JP2010130793A - 電動機制御装置および運転制御方法 - Google Patents

電動機制御装置および運転制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の多相結線を備える電動機において、制御電流の位相ずれに起因するトルク脈動を抑えることができる電動機制御装置の提供。
【解決手段】2つの多相Y結線に接続された複数のインバータIN100,IN200を備える電動機制御装置であって、インバータIN100,IN200は、電動機MG100,MG200の駆動制御指令を生成する演算制御装置IN110,IN210と、駆動制御指令に基づいてパワーモジュールIN130,IN230の電力用スイッチング素子を駆動する駆動回路IN120、IN210とをそれぞれ備え、電動機回転子の回転位置と周期的に発生される同期指令とに基づいて、複数のインバータIN100,IN200に設けられた各演算制御装置IN110,IN210の演算制御タイミングが互いに同期するように、演算制御タイミングを補正する処理タイミング補正部IN213を設けたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の多相結線を有する電動機を駆動制御するための電動機制御装置、および、電動機制御装置の運転制御方法に関する。
自動車という限られた空間においては機器の小型化が重要であり、エンジン及び電動機を動力源とするハイブリッド車両においても、高出力化以外にモータやインバータなどの機器の小型化が重要視されている。高出力化の方法としては、同一電流の場合には使用電圧を高電圧化するという方法があるが、使用部品の耐電圧や絶縁などが問題となる。そのため、高電圧化の代わりに電動機内部に複数の結線を備えることで、結線あたりの駆動電流を同一としたまま高出力化を図るようにした電動機が知られている。このような構成とすることで、複数のモータを使用する場合に比べて、コンパクトかつ安価とすることができる。
従来、複数の電動機を独立した2つのインバータでそれぞれ駆動する場合、制御のためのクロック信号を共通化することで複数のマイコン間の同期を取りながら複数の個別の電動機を駆動する方法が、知られている(例えば、特許文献1参照)。そのような構成とすることで、モータ制御に使用するデータサンプリング(巻線電流、トルク出力値など)において、他方のインバータのスイッチング時に発生する電磁波の影響によりサンプリング精度が低下するのを防止している。
特開2004−248377号公報
しかしながら、特許文献1では、独立して設けられた2つの電動機について適用したものであり、2Y結線のような複数結線を持つ電動機に適用した場合には、電流位相のずれに起因するトルク脈動という特有の問題が生じる。
請求項1の発明は、複数の多相結線を有する電動機を駆動制御し、複数の多相結線にそれぞれ接続された複数のインバータを備える電動機制御装置であって、インバータは、電動機の駆動制御指令を生成する演算制御装置と、駆動制御指令に基づいて電力用スイッチング素子を駆動する駆動回路とをそれぞれ備え、電動機回転子の回転位置と周期的に発生される同期指令とに基づいて、複数のインバータに設けられた各演算制御装置の演算制御タイミングが互いに同期するように、少なくとも一方の演算制御タイミングを補正する処理タイミング補正部を設けたことを特徴とする。
なお、複数のインバータの内の一つは、残りの他のインバータに対して同期信号を前記同期指令として出力するものであって、残りの他のインバータには前記処理タイミング補正部が設けられ、同期信号に同期して駆動制御指令が生成されるように補正するようにしても良い。
また、同期指令は、通信手段を介して上位制御装置から各インバータに入力される通信データに処理同期コマンドとして含まれ、通信データを受信した各インバータにおいて、処理同期コマンドに基づいて処理タイミング補正部による補正がそれぞれ行われるようにしても良い。
請求項6の発明は、複数の多相結線を有する電動機を駆動制御し、複数の多相結線にそれぞれ接続された複数のインバータを備える電動機制御装置における運転制御方法であって、同期指令を周期的に発生し、同期指令が発生される度に、複数のインバータの各々において駆動制御指令を生成して電力用スイッチング素子を駆動し、複数のインバータから対応する3相結線に供給される駆動電流の位相を同期させることを特徴とする。
本発明によれば、複数の多相結線を備える電動機において、制御電流の位相ずれに起因するトルク脈動を抑えることができる。
