JP3428582B2 - ゴルフクラブ - Google Patents
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Description
するものである。さらに詳しくは、チタン合金を用いた
設計自由度の大きなゴルフクラブに関するものである。
多く、最近では女性ゴルファがかなり増えている。レベ
ル、技量、筋力等の相違はあるものの、各ゴルファーが
それなりにゴルフを楽しんでいる。例えば、ある人はス
コアの向上を楽しみにし、別の人はドライバーによる飛
距離やゴルフボールを打撃した時のフィーリングを楽し
みにする。このように、ゴルファーの好みも多種多様で
あるため、ドライバー、アイアン、パターのゴルフクラ
ブにも多種多様な性能が求められる。例えば、ゴルフボ
ールの弾道制御、ゴルフボールの飛距離、打撃時の打感
や打音等の性能である。
能について検討することとし、開発が盛んであるドライ
バー(特に、そのヘッド)を一例に取り上げて以下説明
する。従来、ドライバーにはパーシモン等の木製ヘッド
が多く使用されていたが、木製ヘッドは材料特性や採用
できる形状が限定的で設計自由度が小さかった。このた
め、多様な性能に十分応えられるものではなかった。そ
こで、最近では、より設計自由度の大きなメタルヘッド
がゴルフクラブに多用されるようになった。メタルヘッ
ドには、ステンレス製、アルミニウム合金製等種々ある
が、特に、チタン合金製メタルヘッドの開発が最近盛ん
である。なお、ここで述べる「メタルヘッド」は、ヘッ
ド全体のみならず、ヘッドの一部(フェース部等)がメ
タル製であるものも含むことを予め断っておく(以下、
同様である。)。
んな理由は、高級感、耐食性等の他にチタン合金の比強
度が大きいことが主たる理由であると考えられる。特
に、比強度が大きいことを利用して中空ヘッドにすれ
ば、一層の軽量化を図れ、非力な女性ゴルファーでもス
イングが容易になる。また、ヘッドの慣性モーメント、
ヘッド容積、フェース面積等の設計自由度が増す。例え
ば、軽量化を図りつつフェース面積を拡大すると、ゴル
フボールをスイートスポットで打撃し易くなり、弾道制
御性等も良好になるといわれている。このように、比強
度の観点からチタン合金製メタルヘッドが非常に好まれ
ている。
な飛距離が求められる。ゴルフクラブと飛距離との関係
については種々の説があるが、ヘッドを適度な低剛性に
すると飛距離が伸びると、いわれている(その理由は後
述する。)。しかるに、従来のチタン合金製ゴルフクラ
ブ(特に、そのヘッド)は、その比強度に主眼がおかれ
ており、低剛性化(低ヤング率化)との両立はされてお
らず、必ずしも好ましいものであったとはいえない。
とヤング率との間には相関関係があり、例えば、高
(比)強度の材料は高ヤング率であり、低(比)強度の
材料は低ヤング率である、と一般的にいわれている。こ
の一般則に従う限り、従来のチタン合金を用いてゴルフ
クラブの高強度と低剛性との両立を図ることは非常に困
難であり、多様な要求性能に応えられるゴルフクラブを
提供することはできない。また、本発明者が調査した限
りにおいて、高強度と低剛性との両立を十分に図ったチ
タン合金製ゴルフクラブは本出願前に存在しておらず、
従来のゴルフクラブは、チタン合金の比強度を利用した
だけの狭い範囲で開発がなされていたに過ぎなかった。
このようにゴルフクラブの設計上、足かせとなり、設計
自由度を狭める大きな要因は、ゴルフクラブに使用され
るチタン合金の特性にあることは明らかである。
性能を向上させる上で必要となる高(比)強度・低剛性
のチタン合金材料を全く新規に開発することが、ゴルフ
クラブの設計自由度を拡大し、多様な要求性能に応え得
るゴルフクラブを提供する上で不可欠であると考えた。
そして、先ず、ゴルフクラブの要求性能を明確にするこ
とから始めた。特に、比強度以外に必要とされるその低
剛性を中心に、一般的な飛び性能と感性性能との観点か
らゴルフクラブについて詳細に検討することとした。
あるが、ここでは、低剛性化による影響を客観的に評価
する上で妥当と思われる飛距離に着目することとした。
ゴルフボールの飛距離は、打撃時のヘッドスピード、ゴ
ルフボールのスピン量、ゴルフボールとフェース部との
間の反発特性等の種々の要因により決定される。しか
し、ヘッドスピードやスピン量はゴルファーの力量やゴ
ルフボールの性能等に依るところが大きいので、ここで
は、反発特性に着目して、ゴルフクラブの低剛性化の影
響を検討することとした。なお、反発特性は(反発係
数)=(打撃直後のゴルフボールの初速度)/(打撃直
前のヘッドスピード)で一般的に評価されている。
論が考えられ、研究開発が進められてきた。代表的な理
論には、モーダル理論や最新モーダル理論(インピーダ
ンスマッチング理論)等がある。また、それらの理論を
利用したと思われるゴルフクラブに関する出願も多数さ
れている。例えば、特公平7−98077号公報、特公
平5−33071号公報、国際公開WO98/4631
2号公報(特願平10−543736号)である。以
下、これらの公報の記載を参考にしつつ具体的に説明す
る。前者の公報(特公平7−98077号公報)では、
ヘッドスピードを40m/sとしたときのゴルフボール
とフェース部との接触時間(τ)が約600μsとなる
ことを実験的に確認し、その接触時間τが半周期(T/
2)となる固有振動数f(=1/T=1/2τ)をヘッ
ドがもつように設定することを提案している。計算結果
として、その固有振動数fは約830Hzになることが
記載されている。
6312号公報)では、ヘッド、特にフェース部の(一
次)固有振動数fをゴルフボールの(一次)固有振動数
