JP6084286B2 - グレー色調層を有する硬質装飾部材 - Google Patents
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Description
<硬質装飾部材>
本発明に係る硬質装飾部材は、基材と、上記基材上に積層された硬質装飾被膜とを有し、該硬質装飾被膜は、グレー色調層を含むことを特徴とする。
本発明に用いる基材は、金属、セラミックスまたはプラスチックから形成される基材である。金属(合金を含む)として、具体的にはステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タングステン、または硬質化処理したステンレス鋼、チタン、チタン合金などが挙げられる。これらの金属は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記基材の形状については限定されない。
本発明に用いるグレー色調層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物を含む。非金属元素としては、炭素の他、酸素、窒素が挙げられるため、上記反応化合物とは、上記合金の炭化物、炭窒化物、酸炭化物または酸窒化炭化物が挙げられる。本発明においては、Tiと金属M2とは固溶条件があるため、Tiと金属M2とは、固溶条件領域においては金属の合金の化合物として、それ以外の領域では固溶金属と単金属との複合形態を呈していると考えられる。なお、本明細書の反応化合物には、上記複合形態も含める。また、合金の化合物であることは、具体的には、X線回折測定結果からも確認できる。Tiと金属M2との合金比率により化合物の回折ピークがシフトするため、形成されたTiと金属M2との化合物はそれぞれの比率に応じた合金の化合物になっていると確認できる。
反応化合物においては、非金属元素としては炭素のみを用いることがより深みのあるグレー色調が得られるため好ましい。硬度を高くコントロールするために炭素とともに窒素を組み合わせたり、基材との密着性向上、またはより暗めのグレー色調を得たい場合においては炭素とともに酸素を組み合わせたりすることも好ましい。
この膜の厚さ方向に対する非金属元素および金属の量は、ESCA(X線光電子分光法)またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。グレー色調傾斜層における「表面での各元素の量」とは、通常、前記層の表面から厚さ方向(深さ方向)10nmまでの領域における各元素の量を意味する。
グレー色調層は、可視領域(360〜740nm)での反射率測定において、最大値と最小値との差が10%以下(0%以上10%以下)であり、Lab色空間表示において、L*が60を超え73以下、a*およびb*がそれぞれ−2.0〜2.0、a*とb*との差(|a*−b*|)が1.5以下(0以上1.5以下)であることが好ましい。上記反射率の最大値、最小値、L*、a*およびb*が上記条件を満たすと、深みのあるグレー色調であるといえる。従来のチタンカーバイドからなる硬質被膜を有する装飾部材は、黄色味がかったグレー色調または黒色に近い暗いグレー色調であるため、耐傷性は高く維持されており、かつ深みのあるグレー色調を有する装飾部材が望まれていた。本発明のグレー色調層によれば、このような要求を満足できる。特に、非金属元素として炭素のみを用いており、反応化合物において炭素の量が30〜70atm%であると、上記反射率の最大値、最小値、L*、a*およびb*が上記要件を満たすことができる。
ここで、グレー色調層の膜硬度、反射率の最大値、最小値、L*、a*およびb*は、基材(たとえばSUS316L材)上に形成したグレー色調層について測定した値をいう。
本発明の硬質装飾部材は、上記硬質装飾被膜として密着層をさらに含んでいてもよい。密着層は基材とグレー色調層との間に積層される。耐傷性能はおおよそ被膜の厚さ、被膜の密着度および被膜の硬度の積により決まる。密着層を設けると、基材と密着層の上に形成される層との密着度が高まり、厚い被膜の形成も可能となるため、結果として硬質装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。
上記合金の低級酸化物膜中の酸素含有量は、好ましくは5〜60atm%、より好ましくは5〜45atm%であり、Tiおよび金属M2の合計量は好ましくは40〜95atm%、より好ましくは55〜95atm%である(ここで、酸素、Tiおよび金属M2の合計量を100atm%とする。)。酸素含有量が5atm%未満では、密着性において合金金属膜との差異がみられにくく、60atm%を超えると密着性が低下し、耐傷性も低下する場合がある。反応化合物における非金属元素および金属の量は、ESCA(X線光電子分光法)またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。
本発明の硬質装飾部材は、上記硬質装飾被膜として硬化層をさらに含んでいてもよい。硬化層は基材とグレー色調層との間に積層され、硬化層はグレー色調層よりも高い硬度を有する。耐傷性能はおおよそ被膜の厚さ、被膜の密着度および被膜の硬度の積により決まる。硬化層を設けると、被膜全体の硬度が高まり、厚い被膜の形成も可能となるため、結果として硬質装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。
