JP2007262472A - 金色装飾品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面が磨耗したり擦傷したりしても色調の変化が少ない金色被膜層を有する装飾品を提供すること。
【解決手段】本発明に係る金色装飾品は、基材と、この基材表面に窒素以外の不活性ガス雰囲気下で形成された、Ti原子の含有率が膜厚方向に一定であるTi被膜と、このTi被膜上に形成された、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜と、このTiN傾斜被膜上に形成された、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるTiN被膜と、このTiN被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜と、このAu−TiN混合傾斜被膜上に形成された、Au原子、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu−TiN混合被膜と、このAu−TiN混合被膜被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu被膜またはAu合金被膜とを有する。
【選択図】図2
【解決手段】本発明に係る金色装飾品は、基材と、この基材表面に窒素以外の不活性ガス雰囲気下で形成された、Ti原子の含有率が膜厚方向に一定であるTi被膜と、このTi被膜上に形成された、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜と、このTiN傾斜被膜上に形成された、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるTiN被膜と、このTiN被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜と、このAu−TiN混合傾斜被膜上に形成された、Au原子、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu−TiN混合被膜と、このAu−TiN混合被膜被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu被膜またはAu合金被膜とを有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、表面が磨耗しても色調変化の少ない金色装飾品およびその製造方法に関する。
時計や装身具などの外装部品は、装飾的要素である色調と機能的要素である耐摩耗性とを同時に備えることが要求される。金はこの要求に最適であり、従来から素材をそのまま加工したり、他の金属上に金メッキ被覆層を形成して使用されている。ところが、特に耐食性が要求されない場合には、金色を示すという意味で1ミクロン以下の被複層でも目的は達成されていたが、腕時計のケースやバンド、装身具では汗や水蒸気等に対する高度の耐性が要求されるため、金メッキは少なくとも10ミクロン以上の膜厚が必要であった。
しかしながら、金は非常に高価な金属であるため厚膜の金被覆層を適用できる外装部品には制限があった。このため、金被覆層の薄膜化が求められていた。しかし、金は硬さが薄膜で200Hv前後であるため、耐擦傷性や耐摩耗性に劣り、腕時計や装身具の携帯により傷が付きやすいという問題があった。そこで、耐擦傷性や耐摩耗性に優れた金色被覆層として、金色被覆層が窒化チタン層と金層または金合金層との2層からなる外装部品が提案されている(特許文献1および2参照)。ところが、この金色被覆層は、窒化チタン層と金層または金合金層との色調が異なるため、表面が磨耗したり擦傷するとその部分が目立つという問題があった。
一方、イオンプレ−テイングやスパッタリングなどの乾式メッキ技術によって、窒化チタンと金または金合金とからなる被覆層が提案され(たとえば、特許文献1〜3参照)、耐食性および耐摩耗性に優れ、膜厚が薄く、安価な金色被覆が形成されるようになった。ところが、この窒化チタンと金または金合金とからなる被覆層は、金色色調を呈するものの、従来の金メッキ被覆層に比べて、十分な明るさとはいえなかった。
特開昭54−2942号公報
特開昭58−104176号公報
特開昭60−67654号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、表面が磨耗したり擦傷したりしても色調の変化が少ない金色被膜層を有する装飾品およびその製造方法を提供することを目的としている。
本発明に係る金色装飾品の製造方法は、基材の表面に、乾式メッキ装置内で窒素以外の不活性ガス雰囲気下にチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させてTi被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量が経時的に増大するように乾式メッキ装置内に窒素ガスを導入して、前記Ti被膜の上に、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持して、前記TiN傾斜被膜の上にTiN被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させ、かつこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、単位時間当りの金の蒸発量が経時的に増大するように金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記TiN被膜の上に、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内でチタンと金またはチタンと金と金およびチタン以外の金属とをこれらの単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させて、前記Au−TiN混合傾斜被膜の上に、Au−TiN混合被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でのチタンの蒸発を停止し、かつこの乾式メッキ装置内への窒素の供給を停止し、この乾式メッキ装置内で金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記Au−TiN混合被膜の上に、Au被膜またはAu合金被膜を形成させることを特徴とする。
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量が経時的に増大するように乾式メッキ装置内に窒素ガスを導入して、前記Ti被膜の上に、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持して、前記TiN傾斜被膜の上にTiN被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させ、かつこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、単位時間当りの金の蒸発量が経時的に増大するように金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記TiN被膜の上に、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内でチタンと金またはチタンと金と金およびチタン以外の金属とをこれらの単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させて、前記Au−TiN混合傾斜被膜の上に、Au−TiN混合被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でのチタンの蒸発を停止し、かつこの乾式メッキ装置内への窒素の供給を停止し、この乾式メッキ装置内で金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記Au−TiN混合被膜の上に、Au被膜またはAu合金被膜を形成させることを特徴とする。
