以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本発明の一実施の形態に係る平衡出力型トリプレクサは、以下の第1ないし第3の周波数帯域の信号を分離するものである。第2の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域であり、第3の周波数帯域は第2の周波数帯域よりも高い周波数帯域である。第1の周波数帯域は、例えばIEEE802.11bやIEEE802.11gにおいて使用される2.4GHz帯である。第2の周波数帯域は、例えばワイマックス規格において使用される3.5GHz帯である。第3の周波数帯域は、例えばIEEE802.11aにおいて使用される5GHz帯である。第1の周波数帯域と第3の周波数帯域は、例えば無線LANに使用され、第2の周波数帯域は、例えばワイマックス規格の通信に使用される。
図1は、本実施の形態に係る平衡出力型トリプレクサの回路構成を示す回路図である。本実施の形態に係る平衡出力型トリプレクサ(以下、単にトリプレクサと記す。)1は、入力端子ANTと、一対の第1の平衡出力端子Rx21,Rx22と、一対の第2の平衡出力端子Rx31,Rx32と、一対の第3の平衡出力端子Rx51,Rx52とを備えている。入力端子ANTには、第1の周波数帯域の第1の不平衡信号と、第2の周波数帯域の第2の不平衡信号と、第3の周波数帯域の第3の不平衡信号とが入力される。また、入力端子ANTは、アンテナに接続される。第1ないし第3の不平衡信号は、いずれも、アンテナによって受信した受信信号である。一対の第1の平衡出力端子Rx21,Rx22は、第1の不平衡信号に対応する第1の平衡信号を出力する。一対の第2の平衡出力端子Rx31,Rx32は、第2の不平衡信号に対応する第2の平衡信号を出力する。一対の第3の平衡出力端子Rx51,Rx52は、第3の不平衡信号に対応する第3の平衡信号を出力する。これらの平衡出力端子は、3つの受信信号の増幅、復調等の処理を行う信号処理回路(例えば1つの集積回路)に接続される。
トリプレクサ1は、更に、入力端子ANTと第1の平衡出力端子Rx21,Rx22との間に設けられた第1のフィルタ20と、入力端子ANTと第2の平衡出力端子Rx31,Rx32との間に設けられた第2のフィルタ30と、入力端子ANTと第3の平衡出力端子Rx51,Rx52との間に設けられた第3のフィルタ50とを備えている。第1ないし第3のフィルタ20,30,50は、いずれも、バンドパスフィルタであると共に、不平衡信号を平衡信号に変換する機能を有している。第1のフィルタ20は、第1の周波数帯域内の周波数の信号を選択的に通過させると共に、第1の不平衡信号を第1の平衡信号に変換して、この第1の平衡信号を第1の平衡出力端子Rx21,Rx22に対して出力する。第2のフィルタ30は、第2の周波数帯域内の周波数の信号を選択的に通過させると共に、第2の不平衡信号を第2の平衡信号に変換して、この第2の平衡信号を第2の平衡出力端子Rx31,Rx32に対して出力する。第3のフィルタ50は、第3の周波数帯域内の周波数の信号を選択的に通過させると共に、第3の不平衡信号を第3の平衡信号に変換して、この第3の平衡信号を第3の平衡出力端子Rx51,Rx52に対して出力する。
トリプレクサ1は、更に、位相線路61,62,63と、キャパシタC57とを備えている。位相線路61の一端は、入力端子ANTに接続されている。位相線路62,63の各一端は、位相線路61の他端に接続されている。位相線路62の他端は、第1のフィルタ20に接続されている。位相線路63の他端は、第2のフィルタ30に接続されている。キャパシタC57の一端は入力端子ANTに接続され、キャパシタC57の他端は第3のフィルタ50に接続されている。
フィルタ20は、入力ポート20aと、2つの出力ポート20b,20cとを有している。入力ポート20aは、位相線路62に接続されている。出力ポート20b,20cは、それぞれ、第1の平衡出力端子Rx21,Rx22に接続されている。
フィルタ20は、更に、共振器L21,L22,L23と、キャパシタC21,C22,C23,C41,C42,C43とを有している。共振器L21,L22,L23は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。入力ポート20aは、共振器L21に接続されている。なお、図1では、便宜上、入力ポート20aが共振器L21の開放端に接続されているように描いているが、共振器L21における入力ポート20aの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。キャパシタC21,C41,C43の各一端は、共振器L21の開放端に接続されている。共振器L21の短絡端およびキャパシタC21の他端は接地されている。共振器L22の開放端およびキャパシタC22,C42の各一端は、キャパシタC41の他端に接続されている。共振器L22の短絡端およびキャパシタC22の他端は接地されている。共振器L23の開放端およびキャパシタC23の一端、ならびにキャパシタC43の他端は、キャパシタC42の他端に接続されている。共振器L23の短絡端およびキャパシタC23の他端は接地されている。出力ポート20bは、共振器L23に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート20bが共振器L23の開放端に接続されているように描いているが、共振器L23における出力ポート20bの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L21とキャパシタC21の組、共振器L22とキャパシタC22の組、および共振器L23とキャパシタC23の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC21,C22,C23は、それぞれ、共振器L21,L22,L23の物理長を、フィルタ20を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L21と共振器L22は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L21と共振器L22は誘導性結合すると共に、キャパシタC41を介して容量性結合する。同様に、共振器L22と共振器L23も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L22と共振器L23は誘導性結合すると共に、キャパシタC42を介して容量性結合する。図1では、共振器L21,L22間の誘導性結合および共振器L22,L23間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L21,L22間の誘導性結合および共振器L22,L23間の誘導性結合は、いずれも、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。なお、2つの共振器において、開放端と短絡端の位置関係が同じというのは、開放端から短絡端に向かう方向が、2つの共振器において、同一であるか、ほぼ同一であるということである。
フィルタ20は、更に、共振器L24,L25,L26と、キャパシタC24,C25,C26,C44,C45,C46とを有している。共振器L24,L25,L26は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。共振器L24の開放端およびキャパシタC24,C46の各一端は、キャパシタC44の一端に接続されている。共振器L24の短絡端およびキャパシタC24の他端は接地されている。共振器L25の開放端およびキャパシタC25,C45の各一端は、キャパシタC44の他端に接続されている。共振器L25の短絡端およびキャパシタC25の他端は接地されている。共振器L26の開放端およびキャパシタC26の一端、ならびにキャパシタC46の他端は、キャパシタC45の他端に接続されている。共振器L26の短絡端およびキャパシタC26の他端は接地されている。出力ポート20cは、共振器L26に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート20cが共振器L26の開放端に接続されているように描いているが、共振器L26における出力ポート20cの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L24とキャパシタC24の組、共振器L25とキャパシタC25の組、および共振器L26とキャパシタC26の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC24,C25,C26は、それぞれ、共振器L24,L25,L26の物理長を、フィルタ20を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L24と共振器L25は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L24と共振器L25は誘導性結合すると共に、キャパシタC44を介して容量性結合する。同様に、共振器L25と共振器L26も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L25と共振器L26は誘導性結合すると共に、キャパシタC42を介して容量性結合する。図1では、共振器L24,L25間の誘導性結合および共振器L25,L26間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L24,L25間の誘導性結合および共振器L25,L26間の誘導性結合は、いずれも、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
また、共振器L21と共振器L24の組、共振器L22と共振器L25の組、および共振器L23と共振器L26の組は、それぞれインターディジタル結合する。すなわち、共振器L21と共振器L24は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L22と共振器L25は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L23と共振器L26は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。