反応化合物においては、非金属元素として炭素および窒素を用いると、硬度を高くコントロールできるため好ましい。
本発明の硬質装飾部材は、上記硬質装飾被膜として傾斜密着層をさらに含んでいてもよい。傾斜密着層は基材とグレー色調層との間に積層される。耐傷性能はおおよそ被膜の厚さ、被膜の密着度および被膜の硬度の積により決まる。傾斜密着層を設けると、基材との間に発生する応力歪みを緩和する事ができ、また基材との密着度が高くなりクラックの発生や剥離が抑えられるため、結果として硬質装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。
傾斜密着層全体すなわち傾斜密着層を構成する反応化合物全量において、非金属元素の量は好ましくは0atm%を超えて70atm%以下であり、硬化層に導入する非金属元素の量によって調整される。Tiおよび金属M2の合計量は好ましくは30atm%以上100atm%未満であることが望ましく、硬化層に導入する非金属元素の量によって決まる(ここで、非金属元素、Tiおよび金属M2の合計量を100atm%とする。)。なお、非金属元素の量は、非金属元素として炭素または窒素のみを用いるときは、炭素または窒素の量であり、非金属元素として炭素または窒素とともに酸素を用いるときは、これら非金属元素の合計の量である。また、非金属元素として炭素とともに窒素を用いるときは、炭素の量は好ましくは0atm%を超えて60atm%以下であり、窒素の量は好ましくは0atm%を超えて10atm%以下であり、Tiおよび金属M2の合計量は好ましくは30atm%以上100atm%未満である。非金属元素、Tiおよび金属M2の量が上記範囲にあると、より高い密着度が得られる。反応化合物における非金属元素および金属の量は、ESCA(X線光電子分光法)またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。
この膜の厚さ方向に対する非金属元素および金属の量は、ESCA(X線光電子分光法)またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。傾斜密着層における「表面での各元素の量」とは、通常、前記層の表面から厚さ方向(深さ方向)10nmまでの領域における各元素の量を意味する。
本発明の硬質装飾部材は、上記硬質装飾被膜上に汚れを防止するための防汚コート層がさらに積層されていてもよい。
本発明の硬質装飾部材としては、たとえば基材/グレー色調層(態様A)、基材/密着層/グレー色調層(態様B)、基材/硬化層/グレー色調層(態様C)、基材/傾斜密着層/グレー色調層(態様D)、基材/密着層/硬化層/グレー色調層(態様E)、基材/密着層/傾斜密着層/グレー色調層(態様F)、基材/傾斜密着層/硬化層/グレー色調層(態様G)、基材/密着層/傾斜密着層/硬化層/グレー色調層(態様H)などのように、基材上に上述した層が順に積層された硬質装飾被膜を有する態様が挙げられる。
さらに、本発明の硬質装飾部材としては、態様A〜Hにおいて、硬質装飾被膜上に防汚コート層がさらに積層された態様Iも挙げられる。
また、上述した硬質装飾部材は、いずれの態様であっても、特にグレー色調層の厚さが0.2μm以上であり、グレー色調層が非金属元素として炭素のみを用いており、この量が30〜70atm%にあると、反射率測定において可視領域(360〜740nm)での最大値と最小値との差が10%以下(0%以上10%以下)となり、Lab色空間表示において、L*が60を超え73以下、a*およびb*がそれぞれ−2.0〜2.0、a*とb*との差(|a*−b*|)が1.5以下(0以上1.5以下)となる。上記反射率の最大値、最小値、L*、a*およびb*が上記条件を満たすと、深みのあるグレー色調であるといえる。従来のチタンカーバイドからなる硬質被膜を有する装飾部材は、黄色味がかったグレー色調または黒色に近い暗いグレー色調であるため、耐傷性は高く維持されており、かつ深みのあるグレー色調を有する装飾部材が望まれていた。本発明の硬質装飾部材によれば、このような要求を満足できる。
本発明の硬質装飾部材の製造方法は、上述した硬質装飾部材の製造方法である。すなわち、基材と、基材上に積層された硬質装飾被膜とを有する硬質装飾部材の製造方法であって、硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、基材上にグレー色調層を積層するグレー色調層積層工程を含む。
反応性スパッタリング法は膜質や膜厚の制御性が高く自動化も容易である。またスパッタリングされた原子のエネルギーが高いことから、密着性を向上させるための基材加熱が必要なく、融点の低いプラスチックのような基材でも被膜形成が可能となる。また、はじき飛ばされたターゲット物質を基材に形成させる方法であることから高融点材料でも成膜が可能であり、材料の選択が自由である。
次いで、傾斜密着層積層工程では、ターゲットとして、好ましくはTi、金属M2および必要に応じて用いられる金属M3を組み合わせた合金、より具体的には上記金属の合金の焼結体を用いる。上記焼結体において、Ti、金属M2、必要に応じて用いる金属M3の種類およびその割合は、上述の傾斜密着層について説明したものと同じである。
