JP2010142972A - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、供給口内に梁が設けられたインクジェット記録ヘッドを製造する簡便な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法は、シリコン基板で構成され、かつインク供給口の相対する長辺間をつなぐように形成された梁を有するインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、(1)前記シリコン基板の表面に犠牲層を形成し、少なくとも前記シリコン基板の裏面であって梁形成部の下側に相当する部分にエッチングマスクを形成する工程と、(2)前記エッチングマスクをマスクとして前記シリコン基板をアルカリ溶液により異方性エッチングし、さらに前記犠牲層を前記アルカリ溶液によりエッチングしつつ前記シリコン基板を異方性エッチングすることにより前記梁を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】図12

Description

本発明は、インクジェット記録ヘッドの製造方法に関するものである。
液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いる例としては、インクを被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方式に用いられるインインクジェット記録ヘッドが挙げられる。
インクジェット記録ヘッド(記録ヘッド)は、インクが吐出される複数の吐出口と、各吐出口に連通するインク流路と、流路にインクを供給するための供給口と、流路内のインクに吐出エネルギーを付与する吐出エネルギー発生素子とを少なくとも備えた基板を有する。基板としては、通常はシリコン(Si)が用いられ、インク流路と連通するインク供給口が基板を貫通するように設けられている。
インクジェット記録方式では、吐出エネルギー発生素子でインクを加熱して気泡を生成させ、この気泡の生成によってインクを吐出し、このインクを被記録媒体上に付着させて画像形成を行う。インクジェット記録方式(例えば、特許文献1参照)は、高速記録が可能であり、また比較的記録品質も高く、低騒音であるという利点を有している。この方法では、カラー画像記録が比較的容易であって、普通紙等にも記録でき、装置の小型化も容易である。さらに、記録ヘッドにおけるインク吐出口を高密度に配設することが可能となるため、記録画像の高解像度化や高品質化に寄与する。この吐出方法を用いた記録装置(インクジェット記録装置)は、複写機、プリンタ等における情報出力手段として種々使用されている。
近年、データ量の多い画像情報を出力する要求が高まっており、高精細な画像を高速に記録することが望まれてきている。高精細な画像を出力するためには、微細なインク液滴を安定に吐出することが求められ、そのためには、インク吐出口を高密度かつ高精度に形成する必要がある。
例えば特許文献2、3には、インク吐出口を高密度かつ高精度に形成可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法が提案されている。また、特許文献4には、特許文献2、3に記載のインク吐出口の製造方法において、インク吐出口が形成された被覆樹脂層にリブ構造を形成する方法が提案されている。これらの文献に提案されているインクジェット記録ヘッドは、発熱体が形成された基板に対して、インク液滴が垂直方向に吐出する、いわゆる「サイドシュータ型」のインクジェット記録ヘッドである。
この、「サイドシュータ型」のインクジェット記録ヘッドにおいては、インク吐出口を高密度に配置しようとすれば当然ながらインク吐出口どうしの間隔が狭くなり、その結果、各インク吐出口までのインク流路は狭くなる。インク流路が狭くなると、インクの発泡後にインクが再びインク流路に満たす時間(リフィル時間)が長くなる。このリフィル時間を短くするためには、吐出エネルギー発生素子とインク供給口との間の距離を短くする必要がある。
インク供給口と吐出エネルギー発生素子との距離を正確に制御する方法として、シリコンの結晶方位面に応じたエッチング速度差を利用する、アルカリ水溶液を用いたシリコン結晶異方性エッチング(異方性エッチング)が知られている。この方法では、一般的に、方位面が<100>のシリコンウエハを基板として用い、その基板の裏面よりシリコン結晶異方性エッチングを行い、インク供給口を精度良く形成することにより、吐出エネルギー発生素子とインク供給口との距離の制御を行う。
インク供給口の開口部をより高精度に形成するため、例えば特許文献5では、シリコン基板の表面に形成した犠牲層と異方性エッチングとを組み合わせたインク供給口の製造方法が提案されている。
このように、インクジェット記録ヘッドの製造において、このシリコン結晶異方性エッチングはインク供給口を精度良く形成することができるため有用な技術となっている。
図1は、従来のインクジェット記録ヘッドの一例を示す斜視図であり、図2は、図1のA―A線における断面図である。
図1に示すように、インクジェット記録ヘッドは、シリコン基板1上に、薄い板状に形成された被覆樹脂層6が位置決め固定されることにより構成されている。
被覆樹脂層6には、複数のインク吐出口4が形成されている。なお、上述した特許文献4によれば、この被覆樹脂層6で構成されたインク流路5にリブ構造を設けることにより、被覆樹脂層6の変形等が防止される。
シリコン基板1には、被覆樹脂層6の各インク吐出口4にインクを供給するための一つのインク供給口10が長穴として形成されている。被覆樹脂層6とシリコン基板1の間には、インク流路5が、インク供給口10とそれぞれのインク吐出口4とに連通するように形成されている。このインク流路5内には吐出エネルギー発生素子11が設けられており、吐出エネルギー発生素子11は各インク吐出口4に対応するように、かつインク供給口10が間となるように配列されている。
ここで、特許文献6では、シリコン基板の機械的強度を向上させるため、インク供給口に梁が形成されたインクジェット記録ヘッドの製造方法について記載されている。この製造方法について図3を用いて説明する。
まず、図3(A)に示すように、シリコン基板1の裏面に2つの開口部21a、21bを備えた第1のマスク7を設ける。
次に、図3(B)に示すように、開口部21aのみが開放された状態の第2のマスク8を形成し、その後、シリコン基板1に対して斜めエッチングにより第1の溝を形成する。
次に、図3(C)に示すように、第2のマスク8を除去した後、開口部21bのみが開放された状態の第3のマスク9を形成し、同様に斜めエッチングにより第2の溝を形成する。
