JP2010098876A - 車両制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電機と変速機を含む車両の制御システムにおいて、回転電機の変速が生じるときに、電気部品等が過電圧の状態になることを抑制することである。
【解決手段】エンジン12と第1の回転電機20、第2の回転電機22、変速機26を含む車両制御システム10における制御部40は、車両の変速状態を取得する変速状態取得モジュール42と、取得された変速状態に基いて、システム電圧Vmの低減処理を許可するか否か判定する昇圧低減許可モジュール44と、システム電圧の低減処理を許可するときに、予め設定された上限電圧にシステム電圧を低減処理する昇圧低減実行モジュール46と、コンバータ16、インバータ18の作動を制御して第1の回転電機20、第2の回転電機22の駆動を制御する駆動制御モジュール48を含んで構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は車両制御システムに係り、特に、変速機を介して車両の駆動軸に接続される回転電機と、コンバータによって昇降圧されたシステム電圧で作動し、回転電機を駆動するインバータとを有する車両の制御システムに関する。
車両に搭載される回転電機は、インバータ等の回路によって作動し、例えば適当な変速機を介して車両の駆動軸を駆動する。したがって、回転電機の回転数やトルクの状態は、変速機の作動や、変速機を介しての路面等からの負荷等によって変動することが生じ得る。
例えば、特許文献1には、電動機と駆動軸との間に変速機が設けられた電動車両において直流電源とインバータとの間に昇圧コンバータが備えられており、電動機の出力に応じて昇圧コンバータの出力電圧を制御する負荷駆動装置として、変速時に変速機に摩擦要素の掴み替えが行われることによる電動機の回転数上昇を防止するために変速中に電動機の出力トルクを低減させるトルク低減処理が行われることが述べられている。そして、その際に昇圧電圧を下げると、制御周期の長い矩形波制御の場合、電圧一定を前提としているので制御不安定となるので、変速時に昇圧電圧を下げないことが述べられている。
特許文献2には、車輪を駆動するモータとモータを駆動するインバータとインバータに直流電源電流を供給する昇圧コンバータとを含む車両の制御装置において、車輪がスリップすると、トルク一定指令の場合モータの回転数が急上昇し、消費電力が増大するのでより多くの電力をモータに供給する制御が行われるが、次にグリップ状態に戻ると回転数が急減少し、昇圧コンバータからの供給電力が過多となることが述べられている。このときに、q軸電流の増大でスリップを検出し、矩形波制御からPWM制御に切り替え、また昇圧コンバータの目標電圧を引き下げ、変速機があるときはギヤ比に応じて目標電圧を引き下げることが開示されている。
特許文献3には、動力出力装置として、変速機の変速段切り替え等で電動機の駆動状態が大きく変化するときは、バッテリの入出力電力からMG1,MG2に入力される想定電力を減じて得られる偏差電力と、バッテリのWin,Woutからバッテリの入出力許容制限を求めてトルク制限等の制御を行うことが述べられている。そして、変速機の変速段切り替え等で電動機の駆動状態が大きく変化するときは、偏差電力が大きく変化するので、偏差電力を算出するときに用いられる時定数を小さくして、迅速に算出し、トルク制限等の処理を迅速に行い、バッテリの過大な電力による充放電を抑制することが開示される。
特許文献4には、遊星歯車機構にエンジンと第1モータと駆動軸とを接続すると共に駆動軸に変速機を介して第2モータを接続する動力出力装置において、バッテリ端の電圧で上下閾値を超えると切替状態フラグを1とし、変速機がアップシフトの最中に切替フラグが1となると、変速機のブレーキの油圧指令を変更して第2モータの回転数の変化速度を遅くすることが開示されている。これによって、センシング遅れ等で第2モータの消費電力が変化することによるバッテリへの過大な電力の入出力を抑制できると述べられている。
特開2006−325374号公報 特開2007−20383号公報 特開2006−94691号公報 特開2006−315451号公報
従来技術によって指摘されるように、変速機に接続される回転電機のトルク、回転数は、車両の運行状態等によって変動することが生じる。この場合、例えば、回転電機の回転数、トルクの急変によって回転電機の消費電力が急変すると、回転電機を駆動する電源回路における電力バランスが大きく変化し、例えば、過大電圧、過小電圧となることが起こり得る。この場合、回転電機を駆動する電源回路を構成するコンデンサ等の電気部品が定格値を越えて損傷することが生じ得る。特に、車両搭載ユニットの小型軽量化のために電気部品等も小型化が進むと、その定格値も低くなるので、過電圧等に対する考慮が求められる。
本発明の目的は、回転電機の変速が生じるときに、電気部品等が過電圧の状態になることを抑制できる車両制御システムを提供することである。
本発明に係る車両制御システムは、変速機を介して車両の駆動軸に接続される回転電機と、コンバータによって昇降圧されたシステム電圧で作動し、回転電機を駆動するインバータと、車両の変速状態を取得し、取得された変速状態に基いて、システム電圧の低減処理を許可するか否か判定し、システム電圧の低減処理を許可するときに、予め設定された上限電圧にシステム電圧を低減処理する制御部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、車両の変速状態が取得できないとき、および車両の変速要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可し、車両が変速中であるとき、および車両の変速要求がないときにシステム電圧の低減処理を許可しないと判定する判定手段を含みことが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、車両が加速状態にあって、変速機をLo変速段からHi変速段に変更する変速要求があるとき、あるいは車両が減速状態にあって、変速機をHi変速段からLo変速段に変更する変更要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可することが