以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、その感光層は下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有し、さらに下記一般式(2)で表されるジアミン化合物を含有している。感光層に含まれる該ポリエステル樹脂はバインダー樹脂として用いられ、該ジアミン化合物は電荷輸送材料として用いられる。
(一般式(1)中、Ar1〜Ar4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、X1は単結合又は二価基を表す。)
(一般式(2)中、Ar5〜Ar8はそれぞれ独立に炭素数8以下の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar9及びAr10はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
感光層の具体的な構成としては、導電性支持体上に電荷発生材料を主成分とする電荷発生層と、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層とを積層した積層型感光層、及び、導電性支持体上に電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生材料を分散させた分散型(単層型)感光層とが代表例として挙げられる。本発明において、上記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂と、上記一般式(2)で表されるジアミン化合物とは、通常、同一の層に用いられ、好ましくは積層型感光層の電荷輸送層に用いられる。
(ポリエステル樹脂)
本発明の電子写真感光体の感光層は、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂を含有する。
一般式(1)中、Ar1〜Ar4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。また、X1は単結合又は二価基を表している。前記アリーレン基としては、特に限定はされないが、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基が挙げられる。中でも、製造コストの面から、フェニレン基とナフチレン基が特に好ましい。また、フェニレン基とナフチレン基を比較した場合、製造コストの面に加えて合成のし易さの面で、フェニレン基がより好ましい。
前記アリーレン基にそれぞれ独立に有していても良い置換基については特に限定されないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、縮合多環基、ハロゲン基を好ましく挙げることができる。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が好ましく、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が特に好ましく、具体的にはメチル基が最も好ましい。Ar1〜Ar4それぞれの置換基の数に特に制限は無いが、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることが特に好ましい。
さらに、一般式(1)中、Ar1とAr2は同じ置換基を有する同じアリーレン基であることが好ましく、メチル基を置換基として有するフェニレン基であることが特に好ましい。また、Ar3とAr4も同じアリーレン基であることが好ましく、置換基を有さないフェニレン基であることが特に好ましい。
一般式(1)中、X1は単結合又は二価基を表しており、二価基としては、硫黄原子、酸素原子、スルホニル基、シクロアルキリデン基、又は−CR2R3−が挙げられる。R2、R3は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、又はアルコキシ基を表す。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アリール基として、フェニル基、ナフチル基が好ましく、ハロゲン基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましい。また、アルキル基としては、炭素数が1〜10のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数が1〜8であり、特に好ましくは炭素数が1〜2である。ポリエステル樹脂を製造する際に用いる二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を勘案すれば、X1として、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、シクロヘキシリデンが挙げられ、好ましくは、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、シクロヘキシリデンであり、特に好ましくは−CH2−、−CH(CH3)−である。
本発明においては、前記ポリエステル樹脂が、下記一般式(3)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂であることが好ましい。下記一般式(3)中、Ar11〜Ar14はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、R1は水素原子又はアルキル基を表す。
上記一般式(3)中、Ar11〜Ar14は上記Ar1〜Ar4にそれぞれ対応するものであり、特に好ましくは、それぞれ置換基を有していてもよいフェニレン基である。また、好ましい置換基としては、水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。さらに、一般式(3)中、Ar11とAr12はメチル基を有する同じフェニレン基であり、Ar13とAr14は置換基を有さないフェニレン基であることが特に好ましい。また、R1は、水素原子又はアルキル基を表すが、該アルキル基は、好ましくは炭素数が1〜10であり、さらに好ましくは炭素数が1〜8であり、特に好ましくはメチル基である。
上記ポリエステル樹脂の中の二価ヒドロキシアリール残基となる二価ヒドロキシアリール成分は、下記一般式(4)で表されるが、好ましくは下記一般式(5)で表される。
一般式(4)中、Ar1,Ar2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、X1は単結合又は二価基を表す。このAr1,Ar2及びX1は、既述のとおりである。
一般式(5)中、Ar11,Ar12は、独立に置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、R1は水素原子又はメチル基を表す。このAr11,Ar12及びR1は、既述のとおりである。
具体的には、一般式(5)中のR1が水素原子の場合、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(3−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−ヒドロキシフェニル)メタン、(3−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)メタン、ビス(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)メタン、(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタンが挙げられる。また、R1がメチル基の場合は、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(3−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(3−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エタン、1−(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1−(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタンが挙げられる。