に略一致させることを提案している。ゴルフボールの種
類にも依るが、一般的なゴルフボールの固有振動数はf
=600〜1600Hzであり、実施例ではヘッドの固
有振動数を1290Hz以下としている。両者は理論構
成を異にするものの、従来、2000Hz前後であった
ヘッドの固有振動数を1000Hz近傍まで低減させる
ことにより、反発係数が増しゴルフボールの飛距離が伸
びる、としている点で共通しており、反発特性と固有振
動数fとに深い相関があると考えられた。そこで、次に
ヘッドの固有振動数fに着目することにした。
kと質量mとを用いて、 f=(k/m)1/2/2π (数式1) と導かれる。このばね定数kは、ヤング率の影響を受け
ることは勿論だが、それ以外に、ゴルフクラブ(例え
ば、フェース部)の形状等の影響も受ける。つまり、同
一のヤング率でも仮にその形状が変化すれば、数式1の
質量mが変化し、固有振動数fが変化することになる。
そこで、ゴルフクラブの開発に際し、この固有振動数f
に影響を与える要因を明確にする必要があると考え、簡
易なヘッドモデル(図1)を導入してその要因を検討す
ることとした。
状とし、その一底部をヘッドのフェース部と仮定し、フ
ェース部はその外周で筒部と一体化されているものとす
る。ゴルフボールの打接により、そのフェース部の中心
に荷重Pが作用するとすれば、材料力学を用いて、外径
φd、肉厚hの周辺固定円板の撓みδは、 δ=Pd2/64πD と導かれる。Dは板の曲げ剛性で、 D=Eh3/12(1ーν2) (E:ヤング率、ν:ポ
アソン比) である。そして、この2式からばね定数kは、 k=P/δ=16πEh3/3(1−ν2)d2 と導かれ、これをフェース部の面積S=πd2/4と質
量m=ρSh(ρ:密度)とを用いて変形し、比例定数
α1を用いると、 k/m={4π2/3(1−ν2)}・(E/ρ)・(h
/S)2 =α1・(E/ρ)・(h/S)2 となり、さらにこの式を数式1に代入し比例定数α2を
用いて表すと、 f=α2・(E/ρ)1/2・(h/S) (数式2) を得る。従って、固有振動数fは、比ヤング率E/ρ
((E/ρ)1/2)と形状係数h/Sに比例することが
解った。
ρから検討した。本来、比ヤング率E/ρは材料毎に固
有の値をもつものであるが、図4からも解るように、マ
グネシウム(Mg)合金、アルミニウム(Al)合金、
従来のチタン(Ti)合金、鋼のいずれの比ヤング率E
/ρも、(E/ρ)1/2 =4.8〜5.2程度で大差
がなかった。これから従来のいずれのメタル材料も、材
料面から固有振動数fの低減を図ることができなかった
ことに納得がいく。従って、材料面から固有振動数fの
低減を図るには、従来のメタル材料にない比ヤング率E
/ρを達成する必要があることが明らかとなった。
2から固有振動数fを低減させるには、肉厚hを薄く
し、フェース部の面積Sを増加させると良いことになる
が、フェース部をこのような形状にすることは、次の理
由により容易ではない。フェース部に作用する応力σを
図1のヘッドモデルを用いて求めると、比例定数α3を
用いて、 σ=α3・1/h2 (数式3) と表される。これから、肉厚hを薄くすると急激に応力
σが増加するので、ヘッドの強度を確保する上で、肉厚
hの低減にも限度ある。一方、面積Sを増加させること
も考えられるが、ゴルフクラブの重量バランス、意匠
性、スイング時の空気抵抗等を考えると、面積Sを増加
させることにも限界がある。従って、従来と同等以上に
薄い肉厚hを確保するために、強度的にも十分なチタン
合金材料が必要となることが明らかとなった。
てきたが、実際のヘッドと比較すれば、形状、荷重条
件、拘束条件等が異なることはいうまでもない。従っ
て、予め断っておくが、上述した各数式や係数等に拘泥
して完全に考えられるものではない。但し、飛距離等の
ゴルフクラブの性能を評価する指標として、比ヤング率
E/ρを用いることが有効であることは、十分に示され
ていると考えられる。これらのことは、次の感性性能に
ついても同様である。
した。これらはゴルファーの好みやゴルフボールの性能
に依るところも大きく、必ずしもゴルフクラブの客観的
な評価指標となり得るものではないが、多様な要求性能
に応え得るゴルフクラブを提供する上で無視できない。
そこで、一般的な見解を基にこれらの性能について検討
してみた。
ち、大きな衝撃がグリップから伝達されない方が良いと
いわれている。このため、打撃時にフェース部が適度に
撓むことが好ましいと考えた。このフェース部の撓みδ
は前述の数式から比例定数α3を用いて、 δ=α3・(1/E)・(1/h2)・(S/h) と容易に導かれる。これから、打感を向上させるために
は、ヤング率E、肉厚hを低減し、面積Sを増加させる
と良いことになり、基本的に前述の固有振動数fの低減
と共通する。但し、固有振動数fの低減と異なり、ここ
では比ヤング率E/ρよりヤング率Eが直接撓みδに影
響している点が異なる。従って、ヤング率Eの低減だけ
でも、打感の向上には有効であることが明らかとなっ
た。また、付加的ながら、フェース部の撓みδが適度に
大きくなると、ゴルフボールの制御性も増すとも考えら
れる。
ック音が好ましいといわれている。打音が低音量若しく
は低音(低周波数)になると、鈍い感じがして飛距離が
短いと感じられる。逆に、打音が大音量若しくは高音
(高周波数)になると、ゴルファーに不快感を与える。
従って、打音の観点からも、ヘッド全体としての外殻構
造、その撓み、固有振動数等を適度に調整できると好ま
しいことも明らかである。
ゴルフクラブに用いることによりゴルフボールの飛距離
を伸せるとした出願も多数あった。例えば、特開平5−
111554号公報、特開平6−240390号公報、