次に、図3(D)に示すように、第3のマスク部材9を除去した後、異方性エッチングによって両溝(第1、2の溝)の内壁及び残留部をエッチングし、インク供給口10を形成する。
この特許文献6に記載の製造方法によれば、インク供給口(又はシリコン基板)内に形成された梁によってインクジェット記録ヘッドの機械的強度を向上させることができる。そのため、インクジェット記録ヘッドの変形が防止されてインク吐出口の位置ズレを防止できる。また、インクジェット記録ヘッド長尺に形成することができるため、高精細かつ高速な記録を行うことが可能となる。また、製造工程における破損も防止されるため、製造歩留まりが向上する。また、基板の表面側に共通のインク供給口が開口するためインクのリフィル時間に関する問題が防止され、吐出の周波数特性が均一化するとともに高速な記録が実現される。
特開昭54−51837号公報 特開平5−330066号公報 特開平6−286149号公報 特開平10−146979号公報 特開平10−181032号公報 特開2005−169993号公報
しかし、特許文献6に記載の方法では、上述のように、斜めエッチングを2回行った後に異方性エッチングを行う必要がある。つまり、斜めエッチング(ドライエッチング)とそれに対応するマスク形成と、インク供給口表面への貫通のための異方性エッチングと、を行う必要がある。そのため、複数の工程を必要とし、このような製造方法ではコスト高となってしまう。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、簡便な方法で供給口内に梁が設けられたインクジェット記録ヘッドを製造する方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、シリコン基板の表面に犠牲層を設け、裏面にエッチングマスクを形成し、アルカリ溶液による異方性エッチング処理により梁を形成する方法を提供する。本発明により、シリコン基板の一度の異方性エッチング処理により梁を形成することが可能である。
本発明は、インクを吐出するインク吐出口と、前記インクを吐出するエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子と、該吐出エネルギー発生素子を有し、かつ前記インク吐出口に連通するインク流路と、該インク流路に連通し、かつシリコン基板に形成されるインク供給口と、前記シリコン基板材料で構成され、かつ前記インク供給口の相対する長辺間をつなぐように形成された梁と、を有するインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
(1)少なくとも前記シリコン基板の表面であって前記インク供給口の形成部の上側に、アルカリ溶液にて等方的にエッチングされ得る犠牲層を形成する工程と、
(2)少なくとも前記シリコン基板の裏面であって前記梁の形成部の下側にエッチングマスクを形成する工程と、
(3)前記エッチングマスクをマスクとして前記シリコン基板を前記アルカリ溶液により異方性エッチングし、前記犠牲層を露出させる工程と、
(4)前記犠牲層を前記アルカリ溶液によりエッチングしつつ、前記犠牲層の除去された表面側を含めて前記シリコン基板をさらに異方性エッチングする工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
本発明によれば、簡便な方法で供給口内に梁を形成することが可能となる。
本発明は、インクを吐出するインク吐出口と、前記インクを吐出するエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子と、該吐出エネルギー発生素子を有し、かつ前記インク吐出口に連通するインク流路と、該インク流路に連通し、かつシリコン基板に形成されるインク供給口と、前記シリコン基板材料で構成され、かつ前記インク供給口の相対する長辺間をつなぐように形成された梁と、を有するインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
(1)少なくとも前記シリコン基板の表面であって前記インク供給口の形成部の上側に、アルカリ溶液にて等方的にエッチングされ得る犠牲層を形成する工程と、
(2)少なくとも前記シリコン基板の裏面であって前記梁の形成部の下側にエッチングマスクを形成する工程と、
(3)前記エッチングマスクをマスクとして前記シリコン基板を前記アルカリ溶液により異方性エッチングし、前記犠牲層を露出させる工程と、
(4)前記犠牲層を前記アルカリ溶液によりエッチングしつつ、前記犠牲層の除去された表面側を含めて前記シリコン基板をさらに異方性エッチングする工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
本発明により、シリコン基板の一回の異方性エッチング処理によりインク供給口と梁を同時で形成できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
図4は本実施形態の製造方法により作製されるインクジェット記録ヘッドの概略図である。図4(a)は本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図である。図4(b)は図4(a)に示すA−A線における概略断面図である。図4(c)は図4(a)に示すB−B線における概略断面図である。図4(d)は図4(a)に示すC−C線における概略断面図である。なお、本明細書において、伸方向とは梁が形成される方向のことを指し、また、伸方向中央部とはB−B線の部分に相当する。
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドは、複数の吐出エネルギー発生素子11を備えたシリコン基板1上に各吐出エネルギー発生素子11に対応する吐出口4と共通液室(不図示)に連通するインク流路5の一部を有した被覆樹脂層6が位置決め固定されている。
シリコン基板1は、その結晶方位が<100>面のものであり、シリコン基板1中央部には吐出口列に沿って複数のインク供給口10が形成されている。インク供給口10には梁2が形成されている。この梁2は、シリコン基板1の機械的強度を向上させるための構造部であり、インク供給口10を異方性エッチングにより形成する際にシリコン基板1の一部を残すことによって形成される。したがって、梁2がシリコン基板1と同一の材料で構成されている。
図4では、簡略化のため、インク供給口に3つの梁2が形成された構成を有するインクジェット記録ヘッドを例として示すが、梁の数はシリコン基板の形状や求める機械的強度によって適宜選択することができる。また、本実施形態で製造されるインクジェット記録ヘッドでは図4(d)に示すように梁2の上面はシリコン基板表面よりも低くなっている(内側に形成される)ため、インク供給口10はシリコン基板の表面側において梁で分割されずにすむ。そのため、梁2が形成されているにもかかわらず、インク供給口10から各インク流路5へのインク供給が良好に行われるようになる。