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、車両の変速要求があることでシステム電圧低減許可があるときは、変速機の変速段変更に先立って、システム電圧を上限電圧に低減することが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、変速要求に応じて回転電機のトルク変更指令が出力し、その後、予め設定された変更時間が経過したときに、変速機の変速段変更指令を出力することが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、変速機の変速段変更指令の実行完了後に、システム電圧を低減前の状態に復帰させる復帰手段を含むことが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、システム電圧の低減時または低減状態からの復帰時の少なくともいずれかの電圧変化に予め設定した変化率を付与することが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、回転電機が減速されるときに行われるシステム電圧の低減量が、回転電機が加速されるときに行われるシステム電圧の低減量よりも大きいことが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、インバータの駆動制御を正弦波制御モードと過変調制御モードと矩形波制御モードとの間で制御モード切替を行う手段を含み、システム電圧の変更は、その前後で同じ制御モードの作動領域の電圧範囲の中で行うことが好ましい。
上記構成により、車両制御システムは、車両の変速状態を取得し、取得された変速状態に基いて、システム電圧の低減処理を許可するか否か判定し、システム電圧の低減処理を許可するときに、予め設定された上限電圧にシステム電圧を低減処理する。これにより、車両の変速状態から見て、例えば、回転電機による電力バランスが崩れる恐れがあるときに、システム電圧を低減するので、駆動回路の電気部品等が過電圧の状態になることを抑制できる。
また、車両制御システムにおいて、車両の変速状態が取得できないとき、および車両の変速要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可し、車両が変速中であるとき、および車両の変速要求がないときに、システム電圧の低減処理を許可しないと判定する。車両の変速状態が取得できないときとは、変速誤動作、路面の影響等で変速指令と異なる変速状態にあるときなどであるので、このような場合には安全をとって、システム電圧を低減することとするので、駆動回路の電気部品について不測の過電圧を防止することができる。
また、車両の変速要求があるときは、回転電機が変速機の作動によって回転数が急変することが起こり得て、これにより電源回路の消費電力と供給電力のバランスが崩れることがあり、このような場合にもシステム電圧を低減することとするので、過電圧を防止することができる。それ以外のときは、システム電圧を低減しないので、車両の走行を所期どおりに行うことができる。
また、車両制御システムにおいて、車両が加速状態にあって、変速機をLo変速段からHi変速段に変更する変速要求があるとき、あるいは車両が減速状態にあって、変速機をHi変速段からLo変速段に変更する変更要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可する。加速状態においてLoからHiに変速段を切り替えると、回転電機の回転数もトルクも急落するので、回転電機の消費電力が急減し、この急減した電力がインバータの平滑コンデンサに回生されて、その両端電圧が跳ね上がり、平滑コンデンサ等の駆動回路の電気部品が過電圧となる。
また、減速状態においてHiからLoに変速段を切り替える際に、回転電機の回転数のオーバシュートを抑制するために回転電機のトルクを急減させる制御を行う場合がある。このときにも、回転電機の消費電力が急減し、電源回路の電気部品が過電圧となる。これらのときに、システム電圧低減を許可することで、電源回路の電気部品の過電圧を抑制することができる。
また、車両制御システムにおいて、車両の変速要求があることでシステム電圧低減許可があるときは、変速機の変速段変更に先立って、システム電圧を上限電圧に低減する。変速段変更は、変速機構のLo側とHi側との掴み換えが行われ、その際にトルクが伝達されない期間が生じ得る。このときに回転電機のトルクの急落が起こるので、その前にシステム電圧を低減することで、回転電機の消費電力の急落による駆動回路の電気部品の過電圧を未然に防ぐことができる。
換言すれば、変速段変更指令に先立ってシステム電圧は低減されているので、変速段変更指令で回転電機の回転数をある程度急落させても平滑コンデンサの過電圧になることを防げることになる。したがって、回転電機の回転数の急落程度を加減することで、短い期間で変速を終了させることができ、これによって変速に伴う空走感の期間を短くすることができる。また、短い期間で変速を終了させることで、変速機の負荷を軽くでき、変速機の摩擦材の損耗を少なくすることができる。
また、車両制御システムにおいて、変速要求に応じて回転電機のトルク変更指令が出力し、その後、予め設定された変更時間が経過したときに、変速機の変速段変更指令を出力することが好ましい。変更時間を適当に短くすることで、短い期間で変速を終了させることができ、これによって変速に伴う空走感の期間を短くすることができる。
また、車両制御システムにおいて、変速機の変速段変更指令の実行完了後に、システム電圧を低減前の状態に復帰させる。これにより速やかに変速前の状態に戻すことができ、システム全体の安定性を向上させることができる。
また、車両制御システムにおいて、システム電圧の低減時または低減状態からの復帰時の少なくともいずれかの電圧変化に予め設定した変化率を付与する。変速期間は空走感が生じるので、これを軽減するために、例えば、発電機用回転電機のトルクを増加させることができるシステムの場合、発電機トルク増大によって、蓄電装置は充電側に移行する。ここで、システム電圧を急に低減処理させると、インバータの平滑コンデンサの電力が蓄電装置に流れこみ、蓄電装置が過電圧となることが生じ得る。システム電圧の低減に所定の変化率を付与することで、蓄電装置への電流の流れ込みを緩やかにでき、蓄電装置の過電圧を防止できる。