金およびチタン以外の金属原子を含まないAu−TiN混合傾斜被膜を形成させる際に、該Au−TiN混合傾斜被膜中のAu原子の含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で膜厚方向に増大するように単位時間当りの金の蒸発量を経時的に増大させることが好ましく、乾式メッキ装置内に、TiN被膜形成時の窒素ガス供給量の2.5倍量以上の窒素ガスを供給することも好ましい。
Au−TiN混合被膜を形成させる際に、乾式メッキ装置内に、TiN被膜形成時の窒素ガス供給量の2.5倍量以上の窒素ガスを供給することが好ましい。
TiN傾斜被膜を形成させる際に、該TiN傾斜被膜中のN原子の含有率が4〜12原子%/0.1μmの割合で膜厚方向に増大するようにこの乾式メッキ装置内の窒素量を経時的に増大させることが好ましい。
TiN傾斜被膜を形成させる際に、該TiN傾斜被膜中のN原子の含有率が4〜12原子%/0.1μmの割合で膜厚方向に増大するようにこの乾式メッキ装置内の窒素量を経時的に増大させることが好ましい。
Au−TiN混合傾斜被膜中およびAu−TiN混合被膜中のAu原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、該Au−TiN混合被膜上にAu合金被膜を形成させることが好ましい。
本発明に係る金色装飾品は、基材と、この基材表面に窒素以外の不活性ガス雰囲気下で形成された、Ti原子の含有率が膜厚方向に一定であるTi被膜と、このTi被膜上に形成された、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜と、このTiN傾斜被膜上に形成された、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるTiN被膜と、このTiN被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜と、このAu−TiN混合傾斜被膜上に形成された、Au原子、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu−TiN混合被膜と、このAu−TiN混合被膜被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu被膜またはAu合金被膜とを有することを特徴とする。
Au−TiN混合傾斜被膜において、Au原子の含有率がTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して増大することが好ましく、Au原子の含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で増大することが好ましい。
また、Au−TiN混合傾斜被膜において、Au原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、Au原子と金およびチタン以外の金属原子との合計含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で増大することが好ましく、Au−TiN混合被膜中のAu原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、該Au−TiN混合被膜上にAu合金被膜が形成していることが好ましい。
TiN傾斜被膜において、N原子の含有率がTi被膜からTiN被膜への膜厚方向に対して増大することが好ましく、N原子の含有率が4〜12原子%/0.1μmの割合で増大することが好ましい。
本発明に係る金色装飾品は、Ti被膜の膜厚が0.1〜0.5μmであり、TiN傾斜被膜とTiN被膜との合計膜厚が0.5〜2.0μmであり、かつ該合計膜厚に対するTiN傾斜被膜の膜厚の割合が10〜60%の範囲にあり、Au−TiN混合傾斜被膜の膜厚とAu−TiN混合被膜との合計膜厚が0.005〜0.1μmであり、かつ該合計膜厚に対するAu−TiN混合傾斜被膜の膜厚の割合が10〜90%の範囲にあり、Au被膜またはAu合金被膜の膜厚が0.005〜0.1μmであることが好ましい。
本発明に係る金色装飾品は、各被膜層が互いに密着性に優れ、かつ最外層であるAu被膜およびAu合金被膜の膜厚が薄いため、これらの被膜が磨耗や擦傷しても色調の変化が少ない。さらに、Au−TiN混合被膜は表面硬度が高く、耐食性、耐磨耗性および耐擦傷性に優れているため、Au被膜やAu合金被膜が摩耗や擦傷してもそれ以上の摩耗や擦傷が発生しない。また、Au−TiN混合傾斜被膜がAu−TiN混合被膜とTiN被膜との両被膜に対して優れた密着性を示すため、Au−TiN混合被膜を極端に薄くしてもAu−TiN混合被膜の剥離が発生せず、金色装飾品の摩耗や摩擦キズをAu−TiN混合被膜で止めることができる。このため、金色色調を保持して金の使用量を低減することができ、安価に金色装飾品を得ることができる。
また、本発明に係る金色装飾品の製造方法によれば、このような金色装飾品を製造することができる。
以下、本発明に係る金色装飾品およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る金色装飾品は、乾式メッキ法により、基材の表面にTi被膜を形成し、このTi被膜上にTiN傾斜被膜を形成し、このTiN傾斜被膜上にTiN被膜を形成し、このTiN被膜上にAu−TiN混合傾斜被膜を形成し、このAu−TiN混合傾斜被膜の上にAu−TiN混合被膜を形成し、このAu−TiN混合被膜の上にAu被膜またはAu合金被膜を形成することにより製造することができる。
本発明に係る金色装飾品は、乾式メッキ法により、基材の表面にTi被膜を形成し、このTi被膜上にTiN傾斜被膜を形成し、このTiN傾斜被膜上にTiN被膜を形成し、このTiN被膜上にAu−TiN混合傾斜被膜を形成し、このAu−TiN混合傾斜被膜の上にAu−TiN混合被膜を形成し、このAu−TiN混合被膜の上にAu被膜またはAu合金被膜を形成することにより製造することができる。
本発明に用いられる乾式メッキ法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらのうち、イオンプレーティング法が好ましく用いられる。
以下、各被膜の形成方法を詳細に説明する。
(1)Ti被膜の形成
まず、基材を乾式メッキ装置に配置し、乾式メッキ装置内を排気した後、窒素以外の不活性ガスを導入する。次いで、この不活性ガス雰囲気下にチタンを単位時間当りのチタンの蒸発量が一定となるように、すなわち定常的に蒸発させて乾式メッキ法により基材の表面にTi被膜を形成させる。このとき、単位時間当りのチタンの蒸発量は、Ti被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。
(1)Ti被膜の形成
まず、基材を乾式メッキ装置に配置し、乾式メッキ装置内を排気した後、窒素以外の不活性ガスを導入する。次いで、この不活性ガス雰囲気下にチタンを単位時間当りのチタンの蒸発量が一定となるように、すなわち定常的に蒸発させて乾式メッキ法により基材の表面にTi被膜を形成させる。このとき、単位時間当りのチタンの蒸発量は、Ti被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。
このとき、乾式メッキ装置内を通常5〜0.1mPa、好ましくは1〜0.1mPaまで排気した後、窒素以外の不活性ガスを通常0.01〜1.0Pa、好ましくは0.1〜0.5Paまで導入する。この窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどが挙げられる。乾式メッキ装置内の排気圧力はできる限り低くすることが好まし