本実施形態の製造方法によるインクジェット記録ヘッドによれば、シリコン基板1の機械的強度が向上するため、実質的に1つの長尺なインク供給口を有したヘッドにおいてもシリコン基板1は変形しにくいものとなる。また、梁2はシリコン基板1と同部材でインク供給口と同時形成できるため、特別な工程を設ける必要がなく、また、補強用の特別な部材を必要とすることもない。
本実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの製造方法について、図5〜図8を参照して以下に説明する。
図5は、図4(b)に示すインク供給口10の断面部分の製造工程を説明する図である。また、図6は、図4(c)に示す梁2の断面部分における製造工程を説明する図である。また、図7は、図4(d)に至る異方性エッチング工程を表した断面図である。なお、図7では、シリコン基板1、保護膜(例えば熱酸化膜)3、犠牲層17、下面のエッチングマスク19以外は図示していない。さらに、図8は、本実施形態における具体的な犠牲層(図7(a))の形状を表す斜視図である。
まず、図5(a)、図6(a)に示すように、結晶方位が<100>面のシリコン基板1を用意し、シリコン基板の表面に複数の吐出エネルギー発生素子11を形成する。また、インク供給口10と梁2を形成するための犠牲層17を形成する。ここで、犠牲層17は、図8に示すように、インク供給口位置に対応する領域の犠牲層17aより梁2に対応する領域の犠牲層17bの厚さが薄くなるように犠牲層を形成する。犠牲層の材質は、アルカリ溶液でエッチングできるものであればよく、例えばアルミやポリシリコンが使用可能である。また、アルミシリコン、アルミ銅、アルミシリコン銅等のアルミの化合物であってもよい。
また、シリコン基板1の裏面に、後述する異方性エッチング工程で必要となるエッチングマスク19を形成する。エッチングマスクとしては、半導体製造工程における熱酸化工程で形成される熱酸化膜や、プラズマCVD等によるSiN膜等が好ましい。また、エッチングマスクとしては、熱酸化膜やSiN膜に制限されるものではなく、異方性エッチング液に耐える材料(例えばレジスト等)であれば、特に限定するものではない。また、エッチングマスクの製造方法も特に限定されるものではない。
次に、図5(b)、図6(b)に示すように、シリコン基板1の表面側に、インク流路5を形成するための型材として、溶解可能な樹脂材料からなる流路形成層12を塗布し、インク流路の形状に合わせてパターニングする。
次に、図5(c)、図6(c)に示すように、流路形成層12を覆うようにしてシリコン基板1の表面側に被覆樹脂層6を形成し、さらにインク吐出口4を形成する。なお、被覆樹脂層6としては、感光性材料を使用可能である。
次に、図5(d)に示すように、インク供給口に対応する領域のエッチングマスク3を除去する。開口部の形状は、シリコン基板の裏面側のインク供給口形状および梁の下面形状を規制するものであるため、それに対応した形状とする必要がある。なお、エッチングマスク19は、図7に示すように、シリコン基板の裏面であって梁形成部の下側に相当する部分にエッチングマスクが残るようにパターニングする。
また、エッチングマスクにおいて、梁形成部下の伸方向に直交する幅を、シリコン基板の横方向のエッチング量の2倍以上の幅に形成することで、インク吐出口開口下面に梁の下面を位置させることができる。例えば、厚さ625μmのシリコン基板をTMAH22%wt溶液、80℃にてエッチングを行う場合、梁下面を基板裏面と同一面に残すためには、開口部間、すなわち梁形成部下のエッチングマスクの幅を約170μm以上設けることが好ましい。特に限定するものではないが、これはシリコン基板の裏面から開始される<100>面のエッチングが基板表面側に達する間に、基板裏面側のエッチングマスクエッジ部から<111>面のエッチングが片側約85μm程度進行するからである。また、逆に、梁の形成部下の伸方向に直交する幅を、シリコン基板の横方向のエッチング量の2倍未満の幅に形成することで、インク吐出口開口下面より上方に梁下面を位置させることができる。
そして、後述の異方性エッチング工程においてシリコン基板1上に設けた各部材がアルカリ溶液によって破損しないように、シリコン基板1を保護材16で覆う。
次に、図5(e)、図6(e)に示すように、エッチングマスク(例えば熱酸化膜)19をマスクとして、アルカリ溶液を用いた異方性エッチングを行い、シリコン基板1の部分的な除去を開始する。ここで、シリコン基板1は<100>面であるため、図5(e)に示すように、シリコン基板1は上方に向かって先細りとなる四角錐台形状にエッチングされる。一方、図6(e)では、対応する箇所のエッチングマスクに開口部が形成されていないため、シリコン基板1が裏面側からエッチングされない(図7(b)参照)。
さらにエッチングが進行すると、基板表面の犠牲層17が除去され始める。この時、犠牲層17はシリコン基板1に比べてエッチング速度が速いため、犠牲層17が優先的にエッチングされる。ここで、犠牲層が厚い部分ほどエッチング液が多く浸入し、エッチング速度は速くなる。したがって、図8に示すように、梁が形成される箇所に対応する犠牲層(梁形成部の上側であってシリコン基板の表面の犠牲層)17bの厚さがインク供給口の貫通部分に対応する犠牲層17aより薄いため、犠牲層17aと比較して犠牲層17bのエッチングレートが遅くなる。
なお、本実施例においては犠牲層の厚さを変えることによって、エッチングレートを調整しているが、犠牲層の材質を変えることによって、エッチングレートを調整することも可能である。例えばインク供給口の貫通部分にアルミからなる犠牲層を形成し、梁部にアルミよりエッチングレートが遅いポリシリコンからなる犠牲層を形成することによっても可能である。
犠牲層17が除去されて形成された空間内に例えばアルカリ溶液等のエッチング溶液が満たされた後、図5(f)、図6(f)、図7(c)に示すように、シリコン基板1の表面側から裏面側に向かってエッチングが進行する。これにより、図5(f)では裏面側からのエッチング面と平行な54.7°を成す面が形成される。一方、図6(f)では、基板表面側からのエッチングのみが図5(f)と同じ深さだけ進む。また、図7(c)においては上記のような犠牲層のエッチングレート差により、梁のうちシリコン基板表面側からエッチングされる面(犠牲層が厚い部分の直下(図7(c)Y部)と梁上面とで異なる面を形成することになる。図7において、(b)から(c)に至るより具体的な説明としては、基板上面に到達したエッチング液は梁の両端上部にある厚い犠牲層を両側(図の左右側)からエッチングすると同時に、梁の上側両端部(図の左右)がエッチングされる。このとき中央部分の厚さが薄い犠牲層のエッチングレートが遅くなることから、犠牲層を残したまま梁の上側両端部をエッチングできる。さらに(d)では残った犠牲層がエッチングされ、梁の上面がわずかにエッチングされる。