フィルタ20において、入力端子ANTからの信号は、共振器L21に入力される。共振器L21,L24は、一対の入力用共振器に対応する。また、共振器L23,L26は、本発明における一対の出力用共振器に対応する。共振器L21,L24は共振器L22,L25と結合し、共振器L22,L25は共振器L23,L26に結合する。従って、共振器L21,L24と、共振器L23,L26は、共振器L22,L25を介して結合する。
フィルタ30は、入力ポート30aと、2つの出力ポート30b,30cとを有している。入力ポート30aは、位相線路63に接続されている。出力ポート30b,30cは、それぞれ、第2の平衡出力端子Rx31,Rx32に接続されている。
フィルタ30は、更に、共振器L31,L32と、キャパシタC31,C32,C35とを有している。共振器L31,L32は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。入力ポート30aは、共振器L31に接続されている。なお、図1では、便宜上、入力ポート30aが共振器L31の開放端に接続されているように描いているが、共振器L31における入力ポート30aの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。キャパシタC31,C35の各一端は、共振器L31の開放端に接続されている。共振器L31の短絡端およびキャパシタC31の他端は接地されている。共振器L32の開放端およびキャパシタC32の一端は、キャパシタC35の他端に接続されている。出力ポート30bは、共振器L32に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート30bが共振器L32の開放端に接続されているように描いているが、共振器L32における出力ポート30bの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L31とキャパシタC31の組、および共振器L32とキャパシタC32の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC31,C32は、それぞれ、共振器L31,L32の物理長を、フィルタ30を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L31と共振器L32は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L31と共振器L32は誘導性結合すると共に、キャパシタC35を介して容量性結合する。図1では、共振器L31,L32間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L31,L32間の誘導性結合は、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
フィルタ30は、更に、共振器L33,L34と、キャパシタC33,C34,C36とを有している。共振器L33,L34は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。共振器L33の開放端およびキャパシタC33の一端は、キャパシタC36の一端に接続されている。共振器L33の短絡端およびキャパシタC33の他端は接地されている。共振器L34の開放端およびキャパシタC34の一端は、キャパシタC36の他端に接続されている。共振器L34の短絡端およびキャパシタC34の他端は接地されている。出力ポート30cは、共振器L34に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート30cが共振器L34の開放端に接続されているように描いているが、共振器L34における出力ポート30cの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L33とキャパシタC33の組、および共振器L34とキャパシタC34の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC33,C34は、それぞれ、共振器L33,L34の物理長を、フィルタ30を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L33と共振器L34は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L33と共振器L34は誘導性結合すると共に、キャパシタC36を介して容量性結合する。図1では、共振器L33,L34間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L33,L34間の誘導性結合は、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
また、共振器L31と共振器L33の組、および共振器L32と共振器L34の組は、それぞれインターディジタル結合する。すなわち、共振器L31と共振器L33は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L32と共振器L34は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。
フィルタ30において、入力端子ANTからの信号は、共振器L31に入力される。共振器L31,L33は、一対の入力用共振器に対応する。また、共振器L32,L34は、本発明における一対の出力用共振器に対応する。共振器L31,L33と、共振器L32,L34は、直接結合する。
フィルタ50は、入力ポート50aと、2つの出力ポート50b,50cとを有している。入力ポート50aは、キャパシタC57に接続されている。出力ポート50b,50cは、それぞれ、第3の平衡出力端子Rx51,Rx52に接続されている。
フィルタ50は、更に、共振器L51,L52と、キャパシタC51,C52,C55とを有している。共振器L51,L52は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。共振器L51の開放端およびキャパシタC51,C55の各一端は、入力ポート50aに接続されている。共振器L51の短絡端およびキャパシタC51の他端は接地されている。共振器L52の開放端およびキャパシタC52の一端は、キャパシタC55の他端に接続されている。共振器L52の短絡端およびキャパシタC52の他端は接地されている。出力ポート50bは、共振器L52に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート50bが共振器L52の開放端に接続されているように描いているが、共振器L52における出力ポート50bの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L51とキャパシタC51の組、および共振器L52とキャパシタC52の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC51,C52は、それぞれ、共振器L51,L52の物理長を、フィルタ50を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L51と共振器L52は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L51と共振器L52は誘導性結合すると共に、キャパシタC55を介して容量性結合する。図1では、共振器L51,L52間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L51,L52間の誘導性結合は、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
フィルタ50は、更に、共振器L53,L54と、キャパシタC53,C54,C56とを有している。共振器L53,L54は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。共振器L53の開放端およびキャパシタC53の一端は、キャパシタC56の一端に接続されている。共振器L53の短絡端およびキャパシタC53の他端は接地されている。共振器L54の開放端およびキャパシタC54の一端は、キャパシタC56の他端に接続されている。共振器L54の短絡端およびキャパシタC54の他端は接地されている。出力ポート50cは、共振器L54に接続されている。なお、図1では、便宜上、出力ポート50cが共振器L54の開放端に接続されているように描いているが、共振器L54における出力ポート50cの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L53とキャパシタC53の組、および共振器L54とキャパシタC54の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC53,C54は、それぞれ、共振器L53,L54の物理長を、フィルタ50を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L53と共振器L54は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L53と共振器L54は誘導性結合すると共に、キャパシタC56を介して容量性結合する。図1では、共振器L53,L54間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。共振器L53,L54間の誘導性結合は、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
また、共振器L51と共振器L53の組、および共振器L52と共振器L54の組は、それぞれインターディジタル結合する。すなわち、共振器L51と共振器L53は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L52と共振器L54は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。