く、これにより、装置内部の不可避成分(窒素、酸素、炭素)の残存量を十分に低減して純度の高いTi被膜を得ることができる。
く、これにより、装置内部の不可避成分(窒素、酸素、炭素)の残存量を十分に低減して純度の高いTi被膜を得ることができる。
また、基材の材質としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タングステンカーバイド、セラミックスなどが挙げられる。このような基材は乾式メッキ装置に配置する前に、その表面を有機溶剤などで洗浄、脱脂することが好ましい。
このようにして形成されたTi被膜は、Ti原子の含有率が膜厚方向にほぼ一定となる。このTi被膜には、窒素、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。このとき、Ti原子の含有率は、好ましくは80〜99.5原子%、より好ましくは88〜99.5原子%、より好ましくは95〜99.5原子%である。
なお、上記Ti被膜において、Ti原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
(2)TiN傾斜被膜の形成
上記(1)に続けて、チタンを定常的に蒸発させて乾式メッキ装置内のTi原子量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内に窒素ガスを導入する。この窒素ガスの導入開始により乾式メッキ装置内の窒素量、すなわちN原子量が経時的に増大する。N原子量が経時的に増大している状態で、乾式メッキ法により上記Ti被膜上にTiとNとを含有する被膜を形成する。このようにして形成された被膜は、N原子およびTi原子の含有率が膜厚方向に勾配を有する(以下、この被膜を「TiN傾斜被膜」という)。
(2)TiN傾斜被膜の形成
上記(1)に続けて、チタンを定常的に蒸発させて乾式メッキ装置内のTi原子量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内に窒素ガスを導入する。この窒素ガスの導入開始により乾式メッキ装置内の窒素量、すなわちN原子量が経時的に増大する。N原子量が経時的に増大している状態で、乾式メッキ法により上記Ti被膜上にTiとNとを含有する被膜を形成する。このようにして形成された被膜は、N原子およびTi原子の含有率が膜厚方向に勾配を有する(以下、この被膜を「TiN傾斜被膜」という)。
このとき、乾式メッキ装置内の窒素量を、形成されるTiN傾斜被膜中のN原子の含有率が好ましくは4〜12原子%/0.1μm、好ましくは6〜10原子%/0.1μm、より好ましくは7〜9原子%/0.1μmの割合で膜厚方向に増大するように、経時的に増大させることが望ましい。
たとえば、導入ガスとして、窒素ガスとアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスを使用する場合、混合ガス中の窒素ガスの割合を経時的に増大させることにより、乾式メッキ装置内の窒素量を経時的に増大させることができる。窒素ガスの導入条件は、上記含有率勾配を有するTiN傾斜被膜が形成されるように、乾式メッキ装置やメッキ条件等により適宜設定される。たとえば、窒素ガスと不活性ガスとの流量比(窒素ガス/不活性ガス)を0から開始して、好ましくは1.5〜3.0の範囲まで、より好ましくは1.8〜2.5の範囲まで、好ましくは10〜60分間で、より好ましくは20〜40分間で増大させる。
単位時間当りのチタンの蒸発量は、TiN傾斜被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。たとえば、上記Ti被膜の形成時の単位時間当りのチタンの蒸発量と同一の条件でチタンを蒸発させることが望ましい。
このようにして形成されたTiN傾斜被膜中のN原子の含有率がTi被膜からTiN被膜へ膜厚方向に対して増大し、Ti原子の含有率がTi被膜からTiN被膜へ膜厚方向に対して減少することが好ましい。具体的には、N原子の含有率は上記範囲の割合でTi被膜からTiN被膜へ膜厚方向に対して増大することが好ましい。また、Ti原子の含有率は、好ましくは4〜12原子%/0.1μm、好ましくは6〜10原子%/0.1μm、より好ましくは7〜9原子%/0.1μmの割合でTi被膜からTiN被膜への膜厚方向に対して減少することが望ましい。
N原子およびTi原子が上記のような割合で増大または減少するTiN傾斜被膜は、Ti被膜およびTiN被膜の両被膜との密着性に優れている。
このTiN傾斜被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
このTiN傾斜被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
なお、上記TiN傾斜被膜において、Ti原子、N原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
(3)TiN被膜の形成
上記(2)に続けて、乾式メッキ装置内に定常的に窒素ガスを供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量が一定となるようにチタンを定常的に蒸発させて、乾式メッキ法により上記TiN傾斜被膜の上にTiN被膜を形成させる。
(3)TiN被膜の形成
上記(2)に続けて、乾式メッキ装置内に定常的に窒素ガスを供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量が一定となるようにチタンを定常的に蒸発させて、乾式メッキ法により上記TiN傾斜被膜の上にTiN被膜を形成させる。
このとき、乾式メッキ装置内の窒素量は、形成されるTiN被膜中のN原子の含有率が好ましくは10〜60原子%、より好ましくは20〜50原子%、特に好ましくは30〜45原子%となるように、一定に保持させる。このとき、乾式メッキ装置内に供給される窒素ガス量は、乾式メッキ装置内の窒素量が一定に保持されるように、乾式メッキ装置やメッキ条件等により適宜設定される。
たとえば、導入ガスとして、窒素ガスとアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスを使用する場合、窒素ガスと不活性ガスとの流量比(窒素ガス/不活性ガス)を好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.8〜2.5の範囲で一定に保持することが望ましい。
単位時間当りのチタンの蒸発量は、TiN被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。たとえば、上記Ti被膜の形成時の単位時間当りのチタンの蒸発量と同一の条件でチタンを蒸発させることが望ましい。
このようにして形成されたTiN被膜は、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向にほぼ一定となる。N原子の含有率は上記範囲にあり、Ti原子の含有率は、好ましくは30〜80原子%、より好ましくは40〜70原子%、特に好ましくは45〜60原子%である。
また、このTiN被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
なお、上記TiN被膜において、Ti原子、N原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
(4)Au−TiN混合傾斜被膜の形成