また、システム電圧の復帰時には、コンバータの昇圧電圧がオーバシュートすることがあるが、システム電圧の復帰に所定の変化率を付与することで、昇圧復帰を緩やかとでき、オーバシュートを防ぐことができる。
また、車両制御システムにおいて、回転電機が減速されるときに行われるシステム電圧の低減量が、回転電機が加速されるときに行われるシステム電圧の低減量よりも大きく設定する。回転電機が減速されるときとは、変速機がLoからHiになるときであり、回転電機が加速されるときとは、変速機がHiからLoになるときである。回転電機が加速されるときには、回転電機の逆起電力が増加することになるので、システム電圧を低減しすぎると、回転電機の制御にチャタリングが生じ得る。そこで、回転電機が加速されるときには、システム電圧の低減を比較的に小さくすることで、回転電機の制御性を確保することができる。
また、車両制御システムにおいて、インバータの駆動制御を正弦波制御モードと過変調制御モードと矩形波制御モードとの間で制御モード切替を行う手段を含み、システム電圧の変更は、その前後で同じ制御モードの作動領域の電圧範囲の中で行う。例えば、矩形波制御モードで駆動制御を行っているときに、変速機をLoからHiに切り替えると、回転電機の動作点が低回転側にシフトする。このとき事前にシステム電圧を低減しておくと、矩形波制御モードの作動領域も低回転側にシフトする。したがって、変速機の切替の前に、システム電圧の低減を適当に設定することで、変速機の切替の前後において回転電機の動作点を矩形波制御モードの作動領域の中のままとできる。このようにして、制御モードの切替を行わなくても済むようにでき、制御モードが切り替わる際に生じ得るチャタリングを防止できる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両制御システムの対象として、エンジンと回転電機とが搭載される車両を説明するが、回転電機が変速機を介して車両の駆動軸に接続される構成であればよく、場合によってエンジンを省略することができる。また、以下では車両に搭載される回転電機として、1台でモータ機能と発電機機能とを有するモータ・ジェネレータを2台用いるものとして説明するが、これは例示であって、モータ機能のみを有する回転電機を1台、発電機機能のみを有する回転電機を1台用いるものとしてもよい。また、モータ・ジェネレータを1台用いるものとしてもよく、3台以上用いるものとしてもよい。
また、以下では、駆動用回転電機と車両の駆動軸との間に設けられる変速装置として、2段の変速機と、固定変速比を有する歯車機構との組合せとして説明するが、少なくとも2段の変速段を有する構造であればよい。例えば、変速機は3段以上の変速段を有してもよく、また、複数段変速機の他に、適当な固定変速比を有する歯車構機を複数備えるものとしてもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、エンジンと回転電機とを搭載する車両についての車両制御システム10の構成を示す図である。車両制御システム10は、車両の駆動部30と、駆動部30の各要素の作動を制御する制御部40とを備えて構成される。
車両の駆動部30は、エンジン12と、蓄電装置14とを動力源とし、第1の回転電機(MG1)20と第2の回転電機(MG2)22とを備え、さらに、蓄電装置14と2つの回転電機20,22との間に接続されて設けられるコンバータ16と、インバータ18と、エンジン12と第1の回転電機20と第2の回転電機22との間の動力分配を行うための動力分配機構24と、動力分配機構24と第2の回転電機22との間に設けられる変速機26と、変速機26から歯車機構27を経て駆動力を受け取る車輪あるいはタイヤ28とを含んで構成される。
エンジン12は、複数の気筒を有する内燃機関で、第1の回転電機20と第2の回転電機22とともに車両の駆動源を構成する。エンジン12は、動力分配機構24等を介して車両の駆動軸を駆動しタイヤ28を回転して走行を行わせる機能と共に、第1の回転電機20を発電機として用いて発電を行わせ、蓄電装置14を充電する機能を有する。
動力分配機構24と変速機26と歯車機構27は、エンジン12と第1の回転電機20と第2の回転電機22の各出力を調整し、車両の走行等で要求されるトルクと回転数に変換して車両の駆動軸を介しタイヤ28に伝達する機能を有する。これらを合わせて、車両のトランスミッション機構と呼ぶことができる。
動力分配機構24は、エンジン12と第1の回転電機20と第2の回転電機22の間で動力を分配する機能を有するもので、プラネタリ機構を用いることができる。例えば、プラネタリ機構のサンギヤに第1の回転電機20、ピニオンギヤを公転させるキャリアをエンジン12、リングギヤを減速機構を介して車両の駆動軸に接続し、この減速機構と変速機を介して第2の回転電機22と接続するものとできる。なお、動力分配機構24のギヤ比であるプラネタリ比が1:ρとして図1に示されている。
変速機26は、回転電機22の回転数の変更によってトルクを増減する機能を有するもので、Lo変速段とHi変速段とを有する。例えば、変速状態がLoからHiに切り替えると、回転電機22自体の回転数が同じでも、駆動軸をより高速に回転でき、車両を高速走行させることができる。逆に変速状態をHiからLoに切り替えると、回転電機22自体のトルクを増大させてより高トルクで駆動軸を駆動できる。変速機26は、歯数の異なる複数のギヤの噛み合いの変更が可能な歯車変速機構を用いることができる。なお、動力分配機構24に用いられるプラネタリ機構と同様な機構を変速機26として用いることもできる。
歯車機構27は、動力分配機構24の出力と変速機26の出力とを合わせて駆動軸に伝達する機能を有するもので、歯車比は固定である。歯車機構27は、変速機26の一部として構成することもできる。
図2は、トランスミッション機構の作用を示す共線図である。この共線図は、縦軸に回転数、横軸に各要素の幾何学的配置位置を示したものである。各要素が歯車機構の場合、横軸は歯車の歯数に比例した位置となり、各要素の間の配置の間の距離の比が歯数比、すなわち減速比に相当することになる。
