JP2010096811A - 液体現像用電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成方法 - Google Patents

液体現像用電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液体現像系においても十分な耐クラック性を有し、電気特性の良好な、高耐久性を有する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】電子写真感光体の感光層に、下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有させる。
式(1)
Figure 2010096811

(式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または二価基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体に関する。詳しくは、耐溶剤性に優れ、且つ、電気特性の良好な液体現像用電子写真感光体並びに液体現像方式の画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
電子写真技術において、画像を可視化する現像工程の方式には、大きく分けて乾式現像方式と液体(湿式)現像方式が存在する。このうち液体現像方式は、1950年代に端を発する歴史の長い技術ではあるが、現像用溶剤(通常は有機溶剤)を使うなど、オフィスユースには課題も有り、一般にオフィスユースには専ら乾式現像方式が用いられているのが現状である。しかし、0.1μm〜2μmと小径のトナーが使用でき、乾式よりも高解像度化が可能で、オフセット印刷に近い高画質が得られ、しかも高速化にも対応可能であるという利点を生かし、オンデマンド印刷などの新しい商業印刷システム向けに、オフセット印刷に代わって使用されるようになってきている。
一方、電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下、適宜「感光体」という。)については、無公害で成膜が容易である、製造が容易で低コストである等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。有機系の光導電材料を用いた感光体(有機感光体)としては、例えば、光導電性微粉末をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体(単層型感光体)、電荷発生層および電荷輸送層を積層した積層型感光体(機能分離型感光体)が知られている。そのうち積層型感光体は、電荷発生効率の高い電荷発生物質と、高移動度でイオン化電位が電荷発生物質にマッチした電荷輸送物質とを組み合わせることにより、高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また感光層を塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから、多く使用されている。
そのような有機感光体は、液体現像系においては、キャリアとして使用される現像用溶剤と、現像工程の一定時間接触することになる。特に通常のカラー工程においては4色以上の現像剤が使用されるため、より多くの時間現像用溶剤にさらされることになる。このように感光体が現像用溶剤に繰り返しさらされると、感光体の表面にクラックと呼ばれる欠陥が生じ、それが印刷画像にスジ欠陥となって現れ、耐久性向上の妨げとなることがある。
このようなクラックの生じるメカニズムについては諸説あるが、一つには、現像用溶剤により感光体の低分子成分が溶出して空洞(ボイド)が生じ、それが繰り返し周囲から機械的負荷を受けて成長してクラックとなる、というような疲労破壊的なメカニズムが考えられる。そのような場合、感光体の表面層に使用されているバインダー樹脂の機械物性を改善することによって、ボイドが成長してクラックとなるのを抑制し、その結果耐久性が向上することが期待される。
そのような感光層の表面層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダー樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が総合的に優れた性能を有しており、これまで種々の構造のものが開発され実用に供されている。
しかしながら、最近の液体現像系に関しては、ポリエステル系樹脂のバインダー樹脂が好適に用いられるケースがあることが報告されている(例えば、特許文献1〜5参照)。これは、ポリエステル系樹脂が、ポリカーボネート樹脂よりも、機械物性の観点から優れた点が認められているためである。
なお、感光体の最表面に硬化型等の保護層(オーバーコート層)を形成することによりクラックを抑制する手段もあるものの、これはコスト的に不利である。また、保護層は塗布時に下層を侵食しないようにするために、スプレー塗布やリング塗布を実施する必要がある等、製造面での制約が大きい。さらに、保護層が有ることによる電気特性面での副作用もある。これらのことから、保護層の形成は汎用的な解決手段とは言い難い。
一方、感光体の導電性支持体(以下、適宜「支持体」という。)に関しては、ドラム(シリンダー)状のものが大半であるが、性状がフレキシブルで装置内に配置する際の設計自由度が大きい等の理由からシートあるいはベルト状の感光体も使用されている。特に、商業印刷のように高速で大量の印刷が要求される場合には、大径のドラム状感光体よりは、シートあるいはベルト状感光体を用いることが設計面、コスト面から好ましく、使用されるケースが増えている。
また、感光層は、通常、シート状の支持体上に光導電性物質及びバインダー樹脂等を含有する塗布液を、リバースコート、グラビアコート、バーコート、ロールコート、ブレードコート等により塗布して形成される。あるいは、シート状あるいはシームレスベルト状の支持体をドラム状の支持体に巻き付け、ディップコート等の塗布方法で塗布して形成することもできる。これらの層形成方法では、層に含有させる物質を溶剤に溶解させて得られる塗布液が使用される。そして多くの工程では、予め塗布液を調製し、それを塗布するまでの間、保存することが行なわれている。そのため、バインダー樹脂には、塗布工程に用いられる溶剤に対し、溶解性が優れること、および溶解後の塗布液中で安定であることも要求される。
特開2003−295485号公報 特開2006−113352号公報 特開2006−113354号公報 特開2006−89702号公報 特開2005−115091号公報
従来の感光体は、液体現像系に使用するには十分な耐クラック性を有しておらず、繰り返し使用するうちに表面にクラックを生じ、画像欠陥となるケースがあった。また、特許文献1〜5に記載のように感光体の表面層のバインダー樹脂としてポリエステル樹脂を使用したケースでは、若干の改善は認められたものの耐久性面では十分でなく、電気特性面でも劣っていたため、十分な実用性能を有していたとは言い難い。また、そもそも感光体を形成する上で不可欠な、安定な塗布液を製造できないことがあった。
さらに、上記のように乾式現像方式とは異なり液体現像方式では現像用溶剤に対する耐性が感光体に要求され、さらに、トナーの粒径が非常に小さくなるため要求される特性が異なる等の事情により、乾式現像方式で使用されている技術をそのまま転用することは難しく、開発が困難となる一因であった。
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、液体現像系においても十分な耐クラック性を有し、電気特性の良好な、高耐久性を有する電子写真感光体並びに、これを備えた画像形成装置、及び、これを用いた画像形成方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、感光層に特定の構造を有するポリエステル樹脂を含有させることにより、感光層形成用塗布液に用いる溶剤に対してバインダー樹脂が高い溶解性を獲得し、感光層形成用塗布液が優れた塗布液安定性を発揮でき、さらに得られる感光体が良好な電気特性を示すとともに、現像用溶剤に対して優れた耐クラック性を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有する感光層を備えることを特徴とする液体現像用電子写真感光体に存する。
Figure 2010096811
(式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または二価基を表す。)
また、本発明の感光体は、シート状導電性支持体を備えることが好ましい。
本発明の別の要旨は、本発明の液体現像用電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置に存する。
本発明の更に別の要旨は、本発明の液体現像用電子写真感光体を使用して液体現像方式で画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法に存する。
本発明によれば、液体現像系において十分な耐クラック性を有し、電気特性の良好な、高耐久性を有する電子写真感光体並びに、これを備えた画像形成装置、及び、これを用いた画像形成方法を実現できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.概要]
