材料粒子12を収容し、スプレーガン104に供給する粉末供給装置106と、スプレーガン104で加熱された作動ガス14と混合された材料粒子12を基材10に噴射するガスノズル108とを備えている。
作動ガスの種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、窒素、空気等が使用される。材料粒子の表面及び皮膜の表面の酸化を抑制するという観点から、作動ガスとして不活性ガスであるヘリウムや窒素が特に好ましく、また、コスト面では窒素が、作動ガス速度の高速化の面ではヘリウムが好ましい。
作動ガス14は、不図示の高圧ガスボンベ等のガス供給源から供給され、調整バルブ110、112により圧力や流速等が調整されて圧縮ガスとなって、ガス加熱器102と粉末供給装置106にそれぞれ供給される。ガス加熱器102に供給された作動ガス14は、例えば50℃以上であって、皮膜の材料粒子12の融点又は軟化点以下の温度に加熱された後、スプレーガン104に供給される。作動ガスの加熱温度は、1000℃以下であり、好ましくは300〜900℃である。
粉末供給装置106に供給された作動ガス14は、粉末供給装置106内の材料粒子12をスプレーガン104に所定の吐出量となるように供給する。材料粒子12の粒径は、例えば、10〜100μm程度であり、好ましくは5〜50μmであり、更に好ましくは、5〜25μmである。すなわち、皮膜材料となる金属粒子である材料粒子12の粒径は、5μm以上50μm以下程度とすることが好ましい。粒径が5μm未満では、安定した噴射状態が得られないので好ましくなく、また、粒径が50μmを超えると、粒子が堆積しにくくなるため好ましくない。
ガス加熱器102で加熱された作動ガス14は、先細末広形状をなすガスノズル108により超音速流(約340m/s以上)にされる。なお、作動ガス14の流速の詳細については、後述する。また、作動ガス14のガス圧力は、基材10と皮膜との間の密着強度の向上を図るためには、0.5〜5MPa程度とすることが好ましく、特に、2〜4MPa程度の圧力で処理することが好ましい。
スプレーガン104に供給された材料粒子12は、この作動ガス14の超音速流の中への投入により加速され、固相状態のまま基材10に高速で衝突して皮膜を形成する。なお、材料粒子12を基材10に固相状態で衝突させて皮膜を形成できる装置であれば、一実施形態における皮膜体の製造方法に用いるコールドスプレー装置は、図1に示すコールドスプレー装置100に限定されるものではない。
次に、本実施形態における皮膜体の製造方法の動作について、図面を使用しながら説明する。図2(a)〜(c)は、本実施形態における皮膜体の製造方法の動作説明図であり、図3は、本実施形態の皮膜体の製造方法における皮膜形成・積層時と皮膜洗浄時のスプレーノズルの位置関係を説明する図であり、図4は、本実施形態における皮膜体の製造方法の動作フローを示すフローチャートである。なお、図2では、皮膜体の材料粒子として、銅を噴射する場合について説明するが、材料粒子は、銅に限定されない。
本実施形態は、コールドスプレー法によって材料粒子を基材表面に噴射して、当該基材表面に材料粒子の皮膜を複数層に成膜させた皮膜体の製造方法に係る発明である。本実施形態では、図3に示すように、成膜用のスプレーガン104の進行方向に当該スプレーガン104と同一機能・構成のスプレーガンを、皮膜洗浄用の先行スプレーガン124として設けていることを特徴とする。先行スプレーガン124を備えるコールドスプレー装置の構成は、前述の図1に示すものと同様である。また、先行スプレーガン124は、図2に示すように、スプレーガン104から噴射される皮膜材料となる材料粒子と同じ材質の粒子を、基材表面10aに対して60度より小さい角度から噴射することを特徴とする。なお、本実施形態では、皮膜洗浄用の先行スプレーガン124は、成膜用のスプレーガン104と別のコールドスプレー装置に備わっているが、1つのコールドスプレー装置に皮膜洗浄用の先行スプレーガン124と成膜用のスプレーガン104を備える構成としてもよい。
