JP2010110914A - ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜およびその製造方法ならびに防水通気フィルタ - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜およびその製造方法ならびに防水通気フィルタ Download PDF

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Abstract

【課題】多孔質層同士の剥離が生じ難い積層構造を有するPTFE多孔質膜を製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】標準比重が2.16以上のPTFEからなる第1未焼成シートと標準比重が2.16未満のPTFEからなる第2未焼成シートとを積層し、この積層体に圧力を加えて圧着物を得る。この圧着物をPTFEの融点未満の温度で所定方向に延伸した後に、さらにPTFEの融点以上の温度で前記所定方向に延伸するまたはPTFEの融点以上の温度に加熱する。その後、所定方向に延伸された圧着物をPTFEの融点未満の温度で前記所定方向と直交する幅方向に延伸する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)多孔質膜およびその製造方法ならびに防水通気フィルタに関する。
従来、例えば自動車電装部品、OA(オフィスオートメーション)機器、家電製品、医療機器などでは、電子部品や制御基板などを収容する筐体の内部と外部の圧力差を解消するために、防水通気フィルタが用いられている。この防水通気フィルタは、筐体に設けられた開口を塞ぐように筐体に取り付けられて、通気を確保しつつ防塵および防水を図るものである。このような防水通気フィルタには、PTFE多孔質膜がよく用いられる。
防水通気フィルタに用いられるPTFE多孔質膜は、防水性を確保するためには耐水圧が高いことが好ましく、圧力差を解消するためには通気性が高いことが好ましい。
一般に、PTFE多孔質膜は、PTFEからなる未焼成シートを延伸することにより得られる。PTFE多孔質膜の通気性を高くするには、延伸倍率を大きくすればよいが、その分だけ耐水圧が低下してしまう。このように、通気性と耐水圧のバランスが取れたPTFE多孔質膜を製造することは、この分野では困難な技術の一つである。
また、防水通気フィルタでは、一般的にPTFE多孔質膜に不織布などの支持材をラミネートして補強を行い、その支持材を筐体に溶着させることもよく行われる。この場合、溶着の際に溶けた支持材がPTFE多孔質膜にダメージを与えることがある。これに対しては、PTFE多孔質膜の膜厚を厚くすることが効果的であるが、このようにすると通気性が低下する。以上説明したように、膜厚が厚く、通気性および耐水圧が高いPTFE多孔質膜を得るには、単一の膜構造では難しい。
ところで、例えば特許文献1に開示されているように、エアフィルタ濾材として用いるPTFE多孔質膜については、目詰まりを防ぐために、PTFE多孔質層が積層された積層構造を有するPTFE多孔質膜が提案されている。
特開2005−205305号公報
例えば、高い耐水圧を得るための緻密な構造の多孔質層を通気性を阻害しない程度に薄く作製し、これを通気性が高く厚い多孔質層に積層すれば、膜厚が厚く、通気性および耐水圧が高いPTFE多孔質膜が得られる。
ところが、特許文献1に開示されているように、多孔質層をそれぞれ別々に作製し、これらを重ね合わせて焼成したり接着剤で貼り合わせたりしただけでは、多孔質層同士の接合力が弱く、それらが剥離し易くなる。例えば、PTFE多孔質膜に不織布をラミネートしたりカットしたりするときなどに、多孔質層同士の剥離が生じることがある。
本発明は、このような事情に鑑み、多孔質層同士の剥離が生じ難い積層構造を有するPTFE多孔質膜を製造することができる製造方法、およびこの製造方法により製造されるPTFE多孔質膜、ならびにこのPTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタを提供することを目的とする。
本発明の発明者は、PTFEからなる未焼成シートを複数枚用意し、これらを圧着させた後に、この圧着物を延伸させてそれぞれの未焼成シートを多孔質層にすれば、多孔質層同士の接合力を強くできるのではないかと考えた。