特開平8−143012号公報、特開10平−1559
42号公報等にその開示がされている。しかし、これら
のゴルフクラブに利用されているチタン合金は、いずれ
も未だヤング率が80GPa以上であり、従来のβ型チ
タン合金と大差がない。従って、このようなチタン合金
製のゴルフクラブ若しくはゴルフクラブヘッドでは、さ
ほど性能の向上が望めないと考えられる。また、そのよ
うな材料を使用する限り、ゴルフクラブの設計自由度は
狭いものとなってしまう。
たものある。つまり、従来になく低剛性で高強度なチタ
ン合金を用いることにより、多様な要求に応えられる設
計自由度の大きなゴルフクラブを提供することを目的と
する。
課題を解決すべく鋭意研究し、各種系統的実験を重ねた
結果、強度の低下を招くことなくヤング率(平均ヤング
率)を一層低減させることができる、ゴルフクラブに適
したチタン合金を開発・発見した。そして、このチタン
合金をゴルフクラブに応用して、多様な要求に応えられ
る設計自由度の大きなゴルフクラブを開発するに至った
ものである。
フボールが打接するフェース部を備えるヘッドと、該ヘ
ッドの一端部から延出し他端部にグリップ部を備えるシ
ャフトとからなるゴルフクラブにおいて、前記フェース
部および/または前記シャフトは、引張試験で真に永久
歪みが0.2%に到達したときの応力として定義される
引張弾性限強度が700MPa以上であり、加える応力
が0から該引張弾性限強度までの範囲にある弾性変形域
内で、該引張試験により得られた応力−歪み線図上の接
線の傾きが応力の増加に伴って減少する特性を示し、該
応力−歪み線図上の接線の傾きから求まるヤング率の代
表値として、該引張弾性限強度の1/2に相当する応力
位置での接線の傾きから求めた平均ヤング率が75GP
a以下である高弾性変形能のチタン合金からなるチタン
合金部をもつことを特徴とする。
応力−歪み線図上の接線の傾きが応力の増加に伴って減
少するという従来に全くない新規な特性を示し、引張弾
性限強度が700MPa以上という高(弾性)強度で、
平均ヤング率が75GPa以下という低ヤング率であ
る、高弾性変形能のチタン合金からなるチタン合金部を
もつ。これにより、その要求性能に応じて、強度面から
の設計自由度のみならず、剛性面からの設計自由度も拡
大させることができた。従って、従来と同様にゴルフク
ラブの軽量化、ヘッド容積の増大、フェース部面積の拡
大等を図ることができるのは勿論のこと、ゴルフボール
の飛距離の増大、打感や打音の向上等も図れる。しか
も、それらを高次元でバランスさせることも可能である
ため、著しく性能の向上したゴルフクラブを得ることも
できる。
強度確保のために重量増加等を招き、ゴルフクラブの設
計自由度が制限されるので好ましくない。また、平均ヤ
ング率が75GPaを越えると、低剛性化を図り難くな
り、ゴルフクラブの設計自由度が制限されるので好まし
くない。なお、平均ヤング率は、順に、70GPa以
下、65GPa以下、60GPa以下および55GPa
以下となるほど、好ましく、引張弾性限強度は、順に、
750MPa以上、800MPa以上、850MPa以
上、900MPa以上となるほど好ましい。
は、Tiを含有する合金を意味し、Tiの含有量を特定
するものではない。「引張弾性限強度」とは、試験片へ
の荷重の負荷と除荷とを徐々に繰り返して行う引張試験
において、永久伸び(歪み)が0.2%に到達したとき
の負荷していた応力を言う。この点、前記引張試験にお
いて、試験片の最終的な破断直前の荷重を、その試験片
の平行部における試験前の断面積で除して求められる引
張強度とは異なる。また、「平均ヤング率」とは、厳密
な意味でのヤング率の「平均」を指すものではなく、本
発明で使用したチタン合金を代表するヤング率という意
味である。具体的には、前記引張試験により得られた応
力(荷重)−歪み(伸び)線図において、引張弾性限強
度の1/2に相当する応力位置での曲線の傾き(接線の
傾き)を、平均ヤング率とした。「引張弾性限強度」と
「平均ヤング率」との詳細は、別途、後述する。なお、
本明細書中で「低ヤング率」とは、前記平均ヤング率
が、従来の一般的なヤング率に対して小さいことを意味
し、「高強度」とは、前記引張弾性限強度または前記引
張強度が大きいことを意味する。
を挙げて、本発明を詳しく説明する。 (1)平均ヤング率と引張弾性限強度 本発明のチタン合金部の平均ヤング率と引張弾性限強度
とについて、以下に図2A、Bを用いて詳述する。図2
Aは、本発明で使用したチタン合金の応力−歪み線図を
模式的に示した図であり、図2Bは、従来のチタン合金
(Ti−6Al−4V合金)の応力−歪み線図を模式的
に示した図である。
は、先ず、引張応力の増加に比例して伸びが直線的に増
加する(’−間)。そして、その直線の傾きによっ
て従来の金属材料のヤング率は求められる。換言すれ
ば、そのヤング率は、引張応力(公称応力)をそれと比
例関係にある歪み(公称歪み)で除した値となる。この
ように応力と歪みとが比例関係にある直線域(’−
間)では、変形が弾性的であり、例えば、応力を除荷す
れば、試験片の変形である伸びは0に戻る。しかし、さ
らにその直線域を超えて引張応力を加えると、従来の金
属材料は塑性変形を始め、応力を除荷しても、試験片の
伸びは0に戻らず、永久伸びを生じる。
を0.2%耐力と称している(JIS Z 224
1)。この0.2%耐力は、応力−歪み線図上で、弾性
変形域の直線(’−:立ち上がり部の接線)を0.
2%歪み分だけ平行移動した直線(’−)と応力―
歪み曲線との交点(位置)における応力でもある。従
来の金属材料の場合、通常、「伸びが0.2%程度を超
えると、永久伸びになる」という経験則に基づき、0.