上記(3)に続けて、乾式メッキ装置内に窒素ガスを定常的に供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量が一定となるようにチタンを定常的に蒸発させる。このとき、窒素ガスは、上記TiN被膜形成時の乾式メッキ装置内への窒素ガス供給量の好ましくは2.5倍量以上、より好ましくは2.8倍量以上窒素ガスを乾式メッキ装置内に供給することが望ましい。窒素ガス供給量を上記のように増大させて保持することにより、より金色色調を呈する装飾品を得ることができる。
(4)Au−TiN混合傾斜被膜の形成
上記(3)に続けて、乾式メッキ装置内に窒素ガスを定常的に供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量が一定となるようにチタンを定常的に蒸発させる。このとき、窒素ガスは、上記TiN被膜形成時の乾式メッキ装置内への窒素ガス供給量の好ましくは2.5倍量以上、より好ましくは2.8倍量以上窒素ガスを乾式メッキ装置内に供給することが望ましい。窒素ガス供給量を上記のように増大させて保持することにより、より金色色調を呈する装飾品を得ることができる。
単位時間当りのチタンの蒸発量は、Au−TiN混合傾斜被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。たとえば、上記Ti被膜の形成時の単位時間当りのチタンの蒸発量と同一の条件でチタンを蒸発させることが望ましい。
上記状態を保持しながら、単位時間当りの金の蒸発量が経時的に増大するように金または金と金およびチタン以外の金属(以下、「他の金属」という)とを蒸発させて、この乾式メッキ装置内にAu原子またはAu原子と他の金属原子とを導入する。次いで、単位時間当りの金の蒸発量を経時的に増大させながら、乾式メッキ法により上記TiN被膜上にTiとNとAuと必要に応じて他の金属とを含有する被膜を形成する。上記のように単位時間当りの金の蒸発量を経時的に増大させることにより、単位時間当りの金の蒸着量が経時的に増大し、膜成長方向に金の含有量が増大する傾斜膜を形成することができる。このようにして形成された被膜は、Ti原子、N原子、Au原子および他の金属原子の含有率が膜厚方向に勾配を有する(以下、この被膜を「Au−TiN混合傾斜被膜」という)。
このとき、単位時間当りの金の蒸発量は、形成されるAu−TiN混合傾斜被膜が他の金属原子を含まない場合には、この傾斜被膜中のAu原子の含有率が好ましくは2〜10原子%/0.001μm、より好ましくは4〜9原子%/0.001μm、特に好ましくは6〜8原子%/0.001μmの割合で膜厚方向に増大するように、経時的に増大させることが望ましい。一方、形成されるAu−TiN混合傾斜被膜が他の金属原子を含む場合には、この傾斜被膜中のAu原子と他の原子との合計含有率が好ましくは2〜10原子%/0.001μm、より好ましくは4〜9原子%/0.001μm、特に好ましくは6〜8原子%/0.001μmの割合で膜厚方向に増大するように、経時的に増大させることが望ましい。
たとえば、成膜速度0.02μm/分で他の金属を含まないAu−TiN混合傾斜被膜を成膜した場合に換算すると、単位時間当りに蒸着した全原子中のAu原子の含有量が、1秒間に、好ましくは0.6〜3.4原子%、より好ましくは1.3〜3.0原子%、特に好ましくは2.0〜2.7原子%の割合で増加するように金を蒸発させることが望ましい。同様に、成膜速度0.02μm/分で他の金属を含むAu−TiN混合傾斜被膜を成膜した場合に換算すると、単位時間当りに蒸着した全原子中のAu原子と他の金属原子との合計含有量が、1秒間に、好ましくは0.6〜3.4原子%、より好ましくは1.3〜3.0原子%、特に好ましくは2.0〜2.7原子%の割合で増加するように金と他の金属とを蒸発させることが望ましい。
このようにして形成されたAu−TiN混合傾斜被膜は、Au原子の含有率またはAu原子と他の金属原子との合計含有率がTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して増大し、Ti原子およびN原子の含有率がTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して減少することが好ましい。具体的には、Au原子の含有率またはAu原子と他の金属原子との合計含有率が上記範囲の割合でTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して増大することが望ましい。また、Ti原子の含有率は、好ましくは1〜10原子%/0.001μm、より好ましくは2〜8原子%/0.001μm、特に好ましくは3〜5原子%/0.001μmの割合でTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して減少することが望ましい。さらに、N原子の含有率は、好ましくは1〜10原子%/0.001μm、より好ましくは2〜8原子%/0.001μm、特に好ましくは4〜6原子%/0.001μmの割合でTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して減少することが望ましい。
Au原子、Ti原子およびN原子が上記のような割合で増大または減少するAu−TiN混合傾斜被膜は、TiN被膜およびAu−TiN混合被膜の両被膜との密着性に優れて
いる。
いる。
このAu−TiN混合傾斜被膜が他の金属原子を含有する場合、Au原子と他の金属原子とが金合金を形成していることが好ましい。他の金属原子としては、ゲルマニウム、ケイ素、銀、銅、パラジウム、ニッケル、鉄、白金、ニオブ、クロムなどが挙げられる。他の金属原子の含有率は、好ましくは1〜20原子%、より好ましくは3〜15原子%、特に好ましくは5〜10原子%である。
また、Au−TiN混合傾斜被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
なお、上記Au−TiN混合傾斜被膜において、Ti原子、Au原子、他の金属原子、N原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
(5)Au−TiN混合被膜の形成
上記(4)に続けて、乾式メッキ装置内に窒素ガスを定常的に供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量およびAu原子量が一定となるようにチタンと金またはチタンと金と他の金属とを定常的に蒸発させて、乾式メッキ法により上記Au−TiN混合傾斜被膜の上にAu−TiN混合被膜を形成させる。
(5)Au−TiN混合被膜の形成
上記(4)に続けて、乾式メッキ装置内に窒素ガスを定常的に供給してこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内のTi原子量およびAu原子量が一定となるようにチタンと金またはチタンと金と他の金属とを定常的に蒸発させて、乾式メッキ法により上記Au−TiN混合傾斜被膜の上にAu−TiN混合被膜を形成させる。
このとき、乾式メッキ装置内の窒素量は、形成されるAu−TiN混合被膜中のN原子の含有率が好ましくは5〜50原子%、より好ましくは15〜40原子%、特に好ましくは20〜30原子%となるように、一定に保持させる。このとき、窒素ガスは、上記Au−TiN混合傾斜被膜形成時と同様に、上記TiN被膜形成時の乾式メッキ装置内への窒素ガス供給量の好ましくは2.5倍量以上、より好ましくは2.8倍量以上窒素ガスを乾式メッキ装置内に供給することが望ましい。窒素ガス供給量を上記のように増大させて保持することにより、より金色色調を呈する装飾品を得ることができる。乾式メッキ装置内に供給される窒素ガス量は、乾式メッキ装置内の窒素量が一定に保持されるように、上記TiN被膜形成時と同様に、乾式メッキ装置やメッキ条件等により適宜設定される。
