JP2009261909A - ゴルフクラブおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スイートスポット以外の部分で打球したときにおいても、プレーヤに与える不快感の低減を図ることができるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブは、打球面65を含むフェース部61、およびフェース部61とシャフト30とを接続するネック部62を有するヘッド部50を備え、ヘッド部50は、ネック部62からフェース部61のトウ部64に向かって延在する鍛流線を含み、鍛流線が、ヘッド部50内とヘッド部50の表面とに形成される。
【選択図】図1
【解決手段】ゴルフクラブは、打球面65を含むフェース部61、およびフェース部61とシャフト30とを接続するネック部62を有するヘッド部50を備え、ヘッド部50は、ネック部62からフェース部61のトウ部64に向かって延在する鍛流線を含み、鍛流線が、ヘッド部50内とヘッド部50の表面とに形成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、ゴルフクラブおよびその製造方法に関し、特に、フェース部とネック部とを一体成形したゴルフクラブおよびその製造方法に関する。
一般に、ゴルフクラブのヘッド部分は、打球面を有するフェイス部と、このフェイス部とシャフトとを接続するネック部とを含むヘッド部本体と、このヘッド部本体の表面に形成されたメッキ層とを備えている。
従来、鍛造製法によるゴルフクラブヘッドとしては、ヘッド部本体のフェイス部とネック部とを一体成形するものであるが、打撃時にネック部が変形を起こし易いという課題があったために、ネック部を太くしなければならず、ネック部への質量配分を軽減することが困難であった。また、フェイス部とネック部を、それぞれ別工程で成形し、その後互いに接合されていた。そのため、フェイス部とネック部の接合部分における強度が低下するという課題があった。
このような課題に対して、たとえば、国際公開第WO01/056666号パンフレットに記載されたゴルフクラブ等が提案されている。
しかし、上記国際公開第WO01/056666号パンフレットに記載されたゴルフクラブにおいては、ヘッド部本体に形成される鍛流線は、ヘッド部本体の表面にまで達していない。
そして、国際公開第WO01/056666号パンフレットに記載されたゴルフクラブにおいては、スイートスポットで打球した時の打感と、スイートスポット以外の部分で打球したときの打感との差があまりにも大きく、スイートスポット以外の部位で打球したときに、プレーヤに大きな不快感を与える。
本発明は、上記ような課題に鑑みてなされてものであって、その目的は、スイートスポット以外の部分で打球したときにおいても、プレーヤに与える不快感の低減を図ることができるゴルフクラブを提供することである。
本発明に係るゴルフクラブは、打球面を含むフェース本体部、およびフェース本体部とシャフトとを接続するネック本体部を有するヘッド部本体を備え、ヘッド部本体は、ネック本体部からフェース本体部のトウ部に向かって延在する鍛流線を含み、鍛流線が、ヘッド部本体内とヘッド部本体の表面とに形成される。
本発明に係るゴルフクラブの製造方法は、上記棒状部材の外周部を除去することで、該棒状部材の径を減じる工程と、径が減じられた棒状部材の一端を他端の径より減じる絞り加工工程と、棒状部材に曲げ加工を施す工程と、曲げ加工後に、棒状部材に鍛造加工を施して、フェース本体部およびネック本体部を一体的に成形する鍛造工程とを備える。
好ましくは、上記棒状部材の周面を削る工程は、棒状部材の外周部を削りとることで、外周部が削られる前の棒状部材の中央部を取り出す工程を含む。
本発明に係るゴルフクラブによれば、所謂スイートスポット以外の部分で打球した場合においても、プレーヤに与える不快感の低減を図ることができる。
本発明に係るゴルフクラブおよびその製造方法について、図1から図37を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
図1は、本実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド部50の正面図である。本実施の形態に係るゴルフクラブは、図1に示すヘッド部50と、このヘッド部50に装着されるシャフトと、このシャフトに設けられたグリップ部とを備えている。ヘッド部50は、打球面65を有するフェース部61と、フェース部61とシャフト30とを接続するネック部62とを備えている。