2%耐力≒引張弾性限強度と考えれられている。逆に、
この0.2%耐力内であれば、応力と歪みとの関係は概
ね直線的または弾性的であると考えられる。
も解るように、このような従来の概念は、本発明のチタ
ン合金部に使用したチタン合金には当てはまらない。理
由は定かではないが、本発明で使用したチタン合金の場
合、弾性変形域において応力―歪み線図が直線とはなら
ず、上に凸な曲線(’−)となり、除荷すると同曲
線−’に沿って伸びが0に戻ったり、−’に沿
って永久伸びを生じたりする。このように、本発明で使
用したチタン合金では、弾性変形域(’−)です
ら、応力と歪みとが直線的な関係になく、応力が増加す
れば、急激に歪みが増加する。また、除荷した場合も同
様であり、応力と歪みとが直線的な関係になく、応力が
減少すれば、急激に歪みが減少する。つまり、本発明で
使用したチタン合金は、優れた高弾性変形能を有するも
のであることが解る。
場合、図2Aからも解るように、応力が増加するほど応
力−歪み線図上の接線の傾きが減少している。このよう
に、弾性変形域において、応力と歪みとが直線的に変化
しないため、従来の方法で本発明で使用したチタン合金
のヤング率を定義することは適切ではない。また、本発
明で使用したチタン合金の場合、応力と歪みとが直線的
に変化しないため、従来と同様の方法で0.2%耐力
(σp’)≒引張弾性限強度と評価することも適切では
ない。つまり、従来の方法により求まる0.2%耐力で
は、本来の引張弾性限強度よりも著しく小さい値となっ
てしまい、もはや、0.2%耐力≒引張弾性限強度と考
えることはできない。
用したチタン合金の引張弾性限強度(σe)を前述した
ように求めることとし(図2A中の位置)、また、本
発明で使用したチタン合金のヤング率として、前述の平
均ヤング率を導入することとした。なお、図2Aおよび
図2B中、σtは引張強度であり、εeは本発明で使用
したチタン合金の引張弾性限強度(σe)における歪み
であり、εpは従来の金属材料の0.2%耐力(σp)
における歪みである。
場合に、チタン合金部が30〜60質量%のVa族(バ
ナジウム族)元素を含有すると、好適である。Va族の
元素を30〜60質量%含有することにより、比強度の
低下をもたらすことなくチタン合金部の低ヤング率化を
図ることができた。Va族(バナジウム族)の元素の含
有量が30質量%未満では所望の低ヤング率を得ること
ができず、一方、それが60質量%を越えると、チタン
合金部の密度が大きくなり、チタン合金部の比強度の低
下を招く。また、60質量%を越えると、含有元素の原
子量の相違による材料偏析が生じ易くなる。なお、特に
断らない限り、質量%は合金全体の組成を100質量%
としたときの値であり、「x〜y質量%」と言うとき
は、その下限(x)および上限(y)を含む(以下、同
様)。
(V)の他、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)があ
り、いずれもβ相安定化元素である。但し、チタン合金
部がβ型合金に限られるということではない。このVa
族元素の含有により、低ヤング率化と共に、従来のα型
合金やα+β型合金等に比べて冷間加工性を著しく向上
させることができた。従って、冷間プレス成形等でゴル
フクラブのヘッド等を製作する際に非常に有効である。
なお、本発明のチタン合金部の密度の増加を抑えて、比
強度の低下を招かないようにするには、Va族元素の含
有量を、30〜50質量%とするとより好ましい。
が、さらに、全体を100質量%とした場合に、ジルコ
ニウム(Zr)とハフニウム(Hf)とスカンジウム
(Sc)とからなる金属元素群中の1種以上の元素を合
計で20質量%以下含有すると、好適である。ジルコニ
ウムとハフニウムとは、チタン合金の低ヤング率化と高
強度化に有効である。また、これらの元素は、チタンと
同族(IVa族)元素であり、全率固溶型の中性的元素
であるため、Va族元素によるチタン合金の低ヤング率
化を妨げることもない。
場合、Va族元素と共にチタン原子間の結合エネルギー
を特異的に低下させ、さらなる低ヤング率化を図るのに
有効な元素である(参考資料:Proc.9th Wo
rld Conf.on Titanium、(199
9)、to be published)。それらの元
素が合計で20質量%を越えると、材料偏析による強
度、靱性の低下やコスト上昇を招くため、好ましくな
い。ヤング率、強度、靱性等のバランスを図る上で、そ
れらの元素が合計で、1質量%以上、さらには、5〜1
5質量%であると、より好ましい。
上、共通する部分が多いため、所定の範囲内で、Va族
元素と置換することもできる。例えば、本発明のチタン
合金部が、合計で20重量%以下のジルコニウム(Z
r)とハフニウム(Hf)とスカンジウム(Sc)とか
らなる金属元素群中の1種以上の元素と、該金属元素群
中の1種以上の元素との合計が30〜60重量%となる
Va族(バナジウム族)元素と、残部が実質的にチタン
とからなるようにすることもできる。
はハフニウム(Hf)を1〜10質量%含有し平均ヤン
グ率が75GPa以下となるようにしても良い。前述し
たのと同様に、ジルコニウムおよび/またはハフニウム
を1〜10質量%含有することにより、引張弾性限強度
を低下させることなく、平均ヤング率が75GPa以下
という、さらなる低ヤング率を達成できる。従って、ゴ
ルフクラブのヘッド等の固有振動数fを調整できる幅が
一層広がり好都合である。
ニウム単体若しくはジルコニウムとハフニウムの複合の
何れの場合でも、1〜10質量%であると好適である。
何れも1質量%未満では、固溶化作用が十分でなく、所
望の低ヤング率が得られない。一方、10質量%を越え
ると、全体の密度が増加し比強度の点から好ましくな
い。また、材料偏析が生じ易くなり、強度、靱性の低下
を招きかねない。そして、低ヤング率、強度等の観点か
ら、それらを5〜10質量%とすると一層好ましい。
