JP2010084218A - 光励起性物質の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】CVD法で金属酸化物を形成する場合、成膜速度を変えずに結晶性を向上させる成膜方法を提供する。
【解決手段】気相化学成長反応を利用して酸化錫膜を基体上に形成する形成方法において、形成中に基体を加熱すると同時に、紫外線の紫外線照射強度が0.03mW/cm2以上1mW/cm2以下の紫外線を基体に照射することを特徴とする薄膜形成方法を提供する。本発明により、形成された膜の成膜速度を落とすことなしに結晶性が上げることができ、太陽電池に用いた場合に発電効率があがる。
【選択図】図1
【解決手段】気相化学成長反応を利用して酸化錫膜を基体上に形成する形成方法において、形成中に基体を加熱すると同時に、紫外線の紫外線照射強度が0.03mW/cm2以上1mW/cm2以下の紫外線を基体に照射することを特徴とする薄膜形成方法を提供する。本発明により、形成された膜の成膜速度を落とすことなしに結晶性が上げることができ、太陽電池に用いた場合に発電効率があがる。
【選択図】図1
Description
本発明は、酸化錫を、気相化学成長反応を利用して形成する方法に関する。
酸化錫は透明性、電気伝導性、化学的耐久性に優れており、太陽電池用の透明導電膜をはじめ様々な用途で利用されている。太陽電池用の透明導電膜として酸化錫膜を使用する場合、ガラスなどの透明基体上に気相化学成長反応(以下CVD法とする)、スパッタリング法、スプレー法などを利用して酸化錫を形成するのが一般的である。この内CVD法は大気圧での成膜が可能なため生産コストが低く、製造条件を工夫することで様々な表面形状を作ることができるなどの利点を持ち、大面積の成膜に適した成膜プロセスである。
酸化錫膜の導電性を上げるためには結晶性を高め、結晶粒界を少なくすることが有効である。特にガラス上に成膜した場合、特許文献1に、(200)面の結晶配向性をあげることが有効であると記載されている。
また、太陽電池基体として酸化錫膜をガラス上に形成する場合、(200)面とともに(100)面の配向性を結晶強度比で100対20〜120にすることが良好な電池特性を発揮しやすいことが、特許文献2で記載されている。この場合も結晶性は高いほど好ましいことが記載されている。このように酸化錫膜を電気導電性膜として利用する場合、一般に結晶性は高いほど好ましい。
一方、酸化錫膜を生産するには、生産性を向上させることも重要である。酸化錫膜の生産性を向上させる方法の1つは、成膜速度を上げることである。CVD法で成膜速度を上げるには、供給する原料の濃度を上げることが有効である。しかし、原料濃度を上げると結晶性が低くなる傾向があり、結晶性の向上と成膜速度向上は両立しない問題があった。成膜速度を上げる方法としては、成膜温度を上げる方法も有効であることはよく知られている。しかしながら、ガラスなどの低融点材料の場合、成膜温度を上げると基体が熱変形を起こす。ガラス中のナトリウムなどの拡散しやすい成分が膜中に混入し酸化錫の導電性を著しく劣化させるなどの問題がある。
特許文献3では、真空紫外光による処理として、CVDで酸化膜を成膜する際に紫外線を当てるという記載がある。また、実施例には、有機系酸化錫原料(TEOS)の成膜時に紫外線(キセノンエキシマランプ:12mW/cm2)を照射して、成膜速度が増大するという記載がある。気相中で材料ガスの分子結合が光子エネルギーにより切断され、ウエハ表面に吸着されて酸化物となるとの記載(段落0007)のように、気相中のガスを紫外線で分解するメカニズムとなっている。そして、気相中でガスを分解するために例えばキセノンエキシマランプというピーク波長が200nm未満(具体的にはピーク波長126、135、146、165、172nmなど)の強い紫外線を発光する高価な紫外線発生装置で、12mW/cm2という非常に強い紫外線照射強度が必要となる。
特許文献4では、「空間の原料ガスに光分解反応を起こさせ前記基体上に前記原料ガスの光分解生成物を薄膜形成させる」と記載(請求項1)がある。実施例には、紫外線の条件として、低圧水銀灯で紫外光(ピーク波長184.9、253.7nm)を、原料ガスであるSn(CH3)4に照射して1時間掛けて470.0nmのSnO2膜を成膜した記載がある。紫外線の強度は明細書内に最低0.34W/cm2は必要と記載がある。