図2の横軸において、第1の回転電機(MG1)20の位置はプラネタリ機構のサンギヤの位置を示し、エンジン12の位置はプラネタリ機構のピニオンギヤの位置を示し、ペラ軸として示されている位置は、プラネタリ機構のリングギヤに対応する位置を示している。ペラ軸は、タイヤ28に接続される駆動軸であるが、歯車機構27があるので、図2ではその歯車機構の歯車比を含めた位置でリングギヤに対応する位置としてある。ここで、図2の横軸において、(サンギヤ−ピニオンギヤ)の距離:(ピニオンギヤ−リングギヤ)の距離がプラネタリ比で、1:ρとなる。
ペラ軸と第2の回転電機22との間には変速機26が設けられているので、図2では、変速機26がHi変速段の状態のときとLo変速段の状態のときが示されている。ここで、エンジン12の作動を制御してペラ軸の回転数を上げていく過程で、変速機26がLo変速段の状態にあるときからHi変速段の状態に切り替えられると、共線図上で変速機26の歯車比が変更になるので、第2の回転電機22の回転数は急減することになる。その様子が図2の共線図上において示されている。
再び図1に戻り、第1の回転電機(MG1)20と第2の回転電機(MG2)22は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、蓄電装置14から電力が供給されるときはモータとして機能し、エンジン12による駆動時、あるいは車両の制動時には発電機として機能する3相同期型回転電機である。
ここで、第1の回転電機(MG1)22は、エンジン12によって駆動されて発電機として用いられ、発電された電力をコンバータ16、インバータ18の中のMG1インバータを介して蓄電装置14に供給するものとして用いられる。また、第2の回転電機(MG2)22は、車両走行のために用いられ、力行時には蓄電装置14から直流電力の供給を受けてコンバータ16、インバータ18の中のMG2インバータを介して変換された交流電力によってモータとして機能して車両のタイヤ28を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギを回収し、コンバータ16、インバータ18の中のMG2インバータを介して蓄電装置14に供給するものとできる。
コンバータ16は、蓄電装置14とインバータ18の間に配置され、電圧変換機能を有する回路である。コンバータ16としては、リアクトルと制御部40の制御の下で作動するスイッチング素子等を含んで構成することができる。電圧変換機能としては、蓄電装置側の電圧をリアクトルのエネルギ蓄積作用を利用して昇圧しインバータ側に供給する昇圧機能と、インバータ側からの電力を蓄電装置側に降圧して充電電力として供給する降圧機能とを有する。昇圧機能に着目するときは、コンバータ16を昇圧回路と呼ぶことができる。以下では、コンバータ16が昇圧回路としての機能を有する場合を中心にして述べる。
インバータ18は、交流電力と直流電力との間の電力変換を行う回路である。インバータ18は、制御部40の制御の下で作動する複数のスイッチング素子を含んで構成される。上記のように、第1の回転電機(MG1)20と第2の回転電機(MG2)22は、用途も動作点条件も異なるので、インバータ18は、その内部で2つのインバータ回路で構成されている。2つのインバータ回路のうち1つは第1の回転電機(MG1)20の作動用のMG1インバータであり、もう1つは第2の回転電機(MG2)22の作動用のMG2インバータである。
インバータ18の正極母線と負極母線の間の直流電圧は、インバータ18の作動電圧であり、この電圧で第1の回転電機20と第2の回転電機22の作動交流電圧の振幅が定まるので、この電圧をシステム電圧Vmと呼ぶことができる。コンバータ16が昇圧回路の機能であるときは、システム電圧Vmは、コンバータ16の出力昇圧電圧である。つまり、コンバータ16の昇圧制御によってシステム電圧Vmを制御することができる。なお、コンバータ16が降圧回路の機能であるときは、システム電圧Vmはコンバータ16への入力直流電圧となる。いずれにせよ、システム電圧Vmはコンバータ16の昇降圧制御によって定められることになる。
システム電圧Vmは、蓄電装置14と第1の回転電機20、第2の回転電機22との間の電力のやり取りによって、変動するが、その変動を吸収するために、平滑用のコンデンサが正極母線と負極母線の間に設けられる。
上記のように、第1の回転電機(MG1)20を発電機として機能させるときには、MG1インバータは、第1の回転電機(MG1)20からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。また、第2の回転電機(MG2)22の作動用のMG2インバータは、車両が力行のとき、蓄電装置側からの直流電力を交流3相駆動電力に変換し、第2の回転電機(MG2)22に駆動電力として供給する直交変換機能と、車両が制動のとき、逆に第2の回転電機(MG2)22からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置側に充電電流として供給する交直変換機能とを有する。
制御部40は、上記の各要素の作動を全体として制御する機能を有する。例えば、エンジン12の作動を制御する機能、2つの回転電機20,22の作動を制御する機能、コンバータ16、インバータ18の作動を制御する機能、動力分配機構24の作動を制御する機能、変速機26の作動を制御する機能等を有する。
かかる制御部40は、車両の搭載に適した制御装置、例えば車載用コンピュータによって構成することができる。制御部40を1つのコンピュータで構成することもできるが、必要な処理速度が各構成要素によって異なること等を考慮し、複数のコンピュータにこれらの機能を分担させることもできる。例えば、エンジン12の作動を制御する機能をエンジン電気制御ユニット(Electrical Control Unit:ECU)に分担させ、2つの回転電機20,22の作動を制御する機能をMG−ECUに分担させ、コンバータ16、インバータ18の作動を制御する機能をPCU(Power Control Unit)に分担させ、これらと動力分配機構24、変速機26を含む全体を統合ECUで制御する等の構成とすることもできる。