本発明の電子写真感光体(本発明の感光体)は、液体現像用の感光体であって、下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂(以下、適宜「本発明に係るポリエステル樹脂」という。)を含有する感光層を備える。感光層において、本発明に係るポリエステル樹脂は通常はバインダー樹脂として用いられる。また、感光体は通常は導電性支持体(支持体)を備え、この支持体上に前記の感光層を備えるものであるが、本発明の感光体では前記の支持体としてシート状支持体を備えることが好ましい。
Figure 2010096811
(式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または二価基を表す。)
感光体の具体的な構成としては、例えば、支持体上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層とを積層した感光層(積層型感光層。又は機能分離型感光層。)を備える積層型(又は機能分離型)感光体;支持体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層(単層型感光層。又は分散型感光層。)を有する分散型(又は単層型)感光体等が挙げられる。本発明に係るポリエステル樹脂は、単層型感光体でも使用されるが、好ましくは積層型感光体の電荷輸送層に用いられる。
[2.本発明に係るポリエステル樹脂]
[2−1.本発明に係るポリエステル樹脂の構造]
本発明の感光体の感光層は、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有する。
Figure 2010096811
(式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または二価基を表す。)
上記一般式(1)の繰り返し構造中のジカルボン酸残基は、下記式(2)で表される。
Figure 2010096811
式(1),(2)中、Ar及びArは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。このアリーレン基の炭素数は通常6以上、通常12以下であり、好ましくは6である。このアリーレン基の具体例を挙げると、フェニレン基、ナフチレン基、3−メチルフェニレン基等が挙げられる。なお、ArとArとは、同じでもよく、異なっていてもよい。また、式(1)で表される繰り返し構造はポリエステル樹脂中に複数存在するが、Ar同士及びAr同士はそれぞれ、同じでもよく、異なっていてもよい。
式(1),(2)においてアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アルコシキ基等が挙げられる。これらのうち好ましい置換基の具体例を挙げると、感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性とを勘案すれば、以下のものが挙げられる。即ち、アルキル基としては炭素数が通常1以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは2以下のアルキル基が挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基が挙げられ、ハロゲン基としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基が挙げられる。なお、置換基は1種類が置換していてもよく、2種類以上が任意の組み合わせ及び任意の比率で置換していてもよい。
式(2)で表されるジカルボン酸残基の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基などが挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸残基に対応する化合物(以下、適宜「ジカルボン酸成分」という。)の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基が好ましく、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
なお、本発明に係るポリエステル樹脂は、式(2)で表されるジカルボン酸残基として、1種類を含んでいてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含んでいてもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、構造の少なくとも一部に式(1)で表される繰り返し構造を内包すれば、式(2)で表されるジカルボン酸残基以外に他のジカルボン酸残基を共重合成分として含んでいてもよい。他のジカルボン酸残基の具体例としては、アジピン酸残基、スベリン酸残基、セバシン酸残基、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、トルエン−2,5−ジカルボン酸残基、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,3−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,4−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,5−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,6−ジカルボン酸残基、ピリジン−3,4−ジカルボン酸残基、ピリジン−3,5−ジカルボン酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸残基、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸残基、セバシン酸残基、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸残基、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸残基が好ましく、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基が特に好ましい。
なお、本発明に係るポリエステル樹脂は、これらのジカルボン酸残基として、1種類を含んでいてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含んでいてもよい。
ただし、ジカルボン酸残基として式(2)で表されるジカルボン酸残基とその他のジカルボン酸残基とを組み合わせて用いる場合、全ジカルボン酸残基に対する式(2)で表されるジカルボン酸残基の量がモル分率で、70%より大きいことが好ましく、80%より大きいことがより好ましい。
一方、上記一般式(1)の繰り返し構造中の二価ヒドロキシアリール残基は、下記式(3)で表される。
Figure 2010096811
式(1),(3)中、Ar及びArは、Ar及びArと同様に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。なお、ArとArとは、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、式(1)で表される繰り返し構造はポリエステル樹脂中に複数存在するが、Ar同士及びAr同士はそれぞれ、同じでもよく、異なっていてもよい。
式(1),(3)中、Xは単結合または二価基を表す。好適な二価基としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、スルホニル基、シクロアルキレン基、または−CR−等が挙げられる。ここでR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、またはアルコキシ基を表すが、耐久性及び電気特性の観点から、どちらか一方が水素原子であることが好ましい。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性とを勘案して好ましい基の例を挙げると、アルキル基としては炭素数が通常1以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは2以下のアルキル基が挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基が挙げられ、ハロゲン基としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基が挙げられる。
二価ヒドロキシアリール残基に対応する化合物(以下、適宜「二価ヒドロキシアリール成分」という。)の製造の簡便性を勘案すれば、Xの好適な具体例としては、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレン等が挙げられ、より好ましくは−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンが挙げられ、特に好ましくは−CH−、−CH(CH)−が挙げられる。
なお、式(1)で表される繰り返し構造はポリエステル樹脂中に複数存在するが、X同士は同じでもよく、異なっていてもよい。