図2は、ヘッド部50の一部を断面視した断面図である。この図2に示すように、ヘッド部50は、ヘッド部本体10と、このヘッド部本体10の表面に形成されたメッキ層70とを備えている。なお、メッキ層70は、ヘッド部本体10の表面上に形成された、ニッケルメッキ層75と、このニッケルメッキ層75の表面上に形成されたクロムメッキ層76とを備えている。
図3は、ヘッド部本体10の正面図である。この図3に示すように、ヘッド部本体10は、ヘッド部50と略同一形状となっている。
このため、ヘッド部本体10は、打球面15を有するフェース本体部11と、フェース本体部11およびシャフト30を接続するネック本体部12とを備えている。図4は、ヘッド部本体10の表面の詳細を示す模式図であり、図5は、ヘッド部本体10の表面を示す写真である。
図6は、ヘッド部本体10のフェース本体部11における断面図を模式的に示す模式図であり、図7は、ヘッド部本体10のネック本体部12における断面図を模式的に示す模式図である。さらに、図8は、フェース本体部11の断面を示す写真であり、図9は、ネック本体部12の断面を示す写真である。
これら、図4から図9に示すように、ヘッド部本体10内には、ネック本体部12からフェース本体部11に亘って、複数の鍛流線13が連続して形成されている。
鍛流線13の大部分は、ネック本体部12からフェース本体部11に連続して延び、フェース本体部11においては、鍛流線13は、一方向に向けて連続して延びる。
このように、ネック本体部12からフェース本体部11に鍛流線13が連続して延びることで、フェース本体部11とネック本体部12と接続部における強度を向上させることができる。
図4および図6に示されるように、鍛流線13は、ヘッド部本体10の内部のみならず、ヘッド部本体10の表面にも形成されている。そして、ヘッド部本体10の表面上に形成された鍛流線13も、ネック本体部12からフェース本体部11のトウ部14に向けて延びている。
上記のように構成されたゴルフクラブの製造方法について、図10から図27を用いて説明する。図10に示すように、炭素鋼等から構成された棒状部材21を準備する。この棒材の径は、たとえば、50mm程度とされる。
そして、棒状部材21の外周部22を切削加工等により除去することで、径を減じ、図11に示すように、棒状部材21の中央部23を取り出す。なお、中央部23の径は、たとえば、27mm程度とされている。ここで、一般に、棒状部材21は、棒状部材21より大径のインゴットに圧延ロール等によって熱間鍛造が施されることで形成される。
一般に、熱間鍛造は、それぞれの材料の変形能の良好な温度範囲で加工する必要があるが、棒状部材21の表層部の温度を所定温度に維持することは非常に困難であり、表層部の温度は、所定温度よりも高くなり易い。
このため、インゴットの表層部の温度が高くなりやすく、過熱(over heat)及びバ−ニング(burning)が生じやすくなる。ここで、過熱は、結晶粒の粗大化を招き、また、バ−ニングは、結晶粒界の不純物が酸化し一部溶融するため、いずれも鍛流線形成の阻害要因となる。
さらに、圧延加工において、インゴットの表面は、圧延ローラによって、直接押圧されるため、鍛流線が破断し易くなっている。このため、特に、棒状部材21の表面層には、鍛流線13が形成され難くなっている。
その一方で、インゴットの内部は、表層部と比較して、温度が高くなりにくく、過熱およびバーニングが生じ難く、良好に鍛流線が生じやすい。さらに、インゴットの内部は、圧延ローラによって直接押圧されることがなく、形成された鍛流線が切断され難くなっている。
このため、棒状部材21の外周部22よりも、棒状部材21の中央部23内に、連続して延びる鍛流線13が多く存在する。
そして、図10に示す棒状部材21の外周部22を切削加工等により除去し、径を減じ、棒状部材21の中央部23を取り出すことで、図11に示すように、良好に鍛流線13が形成された棒状部材20を得ることができる。
ここで、棒状部材21の内部には、鍛流線13が形成されているため、棒状部材21の外周部22を除去することで、棒状部材20の表面に鍛流線13が露出することになる。
図22は、棒状部材20の断面を模式的に示す断面図である。この図22に示すように、棒状部材20内には、複数の鍛流線13が連続して形成されており、さらに、棒状部材20の表面にも、鍛流線13が形成されている。
図12に示すように、棒状部材20の一方の端部を断面積を減じるように、絞り加工を施す。この絞り加工は、たとえば、ロールを用いて、棒状部材20の一端に、圧延加工を施すことで行われる。この際、図23に示すように、棒状部材20内の鍛流線13が不連続とならないように留意する。
このように、棒状部材20の一端に、塑性加工を施すことで、当該一端の断面積が小さくなり、図23に示すように、棒状部材20の一端側の鍛流線13の密度を高めることができる。
