JP2010129169A - 負極用カーボンナノチューブ材料およびこれを負極とするリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カーボンナノチューブの露出面がアモルファス状炭素で被覆された、炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合物を不活性ガス中で熱処理することにより得られる上記記載の負極用炭素材料。これらの材料を負極とするリチウムイオン二次電池。
【選択図】なし
Description
このようなリチウムイオン二次電池においては、正極、負極ともに、リチウムを可逆的に格納できる物質が用いられ、両極でのリチウムの挿入・脱離の電位差が電池の起電力となる。電解液にはリチウムイオンが移動できる液体または固体の電解質が使用される。
しかし、リチウム金属は針状結晶(デンドライト)として析出するため、使用を繰り返すことで正極との短絡を起こす危険性が指摘されており、現在はごく限られたボタン電池などのみに使用されている。そこで、大容量で可逆的にリチウムを格納することができる材料が代わりに求められる。
このうち黒鉛は、層状物質であり、その層間にリチウムイオンを取り込んで、組成式LiC6のリチウム黒鉛層間化合物が生成する。このときの電位はリチウム金属の電位と、約+0.06Vほどしか離れていないため、正極反応と併せた時には、高い起電力が保持できる。また、その充放電電位はほぼ一定であり、黒鉛自体は導電性が高いため内部抵抗ロスが小さく、充放電効率(放電量に対する充電量の割合。すなわち、入れた電気をどれだけ取り出せるかの目安)も90%を超えるなど、安定した動作が見込めるため、現在の携帯電話などのリチウムイオン電池には、ほぼ、黒鉛材料が用いられている。
しかし、挿入されたリチウムが一部取り出せない、表面皮膜(SEI)の生成量が多い、低温焼成ほど導電性に乏しい、などの理由により充放電効率が黒鉛と比べて悪く、また、充放電の電位プロファイルが一定でなく、容量に比例して電位が変化するため、小型機器などの電池には不向きであるなどの欠点もあり、黒鉛を置き換えるほどの製品化はされていない。
この中で、カーボンナノチューブも炭素原子のみから成る材料のひとつであるため様々なナノチューブ類へのリチウム挿入脱離の研究が多くなされている。
このうち、チューブ内空間は、これまで、きれいに先端部のみを開口する技術が確立していないため、その中に可逆的にリチウムを挿入脱離した、という報告はまだ信憑性が薄い。また、壁の層間は単層カーボンナノチューブでは存在しないため、多層カーボンナノチューブに限られるが、層が筒構造になっていることで、リチウム挿入に伴う層間の膨張がストレスに阻害され膨張が起こりにくく、壁の部分については、黒鉛系ほどの容量が期待できない、という報告がある。バンドル空間についてはナノチューブの積み重なったチューブとチューブに挟まれたナノチューブ特有の空間であり、黒鉛の層間と同じくファンデアワールス空間とみなされ、ここへの物質の貯蔵が早くから期待されている。バンドル空間量が最も多いのは単層カーボンナノチューブであり、非特許文献1の論文によると、レーザーアブレーション法による比較的バンドル構造の発達した単層カーボンナノチューブへのリチウム挿入量は470mAh/gという報告がされ、in-situ XRD法から、チューブバンドル間へのリチウム挿入とされている。それ以降、さまざまなチューブへのリチウム挿入の研究が行われた。現在では、チューブの製法、構造や純度などの異なるものに関して、ことから、〜800mAh/gという報告もなされている。(非特許文献2〜3)
しかしながら、可逆容量は黒鉛よりも大きいものの、初期不可逆容量が黒鉛と比べものにならないくらい大きいため、実使用に耐える電池を作製することができないといった致命的な欠点を有する。以下、このことを図面を用いて説明する。
図7から、黒鉛の場合は、0.8V付近で非常に小さなプラトー(平坦部)が生じ、これが表面皮膜(SEI)の形成に使用された電流量に相当する。SEIは、一回目のリチウム挿入時に、黒鉛層の表面近傍で一部の溶媒分子が層間に入り込んで、そこで電気化学分解されることで生成するリチウムイオンを含んだ有機化合物である。このSEIは、導電性はないが、リチウムイオンは通り抜けることができ、したがって、SEIの表面で溶媒和されているリチウムから溶媒分子が外れ、リチウムのみがSEIを抜けて黒鉛層の中に挿入される仕組みとなっており、このため、SEIは、最低限は生成しなければいけない。SEIが生成した後は、0V付近で電流が流れており、ここが、リチウムの黒鉛層間への挿入に相当する。この、0V付近での挿入量は、約300mAh/gに相当し、実験室レベルでの黒鉛での値に非常にマッチしている。2回目以降の充放電ではすでにSEIは出来上がっているので、0V付近でのプラトーのみが観測される。黒鉛でSEIの量が小さいのは、露出している黒鉛表面が小さいからである。
したがって、このSEIの生成量を黒鉛並に小さくし、その初期不可逆容量を大幅に低減できれば、ナノチューブの固有の物質格納空間をリチウム貯蔵に用いる用途展開にうまく生かすことができ、有用なリチウムイオン二次電池の創製が期待できる。
本発明はかかる新規な知見によりなされたものである。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