なお、梁上面の深さ寸法は梁上面に設けるエッチングレートの遅い犠牲層の幅とエッチング時間によって制御可能である。
さらにエッチングを続けると、基板裏面側からのエッチング面と基板表面側からのエッチング面が交差するP部のエッチングレートが梁上面のエッチングレートより速いため、最終的に梁は図7(d)のようになる。
その後、流路形成層12を溶出させることによって、インクジェット記録ヘッドが作製される。
(実施形態2)
実施形態1において、上述のように、インク供給口の貫通部に対応する犠牲層17aと梁形成部に対応する犠牲層17bの厚さや材料を変えることによって、それぞれの犠牲層のエッチングレートを制御することができる。これに対して本実施形態では、梁形成部に対応する犠牲層17bの形状によって、インク供給口の貫通部に対応する犠牲層17aと異なるエッチングレートを実現する方法について説明する。
以下に、犠牲層の形状について説明する。なお、犠牲層の形状以外は実施形態1と同様のため、説明は省略する。
図9は図8と同様にシリコン基板1と犠牲層17のみを示している。図9では、梁形成部に対応する領域の犠牲層17cを格子状に形成しているため、シリコン基板表面側からの<100>面のエッチングが同一面で均一に進行しない。しかし、犠牲層を配置していない格子の間隔を小さくすることによって、犠牲層を介した四方からの横方向のエッチングによって格子部のシリコン基板が除去される。したがって、結果的に梁上面が基板表面より低く形成される。本実施形態では犠牲層をパターニングする工程が一度で完了するため、実施形態1と比較して工程が少ない。
なお、本実施例では支持部上面の犠牲層を格子状に除去しているが、このパターンに限定されることはなく、異方性エッチング時間内に横方向のエッチングによって除去可能な形状(例えばドット形状)であればよい。
(実施形態3)
図10は本実施形態において実施形態1の図7に相当する製造工程を説明する図である。
本実施形態のシリコン基板1は、実施形態1の犠牲層17のみを変更したものであり、その他の構成は実施形態1のものと同様であるため、説明を省略する。
本実施形態で作製される梁は、その上面がシリコン基板表面と同一面である点で、実施形態1及び4で作製される梁と異なる。梁上面をシリコン基板表面と同一面とするためには、図10(a)のように、梁形成部に対応する基板上面に犠牲層を設けないことで形成可能となる。
本実施形態において、特に限定するものではないが、犠牲層を設けない幅は例えば約300μmとすることができる。この場合、特許文献5に記載の従来の製造方法と比較して、梁上面の幅を約1/3とすることができ、課題となっていたインク供給性を大幅に向上することが可能となる。
図10(b)は、実施形態1および実施形態2と同様にシリコン基板裏面側からの異方性エッチングがシリコン基板表面に到達した状態を示している。
次に、図10(c)に示すように、さらにエッチングが進行すると、犠牲層17がエッチングされるとともに、犠牲層17の下部にあったシリコン基板がエッチングされる(図10(c)S部)。ここで、シリコン基板表面に配置された犠牲層が完全にエッチングされると梁上面の横方向へのエッチングレートが極端に低下するため、梁上面および梁下面の横方向へのエッチングよりもS部(図10(c))のエッチングが極端に進行する。
そして、図10(d)に示すように、シリコン基板表面側からのエッチング面S部がエッチングされる。
例えば特許文献4で提示されているようなオリフィスプレートにリブを設けた構成を採用することにより機械的強度を向上させることができるが、一方で、インク供給性が懸念される。そこで、本実施形態の製造方法によるインクジェット記録ヘッドでは、リブ構造を採用しつつも梁上面に対応する部分のリブを部分的に除去することによって、インク供給性の低下を防ぎつつ、機械的強度を向上させることができる。
(実施形態4)
本実施形態では、エッチングマスクと犠牲層を設け、シリコン基板を異方性エッチング処理して、インク供給口を形成するとともに、インク供給口の開口上面と開口下面との中間に菱形断面を有する梁を形成する方法である。
本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法によれば、インク供給口の開口上面と開口下面との中間に、伸方向の横断面が菱形であって、かつその全ての面がシリコン基板の結晶方位面が<111>で構成された梁を形成することができる。また、異方性エッチングのみによって梁を形成することができるため、工程数を削減でき、設備コストも抑制することが可能となる。
また、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法によれば、インクジェット記録ヘッドの変形が防止されてインク吐出口の位置ズレを防止でき、インクジェット記録ヘッド長尺に形成することができる。そのため、高精細かつ高速な記録を行うことが可能となる。また、製造工程における破損も防止されるため、製造歩留まりが向上する。また、本実施形態ではインク供給口の開口上面と開口下面との中間に梁が形成されるため、インク供給口の上面を完全に開口できる。そのため、インクのリフィル時間に関する問題を防止でき、また、吐出の周波特性も均一化でき、高速な記録を実現することができる。
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
図11は、本実施形態によるインクジェット記録ヘッドの一例を示す斜視図である。図12は、図11のインクジェット記録ヘッドの断面図であり、図12(A)は図11B−B線における断面図を示し、図12(B)は図11A−A線における断面図を示している。
まず、本実施形態により製造されるインクジェット記録ヘッドの構成を図11、図12、図14によって説明する。
図11に示すように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、シリコン単結晶<100>からなるシリコン基板1と、複数のインク吐出口4を備え、シリコン基板1上に接着固定された被覆樹脂層6とを備えている。シリコン基板1には、インク供給口10が形成されており、インク供給口10の開口上面と開口下面との中間に梁2が形成されている。つまり、インク供給口10の開口上面と下面に接しないように梁2が形成されている。シリコン基板1に形成された梁2とその周辺の構造について詳細に説明する。