次いで、グレー色調層積層工程の前に、反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、傾斜密着層上に硬化層を積層する硬化層積層工程を行う。
硬化層積層工程においては、製造装置および使用するターゲット組成によってその条件は一様ではないが、たとえば不活性ガスが100〜200sccmの条件下において、炭素原子含有ガスのみを10〜150sccmの量であり、かつ傾斜密着層の積層工程終了時での炭素原子含有ガスまたは窒素原子含有ガスの量と同じか、または該量よりも0sccmを超え50sccm以下の範囲で多い量を導入して炭化物膜を形成するか、あるいは炭素原子含有ガスおよび窒素原子含有ガスを混合させた反応ガスを10〜150sccmの量であり、かつ傾斜密着層の積層工程終了時での炭素原子含有ガスまたは窒素原子含有ガスの量と同じか、または該量よりも0sccmを超え50sccm以下の範囲で多い量を導入して炭窒化物膜を形成する。ガス量が上記範囲にあると、反応化合物中の非金属元素の量を、上述の硬化層について説明した範囲に調整できる。さらに、硬化層中の非金属元素の量を、傾斜密着層中の硬化層側の表面での非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きくすることができる。
最後に、反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、硬化層上にグレー色調層を積層するグレー色調層積層工程を行う。
グレー色調層積層工程では、製造装置および使用するターゲット組成によってその条件は一様ではないが、たとえば不活性ガスが100〜200sccmの条件下において、炭素原子含有ガスのみを20〜200sccm、好ましくは20〜150sccmの量であり、かつ硬化層積層工程での量と同じか、または該量よりも0sccmを超え50sccm以下の範囲で多い量を導入して炭化物膜を形成するか、あるいは炭素原子含有ガスとともに窒素原子含有ガスまたは酸素原子含有ガスを混合させた反応ガスを20〜200sccm、好ましくは20〜150sccmの量であり、かつ硬化層積層工程での量と同じか、または該量よりも0sccmを超え50sccm以下の範囲で多い量を導入して炭窒化物膜、酸炭化物膜、酸窒素化炭化物膜を形成する。なお、混合させた反応ガスにおいて、炭素原子含有ガスは混合ガス量のトータル量の80%以上を占めていることが好ましい。ガス量が上記範囲にあると、反応化合物中の非金属元素の量を、上述のグレー色調層について説明した範囲に調整できる。さらに、グレー色調層中の硬化層側の表面での非金属元素の量を、硬化層中の非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きくすることができる。
以上の製造方法によれば、上述したような特性を有する硬質装飾部材を得ることができる。
硬質装飾部材を含む装飾品としては、眼鏡、アクセサリー、時計、スポーツ用品などが挙げられる。これら装飾品は、一部が上記硬質装飾部材で構成されていても、全部が上記硬質装飾部材で構成されていてもよい。
(1)基材と、上記基材上に積層された硬質装飾被膜とを有する硬質装飾部材であって、
上記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含むことを特徴とする硬質装飾部材。
このような硬質装飾部材は、耐傷性とともに耐食性にも優れる。
このような硬質装飾部材は、より深みのあるグレー色調を有する。
このような硬質装飾部材は、より高い硬度とともにより深みのあるグレー色調を有する。
このような厚さを有していることは色調の観点から好ましい。
このような硬質装飾部材は、より深みのあるグレー色調を有する。
このような硬質装飾部材は、耐傷性により優れる。
上記密着層は上記基材と上記グレー色調層との間に積層されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の硬質装飾部材。
このような硬質装飾部材は、高い密着度を有しており、耐傷性により優れる。
上記硬化層は上記基材と上記グレー色調層との間に積層されており、上記硬化層は上記グレー色調層よりも高い硬度を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の硬質装飾部材。
このような硬質装飾部材は、高い硬度を有しており、耐傷性により優れる。
上記基材上に、上記密着層、上記傾斜密着層、上記硬化層および上記グレー色調層の順で積層されており、
上記傾斜密着層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、上記傾斜密着層中の上記非金属元素の量は、上記基材から離れるにしたがって増加しており、
上記硬化層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、上記硬化層中の上記非金属元素の量は、上記傾斜密着層中の上記硬化層側の表面での上記炭素および窒素の合計量と同じか、または当該量よりも大きく、かつ上記硬化層は上記グレー色調層よりも高い硬度を有し、