フィルタ50において、入力端子ANTからの信号は、共振器L51に入力される。共振器L51,L53は、一対の入力用共振器に対応する。また、共振器L52,L54は、本発明における一対の出力用共振器に対応する。共振器L51,L53と、共振器L52,L54は、直接結合する。
共振器L21〜L23,L41〜L43,L31〜L34,L51〜L54は、いずれも、TEM線路よりなる分布定数線路である。TEM線路とは、電界および磁界が共に電磁波の進行方向に垂直な断面内にのみ存在する電磁波であるTEM波(Transverse Electromagnetic Wave)を伝送する伝送線路である。
次に、位相線路61,62,62とキャパシタC57の機能について説明する。まず、入力端子ANTから第1の平衡出力端子Rx21,Rx22に至る信号経路を第1の信号経路と呼び、入力端子ANTから第2の平衡出力端子Rx31,Rx32に至る信号経路を第2の信号経路と呼び、入力端子ANTから第3の平衡出力端子Rx51,Rx52に至る信号経路を第3の信号経路と呼ぶ。位相線路61,62,62とキャパシタC57は、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性を調整するためのものである。以下、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性の調整方法の第1および第2の例について説明する。しかし、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性の調整方法は、以下の第1および第2の例に限られるわけではない。
まず、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性の調整方法の第1の例について説明する。この第1の例では、以下の条件(1)〜(3)が満たされるように、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性を調整する。
(1)第1の周波数帯域に関して:
(1a)入力端子ANTから見た第2の信号経路と第3の信号経路からなる並列回路全体の反射係数は1またはその近傍である。
(1b)入力端子ANTから見た第2の信号経路単独の反射係数と、入力端子ANTから見た第3の信号経路単独の反射係数は、いずれも−1またはその近傍ではない。
(2)第2の周波数帯域に関して:
(2a)入力端子ANTから見た第1の信号経路と第3の信号経路からなる並列回路全体の反射係数は1またはその近傍である。
(2b)入力端子ANTから見た第1の信号経路単独の反射係数と、入力端子ANTから見た第3の信号経路単独の反射係数は、いずれも−1またはその近傍ではない。
(3)第3の周波数帯域に関して:
(3a)入力端子ANTから見た第1の信号経路と第2の信号経路からなる並列回路全体の反射係数は1またはその近傍である。
(3b)入力端子ANTから見た第1の信号経路単独の反射係数と、入力端子ANTから見た第2の信号経路単独の反射係数は、いずれも−1またはその近傍ではない。
なお、反射係数は、複素数であり、実数分Uと虚数分Vとを用いて、U+jVと表される。なお、“j”は、√(−1)を表す。
(1a)、(2a)、(3a)における「反射係数は1またはその近傍である」というのは、入力端子ANTから見た信号経路が開放(インピーダンスが無限大)またはそれに近い状態であることを意味する。「反射係数は1またはその近傍である」とは、例えば、Uが0.75〜1の範囲内で且つVが−0.25〜0.25の範囲内であることを言う。
(1b)、(2b)、(3b)における「反射係数は−1またはその近傍ではない」というのは、入力端子ANTから見た信号経路が短絡(インピーダンスが0)またはそれに近い状態ではないことを意味する。「反射係数は−1またはその近傍ではない」とは、例えば、Uが−1〜−0.75の範囲外であることと、Vが−0.25〜0.25の範囲外であることの少なくとも一方を満たすことを言う。
次に、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性の調整方法の第2の例について説明する。この第2の例では、第1ないし第3の信号経路が並列に接続された状態で、以下の条件(1c)、(2c)、(3c)が満たされるように、第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性を調整する。
(1c)第1の周波数帯域に関して、入力端子ANTから見た第1の信号経路の反射係数の絶対値は0またはその近傍である。
(2c)第2の周波数帯域に関して、入力端子ANTから見た第2の信号経路の反射係数の絶対値は0またはその近傍である。
(3c)第3の周波数帯域に関して、入力端子ANTから見た第3の信号経路の反射係数の絶対値は0またはその近傍である。
(1c)、(2c)、(3c)における「反射係数の絶対値は0またはその近傍である」というのは、入力端子ANTから見た信号経路が無反射(インピーダンス整合がとれた状態)またはそれに近い状態であることを意味する。「反射係数の絶対値は0またはその近傍である」とは、例えば、反射係数の絶対値が0〜0.3の範囲内であることを言う。
次に、本実施の形態に係るトリプレクサ1の主要な作用について説明する。トリプレクサ1において、入力端子ANTに入力された第1の不平衡信号は、第1のフィルタ20によって第1の平衡信号に変換されて、一対の第1の平衡出力端子Rx21,Rx22より出力される。また、入力端子ANTに入力された第2の不平衡信号は、第2のフィルタ30によって第2の平衡信号に変換されて、一対の第2の平衡出力端子Rx31,Rx32より出力される。また、入力端子ANTに入力された第3の不平衡信号は、第3のフィルタ50によって第3の平衡信号に変換されて、一対の第3の平衡出力端子Rx51,Rx52より出力される。
次に、フィルタ20,30,50の作用について説明する。まず、一般的に、共振周波数が等しい2つの共振器を近づけて、両者を電磁結合させると、2つの共振器における共振周波数が2つに分かれる。電磁結合していない状態における2つの共振器の共振周波数をf0とすると、電磁結合した2つの共振器は、f0よりも低い第1の共振周波数f1と、f0よりも高い第2の共振周波数f2とを有する。2つの共振器をインターディジタル結合した場合には、2つの共振器が第1の共振周波数f1において共振した状態において、2つの共振器の短絡端以外の箇所における電界の位相は互いに180°異なる。従って、この場合、2つの共振器の短絡端以外の箇所から、周波数f1の平衡信号を出力させることができる。フィルタ20,30,50では、いずれも、以上の原理を利用して、インターディジタル結合した一対の出力用共振器より平衡信号を出力させている。各フィルタにおける通過帯域は、フィルタ毎に設定された第1の共振周波数f1の近傍の周波数帯域となる。
第1のフィルタ20では、第1の周波数帯域を含むように通過帯域が設定されている。第1のフィルタ20では、入力端子ANTからの信号は、共振器L21に入力される。第1のフィルタ20は、通過帯域内の周波数の信号に対して各共振器が共振することによって、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。また、このとき、それぞれインターディジタル結合する共振器L21と共振器L24の組、共振器L22と共振器L25の組、および共振器L23と共振器L26の組では、短絡端以外の箇所における電界の位相が互いにほぼ180°異なっている。これにより、一対の出力用共振器である共振器L23,L26に接続された一対の出力ポート20b,20cより第1の平衡信号が出力される。
第2のフィルタ30では、第2の周波数帯域を含むように通過帯域が設定されている。第2のフィルタ30では、入力端子ANTからの信号は、共振器L31に入力される。第2のフィルタ30は、通過帯域内の周波数の信号に対して各共振器が共振することによって、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。また、このとき、それぞれインターディジタル結合する共振器L31と共振器L33の組、および共振器L32と共振器L34の組では、短絡端以外の箇所における電界の位相が互いにほぼ180°異なっている。これにより、一対の出力用共振器である共振器L32,L34に接続された一対の出力ポート30b,30cより第2の平衡信号が出力される。
第3のフィルタ50では、第3の周波数帯域を含むように通過帯域が設定されている。第3のフィルタ50では、入力端子ANTからの信号は、共振器L51に入力される。第3のフィルタ50は、通過帯域内の周波数の信号に対して各共振器が共振することによって、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。また、このとき、それぞれインターディジタル結合する共振器L51と共振器L53の組、および共振器L52と共振器L54の組では、短絡端以外の箇所における電界の位相が互いにほぼ180°異なっている。これにより、一対の出力用共振器である共振器L52,L54に接続された一対の出力ポート50b,50cより第2の平衡信号が出力される。
フィルタ20,30,50では、いずれも、インターディジタル結合する一対の出力用共振器を有することにより、電磁結合していない状態における出力用共振器の共振周波数f0よりも低い共振周波数f1の近傍の通過帯域を実現することができる。他の共振器と電磁結合していない状態における共振器では、共振周波数を低くするには、共振器の物理長を大きくする必要がある。フィルタ20,30,50では、電磁結合していない状態で共振周波数f0が得られるように設計された共振器、すなわち電磁結合していない状態で共振周波数f1が得られるように設計された共振器よりも小型の共振器を用いて、共振周波数f1の近傍の通過帯域を実現することができる。そのため、フィルタ20,30,50では、インターディジタル結合する一対の出力用共振器を有することにより、共振器の小型化が可能になる。
以下、トリプレクサ1の構造について説明する。図2は、トリプレクサ1の外観を示す斜視図である。図2に示したように、トリプレクサ1は、積層された複数の誘電体層を含む積層基板10を備えている。積層基板10は、例えば低温同時焼成セラミック多層基板になっている。図1に示したフィルタ20,30,50、位相線路61,62,63およびキャパシタC57は、積層基板10の内部に設けられている。