インク供給口10は、図12に示すようにシリコン基板1を貫通する形状に形成されている。図示するように、シリコン基板1によって構成されているインク供給口10の側面は、シリコン基板1の裏面側の開口部から結晶方位面<111>が露出する角度に形成される。よって、シリコン基板1の裏面側の開口部から表面側の開口部に連続する結晶方位面<111>が形成されている。
梁2は、シリコン基板1全体を補強するための構造体であり、図12に示すように、断面が菱形に形成され、インク供給口10の開口上面と開口下面との中間に形成されている。梁2の数は特に限定されるものではないが、図示するインクジェット記録ヘッドでは、1本の梁2が形成されている。梁2は、シリコン基板1を異方性エッチングすることにより形成され、シリコン基板面に対して平行な方向であって図面Y方向に伸びるように形成されている。断面菱形の4つの面全てがインク供給口10内に面しており、その結晶方位面は<111>となっている。図12(B)に示すように、梁2の高さ寸法、すなわち、シリコン基板1の板厚方向(図面Z方向)における梁2の寸法は、シリコン基板1の板厚よりも小さい値となっている。これにより、梁2の上方、下方ともにインク供給口10の一部として形成され、シリコン基板1の表面側および裏面側ともに開口している。
以上説明した、本実施形態により製造されるインクジェット記録ヘッドは、インク供給口の開口上面と開口下面との中間にシリコン基板1の結晶方位面が<111>で構成された梁を有するため、特許文献6に開示されるものと同等の機械的強度が得られる。したがって、例えばインク供給口10を長尺に形成した場合であっても、梁2によってシリコン基板1の変形が防止される。その結果、シリコン基板1の変形に伴うインク吐出口4の位置ズレも防止される。更に、インクと接する面が全て結晶方位面<111>であるので、アルカリ性のインクによるシリコン基板1の溶解を防ぐことができる。
また、梁2の高さ寸法は、機械的強度をより向上させる観点から、シリコン基板1の板厚(すなわち、インク供給口の高さ寸法)の1/2の寸法よりも大きいものであることが好ましい。
次に、本実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの製造方法についてより具体的に説明する。とくに、4面全てが結晶方位面<111>からなる梁を形成するための異方性エッチング処理について詳細に説明する。
まず、インク供給口10および梁2を形成する異方性エッチングは、シリコン基板1の裏面に形成したエッチングマスクの開口部をエッチング開始面とし、結晶方位面<100>のエッチングによりシリコン基板1の表面まで(犠牲層に達するまで)貫通させる。その際に、シリコン基板1の裏面にパターンBに形成したエッチングマスク(図14(C))によって、菱形の梁2の下部頂点bを挟む2つの面が結晶方位面<111>を形成する。なお、パターンBの形状については、少なくとも、シリコン基板の裏面であって梁形成部の下側に相当する部分にエッチングマスクが残るようにパターニングされる。
次に、さらにエッチングを続け、犠牲層17を溶解する。さらにエッチングを続けると犠牲層が溶解した部分からエッチング溶液が入り込み、シリコン基板の表面から異方性エッチングが進行し、前記梁2の上部頂点aを挟む2つの面が結晶方位面<111>を形成する。ここで、犠牲層のパターンAは、犠牲層に達するまで異方性エッチングを行った際のシリコン基板の開口部上面よりも梁形成部の上側に延在して形成されている(図15(A)参照)。また、前記シリコン基板の表面であって前記梁形成部の上側に相当する部分において、梁形成部の伸方向中央部上方を除く領域まで延在して形成されている(図14(A)参照)。
梁2において、上部頂点aから下部頂点bまでの寸法、すなわち梁2の高さ寸法(図12(B)参照)は、最大でシリコン基板1の板厚近くまで形成可能である。また、異方性エッチングにより形成する結晶方位面<111>は、一定の角度(54.7度)で形成されることから、シリコン基板1の厚さ方向に長い菱形の形状となる。
ここで、梁2の上部頂点aの位置は、異方性エッチング処理時間と犠牲層のパターン形状によって制御することができる。つまり、シリコン基板1の裏面から異方性エッチングを開始してからシリコン基板1の表面まで貫通したあとのエッチング時間と、図14(A)に示す犠牲層17のパターンAの幅の寸法20によって規定することができる。例えば、エッチング時間が一定(固定)である場合は、犠牲層17のパターンAの幅の寸法20によって規定し、犠牲層17のパターンAの幅の寸法20が一定(固定)である場合は、シリコン基板1の表面に貫通したあとのエッチング時間によって制御することができる。ここで、パターンAの幅の寸法は、例えば120〜60μmとすることができる。
また、梁2の下部頂点bの位置は、異方性エッチング処理時間とシリコン基板裏面のエッチングマスクのパターン形状によって制御することができる。つまり、異方性エッチング時間と図14(C)に示すエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14で形成したパターンBの幅の寸法21によって制御することができる。例えば、エッチング時間が一定(固定)である場合は、エッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14のパターンBの幅の寸法21によって制御し、パターンBの幅の寸法21が一定(固定)である場合は、異方性エッチング時間によって制御することができる。ここで、パターンBの幅の寸法は、例えば5〜50○μmとすることができる。
ただし、異方性エッチングのエッチング液であるアルカリ溶液の種類、濃度、液温度等の条件によって、各結晶方位面に対するエッチング速度、エッチング面の平滑性が異なることから、実験により適宜選択することが望ましい。とくに、上部頂点a、下部頂点bが形成できるように種々条件を選択することが望ましい。
次に、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法の一例を、図13〜図15を参照しながら工程順に説明する。
図13は、本実施形態の製造方法を説明するための工程断面図であり、各分図の左側が図11のB−B断面図、右側がA−A断面図である。図14は、図13(B)の工程を詳細に説明するための概略断面図である。図15は、図13(F)の工程を詳細に説明するための概略断面図である。
まず、図13(A)に示すように、半導体製造技術により、吐出エネルギー発生素子(例えば発熱抵抗素子)11とこれを駆動させるための駆動素子(図示せず)をシリコン基板1に形成する。ついで、吐出エネルギー発生素子11と外部制御機器との電気的取り出しを形成する。