合金部が、1〜20質量%のモリブデン(Mo)と1〜
20質量%の鉄(Fe)と1〜20質量%の錫(Sn)
と0.1〜3質量%のアルミニウム(Al)とからなる
金属群のうちから1種類以上の元素を含むと好適であ
る。モリブデンは、チタン合金部の室温強度、熱間加工
性を向上させるのに有効な元素である。
室温強度が大きいことは非常に有意義である。モリブデ
ンが1質量%未満では十分な固溶強化作用が得られず、
室温強度の向上が図れない。また、モリブデンが20質
量%を越えると、材料偏析が生じ易くなり、均質な材料
を得ることが困難になり、強度や延性の低下を招きかね
ない。なお、モリブデンを4〜15質量%、室温強度を
一層向上させることができて好ましい。
ブデンと共に1〜20質量%の鉄を含有してもよい。鉄
も、チタン合金部の室温強度の向上に有効な元素であ
る。鉄が1質量%未満では十分な固溶強化作用が得られ
ず、室温強度の向上が望めない。鉄が20質量%を越え
ると、材料偏析が生じ易くなり、均質な材料を得ること
ができず、強度や延性の低下を招く。なお、鉄を3〜1
5質量%とすると、室温強度を一層向上させることがで
きて好ましい。
モリブデンや鉄と共に1〜20質量%の錫(Sn)を含
有すると好適である。錫はα安定化元素であるが、本発
明のチタン合金部の強度向上に有効な元素である。錫が
1質量%未満では強度の向上が望めず、20質量%を越
えると、チタン合金部の延性が低下する。なお、低ヤン
グ率と共に安定した強度を得るには、錫の含有量を質量
%で4〜15%とするとより好ましい。
たはモリブデンや鉄や錫と共に0.1〜3質量%のアル
ミニウムを含有すると好適である。アルミニウムも、モ
リブデン等と同様、チタン合金部の室温強度を向上させ
るのに有効な元素である。特に、アルミニウムを錫と共
に含有すると、チタン合金部は、靱性を害されずに引張
弾性限強度の向上を図ることができる。アルミニウムが
0.1質量%未満では十分な固溶強化作用が得られず、
室温強度の向上が望めない。また、3質量%を越える
と、チタン合金部の延性が低下する。なお、室温強度を
一層向上させるために、アルミニウムを0.5〜2質量
%含むとより好ましい。
を100質量%とした場合に、チタン合金部が0.08
〜0.6質量%の酸素(O)を含有すると、好適であ
る。酸素は、チタン合金部の強度向上に有効な元素であ
る。特に、Va族の元素との共存により、チタン合金部
を高強度、低ヤング率とすることができるので、設計自
由度の大きなゴルフクラブを得る上で非常に有効であ
る。但し、酸素の含有量を0.08質量%未満とする
と、強度の向上が図れず、0.6質量%を越えると、平
均ヤング率が上昇し、伸びの低下をもたらすため好まし
くない。また、0.6質量%を越えると、延性が低下
し、圧延等の冷間加工性も低下する。望ましくは、酸素
を0.15〜0.5質量%含有すると良い。
%とした場合に、0.05〜1.0質量%の炭素(C)
を含むと、好適である。炭素も酸素と同様に、侵入型の
固溶強化元素であり、チタン合金のα相を安定にし、強
度を向上させる上で有効な元素である。炭素が0.05
質量%未満では、チタン合金の強度向上を十分に図れ
ず、1.0質量%を超えると、チタン合金の脆化を招き
好ましくない。強度と延性とのバランスを図る上で、炭
素を0.1〜0.8質量%とすると、より好ましい。
を100質量%とした場合に、チタン合金部が、0.0
1〜1.0質量%のホウ素(B)を含むと、好適であ
る。ホウ素は、チタン合金の機械的な材料特性と熱間加
工性とを向上させる上で有効な元素である。ホウ素は、
チタン合金に殆ど固溶せず、そのほぼ全量がチタン化合
物粒子(TiB粒子等)として析出する。この析出粒子
が、チタン合金の結晶粒成長を著しく抑制して、チタン
合金の組織を微細に維持するからである。ホウ素が0.
01質量%未満では、その効果が十分ではなく、1.0
質量%を超えると、高剛性の析出粒子が増えることによ
り、チタン合金部の全体的な平均ヤング率の上昇と冷間
加工性の低下を招いてしまう。一方、組織の微細化、低
ヤング率、冷間加工性等を両立すべく、ホウ素を0.0
1〜0.5質量%とすると、一層好ましい。
内で、任意に組合わせることができ、また、本発明のゴ
ルフクラブの趣旨を逸脱しない範囲内で、さらに別の元
素を配合してチタン合金部を形成することもできる。
上の冷間加工組織を有すると好適であり、特に、平均ヤ
ング率が65GPa以下で引張弾性限強度が800MP
a以上であると、好適である。チタン合金部が冷間加工
組織をもつことにより、低ヤング率化と高強度化を高次
元で両立できる。特に、ゴルフクラブの構成部材を冷間
プレス加工して製作するような場合には非常に好都合で
ある。
工したときに得られる組織であり、「冷間」とは、チタ
ン合金の再結晶温度(再結晶を起す最低の温度)以下を
指す。50%以上の冷間加工組織とは、次式により定義
される冷間加工率が50%以上の場合にできる冷間加工
組織をいう。 冷間加工率 = (S0−S)/S0 ×100(%) (S0:冷間加工前の断面積、S:冷間加工後の断面
積) このような、冷間加工組織を付与することにより、低ヤ
ング率と高強度化を達成できる理由は、現在のところ必
ずしも明らかではない。
間プレス、冷間絞り、冷間線引き、冷間スェージング加
工等がある。また、冷間加工により先ず素材を製造して
から(素材用冷間加工工程)、その素材を冷間プレスで
製品に成形しても良いし(成形用冷間プレス工程)、両
工程を一工程として行っても良い。また、素材(焼結体
や熱間加工材)を直接、冷間プレス機にて冷間鍛造して
所定の冷間加工等を付与しても良い。但し、高強度、低
ヤング率を得るためには、かなりの冷間加工を加えるこ
とが好ましいので、素材用冷間加工工程でチタン合金部
の組織を十分な冷間加工組織としておくことが好まし
い。
まま用いる場合にはチタン合金部が平均径50μm以下
の空孔を30体積%以下含む焼結組織であると、一層好