式(3)で表される二価ヒドロキシアリール残基に対応した二価ヒドロキシアリール成分の具体例としては、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4,3’,5’−テトラメチル−3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)メタン、ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテルが好ましい。
あるいは、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(3−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテルなども挙げられる。
さらには、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサンなども挙げられる。
これらの中でも、二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を考慮すれば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、あるいは、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテルが特に好ましい。
なお、本発明に係るポリエステル樹脂は、式(3)で表される二価ヒドロキシアリール残基として、1種類を含んでいてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含んでいてもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、構造の少なくとも一部に式(1)で表される繰り返し構造を内包すれば、式(3)で表される二価ヒドロキシアリール残基以外に他の二価ヒドロキシ残基を共重合成分として含んでいてもよい。その他の二価ヒドロキシ残基に対応した化合物(以下、適宜「二価ヒドロキシ成分」という。)の具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8オクタンジオール、2−ブテン−1,4ジオール等の脂肪族ジオール類などが挙げられる。
なお、本発明に係るポリエステル樹脂は、これらの二価ヒドロキシ残基として、1種類を含んでいてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含んでいてもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂の粘度平均分子量は、感光層を塗布形成するのに適するよう、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が前記範囲の下限値未満であるとポリエステル樹脂の機械的強度が低下し実用的でなくなる傾向があり、上限値を超えると感光層を適切な膜厚に塗布形成することが困難となる傾向がある。
本発明に係るポリエステル樹脂は、感光体の感光層中に含有され、バインダー樹脂として機能する。この際、本発明に係るポリエステル樹脂は、本発明に係るポリエステル樹脂だけでバインダー樹脂として用いてもよいが、他の樹脂と組み合わせてバインダー樹脂として用いることも可能である。ここで組み合わされる他の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの他の樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂を使用することは、耐溶剤性の観点からは好ましいが、電気特性面で副作用が大きく、塗布液の寿命も短くなる傾向がある。
なお、他の樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ただし、他の樹脂の混合割合は特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るためには、本発明に係るポリエステル樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、ジカルボン酸残基として、上記式(2)に示されるような、中心に屈曲性及び回転自由度の大きいエーテル結合を採用した柔軟な構造を有する。従来のフタル酸系のジカルボン酸残基と比較して、このように柔軟性を有する構造の方が、前述の現像用溶剤によってボイドが形成され更にそこに繰り返し機械的負荷が掛かった場合であっても、それらの外部応力を緩和し、結果的にひび割れからクラックへと成長するのを抑制するのに効果的であると考えられる。例えば本願に係るポリエステル樹脂について針に荷重を掛けて引っ掻き試験を実施した場合、表面硬度は大きくないものの特異的に傷が付き難いことが、それを裏付けている。
なお、特開2007−213044号公報には、本発明に係るポリエステル樹脂に相当する樹脂が記載されているものの、液体現像系での優位性についての記載も示唆もない。一般に乾式現像方式の技術を液体現像用の感光体に適用することが困難とされているところ、現在主流ではない液体現像系の感光体に本発明に係るポリエステル樹脂を適用することは、本発明において初めて試みられたことである。
[2−2.本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法]
次に、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法について説明する。本発明に係るポリエステル樹脂は、公知の重合方法により、二価ヒドロキシアリール残基に対応するモノマー又はオリゴマー(即ち、二価ヒドロキシアリール成分)とジカルボン酸残基に対応するモノマー又はオリゴマー(即ち、ジカルボン酸成分)とを反応させることにより製造することができる。重合方法としては、例えば界面重合法、溶融重合法、溶液重合法などが挙げられる。
例えば、界面重合法による製造の場合は、二価ヒドロキシアリール成分をアルカリ水溶液に溶解した溶液と、ジカルボン酸成分として例えば芳香族ジカルボン酸クロライド成分をハロゲン化炭化水素に溶解した溶液とを混合する。この際、触媒として、四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。重合温度は0℃〜40℃の範囲、重合時間は2時間〜20時間の範囲であるのが、生産性の点で好ましい。重合終了後、水相と有機相とを分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とする本発明に係るポリエステル樹脂を得られる。
界面重合法で用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。なお、アルカリ成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
また、アルカリ成分の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01倍当量〜3倍当量の範囲が好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロルベンゼンなどが挙げられる。なお、ハロゲン化炭化水素は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
触媒として用いられる四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩としては、例えば、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の三級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライドなどが挙げられる。なお、触媒は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
また界面重合法では、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体および2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o,m,p−フェニルフェノール等の一官能性のフェノール;酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリドやそれらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物等が挙げられる。これら分子量調節剤の中でも分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体であり、特に好ましくは、p−(tert−ブチル)フェノール、2,3,6−テトラメチルフェノール、2,3,5−テトラメチルフェノールである。なお、分子量調節剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
[3.導電性支持体]