シリコン基板1の表面に電気的取り出しを形成した際に、梁を形成する位置に犠牲層17をパターンA(図14(A)参照)に形成した。
さらに、シリコン基板1の裏面に、後述する異方性エッチング工程で必要となる第1のエッチングマスク18を形成した。第1のエッチングマスク18としては、半導体製造工程における酸化工程で形成される酸化膜やプラズマCVD等によるSiN膜が望ましい。また、第1のエッチングマスク18としては酸化膜やSiN膜に制限されるものではなく、異方性エッチング液に耐え得る材料であれば、特に限定するものではない。製造方法も特に限定するものではない。
次に、図13(B)に示すように、シリコン基板1に、被覆樹脂層6とシリコン基板1との密着性を向上させるための密着向上層13を形成する。また、後述の異方性エッチングで必要となる第1のエッチングマスク18のパターニングマスクとなる第2のエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14をフォトリソグラフィー技術により形成した。第2のエッチングマスク14としては、熱可塑性樹脂に制限されるものではなく、異方性エッチング液に耐え得る材料であればとくに限定するものではない。
次に、図13(C)に示すように、インク流路5となる流路形成層12を、溶解可能な樹脂を用いてフォトリソグラフィー技術により形成する。例えば、ポジ型フォトレジストPMER−AR900(商品名、東京応化社製)を用い、所望の膜厚のパターンに流路形成層12を形成することができる。
次に、図13(D)に示すように、前の工程で形成された流路形成層12の上に、これを被覆するように被覆樹脂層6をフォトリソグラフィー技術により形成し、被覆樹脂層6にインク吐出口4を形成した。被覆樹脂層としては、例えば、感光性エポキシ樹脂や感光性アクリル樹脂等を挙げることができる。
なお、この被覆樹脂層6は、常にインクと接触するため、以下の点を考慮して、選択することが望ましい。(1)被覆樹脂層がインクと接触したとき、その被覆樹脂層より不純物がインクに溶出しない。(2)被覆樹脂層とシリコン基板との密着性がよく、経時変化により剥がれが生じない。これらの(1)及び(2)を考慮して被覆樹脂層を選択すると、被覆樹脂層としては光反応によるカチオン重合化合物が適している。
次に、図13(E)に示すように、流路形成層12と被覆樹脂層6等が形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面をスピンコート等により保護材16で覆う。そして、このシリコン基板1の裏面に形成した第1のエッチングマスク(例えば酸化膜)18を、第2のエッチングマスク材(例えば熱可塑性樹脂)14をマスクとして異方性エッチングの開始面となるシリコン基板をエッチングにより露出させる。
次に、図13(F)に示すように、アルカリ溶液を用いて異方性エッチングを行い、インク供給口10とインク供給口の開口上面と開口裏面との中間に梁2を形成する。その後に、異方性エッチングの保護材16を除去する。アルカリ溶液としては、実施形態5で例示したものが使用できるが、濃度や処理温度等の条件により、エッチング速度、エッチング面の平滑性が異なることから、それらを考慮して適宜選択することが望ましい。
次に、図13(G)に示すように、シリコン基板1の裏面の第1のエッチングマスク(例えば酸化膜)18のマスクであった第2のエッチングマスク材(例えば熱可塑性樹脂)を除去する。その後、流路形成層14を溶解除去し、インク流路5を形成する。
以下に、異方性エッチング処理の具体例について説明する。
本具体例は、TMAH22wt%溶液を用い、エッチング液温度80℃にて実験し、その実験で得られた結果を考慮して、図14(A)に示すパターンAの幅寸法を8μm、図14(C)に示すパターンBの開口部幅寸法を160μmに形成し、所定の時間、異方性エッチングを行った。その結果、各エッチング速度には以下の関係があることが分かった。
(1)結晶方位面<100>のエッチング速度:Xμm/min
(2)結晶方位面<111>のエッチング速度:0.13Xμm/min
(3)2つの辺が結晶方位面<111>で構成される頂点のエッチング速度:2Xμm/min
(4)2つの辺が結晶方位面<100>と、<111>で構成される頂点を有する<100>のエッチング速度:8Xμm/min
図15は、図13(F)の詳細を説明するための図である。
図15(A)は、シリコン基板1の裏面より異方性エッチングを開始し、シリコン基板1の表面に貫通し、犠牲層17の一部が露出した時点の状態を示したものである。この時点では、梁2の下部頂点bは形成されていない状態である。
図15(B)は、シリコン基板1の異方性エッチングが完了した状態を示したものである。梁2の上部頂点a及び梁2の下部頂点bはいづれも異方性エッチング完了前に形成される。形成後所定の異方性エッチングを施すようにパターンAおよびパターンBの寸法を設定することができる。なお、図15において、具体例としてパターンAの幅の寸法は8μmである。
それぞれのパターンA及びパターンBの形状・寸法によって梁2の上部頂点a及び下部頂点bの位置を制御することができる。本具体例では、図15(C)に示すように、梁2の高さ寸法は約480μmである。なお、シリコン基板の厚さは625μmであった。
(実施形態5)
図160に本実施形態において製造するインクジェット記録ヘッドの平面図及び断面図を示す。また、図17は、図4のB−Bにおける断面図であって、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造工程を表す工程図である。
図160において、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドは、吐出エネルギー発生素子11が所定のピッチで2列並んで形成されたシリコン基板1を有している。シリコン基板には、SiO2膜をマスクとしてSiの異方性エッチングによって形成されたインク供給口(液体供給口)10が吐出エネルギー発生素子11の2つの列の間に開口されている。シリコン基板1上には、主に被覆樹脂層からなるオリフィスプレート7によって、各吐出エネルギー発生素子11の上方に開口するインク吐出口(液体吐出口)4と、インク供給口10に連通するインク流路が形成されている。このインクジェット記録ヘッドは、インク供給口10が形成された面が被記録媒体の記録面に対面するように配置される。そして、このインクジェット記録ヘッドは、インク供給口10を介してインク流路内に充填されたインク(液体)を吐出エネルギー発生素子11が発生する圧力によって吐出させ、被記録媒体に付着させる。