〈1〉カーボンナノチューブの露出面がアモルファス状炭素で被覆された、炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
〈2〉カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合物を不活性ガス中で熱処理することにより得られる〈1〉に記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
〈3〉熱可塑性樹脂が、液相を経由して炭素化する樹脂であることを特徴とする〈1〉または〈2〉に記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
〈4〉液相を経由して炭素化する樹脂が、ポリ塩化ビニル、または、ポリビニルアルコールであることを特徴とする〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
〈5〉〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の負極用炭素材料を負極材料として用いることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
また、表面を被覆する高分子の熱分解から生成する炭素は、それ自身もリチウム挿入脱離が可能な活物質であるが、低温焼成ゆえ一般に導電性が小さく、それ単独、または、酸化物活物質を炭素被覆した電極などにおいてはハイパワー特性に難を有する。しかし、本手法においてナノチューブに被覆した場合は、内部に導電性の高いナノチューブを含んでいることから、表面被覆された薄い熱分解炭素層は活物質として利用が見込める。
したがって、本発明においては、ナノチューブ側、熱分解炭素側、双方から互いの欠点を補うことの可能なC/Cコンポジット負極材料として用いることが可能となる。
また、本発明の改質カーボンナノチューブは、炭素のみからなっている複合材料電極であることから、有機ポリマーや酸化物とナノチューブを組み合わせた複合材料電極と異なり、高温での熱処理により、さらなる二次的な構造制御が可能となる。
ここで、カーボンナノチューブの露出面とは通常外気に触れている部分であり、電池とした場合は電解液に濡れる部分を意味する。言い換えると、バンドルの中に存在するチューブは外部に露出しておらず、また、チューブは通常は閉じているためチューブ内壁は露出されていないため、露出面とはバンドルの一番外側の表面のみを意味する。
このような炭素被覆カーボンナノチューブ材料の代表例は、カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合物を不活性ガス中で熱処理し、カーボンナノチューブの露出面をアモルファス状炭素で被覆することにより得られるものである。
本発明に係る代表的な炭素被覆カーボンナノチューブ材料の模式図を図1に示す。
通常、ナノチューブは独立で一本一本では存在するよりは、むしろ、束(バンドル)を形成していることが多い。この束がさらに凝集し、粉末や紙などの構造体として工業的には提供される。このナノチューブ材料を、熱可塑性高分子の代表的存在であるポリ塩化ビニルやポリビニルアルコールなどとともに混合し、加熱することで、熱可塑性高分子が液相を経由して炭素化する。この過程で、液相となった炭素前駆体がナノチューブ露出面を多い、そこで炭素化することで、炭素被覆カーボンナノチューブを作製できる。得られた炭素被覆カーボンナノチューブは、リチウムイオンを挿入することができるが溶媒分子は挿入することができないアモルファス炭素でおおわれているため、溶媒の分解、すなわちSEI相はアモルファス炭素上でのみ生成し、リチウムイオンはナノチューブに達して貯蔵される。このような炭素質のみで構成されたC/C複合材料として提供が可能となる。
この中でも、SEIの形成部位が多い、比表面積の大きな単層カーボンナノチューブを用いることが本発明は最も効果を発揮する。また、リチウムを格納できるバンドル空間を有しているナノチューブの方が、一本一本が分離したナノチューブよりも容量の点で好ましいが、チューブ内空間なども将来的にはリチウム格納空間として望めるため、特に、バンドルの有無には制限されない。
また、表面を被覆する高分子の熱分解から生成する炭素は、それ自身もリチウム挿入脱離が可能な活物質であるが、低温処理ゆえ導電性が小さく、それ単独ではハイパワーの電池には不向きであるが、本手法では、内部に導電性のナノチューブを含んだ薄い熱分解炭素層は内部抵抗の低い活物質として利用が見込める。
すなわち、これらの技術は、プロピレンカーボネート(PC)溶媒は低温特性に優れ寒冷地においても固化することのない優れた溶媒であるが、黒鉛負極とするリチウムイオン二次電池の電解溶媒として用いた場合には、PCがリチウムイオンとの嵩高い複合体イオンとなり黒鉛層間に挿入してしまい、黒鉛層の剥離・破壊をもたらす現象が生じるため、黒鉛表面をPCを分解しない炭素で被覆することにより、かかる現象を抑制し、PC溶媒の使用を可能とすることを主眼としたものである(たとえば、特開2002−141062号公報やM.Yoshio, et al., J. Electrochem. Soc., 147(4) 1245-1250 (2000)参照)。
したがって、かかる技術は、巨大なSEI層の生成を著しく抑制し、1V付近の不可逆容量を大幅に低減することを目的とする本発明の炭素被覆カーボンナノチューブ材料の技術とは、その対象および課題などが明らかに異なっており、両者の技術は明確に区別される。