この一端側にネック本体部12を形成し、他端部側にフェース本体部11を形成する。これにより、ネック本体部12における鍛流線13の密度を、フェース本体部11における鍛流線13の密度よりも高めることができるものと推察される。
なお、棒状部材20の一端を塑性変形させて、棒状部材20の断面積を減じることができるものであれば、上記圧延加工以外の処理を採用することができる。
次に、図13および図24に示すように、棒状部材20に曲げ加工を施す。その後、図14〜図19に示すように、3段階の粗鍛成形加工を施す。この粗鍛成形加工は、金型を用いて、1tonハンマで行った。
この粗鍛成形加工においては、図25から図27に示すように、素材内に略完全な鍛流線13が確保されるように、段階的に棒状部材20を塑性変形させる。また、粗鍛成形加工においては、鍛流線13がネック本体部12からフェース本体部11に連続すると共に、鍛流線13がフェース本体部11の打球面15に沿って層状に延在し、さらに、鍛流線13がフェース本体部11の打球面15側から背面側に亘って均一に分布するように、段階的に棒状部材20を塑性変形させる。
また、この3段階の粗鍛成形加工により、図18および図19に示すように、最終形状に近い状態にまで変形させることができるので、後述する精鍛成形加工を施すのみで、最終のゴルフクラブヘッドを成形することができる。そのため、機械加工を最終段階で追加する必要がなくなり、鍛流線13が部分的に切断されることを回避することができる。
次に、トリミングを行った後、最終仕上げとして、精鍛成形加工を行い、図20および図21に示すように、スコアライン等の細部を成形する。以上の工程を経て、略完全な鍛流線13を確保した状態で、フェース本体部11とネック本体部12とが一体成形されたヘッド部本体10を得ることができる。そして、このヘッド部本体10にメッキ処理により、ヘッド部本体10の表面にメッキ層70を形成し、その後、シャフト30等を装着して、ゴルフクラブを得ることができる。
図28は、比較例に係るヘッド部本体の表面を模式的に示す模式図であり、図29は、比較例のヘッド部本体の表面を示す写真である。
さらに、図30は、比較例に係るゴルフクラブにおいて、ヘッド部本体のフェース本体部における断面を模式的に示す模式図であり、図31は、比較例に係るゴルフクラブにおいて、ヘッド部本体のネック本体部部における断面を模式的に示す断面図である。
図32は、図30に対応する写真であり、図33は、図31に対応する断面の写真である。
図34は、本実施の形態に係るヘッド部本体10と、上記比較例のヘッド部本体との硬度分布を示すグラフである。縦軸は、ビッカース硬度(Hv)を示す。そして、グラフ中、実線は、本実施の形態に係るゴルフクラブの各部位(P1〜P12)におけるビッカース硬度を示し、破線は、比較例に係るゴルフクラブの各部位(P21〜P32)におけるビッカース硬度を示す。図35および図36は、図34におけるサンプリング位置を示す模式図である。
なお、比較例に係るゴルフクラブのヘッド部本体10は、本実施の形態に係るヘッド部本体10と異なり、棒状部材21に切削加工を施すことなく、始めから径が27mm程度の棒状の炭素鋼を用いる。そして、比較例のゴルフクラブは、この炭素鋼の端部に絞り工程と、3段階の粗鍛成形加工と、精鍛成形加工とを施して成形されている。
ここで、図28および図29に示すように、比較例に係るヘッド部本体10のフェース本体部11の表面には、鍛流線13が形成されていない。
その一方で、図7および図9に示すように、本実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド部本体10においては、表面上に連続する鍛流線13が均一に形成されている。
このため、図34に示すように、フェース本体部11の中央部において、本実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド部本体10の硬度変化は、比較例のヘッド部本体よりも小さいものと推認される。
図30および図32に示すように、比較例では、フェース部内のうち、打球面側において、鍛流線13が粗くなっており、連続しない鍛流線13が多数形成されていることが分かる。さらに、比較例においては、フェース部における鍛流線13の分布に大きなばらつきがあることが分かる。
その一方で、図7および図9に示すように、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドにおいては、鍛流線13が連続して形成されており、ヘッド部本体10の厚み方向における鍛流線13の分布のばらつきが抑制されている。