図1において、制御部40は、これらの機能のうち、特に車両制御機能として、車両の変速状態に応じてコンバータ16の昇圧状態を制御する機能を有する部分が示されている。すなわち、制御部40は、車両の変速状態を取得する変速状態取得モジュール42と、取得された変速状態に基いて、システム電圧Vmの低減処理を許可するか否か判定する昇圧低減許可モジュール44と、システム電圧の低減処理を許可するときに、予め設定された上限電圧にシステム電圧を低減処理する昇圧低減実行モジュール46と、コンバータ16、インバータ18の作動を制御して第1の回転電機20、第2の回転電機22の駆動を制御する駆動制御モジュール48を含んで構成される。
これらの機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、車両制御プログラムの中のシステム電圧設定パートを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアによって実現するものとしてもよい。
上記構成の作用、特に制御部40の各機能について以下に詳細に説明する。なお、駆動制御モジュール48の内容については、2つの回転電機20,22の間で特に区別がないので、以下では、第2の回転電機22に代表させて、その駆動制御について説明する。
最初に、駆動制御モジュール48に関連して、回転電機22の3つの駆動制御モードである正弦波電流制御モード、過変調電流制御モード、矩形波電圧位相制御モードについて説明する。
正弦波電流制御モードと過変調電流制御モードとは、電流フィードバック制御であり、電圧指令と搬送波(キャリア)とを比較することでパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)パターンを回転電機20に出力する制御である。一方、矩形波電圧位相制御モードは、電気角に応じて1パルススイッチング波形を回転電機20に出力する制御であり、電圧振幅は最大値に固定され、位相を制御することでトルクをフィードバック制御している。これら3つの制御モードは、駆動制御モジュール48の機能によって実行される。
正弦波電流制御モード、過変調電流制御モード、矩形波電圧位相制御モードの3つのモードの間の切替は、変調率、あるいは変調率に相当する電圧指令振幅によって行われる。変調率とは、インバータの出力電圧に対する信号振幅の比である。正弦波と三角波の比較によるPWM方式の場合は、変調率が{(3)1/2}/2{(2)1/2}=0.61であり、矩形波を信号振幅とするときの変調率が{(6)1/2}/π=0.78である。
このように、回転電機22を高出力にするには、変調率を大きくできる矩形波電圧位相制御の方が適している。一方で、正弦波電流制御モード、過変調電流制御モードにおいては、PWM技術によって形成される擬似正弦波を用いるので、矩形波電圧位相制御モードに比べ、応答を速くすることができる。これらのことから、低速領域では、正弦波電流制御モード、中速領域では過変調電流制御モード、高速領域で矩形波電圧位相制御モードを用いることが好ましい。
図3は、回転電機の動作点に応じて制御モードが選択される様子を説明する図である。この図は、回転電機22の回転数を横軸に、トルクを縦軸にとり、回転電機22が出力できるパワーを一定としてとり得るトルクの最大値を示す最大トルク特性線50を示し、さらに、最大トルク特性線50で示される作動領域においてどの制御モードが用いられるかを示す図である。この図に示されるように、低速側に正弦波電流制御モード作動領域52が、高速側に矩形波電圧位相制御モード作動領域56が、その中間に過変調電流制御モード作動領域54がそれぞれ設定されている。
次に、車両の変速状態に応じてコンバータ16の昇圧状態を制御する機能について、図4から図7を用いて説明する。図4から図7は、車両の変速状態に応じてコンバータ16の昇圧状態を制御する手順を示すフローチャートで、図4は全体手順を示すフローチャート、図5は図4における昇圧低減許可判定の内部手順を示すフローチャート、図6は図4における昇圧低減実行処理の内部手順を示すフローチャートである。図7はこれらの手順における各要素の状態変化を示すタイムチャートである。これらのフローチャートの各手順は、車両制御プログラムのシステム電圧設定パートにおける各処理手順に対応する。
図4は、車両の変速状態に応じてコンバータ16の昇圧状態を制御するときの全体手順を示すフローチャートである。ここでは、まず変速状態を取得する(S10)。この工程は、制御部40の変速状態取得モジュール42の機能によって実行される。変速状態の取得は、制御部40の機能に含まれる変速機制御装置としての機能における制御状態信号を取得することで行うことができる。制御状態信号としては、変速機26の出力軸の回転数、変速機26の入力軸の回転数である回転電機22の出力軸の回転数等を用いることができる。これらの信号に基いて、例えば、変速機26が現在Hi変速段にあるか、Lo変速段にあるか、または変速を行っている過渡状態であるか、等を変速制御状態信号によって区別することができる。
変速状態が取得されると、その結果に応じて昇圧低減処理の実行を許可するか否か野判定が行われる(S12)。この工程は、制御部40の昇圧低減許可モジュール44の機能によって実行される。この工程の詳細は、図5を用いて後述する。
S12において昇圧低減処理実行を許可すると判定されると、昇圧低減実行処理が行われる(S14)。この工程は、制御部40の昇圧低減実行モジュール46の機能によって実行される。この工程の詳細は、図6を用いて後述する。
図5は、図4における昇圧低減許可判定工程(S12)の内部手順を示すフローチャートである。ここでは、変速状態に応じて昇圧低減許可判定が行われることから、変速状態の判定が行われる。すなわち、図4のS10において変速状態の取得が行われると、取得された内容から、変速状態がどのようであるか、3種類に分類される。1つは、変速機26がLo変速段の状態にあるか、Hi変速段の状態にあるとされる場合である。このときは、次の工程としてS22に進む。もう1つは、変速機26がLoからHiへ、あるいはHiからLoへ、切り替わる途中の過渡状態にある場合である。このときは、次の工程としてS28に進む。
最後の1つは、変速状態が不明である場合である。変速状態が不明とは、変速状態信号が取得されない場合、あるいは変速指令と変速状態信号とが一致していない場合等である。例えば、変速機26の状態が異常であるが、実際の変速段の状態が確定できないような変速ミスの場合、路面の状態の影響で、変速前の回転電機の回転数変動が大きく、変速機26の出力回転数が正しく認識できない場合等である。このときは、次の工程としてS22を飛ばしてS24に進む。