適である。このような範囲内で空孔の量を調整すること
により、本発明のチタン合金部の強度や延性に大きな影
響を与えることなく、平均ヤング率の低減量を調整でき
る。冷間加工を行う場合には、平均径50μm以下の空
孔が10体積%以下となるように緻密化を行っておくと
良い(緻密化工程)。この緻密化工程は、例えば、焼結
後に熱間鍛造等を軽く行うようなものでも良い。
は、空孔が30体積%を越えると、チタン合金部の強度
が低下し、冷間加工性等も悪化する。この空孔の平均径
と体積%とを適宜調整することにより、高強度化、低ヤ
ング率化を一層図ることができる。焼結組織は、例え
ば、金属粉末を静水圧200〜400MPaでCIP成
形(冷間静水圧成形)した後、1200〜1550℃、
1.3×10-3MPaの雰囲気で4〜16時間焼結させ
ることにより得られ、チタン粉末等の成形時に十分な緻
密化を図れれば、その後、別途緻密化工程を行う必要は
ない。
隙を意味し、相対密度で評価される。相対密度とは、真
密度ρ0(残留空孔0%の場合)で焼結体密度ρを割っ
た値の百分率(ρ/ρ0 )×100(%)で表され、空
孔の体積%は次数式で表される。 空孔の体積% ={1−(ρ/ρ0)}×100
(%) その平均径は、2次元画像処理で測定される空孔形状
を、それと等しい面積をもつ等価円形状として評価し、
それらの等価円形状から求まる径の平均値を空孔形状の
平均径としたものである。
率をE(GPa)、密度をρ(103×Kg/m3)とす
るときに比ヤング率E/ρが16(×10-3GPa・m
3/Kg)未満、または、(E/ρ)1/2 が4(×10
-3GPa・m3/Kg)1/2未満であると、好適である。
前述したように、従来の材料ではこの比ヤング率E/ρ
がその種類によらず、ほぼ一定値であったため、材料面
からヘッド部等の固有振動数fを低減することは困難で
あった。ところが、本発明のゴルフクラブのチタン合金
部では、この比ヤング率E/ρを従来の材料より著しく
低い値とすることができた。つまり、チタン合金部の固
有振動数fの低減を材料面から達成でき、従来になく、
ゴルフクラブの設計自由度を広げることができた。
比ヤング率E/ρを示すと、平均ヤング率E=53(M
Pa)で、密度ρ=5.836(103×Kg/m3)で
あるので、比ヤング率E/ρ=9.1(×10-3GPa
・m3/Kg)となる。これを、従来の他金属材料と比
較したグラフを図3に示す。図3では、数式2に合わせ
て、横軸を(E/ρ)1/2 とした。この図3からも明
らかなように、チタン合金部は著しく低い比ヤング率E
/ρとなっていることが解る。また、このチタン合金部
の(E/ρ)1/2 を、従来のα+β型チタン合金やヤン
グ率の最も低いβ型チタン合金と比較しても、それぞ
れ、約40%、約25%の低減となている。これから
も、比ヤング率E/ρを著しく低減できたことが解る。
GPa・m3/Kg)を越えると、チタン合金部の固有
振動数f等の最適化が難しくなり、ゴルフクラブの設計
自由度が制限されるので好ましくない。一方、ゴルフク
ラブの設計自由度をより拡大すべく、比ヤング率E/ρ
が12以下、言換えるなら、(E/ρ)1/2 が3.5
以下(各単位は、同上)とすると、より好ましい。
記フェース部の少なくとも一部を構成していると、好適
である。前述した数式3から解るように、肉厚hの低減
は急激な応力の増加をもたらすと考えられるが、チタン
合金部の引張弾性限強度は700MPa以上と高強度で
あるため、従来と同等以上に薄い肉厚hとすることがで
きる。従って、材料面からのみならず、形状面からも固
有振動数fの低減等が図れ、ゴルフクラブの設計自由度
を一層拡張できた。
したのは、フェース部の全面にそのチタン合金部を使用
したものでも良いし、スイートスポット部分のみにチタ
ン合金部を使用したもの等でも良い。さらには、フェー
ス部の表面のみにチタン合金部を固着したものでも良
く、この場合、チタン合金部がヘッド強度を直接確保す
る必要がないので、チタン合金部を一層薄いものとする
ことができる。
ない特徴をチタン合金部が備えるため、ゴルフクラブの
設計自由度が拡大し、その多様な要求性能を達成でき
る。
ゴルフクラブなら、ゴルフクラブのヘッド(外殻)全体
をそのチタン合金部で構成しても良いし、フェース部の
みをチタン合金部で構成しても良い。また、前述したよ
うにスイートスポット等、フェース部の一領域のみをチ
タン合金部で構成しても良い。さらには、フェース部を
複層構造としてその表層のみをチタン合金部で構成して
も良い。このように、ヘッドをチタン合金部で構成した
ゴルフクラブは、従来になく飛距離、打感、打音等の性
能を向上させることができる。なお、そのようなチタン
合金部の表層に、種々のコーティング処理等を行っても
良い。例えば、表面硬度を上げることにより、耐摩耗性
等を向上させることができる。具体的には、酸化、窒化
処理などがある。
そのチタン合金部で構成したゴルフクラブとしても良
い。チタン合金部の高比強度と低ヤング率とにより、軽
量で、良くしなるシャフトをもつゴルフクラブが得られ
る。ゴルファーの好みにもよるが、強度を確保しつつ、
シャフトの剛性を低減できると、ゴルフボールを打撃し
た時の衝撃が小さくなり、打感が向上するといわれてい
る。また、たわみが大きくなると、シャフトに蓄えられ
る弾性エネルギーが大きくなり、打撃時、ゴルフボール
にその弾性エネルギーを伝達し易い場合もある。また、
ゴルフボールの弾道制御も容易になり得る。
の他、アイアン、パターも当然含まれる。また、チタン
合金部を用いる目的が、飛距離、打感、打音等の向上に
限られるものでない。飛距離、打感、打音等は、本発明
のゴルフクラブの設計自由度の大きさを示すための例示
に過ぎない。このように、本発明のゴルフクラブは設計
自由度が非常に大きいため、ゴルファーの多様なレベル
に応じることができる。
的に説明する。本発明のゴルフクラブの一実施例である