さらに、発明者は、同一の延伸倍率とした場合でも、分子量が小さいPTFEを用いたときには高い通気性が得られ、分子量が大きいPTFEを用いたときには高い耐水圧が得られることを見出した。そして、上記のように複数枚の未焼成シートを同時に延伸させる場合には、分子量が小さいPTFEと分子量が大きいPTFEを用いて種類の異なる複数枚の未焼成シートを作製することが、所望のPTFE多孔質膜を得るのに有効であることを思い付いた。
分子量が小さいPTFEとしては、標準比重が2.16以上のPTFEが好適に用いられ、分子量が大きいPTFEとしては、標準比重が2.16未満のPTFEが好適に用いられる。ここで、標準比重(Standard Specific Gravity)とは、SSGとも称され、JIS K 6892に規定される物理測定法により測定される比重であり、分子量と逆の関係にある(分子量と負の相関を示す)ものである。
しかし、種々の標準比重のPTFEを用いて種類の異なる複数枚の未焼成シートを作製した場合には、上記のようにそれらを圧着させた後に延伸させたとしても、多孔質層同士の結合力はあまり強くならない。その原因については不明な点もあるが、高い通気性を有する層は一般的に気孔率が高く、高い耐水圧を有する層は緻密であるために、双方の層の構造が異なることにより、層同士の密着部分が少ないことが原因と考えられる。さらには、これらの層の繊維同士が圧着時に絡み合わないことも要因の1つとも考えられる。
本発明は、このような観点からなされたものであり、標準比重が2.16以上のPTFEからなる第1未焼成シートと標準比重が2.16未満のPTFEからなる第2未焼成シートとを積層し、この積層体に圧力を加えて圧着物を得る工程と、前記圧着物をPTFEの融点未満の温度で所定方向に延伸した後に、さらにPTFEの融点以上の温度で前記所定方向に延伸するまたはPTFEの融点以上の温度に加熱する工程と、前記所定方向に延伸された前記圧着物を前記所定方向と直交する幅方向に延伸する工程と、を含むPTFE多孔質膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、互いに繊維構造の異なる第1のPTFE多孔質層と第2のPTFE多孔質層とが積層された積層構造を有し、膜厚が20μm以上、通気量がガーレー数で表示して10sec/100mL以下、JIS L1092−B(高水圧法)に基づいて測定した耐水圧が200kPa以上、直交する2方向およびそれらの方向と45度をなす方向における前記多孔質層間の剥離強度が0.1N/cm以上である、PTFE多孔質膜を提供する。
ここで、PTFE多孔質膜に対して図2に示すような方法で剥離試験を行うと、図3に示すように剥離が始まる初期には引き剥がし力が場合によっては大きくなるが、引き剥がしを続けていくと引き剥がし力が安定するようになる。本発明では、このときの引き剥がし力(N)(図3中の点a参照)を引き剥がし方向と直交する幅方向におけるPTFE多孔質膜の幅(cm)で割った値を、剥離強度と定義する。
さらに、本発明は、通気を確保しつつ水の浸入を防止するための多孔性の基材を備えた防水通気フィルタであって、前記基材が上記のPTFE多孔質膜を含む防水通気フィルタを提供する。
本発明によれば、多孔質層同士の剥離が生じ難い積層構造を有するPTFE多孔質膜を得ることができる。
以下、本発明のPTFE多孔質膜の製造方法について説明する。この製造方法は、例えば図1に示すような第1のPTFE多孔質層1と第2のPTFE多孔質層2とが積層された積層構造を有するPTFE多孔質膜3を得るためのものである。第1のPTFE多孔質層1は、相対的に粗い繊維構造により通気性に優れたものであり、標準比重が2.16以上のPTFEからなる第1未焼成シートから作製される。第2のPTFE多孔質層2は、相対的に細かい繊維構造により耐水圧に優れたものであり、標準比重が2.16未満のPTFEからなる第2未焼成シートから作製される。
なお、本発明のPTFE多孔質膜は、第1のPTFE多孔質層1と第2のPTFE多孔質層2を少なくとも1層ずつ含んでいればよく、総層数は3以上であってもよい。例えば、第2のPTFE多孔質層2が第1のPTFE多孔質層1で挟まれていてもよいし、一方の多孔質層1(または2)の片側に、他方の多孔質層2(または1)が2層または3層以上積層されていてもよい。PTFE多孔質膜3は、そのままの状態で防水通気フィルタの基材として用いてもよいが、どちらかの多孔質層1(または2)の表面に不織布などの支持材をさらに積層して、防水通気フィルタの基材としてもよい。