S20において、変速状態がHi変速段の状態にある、あるいはLo変速段の状態にある、と判断されると、変速要求があるか否かが判断される(S22)。S22の判断が肯定されるとS24にすすみ、否定されるとS28に進む。
S22で判断が肯定され、あるいはS20において変速状態が不明とされると、昇圧低減実行が許可され(S24)昇圧低減許可フラグがONとされ、昇圧低減禁止フラグがOFFされる(S26)。変速要求があるときに昇圧低減実行が許可されるのは、変速機26がHiからLoに切り替わるとき、あるいはLoからHiに切り替わるときに、インバータ18に設けられる平滑コンデンサ、蓄電装置14等の電気部品が過電圧となるおそれがあるので、事前にシステム電圧Vmを低下させるためである。変速状態が不明のときに昇圧低減実行が許可されるのは、場合によって電気部品が過電圧となる恐れがあるので、安全側として、事前にシステム電圧Vmを低下させるためである。
S22において判断が否定され、あるいはS20において変速途中であるとされると、昇圧低減実行が許可されずに、昇圧低減実行が禁止され(S28)、昇圧低減禁止フラグがONとされ、昇圧低減許可フラグがOFFされる(S26)。昇圧低減が実行されるとシステム電圧Vmが予め定めた上限電圧まで低下するので、回転電機22の最大パワーが低下し、車両の走行性が低下する。したがって、昇圧低減の実行は、電気部品の過電圧が生じ得る場合だけに止め、それ以外はシステム電圧Vmを低減させずにそのままとすることが望ましい。これによって、車両走行性を維持することができる。
S26,S28の処理の後は、再びS20に戻る。そして、それ以後の工程が繰り返され、その結果に応じてその都度、昇圧低減禁止フラグの状態と昇圧低減許可フラグの状態が切り替えられる。
図6は、図4における昇圧低減実行処理工程(S14)の内部手順を示すフローチャートである。ここでは、まず昇圧低減許可判定の結果が判断され(S40)、昇圧低減許可があるときはS42へ進み、ないときはS48に進む。S40の判断は、図5で説明した昇圧低減許可フラグのON,OFFの区別によって行うことができる。
S40で判断が肯定されるとコンバータ16の出力電圧であるシステム電圧が予め定められた上限電圧に低減されて設定される(S42)。上限電圧とは、これ以上昇圧しないとする上限の電圧で、通常の昇圧制御における昇圧電圧範囲の上限を低く抑える値に設定される。例えば、通常の昇圧制御における昇圧電圧範囲の最大値をVAとすると、この値に1以下の低減係数αを乗じた値を上限電圧とすることができる。低減係数αは例えば、0.9あるいは0.8等とすることができる。勿論、低減係数αを用いる代わりに、予め定めた一定の低減電圧を用いることとして、この低減電圧を上限電圧とすることもできる。
そして、システム電圧Vmが上限電圧、例えばαVmに設定されると、次に昇圧下降レートの設定が行われる(S44)。昇圧下降レートとは、システム電圧Vmが上限電圧であるαVmに低減される際の電圧変化率のことである。すなわち、システム電圧Vmの低減は、ステップ状に低減させるのではなく、適当に緩やかな変化率で低減させる。
その理由は以下の通りである。すなわち、変速期間は空走感が生じるので、これを軽減するために、例えば、発電機用回転電機である第1の回転電機20のトルクを増加させるものとすることができる。このような処理を行うことができるシステムの場合、発電機トルク増大によって、蓄電装置14は充電側に移行する。ここで、システム電圧Vmを急激に低減処理させると、インバータ18の平滑コンデンサの電力が蓄電装置14に流れこみ、蓄電装置14が過電圧となることが生じ得る。システム電圧Vmの低減に所定の変化率を付与することで、蓄電装置14への電流の流れ込みを緩やかにでき、蓄電装置14の過電圧を防止できる。
このようにして、Vmの上限電圧の設定と、下降レートの設定が行われると、現在の昇圧指令の状態が記憶される(S46)。これにより、昇圧電圧指令の設定が完了し(S54)、その設定に従って具体的な昇圧制御が実行される(S56)。具体的な昇圧制御の内容は図7を用いて説明する。S56の後は再びS40に戻り、それ以後の工程が順次繰り返される。
図6のS40において、判断が否定、すなわち、昇圧低減許可がないと判断されると、それまでに昇圧低減処理によってシステム電圧Vmの低減が行われ、上限電圧に制限されている場合には、その昇圧上限電圧の状態が解除される(S48)。つまり、システム電圧Vmが上記の例でαVmに低減されていたものが再び元のシステム電圧Vmに復帰する。
例えば、図5のS22において変速要求があってS24de昇圧低減許可が行われたとき、その後変速要求に応じて変速が完了すると、次の処理のサイクルではS22において判断が否定されてS28に進み、昇圧低減が禁止され、昇圧低減フラグがOFFとなる。このときは、図6においてS40の判断が否定されるので、昇圧上限電圧の設定が解除され、再び元のシステム電圧Vmに復帰する。換言すれば、変速要求によって一旦システム電圧Vmは低減されるが、変速が完了、すなわち、変速機26の変速段変更指令の実行完了後に、システム電圧Vmを低減前の状態に復帰させることが行われる。
このように、システム電圧Vmについて上限電圧設定の解除が決まると、次に昇圧上昇レートの設定が行われる。昇圧上昇レートとは、上記の例で低減された上限電圧であるαVmから元のシステム電圧Vmに復帰する際の電圧変化率のことである。すなわち、システム電圧Vmの復帰は、ステップ状に行うのではなく、適当に緩やかな変化率で上昇させる。システム電圧の復帰時には、コンバータ16の昇圧電圧がオーバシュートすることがあるが、システム電圧の復帰に所定の変化率を付与することで、昇圧復帰を緩やかとでき、オーバシュートを防ぐことができる。
このようにして、Vmの上限電圧設定解除と、上昇レートの設定が行われると、現在の昇圧指令の状態が記憶される(S52)。これにより、上記S46の完了と同様に、昇圧電圧指令の設定が完了し(S54)、その設定に従って具体的な昇圧制御が実行される(S56)。
図7は、具体的な昇圧低減および復帰の様子を示すタイムチャートである。図7の横軸は時間で、縦軸には、各要素の状態がとられている。すなわち、図7の紙面上で上方から下方に向かって、システム電圧Vm、回転電機22の回転数、制御部40からの変速要求を示す変速要求フラグ、制御部40から回転電機22に対するトルク変更指令、制御部40から変速機26に対する変速段の変更指令、制御部40の処理におけるコンバータ16に対する昇圧低減許可フラグを順に示している。