上記グレー色調層中の上記硬化層側の表面での上記非金属元素の量は、上記硬化層中の上記非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きいことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の硬質装飾部材。
このような硬質装飾部材は、耐傷性に特に優れる。
このような硬質装飾部材は、高い硬度を有しており、耐傷性により優れる。
このような硬質装飾部材は、長期に渡って色調および耐傷性が維持できる。
上記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、基材上にグレー色調層を積層するグレー色調層積層工程を含むことを特徴とする硬質装飾部材の製造方法。
このような製造方法によれば、耐傷性とともに耐食性にも優れる硬質装飾部材が得られる。
上記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、
上記硬質装飾被膜として、密着層、傾斜密着層および硬化層をさらに含み、
上記基材上に、上記密着層、上記傾斜密着層、上記硬化層および上記グレー色調層の順で積層されており、
上記傾斜密着層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、上記傾斜密着層中の上記非金属元素の量は、上記基材から離れるにしたがって増加しており、
上記硬化層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、上記硬化層中の上記非金属元素の量は、上記傾斜密着層中の上記硬化層側の表面での上記炭素および窒素の合計量と同じか、または当該量よりも大きく、かつ上記硬化層は上記グレー色調層よりも高い硬度を有し、
上記グレー色調層中の上記硬化層側の表面での上記非金属元素の量は、上記硬化層中の上記グレー色調層側の表面での上記非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きく、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、上記非金属元素を含む反応ガスの量を増加させながら、上記密着層上に上記傾斜密着層を積層する傾斜密着層積層工程と、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、上記硬化層上に上記グレー色調層を積層するグレー色調層積層工程とを含むことを特徴とする硬質装飾部材の製造方法。
このような製造方法によれば、特に耐傷性に優れる硬質装飾部材が得られる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔元素量〕
各層中の各元素量は、ESCA(X線光電子分光方)及びEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)法により測定した。ESCAでは部材表面で定性された元素において、トップ表面からスパッタエッチングを行い、得られた各元素のXPS光電子スペクトルの検出を行い定量を行った。EPMAは加速電圧15kV、プローブ電流5×10-8、プローブ径100μmの条件で、試料表面に電子線を照射し、発生する特性X線のスペクトルを解析する事で元素の定性と定量を行った。また、Cについては計算強度を用いてZAF補正を行った。
各層の簡易的な膜厚測定は、マスクを施したSiウエハーを基材と共に成膜装置内に導入し、成膜後にマスクを除去して、マスクされていた部分とマスクされていない部分での段差を測定する事により膜厚を測定した。
硬質装飾部材の色調は、KONICA MINOLTA製のSpectra Magic NX(光源D65)を用いてL*a*b*色度図によるL*a*b*を測定して評価した。
硬質装飾部材の反射率は、KONICA MINOLTA製のSpectra Magic NX(光源D65)を用いて可視光域360〜740nmにおける分光反射率を測定した。
色調判定は、(1)明度(L*)が60<L*≦73、(2)色調a*およびb*が−2.0≦a*、b*≦2.0で、(3)a*とb*との差(|a*−b*|)が1.5以下(0以上1.5以下)であり、(4)反射率測定における可視領域(360〜740nm)での最大値と最小値との差が10%以下(0%以上10%以下)について、(1)〜(4)全てを満たしたものを○、ひとつでも満たさないものは×と判定した。
また明度に関しては、73<L*≦90を白色(銀色)、60<L*≦73をグレー色、40<L*≦60をダークグレイ色、L*≦40を黒色という判定とした。
膜硬度は、微小押込み硬さ試験機(FISCHER製H100)を用いて行った。測定子にはビッカース圧子を使用し、5mN荷重で10秒間保持した後に除荷を行い、挿入されたビッカース圧子の深さから膜硬度を算出した。
硬質装飾部材の耐傷性は基材に装飾膜を施し、アルミナ粒子が均一に分散した磨耗紙を試験サンプルに一定加重で接触させ、一定回数擦ることで傷を発生させる。傷がついた試験サンプルの表面を、キズの方向と垂直方向にスキャンして表面粗さを測定し、二乗平均荒さとして耐傷性の評価とした。傷の発生量が多く、傷の深さが深いほど二乗平均荒さの数値が大きくなり、逆に傷の発生量が少なく、傷の深さが浅いほど二乗平均粗さの数値が小さくなることから、耐傷性を数値的に評価することができる。