単位時間当りのチタンの蒸発量は、Au−TiN混合被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。たとえば、上記Ti被膜の形成時の単位時間当りのチタンの蒸発量と同一の条件でチタンを蒸発させることが望ましい。
単位時間当りの金の蒸発量は、形成されるAu−TiN混合被膜中のAu原子の含有率が好ましくは10〜60原子%、より好ましくは20〜55原子%、特に好ましくは25〜45原子%となるように、一定に保持させる。
このようにして形成されたAu−TiN混合被膜は、Au原子、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向にほぼ一定となる。Au原子およびN原子の含有率は上記範囲にあり、Ti原子の含有率は、好ましくは10〜60原子%、より好ましくは20〜50原子%、特に好ましくは30〜45原子%である。
このAu−TiN混合被膜が他の金属原子を含有する場合、Au原子と他の金属原子とが金合金を形成していることが好ましい。他の金属原子としては、ゲルマニウム、ケイ素、銀、銅、パラジウム、ニッケル、鉄、白金、ニオブ、クロムなどが挙げられる。他の金属原子の含有率は、好ましくは1〜20原子%、より好ましくは3〜15原子%、特に好ましくは5〜10原子%である。
また、このAu−TiN混合被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
なお、上記Au−TiN混合被膜において、Ti原子、Au原子、他の金属原子、N原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
(6)Au被膜またはAu合金被膜の形成
上記(5)に続けて、乾式メッキ装置内でのチタンの蒸発を停止し、さらに乾式メッキ装置内への窒素の供給を停止し、この状態で乾式メッキ装置内で金または金と他の金属とを蒸発させて、乾式メッキ法により上記Au−TiN混合被膜の上に最外層としてAu被膜またはAu合金被膜を形成する。
(6)Au被膜またはAu合金被膜の形成
上記(5)に続けて、乾式メッキ装置内でのチタンの蒸発を停止し、さらに乾式メッキ装置内への窒素の供給を停止し、この状態で乾式メッキ装置内で金または金と他の金属とを蒸発させて、乾式メッキ法により上記Au−TiN混合被膜の上に最外層としてAu被膜またはAu合金被膜を形成する。
このとき、単位時間当りの金の蒸発量は、Au被膜またはAu合金被膜の成膜速度が好ましくは0.005〜0.05μm/分、より好ましくは0.01〜0.03μm/分となるように設定することが望ましい。たとえば、上記Au−TiN混合被膜の形成時の単位時間当りの金の蒸発量と同一の条件で金を蒸発させることが望ましい。
本発明では、耐食性に優れる点で最外層はAu合金被膜であることが好ましい。Au合金被膜における他の金属原子としては、パラジウム、ニッケル、白金、鉄、ニオブ、クロム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素が挙げられる。これらのうち、特に耐食性に優れる点でパラジウム、ニッケルが好ましい。他の金属原子の含有率は、好ましくは3〜30原子%、より好ましくは10〜20原子%、特に好ましくは12〜18原子%である。他の金属原子の含有率が上記範囲にあると、耐食性に優れるとともに、下地層の色調を反映した色調を呈する。
また、このAu被膜またはAu合金被膜には、酸素、炭素のうちの少なくとも1種からなる不可避成分が、好ましくは0.5〜20原子%、より好ましくは0.5〜12原子%、特に好ましくは0.5〜5原子%で含まれていてもよい。
なお、上記Au被膜またはAu合金被膜において、Au原子、他の金属原子および不可避成分の含有率の合計を100原子%とする。
本発明に係る金色装飾品は、上記製造方法により製造することができる。この金色装飾品では、Au−TiN混合被膜が高い表面硬度を有するため、Au被膜またはAu合金被膜を極端に薄くすることができる。さらに、Au被膜またはAu合金被膜が非常に薄いため、これらの被膜が磨耗や擦傷しても色調の変化が少なく、金色装飾品表面の磨耗キズや擦傷キズが目立たない。
本発明に係る金色装飾品は、上記製造方法により製造することができる。この金色装飾品では、Au−TiN混合被膜が高い表面硬度を有するため、Au被膜またはAu合金被膜を極端に薄くすることができる。さらに、Au被膜またはAu合金被膜が非常に薄いため、これらの被膜が磨耗や擦傷しても色調の変化が少なく、金色装飾品表面の磨耗キズや擦傷キズが目立たない。
また、Au−TiN混合被膜とTiN被膜とがAu−TiN混合傾斜被膜を介して積層されているため、密着性に優れている。これにより、Au−TiN混合被膜を極端に薄くすることができる。また、Au−TiN混合被膜を極端に薄くできるため、TiN被膜を厚くすることも可能であり、積層膜としての強度も向上する。
この金色装飾品の各被膜の好ましい膜厚の範囲を以下に示す。Ti被膜の膜厚は好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.2〜0.5μm、特に好ましくは0.3〜0.5μmである。
TiN傾斜被膜とTiN被膜との合計膜厚は、好ましくは0.5〜2.0μm、より好ましくは0.7〜1.8μm、特に好ましくは1.0〜1.5μmである。TiN傾斜被膜とTiN被膜との合計膜厚に対するTiN傾斜被膜の膜厚の割合は、好ましくは10〜
60%、より好ましくは20〜55%、特に好ましくは30〜50%である。TiN傾斜被膜の膜厚の割合が上記上限を超えるとTiN被膜の割合が減少して膜強度が低下することがある。
60%、より好ましくは20〜55%、特に好ましくは30〜50%である。TiN傾斜被膜の膜厚の割合が上記上限を超えるとTiN被膜の割合が減少して膜強度が低下することがある。
Au−TiN混合傾斜被膜の膜厚とAu−TiN混合被膜との合計膜厚は、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.005〜0.05μm、特に好ましくは0.01〜0.02μmである。Au−TiN混合傾斜被膜の膜厚とAu−TiN混合被膜との合計膜厚に対するAu−TiN混合傾斜被膜の膜厚の割合が好ましくは10〜90%、より好ましくは20〜70%、特に好ましくは30〜50%である。Au−TiN混合傾斜被膜の膜厚の割合が上記範囲にあると、Au−TiN混合被膜が十分な膜強度を有し、かつAu−TiN混合被膜とTiN被膜との間で剥離が発生しない。
Au被膜またはAu合金被膜の膜厚は、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.005〜0.05μm、特に好ましくは0.005〜0.02μmである。
各層の膜厚が上記範囲にあると、各層の層間剥離が起こらず、密着性に優れた金色装飾品を得ることができる。特に、Au被膜またはAu合金被膜の膜厚が上記範囲にあると、金色装飾品は明るい金色色調を呈するとともに、これらの被膜が磨耗や擦傷しても色調の変化が少なく、磨耗や擦傷による表面のキズが目立たない金色装飾品を得ることができる。
各層の膜厚が上記範囲にあると、各層の層間剥離が起こらず、密着性に優れた金色装飾品を得ることができる。特に、Au被膜またはAu合金被膜の膜厚が上記範囲にあると、金色装飾品は明るい金色色調を呈するとともに、これらの被膜が磨耗や擦傷しても色調の変化が少なく、磨耗や擦傷による表面のキズが目立たない金色装飾品を得ることができる。
このような金色装飾品は、Au−TiN混合被膜の被膜硬度が高く、たとえば、ナノインデンターにより荷重50μNの条件で測定して換算したビッカース硬度が、好ましくは500〜800Hv、より好ましくは600〜700Hvである。したがって、磨耗や擦傷により、最外層のAu被膜またはAu合金被膜が損傷しても、下地層のAu−TiN混合被膜でその損傷を止めることができる。なお、従来の金色装飾品の最外層の硬度は約370Hvである。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例における耐食性試験および摩耗試験は、下記の方法に従って実施した。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例における耐食性試験および摩耗試験は、下記の方法に従って実施した。