以下、図を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本発明に係る電動機制御装置の第1の実施形態を示す図である。電動機MGは、1つの筐体内に2つのY結線を有する3相2Y電動機である。一方の3相Y結線MG100はU相コイル巻線C110,V相コイル巻線C120およびW相コイル巻線C130で構成され、他方の3相Y結線MG200はU相コイル巻線C210,V相コイル巻線C220およびW相コイル巻線C230で構成されている。
3相Y結線MG100の各コイル巻線C110,C120およびC130は、共通の中性点N10で接続されている。同様に、3相Y結線MG200の各コイル巻線C210,C220およびC230は、共通の中性点N10で接続されている。互いのY結線間は電気的に絶縁されている。電動機MGには、電動機回転子の回転角を検出する回転角センサR400が設けられている。
3相Y結線MG100は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの2次電池で構成されるバッテリ300を電源として、インバータIN100により駆動電流が供給される。一方、3相Y結線MG200は、共通のバッテリ300を電源として、別のインバータIN200により駆動電流が供給される。インバータIN100は、パワーモジュールIN130、駆動回路IN120、演算制御装置IN112を備えている。同様に、インバータIN200は、パワーモジュールIN230、駆動回路IN130、演算制御装置IN212を備えている。
上述したように、本実施の形態では、2つのインバータを用いて、電動機MGに設けられた2つの3相Y結線MG100、MG200に駆動電流を供給している。このように、電動機MGが電気的に絶縁された複数結線を持つ場合、複数のマイコンを備えて制御する方法には次のような利点がある。
3相交流電動機の特徴として、低速回転時は、回転モーメントが小さいためコギングトルクの影響が大きい。逆に、高速回転時は、回転モーメントが大きくなるためコギングトルクの影響は小さい。電気的に絶縁された2つのY結線を持つ6相交流電動機の場合、それぞれの結線間の電流位相をずらすことでコギングトルクを低減する方法がある。
具体的には、低速回転時は2つの結線間の電流位相を30°ずらした制御を行なうとコギングトルクを低減することができる。一方、高速回転時はコギングトルクの影響は小さいため、電流位相を同期させた制御を行なう。
電気的に絶縁された複数の結線を持つ電動機を一つのマイコンで制御する場合、それぞれの結線間の電流位相を個別に制御することはできない。しかし、複数のマイコンにより制御する場合、運転状況に応じた最適な制御、例えば、上述したような高速運転時に最適な制御、低速運転時に最適な制御を行うことができる。
パワーモジュールIN130は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを構成する電力用半導体スイッチング素子をそれぞれ備えている。パワーモジュールIN130は、スイッチング素子のオンオフのタイミングを制御して2相の電源ラインから3相のラインへ電力を供給する機能を有する。バッテリ300とインバータIN100との間には、平滑コンデンサ310が並列に接続されている。パワーモジュールIN130のスイッチング動作、すなわち電力用半導体スイッチング素子のオンオフ動作は、駆動回路IN120からのドライブ信号に基づいて行われる。
演算制御装置IN110は、他の制御装置(上位コントローラ330)やセンサなどからの入力情報に基づいて、電力用半導体スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号(運転指令)を生成する。駆動回路IN120は、この運転指令に基づいてドライブ信号をパワーモジュールIN130に出力する。演算制御装置IN110は、スイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータを備えている。マイコンへの入力情報としては、要求される目標トルク値、3相Y結線MG100に供給されている電流値、回転子の回転角信号およびパワーモジュールIN130の温度などがある。
目標トルク値は、上位コントローラ330から入力される。上位コントローラ330としては、例えば、電動機MGが車両走行用のモータであれば、車両全体の制御を行う車両コントローラが対応する。3相Y結線MG100に供給されている電流値は、電流センサ340により検出される。電動機MGの回転子の回転角は、前述した回転角センサR400により検出され、その検出信号(位置情報)はインバータIN100及びインバータIN200に送信される。パワーモジュールIN130の温度(電力用半導体スイッチング素子の近傍の温度)は、温度センサTS1によって検出される。