先行スプレーガン124とスプレーガン104との進行方向距離に関しては、特に制限はない。しなしながら、当該進行方向距離が10mmより近いと、洗浄用の先行スプレーガン124と成膜用のスプレーガン104が干渉したり、成膜用のスプレーガン104からの噴射が先行スプレーガン124からの噴射により影響を受けやすく、成膜効率が低下することが懸念される。このため、本実施形態では、皮膜表面洗浄工程における材料粒子の噴射の影響を受けずに、皮膜積層工程で皮膜を効率的に積層するために、先行スプレーガン124とスプレーガン104との進行方向距離は、図3に示すように、10mm以上とする。また、先行スプレーガン124とスプレーガン104との進行方向距離の上限は、特に限定しないが、装置の制約上、100mm程度以内に留めることが好ましい。
本実施形態では、多層の皮膜体を形成する際に、まず、図2(a)に示すように、スプレーガン104から基材表面10aに向けて材料粒子12を噴射して、皮膜16を形成する(皮膜形成工程S10)。本実施形態では、コールドスプレー法によって、皮膜16を形成する。その際に、スプレーガン104は、基材表面10aに対して略垂直の方向から材料粒子12を基材表面10aに噴射する。基材表面10aに衝突した材料粒子12には、基材表面10aとの界面付近で大きなせん断による塑性変形が生じて、界面付近の温度が上昇して材料粒子12と基材10、及び材料粒子12間で固相接合が生じて、材料粒子12が基材10に付着して皮膜16を形成する。
また、このとき、コールドスプレー法で皮膜16を形成する際に、材料粒子12が基材表面10aに付着するためには、基材10に対して所定の大きさ以上の衝突速度が必要であり、その閾値となる速度が臨界速度である。材料粒子12の流速が臨界速度以下では、基材10がエロージョン摩耗するのみで、材料粒子12が基材表面10aに付着しない。一方、材料粒子12の流速が臨界速度よりさらに高速で基材10に材料粒子12を衝突させる場合は、基材10の変形・損傷が大きくなるか、残留応力が大きくなる。
すなわち、材料粒子12の付着には、最適な速度範囲が存在するので、本実施形態では、コールドスプレー装置100のスプレーガン104は、材料粒子12を臨界速度で噴射するように制御される。なお、臨界速度は、主にスプレーする材料粒子の種類、作動ガスの種類や温度等によって変動する。例えば、材料粒子が銅の場合、約800m/秒の衝突速度で70%以上の溶射効率を得られ、また、ガス温度を上げると材料粒子の塑性変形が容易になるため、臨界速度が下がる。
次に、本実施形態では、図2(b)に示すように、皮膜形成工程S10における材料粒子12の噴射方向と異なる方向から、当該材料粒子12と同一の材料粒子12を皮膜表面16aに噴射して、当該皮膜表面16aを洗浄する(皮膜表面洗浄工程S20)。皮膜形成工程S10の後に皮膜表面16aに酸化膜が形成されても、材料粒子12で当該酸化膜を洗浄して除去するので、皮膜形成工程S10で形成された一の皮膜16と、その後に同一の材料粒子12で積層される他の皮膜18との密着性を向上させられる。
また、本実施形態では、皮膜表面洗浄工程S20では、皮膜形成工程S10における噴射方向と異なる方向となるように、基材表面10aに対して60度より小さい角度をなす方向から材料粒子12を皮膜表面16aに噴射することを特徴とする。すなわち、皮膜形成工程S10で成膜用のスプレーガン104が基材表面10aに対して略垂直の方向から材料粒子12を基材表面10aに噴射するのに対して、皮膜表面洗浄工程S20では、基材表面10aに対して60度より小さい角度をなす方向から材料粒子12を皮膜表面16aに噴射する。このように、先行スプレーガン124の噴射角度を基材表面10aに対して60度より小さくすることによって、図2(b)に示すように、皮膜表面16aに到達した材料粒子12aが皮膜表面16aに付着せずに、皮膜表面16aの上を移動しながら、皮膜表面16aを摩耗させる効果を生む。
皮膜表面洗浄工程S20で材料粒子12を噴射する際には、材料粒子12が先に成膜した皮膜16を大幅に摩耗させずに皮膜表面16aを洗浄するために、その流速は、皮膜形成工程S10における材料粒子12を噴射する際の流速よりも小さくてよい。ただし、皮膜表面洗浄工程S20で材料粒子12の流速をあまり遅くすると、材料粒子12による皮膜表面16aのクリーニング作用がなくなるので、所定の速度以上とする必要がある。