PTFE多孔質膜3は、20μm以上の膜厚を有することが好ましい。ダメージを受け難くするためである。より好ましい膜厚は、25〜50μmである。また、PTFE多孔質膜3は、ガーレー数で表示して10sec/100mL以下の通気量、およびJIS L1092−B(高水圧法)に基づく測定値により表示して200kPa以上の耐水圧を有することが好ましい。より好ましい通気量は、4〜8sec/100mLであり、より好ましい耐水圧は、280〜350kPaである。
さらに、PTFE多孔質膜3では、多孔質層1,2間の剥離強度が、直交する2方向およびそれらの方向と45度をなす方向の3方向において、0.1N/cm以上であることが好ましい。PTFE多孔質膜3では、後述する製造時における長手方向(縦方向)および幅方向(横方向)と45度をなす斜め方向における剥離強度が最も弱くなりやすいため、上記のような3方向の剥離強度が0.1N/cm以上であれば、任意の方向において十分な剥離強度があると判断でき、実際の生産工程においても多孔質層1,2間の剥離がほとんど生じなくなる。より好ましい剥離強度は、上記の3方向において、0.2〜0.5N/cmである。
上記のようなPTFE多孔質膜3を製造するには、まず、標準比重が2.16以上、好ましくは2.17以上、の第1のPTFEを用いて、例えば厚さが0.15〜0.3mmの第1未焼成シートを作製する。具体的には、PTFE微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物を押出法および圧延法の少なくとも1つの方法により所定方向に延びるシート状に成形してシート状成形体を得る。例えば、液状潤滑剤を加えたPTFE微粉末をシリンダーで圧縮して予備成型し、これをラム押出機で押し出してシート状に成形した後に、ロール対を用いて通常は常温で延伸に適した厚みに圧延する。その後、加熱法または抽出法によりシート状成形体から液状潤滑剤を除去し、第1未焼成シートを得る。
第1のPTFEとしては、旭硝子社製のフルオンCD−014(標準比重2.20),フルオンCD−1(標準比重2.20),フルオンCD−145(標準比重2.19)、ダイキン工業社製のポリフロンF−104(標準比重2.17),ポリフロンF−106(標準比重2.16)、三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン6−J(標準比重2.21),テフロン65−N(標準比重2.16)などが挙げられる。
液状潤滑剤は、PTFE微粉末を濡らすことができ、蒸発や抽出などの方法によって除去できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、炭化水素類の流動パラフィン、ナフサ、トルエン、キシレンが挙げられ、他にもアルコール類、ケトン類、エステル類、フッ素系溶剤が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物を使用してもよい。潤滑剤の添加量は、シート状成形体の成形方法によって異なるが、通常、PTFE微粉末100重量部に対して約5〜50重量部である。
次に、標準比重が2.16未満、好ましくは2.155以下、の第2のPTFEを用いて、例えば厚さが0.12〜0.2mmの第2未焼成シートを作製する。ただし、第2未焼成シートの厚みは、第1未焼成シートの厚みよりも薄いことが好ましい。この第2未焼成シートの作製は、第1未焼成シートの作製と同様にして行うため、詳細な説明は省略する。
第2のPTFEとしては、旭硝子社製のフルオンCD−123(標準比重2.155)、ダイキン工業社製のポリフロンF−101HE(標準比重2.142)などが挙げられる。
第1未焼成シートと第2未焼成シートを作製した後は、これらを少なくとも1枚ずつ積層し、この積層体に圧力を加えることにより第1未焼成シートと第2未焼成シートとを一体化して圧着物を得る。この圧着物を得るための方法や圧力は特に限定されないが、例えば、PTFEの融点(327℃)未満の温度でロール対間を通過させてもよいし、プレスしてもよい。また、一体化の程度は、単純な巻き取りなどの操作でも第1未焼成シートと第2未焼成シートとが見かけ上離れない程度で十分である。
次に、上記のようにして得られた圧着物を、まずPTFEの融点未満の温度で前記所定方向(長手方向)に延伸する。このときの延伸倍率は、1.5〜15倍が好ましい。15倍よりも高い倍率では、繊維(フィブリル)の破断が起こり、1.5倍よりも低い倍率では、第1未焼成シートおよび第2未焼成シートが繊維化しないからである。より好ましい延伸倍率は、2〜10倍である。また、延伸時の温度は、250〜300℃が好ましい。