このインクジェット記録ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、更には各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。そして、このインクジェット記録ヘッドを用いることによって、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックなど種々の被記録媒体に記録を行うことができる。尚、本発明において「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味する。
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。ここでは図16のインクジェット記録ヘッドを作製するための工程を図17により説明する。
図17(A)〜(F)は、図16のB−B線における断面図であり、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法について、基本的な製造工程を示す断面工程図である。
図17(A)において、シリコン基板1上には、発熱抵抗体等の吐出エネルギー発生素子11が複数個配置されている。また、シリコン基板1の裏面には例えばSiO2膜等の第1のエッチングマスク18で全面覆われている。また、シリコン基板1の結晶方位は100である。そして、後工程における異方性エッチングによってインク供給口10及び梁2を形成する時にその表面の寸法を精度良く加工するために、犠牲層17が基板1に設けてある。吐出エネルギー発生素子11の配線や駆動するための半導体素子は不図示である。この犠牲層に用いる材料として、シリコン基板の異方性エッチングに用いるアルカリ溶液にて等方性エッチングできる材料であり、かつ薄膜形成できる材料であれば、半導体、絶縁体、金属等さまざまな材料が利用可能である。例えば、ポリシリコンやアルミで形成される。また、アルカリ溶液に対してシリコン基板よりエッチング速度の速い材料であるアルミ、アルミシリコン、アルミ銅又はアルミシリコン銅などが好ましい。この犠牲層を設けることで、犠牲層がエッチング溶液でエッチングされる際に、その犠牲層の下部のシリコン基板が同時にエッチングされるようになる。すなわち、犠牲層のパターンによりインク供給口の大きさを制御することが可能となる。そして、吐出エネルギー発生素子11及び犠牲層17の上に、保護膜3が形成されている。この保護膜3は、異方性エッチングの際のエッチングストップ層の役割を果たす。
まず、図17(B)に示すように、図17(A)の状態に対して、シリコン基板1の表面に例えば熱可塑性樹脂等をスピンコート等により塗布し、ベークにより硬化させ、密着樹脂層13を形成する。この密着樹脂層13は、前記保護膜3と後工程で形成される被覆樹脂層6との密着性を向上させるために設けられる。
また、シリコン基板の裏面に例えば熱可塑性樹脂等をスピンコート等により塗布し、ベークにより硬化させ、第2のエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14を形成する。この第2のエッチングマスク14は、後工程における異方性エッチング処理を行う際に第1のエッチングマスクと同様にマスクとして使用するために形成するものである。
また、シリコン基板表面の密着樹脂層13をパターニングするため、ポジ型レジストをスピンコート等により塗布、露光、現像する。そして、ドライエッチング等により密着樹脂層13をパターニングした後、ポジ型レジストを剥離する。
また、シリコン基板裏面の第2のエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14に、スピンコート等によりポジ型レジストを塗布する。そして、所定のマスクで露光、現像し、ドライエッチング等によりパターニングし、第2のエッチングマスク14を後工程における異方性エッチング処理によりインク供給口10と梁2を形成するための所定のパターン形状にパターニングする。その後、ポジ型レジストを剥離する。なお、この裏面をパターニングする時に表面を保護して行ってもよい。また、この際、第2のエッチングマスク14は、図17(B’)に示す下面図ように、少なくとも、シリコン基板1の裏面であって少なくとも前記梁形成部に相当する領域下を除いて、前記インク供給口を形成する開口部を形成するようにパターニングされる。なお、梁形成部とは、梁が形成されるシリコン基板部分のことを指す。
次に、図17(C)に示すように、表面にノズル流路となる流路形成層12をポジ型レジストで形成し、パターニングする。該ポジ型レジストとしては、例えばODUR(商品名、東京応化製)を用いることができる。
次に、図17(D)に示すように、被覆樹脂層6(例えばエポキシ樹脂と光重合開始剤を成分とする)をスピンコート等により塗布する。被覆感光性樹脂層6上にはドライフィルムのラミネート等を用いて撥水層15を形成する。インク吐出口4は、被覆感光性樹脂層6を紫外線やDeepUV等による露光、現像を行ってパターニングし形成する。
次に、図17(E)に示すように、流路形成層12や被覆樹脂層6等がパターン形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面を、スピンコート等により保護材16で覆う。保護材16は、後工程における異方性エッチングを行う際に使用する強アルカリ溶液に十分耐えうる材料であるため、異方性エッチングによる撥水層15等の劣化防止を可能とする。
シリコン基板1の裏面の第1のエッチングマスク18は第2のエッチングマスク14をマスクとしてエッチングによりパターニングされ、異方性エッチングのエッチング開始面となるシリコン基板の裏面が露出される。
次に、図17(F)に示すように、異方性エッチングによりシリコン基板1にインク供給口10と梁2を設ける。異方性エッチングとしては、例えばTMAH等の強アルカリ溶液による化学的なエッチングを用いることができる。そして、シリコン基板1の結晶方位が100であるため、裏面から異方性エッチングを行っていくと、図17(F)に示すように、エッチング面が表面の犠牲層17に到達する。犠牲層17は等方的にエッチングされ、犠牲層17が除去された部分に侵入したアルカリ溶液によりシリコン基板1の上面側からもエッチングが進むことにより、インク供給口の開口上面8と開口下面9の間に梁2が形成される。異方性エッチングに用いるアルカリ溶液としては、例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液、KOH水溶液、EDP(エチレンジアミンピロカテコール)溶液、ヒドラジン溶液等を用いることができる。