具体的には、皮膜表面洗浄工程における作用ガスの流速を400〜800m/秒の流速にして材料粒子12を噴射することによって、材料粒子12が先に成膜した皮膜表面16aを大幅に摩耗させずに、的確に洗浄できることが分かった。また、先行スプレーガン124の作動ガスの温度は、0〜200度くらいの室温とし、その作動ガスの種類は、成膜用のスプレーガン104と同様に、空気、窒素、ヘリウム等が選択できるが、酸化防止と低コストを考慮すると窒素がより好ましい。
皮膜表面洗浄工程S20が終わった直後に、図2(c)に示すように、皮膜形成工程S10における噴射方向と同一方向から材料粒子12を皮膜表面16aに噴射して、当該材料粒子12による他の皮膜18を積層する(皮膜積層工程S30)。具体的には、皮膜積層工程S30では、コールドスプレー法により成膜用のスプレーガン104が基材表面10aに対して略垂直の方向から材料粒子12を基材表面10aに噴射して、材料粒子12を塑性変形させて皮膜表面16aに付着させて他の皮膜18を形成する。なお、皮膜積層工程S30における材料粒子12を噴射する作動ガスの流速は、皮膜形成工程S10における流速と同じ大きさである。
また、皮膜積層工程S30では、先に成膜した一の皮膜16の表面16aに酸化膜が出来る前に、材料粒子12を皮膜表面16aに噴射する必要があるので、皮膜表面洗浄工程S20が終わった直後に材料粒子12を噴射する。具体的には、例えば、洗浄用の先行スプレーガン124と成膜用のスプレーガン104との間隔が100mmで双方のスプレーガン104、124の移動速度が数100mm/秒程度の場合では、皮膜表面洗浄工程S20が終わってから1秒以内に成膜用のスプレーガン104を噴射することとなる。
このようにして、本実施形態では、皮膜材料と同じ材料を使って皮膜表面のクリーニングをしながら、皮膜を多層に成膜させるので、各皮膜16、18の層間に酸化膜が介在しなくなり、当該層間の密着性を向上させられる。すなわち、層間の密着性を確保することによって、耐久性が向上した複数層の皮膜体20が得られる。
また、皮膜洗浄用の先行スプレーガン124の噴射材料を皮膜材料と同じにすることによって、万が一、洗浄用の材料粒子12が皮膜16に残留して取り込まれた場合でも、皮膜16と同材質のため、皮膜体20の品質に影響を与えないようになる。すなわち、従来のブラスト処理による皮膜洗浄では、当該基材表面にブラスト材の残留によって、皮膜体の品質の劣化が懸念されていたが、本実施形態では、皮膜材質と同一の材料粒子12で皮膜表面を洗浄するので、洗浄用の材料粒子12が皮膜16に残留しても、皮膜体20の品質に大きな影響を及ぼすことなく、層間の密着性を確保した耐久性のある皮膜体20が得られる。
なお、同一材質による3層以上の皮膜体を形成する場合には、図4に示すように、皮膜積層の要否を確認してから(工程S40)、同様にして、皮膜洗浄工程S20、皮膜積層工程S30を繰り返し行う。このようにして、多層成膜の層間の密着性を確保した耐久性のある皮膜体が得られるようになる。
次に、本実施形態の皮膜体の製造方法における先行スプレーガンによる材料粒子のスプレー角度(噴射角度)、粒子流速、及びガス温度の最適値を実証する試験の結果について説明する。図5は、本実施形態における皮膜体の製造方法による成膜の一実施例を示す表である。図5に示す一実施例では、皮膜材料を銅とし、また、成膜用の作動ガス温度を200度、皮膜洗浄用の作動ガス温度を0度以上200度未満の室温として試験を行った。なお、本発明は、これら試験結果に限定されるものでない。
図5に示すように、先行スプレーガンの角度が基材方面に対して90度から60度の場合では、No.2、3、4の試験結果に示すように、十分な皮膜の密着強度が得られていないことから、先行スプレーガンによる皮膜表面の洗浄効果が現れないことが分かる。これに対して、先行スプレーガンの角度が基材方面に対して55度と60度より小さい場合では、No.5、6、7の試験結果に示すように、60MPa前後の十分な皮膜の密着強度が得られることが分かる。
ただし、先行スプレーガンの角度が基材方面に対して55度としても、粒子流速を200m/秒とした場合には、No.8の試験結果に示すように、十分な皮膜の密着強度が大幅に下がることから、先行スプレーガンによる皮膜表面の洗浄効果が現れないことが分かる。また、先行スプレーガンの角度が基材方面に対して55度としても、粒子流速を1000m/秒とした場合には、No.9の試験結果に示すように、先に成膜した皮膜を大きく摩耗させてしまうことから、先行スプレーガンによる皮膜表面の洗浄効果が現れないことが分かる。さらに、先行スプレーガンの角度が基材方面に対して55度としても、先行スプレーガンの作動ガス温度を成膜時と同様に200度とした場合には、No.10の試験結果に示すように、十分な皮膜の密着強度が得られていないことから、先行スプレーガンによる皮膜表面の洗浄効果が現れないことが分かる。