演算制御装置IN110のマイコンは、目標トルク値に基づいて3相Y結線MG100のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された回転角に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。さらに、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として駆動回路IN120に出力する。駆動回路IN120はPWM信号を増幅し、それをドライブ信号として各電力用半導体スイッチング素子に出力することによりスイッチング動作を行わせる。
本実施の形態では、演算制御装置IN110は同期信号送信部IN112を備えており、同期信号送信部IN112は、同期信号をインバータIN200の演算制御装置IN210に設けられた同期信号受信部IN212へと送信する。
3相Y結線MG200に対応して設けられたインバータIN200も、3相Y結線MG100のインバータIN100と同様の構成を有しており、パワーモジュールIN230、温度センサTS2、平滑コンデンサ320、駆動回路IN220および演算制御装置IN210を備えている。
演算制御装置IN110の場合と同様に、演算制御装置IN210は、パワーモジュールIN230に設けられた電力用半導体スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御するための運転指令を生成するとともに、同期信号送信部IN112からの同期信号を受信する同期信号受信部IN212と、受信した同期信号および回転角センサR400で検出された回転角に基づいてスイッチングタイミング演算処理のタイミングを補正する処理タイミング補正部IN213とを備えている。
駆動回路IN220は、処理タイミング補正部IN213で補正された処理タイミングで、パワーモジュールIN230のスイッチング素子のオンオフを指令する。演算制御装置IN210には、回転角センサR400で検出された回転角信号、温度センサTS2によって検出されたパワーモジュールIN230の温度、電流センサ350により検出される3相Y結線MG200の電流値が入力される。
図1に示すように、3相Y結線MG100,MG200のそれぞれに、独立したインバータIN100,IN200から駆動電流を供給する場合には、各インバータIN100,IN200における演算制御タイミングにズレが生じるおそれがある。
図2は、複数インバータによる電動機制御時の演算制御の処理インターバルと、処理タイミングのずれを説明する図である。図2(a)は、インバータIN100に設けられたクロック(Aクロック)が発生するパルスのタイミングと、インバータIN200に設けられたクロック(Bクロック)が発生するパルスのタイミングとを示す。図2(b)は、インバータIN100のマイコン(Aマイコン)の処理タイミングと、インバータIN200のマイコン(Bマイコン)の処理タイミングとを示す。図2(c)は、3相Y結線MG100に供給される電流(1系電流)と、3相Y結線MG200に供給される電流(2系電流)とを示す図である。
図2において、Δtは各々のマイコン(AマイコンとBマイコン)の水晶発振子等に依存した発振周波数の精度やバラツキ等による誤差である。一般に、インバータIN100およびインバータIN200に同じ水晶発振子等を使用した場合でも、発振周波数の精度やバラツキ等による誤差Δtがある。この誤差Δtは時間の経過とともに累積され、nパルスの時点では累積nΔtのずれが生じてしまう。
一方、αは複数インバータ間の処理タイミングのずれである。インバータIN100とインバータIN200とが非同期の場合、各々の処理はフリーラン状態となり、処理タイミングにはαのずれが生じてしまう。マイコンの処理タイミングがnパルス間隔であった場合、非同期であるAマイコンとBマイコンとの間の処理タイミングのズレは最初αであるが、次の処理タイミングのズレはα+nΔtまで増大する。
このように、インバータIN100,IN200を同時にスタートしたとしても、インバータIN100,IN200間で処理タイミングにズレが生じると、電動機制御時における一対の3相Y結線MG100,MG200間の電流位相も、図2(c)に示すようにずれる。そして、この処理タイミングのズレα+nΔtが、電流制御における位相差が問題となる所定時間を超えると、非同期と同様の状態となってトルク脈動の発生が問題となる。