その後、圧着物を、PTFEの融点以上の温度で長手方向に延伸する。ここで、延伸とは、圧着物の長さ変化を生じさせる作業のことであり、本工程での延伸倍率は、1倍を除く0.8〜10倍、すなわち0.8倍以上1倍未満または1倍を超え10倍以下が好ましい。10倍よりも高い倍率では、繊維(フィブリル)の破断が起こり、0.8倍よりも低い倍率では、圧着物にシワが発生するおそれがあるからである。ここで、1より小さい倍率での延伸は、「戻し」と呼ばれることもある。なお、一旦1倍を超える倍率で延伸した後に戻しをかけることにより、トータルの延伸倍率を0.8〜10倍の範囲内に収めるようにしてもよい。戻しをかけるには、例えば、圧着物がかけ回された2本の搬送ロールの回転速度を、搬送方向下流側の搬送ロールの回転速度が搬送方向上流側の搬送ロールの回転速度よりも遅くなるように調整すればよい。PTFEの融点以上の温度での長手方向への延伸のより好ましい延伸倍率は、0.8〜5である。また、延伸時の温度は、350〜400℃が好ましい。
なお、PTFE多孔質膜に求められる要求特性によっては、PTFEの融点未満の温度で延伸された圧着物を、PTFEの融点以上の温度で長手方向に延伸せずに、PTFEの融点以上の温度に加熱するだけでもよい。この場合の加熱温度は、350〜400℃が好ましい。
上記のように、PTFEの融点未満の温度で延伸し、引き続き同じ方向にPTFEの融点以上の温度で延伸するまたはPTFEの融点以上の温度に加熱することにより、異なる樹脂からなるPTFEの繊維同士が絡み合い、この状態が固定されるものと考えられる。
長手方向への延伸が終了した後は、圧着物を、PTFEの融点未満の温度で長手方向と直交する幅方向に延伸する。このときの延伸倍率は、4〜30倍が好ましい。30倍よりも高い倍率では、繊維(フィブリル)の破断が起こり、4倍よりも低い倍率では、長手方向で延伸した際に出来るフィブリルが伸びずに目的とする通気性の膜が得られないからである。より好ましい延伸倍率は、4〜25倍である。また、延伸時の温度は、第1未焼成シートおよび第2未焼成シートが伸びやすい温度である40℃以上が好ましく、130〜150℃がより好ましい。
最後に、幅方向に延伸された圧着物に対して熱固定を行う。熱固定の方法は特に限定されないが、例えば圧着物を300℃以上、場合によってPTFEの融点以上にヒーターで加熱したり、あるいは圧着物に熱風を当てたりするようにしてもよい。
なお、幅方向への延伸の前に圧着物が十分に焼成され、幅方向への延伸後に大きな寸法変化が見られない場合、あるいは幅方向への延伸後に直ちに不織布などの支持材に圧着物が貼り合わされて、実質的に寸法変化が起こらない場合は、熱固定を省略してもよい。
以上の工程により、第1未焼成シートが第1のPTFE多孔質層1になり、第2未焼成シートが第2のPTFE多孔質層2になって、多孔質層1,2同士の剥離が生じ難いPTFE多孔質膜3が得られる。このようなPTFE多孔質膜3は、防水通気フィルタにおける通気を確保しつつ水の進入を防止するための基材に好適である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。本実施例では、通気量、耐水圧、剥離強度を比較特性とし、これらは、以下に示す方法で測定した。
通気量については、得られたPTFE多孔質膜の3点を直径45mmで打ち抜き、これの通気量をJIS P8117(ガーレー法)に基づいて測定し、その平均値を算出した。
耐水圧については、得られたPTFE多孔質膜の3点を直径45mmで打ち抜き、これらの耐水圧をJIS L1092−B(高水圧法)に基づいて測定し、その平均値を算出した。
剥離強度については、剥離強度試験を行った。まず、得られたPTFE多孔質膜から、短冊状(長さ100mm、幅10mm)の3つのサンプル、すなわち、PTFE多孔質膜の長手方向に延びるサンプルと、PTFE多孔質膜の幅方向に延びるサンプルと、PTFE多孔質膜の長手方向に対して45度をなす斜め方向に延びるサンプルと、を切り出した。次に、図2に示すように、それらのサンプル30の一方面をステンレス板5に両面テープ4で接着するとともに、サンプル30の長手方向の一端(図2では右側の端)の他方面側にポリエステルフィルム7の一端を両面テープ6で接着する。そして、ポリエステルフィルム7を裏返した状態で、25℃で、ポリエステルフィルム7の他端を200mm/minの速度でサンプル30の長手方向の一端から他端に向かう方向(図2では左方)に引っ張って、引き剥がし力(引張力)を測定して剥離強度を算出した。これを3回行って、その平均値を算出した。
(実施例1)