以上より、本実施形態の皮膜体の製造方法における先行スプレーガンによる材料粒子のスプレー角度(噴射角度)、粒子流速、及びガス温度の最適値は、それぞれ60度より小さい値である55度、400〜800m/秒、室温(0度以上200度未満)であることが分かる。なお、先行スプレーガンによる材料粒子のスプレー角度(噴射角度)の下限については、原理的には0度以上となるが、噴射した粒子を皮膜表面に当てて、洗浄効果を得るには、10度以上あることが好ましい。
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、皮膜体の製造方法で使用するコールドスプレー装置の構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 基材
10a 基材表面
12 材料粉末
14 作動ガス
16 皮膜(一の皮膜)
16a 皮膜表面
18 皮膜(他の皮膜)
20 皮膜体
100 コールドスプレー装置
102 ガス加熱器
104 スプレーガン
106 粉末供給装置
108 ガスノズル
110、112 調整バルブ
124 先行スプレーガン
S10 皮膜形成工程
S20 皮膜表面洗浄工程
S30 皮膜積層工程

Claims (6)

  1. コールドスプレー法によって材料粒子を基材表面に噴射して、該基材表面に該材料粒子の皮膜を複数層に成膜させた皮膜体の製造方法であって、
    前記基材表面に前記材料粒子を噴射して前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    前記皮膜形成工程の後に、該皮膜形成工程における前記材料粒子の噴射方向と異なる方向から前記材料粒子と同一の材料粒子を前記皮膜の表面に噴射して該皮膜表面を洗浄する皮膜表面洗浄工程と、
    前記皮膜表面洗浄工程の直後に、前記皮膜形成工程における前記噴射方向と同一方向から前記材料粒子を前記皮膜の表面に噴射して、該材料粒子による皮膜を積層する皮膜積層工程と、を含むことを特徴とする皮膜体の製造方法。
  2. 前記皮膜表面洗浄工程では、前記皮膜形成工程における前記噴射方向と異なる方向となるように、前記基材表面に対して60度より小さい角度をなす方向から前記材料粒子を前記皮膜表面に噴射することを特徴とする請求項1に記載の皮膜体の製造方法。
  3. 前記皮膜表面洗浄工程における前記材料粒子を噴射する位置は、前記皮膜形成工程及び前記皮膜積層工程における前記材料粒子を噴射する位置と10mm以上離れていることを特徴とする請求項2に記載の皮膜体の製造方法。
  4. 前記皮膜表面洗浄工程では、前記皮膜形成工程及び前記皮膜積層工程における前記材料粒子を噴射する際の流速よりも小さい流速で前記材料粒子を噴射することを特徴とする請求項2又は3に記載の皮膜体の製造方法。
  5. 前記皮膜表面洗浄工程では、400〜800m/秒の流速で前記材料粒子を噴射することを特徴とする請求項4に記載の皮膜体の製造方法
  6. コールドスプレー法によって材料粒子を基材表面に噴射して、該基材表面に前記材料粒子の皮膜を複数層に成膜させた皮膜体であって、
    前記材料粒子によって前記基材表面上に成膜させた一の皮膜と、
    前記一の皮膜の酸化膜を介せずに前記一の皮膜の上に前記材料粒子によって成膜させた他の皮膜と、を備え、
    前記他の皮膜は、前記一の皮膜を成膜させた後に、前記材料粒子で前記一の皮膜の表面を洗浄した直後に前記一の皮膜の表面に成膜させたことを特徴とする皮膜体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016194106A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 日本発條株式会社 成形加工用マグネシウム系部材

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