(1)耐食性試験
耐食性試験は、JIS H8502(キャス(CASS)試験)に従って行なった。試験時間は96時間とし、その試験面の耐食性評価は、レイティングナンバ標準図表によってレイティングナンバが9.8以上のとき、合格とした。
(2)摩耗試験
図1に示すように、被膜形成した試験片1をその被膜形成面側を下向きにして、試験片押さえ板2と試験片押さえネジ3とによって、試験片取付台4の開口部に固定した。次いで、摩耗輪5に研磨紙(図示せず)を貼り付けた。この摩耗輪5に、図示しない天秤機構によって研磨紙を試験片1に押しつけるような上向きの荷重を加えた。
耐食性試験は、JIS H8502(キャス(CASS)試験)に従って行なった。試験時間は96時間とし、その試験面の耐食性評価は、レイティングナンバ標準図表によってレイティングナンバが9.8以上のとき、合格とした。
(2)摩耗試験
図1に示すように、被膜形成した試験片1をその被膜形成面側を下向きにして、試験片押さえ板2と試験片押さえネジ3とによって、試験片取付台4の開口部に固定した。次いで、摩耗輪5に研磨紙(図示せず)を貼り付けた。この摩耗輪5に、図示しない天秤機構によって研磨紙を試験片1に押しつけるような上向きの荷重を加えた。
その後、試験片取付台4を、図示しないモータの回転運動を往復運動に変換する機構によって往復運動させ、さらに摩耗輪5を試験片取付台4の1往復ごとに角度0.9゜ずつ矢印方向に回転させた。この回転によって、試験片1は摩耗輪5に貼り付けられた研磨紙の摩耗していない新しい領域に常に接触する。試験片取付台4の往復回数は自動設定することができ、設定した回数で摩耗試験機は自動停止する。
さらに、摩耗輪5に貼り付ける研磨紙としては、ラッピングフィルム(フィルム表面に粒子径12μmのAl2O3粒子を有する、#1200)を用い、この研磨紙と試験片1と
の接触荷重が500g、試験片取付台4の往復運動回数が100回の条件で、摩耗試験機(スガ試験機(株)製、NUS−ISO−2)により摩耗試験を行なった。
の接触荷重が500g、試験片取付台4の往復運動回数が100回の条件で、摩耗試験機(スガ試験機(株)製、NUS−ISO−2)により摩耗試験を行なった。
[比較例1]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
続いて、上記Ti被膜形成時と同一条件でチタンを蒸発させながら、導入ガスをアルゴンガスから窒素とアルゴンとの混合ガスに切り替えた。このとき、ガス流量を300sccmで一定に保持した状態で、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(N2/Ar)を0か
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
次いで、上記Ti被膜形成終了時と同一条件で、チタンの蒸発および窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記TiN傾斜被膜上に膜厚0.6μmのTiN被膜を形成させた。
その後、チタンの蒸発および窒素ガスの供給を停止し、アルゴンガスを供給しながら金を蒸発させて成膜速度0.02μm/分で30秒間成膜し、上記TiN被膜上に膜厚0.01μmのAu被膜を形成させた。
得られた腕時計用ケースは、均一な金色調を有していた。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.8であった。また、摩耗試験を実施した後、色彩色差計(ミノルタ社製)により試験前後の色差(ΔE*ab)を測定したところ、6.54であった。表面を目視観察したところ、摩耗キズが見られた。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.8であった。また、摩耗試験を実施した後、色彩色差計(ミノルタ社製)により試験前後の色差(ΔE*ab)を測定したところ、6.54であった。表面を目視観察したところ、摩耗キズが見られた。
[比較例2]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
続いて、上記Ti被膜形成時と同一条件でチタンを蒸発させながら、導入ガスをアルゴンガスから窒素とアルゴンとの混合ガスに切り替えた。このとき、ガス流量を300sccmで一定に保持した状態で、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(N2/Ar)を0か
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
次いで、上記Ti被膜形成終了時と同一条件で、チタンの蒸発および窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記TiN傾斜被膜上に膜厚0.6μmのTiN被膜を形成させた。
続いて、上記TiN被膜形成時と同一条件でチタンを定常的に蒸発させ、かつ流量比(N2/Ar)が5.8の窒素とアルゴンとの混合ガスを流量680sccmで供給しなが
ら、金を蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子の含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金の単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAu含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。
ら、金を蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子の含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金の単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAu含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。
次いで、上記Au−TiN混合傾斜被膜形成終了時と同一条件で、チタンおよび金の蒸発、ならびに窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記Au−TiN混合傾斜被膜上に膜厚0.01μmのAu−TiN混合被膜を形成させた。
得られた腕時計用ケースは、均一な金色調を有していた。この腕時計用ケースの表面反射率を波長400〜700nmの範囲で測定した。結果を図2に示す。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.9であった。また、摩耗試験を実施したところ、表面に摩耗キズが僅かに認められた。さらに、Au−TiN混合被膜の剥離は認められなかった。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.9であった。また、摩耗試験を実施したところ、表面に摩耗キズが僅かに認められた。さらに、Au−TiN混合被膜の剥離は認められなかった。
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
続いて、上記Ti被膜形成時と同一条件でチタンを蒸発させながら、導入ガスをアルゴンガスから窒素とアルゴンとの混合ガスに切り替えた。このとき、ガス流量を300sccmで一定に保持した状態で、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(N2/Ar)を0か