積層基板10は、それぞれ複数の辺によって画定された複数の面を有している。具体的には、積層基板10は、直方体形状であり、上面10Aと底面10Bと4つの側面10C〜10Fとを有している。上面10Aと底面10Bと4つの側面10C〜10Fは、いずれも、4つの辺によって画定される。4つの側面10C〜10Fは、上面10Aと底面10Bを連結している。上面10Aと底面10Bは互いに反対側を向き、側面10C,10Dも互いに反対側を向き、側面10E,10Fも互いに反対側を向いている。側面10C〜10Fは、上面10Aおよび底面10Bに対して垂直になっている。積層基板10において、上面10Aおよび底面10Bに垂直な方向が、複数の誘電体層の積層方向である。上面10Aと底面10Bは、積層基板10において、複数の誘電体層の積層方向における両端に位置する。
トリプレクサ1は、前述の端子ANT,Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52の他に、グランド端子G1〜G11を備えている。グランド端子G1〜G11は、外部のグランドに接続される。端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52は、上面10A、側面10Cおよび底面10Bにかけて配置されている。端子ANT,G1〜G5は、上面10A、側面10Dおよび底面10Bにかけて配置されている。端子G6〜G8は、上面10A、側面10Eおよび底面10Bにかけて配置されている。端子G9〜G11は、上面10A、側面10Fおよび底面10Bにかけて配置されている。
上面10Aは、4つの側面10C,10D,10E,10Fとの間の稜線によって構成された4つ辺を有している。底面10Bも、4つの側面10C,10D,10E,10Fとの間の稜線によって構成された4つ辺を有している。上面10Aにおいて、平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52は、上面10Aと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10A1に隣接するように配置されている。また、底面10Bにおいて、平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52は、底面10Bと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10B1に隣接するように配置されている。上面10Aおよび底面10Bにおいて、平衡出力端子以外の全ての端子は、平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が隣接する辺10A1,10B1とは異なる辺に隣接するように配置されている。
次に、図3ないし図12を参照して、積層基板10の構成の一例について説明する。図3において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から1層目、2層目、3層目の誘電体層の上面を示している。図4において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から4層目、5層目、6層目ないし8層目の誘電体層の上面を示している。図5において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から9層目、10層目、11層目の誘電体層の上面を示している。図6において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から12層目、13層目、14層目の誘電体層の上面を示している。図7において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から15層目、16層目、17層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から18層目、19層目、20層目の誘電体層の上面を示している。図9において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から21層目、22層目、23層目の誘電体層の上面を示している。図10において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から24層目、25層目、26層目の誘電体層の上面を示している。図11において(a)、(b)、(c)は、それぞれ上から27層目および28層目、29層目、30層目の誘電体層の上面を示している。図12において(a)、(b)は、それぞれ上から31層目、32層目の誘電体層の上面を示している。図12(c)は、上から32層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。図3ないし図12において、丸印はスルーホールを表している。
図3(a)に示した1層目の誘電体層101の上面、すなわち積層基板10の上面10Aには、端子ANT,Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52,G1〜G11を構成する複数の導体層が形成されている。
図3(b)に示した2層目の誘電体層102の上面には、導体層よりなるグランド層901が形成されている。グランド層901は、端子G1〜G11に接続されている。また、誘電体層102には、グランド層901に接続された複数のスルーホールが形成されている。
図3(c)に示した3層目の誘電体層103の上面には、キャパシタ用導体層311,312,511,512が形成されている。また、誘電体層103には、それぞれ導体層311,312,511,512に接続された4つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図4(a)に示した4層目の誘電体層104の上面には、キャパシタ用導体層313,513が形成されている。導体層313には、誘電体層103に形成されたスルーホールを介して導体層311が接続されている。導体層513には、誘電体層103に形成されたスルーホールを介して導体層511が接続されている。また、誘電体層104には、それぞれ導体層313,513に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図4(b)に示した5層目の誘電体層105の上面には、キャパシタ用導体層314,514が形成されている。導体層314には、誘電体層103,104に形成された複数のスルーホールを介して導体層312が接続されている。導体層514には、誘電体層103,104に形成された複数のスルーホールを介して導体層512が接続されている。また、誘電体層105には、それぞれ導体層314,514に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図4(c)に示したように、6層目ないし8層目の誘電体層106〜108には、それぞれ複数のスルーホールが形成されている。誘電体層106〜108における複数のスルーホールの配置は同じである。
図5(a)に示した9層目の誘電体層109には、それぞれ導体層よりなる共振器L33,L34,L51,L52と、導体層305,505と、キャパシタ用導体層515が形成されている。また、誘電体層109には、複数のスルーホールが形成されている。
共振器L33は開放端L33aと短絡端L33bとを有している。共振器L34は開放端L34aと短絡端L34bとを有している。共振器L33と共振器L34は、開放端L33a,L34a同士が近接し、短絡端L33b,L34b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L33,L34における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L33,L34はコムライン結合する。
共振器L51は開放端L51aと短絡端L51bとを有している。共振器L52は開放端L52aと短絡端L52bとを有している。共振器L51と共振器L52は、開放端L51a,L52a同士が近接し、短絡端L51b,L52b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L51,L52における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L51,L52はコムライン結合する。
共振器L33,L34,L51,L52は、いずれも、各々における開放端と短絡端とを結ぶ直線が、積層基板10の上面10Aおよび底面10Bにおいて平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が隣接する辺10A1,10B1に平行になるように配置されている。
共振器L33の短絡端L33bと共振器L34の短絡端L34bには、誘電体層102〜108に形成された複数のスルーホールを介してグランド層901が接続されている。共振器L33の開放端L33aには、誘電体層103〜108に形成された複数のスルーホールを介して導体層311,313が接続されている。共振器L34の開放端L34aには、誘電体層103〜108に形成された複数のスルーホールを介して導体層312,314が接続されている。導体層305は、共振器L34と端子Rx32とを接続する。導体層305は、図1における出力ポート30cに相当する。
共振器L51の短絡端L51bと共振器L52の短絡端L52bには、誘電体層102〜108に形成された複数のスルーホールを介してグランド層901が接続されている。共振器L51の開放端L51aには、誘電体層103〜108に形成された複数のスルーホールを介して導体層511,513が接続されている。共振器L52の開放端L52aには、誘電体層103〜108に形成された複数のスルーホールを介して導体層512,514が接続されている。導体層505は、共振器L52と端子Rx51とを接続する。導体層505は、図1における出力ポート50bに相当する。