通気性の高い第1のPTFE多孔質層を作るために、旭硝子社製のCD−145(標準比重2.19)を用いて、上述した方法により厚み0.2mmの第1未焼成シートを作製した。一方、耐水圧の高い第2のPTFE多孔質層を作るために、ダイキン工業社製のポリフロンF−101HE(標準比重2.142)を用いて、上述した方法により厚み0.15mmの第2未焼成シートを作製した。これらを重ね合わせた状態で、常温でロール対により0.1MPaの圧力をかけてそれらを一体化させて圧着物を得た。この圧着物を、まず280℃で長手方向(圧延方向)へ7倍に延伸した後に、360℃でさらに長手方向へ1.6倍に延伸し、ついで150℃で幅方向へ12倍に延伸して、膜厚が35μmのPTFE多孔質膜を得た。
(実施例2)
旭硝子社製のCD−145(標準比重2.19)の代わりにダイキン工業社製のポリフロンF−104(標準比重2.17)を用いた以外は実施例1と同様にして、膜厚が33μmのPTFE多孔質膜を得た。
(実施例3)
圧着物を得るまでは、実施例2と同様にして、実施例2と同一の圧着物を得た。この圧着物を、280℃で長手方向へ7倍に延伸した。その後に、2回目の長手方向への延伸として、一度延伸された圧着物を、まず360℃で長手方向へ2.0倍に延伸した後、さらに0.8倍の戻しをかけて、2回目の長手方向への延伸倍率をトータルで1.6倍とした。ついで150℃で幅方向へ12倍に延伸して、膜厚が40μmのPTFE多孔質膜を得た。
(比較例1)
通気性の高い第1のPTFE多孔質層を作るために、ダイキン工業社製のポリフロンF−104(標準比重2.17)を用いて、常法により厚み0.2mmの第1未焼成シートを作製した。一方、耐水圧の高い第2のPTFE多孔質層を作るために、ダイキン工業社製のポリフロンF−101HE(標準比重2.142)を用いて、常法により厚み0.15mmの第2未焼成シートを作製した。これらを、それぞれ単独で、まず280℃で長手方向へ7倍に延伸した後に、360℃でさらに長手方向へ1.6倍に延伸した。ついで、延伸された第1未焼成シートと第2未焼成シートを重ねた状態で、150℃で幅方向へ12倍に延伸して、膜厚が36μmのPTFE多孔質膜を得た。
(比較例2)
第1未焼成シートおよび第2未焼成シートを得るまでは、比較例1と同様にして、比較例1と同一の第1未焼成シートおよび第2未焼成シートを得た。これらを、それぞれ単独で、280℃で長手方向へ11.2倍に延伸した。ついで、延伸された第1未焼成シートと第2未焼成シートを重ねた状態で、150℃で幅方向へ12倍に延伸した後、その積層体に400℃の熱風を1分ほど当てて熱固定を行い、膜厚が13μmのPTFE多孔質膜を得た。なお、比較例1と比べると、膜厚が1/3程度となっているが、これは比較例2では熱固定を行っていることと延伸時の温度がPTFEの融点以上になっていないことに起因している。
(比較例3)
旭硝子社製のCD−145(標準比重2.19)を用いて、常法により厚み0.2mmの未焼成シートを2枚作製した。これらを重ね合わせた状態で、常温でロール対により0.15kPaの圧力をかけてそれらを一体化させて圧着物を得た。この圧着物を、280℃で長手方向へ15倍に延伸した後に、170℃で幅方向へ20倍に延伸し、ついで400℃で1分間熱処理を行い、膜厚が11μmのPTFE多孔質膜を得た。
(比較例4)
2枚の未焼成シートのうちの一方を、ダイキン工業社製のポリフロンF−101HE(標準比重2.142)を用いて作製した以外は比較例3と同様にして、膜厚が12μmのPTFE多孔質膜を得た。
(比較例5)
旭硝子社製のCD−145(標準比重2.19)を用いて、常法により厚み0.2mmの未焼成シートを2枚作製した。これらを重ね合わせた状態で、常温でロール対により0.1MPaの圧力をかけてそれらを一体化させて圧着物を得た。この圧着物を、まず280℃で長手方向へ7倍に延伸した後に、360℃でさらに長手方向へ1.6倍に延伸し、ついで150℃で幅方向へ12倍に延伸して、膜厚が33μmのPTFE多孔質膜を得た。
(特性の比較)
実施例1〜3および比較例1〜5の特性値を表1に示す。
Figure 2010110914
表1から、実施例1〜3のPTFE多孔質膜は、通気性および耐水圧が共に高く、かつ、3つの方向における剥離強度が全て0.1N/cmを上回っていることが分かる。
これに対し、未焼成シートを別々に長手方向に延伸した比較例1,2では、剥離強度が低くなっている。さらに、圧着物をPTFEの融点未満で延伸する比較例3,4と実施例1〜3との対比から、強い剥離強度を得るためには、圧着物をPTFEの融点以上の温度で延伸することが重要であることが分かる。また、比較例5の結果から、標準比重が2.16を上回るPTFEを用いて2層構造としただけでは、高い耐水圧が得られないことが分かる。