非特許文献では、原料ガスとしてTTIP+TEOS原料を紫外線(222nm、20mW/cm2)でTiSiOx膜を形成している。紫外線照射強度の強い紫外線を使用する記載はありますが、紫外線の効果についてはTTIPの分解を促進するとの記述があるだけで、Ti以外の原料、特に酸化錫に関する記述はありません。
成膜速度を変えずに結晶性を向上させるCVD法による酸化錫の成膜方法を提供する。
気相化学成長反応を利用して酸化錫膜を基体上に形成する薄膜形成方法であって、前記形成中に基体を加熱すると同時に、紫外線照射強度が0.03mW/cm2以上1mW/cm2以下の紫外線を基体に照射することを特徴とする薄膜形成方法を提供する。
成膜中に基体を加熱すると同時に紫外線を照射することにより、形成された膜の成膜速度を落とすことなしに結晶性を上げることができる。
また、結晶性が上がるために、抵抗が下がり、太陽電池の電極として使用したとき、太陽電池の電気的ロスを減らすことができる。もしくは、従来と同じ抵抗値のものを作る場合は、薄い透明導電膜で済むために原料の低コスト化、膜自身が薄いことによる高透過化が期待できる。
また、結晶性が上がるために、ヘイズ率が上がり、太陽電池に用いた場合に発電効率が上がることが期待できる。
本発明はCVD法を利用して酸化錫膜を基体上に形成する形成方法を提供する。
ここで酸化錫膜とは、後述する光活性効果があれば不純物を含んでもよい。導電性を発現させるために、フッ素やアンチモンを含んでもよい。
ここで酸化錫膜とは、後述する光活性効果があれば不純物を含んでもよい。導電性を発現させるために、フッ素やアンチモンを含んでもよい。
ここで、基体上と酸化錫膜の間に、光学特性を改善する薄膜を設置してもよい。例えば基体側から光が入射する際に光の反射を低減する目的で、基体上に高屈折率膜、低屈折率膜、酸化錫膜の順に隣接させて膜を設置するのが好ましい。高屈折率膜としては屈折率が2.0以上の材質からなる透明材料でその中でも酸化チタン(TiO2)が特に好ましい。低屈折率膜としては酸化錫膜より屈折率が小さい材料で、特に好ましいのは酸化シリコン(SiO2)である。
また、太陽電池の発電効率を改善するためには、酸化錫の表面に凹凸を形成することが必要である。凹凸として例えば、高低差0.2〜0.5μm、凸部のピッチが0.3〜0.75μmであると、酸化錫の上に設置された太陽電池へ可視光線を適度に散乱し発電効率が改善することが知られている。
CVD法による金属酸化物の成膜では、原料となる金属化合物を気化し、気化した原料ガスに何らかのエネルギーを与え基体上で金属化合物を分解、酸化させることにより形成する方法が一般的である。原料ガスに加えるエネルギーとしては、基体を高温に加熱する熱CVD法、原料ガスをプラズマで活性化するプラズマCVD法があるが、熱CVD法は装置が簡便で均一な成膜を行いやすいなどのメリットがある。しかし、熱CVD法は基体全体を均一に加熱する方式であるため、結晶粒に選択的にエネルギーを供給することができず、結晶化を効率的に促進することができない。
これに対して、発明者らは酸化錫膜の成膜に関する研究を鋭意努力して研究した結果、酸化錫膜の成膜時に基体を加熱すると同時に紫外線を照射することにより酸化錫膜の結晶化を効率的に促進する方法を見いだした。これは、酸化錫膜は紫外線に対して光活性効果をもつためである。成膜中に紫外線を照射した場合、酸化錫膜の光活性効果で酸化錫膜表面が選択的に活性化され、原料ガスの分解が酸化錫膜表面で行われ、酸化反応が促進されるためであると考えられる。なお、本発明では光活性効果とは、光触媒効果を含む現象であります。
特許文献3では、気相中でガスを分解するために、キセノンエキシマランプ(ピーク波長が200nm未満)と強力な光子エネルギーの紫外線でかつ、12mW/cm2という非常に強い紫外線照射強度が必要となる。また、特許文献3では、気相中のガスを紫外線で分解するメカニズムであり、本発明では酸化錫膜の光活性効果による酸化錫膜表面での反応と異なります。
特許文献4では紫外線照射の効果として、空間中の酸素ガスを励起することが記載されており、このとき必要な紫外線照射強度としては最低でも0.34W/cm2という非常に強い紫外線照射強度が必要であることが述べられている。特許文献4は紫外線の効果は酸素を分解し成膜速度を増加せることであるが、本発明では酸化錫膜の光活性効果による酸化錫膜表面での反応と異なります。