このなかでも、二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を考慮すれば、R1が水素原子の場合、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタンが特に好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。また、R1がメチル基の場合には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタンが特に好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
一般式(4)に一般式(5)は含まれるが、以下に、上記一般式(5)の例示以外の一般式(4)の化合物についても説明する。
一般式(4)で表される二価ヒドロキシアリール成分の具体例としては、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4,3’,5’−テトラメチル−3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)メタン、ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルフェニル)シクロヘキサンが挙げられ、好ましくは、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサンである。あるいは、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(3−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、(3−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、さらには、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
この中でも、二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を考慮すれば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、あるいは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテルが特に好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
上記ポリエステル樹脂の中のジカルボン酸残基であるジカルボン酸成分は、下記一般式(6)又は(7)で表される。
一般式(6)中、Ar3、Ar4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、一般式(7)中、Ar13、Ar14もそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基である。なお、Ar3、Ar4及びAr13、Ar14は既述のとおりであるので、ここでは省略する。
ジカルボン酸残基の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基が好ましく、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
上記ポリエステル樹脂は、他のジカルボン酸成分を含み、構造の一部に一般式(1)を内包する樹脂でもよい。その他のジカルボン酸残基の具体例としては、アジピン酸残基、スベリン酸残基、セバシン酸残基、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、トルエン−2,5−ジカルボン酸残基、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,3−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,4−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,5−ジカルボン酸残基、ピリジン−2,6−ジカルボン酸残基、ピリジン−3,4−ジカルボン酸残基、ピリジン−3,5−ジカルボン酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸残基、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸残基が挙げられ、好ましくは、アジピン酸残基、セバシン酸残基、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸残基、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸残基であり、特に好ましくは、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基であり、これらのジカルボン酸残基を複数組み合わせて用いることも可能である。
なお、本発明を構成するジカルボン酸残基と上述した他のジカルボン酸残基とを有する場合、本発明を構成するジカルボン酸残基が、繰り返しユニットの個数として70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。最も好ましくは、本発明を構成するジカルボン酸残基のみを有する場合、すなわち、本発明を構成するジカルボン酸残基が、繰り返しユニットの個数として100%である場合である。
また、本発明を構成するポリエステル樹脂は、他の樹脂と混合して、電子写真感光体に用いることも可能である。ここで併用される他の樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。
併用する樹脂の混合割合は、特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るためには、本発明のポリエステル樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましく、特には他の樹脂を併用しないことが好ましい。
(ポリエステル樹脂の製造方法)
次に、一般式(1)又は(3)で表される繰り返し構造を有するポリエステル樹脂の製造方法について説明する。該ポリエステル樹脂は、公知の方法により、例えば二価ヒドロキシアリール成分とジカルボン酸成分とにより製造することができ、その製造方法として、公知の重合方法を用いることができる。例えば界面重合法、溶融重合法、溶液重合法などが挙げられる。
例えば、界面重合法により上記ポリエステル樹脂を製造する場合は、二価ヒドロキシアリール成分をアルカリ水溶液に溶解した溶液と、芳香族ジカルボン酸クロライド成分を溶解したハロゲン化炭化水素の溶液とを混合する。この際、触媒として、四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。重合温度は0〜40℃の範囲、重合時間は2〜20時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。重合終了後、水相と有機相を分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とする樹脂が得られる。
界面重合法で用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を挙げることができる。アルカリの使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01〜3倍当量の範囲が好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロルベンゼン等を挙げることができる。触媒として用いられる四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩としては、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の三級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライド等が挙げられる。