支持体の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を含有させて導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙;などが主として使用される。また、金属材料等の支持体の表面には、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために、適切な抵抗値を有する導電性材料を塗布するようしてもよい。
支持体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。これらのうち、本発明の感光体においては、支持体としてはシート状のものを用いることが好ましい。中でも具体的には、二軸延伸フィルム等のフィルム上に金属層が形成されたものが特に好適に用いられる。画像形成装置内の設計自由度、感光層形成用塗布液の塗布の容易性、低コスト等の観点からである。
前記のフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の線状ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、機械的強度及び寸法安定性等の点から線状ポリエステル樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。また、耐熱性の観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンナフタレート樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
また、フィルムの厚みは、通常30μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下である。この範囲の厚みにすることにより、コスト上有利で、乾燥後の変形(カール)を防止し、かつ十分な引張り強度等の機械的強度を確保することが可能となる。
また、支持体を構成する金属層の金属としては、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ITO(インジウム−スズ酸化物)等が挙げられるが、中でもアルミニウムが好ましい。なお、これらの金属は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。また、金属層の厚みは、通常40nm以上100nm以下である。
前記フィルムへ金属層を形成する場合、通常は蒸着法により金属蒸着層を形成する。蒸着法は、例えば、前記金属の電熱加熱溶融蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等の公知の蒸着法が用いられる。
また、金属層としては、アルミニウム箔、ニッケル箔等の金属箔や、これら金属を積層したラミネートフィルムを用いることができる。この場合の金属箔の厚みは、5μm以下が好ましい。また、金属箔の上にさらに適切な抵抗値を持つ導電性材料を積層することもできる。
支持体の表面は、平滑であっても良いし、例えば樹脂に粒径の大きな粒子を混合すること等によって、粗面化されていても良い。粗面化することによって、レーザーのような可干渉光に対して干渉縞が発生するのを抑制したり、感光層の接着性を増したりする等の効果が得られる。
[4.下引き層]
支持体と感光層との間には、接着性及びブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、例えば酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物;又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。また酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。なお、一つの粒子には複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
これらの金属酸化物粒子は1種類を用いても良いし2種類上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および下引き層形成用の塗布液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した構造で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。なお、これらは1種類を用いても良いし2種類上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の量比は任意に選べるが、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは100重量%以上であり、通常500重量%以下、好ましくは400重量%以下、より好ましくは380重量%以下、特に好ましくは350重量%以下である。下引き層形成用の塗布液の安定性、塗布性を良好にするためである。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、通常25μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。感光体の特性及び下引き層形成用の塗布液の塗布性を良好にするためである。
また下引き層には、公知の酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
さらに下引き層として、導電層とブロッキング層の二層構成としてもよい。
[5.感光層]
本発明の感光体において、感光層のタイプは特に限定されず、その層内に本発明に係るポリエステル樹脂を含有するものであれば積層型感光層であってもよく単層型感光層であってもよい。中でも積層型感光層が好ましく、その中でも電荷輸送層に本発明に係るポリエステル樹脂を含有させることがより好ましい。
[5−1.電荷発生層]
積層型感光体の電荷発生層は、電荷発生物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷発生層は、具体的には、例えば電荷発生物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液(電荷発生層形成用塗布液)を作製し、これを順積層型感光層の場合には支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷発生物質としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料;などの各種光導電材料が使用できる。特に有機顔料が好ましく、更にはフタロシアニン顔料及びアゾ顔料が特に好ましい。なお、電荷発生物質は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
なかでも電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、その具体例としては、無金属フタロシアニン;銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコーン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類;などが使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などが挙げられる。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型はβ型とも呼ばれ、安定型として知られているものである。D型はY型とも呼ばれる準安定型で、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等が知られている。
これらの電荷発生物質は、通常、その微粒子を例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルプロピオナール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。なお、この際バインダー樹脂として本発明に係るポリエステル樹脂を使用してもよい。また、バインダー樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
電荷発生層における電荷発生物質の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下である。
また、電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上であり、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下である。