ドライバー1を図4に示す。このドライバー1は、前述
のチタン合金部をヘッド100のフェース部110に設
けたものである。そこで、先ず、このチタン合金部の種
々の実施例について説明する。
して、市販の水素化・脱水素チタン(Ti)粉末(−#
325、−#100)、ニオブ(Nb)粉末(−#32
5)、タンタル(Ta)粉末(−#325)、ジルコニ
ウム(Zr)粉末(−#325)を用意した。次に、こ
れらの粉末を、Ti−30Nb−10Ta−5Zrの組
成割合(表1)になるように配合し、この粉末を圧力4
ton/cm2 で加圧しつつCIP成形(冷間静水圧成
形)により、φ50mm×100mmの成形体とした。
このときの含有酸素量はTi粉末に含まれる酸素量
(O:0.1〜0.5質量%)で調整をした(以下の実
施例についても、同様である)。なお、表1では、残部
であるTiを省略して示した。
真空中で1300℃×16時間加熱し、焼結させて焼結
体とした。そして、この焼結体を950〜1150℃の
大気中で熱間鍛造して板厚15mmの原材とし、焼結体
組織の緻密化を図った(緻密化工程)。こうして得た原
材をさらに冷間加工して厚さt=4mmの板素材とした
(素材用冷間加工工程)。このときの冷間加工率は73
%であった。なお、この冷間加工には冷間圧延機を用
い、中間焼鈍なしで、0.5mmパスを22回通して、
4mmの厚さの板素材を得た。
間プレス)によりフェース部110を得た(成形用冷間
プレス工程)。なお、素材用冷間加工工程と成形用冷間
プレス工程とを合わせて一工程とし、直接、冷間プレス
機にて冷間鍛造を行なって、冷間加工率が50%以上と
なるようにしても良い。但し、前述したように、成形用
冷間プレス工程前に、素材用冷間加工工程で十分な冷間
加工(冷間加工率50%以上)を行っておくと、低ヤン
グ率・高強度のチタン合金部を確実に得ることができる
ので、好ましい。また、冷間加工の程度(冷間加工率)
を調整することで、平均ヤング率と引張弾性限強度とを
調整することも可能となる。また、これらの工程を分け
ると、大きめの板材(素材)から一度の冷間プレス加工
で多数のフェース部(チタン合金部)が得られるため、
生産効率の向上も図れる。
測定した。 (a)平均ヤング率と引張弾性限強度 各供試材について、インストロン試験機を用いて引張試
験を行い、荷重と伸びとを測定して、応力−歪み線図を
求めた。インストロン試験機とは、インストロン(メー
カ名)製の万能引張試験機であり、駆動方式は電気モー
タ制御式である。伸びは試験片の側面に貼り付けたひず
みゲージの出力から測定した。平均ヤング率と引張弾性
限強度とは、その応力−歪み線図に基づいて、前述した
方法により求めた。このとき、平均ヤング率は53GP
aと、低ヤング率であり、また、引張弾性限強度は93
6MPaと、高強度であった。
6×103kg/m3であった。
4%であった。なお、破断伸びδは、破断時の標点距離
Lf と試験前の標点距離L0 とを用いて、δ=(Lf−
L0)/L0 ×100(%)と表されるものであり、L
f は前述の応力−歪み線図に基づいて測定した。これら
のチタン合金部の材料特性を、表1に併せて示す。
製造した。原料粉末として、前述したTi粉末、Nb粉
末、Ta粉末およびZr粉末と、バナジウム(V)粉末
(−#325)、ハフニウム(Hf)粉末(−#32
5)、モリブデン(Mo)粉末(−#325)、Fe−
Nb粉末(−#325)、錫(Sn)粉末(−#32
5)、Al−V粉末(−#325)、スカンジウム(S
c)粉末(−#325)、TiB2粉末(−#325)
およびTiC粉末(−#325)とを用意し、これらの
粉末を適宜選択して、表1に示す種々の割合で配合し
た。それらの各混合粉末を用いて、第1実施例と同様
に、成形、焼結、熱間鍛造、冷間加工等を行い、表1に
示す種々の組成をもつチタン合金部からなるフェース部
110を製作した。
施例と同様に測定し、それらの結果を表1に併せて示し
た。表1の材料特性からも解るように、本発明のチタン
合金部は、冷間加工により低ヤング率、高強度(引張弾
性限強度)が得られ、非常に優れた冷間加工性を備える
ため、冷間プレス成形されるゴルフクラブ部材に利用す
ると最適である。
フト150とから基本的に構成される。以下、これらを
分けて説明する。 ヘッド 図5に示すように、ドライバーのヘッド100は、フェ
ース部110と側底殻部120と上殻部130とシャフ
ト取付用パイプ140との4部材から基本的に構成され
る。フェース部110以外の各部材は、同一材料Ti−
4.5Fe−7Mo−1.5Al−1.5V(単位:質
量%)で、冷間プレス加工により製作した。この材料
は、フェース部110との溶接性や、中空ヘッドの剛
性、強度を考慮して決めた。本実施例では側底殻部12
0等の肉厚を2.6mmとした。そして、フェース部1
10と側底殻部120と上殻部130とシャフト取付用
パイプ140との各部材の周辺接合部を溶接して、ヘッ
ド100とした。溶接には、レーザー溶接を用いたが、
電子ビーム溶接を用いても良い。なお、本実施例ではフ
ェース部110とその他の部材との材質を異なったもの
としたが、全部材をフェース部110(チタン合金部)
と同材質で構成しても良い。
に説明する。 (a)フェース部 フェース部110は、打撃時にゴルフボールが打接する
部分である。図5に示すように、このフェース部110
は略楕円形の板状をしており、ほぼ均一な肉厚hと面積
Sとをもつ。このフェース部110の固有振動数fを具
体的に見積ると、次のようになる。つまり、面積S、肉
厚hを通常モデルの形状と同一とした場合、本発明のゴ
ルフクラブによると、上記第1実施例の場合、(E/
ρ)1/2=3.0となるから固有振動数fは通常のゴル
フクラブに較べて約40%低減となる
の場合その固有振動数fは1300〜1400Hz、ア
イアンの場合その固有振動数fは1800〜1900H
zであると言われている。ここで、数式2のα2、h/