また、界面重合法では、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体及び2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類、o,m,p−フェニルフェノール等の一官能性のフェノール、酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリドやそれらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物等が挙げられる。これら分子量調節剤の中でも分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体であり、特に好ましくは、p−(tert−ブチル)フェノール、2,3,6−テトラメチルフェノール、2,3,5−テトラメチルフェノールである。
一般式(1)又は(3)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂において、それぞれの粘度平均分子量は、感光層を塗布形成するのに適するよう、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下し実用的でなく、300,000以上であると、感光層を適当な膜厚に塗布形成することが困難である。
上述したポリエステル樹脂は電子写真感光体に用いられ、該感光体の導電性支持体上に設けられる感光層中のバインダー樹脂として用いられる。
(ジアミン化合物)
次に、ジアミン化合物について説明する。本発明において、感光層に含まれる下記一般式(2)で表されるジアミン化合物は電荷輸送材料として含まれる。
一般式(2)中、Ar5〜Ar8はそれぞれ独立に炭素数8以下の置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基がより好ましい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子が挙げられるが、さらにこれらが置換基を有していてもよい。なかでも、置換基としては、アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基である。また、Ar5〜Ar8のフェニル基には、置換基が独立に複数存在してもよい。
Ar9及びAr10はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基等が挙げられるが、フェニレン基がより好ましい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基、ベンジル基やフェネチル基等のアラルキル基が挙げられ、さらにこれらが置換基を有していてもよい。なかでも、好ましいAr9及びAr10は、無置換又はメチル基置換のフェニレン基である。
次に、一般式(2)で示される化合物について、その構造の具体例を例示する。以下の例示化合物a〜o、p1〜p24は、本発明を詳細に説明するために例示するものであり、本発明の趣旨に反しない限り以下の構造に限定されるものではない。
上述のとおり、電荷輸送材料として一般式(2)で表されるジアミン化合物が用いられるが、該ジアミン化合物は単独で用いても他の電荷輸送性材料と併用で使用しても良い。併用する電荷輸送性材料としては、公知の材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性材料、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性材料等が挙げられる。これらの中で、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。また、一般式(2)で表される複数の電荷輸送材料を含むことも可能で、その場合にはさらに良い特性を得ることができる。
(導電性支持体)
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のため及び欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合には、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法や研磨処理方法を施して粗面化したものであっても良い。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化したものであっても良い。
(下引き層)
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂、又は、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子や、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。このように、金属酸化物粒子として、1種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すので好ましい。
バインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から0.1μm以上25μm以下が好ましい。また、下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
(感光層)
次に、導電性支持体上に(前述の下引き層を設ける場合は下引き層上に)形成される感光層について説明する。感光層は、上述した一般式(1)又は(3)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂と、上述した一般式(2)で表されるジアミン化合物とを含有する層であり、その型式としては、電荷発生材料と電荷輸送材料(該ジアミン化合物を含む)とがバインダー樹脂であるポリエステル樹脂中に分散又は溶解した同一層からなる単層型と、電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散又は溶解した電荷発生層及び電荷輸送材料(該ジアミン化合物を含む)がバインダー樹脂であるポリエステル樹脂中に分散又は溶解した電荷輸送層の二層からなる積層型とが挙げられるが、そのいずれの形態であってもよい。一般に、電荷輸送材料は、単層型でも積層型でも、電荷移動機能としては同等の性能を示すことが知られている。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した順積層型感光層と、逆に、電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。なお、以下においては、特に断りのない限り、積層型感光体の場合を例にして説明する。
(電荷発生層)
感光層が積層型である場合、その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては、例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、又は、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等、各種の光導電材料が使用できる。中でも有機顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの電荷発生材料は、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の電荷発生材料の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料30重量部以上500重量部以下の範囲で使用され、その膜厚は通常0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.15μm以上0.6μm以下が好適である。
電荷発生材料としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン化合物が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いたものであっても良いし、いくつかのフタロシアニン化合物を混合状態で用いたものであっても良い。フタロシアニン化合物を混合状態で用いる場合、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
(電荷輸送層)
感光層が積層型である場合、その電荷輸送層に使用される電荷輸送材料として、上記一般式(2)で表されるジアミン化合物が用いられる。上述のとおり、該ジアミン化合物は単独で用いても他の電荷輸送性材料と併用で使用しても良く、こうした電荷輸送材料が、上記一般式(1)又は(3)で表される繰り返し構造のポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