電荷発生層には、本発明の効果を著しく損なわない限り上述した以外の成分を含有していてもよい。例えば、電荷発生層には添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために用いられるもので、その例を挙げると、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子求引性化合物、染料、顔料、レベリング剤、残留電位抑制剤、分散補助剤、可視光遮光剤、増感剤、界面活性剤などが挙げられる。なお、可塑剤を用いれば層の機械的強度等が改良でき、残留電位抑制剤を用いれば残留電位を抑制でき、分散補助剤を用いれば分散安定性を向上させることができ、レベリング剤を用いれば塗布液の塗布性を改善できる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコーンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用しても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはシリコーンオイルやワックス、およびフッ素系樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を含有させてもよい。また、無機化合物の粒子を含有させてもよい。
[5−2.電荷輸送層]
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液(電荷輸送層形成用塗布液)を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物などの電子求引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質;などが挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。また、液体現像用の現像液の溶剤(即ち、現像用溶剤)として炭化水素系溶剤を使用し、現像工程において感光体を現像液に長時間浸漬する工程を有する場合には、それらの現像用溶剤に対する溶解性が低い電荷輸送物質を用いることが、耐クラック性向上及び溶剤劣化防止の観点から好ましい。このような炭化水素系溶剤に対して溶解度の低い電荷輸送物質としては、例えば、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体及び同一分子内にそれらのユニットを2つ以上含有するものなどが挙げられる。
なお、これらの電荷輸送物質は、何れか1種類を用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用しても良い。
前記電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に示す。ただし、これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の要旨を逸脱しない限りはいかなる公知の電荷輸送物質を用いてもよい。なお、t−Buはt−ブチル基を表す。
Figure 2010096811
Figure 2010096811
Figure 2010096811
電荷輸送層において、バインダー樹脂としては本発明に係るポリエステル樹脂を用いる。これにより、電荷輸送物質が本発明に係るポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。なお、本発明に係るポリエステル樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。また、上述したように、本発明に係るポリエステル樹脂を他の樹脂と組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質が、通常30重量部以上、好ましくは40重量部以上であり、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下である。
また、電荷輸送層の膜厚は、高解像度化の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは28μm以下である。
また、電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
さらに、電荷輸送層は、電荷発生層と同様に、添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
[5−3.分散型(単層型)感光層]
分散型感光層は、通常、上記のような配合比の電荷輸送層中に、前出の電荷発生物質が分散された構造の層である。
ただし、分散型感光層では、電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが望ましい。具体的には、電荷発生物質の粒子径が、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
また、分散型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると充分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などが生じる可能性がある。したがって、分散型感光層内の電荷発生物質の量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
分散型感光層の膜厚は通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
さらに、分散型感光層は、電荷発生層と同様に、添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
[5−4.各層の塗布方法]
感光層の形成方法に制限は無く、任意の方法を用いることができる。例えば、各層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液(電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液、分散型感光層形成用塗布液、など)を順次塗布し、乾燥させて形成される。
塗布方法は特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法などを用いることができる。また特にシート状の支持体を備えた感光体(シート状感光体)の場合の塗布方法としては、公知のダイコート法、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法等により塗布液を支持体上に塗布して形成される。
塗布後の感光体は、通常、塗布膜の溶剤が実質的に蒸発除去されるまで乾燥工程に付される。乾燥方法としては、従前公知で行なわれている方法を適用することができる。例えば、加熱ローラー、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機等の少なくとも一つによって行なわれる。乾燥温度は通常60℃〜140℃の範囲で実施される。
本発明の感光体がシート状感光体である場合、例えば、その両端部を超音波融着等の公知の方法によって接合してエンドレスベルトとして使用される。また、例えば、シート状感光体をそのままドラムに巻き付けて使用することもできる。ドラムに巻き付ける場合、例えば細巻きにしたロールをドラム内部に保持して巻き出す形を取ることもあれば、1枚のシートを巻き付けることもある。
[6.画像形成装置]
次に、本発明の感光体を用いた画像形成装置の一実施形態について、装置の要部構成を図面を用いて説明する。但し、本発明の実施形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施することができる。
図1は本発明の一実施形態としての画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。この図1に示すように、本実施形態の画像形成装置は、感光体1、帯電手段としての帯電装置2、露光手段としての露光装置3及び現像手段としての現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6及び定着手段としての定着装置(図示せず)が設けられる。
感光体1は、上述した本発明の感光体であれば特に形状に制限はないが、図1ではその一例として、シート状支持体の表面に上述した感光層を形成し、超音波融着によってエンドレスベルト状とした感光体を示している。
帯電装置2は感光体1を帯電させるもので、感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる装置である。図1では帯電装置2の一例としてコロナ放電型の帯電装置(コロトロン)を示しているが、他にも、例えばスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ローラや帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下、適宜「感光体カートリッジ」と言う。)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述する現像液についても、多くの場合、カートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているカートリッジ中の現像液が無くなった場合に、このカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいカートリッジを装着することができるようになっている。更に、感光体1、帯電装置2及び現像液が全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、感光体1に露光を行なって感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体の支持体を光透過性にし、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。