液相熱分解に用いる炭素源ポリマーは、炭素化の過程で溶融し、ナノチューブを濡らすことのできる熱可塑性樹脂であれば何でもよく、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールが例示される。一方、同じ熱可塑性樹脂でも、炭素化せずに蒸散してしまうポリエチレンやポリスチレンなどは好ましくない。
後記する実施例においては、その代表例として、濡れ性に適した粘性の低い液相を経由し、かつ、リチウム挿入特性に影響を及ぼす含酸素官能基の生成要素を排除する狙いから、酸素を含有しないポリ塩化ビニルを用いたが、本発明はこのものに限定されないことはもちろんである。
被覆させる炭素量は制限を受けない。すなわち、被覆炭素材料も活物質として用いることができるため、電池特性を極端に下げてしまうことにはならないためである。言い換えると、求める電池性能、たとえば、容量密度やパワー密度によって、ナノチューブと被覆炭素の比が決められる。
また、表面を被覆する高分子の熱分解から生成する炭素は、それ自身もリチウム挿入脱離が可能な活物質であるが、低温処理ゆえ導電性が小さく、それ単独ではハイパワーの電池には不向きであるが、本手法では、内部に導電性のナノチューブを含んだ薄い熱分解炭素層は内部抵抗の低い活物質として利用が見込める。
したがって、本発明においては、ナノチューブ側、熱分解炭素側、双方から互いの欠点を補うことの可能なC/Cコンポジット負極材料として用いることが可能となる。
また、本発明で得られる炭素被覆カーボンナノチューブ材料は、リチウム挿入空間が多彩であり、より黒鉛に比べ大きな電気容量が望めると共に巨大なSEI層の生成を著しく抑制し、1V付近の不可逆容量が大幅に低減され、しかも優れた導電性を有し、酸化物電極などと異なり導電助剤が不要であるといった多くのメリットを有するので、リチウムイオン二次電池の負極材料として極めて有用なものである。
また、電解液の溶媒としては、この種の有機溶媒として公知のものがすべて使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、ジエチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもよいが、組み合わせて使用してもよい。
ここで、特筆すべきことは、低温での動作特性が極めて有用な溶媒でありながら、黒鉛の層間にリチウムイオンと共に挿入し黒鉛の層間剥離を惹起し、黒鉛系を負極とするリチウムイオン二次電池では使用不可とされているプロピレンカーボネート溶媒も、カーボンナノチューブ、被覆アモルファス炭素、ともに使用が可能であり、これらに組み合わせによる電極も、必然的にプロピレンカーボネートの使用が可能である点である。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池におけるセパレータや結着剤などの周辺部材、集電体金属材料等も炭素系材料を負極とするこの種のリチウムイオン二次電池において使用されるもの同様に使用することが可能であり、なんら制限を受けるものではない。
(炭素被覆カーボンナノチューブ材料およびこれを用いた電極の作製)
市販のHiPco法単層カーボンナノチューブ(Unidym社製、Purified Grade、以下SWNTsと略記)とポリ塩化ビニルを表1の混合比で混ぜたものを、窒素気流中(200mL/min.)、昇温速度5℃/min.で900℃で30分加熱を行った。得られた試料のBET比表面積を77Kでの窒素吸着法により測定した。この試料を、結着材となる10wt%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)と共にN−メチルピロリドン中でスラリーとし、ニッケルメッシュ上に塗布・150℃で乾燥し、電極を得た。この電極を作用極、リチウム金属を対極と参照極とし、1MのLiBF4を溶かしたエチレンカーボネ−ト/ジエチルカーボネート(50:50)の混合電解液中で、負極充放電特性を評価した。電流密度は、50〜2000mA/gとし、3V〜0Vを充放電測定範囲(カットオフ電位)とした。
Claims (5)
- カーボンナノチューブの露出面がアモルファス状炭素で被覆された、炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
- カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合物を不活性ガス中で熱処理することにより得られる請求項1に記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
- 熱可塑性樹脂が、液相を経由して炭素化する樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
- 液相を経由して炭素化する樹脂が、ポリ塩化ビニルまたはポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素被覆カーボンナノチューブ材料からなる負極用炭素材料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の負極用炭素材料を負極材料として用いることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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