図7について、変速時の時間経過に伴う各要素の状態は次のように変化する。いま、変速機26がLo状態にあり、回転電機22の回転数が上昇中であるとする。この状態は、図7の上から2つ目の回転電機22の回転数が実線で示されている場合に相当する。なお、破線で示されている場合については後述する。
ここで、時間t1において変速要求フラグがONとなると、図5において、S22の判断が肯定され、コンバータ16に対する昇圧低減許可フラグがONとなる。これに応じて、システム電圧Vmが所定の上限電圧に低減されるが、その際に図6のS44で説明したように、下降レートが設定されて、予め設定された電圧下降率でシステム電圧Vmが低減される。図7では、時間t1から時間t2までかけてシステム電圧Vmが低減される様子が示される。
時間t2において、システム電圧Vmが上限電圧まで低減すると、コンバータ16に対する昇圧低減許可フラグがOFFに戻される。そして、このシステム電圧Vmが低減された状態の下で、トルク変更指令が出される。トルク変更指令とは、回転電機22に対し、変速機26の変速段を変更するので、一旦トルクをゼロ、あるいは低い値とする、いわゆるトルク抜きを行うための指令である。
このトルク変更指令の実行が完了した時間t3において、変速段変更指令が出される。変速段変更指令とは、この場合、変速機26に対し、Lo変速段からHi変速段に切り替える指令である。具体的には、変速のために歯車列をLo変速の状態からHi変速の状態に、いわゆる掴み変えを行わせるための指令である。
この変速段変更の実行によって、図2で説明したように、回転電機22の回転数は急激に低下する。その状態は図7の上から2つ目の回転電機22の回転数の変化特性でも示されている。つまり、時間t3から回転電機22の回転数は急減し、減速状態となり、時間t4でほぼ一定値に落ち着く。この回転数の低下に伴って、回転電機22のトルクも低下し、従って、回転電機22の消費電力は急減する。この急減した電力がインバータ18の平滑コンデンサに回生されて、システム電圧Vmが跳ね上がり、平滑コンデンサ等の駆動回路の電気部品が過電圧となる恐れがある。図1、図7の構成では、その前にシステム電圧Vmを低減しているので、その分、電気部品が過電圧となることを抑制できる。
なお、この指令の実行の間に、歯車列が互いに離れて噛み合っていない時期が生じる。この時期は、トルクが駆動軸に伝達されないので、いわゆる空走感が生じることがある。変速期間は、時間t3から時間t4の間であるが、システム電圧Vmが低減されているので、この変速期間の長さは、システム電圧Vmが低減されない従来技術に比べるとかなり短縮される。このように、システム電圧Vmの低減程度に応じて、空走感を感じる期間を短縮することができる。
また、システム電圧Vmが低減されない従来技術に比べシステム電圧Vmを低減することで変速期間を短縮できることは、変速機26における変速中の摩擦材の損失低減を図ることにもなる。
時間t4でトルク変更指令の実行が完了すると、その後適当な時間をおいて、時間t5において、変速要求フラグをOFFに戻す。これによって、システム電圧Vmの上限電圧に低減したことが解除され、図6のS50で説明したように、所定の上昇レートが設定されて、上限電圧に低減された状態から元のシステム電圧Vmに徐々に復帰する。
もっとも、時間t4から適当な時間をおくことをせず、変速段変更指令の実行が完了したならば直ちにシステム電圧の復帰を行うものとしてもよい。図7では、破線で、この短時間復帰の場合が示されている。このように、時間t4からシステム電圧Vmの復帰までの時間を加減することでも、空走感を感じる期間を短縮することができる。
以上が、変速機26がLo状態にあり、回転電機22の回転数が上昇中である場合であるが、変速機26がHi状態にあり、回転電機22の回転数が低下中である場合にも同様の処理が行われる。この場合の回転電機22の回転数の状態が、図7において破線で示される。
例えば、減速状態においてHiからLoに変速段を切り替える際に、回転電機22の回転数のオーバシュートを抑制するために回転電機22のトルクを急減させる制御を行う場合がある。このときにも、回転電機22の消費電力が急減し、インバータ18等の電気部品が過電圧となる。これらのときに、システム電圧Vmを低減することで、電気部品の過電圧を抑制することができる。
ここで、回転電機22が減速されるときと加速されるときとで、システム電圧Vmの低減の程度を異ならせることが好ましい。すなわち、回転電機22が減速されるときに行われるシステム電圧Vmの低減量が、回転電機22が加速されるときに行われるシステム電圧Vmの低減量よりも大きく設定する。回転電機22が減速されるときとは、変速機26がLoからHiになるときであり、回転電機22が加速されるときとは、変速機26がHiからLoになるときである。回転電機22が加速されるときには、回転電機22の逆起電力が増加することになるので、システム電圧Vmを低減しすぎると、回転電機22の制御にチャタリングが生じ得る。そこで、回転電機22が加速されるときには、システム電圧Vmの低減を比較的に小さくすることで、回転電機22の制御性を確保することができる。
また、回転電機22の制御に関連して、インバータ18の駆動制御を正弦波制御モードと過変調制御モードと矩形波制御モードとの間で制御モード切替を行うときには、システム電圧の変更は、その前後で同じ制御モードの作動領域の電圧範囲の中で行われるようにできる。例えば、矩形波制御モードで駆動制御を行っているときに、変速機26をLoからHiに切り替えると、上記のように回転電機22が減速し、その動作点が低回転側にシフトする。このとき事前にシステム電圧Vmを低減しておくと、矩形波制御モードの作動領域も低回転側にシフトする。したがって、変速機26の切替の前に、システム電圧Vmの低減を適当に設定することで、変速機26の切替の前後において回転電機22の動作点を矩形波制御モードの作動領域の中のままとできる。例えば、図3で説明した矩形波電圧位相制御モード作動領域56の中に、変速前後の動作点を共に設定するようにできる。このようにして、制御モードの切替を行わなくても済むようにでき、制御モードが切り替わる際に生じ得るチャタリングを防止できる。