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
次いで、上記Ti被膜形成終了時と同一条件で、チタンの蒸発および窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記TiN傾斜被膜上に膜厚0.6μmのTiN被膜を形成させた。
続いて、上記TiN被膜形成時と同一条件でチタンを定常的に蒸発させ、かつ流量比(N2/Ar)が5.8の窒素とアルゴンとの混合ガスを流量680sccmで供給しなが
ら、金を蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子の含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金の単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAu含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。
ら、金を蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子の含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金の単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAu含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。
次いで、上記Au−TiN混合傾斜被膜形成終了時と同一条件で、チタンおよび金の蒸発、ならびに窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記Au−TiN混合傾斜被膜上に膜厚0.01μmのAu−TiN混合被膜を形成させた。
その後、チタンの蒸発および窒素ガスの供給を停止し、金の蒸発とアルゴンガスの供給を上記Au−TiN混合被膜形成終了時と同一条件で継続して、上記Au−TiN混合被膜上に膜厚0.01μmのAu被膜を形成させた。
得られた腕時計用ケースは、均一な金色調を有していた。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.9であった。また、摩耗試験を実施したところ、表面の摩耗キズはごく僅かに認められたが、キズの程度は上記比較例2よりも軽かった。また、Au−TiN混合被膜の剥離は認められなかった。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.9であった。また、摩耗試験を実施したところ、表面の摩耗キズはごく僅かに認められたが、キズの程度は上記比較例2よりも軽かった。また、Au−TiN混合被膜の剥離は認められなかった。
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用ケースを有機溶剤で洗浄・脱脂し、この基材をイオンプレーティング装置内に取り付けた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
次いで、装置内を1.3mPaまで排気した後、アルゴンガスを0.13Paまで導入した。このアルゴン雰囲気中で、装置内部に備えられたプラズマ銃でプラズマを発生させた後、チタンを10分間定常的に蒸発させて腕時計用基材の表面に膜厚0.2μmのTi被膜を形成させた。
続いて、上記Ti被膜形成時と同一条件でチタンを蒸発させながら、導入ガスをアルゴンガスから窒素とアルゴンとの混合ガスに切り替えた。このとき、ガス流量を300sccmで一定に保持した状態で、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(N2/Ar)を0か
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
ら2.0まで35分間かけて増大させた。これにより、上記Ti被膜上に膜厚0.6μmのTiN傾斜被膜が形成した。
次いで、上記Ti被膜形成終了時と同一条件で、チタンの蒸発および窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記TiN傾斜被膜上に膜厚0.6μmのTiN被膜を形成させた。
続いて、上記TiN被膜形成時と同一条件でチタンを定常的に蒸発させ、かつ流量比(N2/Ar)が5.8の窒素とアルゴンとの混合ガスを流量680sccmで供給しなが
ら、金およびパラジウムを蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子とPd原子の合計含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金およびパラジウムの単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAuとPdとの合計含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。なお、AuとPdの割合は85原子%:15原子%であった。
ら、金およびパラジウムを蒸発させ、上記TiN被膜上に膜厚0.005μmのAu−TiN混合傾斜被膜を形成させた。このとき、単位時間当りの全原子の蒸着量に対するAu原子とPd原子の合計含有率が1秒間に2.67原子%増大するように金およびパラジウムの単位時間当りの蒸発量を経時的に増大させた。具体的には、このAu−TiN混合傾斜被膜を成膜速度0.02μm/分で15秒間成膜し、このとき、Au−TiN混合傾斜被膜中のAuとPdとの合計含有率が膜成長方向に8原子%/0.001μmの割合で増大するように金の蒸発量を経時的に増大させた。なお、AuとPdの割合は85原子%:15原子%であった。
次いで、上記Au−TiN混合傾斜被膜形成終了時と同一条件で、チタン、金およびパラジウムの蒸発、ならびに窒素とアルゴンとの混合ガスの供給を定常的に継続して、上記Au−TiN混合傾斜被膜上に膜厚0.01μmのAu−TiN混合被膜を形成させた。なお、AuとPdの割合は85原子%:15原子%であった。
その後、チタンの蒸発および窒素ガスの供給を停止し、金およびパラジウムの蒸発とアルゴンガスの供給を上記Au−TiN混合被膜形成終了時と同一条件で継続して、上記Au−TiN混合被膜上に膜厚0.01μmのAu−Pd合金被膜を形成させた。なお、AuとPdの割合は85原子%:15原子%であった。
得られた腕時計用ケースは、均一な金色調を有していた。また、この腕時計用ケースの表面反射率を波長400〜700nmの範囲で測定した。結果を図2に示す。この結果から、最外層がAu−TiN混合被膜の腕時計用ケース(比較例2)に比べて、下地層がAu−TiN混合被膜、最外層がAu−Pd合金被膜の腕時計用ケースは、表面反射率が高く、明るいことが分かる。
得られた腕時計用ケースについて、耐食性試験を実施したところ、レイティングナンバの値は9.9であった。また、摩耗試験を実施した後、色彩色差計(ミノルタ社製)により試験前後の色差(ΔE*ab)を測定したところ、2.94であった。また、表面の摩耗キズは実施例1と同様、ごく僅かに認められた。これらの結果から、最外層がAu−Pd合金被膜であっても、下地層がTiN被膜の腕時計用ケース(比較例1)に比べて、下地層がAu−TiN混合被膜の腕時計用ケースは、摩耗試験前後の変色が少なく、磨耗が目立たないことが分かる。さらに、Au−TiN混合被膜の剥離も認められなかった。