図5(b)に示した10層目の誘電体層110の上面には、それぞれ導体層よりなる共振器L31,L32,L53,L54と、導体層306,506と、キャパシタ用導体層516が形成されている。
共振器L31は開放端L31aと短絡端L31bとを有している。共振器L32は開放端L32aと短絡端L32bとを有している。共振器L31と共振器L32は、開放端L31a,L32a同士が近接し、短絡端L31b,L32b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L31,L32における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L31,L32はコムライン結合する。
共振器L53は開放端L53aと短絡端L53bとを有している。共振器L54は開放端L54aと短絡端L54bとを有している。共振器L53と共振器L54は、開放端L53a,L54a同士が近接し、短絡端L53b,L54b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L53,L54における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L53,L54はコムライン結合する。
また、共振器L31,L32,L53,L54は、いずれも、各々における開放端と短絡端とを結ぶ直線が、積層基板10の上面10Aおよび底面10Bにおいて平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が隣接する辺10A1,10B1に平行になるように配置されている。
共振器L31と共振器L33は、開放端L31aと短絡端L33bが近接し、短絡端L31bと開放端L33aが近接するように、誘電体層109を介して対向している。従って、共振器L31,L33における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L31,L33はインターディジタル結合する。
共振器L32と共振器L34は、開放端L32aと短絡端L34bが近接し、短絡端L32bと開放端L34aが近接するように、誘電体層109を介して対向している。従って、共振器L32,L34における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L32,L34はインターディジタル結合する。
共振器L51と共振器L53は、開放端L51aと短絡端L53bが近接し、短絡端L51bと開放端L53aが近接するように、誘電体層109を介して対向している。従って、共振器L51,L53における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L51,L53はインターディジタル結合する。
共振器L52と共振器L54は、開放端L52aと短絡端L54bが近接し、短絡端L52bと開放端L54aが近接するように、誘電体層109を介して対向している。従って、共振器L52,L54における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L52,L54はインターディジタル結合する。
導体層306は、共振器L32と端子Rx31とを接続する。導体層306は、図1における出力ポート30bに相当する。導体層506は、共振器L54と端子Rx52とを接続する。導体層506は、図1における出力ポート50cに相当する。導体層516は、誘電体層109を介して導体層515に対向している。
また、誘電体層110には、それぞれ、共振器L31,L32,L53,L54の各短絡端および各開放端に接続された8つのスルーホールと、導体層516に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図5(c)に示した11層目の誘電体層111には、複数のスルーホールが形成されている。
図6(a)に示した12層目の誘電体層112の上面には、位相線路用導体層631が形成されている。導体層631の一端には、誘電体層110,111に形成された複数のスルーホールを介して共振器L31の開放端L31aが接続されている。また、誘電体層112には、導体層631の一端および他端に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図6(b)に示した13層目の誘電体層113には、複数のスルーホールが形成されている。
図6(c)に示した14層目の誘電体層114の上面には、キャパシタ用導体層321,521が形成されている。導体層321には、誘電体層110〜113に形成された複数のスルーホールを介して共振器L31の開放端L31aと、導体層631の一端が接続されている。導体層521には、誘電体層110〜113に形成された複数のスルーホールを介して共振器L53の開放端L53aが接続されている。また、誘電体層114には、それぞれ導体層321,521に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図7(a)に示した15層目の誘電体層115の上面には、キャパシタ用導体層322,522が形成されている。導体層322には、誘電体層110〜114に形成された複数のスルーホールを介して共振器L32の開放端L32aが接続されている。導体層522には、誘電体層110〜114に形成された複数のスルーホールを介して共振器L54の開放端L54aが接続されている。また、誘電体層115には、それぞれ導体層322,522に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図7(b)に示した16層目の誘電体層116の上面には、キャパシタ用導体層323,324,523,524が形成されている。導体層323には、誘電体層110〜115に形成された複数のスルーホールを介して共振器L31の開放端L31aと、導体層631の一端と、導体層321が接続されている。導体層324には、誘電体層110〜115に形成された複数のスルーホールを介して共振器L32の開放端L32aと、導体層322が接続されている。導体層523には、誘電体層110〜115に形成された複数のスルーホールを介して共振器L53の開放端L53aと、導体層521が接続されている。導体層524には、誘電体層110〜115に形成された複数のスルーホールを介して共振器L54の開放端L54aと、導体層522が接続されている。また、誘電体層116には、複数のスルーホールが形成されている。
図7(c)に示した17層目の誘電体層117の上面には、位相線路用導体層611と、導体層よりなるグランド層902が形成されている。導体層611は、端子ANTに接続されている。導体層611には、誘電体層110〜116に形成された複数のスルーホールを介して導体層516が接続されている。グランド層902は、端子G1〜G11に接続されている。グランド層902には、誘電体層102〜116に形成された複数のスルーホールを介してグランド層901と、共振器L31,L32,L53,L54の各短絡端が接続されている。また、誘電体層117には、導体層611に接続されたスルーホールと、グランド層902に接続された複数のスルーホールと、その他のスルーホールが形成されている。
図8(a)に示した18層目の誘電体層118の上面には、キャパシタ用導体層211,212,213が形成されている。また、誘電体層118には、それぞれ導体層211,212,213に接続された3つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図8(b)に示した19層目の誘電体層119の上面には、キャパシタ用導体層214,215が形成されている。導体層214には、誘電体層118に形成されたスルーホールを介して導体層212が接続されている。また、誘電体層119には、導体層214に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図8(c)に示した20層目の誘電体層120の上面には、キャパシタ用導体層216,217と、位相線路用導体層621,632が形成されている。導体層216には、誘電体層118,119に形成された複数のスルーホールを介して導体層211が接続されている。導体層217には、誘電体層118,119に形成された複数のスルーホールを介して導体層213が接続されている。導体層621には、誘電体層117〜119に形成された複数のスルーホールを介して導体層611が接続されている。導体層632には、誘電体層112〜120に形成された複数のスルーホールを介して導体層631が接続されている。また、誘電体層120には、導体層621の一端および他端に接続された2つのスルーホールと、それぞれ導体層216,217,632に接続された3つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図9(a)に示した21層目の誘電体層121の上面には、導体層218と、位相線路用導体層622,633が形成されている。導体層218には、誘電体層118〜120に形成された複数のスルーホールを介して導体層211,216が接続されている。導体層622には、誘電体層120に形成されたスルーホールを介して導体層621の一端が接続されている。導体層633には、誘電体層120に形成されたスルーホールを介して導体層632が接続されている。また、誘電体層121には、導体層218の一端および他端に接続された2つのスルーホールと、それぞれ導体層622,633に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図9(b)に示した22層目の誘電体層122の上面には、位相線路用導体層623,634が形成されている。導体層623には、誘電体層121に形成されたスルーホールを介して導体層622が接続されている。導体層634の一端には、誘電体層121に形成されたスルーホールを介して導体層633が接続されている。導体層634の他端には、誘電体層120,121に形成された複数のスルーホールを介して導体層621の他端が接続されている。また、誘電体層122には、導体層623に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図9(c)に示した23層目の誘電体層123の上面には、導体層219と、位相線路用導体層624が形成されている。