次に、第2のエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)14、第1のエッチングマスク(例えばSiO2膜)18及び保護材16を除去する。また、流路形成層12をインク供給口から溶出させることにより、インク流路および発泡室を形成する。流路形成層12の除去は、DeepUV光による前面露光を行った後、現像、乾燥を行えばよい。また、必要に応じて、現像において超音波浸漬を利用することができる。
そして、ノズル部が形成されたシリコン基板1をダイシングソー等により切断分離し、チップ化し、吐出エネルギー発生素子11を駆動させるための電気的接合を行った後、インク供給の為のチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドを完成させる。
インクジェット記録ヘッドの一例を示す斜視図である。 図1のC―C線における断面図である。 特許文献6に開示されるインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。 実施形態1の製造方法により作製されるインクジェット記録ヘッドの概略図である。 実施形態1におけるインク供給口の断面部分の製造工程を説明する工程図である。 図4(c)に示す梁の断面部分における製造工程を詳細に説明する工程図である。 図4(d)に至る異方性エッチング工程を表した工程図である。 実施形態1における具体的な犠牲層の形状を表す斜視図である。 犠牲層の形状の一例を表す斜視図である。 実施形態3において実施形態1の図7に相当する製造工程を説明する図である。 実施形態4の製造方法によるインクジェット記録ヘッドの一例を示す斜視図である。 (A)図11のインクジェット記録ヘッドにおけるB−B線における断面図である。(B)図11のインクジェット記録ヘッドにおけるA−A線における断面図である。 実施形態4における製造方法を説明するための工程断面図である。 図13(B)の工程を詳細に説明するための概略断面図である。 図13(F)の工程を詳細に説明するための概略断面図である。 実施形態5に製造方法により作製するインクジェット記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態5のインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する工程図である。
符号の説明
1 シリコン基板
2 梁
3 保護膜
4 インク吐出口
5 インク流路
6 被覆樹脂層
7 オリフィスプレート
8 インク供給口開口上面
9 インク供給口開口下面
10 インク供給口
11 吐出エネルギー発生素子
12 流路形成層
13 密着樹脂層
14 第2のエッチングマスク(例えば熱可塑性樹脂)
15 撥水層
16 保護材
17 犠牲層
17a 犠牲層
17b 犠牲層
18 第1のエッチングマスク(例えばSiO2膜)
19 エッチングマスク
20 パターンAの幅の寸法
21 パターンBの幅の寸法

Claims (11)

  1. インクを吐出するインク吐出口と、前記インクを吐出するエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子と、該吐出エネルギー発生素子を有し、かつ前記インク吐出口に連通するインク流路と、該インク流路に連通し、かつシリコン基板に形成されるインク供給口と、前記シリコン基板材料で構成され、かつ前記インク供給口の相対する長辺間をつなぐように形成された梁と、を有するインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
    (1)少なくとも前記シリコン基板の表面であって前記インク供給口の形成部の上側に、アルカリ溶液にて等方的にエッチングされ得る犠牲層を形成する工程と、
    (2)少なくとも前記シリコン基板の裏面であって前記梁の形成部の下側にエッチングマスクを形成する工程と、
    (3)前記エッチングマスクをマスクとして前記シリコン基板を前記アルカリ溶液により異方性エッチングし、前記犠牲層を露出させる工程と、
    (4)前記犠牲層を前記アルカリ溶液によりエッチングしつつ、前記犠牲層の除去された表面側を含めて前記シリコン基板をさらに異方性エッチングする工程と、
    を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  2. 前記犠牲層は、前記梁の形成部の上方の少なくとも一部に延在して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  3. 前記犠牲層は、前記梁の形成部の伸方向中央部上方を除く領域まで延在して形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  4. 前記犠牲層は、前記梁の形成部の伸方向中央部上方を覆う領域まで延在して形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  5. 前記犠牲層は、前記梁の形成部の伸方向中央部に向かってエッチング速度が遅くなるように形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  6. 前記犠牲層のエッチング速度の遅くなる領域は、該犠牲層の膜厚を他の領域よりも薄くした領域であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  7. 前記犠牲層のエッチング速度の遅くなる領域は、格子状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  8. 前記工程(1)で犠牲層を形成した後、該犠牲層を覆うエッチングストップ層を形成する工程を有する請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  9. 前記シリコン基板のエッチング開始面の結晶方位が(100)であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  10. 前記エッチングマスクにおいて、前記梁の形成部下の伸方向に直交する幅を、シリコン基板の横方向のエッチング量の2倍以上の幅に形成し、インク吐出口開口下面に前記梁の下面を位置させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  11. 前記エッチングマスクにおいて、前記梁の形成部下の伸方向に直交する幅を、シリコン基板の横方向のエッチング量の2倍未満の幅に形成し、インク吐出口開口下面より上方に前記梁の下面を位置させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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