このように、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドにおいては、比較例に係るゴルフクラブヘッドよりも、鍛流線13がゴルフクラブヘッド内に均一に分布しているので、打球した際に、所謂スイートスポットで打球したときと、スイートスポット以外の部分で打球したときとで、打感に差が生じることを抑えることができるものと推察できる。
図34において、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドと、比較例に係るゴルフクラブヘッドとでは、特に、ヒール部17において硬度差が生じている。
これは、図7および図33と、図7および図9に示すように、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドのヒール部17に形成された鍛流線13は、比較例のヒール部に形成された鍛流線13よりも、連続しており、かつ均一に形成されていることとに起因するものと推察することができる。
そして、下記表1に本実施の形態に係るゴルフクラブと、上記比較例に係るゴルフクラブ(比較品)とを用いて10名の試打者が試打した結果を示す。
このように、本実施の形態に係るヘッド部本体10によれば、ある一点に芯を感じず、全体として柔らかく、どこで打球しても、同じような打感を得ることができる。
このため、スイートスポット以外の部分で打球したとしても、著しく、打感を損ねることを抑制することができる。
本願の発明者等は、鋭意努力の結果、打感とは、要するに打音であることを発見した。すなわち、表1で示す試打者は様々な表現で打感のよさを表現しているが、これらは全て打音のよさに起因するものである。特に、よい打感とは、周波数が比較的低く、余韻を残すように長く響く打音であることを見出した。図37は、本実施の形態に係るゴルフクラブを試打することで生じる音を計測した結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は、音の周波数(KHz)を示し、横軸は時間(ms)を示す。そして、グラフ中の実線および破線で囲んだ領域P1,P2は、音の大きさ(デシベル(dB))が大きい領域を示す。
この図37に示すように、本実施の形態に係るゴルフクラブを用いて打球すると、実線で囲まれた領域P1と、破線で囲まれた領域P2とで大きな音が生じることが分かる。
破線で囲まれた領域P2の音は、ヘッドが空気を裂く音やゴルフクラブのヘッドが地面と擦れる音に起因するものであり、打球音と直接関係がないものである。その一方で、実線で囲まれた領域P1の音が、ゴルフクラブのヘッドがボールと衝突することで生じる打音を示す。
この実線で囲まれた領域P1の音は、比較的低周波数の音域に分布しており、さらに、暫くの間、音が響いていることが分かる。
このため、本実施の形態に係るゴルフクラブを用いて打球したときの打音は、比較的低周波数の音で、余韻を残すように長く響いており、本実施の形態に係るゴルフクラブの打感がよいという表1の結果につながっていることが分かる。
なお、上記の実施の形態では、本発明をアイアンクラブに適用した場合について説明したが、本発明の思想は、ウッドクラブ用フェイスにも適用可能である。ウッドクラブ用フェイスは、たとえば径と長さを適切に調節した素材に鍛造加工を施すことにより製造可能である。
以上のように、この発明の実施の形態について説明を行ったが、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明は、ゴルフクラブのヘッド部に好適である。
10 ヘッド本体部、11 フェース本体部、12 ネック本体部、13 鍛流線、15 打球面。
Claims (3)
- 打球面を含むフェース本体部、および前記フェース本体部とシャフトとを接続するネック本体部を有するヘッド部本体を備え、
前記ヘッド部本体は、前記ネック本体部から前記フェース本体部のトウ部に向かって延在する鍛流線を含み、前記鍛流線が、前記ヘッド部本体内と前記ヘッド部本体の表面とに形成されたゴルフクラブ。 - 棒状部材の外周部を除去することで、該棒状部材の径を減じる工程と、
径が減じられた前記棒状部材の一端を他端の径より減じる絞り加工工程と、
前記棒状部材に曲げ加工を施す工程と、
前記曲げ加工後に、前記棒状部材に鍛造加工を施して、フェース本体部およびネック本体部を一体的に成形する鍛造工程と、
を備えた、ゴルフクラブの製造方法。 - 前記棒状部材の周面を削る工程は、前記棒状部材の外周部を削りとることで、前記外周部が削られる前の棒状部材の中央部を取り出す工程を含む、請求項2に記載のゴルフクラブの製造方法。
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