硬質装飾部材の耐食性は、CASS試験、人工汗試験、酸及びアルカリ浸漬試験により評価した。CASS試験はJIS−H 8502に準拠された、酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅を添加した溶液を噴霧した雰囲気に48時間設置し、装飾膜の剥離および変色を観察し耐食性の評価とした。
アルカリ浸漬試験については、5%水酸化ナトリウム水溶液に2時間/30℃の条件で浸漬、及び次亜塩素酸Na6%水溶液に2時間30℃の条件で浸漬させ、装飾膜の剥離および変色を観察して耐食性の評価とした。
○:色差判定でΔE*abが0.8以下であり、剥離、孔食がない。
△:色差判定でΔE*abが0.8より大きく1.6以下であり、剥離、孔食がない。
×:色差判定でΔE*abが1.6より大きいまたは剥離、孔食がある。
なお、色差判定は試験前と試験後の色差から計算される。試験前の膜の色調が(L*,a*,b*),試験後の膜の色調が(L1*,a1*,b1*)だった場合に、色差は〔〔L*-L1*〕^2+〔a*-a1*〕^2+(b*-b1*)^2〕^0.5で計算される。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第1の実施例を図4、図5および図6、表1、表2、表3、表4を用いて説明する。図4はグレー色調硬質装飾部材40の断面模式図、図5は装飾部材40の耐傷性を測定した図、図6は非特許文献1に基づいて作製した比較例の断面模式図、表1はTi45質量%Nb55質量%の炭化物における硬度、色調、色調差(|a*−b*|)、可視領域(360〜740nm)での反射率測定における最大値と最小値の差、および色調判定結果、表2、表3はTiC膜、NbC膜の測定結果、表4はESCAによる炭素量の測定結果、表5は耐食性の比較結果である。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第2の実施例を図7、図8および図9を用いて説明する。図7はグレー色調硬質装飾部材50の断面模式図、図8は装飾部材50の耐傷性を測定した図、図9は特許文献1に基づいて作製した比較例の断面模式図である。
実施例2の耐食性評価結果は、実施例1の表5と同様に酸、アルカリに対して高い耐食性能を示した。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第3の実施例を図10、図11を用いて説明する。図10はグレー色調硬質装飾部材60の断面模式図、図11は装飾部材60の耐傷性を測定した図である。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第4の実施例を図12、図13および表6、表7を用いて説明する。図12はグレー色調硬質装飾部材70の断面模式図、図13は装飾部材70の耐傷性を測定した図、表6はTi20質量%Nb80質量%の炭化物における硬度、色調、色調差(|a*−b*|)、可視領域(360〜740nm)での反射率測定における最大値と最小値の差、および色調判定結果である。また表7は耐食性の比較結果を示している。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第5の実施例を図14、図15を用いて説明する。図14はグレー色調硬質装飾部材80の断面模式図、図15は装飾部材80の耐傷性を測定した図である。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第6の実施例を図16、図17、表8、表9、表10、表11を用いて説明する。図16はグレー色調硬質装飾部材90の断面模式図、図17は装飾部材90の耐傷性を測定した図、表8はTi50質量%Ta50質量%の炭化物における硬度、色調、色調差(|a*−b*|)、可視領域(360〜740nm)での反射率測定における最大値と最小値の差、および色調判定結果、表9はTaC膜の測定結果、表10はESCAによる炭素量の測定結果、表11は耐食性の比較結果である。
本発明のグレー色調硬質装飾部材の第7の実施例を図18、図19を用いて説明する。図18はグレー色調硬質装飾部材100の断面模式図、図19は装飾部材100の耐傷性を測定した図である。
11 基材
15 グレー色調層
20 硬質装飾部材
21 基材
22 密着層
25 グレー色調層
30 硬質装飾部材
31 基材
32 密着層
33 傾斜密着層
34 硬化層
35 グレー色調層
36 傾斜密着層中の硬化層側の表面
37 グレー色調層中の硬化層側の表面
Claims (12)
- 基材と、前記基材上に積層された硬質装飾被膜とを有する硬質装飾部材であって、
前記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、
前記グレー色調層は、Lab色空間表示において、L * が60<L * ≦73であり、硬度がHV1500以上である
ことを特徴とする硬質装飾部材。 - 前記グレー色調層中に含有される炭素量がTi、金属M2および非金属元素の合計100atm%中30〜70atm%であることを特徴とする請求項1に記載の硬質装飾部材。