さらに、本発明の製造方法により得られるPTFE多孔質膜の構造を確認するために、実施例1のPTFE多孔質膜を切断し、その断面を撮影した。その顕微鏡写真を図4に示す。図4の顕微鏡写真から、第1のPTFE多孔質層は相対的に粗い繊維構造を有し、第2のPTFE多孔質層は相対的に細かい繊維構造を有していることが分かる。
本発明のPTFE多孔質膜の一例を示す断面図である。 剥離強度を測定するための剥離試験を説明する説明図である。 図2に示す引き剥がし方法を行ったときの剥離距離と引き剥がし力の関係を示すグラフである。 実施例1のPTFE多孔質膜の断面を撮影した顕微鏡写真である。
符号の説明
1 第1のPTFE多孔質層
2 第2のPTFE多孔質層
3 PTFE多孔質膜

Claims (8)

  1. 標準比重が2.16以上のポリテトラフルオロエチレンからなる第1未焼成シートと標準比重が2.16未満のポリテトラフルオロエチレンからなる第2未焼成シートとを積層し、この積層体に圧力を加えて圧着物を得る工程と、
    前記圧着物をポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度で所定方向に延伸した後に、さらにポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度で前記所定方向に延伸するまたはポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度に加熱する工程と、
    前記所定方向に延伸された前記圧着物を前記所定方向と直交する幅方向に延伸する工程と、
    を含むポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
  2. 前記圧着物を前記幅方向に延伸する工程はポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度で行われ、前記幅方向に延伸された前記圧着物に対して熱固定を行う工程をさらに含む請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
  3. ポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度での前記所定方向への延伸倍率が1.5〜15倍であり、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度での前記所定方向への延伸倍率が0.8〜10倍(1倍を除く)である、請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
  4. 前記幅方向への延伸倍率が4〜30倍である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
  5. 前記第2未焼成シートは、前記第1未焼成シートよりも厚みの薄いものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
  6. 互いに繊維構造の異なる第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質層と第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質層とが積層された積層構造を有し、
    膜厚が20μm以上、通気量がガーレー数で表示して10sec/100mL以下、JIS L1092−B(高水圧法)に基づいて測定した耐水圧が200kPa以上、直交する2方向およびそれらの方向と45度をなす方向における前記多孔質層間の剥離強度が0.1N/cm以上である、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
  7. 前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られたものである、請求項6に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
  8. 通気を確保しつつ水の浸入を防止するための多孔性の基材を備えた防水通気フィルタであって、
    前記基材が請求項6または7に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を含む防水通気フィルタ。
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