露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。中でも波長380nm〜500nmの光を用いると感光体を、より小さなスポットサイズの光で露光することができ、高解像度で高階調性を有する高品質の画像を形成することができることから、高品質の画像を得たい際には好ましい。
現像装置4は液体現像装置を表す。使用される現像液は、通常、絶縁性の高い現像用溶剤(通常は有機溶剤)中に荷電性を付与した顔料及び樹脂からなるトナーを分散したものである。液中で荷電したトナーが、現像電界に応じ電気泳動していく機構であるため、粘性を有する現像用溶剤中のトナーの移動度などが関係するが、基本的な電界モデルは乾式現像と同様である。
図2(a),(b)に液体現像装置4のユニット構成の一例を模式的に示す。
図2(a)に示す液体現像装置4は、感光体1に近接又は当接する現像ローラ7とスクイズローラ8とを感光体1の移送方向に沿ってこの順に備える。そして、まず現像ローラ7から濃度の低い現像液を感光体に転写して現像を行い、続いて感光体1上の余剰な現像用溶剤をスクイズローラ8で電界の力も借りながら搾り取ることで、感光体1上に薄く均一で密度の高いトナー像を形成できるようになっている。
一方、図2(b)に示す液体現像装置4は、感光体1に近接する現像ローラ7と、現像ローラ7に当接したスクイズローラ8とを備える。そして、現像前に現像ローラ7とスクイズローラ8間の電界及び圧力により、高濃度、高帯電の薄いトナー層を現像ローラ7上に予め形成し、続いてこのトナー層を、感光体1と現像ローラ7間の電界により現像することで、高密度のトナー像を形成できるようになっている。
なお、必要に応じて、液体現像装置4には現像ローラ7及びスクイズローラ8に残留した現像液を除去するクリーニングローラ9を設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、例えばコロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体,転写材)Pに転写するものである。なお、図1は感光体から記録紙Pへの直接転写方式を表しているが、感光体から中間転写ベルト、中間転写ローラ等の中間転写体にいったんトナー像を転写した後に記録紙Pに転写する、中間転写方式も用いることができる。
クリーニング装置6について特に制限はなく、例えばブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
記録紙P上に転写されたトナーは、通常、定着器(図示せず)を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、例えば熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、現像液を用いた液体現像方式の画像形成方法によって、次のようにして画像の記録が行なわれる。
即ち、図1に示すように、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される(帯電工程)。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する(露光工程)。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう(現像工程)。
図2(a),(b)に示すように現像装置4の現像ローラ7に担持された帯電トナーが感光体1の表面に接触あるいは近接すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される(手印写工程)。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される(クリーニング工程)。トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで(定着工程)、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、感光体に露光あるいは交流電圧の印加を行なうことで感光体上の余分な帯電電荷をキャンセルする工程である。除電装置としては、例えば、蛍光灯、LED等の露光装置や、交流印加が可能なワイヤ等が使用される。また除電工程で露光を用いる場合、光強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、複数種のトナーを用いたフルカラー方式の構成としてもよい。
さらに、例えばエンドレスベルト状感光体に代えて、金属ドラム上にシート状感光体を静電気力等によって貼り付けた形態にしてもよい。
なお、感光体1は、必要に応じて、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真カートリッジ)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以上詳述したような本発明の感光体は、感光層に本発明のポリエステル樹脂を含有するため、液体現像系において十分な耐クラック性を有し、電気特性が良好であり、且つ高い耐久性を有する。したがって、上述した画像形成装置及び画像形成方法によれば、高画質の画像形成を、液体現像系に特有のクラックを生じることなく長期間にわたって行うことができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の製造例、実施例及び比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
<樹脂の製造>
まず、樹脂の粘度平均分子量の測定方法について説明する。
樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの試料溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間tが136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。そして、以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
以下、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
[製造例1(樹脂X)]
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム23.01gとHO 940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこにビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン(以下、BP−a)49.36gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5766g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.2955gを順次反応槽に添加した。
次に、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド65.27gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。反応槽の外温を20℃に保ち、反応槽内のアルカリ水溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を1時間かけて滴下した。さらに5時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン783mLを加え、撹拌を7時間続けた。その後、酢酸8.34mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。
この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液942mLにて洗浄を2回行い、次に0.1N塩酸942mLにて洗浄を2回行い、さらにHO 942mLにて洗浄を2回行った。洗浄後の有機層をメタノール6266mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的の樹脂Xを得た。得られた樹脂Xの粘度平均分子量は51,400であった。樹脂Xの繰り返し構造単位を以下に示す。
Figure 2010096811
[製造例2(樹脂Y)]
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム22.34gとHO 940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン(BP−b)51.04gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5579gおよび2,3,5−トリメチルフェノール1.0613gを順次反応槽に添加した。