導体層219には、誘電体層117〜122に形成された複数のスルーホールを介してグランド層902が接続されている。導体層624の一端には、誘電体層122に形成されたスルーホールを介して導体層623が接続されている。導体層624の他端には、誘電体層121,122に形成された複数のスルーホールを介して導体層218が接続されている。また、誘電体層123には、導体層219に接続された3つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図10(a)に示した24層目の誘電体層124の上面には、それぞれ導体層よりなる共振器L21,L22,L23と、導体層207が形成されている。共振器L21は開放端L21aと短絡端L21bとを有している。共振器L22は開放端L22aと短絡端L22bとを有している。共振器L23は開放端L23aと短絡端L23bとを有している。共振器L21と共振器L22は、開放端L21a,L22a同士が近接し、短絡端L21b,L22b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L21,L22における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L21,L22はコムライン結合する。共振器L22と共振器L23は、開放端L22a,L23a同士が近接し、短絡端L22b,L23b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L22,L23における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L22,L23はコムライン結合する。
共振器L21,L22,L23は、いずれも、各々における開放端と短絡端とを結ぶ直線が、積層基板10の上面10Aおよび底面10Bにおいて平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が隣接する辺10A1,10B1に平行になるように配置されている。
共振器L21の開放端L21aには、誘電体層118〜123に形成された複数のスルーホールを介して導体層211,216,218が接続されている。共振器L22の開放端L22aには、誘電体層118〜123に形成された複数のスルーホールを介して導体層212,214が接続されている。共振器L23の開放端L23aには、誘電体層118〜123に形成された複数のスルーホールを介して導体層213,217が接続されている。共振器L21,L22,L23の各短絡端L21b,L22b,L23bには、誘電体層117〜123に形成された複数のスルーホールを介してグランド層902と、導体層219が接続されている。
導体層207は、共振器L23と端子Rx21とを接続する。導体層207は、図1における出力ポート20bに相当する。また、誘電体層124には、複数のスルーホールが形成されている。
図10(b)に示した25層目の誘電体層125の上面には、それぞれ導体層よりなる共振器L24,L25,L26と、導体層208が形成されている。共振器L24は開放端L24aと短絡端L24bとを有している。共振器L25は開放端L25aと短絡端L25bとを有している。共振器L26は開放端L26aと短絡端L26bとを有している。共振器L24と共振器L25は、開放端L24a,L25a同士が近接し、短絡端L24b,L25b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L24,L25における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L24,L25はコムライン結合する。共振器L25と共振器L26は、開放端L25a,L26a同士が近接し、短絡端L25b,L26b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L25,L26における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L25,L26はコムライン結合する。
共振器L24,L25,L26は、いずれも、各々における開放端と短絡端とを結ぶ直線が、積層基板10の上面10Aおよび底面10Bにおいて平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が隣接する辺10A1,10B1に平行になるように配置されている。
共振器L21と共振器L24は、開放端L21aと短絡端L24bが近接し、短絡端L21bと開放端L24aが近接するように、誘電体層124を介して対向している。従って、共振器L21,L24における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L21,L24はインターディジタル結合する。
共振器L22と共振器L25は、開放端L22aと短絡端L25bが近接し、短絡端L22bと開放端L25aが近接するように、誘電体層124を介して対向している。従って、共振器L22,L25における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L22,L25はインターディジタル結合する。
共振器L23と共振器L26は、開放端L23aと短絡端L26bが近接し、短絡端L23bと開放端L26aが近接するように、誘電体層124を介して対向している。従って、共振器L23,L26における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L23,L26はインターディジタル結合する。
導体層208は、共振器L26と端子Rx22とを接続する。導体層208は、図1における出力ポート20cに相当する。また、誘電体層125には、それぞれ共振器L24,L25,L26の各短絡端および各開放端に接続された6つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図10(c)に示した26層目の誘電体層126の上面には、導体層221が形成されている。導体層221には、誘電体層125に形成された3つのスルーホールを介して共振器L24,L25,L26の短絡端L24b,L25b,L26bが接続されている。また、誘電体層126には、導体層221に接続された3つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図11(a)に示したように、27層目および28層目の誘電体層127,128には、複数のスルーホールが形成されている。誘電体層127,128における複数のスルーホールの配置は同じである。
図11(b)に示した29層目の誘電体層129の上面には、キャパシタ用導体層222,223が形成されている。導体層222には、誘電体層125〜128に形成された複数のスルーホールを介して共振器L24の開放端L24aが接続されている。導体層223には、誘電体層125〜128に形成された複数のスルーホールを介して共振器L26の開放端L26aが接続されている。また、誘電体層129には、それぞれ導体層222,223に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図11(c)に示した30層目の誘電体層130の上面には、キャパシタ用導体層224,225が形成されている。導体層225には、誘電体層125〜129に形成された複数のスルーホールを介して共振器L25の開放端L25aが接続されている。また、誘電体層130には、導体層225に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図12(a)に示した31層目の誘電体層131の上面には、キャパシタ用導体層226,227,228が形成されている。導体層226には、誘電体層125〜130に形成された複数のスルーホールを介して共振器L24の開放端L24aと、導体層222が接続されている。導体層227には、誘電体層125〜130に形成された複数のスルーホールを介して共振器L25の開放端L25aと、導体層225が接続されている。導体層228には、誘電体層125〜130に形成された複数のスルーホールを介して共振器L26の開放端L26aと、導体層223が接続されている。また、誘電体層131には、複数のスルーホールが形成されている。
図12(b)に示した32層目の誘電体層132の上面には、導体層よりなるグランド層903が形成されている。グランド層903は、端子G1〜G11に接続されている。グランド層903には、誘電体層117〜131に形成された複数のスルーホールを介してグランド層902と、共振器L24,L25,L26の短絡端L24b,L25b,L26bと、導体層221が接続されている。
図12(c)に示したように、誘電体層132の下面、すなわち積層基板10の底面10Bには、各端子ANT,Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52,G1〜G11を構成する各導体層が形成されている。
図3ないし図12に示した誘電体層101〜132および複数の導体層が積層されて形成された積層体に対して、図2に示した複数の端子のうちの、側面10C,10D,10E,10Fに配置される部分を形成することによって、図2に示した積層基板10が形成される。
誘電体層101〜132の材料としては、樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料等、種々のものを用いることができる。積層基板10としては、特に、誘電体層101〜132の材料をセラミックとして低温同時焼成法によって作製したものが、高周波特性に優れるため好ましい。
図1に示したフィルタ20は、共振器L21,L22,L23,L24,L25,L26と、導体層207,208,211〜219,221〜228と、グランド層902,903と、誘電体層117〜131と、誘電体層117〜131に形成された複数のスルーホールとによって構成されている。