バインダー樹脂と電荷輸送材料の割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送材料30〜200重量部、好ましくは40〜150重量部の範囲で使用される。また、上記ジアミン化合物を他の電荷輸送材料と併用する場合、ジアミン化合物とその他の電荷輸送材料との割合は任意であるが、ジアミン化合物を、通常50重量%以上、好ましくは90重量%以上とする。特に、電荷輸送材料としてジアミン化合物のみを用いることが好ましい。また、電荷輸送層の膜厚は、一般に5〜50μm、好ましくは10〜45μmがよい。
なお、電荷輸送層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために、周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤等の添加物を含有させても良い。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
次に、分散型(単層型)感光層について説明する。感光層が分散型である場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、前出の電荷発生材料が分散される。その場合の電荷発生材料の粒子径は、充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生材料の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
分散型感光層の膜厚は、通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmである。また、この場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
なお、上記分散型感光層又は積層型感光層の上には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けても良い。また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
(各層の形成方法)
電子写真感光体を構成する上記各層は、含有させる材料を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により順次塗布して形成される。これらの中でも生産性の高さから浸漬塗布方法が好ましい。
塗布液の作製に用いられる溶剤、すなわち、溶媒又は分散媒に特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
また、溶剤の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶剤の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
本発明で用いるバインダー樹脂である上記ポリエステル樹脂は、塗布工程に用いられる溶剤に対し、溶解性に優れると共に、溶解後の塗布溶液の安定性にも優れるので好ましい。
[画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電部、帯電部材)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の電子写真感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ、帯電フィルム等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(本発明の電子写真感光体カートリッジ。以下適宜、「感光体カートリッジ」という)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。ただし、帯電装置2は、カートリッジとは別体に、例えば、画像形成装置の本体に設けられていてもよい。そして、例えば、電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、一般に単色光が好ましく、例えば、波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。
現像装置4は、露光した電子写真感光体1上の静電潜像を目に見える像に現像することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等が挙げられる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。ただし、現像ローラ44と電子写真感光体1とは当接せず、近接していてもよい。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、通常、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は必要に応じて設けられ、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉砕トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4μm〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。なお、残留トナーが少ないか、又は、ほとんど無い場合には、クリーニング装置6は無くてもかまわない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。すなわち、先ず、電子写真感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された電子写真感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その電子写真感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは電子写真感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに電子写真感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
また、本実施形態では本発明の電子写真感光体カートリッジを、電子写真感光体1及び帯電装置2を備えた感光体カートリッジを例示して説明したが、本発明の電子写真感光体カートリッジは電子写真感光体1と、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4のうちの少なくともいずれか一つとを備えていればよい。具体的には、例えば、本発明の電子写真感光体カートリッジは、電子写真感光体1、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4を全て備えたカートリッジとして構成してもよい。
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
[樹脂の製造]
まず、粘度平均分子量の測定について説明する。ポリエステル樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00g/Lとなる溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t0−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
以下、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