そこで、本実施の形態では、図1に示すようにインバータIN100の演算制御装置IN110に設けられた同期信号送信部IN112から、インバータIN200の演算制御装置IN210に設けられた同期信号受信部IN212へ同期信号を送信し、この同期信号により処理タイミングのズレを補正するようにした。
図3は、同期信号による補正処理を説明する図であり、図2の場合と同様に、(a)は、AクロックおよびBクロックが発生するパルスのタイミングを示し、(b)は、AマイコンおよびBマイコンの処理タイミングを示し、(c)は、3相Y結線MG100およびMG200の電流(1系電流と2系電流)を示す図である。
同期信号は、Aクロックのパルス数でmパルス毎に、すなわちmパルスの時間間隔で発生されるものとする。すなわち、インバータIN100の同期信号送信部IN112は、同期信号の発生タイミングを計時するためのカウンタを備えている。カウンタはAクロックのパルス数をカウントし、そのカウント数がmになる度に、同期信号送信部IN112は同期信号を出力する。図2で示したパルス数nを同期・非同期の判定値とした場合、すなわち、非同期とみなされるズレがα+nΔtであった場合、上述したmは、m<nのように設定される。なお、mパルスの時間間隔をAマイコンの演算処理のインターバルの整数倍(M倍)に設定した場合には、演算処理をM回行う度に、演算処理開始と同時に同期信号がインバータIN200に出力されることになる。
インバータIN100は、同期信号送信部IN112に設けられたカウンタが、最初の処理タイミング時のパルスから数えてm番目のパルスをカウントしたならば、図3(b)に示すように、次のタイミングの演算処理を開始するとともに、同期信号送信部IN112から同期信号を出力する。インバータIN200がインバータIN100からの同期信号を受信すると、そのタイミングに合わせて処理タイミング補正部IN213から演算処理開始の指令が発せられ、Bマイコンは演算処理を開始する。同期信号によりBマイコンが演算処理を開始することで、処理タイミングのズレα+mΔtが補正されることになる。
図3(c)は補正処理後の電流(1系電流および2系電流)を示したものであり、3相Y結線MG100,MG200の電流位相がそろっている。AマイコンおよびBマイコンは、同期信号に同期して演算処理を行ったならば、それらの演算処理後のパルス数が演算処理インターバルに相当する所定パルス数となった時点で、次の演算処理をそれぞれ行う。その後は、mパルス毎にこのような同期動作が行われて、そのたびに処理タイミングのズレが補正されるので、3相Y結線MG100とMG200に関して同期運転が維持される。
同期信号の周期、すなわち、mパルスの時間間隔は、AマイコンとBマイコンの処理タイミングのズレα+mΔtが非同期とならないように設定される。例えば、ズレα+mΔtが、モータ電流を制御する際の制御分解能(制御の時間間隔=演算処理の時間間隔)よりも大きくならないようにmを設定する。ここでの制御分解能とは、電流制御の時間間隔、すなわちA,Bマイコンにおける演算処理の時間間隔を意味している。
例えば、電動機の高速制御時における電流位相の補正に対応可能なように、同期信号の送信周期を設定する。上述した制御分解能は低速よりも高速の場合のほうが小さいので、同期信号の送信周期を高速の場合に合わせておけば、低速制御時の位相の補正も対応可能となる。
また、電動機の高速制御時における電流位相の補正に対応可能な周期でない場合、電動機の速度制御時の電流位相に対応する周期(タイミング)で同期信号を発信することで位相の補正は可能である。具体的には、位相のずれをα+mΔt、電流位相の分解能時間をβとすると、α+mΔt≦βの関係が成り立つ周期であれば位相の同期が保持される。すなわち、電動機の回転数に合わせたタイミングで同期信号を送ってやれば、それぞれの回転数の制御に応じた補正により同期を維持することができる。
位相のずれが分解能時間βよりも小さい場合、演算制御装置IN110,IN210は同じ位置情報として処理を行なうため、同期が図れる。一方、位相のずれが分解能時間よりも大きい場合、演算制御装置IN110,IN210は異なる位置情報として処理をすることと同様であり、非同期となってしまうことになる。
以上のように、第1の施の形態では、複数の3相結線を有する電動機MGを駆動制御し、複数の3相結線にそれぞれ接続された複数のインバータIN100、IN200を備える電動機制御装置において、処理タイミング補正部を設けて、電動機回転子の回転位置と周期的に発生される同期指令(同期信号)とに基づき、インバータIN100、IN200に設けられた各演算制御装置の演算制御タイミングが互いに同期するように補正するように、少なくとも一方の演算制御タイミングを補正する処理タイミング補正部IN213を設けた。