Sを一定と考えて従来のフェースを本発明のチタン合金
部で置換した場合を考えると、ドライバーの固有振動数
fは780〜840Hz、アイアンの固有振動数fは1
080〜1140Hzとなる。
は600〜1600Hzである。これより、本発明のゴ
ルフクラブは、その固有振動数fをゴルフボールの固有
振動数fとほぼ等しくできるか若しくは著しく近づける
ことができることが解る。従って、本発明によれば、ゴ
ルフボールの飛距離や打感、打音等の著しい向上を図れ
る、設計自由度の大きなゴルフクラブを提供できる。
が、例えば、図6(図5中のA−A断面)に示すよう
に、フェース部を周辺から中央にかけて薄肉(凹レンズ
状)とし、この薄肉部分がスイートスポット(図5中の
2点鎖線)となるようにしても良い。この場合は、前述
のチタン合金部の面積Sおよび肉厚hをこのスイートス
ポットの面積Sおよびその最薄肉部の肉厚hで代用して
比ヤング率E/ρ、形状係数h/S、固有振動数fを見
積ると良い。このように、スイートスポット部分の固有
振動数fを、例えば、ゴルフボールの固有振動数に一致
させることによりゴルフボールの飛距離等の向上を図っ
ても良い。また、フェース部110の表面には、横方向
に延びる浅溝111を適宜設けると良い。これにより、
フェース部110の固有振動数fやスイートスポットの
固有振動数fを適宜、微調整することができる。また、
意匠性も向上する。
周側部とを形成するものであり、略有底半円筒状をして
いる。また、その周側部の一部にはシャフト取付用パイ
プ140を保持するための凹部121が設けてある。
る。その端部には、シャフト取付用パイプ140を保持
するために、側底殻部120の凹部121に対応した凹
部131が設けてある。
ト150をヘッド100に取付けるためのパイプ状部材
である。その下端は側底殻部120のソール上面129
に溶接され、その周側部は側底殻部120の凹部121
と上殻部130の凹部131とに溶接される。上端開口
141には、後述のシャフト150の取付部151が嵌
入される。
る。その上端には、ゴルファーが把持するためのグリッ
プ部159(図4)が設けてあり、下端には前述の取付
部151が形成されている。グリップ部159には、ゴ
ルファーが把持し易いようにすると共に打撃時の衝撃を
和らげるためのクッション材158が巻かれている。一
方、取付部151は、シャフト150本体よりも細径と
なっており、その長さはシャフト取付用パイプ140の
長さに略一致する。そして、シャフト取付用パイプ14
0の上端開口へ嵌入された取付部151の当接部(取付
部151の段差部)周辺152を溶接して、ドライバー
1が完成する。
例を図7に示す。本実施例では、前述のチタン合金部と
同質のチタン合金部を環状の本体200の周辺に溶接す
ることによりフェース部210を構成し、アイアン2と
したものである。その他の構成は前述のドライバー1と
基本的に同様である。なお、本体200は、環状でなく
断面コの字状でも良く、この場合、チタン合金部をその
本体200のフェース部表面に接着すると良い。
性のチタン合金部を備えるので、従来になく設計自由度
が広がり、多様な要求性能に応えることができる。
ドモデルを概略的に示した図である。
の説明図であり、図2Aは、本発明に係るチタン合金の
応力−歪み線図を模式的に示した図であり、図2Bは、
従来のチタン合金の応力−歪み線図を模式的に示した図
である。
比較した図である。
である。
を示す図である。
ス部の変形例を示す図である。
示す図である。
Claims (7)
- 【請求項1】ゴルフボールが打接するフェース部を備え
るヘッドと、該ヘッドの一端部から延出し他端部にグリ
ップ部を備えるシャフトとからなるゴルフクラブにおい
て、 前記フェース部および/または前記シャフトは、 引張試験で真に永久歪みが0.2%に到達したときの応
力として定義される引張弾性限強度が700MPa以上
であり、 加える応力が0から該引張弾性限強度までの範囲にある
弾性変形域内で、該引張試験により得られた応力−歪み
線図上の接線の傾きが応力の増加に伴って減少する特性
を示し、 該応力−歪み線図上の接線の傾きから求まるヤング率の
代表値として、該引張弾性限強度の1/2に相当する応
力位置での接線の傾きから求めた平均ヤング率が75G
Pa以下である高弾性変形能のチタン合金からなるチタ
ン合金部をもつことを特徴とするゴルフクラブ。 - 【請求項2】前記チタン合金部は、前記引張弾性限強度
が800MPa以上で前記平均ヤング率が65GPa以
下である請求項1記載のゴルフクラブ。 - 【請求項3】前記チタン合金部は、全体を100質量%
とした場合に、30〜60質量%のVa族(バナジウム
族)元素を含有する請求項1記載のゴルフクラブ。 - 【請求項4】前記チタン合金部は、全体を100質量%
とした場合に、さらに、ジルコニウム(Zr)とハフニ
ウム(Hf)とスカンジウム(Sc)とからなる金属元
素群中の1種以上の元素を合計で1〜20質量%含有す
る請求項3記載のゴルフクラブ。 - 【請求項5】前記チタン合金部は、さらに、全体を10
0質量%とした場合に、0.08〜0.6質量%の酸素
(O)を含有する請求項3記載のゴルフクラブ。 - 【請求項6】前記チタン合金部は、50%以上の冷間加
工組織を有する請求項1または2記載のゴルフクラブ。 - 【請求項7】前記チタン合金部は、平均ヤング率をE
(GPa)、密度をρ(103×Kg/m3)とするとき
に比ヤング率E/ρが16(×10-3GPa・m3/K
g)未満である請求項1記載のゴルフクラブ。
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JP2007007276A (ja) * | 2005-07-01 | 2007-01-18 | Yonex Co Ltd | ゴルフクラブヘッド |
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