(製造例1:ポリエステル樹脂X)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム23.01gとH2O940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこにビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン49.36gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5766g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.2955gを順次反応槽に添加した。次に、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド65.27gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。重合槽の外温を20℃に保ち、反応槽内のアルカリ水溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を1時間かけて滴下した。さらに5時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン783mLを加え、撹拌を7時間続けた。その後、酢酸8.34mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液942mLにて洗浄を2回行ない、次に0.1N塩酸942mLにて洗浄を2回行い、さらにH2O942mLにて洗浄を2回行なった。洗浄後の有機層をメタノール6266mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂Xを得た。得られたポリエステル樹脂Xの粘度平均分子量は51,400であった。ポリエステル樹脂Xの繰り返し構造を以下に示す。
(製造例2:ポリエステル樹脂Y)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム22.34gとH2O940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン51.04gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5579g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.0613gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド63.37gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。重合槽の外温を20℃に保ち、反応槽内のアルカリ水溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を1時間かけて滴下した。さらに5時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン783mLを加え、撹拌を7時間続けた。その後、酢酸8.10mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液942mLにて洗浄を2回行い、次に0.1N塩酸942mLにて洗浄を2回行い、さらにH2O942mLにて洗浄を2回行なった。洗浄後の有機層をメタノール6266mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂Yを得た。得られたポリエステル樹脂Yの粘度平均分子量は51,700であった。ポリエステル樹脂Yの繰り返し構造を以下に示す。
[感光体シートの製造]
(実施例1)
下引き層用分散液を次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行ない顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液160重量部と、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部と、適量の1,2−ジメトキシエタンとを混合して、最終的に固形分濃度4.0%の分散液を作製した。
この分散液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイアバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、以下に示すジアミン化合物(A)の電荷輸送材料50重量部、製造例1で製造したポリエステル樹脂X100重量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートAを作製した。このとき、ポリエステル樹脂Xの溶媒に対する溶解性は良好であった。
(実施例2)
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いたポリエステル樹脂Xを、製造例2で製造したポリエステル樹脂Yに変更した以外は、実施例1と同様にして感光体シートBを作製した。この時の電荷輸送層形成用塗布液において、ポリエステル樹脂Yの溶媒に対する溶解性は良好であった。
(実施例3)
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた電荷輸送材料を、下記構造のジアミン化合物(B)25重量部と(C)25重量部とを混合した計50重量部の電荷輸送材料に変更した以外は、実施例2と同様にして感光体シートCを作製した。
(比較例1)
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた電荷輸送材料を、特開2002−80432号公報中に示された下記構造を主成分とする異性体からなる電荷輸送材料(D)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光体シートDを作製した。
(比較例2)
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた電荷輸送材料(A)50重量部を、下記構造の電荷輸送材料(E)45重量部と(F)5重量部とを混合した計50重量部の電荷輸送材料に変更した以外は、実施例2と同様にして感光体シートEを作製した。
(比較例3)
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた電荷輸送材料(A)50重量部を、下記構造の電荷輸送材料(G)50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして感光体シートFを作製した。
(比較例4)
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた電荷輸送材料(A)50重量部を、下記構造の電荷輸送材料(H)50重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして感光体シートGを作製した。
(比較例5)
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いたポリエステル樹脂Yを、下記繰り返し構造単位で形成されるポリカーボネート樹脂Zに変更した以外は、実施例2と同様にして感光体シートHを作製した。このポリカーボネート樹脂Zの粘度平均分子量は50,500である。
(比較例6)
比較例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いたポリエステル樹脂Yを、上記繰り返し構造単位で形成されるポリカーボネート樹脂Zに変更した以外は、比較例1と同様にして感光体シートIを作製した。
(比較例7)
比較例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いたポリエステル樹脂Yを、上記繰り返し構造単位で形成されるポリカーボネート樹脂Zに変更した以外は、比較例3と同様にして感光体シートJを作製した。
[特性評価]
製造した感光体シートA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jについて以下の電気特性試験と摩耗試験を行なった。これらの結果を表1にまとめた。
(電気特性試験)
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを外径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が−(マイナス。以下同じ。)700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cm2で露光したときの100ミリ秒後の露光後表面電位(以下、VLと呼ぶことがある。)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとし、高速応答の条件とした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%(以下、NN環境と呼ぶことがある。)及び、温度5℃、相対湿度10%(以下、LL環境と呼ぶことがある。)で行なった。