このように、インバータIN100,IN200は同じ処理タイミングで電流制御を行なうため、同位相電流で電動機を駆動する。その結果、複数の3相結線を持つ電動機における電流位相のずれを解消し、電流位相のずれに起因するトルクの脈動を抑制することが可能である。さらに、処理タイミングは同期信号により補正して同期を取り、電流位相のみをずらすことで、コギングトルクの低減のための制御をより高精度に行なうことが可能である。
―第2の実施の形態―
図4は、本発明の第2の実施の形態を説明する図であり、図1と同様のブロック図を示す。第1の実施の形態では、インバータIN100からインバータIN200に同期信号を送信して、処理タイミングのズレα+mΔtを補正するようにした。しかし、以下に述べる第2の実施の形態では、上位コントローラ330から各インバータIN100、IN200へとCAN(Controller Area Network)通信で処理同期コマンドを周期的に送信し、その処理同期コマンドを利用して処理タイミングのズレα+mΔtを補正するようにした。
図4と図1との相違点は、同期信号送信部IN112、同期信号受信部IN212およびそれらの間の通信ラインは設けられておらず、上位コントローラ330からの処理同期コマンドが、CAN通信経路360を介して各演算制御装置IN110、IN210に送信される構成となっている点である。その他の構成は、図1の場合と同様であり、説明を省略する。
各演算制御装置IN110、IN210には、受信した処理同期コマンドに合わせて演算処理のタイミングを補正する処理タイミング補正部IN113,IN213が設けられている。
上位コントローラ330は、通信データをCAN通信経路360に送出する際に、処理同期コマンドを通信データに付加する。通信データは所定の通信時間間隔で送信されるので、上述した同期信号の場合と同様に、処理同期コマンドの時間間隔が上述したmパルスをカウントする時間と同じになるように通信データに処理同期コマンドを付加する。
各演算制御装置IN110、IN210は、処理同期コマンドを含む通信データを受信すると、処理タイミング補正部IN113,IN213において補正処理を行う。この補正処理は、第1の実施の形態で説明した補正処理と同様に行われる。なお、毎回の通信データに処理同期コマンドを付加して、処理同期コマンドをCANの制御タイミングの周期(例えば、数ms〜10msなど)で送信するようにしても良い。
このように、第2の実施の形態では、処理同期コマンドを受信する度にAマイコンとBマイコンとの演算処理タイミングが同一となるように補正され、処理タイミングのズレは非同期となるズレnΔtよりも小さく保たれる。その結果、インバータIN100,IN200は、同じ処理タイミングで3相Y結線MG100,MG200の電流制御を行なうことになる。そして、3相Y結線MG100,MG200の駆動電流の位相が同期しているため、電流位相のずれに起因するトルクの脈動を抑制することが可能である。
第2の実施の形態では、従来から備えているCAN通信経路360を利用して処理同期コマンドを送信しているので、上述した第1の実施の形態のように、インバータIN100とインバータIN200との間に、同期信号のための専用配線を追加で設ける必要がない。
一方で、CAN通信経路360を利用して処理同期コマンドを送信するようにしているため、より優先度の高い通信とタイミングが衝突した場合の指令遅れや、外部ノイズによる通信の途切れ等により、インバータIN100,IN200側において処理同期コマンドの受信ができない場合が考えられる。そのような場合には、対応策として、上述した処理同期コマンドの処理と以下に述べるようなフリーラン処理の2つを併用する処理動作を採用すれば良い。
図5は、第2の実施の形態による電動機制御装置における処理動作のフローチャートを示す図である。この処理動作のプログラムは、演算制御装置IN110,IN210のそれぞれにプログラムされており、処理同期コマンドより十分に短い時間間隔で繰り返す所定の時間間隔で、繰り返し実行される。
ステップS100では、演算制御装置IN110,IN210は処理同期コマンドを受信したか否かを判定する。ステップS100において受信したと判定されると、ステップS110に進んで上述した処理タイミングの補正を行い、ステップS120において駆動回路IN120、IN220に駆動指令を出す。