次に、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド63.37gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。反応槽の外温を20℃に保ち、反応槽内のアルカリ水溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を1時間かけて滴下した。さらに5時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン783mLを加え、撹拌を7時間続けた。その後、酢酸8.10mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。
この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液942mLにて洗浄を2回行い、次に0.1N塩酸942mLにて洗浄を2回行い、さらにHO 942mLにて洗浄を2回行った。洗浄後の有機層をメタノール6266mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的の樹脂Yを得た。得られた樹脂Yの粘度平均分子量は51,700であった。樹脂Yの繰り返し構造単位を以下に示す。
Figure 2010096811
<感光体シートの製造>
[実施例1]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランとをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒と、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル% 60/15/5/15/5)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液(下引き層形成用塗布液)を得た。
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折において図3に示す回折ピークを示すD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン5.5重量部と、図4に示す回折ピークを示すA型(β型)オキシチタニウムフタロシアニン4.5重量部とを1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行ない顔料分散液を作製した。こうして得られた160重量部の顔料分散液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部と適量の1,2−ジメトキシエタンを加え、最終的に固形分濃度4.0%の分散液(電荷発生層形成用塗布液)を作製した。
この電荷発生層形成用塗布液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイアバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、以下に示すヒドラゾン系電荷輸送物質(CTM)60重量部、製造例1で製造した樹脂X100重量部、及び、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶剤(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
この電荷輸送送形成用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートAを作製した。このとき、樹脂Xの溶剤に対する溶解性は良好であった。
Figure 2010096811
[実施例2]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xを製造例2で製造した樹脂Yに代えた以外は、実施例1と同様にして感光体シートBを作製した。このとき、樹脂Yの溶剤に対する溶解性は良好であった。
[比較例1]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに、下記構造のポリエステル樹脂Zを用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートCを作製した。樹脂Zの粘度平均分子量は52,000であった。
Figure 2010096811
[比較例2]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに下記繰り返し構造単位で形成されるポリカーボネート樹脂Vを用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートDを作製した。このポリカーボネート樹脂Vの粘度平均分子量は50,500であった。
Figure 2010096811
[実施例3]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに、実施例2で使用した樹脂Yと比較例2で使用した樹脂Vの重量比50:50の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートEを作製した。
<感光体シートの評価>
製造した感光体シートA〜Eについて以下の電気特性試験、摩擦試験、クラック試験を行なった。これらの結果を表1にまとめた。
[電気特性試験]
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム支持体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cmで露光したときの露光後表面電位(以下、VLと呼ぶことがある)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとし、高速応答の条件とした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%(以下、NN環境と呼ぶことがある)で行なった。
[摩擦試験]
全自動動摩擦摩耗試験機(協和界面化学(株)社製DFPM−SS)に感光体シートをセットし、感光体表面にトナー(ヒュレットパッカード社製LaserJet4用トナー)を0.1mg/cmとなるように均一に乗せた後、ウレタンゴム製クリーニングブレード(シャープ(株)製SF−7800用クリーニングブレード)を1cm幅に切断したもの)を45°の角度で試料に当て、加重200g、速度5mm/秒、ストローク20mmで移動させる動作を100回繰り返した時の値を感光体の動摩擦係数値とした。
[クラック試験]
上記感光体シートを切り出して、感光層を外側にして24mmの円筒状に巻き、液体現像のキャリア液としてよく用いられる高沸点の炭化水素系溶剤である、Exxon Chemicals社製Isopar L(登録商標)中に15分間完全に浸して、感光層表面のクラック発生有無を時間を追って確認した。
Figure 2010096811
この結果から、実施例1,2,3の感光体シートA,B,Eのように、式(1)の繰り返し構造を含む本発明に係るポリエステル樹脂を含有する感光体は、耐クラック性に優れていることがわかる。また、摩擦特性及び電気特性も、実使用可能な良好な結果を示している。
[製造例3(樹脂W)]
次に、実際のプリンターに搭載する感光体シートを作製する目的で、製造例2の樹脂Yについて、目標とする分子量を変えて、大量に合成した。これを樹脂Wと呼ぶ。以下に製造法を記す。
反応槽1に、脱塩水392Lと25%水酸化ナトリウム水溶液40.58kgと1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン(23.01kg)を投入、攪拌し、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタンのアルカリ水溶液を調製した後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.2552kgと2,3,5−トリメチルフェノール0.6725kgを順次反応槽に投入した。
反応槽2に、ジクロロメタン286kgとジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド28.20kgを投入、撹拌し、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライドのジクロロメタン溶液を調製した。
反応槽1の外温を20℃に保ち、反応槽1を攪拌しながら、反応槽2のジクロロメタン溶液を1時間かけて反応槽1へ投入した。反応槽1の攪拌を4時間続けた後、ジクロロメタン468kgを加え、撹拌を8時間続けた。その後、酢酸3.86kgを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。
この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液424Lで洗浄し、有機層を分離した後、有機層の遠心分離操作を行い、有機層中に残存している水分を除去した。再度、得られた有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液424Lで洗浄し、有機層を分離した後、有機層の遠心分離操作を行い、有機相中に残存している水分を除去した。