(摩耗試験)
上記感光体シートを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(Taber社製)により、摩耗評価を行なった。試験条件は、23℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS−10Fを用いて、荷重なし(摩耗輪の自重)で1000回回転後の摩耗量を試験前後の重量を比較することにより測定した。
電荷輸送材料(E)/(F)を用いた感光体Eは、LL環境では十分に帯電せず、特性を評価することができなかった。
この結果から、実施例1〜3の感光体A,B,C及び比較例1〜4の感光体D,E,F,Gのように、本発明を構成する特定のポリエステル樹脂を含有する感光体は、テーバー試験の結果に示されるように、耐摩耗性に優れていることがわかる。
ところで、比較例5〜7の感光体H,I,Jの電気特性の結果が示すように、感光体用として使用されるポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂とした感光体では、本発明のジアミン化合物(A)は、本発明の範囲外である電荷輸送材料(D)や(G)に比して、大きな利点は見られない。
一方、本発明を構成するポリエステル樹脂Yをバインダー樹脂とした感光体では、本発明を構成するジアミン化合物(A)を用いた実施例2の感光体BのNNでのVLが−55Vであるのに対し、置換基の炭素数が8を超えた本発明範囲外のジアミン化合物(D)を用いた比較例3の感光体Dでは−83Vであり、その他の電荷輸送材料を用いた場合も、−77V、−65V、−82Vであり、本発明を構成するジアミン化合物を用いた場合のみ、特に好ましい電気特性を示すことがわかる。特に、一般式(2)の群から選ばれる複数の電荷輸送材料を有する構成である感光体Cは、さらに優れた電気特性を示す。
以上の結果より、特定のポリエステル樹脂及び特定のジアミン化合物を含有する本発明の感光体は、感光層塗布液とした場合の溶解性に問題もなく、耐磨耗性及び電気特性に極めて優れることがわかる。
[感光体ドラムの製造]
(実施例4)
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ375.8mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。
次に、電荷発生物質として下記構造を有するアゾ顔料15部に、1,2−ジメトキシエタン300部加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、粉砕分散処理を行い顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液と、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)7.5部及びフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)7.5部を1,2−ジメトキシエタン285部に溶解したバインダー溶液と、混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液135部を加えて、固形分(顔料+樹脂)濃度4.0重量%のアゾ顔料分散液を調製した。
このアゾ顔料分散液と、実施例1で調製した電荷発生層形成用の分散液を1対1の重量比で混合し、アゾ顔料とオキシチタニウムフタロシアニンの両方を含む電荷発生層形成用の分散液を調製した。
こうして得た分散液に、陽極酸化処理したアルミニウムシリンダーを浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として実施例1で用いた電荷輸送材料(A)を70部、バインダー樹脂として製造例2で製造したポリエステル樹脂Yを100部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液(感光層形成用塗布液)Kを調製した。この液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布及び乾燥することで電荷輸送層を形成し、積層型感光層を有する感光体ドラムK1を得た。
さらに、電荷輸送層形成用塗布液の安定性を調べるために、電荷輸送層形成用塗布液Kを室温で3ヶ月間保存した。この3ヶ月間常温保管された電荷輸送層形成用塗布液Kを用いたこと以外は、感光体ドラムK1の製造と同様にして、感光体ドラムK3を製造した。このとき、電荷輸送層形成用塗布液Kにはゲル化などの現象は見られなかった。
(比較例8)
実施例4の電荷輸送層形成用塗布液Kに用いた電荷輸送物質を、前述の電荷輸送材料(D)にしたこと以外は、実施例4と同様にして、電荷輸送層形成用塗布液L、塗布液調製直後に製造した感光体ドラムL1、及び、電荷輸送層形成用塗布液Lを室温で3ヶ月保管した後に製造した感光体ドラムL3を得た。
[感光体ドラムの特性評価]
製造した感光体ドラムK1,K3,L1,L3について以下の電気特性試験と実機評価とを行なった。電気特性試験の評価結果を表2にまとめた。
(電気特性試験)
電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に各感光体ドラムを装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
まず、感光体ドラムの初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで405nmの単色光としたものを露光して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(μJ/cm2)を感度E1とした。また、2.0μJ/cm2で露光したときの露光後表面電位(−V)をVL1とした。ただし、比較例8の感光体は、電荷輸送物質が405nmの光を透過しないため、適切に測定することができなかった。次いで、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで760nmの単色光としたものを露光し、まったく同様の手順で感度E2と露光後表面電位VL2を測定した。こちらは、実施例4及び比較例8いずれの感光体も測定できた。VL1,VL2の測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を200msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。
この結果から、実施例4の電荷輸送層形成用塗布液Kは、調製直後であっても調製後3ヶ月が経過しても、405nm露光及び760nm露光のいずれの条件でも良好な電気特性を示すことがわかった。一方、比較例8の電荷輸送層形成用塗布液Lは、3ヶ月で激しく劣化することがわかった。
(実機評価)
感光体ドラムK1,K3,L1,L3を、A3印刷対応である市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製 Microline Pro 9800PS−E)のブラックドラムカートリッジに搭載し、上記プリンターに装着した。次に上記プリンターにパソコンを繋ぎ、グレイスケール(ハーフトーン)の画像を入力し、出力される画像の濃度を確認した。
その結果、電荷輸送層形成用塗布液Kを用いて製造した感光体ドラムK1及びK3では、いずれも良好な濃度の画像が得られた。これに対し、電荷輸送層形成用塗布液Lを用いて製造した感光体ドラムL1及びL3では、調製直後の電荷発生層形成用塗布液Lを用いて製造した感光体ドラムL1では良好な画像が得られたものの、3ヶ月経過した電荷発生層形成用塗布液Lを用いて製造した感光体ドラムL3では、ほとんど濃度がでない画像しか得られなかった。
次に、上記プリンターの露光装置を改造し、日進電子製、小型スポット照射型青色LED(B3MP−8:470nm)の光を感光体ドラムに露光できるようにした。この改造装置に、感光体ドラムK1,K3を搭載したブラックドラムカートリッジをそれぞれ装着して線を描かせたところ、良好な画像が得られた。また、上記小型スポット照射型青色LEDに、ストロボ照明電源LPS−203KSを接続し、点を描かせたところ、半径8mmの点画像を得ることができた。