一方、ステップS100において受信していないと判定されると、ステップS130へと進む。すなわち、通信データに処理同期コマンドが含まれていない場合や、前述したように、優先度の高い通信とタイミングが衝突した場合の指令遅れや、外部ノイズによる通信の途切れ等により、インバータIN100,IN200側において処理同期コマンドの受信ができない場合には、ステップS100からステップS130へと進む。
ステップS130では、処理同期コマンド受信後のステップS130の処理回数がN回であるか否かを判定する。ステップS130における判定値N回は、次のように設定する。上述したように、図5に示す一連の処理は所定時間間隔で実行されるが、その時間間隔の間に生じる処理タイミングのズレをγとする。このズレγが、一対の3相結線間の電流位相が非同期となるズレα+nΔtに対して、「(α+nΔt)/N≦γ<(α+nΔt)/(N−1)」の関係を有している場合、判定値をN回とする。例えば、(α+nΔt)/3≦γ<(α+nΔt)/2であれば、N=3に設定される。
前回の処理同期コマンドを受信した後のステップS130の連続処理回数がN回未満であれば、「γ(N−1)<(α+nΔt)」であるので、AマイコンとBマイコンとの間の処理タイミングのズレはα+nΔtより小さいので、同期が保たれていることになる。一方、N回以上と判定されると、前回の処理同期コマンドを受信してからの処理タイミングのズレがα+nΔt以上となり、非同期状態であると判定される。
例えば、前述したような指令遅れや、外部ノイズによる通信の途切れ等があった場合でも、ステップS130の連続処理回数がN回以上とならない限り同期状態とみなせるので、電動機駆動は継続される。一方、指令遅れや通信の途切れが異常に長くなると、ステップS130の連続処理回数がN回以上となって、エラーが表示されるとともに、駆動停止とされるので、非同期状態での運転を防止できる。
なお、本実施の形態では、前回の処理同期コマンドを受信してから図5の処理が行われた回数をカウントすることでステップS130の判定を行ったが、前回の処理同期コマンドを受信してからの経過時間tをカウントし、その経過時間t内に生じるズレをα+nΔtと比較して判定を行っても良い。
ステップS130において、前回の処理同期コマンドを受信した後のステップS130の連続処理回数がN未満であると判定されると、ステップS120へ進む。すなわち、この場合には、3相Y結線MG100,MG200間の電流位相は補正可能な範囲内であるので処理タイミングの補正は行なわず、ステップS120にて駆動回路IN120、IN220に駆動指令を出す。
一方、ステップS130において連続回数がN回以上と判定されると、ステップSS140へ進む。ステップS140では、インバータIN100、IN200からエラー信号を上位コントローラ330へ送信する。エラー信号を受信した上位コントローラ330は、運転停止命令を各インバータIN100,IN200へ出力する。運転停止命令を受信したインバータIN100,IN200は、それぞれ3相Y結線MG100,MG200への駆動電流の供給を停止する(ステップS150)。
このように、何らかの理由で処理同期コマンドが受信できない状態となった場合には、処理タイミングのズレがα+nΔt以上となるまでは、ステップS100、S130、S120の順にフリーラン処理を行い、処理タイミングのズレが非同期と判定されるα+nΔt以上となった時点で、3相Y結線MG100、MG200への駆動電流の供給を停止するように制御する。本実施の形態では、このようなフリーラン機能を持つことで、処理同期コマンドの受信ができない場合でも、3相Y結線MG100、MG200間の電流位相が補正可能な範囲内であれば、電動機MGの駆動制御を継続することが可能である。
このように、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、複数の3相結線を持つ電動機における電流位相のずれを解消し、電流位相のずれに起因するトルクの脈動を抑制することが可能である。
さらに、第2の実施の形態では、通信手段であるCAN通信経路360を介して上位コントローラ330から各インバータIN100、IN200に入力される通信データに処理同期コマンドを設け、その処理同期コマンドに基づいて処理タイミング補正部による補正を、各インバータIN100、IN200のそれぞれで行うようにした。その結果、既存のCAN通信経路360を利用して処理同期コマンドがインバータIN100、IN200に入力されるので、上述した第1の実施の形態のように、インバータIN100とインバータIN200との間に、同期信号のための専用配線を追加で設ける必要がなく、コスト低減も図ることができる。