図8と図9は、従来技術のときの変速時の様子の例を示す図である。図8は、モータ回転数を上げてゆく途中の様子であるが、ここでは路面の影響でモータ回転数が吹き上がり、変速段を変更すると、回転数が急減すると共にトルクが急減することが示される。このようにモータ回転数とトルクが急減することで回転電機の消費電力が急減し、その分がインバータの平滑コンデンサに回生され、過電圧となる恐れを生じる。図9は、変速段の変更によって、システム電圧Vmが一時的に跳ね上がって過電圧となる様子を示す図である。このように、変速段の変更のときに、システム電圧Vmが過大になる恐れがある。
図10は、このような変速時におけるシステム電圧Vmの跳ね上がりによって電気部品が過電圧になることを防止するために、変速段の変更に先立ってシステム電圧Vmを低減させるときの様子を示す図である。ここに示されるように、システム電圧Vmは、一時的に低減され、その後再び元の値に復帰する。この一時的低減を変速段の変更に先立って行い、変速段の変更完了で元に戻すことで、従来技術におけるシステム電圧Vmの跳ね上がりによって電気部品が過電圧となることを抑制することができる。
本発明に係る実施の形態における車両制御システムの構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、トランスミッション機構の作用を示す共線図である。 回転電機の動作点に応じて制御モードが選択される様子を説明する図である。 本発明に係る実施の形態において、車両の変速状態に応じてコンバータの昇圧状態を制御する全体手順を示すフローチャートである。 図4における昇圧低減許可判定の内部手順を示すフローチャートである。 図4における昇圧低減実行処理の内部手順を示すフローチャートである。 車両の変速状態に応じてコンバータの昇圧状態を制御するときの各要素の状態変化を示すタイムチャートである。 従来技術の変速時においてモータ回転数とトルクが急減する様子を示す図である。 従来技術の変速時においてシステム電圧の跳ね上がりの様子を説明する図である。 本発明に係る実施の形態において、変速段の変更に先立ってシステム電圧を低減させる様子を説明する図である。
符号の説明
10 車両制御システム、12 エンジン、14 蓄電装置、16 コンバータ、18 インバータ、20,22 回転電機、24 動力分配機構、26 変速機、27 歯車機構、28 タイヤ、30 駆動部、40 制御部、42 変速状態取得モジュール、44 昇圧低減許可モジュール、46 昇圧低減実行モジュール、48 駆動制御モジュール、50 最大トルク特性線、52 正弦波電流制御モード作動領域、54 過変調電流制御モード作動領域、56 矩形波電圧位相制御モード作動領域。

Claims (9)

  1. 変速機を介して車両の駆動軸に接続される回転電機と、
    コンバータによって昇降圧されたシステム電圧で作動し、回転電機を駆動するインバータと、
    車両の変速状態を取得し、取得された変速状態に基いて、システム電圧の低減処理を許可するか否か判定し、システム電圧の低減処理を許可するときに、予め設定された上限電圧にシステム電圧を低減処理する制御部と、
    を備えることを特徴とする車両制御システム。
  2. 請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    車両の変速状態が取得できないとき、および車両の変速要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可し、車両が変速中であるとき、および車両の変速要求がないときに、システム電圧の低減処理を許可しないと判定する判定手段を含みことを特徴とする車両制御システム。
  3. 請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    車両が加速状態にあって、変速機をLo変速段からHi変速段に変更する変速要求があるとき、あるいは車両が減速状態にあって、変速機をHi変速段からLo変速段に変更する変更要求があるときに、システム電圧の低減処理を許可することを特徴とする車両制御システム。
  4. 請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    車両の変速要求があることでシステム電圧低減許可があるときは、変速機の変速段変更に先立って、システム電圧を上限電圧に低減することを特徴とする車両制御システム。
  5. 請求項4に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    変速要求に応じて回転電機のトルク変更指令が出力し、その後、予め設定された変更時間が経過したときに、変速機の変速段変更指令を出力することを特徴とする車両制御システム。
  6. 請求項4に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    変速機の変速段変更指令の実行完了後に、システム電圧を低減前の状態に復帰させる復帰手段を含むことを特徴とする車両制御システム。
  7. 請求項5に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    システム電圧の低減時または低減状態からの復帰時の少なくともいずれかの電圧変化に予め設定した変化率を付与することを特徴とする車両制御システム。
  8. 請求項3に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    回転電機が減速されるときに行われるシステム電圧の低減量が、回転電機が加速されるときに行われるシステム電圧の低減量よりも大きいことを特徴とする車両制御システム。
  9. 請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    インバータの駆動制御を正弦波制御モードと過変調制御モードと矩形波制御モードとの間で制御モード切替を行う手段を含み、
    システム電圧の変更は、その前後で同じ制御モードの作動領域の電圧範囲の中で行うことを特徴とする車両制御システム。
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