導体層211、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層117は、キャパシタC21を構成する。導体層212、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層117は、キャパシタC22を構成する。導体層213、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層117は、キャパシタC23を構成する。
導体層211,214およびこれらの間に配置された誘電体層118、ならびに、導体層214,216およびこれらの間に配置された誘電体層119は、キャパシタC41を構成する。導体層213,214およびこれらの間に配置された誘電体層118、ならびに、導体層214,217およびこれらの間に配置された誘電体層119は、キャパシタC42を構成する。導体層211,213,215およびこれらの間に配置された誘電体層118、ならびに、導体層215,216,217およびこれらの間に配置された誘電体層119は、キャパシタC43を構成する。
導体層226、グランド層903およびこれらの間に配置された誘電体層131は、キャパシタC24を構成する。導体層227、グランド層903およびこれらの間に配置された誘電体層131は、キャパシタC25を構成する。導体層226、グランド層903およびこれらの間に配置された誘電体層131は、キャパシタC26を構成する。
導体層222,225およびこれらの間に配置された誘電体層129、ならびに、導体層225,226およびこれらの間に配置された誘電体層130は、キャパシタC44を構成する。導体層223,225およびこれらの間に配置された誘電体層129、ならびに、導体層225,228およびこれらの間に配置された誘電体層130は、キャパシタC45を構成する。導体層222,223,224およびこれらの間に配置された誘電体層129、ならびに、導体層224,226,228およびこれらの間に配置された誘電体層130は、キャパシタC46を構成する。
図1に示したフィルタ30は、共振器L31,L32,L33,L34、導体層305,306,311〜314,321〜324と、グランド層901,902と、誘電体層102〜116と、誘電体層102〜116に形成された複数のスルーホールとによって構成されている。
導体層323、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層116は、キャパシタC31を構成する。導体層324、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層116は、キャパシタC32を構成する。導体層321,322およびこれらの間に配置された誘電体層114は、キャパシタC35を構成する。
導体層311、グランド層901およびこれらの間に配置された誘電体層102は、キャパシタC33を構成する。導体層312、グランド層901およびこれらの間に配置された誘電体層102は、キャパシタC34を構成する。導体層313,314およびこれらの間に配置された誘電体層104は、キャパシタC36を構成する。
図1に示したフィルタ50は、共振器L51,L52,L53,L54、導体層505,506,511〜516,521〜524と、グランド層901,902と、誘電体層102〜116と、誘電体層102〜116に形成された複数のスルーホールとによって構成されている。
導体層511、グランド層901およびこれらの間に配置された誘電体層102は、キャパシタC51を構成する。導体層512、グランド層901およびこれらの間に配置された誘電体層102は、キャパシタC52を構成する。導体層513,514およびこれらの間に配置された誘電体層104は、キャパシタC55を構成する。
導体層523、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層116は、キャパシタC53を構成する。導体層524、グランド層902およびこれらの間に配置された誘電体層116は、キャパシタC54を構成する。導体層521,522およびこれらの間に配置された誘電体層114は、キャパシタC56を構成する。
また、図1に示したキャパシタC57は、導体層515,516およびこれらの間に配置された誘電体層109によって構成されている。
図1に示した位相線路61は、導体層611によって構成されている。また、図1に示した位相線路62は、導体層621〜624と、これらを接続するスルーホールによって構成されている。また、図1に示した位相線路63は、導体層631〜634と、これらを接続するスルーホールによって構成されている。
位相線路61を構成する導体層611は、入力端子ANTに接続されている。また、導体層611は、スルーホールを介して位相線路62を構成する導体層621に接続されていると共に、導体層621およびスルーホールを介して位相線路63を構成する導体層634に接続されている。導体層611は、更に、スルーホールを介してキャパシタC57の一部を構成する導体層516に接続されている。
位相線路62を構成する導体層624は、導体層218およびスルーホールを介して、フィルタ20における共振器L21に接続されていると共に、フィルタ20におけるキャパシタC21,C41,C43の一部を構成する導体層211,216に接続されている。位相線路63を構成する導体層631は、スルーホールを介して、フィルタ30における共振器L31に接続されていると共に、フィルタ30におけるキャパシタC31,C35の一部を構成する導体層321,323に接続されている。
以下、本実施の形態に係るトリプレクサ1の効果について説明する。まず、本実施の形態に係るトリプレクサ1によれば、入力端子ANTに入力される周波数帯域の異なる3つの信号を分離して、それぞれに対応する平衡出力端子より平衡信号として出力することができる。そのため、トリプレクサと、トリプレクサの後段に設けられ、平衡信号の形態の3つの受信信号が入力される信号処理回路(例えば1つの集積回路)とを含む無線通信装置において、本実施の形態に係るトリプレクサ1を用いた場合には、トリプレクサ1と信号処理回路との間に3つのバランを設ける必要がなくなり、無線通信装置の小型化が可能になる。
また、本実施の形態では、フィルタ20,30,50が、それぞれ、インターディジタル結合する一対の出力用共振器を有することにより、トリプレクサ1内に別途バランを設けることなく、トリプレクサ1より、第1ないし第3の平衡信号を出力することができる。また、フィルタ20,30,50は、いずれも積層基板10の内部に設けられている。これらのことから、本実施の形態によれば、平衡出力型トリプレクサ1の小型化が可能になる。
また、本実施の形態では、フィルタ20,30,50が、それぞれ、インターディジタル結合する一対の出力用共振器を有することにより、前述のように共振器の小型化が可能になる。この点からも、本実施の形態によれば、平衡出力型トリプレクサ1の小型化が可能になる。
また、本実施の形態では、全ての平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が、上面10Aと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10A1と、底面10Bと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10B1とに隣接するように配置されている。なお、平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52は、辺10A1と辺10B1の一方のみに隣接するように配置されていてもよい。各平衡出力端子は、トリプレクサ1から出力される第1ないし第3の平衡信号を処理する信号処理回路(例えば1つの集積回路)における対応する平衡入力端子に接続される。このとき、本実施の形態によれば、全ての平衡出力端子が一つの辺に隣接するように配置されていることから、全ての平衡出力端子と、それに対応する信号処理回路における複数の平衡入力端子との接続が容易になる。また、本実施の形態によれば、全ての平衡出力端子と、それに対応する信号処理回路における複数の平衡入力端子とを、それぞれ短い信号経路で接続し、且つ複数の信号経路間における長さのばらつきを抑えることが可能になる。例えば、信号処理回路において、トリプレクサ1の複数の平衡出力端子に対応する複数の平衡入力端子が、複数の平衡出力端子と同じ順序で一列に配列されている場合には、複数の平衡出力端子と複数の平衡入力端子とを対向させて、これらを極めて短い信号経路で接続することが可能になる。以上のことから、本実施の形態によれば、平衡信号のレベルの低下や平衡特性の劣化を防止することができる。
次に、図13を参照して、本実施の形態における積層基板10内の第1ないし第3のフィルタ20,30,50の配置に関する特徴について説明する。図13は、積層基板10内のフィルタ20,30,50の配置を簡略化して示す斜視図である。積層基板10は、3つのグランド層901,902,903を有している。グランド層901,902,903は、いずれも、グランド端子G1〜G11に接続され、このグランド端子G1〜G11を介して、外部のグランドに接続される。グランド層901は、積層基板10の上面10Aの近傍に配置されている。グランド層903は、積層基板10の底面10Bの近傍に配置されている。グランド層902は、積層基板10内において、グランド層901,903の間に配置されている。これにより、図13に示したように、積層基板10内にグランド層902を挟む第1の領域201と第2の領域202が形成されている。第1の領域201は、グランド層902とグランド層903の間の領域である。第2の領域202は、グランド層901とグランド層902の間の領域である。
第1の領域201には、第1のフィルタ20が配置され、第2の領域202には、第2のフィルタ30および第3のフィルタ50が配置されている。図13において、符号220,230,250で示した3つの領域は、それぞれ、フィルタ20,30,50が配置されている領域を表している。第2フィルタ30と第3のフィルタ50は、第2の領域202内において、水平方向に隣接する別個の領域230,250に配置されている。