得られた腕時計用ケースの組成をX線光電子分析装置(ESCA)により分析した結果、Au合金被膜は、金85原子%、パラジウム15原子%から構成されていた。また、Au−TiN混合被膜は、金40原子%、パラジウム7原子%、チタン31原子%、窒素20原子%、酸素1原子%、炭素1原子%から構成されていた。また、TiN被膜は、チタン54原子%、窒素45原子%、酸素0.5原子%、炭素0.5原子%から構成されていた。さらに、Au−TiN混合傾斜被膜は、Au原子の含有率が8原子%/0.001μmの割合で増加し、Ti原子の含有率が3.2原子%/0.001μmの割合で減少し、N原子の含有率が5原子%/0.001μmの割合で減少していた。また、TiN傾斜被膜は、N原子の含有率が7.5原子%/0.1μmの割合で増加、Ti原子の含有率が7.7原子%/0.1μmの割合で減少していた。なお、この腕時計用ケースのAu−TiN混合被膜からTiN被膜までの膜厚方向への組成変化を図3に示す。
本発明は、たとえば、腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、ベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどに適用することができる。
1・・・試験片
2・・・試験片押さえ板
3・・・試験片押さえネジ
4・・・試験片取付台
5・・・摩耗輪
2・・・試験片押さえ板
3・・・試験片押さえネジ
4・・・試験片取付台
5・・・摩耗輪
Claims (14)
- 基材の表面に、乾式メッキ装置内で窒素以外の不活性ガス雰囲気下にチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させてTi被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量が経時的に増大するように乾式メッキ装置内に窒素ガスを導入して、前記Ti被膜の上に、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させながら、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持して、前記TiN傾斜被膜の上にTiN被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でチタンをその単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させ、かつこの乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、単位時間当りの金の蒸発量が経時的に増大するように金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記TiN被膜の上に、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内の窒素量を一定に保持しながら、この乾式メッキ装置内でチタンと金またはチタンと金と金およびチタン以外の金属とをこれらの単位時間当りの蒸発量が一定となるように蒸発させて、前記Au−TiN混合傾斜被膜の上に、Au−TiN混合被膜を形成させ、
次いで、この乾式メッキ装置内でのチタンの蒸発を停止し、かつこの乾式メッキ装置内への窒素の供給を停止し、この乾式メッキ装置内で金または金と金およびチタン以外の金属とを蒸発させて、前記Au−TiN混合被膜の上に、Au被膜またはAu合金被膜を形成させることを特徴とする金色装飾品の製造方法。 - Au−TiN混合傾斜被膜を形成させる際に、該Au−TiN混合傾斜被膜中のAu原子の含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で膜厚方向に増大するように単位時間当りの金の蒸発量を経時的に増大させることを特徴とする請求項1に記載の金色装飾品の製造方法。
- Au−TiN混合傾斜被膜を形成させる際、乾式メッキ装置内に、TiN被膜形成時の窒素ガス供給量の2.5倍量以上の窒素ガスを供給することを特徴とする請求項1または2に記載の金色装飾品の製造方法。
- Au−TiN混合被膜を形成させる際、乾式メッキ装置内に、TiN被膜形成時の窒素ガス供給量の2.5倍量以上の窒素ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の金色装飾品の製造方法。
- TiN傾斜被膜を形成させる際に、該TiN傾斜被膜中のN原子の含有率が4〜12原子%/0.1μmの割合で膜厚方向に増大するようにこの乾式メッキ装置内の窒素量を経時的に増大させることを特徴とする請求項1に記載の金色装飾品の製造方法。
- Au−TiN混合傾斜被膜中およびAu−TiN混合被膜中のAu原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、該Au−TiN混合被膜上にAu合金被膜を形成させることを特徴とする請求項1に金色装飾品の製造方法。
- 基材と、この基材表面に窒素以外の不活性ガス雰囲気下で形成された、Ti原子の含有率が膜厚方向に一定であるTi被膜と、このTi被膜上に形成された、N原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するTiN傾斜被膜と、このTiN傾斜被膜上に形成された、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるTiN被膜と、このTiN被膜上に形成
された、Au原子の含有率が膜厚方向に勾配を有するAu−TiN混合傾斜被膜と、このAu−TiN混合傾斜被膜上に形成された、Au原子、Ti原子およびN原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu−TiN混合被膜と、このAu−TiN混合被膜被膜上に形成された、Au原子の含有率が膜厚方向に一定であるAu被膜またはAu合金被膜とを有する金色装飾品。 - Au−TiN混合傾斜被膜において、Au原子の含有率がTiN被膜からAu−TiN混合被膜への膜厚方向に対して増大することを特徴とする請求項7に記載の金色装飾品。
- 金およびチタン以外の金属原子を含まないAu−TiN混合傾斜被膜において、Au原子の含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で増大することを特徴とする請求項7に記載の金色装飾品。
- Au−TiN混合傾斜被膜において、Au原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、Au原子と金およびチタン以外の金属原子との合計含有率が2〜10原子%/0.001μmの割合で増大することを特徴とする請求項8に記載の金色装飾品。
- Au−TiN混合被膜中のAu原子が金およびチタン以外の金属原子と合金を形成し、該Au−TiN混合被膜上にAu合金被膜が形成していることを特徴とする請求項10に記載の金色装飾品。
- TiN傾斜被膜において、N原子の含有率がTi被膜からTiN被膜への膜厚方向に対して増大することを特徴とする請求項7に記載の金色装飾品。
- TiN傾斜被膜において、N原子の含有率が4〜12原子%/0.1μmの割合で増大することを特徴とする請求項9に記載の金色装飾品。
- Ti被膜の膜厚が0.1〜0.5μmであり、
TiN傾斜被膜とTiN被膜との合計膜厚が0.5〜2.0μmであり、かつ該合計膜厚に対するTiN傾斜被膜の膜厚の割合が10〜60%の範囲にあり、
Au−TiN混合傾斜被膜の膜厚とAu−TiN混合被膜との合計膜厚が0.005〜0.1μmであり、かつ該合計膜厚に対するAu−TiN混合傾斜被膜の膜厚の割合が10〜90%の範囲にあり、
Au被膜またはAu合金被膜の膜厚が0.005〜0.1μmであることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の金色装飾品。
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