- 前記グレー色調層中に含有されるTi量がTiおよび金属M2の合計100質量%中20〜90質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬質装飾部材。
- 前記グレー色調層の厚さが0.2μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。
- 前記グレー色調層は、可視領域(360〜740nm)での反射率測定において、最大値と最小値との差が10%以下であり、Lab色空間表示において、a *およびb*がそれぞれ−2.0〜2.0、a*とb*との差が1.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。
- 前記硬質装飾被膜として密着層をさらに含み、
前記密着層は前記基材と前記グレー色調層との間に積層されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。 - 前記硬質装飾被膜として硬化層をさらに含み、
前記硬化層は前記基材と前記グレー色調層との間に積層されており、前記硬化層は前記グレー色調層よりも高い硬度を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。 - 前記硬質装飾被膜として、密着層、傾斜密着層および硬化層をさらに含み、
前記基材上に、前記密着層、前記傾斜密着層、前記硬化層および前記グレー色調層の順で積層されており、
前記傾斜密着層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、前記傾斜密着層中の前記非金属元素の量は、前記基材から離れるにしたがって増加しており、
前記硬化層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、前記硬化層中の前記非金属元素の量は、前記傾斜密着層中の前記硬化層側の表面での前記炭素および窒素の合計量と同じか、または当該量よりも大きく、かつ前記硬化層は前記グレー色調層よりも高い硬度を有し、
前記グレー色調層中の前記硬化層側の表面での前記非金属元素の量は、前記硬化層中の前記非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。 - 前記硬化層の厚さが0.5〜4.0μmであることを特徴とする請求項7または8に記載の硬質装飾部材。
- 前記硬質装飾被膜上に汚防コート層がさらに積層されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬質装飾部材。
- 基材と、前記基材上に積層された硬質装飾被膜とを有する硬質装飾部材の製造方法であって、
前記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、ここで前記グレー色調層は、Lab色空間表示において、L * が60<L * ≦73であり、硬度がHV1500以上であり、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、基材上にグレー色調層を積層するグレー色調層積層工程を含む
ことを特徴とする硬質装飾部材の製造方法。 - 基材と、前記基材上に積層された硬質装飾被膜とを有する硬質装飾部材の製造方法であって、
前記硬質装飾被膜は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、少なくとも炭素を含む非金属元素との反応化合物からなるグレー色調層を含み、
前記硬質装飾被膜として、密着層、傾斜密着層および硬化層をさらに含み、
前記基材上に、前記密着層、前記傾斜密着層、前記硬化層および前記グレー色調層の順で積層されており、
前記傾斜密着層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、前記傾斜密着層中の前記非金属元素の量は、前記基材から離れるにしたがって増加しており、
前記硬化層は、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金と、炭素および窒素から選ばれる1種または2種の非金属元素との反応化合物からなり、前記硬化層中の前記非金属元素の量は、前記傾斜密着層中の前記硬化層側の表面での前記炭素および窒素の合計量と同じか、または当該量よりも大きく、かつ前記硬化層は前記グレー色調層よりも高い硬度を有し、
前記グレー色調層中の前記硬化層側の表面での前記非金属元素の量は、前記硬化層中の前記非金属元素の量と同じか、または当該量よりも大きく、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、前記非金属元素を含む反応ガスの量を増加させながら、前記密着層上に前記傾斜密着層を積層する傾斜密着層積層工程と、
反応性スパッタリング法により、TiとNb、TaおよびVから選ばれる1種または2種以上の金属M2との合金ターゲットを使用して、前記硬化層上に前記グレー色調層を積層するグレー色調層積層工程とを含む
ことを特徴とする硬質装飾部材の製造方法。
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