また、処理同期コマンドを含む通信データの受信後、非同期と判定されると異常信号を出力するようにしたので、通信データの途切れなどによる電流位相のずれに起因するトルクの脈動が発生する前に、駆動停止等の安全処理を施すことができる。また、通信データの途切れがあった場合でも、その時間が所定時間よりも短ければ、電動機の駆動を継続することができる。非同期の判定方法としては、処理同期コマンドを含む通信データを受信してからの経過時間が、予め設定された非同期判定時間、例えば、上述した図5の処理をN回行う時間を超えたならば非同期と判定する。
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、以上の説明では、3相結線が2つ設けられた電動機MGを例に説明したが、3以上設けられた場合にも同様に適用することができる。その場合、同期信号を送信する構成では、いずれか一つのインバータから他の残りのインバータに同期信号を送って同期を図るようにする。また、本発明に電動機制御装置は、複数の結線を有する電動機の制御であれば、車両用に限らずその他の用途の電動機制御装置にも適用することができる。さらに、上述の説明では3相結線の電動機を例に説明したが、本発明は3相に限らず適用が可能である。上述した実施形態や変形例をどのように組み合わせることも可能である。
本発明に係る電動機制御装置の第1の実施形態を示すブロック図である。 複数インバータによる電動機制御時の演算制御の処理インターバルと、処理タイミングのずれを説明する図である。 同期信号による補正処理を説明する図である。 本発明に係る電動機制御装置の第2の実施形態を示すブロック図である。 処理動作のフローチャートを示す図である。
符号の説明
330:上位コントローラ、
360:CAN通信経路、
C110〜C130,C210〜C230:コイル巻線、
IN100,IN200:インバータ、
IN110,IN210:演算制御装置、
IN112:同期信号送信部、
IN113,IN213:処理タイミング補正部、
IN120,IN220:駆動回路、
IN130,IN230:パワーモジュール、
IN212:同期信号受信部、
MG:電動機、
MG100,MG200:3相Y結線

Claims (6)

  1. 複数の多相結線を有する電動機を駆動制御し、前記複数の多相結線にそれぞれ接続された複数のインバータを備える電動機制御装置であって、
    前記インバータは、前記電動機の駆動制御指令を生成する演算制御装置と、前記駆動制御指令に基づいて電力用スイッチング素子を駆動する駆動回路とをそれぞれ備え、
    電動機回転子の回転位置と周期的に発生される同期指令とに基づいて、前記複数のインバータに設けられた各演算制御装置の演算制御タイミングが互いに同期するように、少なくとも一方の演算制御タイミングを補正する処理タイミング補正部を設けたことを特徴とする電動機制御装置。
  2. 請求項1に記載の電動機制御装置において、
    前記複数のインバータの内の一つは、残りの他のインバータに対して同期信号を前記同期指令として出力し、
    前記残りの他のインバータには前記処理タイミング補正部が設けられ、
    前記処理タイミング補正部は、前記同期信号に同期して前記駆動制御指令が生成されるように補正することを特徴とする電動機制御装置。
  3. 請求項1に記載の電動機制御装置において、
    前記同期指令は、通信手段を介して上位制御装置から前記各インバータに入力される通信データに処理同期コマンドとして含まれ、
    前記通信データを受信した前記各インバータでは、前記処理同期コマンドに基づいて前記処理タイミング補正部による補正がそれぞれ行われることを特徴とする電動機制御装置。
  4. 請求項3に記載の電動機制御装置において、
    前記演算制御装置は、前記処理同期コマンドを含む通信データの受信後、非同期と判定されると異常信号を出力することを特徴とする電動機制御装置。
  5. 請求項4に記載の電動機制御装置において、
    前記処理同期コマンドを含む通信データを受信してからの経過時間が、非同期判定時間を超えたならば非同期と判定することを特徴とする電動機制御装置。
  6. 複数の多相結線を有する電動機を駆動制御し、前記複数の多相結線にそれぞれ接続された複数のインバータを備える電動機制御装置における運転制御方法であって、
    同期指令を周期的に発生し、
    前記同期指令が発生される度に、前記複数のインバータの各々において駆動制御指令を生成して電力用スイッチング素子を駆動することを特徴とする運転制御方法。
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