上述のように、第1の領域201に第1のフィルタ20を配置し、第2の領域202に第2のフィルタ30および第3のフィルタ50を配置することには、以下のような利点がある。本実施の形態のように、それぞれ複数の共振器を用いてフィルタ20,30,50を構成する場合、通過帯域の低いフィルタほど大きな共振器を必要とする。従って、フィルタ20,30,50の中では、フィルタ20が、最も大きな共振器を必要とし、その結果、フィルタ全体のサイズも最も大きくなる。この場合、最もサイズの大きなフィルタ20を1つの領域201内に配置し、フィルタ20よりもサイズが小さい2つのフィルタ30,50を、他の1つの領域202内に配置することにより、積層基板10内の空間を有効に利用でき、その結果、積層基板10の小型化が可能になる。
また、本実施の形態では、図13に示したように、それぞれフィルタ20,30,50が配置された3つの領域220,230,250は、側面10Cに垂直な方向から見て、互いに重ならない位置に配置されている。すなわち、3つの領域220,230,250のうちの1つと側面10Cとの間には、他の2つの領域の一部または全部は介在していない。これにより、本実施の形態によれば、全ての平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52を、容易に、上面10Aと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10A1と、底面10Bと側面10Cとの間の稜線によって構成された1つの辺10B1とに隣接するように配置することができる。更に、本実施の形態によれば、各フィルタと、それに対応する一対の平衡出力端子との間の信号経路を、いずれも短くすることができる。そのため、本実施の形態によれば、第1ないし第3の平衡信号のレベルの低下や平衡特性の劣化を防止することができる。
本実施の形態では、上面10Aと底面10Bの各々において、全ての平衡出力端子Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52が1つの辺(辺10A1または辺10B1)に隣接するように配置されている。この場合、全ての平衡出力端子が隣接する辺に、平衡出力端子以外の1つ以上の端子が隣接していると、その辺の長さを大きくする必要が生じ、その結果、トリプレクサ1の小型化が困難になる。本実施の形態では、上面10Aと底面10Bの各々において、平衡出力端子以外の全ての端子は、全ての平衡出力端子が隣接する辺とは異なる辺に隣接するように配置されている。これにより、本実施の形態によれば、トリプレクサ1の小型化が可能になる。なお、トリプレクサ1では、本来的に、第1ないし第3の平衡出力端子間のアイソレーションが大きくなるように設計されるため、第1ないし第3の平衡出力端子間にグランド端子を配置する等によって第1ないし第3の平衡出力端子間の距離を大きくする必要性は低い。
また、本実施の形態では、フィルタ20,30,50の各々における一対の出力用共振器は、各々における開放端と短絡端とを結ぶ直線が、第1ないし第3の平衡出力端子が隣接する辺10A1,10B1に平行になるように配置されている。これにより、本実施の形態によれば、各出力用共振器の全体を、それに対応する平衡出力端子に近づけることが可能になり、その結果、各出力用共振器と、それに対応する平衡出力端子との接続が容易になる。
次に、本実施の形態に係るトリプレクサ1の実施例について説明する。実施例では、第1のフィルタ20の通過帯域を2.3〜2.69GHzとし、第2のフィルタ30の通過帯域を3.4〜3.8GHzとし、第3のフィルタ50の通過帯域を5.15〜5.875GHzとした。以下、この実施例のトリプレクサ1の特性について説明する。
まず、図14ないし図19を参照して、実施例のトリプレクサ1における入力端子ANTと第1の平衡出力端子Rx21,Rx22の間の信号経路の特性について説明する。図14は、入力端子ANTと第1の平衡出力端子Rx21,Rx22の間の信号経路の通過減衰特性を示している。図15は、図14における一部を拡大して示したものである。図16は、入力端子ANTにおける反射減衰特性のうち、第1のフィルタ20の通過帯域を含む周波数範囲における特性を示している。図17は、第1の平衡出力端子Rx21,Rx22における反射減衰特性を示している。図18は、第1の平衡出力端子Rx21,Rx22の出力信号間における振幅差の周波数特性を示している。図19は、第1の平衡出力端子Rx21,Rx22の出力信号間における位相差の周波数特性を示している。図14ないし図19における横軸は周波数を示している。図14および図15における縦軸は通過減衰量を示している。図16および図17における縦軸は反射減衰量を示している。図18における縦軸は振幅差を示している。図19における縦軸は位相差を示している。
図14ないし図17から、実施例のトリプレクサ1では、第1のフィルタ20が通過帯域(2.3〜2.69GHz)内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能していることが分かる。また、図18および図19に示したように、第1のフィルタ20の通過帯域(2.3〜2.69GHz)において、平衡出力端子Rx21,Rx22の出力信号間の振幅差はほぼ0であり、平衡出力端子Rx21,Rx22の出力信号間の位相差はほぼ180°である。このことから、第1のフィルタ20の通過帯域(2.3〜2.69GHz)において、平衡出力端子Rx21,Rx22から平衡特性の良好な平衡信号が得られることが分かる。
次に、図20ないし図25を参照して、実施例のトリプレクサ1における入力端子ANTと第2の平衡出力端子Rx31,Rx32の間の信号経路の特性について説明する。図20は、入力端子ANTと第2の平衡出力端子Rx31,Rx32の間の信号経路の通過減衰特性を示している。図21は、図20における一部を拡大して示したものである。図22は、入力端子ANTにおける反射減衰特性のうち、第2のフィルタ30の通過帯域を含む周波数範囲における特性を示している。図23は、第2の平衡出力端子Rx31,Rx32における反射減衰特性を示している。図24は、第2の平衡出力端子Rx31,Rx32の出力信号間における振幅差の周波数特性を示している。図25は、第2の平衡出力端子Rx31,Rx32の出力信号間における位相差の周波数特性を示している。図20ないし図25における横軸は周波数を示している。図20および図21における縦軸は通過減衰量を示している。図22および図23における縦軸は反射減衰量を示している。図24における縦軸は振幅差を示している。図25における縦軸は位相差を示している。
図20ないし図23から、実施例のトリプレクサ1では、第2のフィルタ30が通過帯域(3.4〜3.8GHz)内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能していることが分かる。また、図24および図25に示したように、第2のフィルタ30の通過帯域(3.4〜3.8GHz)において、平衡出力端子Rx31,Rx32の出力信号間の振幅差はほぼ0であり、平衡出力端子Rx31,Rx32の出力信号間の位相差はほぼ180°である。このことから、第2のフィルタ30の通過帯域(3.4〜3.8GHz)において、平衡出力端子Rx31,Rx32から平衡特性の良好な平衡信号が得られることが分かる。
次に、図26ないし図31を参照して、実施例のトリプレクサ1における入力端子ANTと第3の平衡出力端子Rx51,Rx52の間の信号経路の特性について説明する。図26は、入力端子ANTと第3の平衡出力端子Rx51,Rx52の間の信号経路の通過減衰特性を示している。図27は、図26における一部を拡大して示したものである。図28は、入力端子ANTにおける反射減衰特性のうち、第3のフィルタ50の通過帯域を含む周波数範囲における特性を示している。図29は、第3の平衡出力端子Rx51,Rx52における反射減衰特性を示している。図30は、第3の平衡出力端子Rx51,Rx52の出力信号間における振幅差の周波数特性を示している。図31は、第3の平衡出力端子Rx51,Rx52の出力信号間における位相差の周波数特性を示している。図26ないし図31における横軸は周波数を示している。図26および図27における縦軸は通過減衰量を示している。図28および図29における縦軸は反射減衰量を示している。図30における縦軸は振幅差を示している。図31における縦軸は位相差を示している。
図26ないし図29から、実施例のトリプレクサ1では、第3のフィルタ50が通過帯域(5.15〜5.875GHz)内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能していることが分かる。また、図30および図31に示したように、第3のフィルタ50の通過帯域(5.15〜5.875GHz)において、平衡出力端子Rx51,Rx52の出力信号間の振幅差はほぼ0であり、平衡出力端子Rx51,Rx52の出力信号間の位相差はほぼ180°である。このことから、第3のフィルタ50の通過帯域(5.15〜5.875GHz)において、平衡出力端子Rx51,Rx52から平衡特性の良好な平衡信号が得られることが分かる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、フィルタ20は、フィルタ30,50と同様に、一対の共振器L22,L25を設けずに、一対の入力用共振器L21,L24と一対の出力用共振器L23,L26が直接結合する構成であってもよい。あるいは、フィルタ20は、一対の入力用共振器L21,L24と一対の出力用共振器L23,L26の間に、二対以上の共振器が設けられて、一対の入力用共振器L21,L24と一対の出力用共振器L23,L26が、二対以上の共振器を介して結合する構成であってもよい。また、フィルタ30,50は、一対の入力用共振器と一対の出力用共振器の間に、他の一対以上の共振器が設けられて、一対の入力用共振器と一対の出力用共振器が、他の一対以上の共振器を介して結合する構成であってもよい。
また、入力端子ANTから第1ないし第3の平衡出力端子に至る第1ないし第3の信号経路のインピーダンス特性を調整する手段は、図1に示したように配置された位相線路61,62,62およびキャパシタC57に限らず、第1ないし第3の信号経路の特性に応じて、適宜、設計することができる。
1…平衡出力型トリプレクサ、10…積層基板、20,30,50…フィルタ、Rx21,Rx22,Rx31,Rx32,Rx51,Rx52…平衡出力端子、L21〜L23,L41〜L43,L31〜L34,L51〜L54…共振器。