この有機層を0.1N塩酸424Lで4回洗浄し、さらに脱塩水424Lで2回洗浄した後、分離した有機層の遠心分離操作を行い、有機層中に残存している水分を除去した。
温水造粒装置にて有機層中に溶解している樹脂を取り出し、ろ過、乾燥して目的の樹脂W41.7kgを得た。得られた樹脂Wの粘度平均分子量は41,000であった。樹脂Wの繰り返し構造は樹脂Yと同じだが、以下に示す。
Figure 2010096811
[実施例4]
幅650mmであり、シリカ粒子を含有させることで表面が粗面化(Ra=0.10μm)された厚み75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、70nmの厚さでアルミニウム蒸着膜を設け、巻き取り、長さ1000mのロールとした。
次に、平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム粒子(日本アエロジル社製 Aluminum Oxide C)を、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中で超音波により分散させることにより、酸化アルミニウムの分散スラリーとし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール(重量比7/3)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、酸化アルミニウム/共重合ポリアミドを重量比1/1で含有する固形分濃度8.0%の分散液(下引き層形成用塗布液)を作製した。
この下引き層形成用塗布液を、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのロールを巻き出しながら、リバースコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように塗布し、下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折において図3に示す回折ピークを示すD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン5.5重量部と、図4に示す回折ピークを示すA型(β型)オキシチタニウムフタロシアニン4.5重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部とを混合し、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を製造した。この顔料分散液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5.0重量% 1,2−ジメトキシエタン溶液50重量部、およびフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5重量% 1,2−ジメトキシエタン溶液50重量部を混合し、更に適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて最終的に固形分濃度3.4%の分散液(電荷発生層形成用塗布液)を調製した。
このようにして得られた電荷発生層形成用塗布液を、上述の下引き層を形成したアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのロールを巻き出しながら、リバースコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が0.3μmとなるように塗布し、電荷発生層を設けた。
次に、実施例1で使用した電荷輸送物質35重量部、製造例3で製造した樹脂W100重量部、酸化防止剤(チバガイギー社製、商品名Irganox1076)8重量部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフランとトルエンの混合溶剤(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この電荷輸送層形成用塗布液は、1ヶ月経過後もゲル化等見られず、安定であった。
このようにして得られた電荷輸送層形成用塗布液を、上述の下引き層及び電荷発生層を形成したアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのロールを巻き出しながら、ダイコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が18μmとなるように塗布し、電荷輸送層を設けた。塗布幅は、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層ともに、538mm〜546mmに規制して実施した。
このようにして得られた感光層を形成されたロール状シートを、連続式の断裁機を用いて410mm×650mmのサイズに切り出し、感光体シートFを得た。
[比較例3]
実施例4の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Wの代わりに下記繰り返し構造単位で形成されるポリカーボネート樹脂Uを用いた以外は、実施例4と同様にして感光体シートGを作製した。このポリカーボネート樹脂Uの粘度平均分子量は41,000である。
Figure 2010096811
[比較例4]
実施例4の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Wの代わりに比較例1で使用したポリエステル樹脂Zを用いた以外は、実施例4と同様にして感光体シートHを作製した。このポリエステル樹脂Zの粘度平均分子量は40,000である。
<実機試験>
製造した感光体シートF,G,Hについて以下の実機試験を行なった。
[実機試験]
Indigo社製の液体現像タイプのカラープリンタE−Print1000(Turbo Stream)に感光体シートF,G,Hをそれぞれを装着し、画像試験を行なった。初期のシアンでのベタ濃度、および5%カラー画像で10,000枚の耐刷試験を行なった時の画質評価を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2010096811
これから、実施例の感光体シートFは、初期、耐久後ともに良好な画像特性および耐クラック性を示していることがわかる。
以上の結果より、本発明に係るポリエステル樹脂を含有する感光体は、電荷輸送層形成用塗布液とした場合に高い塗布液安定性を示し、且つ、電気特性、画像濃度(大ほど濃い)及び耐クラック性に優れることがわかる。
[参考例1]
感光体A〜Dに関して、最表面のユニバーサル硬度試験、および引っ掻き試験を実施した。
ユニバーサル硬度試験は、フィッシャーインスツルメント社製FISCHERSCOPE H100C(微小硬度計)を使用して、ビッカース圧子を4mN/秒の負荷で5秒間押込み、押込み深さ1μmの値を測定した。
引っ掻き試験は、サファイア針(R=0.05mm、先端角60°)を感光体表面に垂直に設置し、速度:100mm/分の条件で表面方向にスキャンした際の傷の有無を、荷重を変えて観察した。
結果を表3に示す。この結果から、本発明の感光体は表面硬度は小さいものの傷が付きにくく、外部からの機械的負荷(応力)を緩和する特性において優れていることが分かる。
Figure 2010096811
本発明は液体現像方式の画像形成装置及びそれに用いられる電子写真感光体、並びに、それらを用いた画像形成方法に用いて好適である。
本発明の一実施形態としての画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。 (a),(b)はいずれも、本発明の一実施形態としての画像形成装置の液体現像装置のユニット構成の一例を模式的に示す図である。 実施例で用いられるD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。 実施例で用いられるA型(β型)オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
符号の説明
1 感光体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 現像ローラ
8 スクイズローラ
9 クリーニングローラ
P 記録紙

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有する感光層を備えることを特徴とする液体現像用電子写真感光体。
    Figure 2010096811
    (式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または二価基を表す。)
  2. シート状導電性支持体を備えることを特徴とする請求項1記載の液体現像用電子写真感光体。
  3. 請求項1又は請求項2記載の液体現像用電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項1又は請求項2記載の液体現像用電子写真感光体を使用して液体現像方式で画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
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