酸化錫膜による光活性効果は酸化錫膜の非結晶の部位より、酸化錫膜の結晶部位の方が大きい。このため、結晶化された酸化錫膜の表面で原料ガスの分解、酸化反応が促進され、紫外線照射強度の小さい紫外線の照射で効果が発現する。
ピーク波長220〜400nmの紫外線を照射する光源としては、ブラックライト(ピーク波長365nm)、低圧水銀ランプ(ピーク波長254nm)、高圧水銀ランプ(ピーク波長250〜320nm、365nm)、エキシマランプ(ピーク波長172nm, 222nm,308nmなど)などがあり、これらを単独で用いても、複数種類を組み合わせてもよい。なお、ここでは、特許文献3に記載されていたキセノンエキシマランプ(ピーク波長200nm未満)と、ピーク波長222nm,308nmのエキシマランプと区別するために、前者をキセノンエキシマランプ、後者を単にエキシマランプと呼ぶ。なお、紫外線の波長は短くなるほど高いエネルギーを持つ。
酸化錫の励起波長は326nmであるから326nm以下の光をあてると表面が効率よく活性化できる。このため、使用する光源としては波長326nm以下の光を発生するランプが好ましく、ランプ寿命や装置のコストなどを考慮すると、低圧水銀ランプならびに高圧水銀ランプを使用することが好ましい。ピーク波長は220nm〜400nmであり、220〜365nmであることがより好ましい。ピーク波長が200nm未満のみの紫外線を出す光源は、紫外線発光装置自身が高額になることや、酸化錫の励起波長に対して不必要に高いエネルギーであるために好ましくない。
酸化錫の励起波長は、前記の通り326nmであるが、ピーク波長が326nm以上の紫外線を用いた場合でも、ピーク波長から短波長側のすその部分の波長帯で酸化錫が十分に紫外線を吸収すれば光励起効果は発現する。
本発明では基体を加熱するために、基体はガラスであることが好ましい。ガラスの種類としては特に限定されず、例えば、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板等を使用することができる。
これらのうち、本発明の価格が安いという観点から、ソーダライムシリケートガラスを使用するのが好ましい。また、ソーダライムシリケートガラスを使用する際には、フロート法での製造工程のガラスリボン上で、本発明の方法で薄膜を形成すると、加熱のために新たな設備費が不要で、製造コストを安くすることができる。
また、例えば、ソーダライムシリケートガラスを使用する場合はガラス中のナトリウムなどアルカリ金属イオンが酸化錫膜へ拡散する問題がある。このためガラスと酸化錫膜の間に前記酸化錫膜と異なる材料からなる薄膜(以下、ナトリウム防止層という)を設置することが特に好ましい。ナトリウム防止層としてはシリコンの酸化物が特に好適であるが、目的を達成するものならば薄膜の組成、薄膜の総数、薄膜の厚さは適宜選ばれるものである。また、前述の光学特性を改善する薄膜をナトリウム防止層としても構わない。
本発明における成膜時の基体温度は450℃以上であることが好ましい。450℃より基体温度が低いと成膜速度が遅くなり、生産性が劣化するためであり、基体温度は500℃以上であることが成膜速度の面からより好ましい。基体加熱温度の上限は成膜の観点からは特にないが、ガラス基体の場合、熱変形を起こさないようにするために750℃以下であることが好ましい。
紫外線照射強度は、成膜位置(酸化錫が成膜される面)で紫外線照射強度測定器を用いて測定する。波長220nm〜400nmの強度測定では、通常254nmに感度を持つセンサーと365nmに感度を持つセンサーの2つを組み合わせて測定する。本発明で記載する紫外線照射強度とは、両センサーの合計値である。紫外線照射強度は0.03mW/cm2以上であることが必須である。0.03mW/cm2より紫外線照射強度が低い場合、十分な結晶性が得られないからである。紫外線照射強度と結晶性の関係は、0.03mW/cm2以上でほぼ平行に達すると考えられる。このため、紫外線照射強度の上限は、紫外線照射機器の価格や寿命を考慮すると1mW/cm2以下であることが好ましい。紫外線照射強度が0.05mW/cm2〜0.3mW/cm2が特に好ましい。
紫外線を照射する光源の設置位置は、酸化錫膜が形成される基体位置を0.03mW/cm2以上の強度で照射できれば特に制限はない。基体位置の直上または直下に光源ランプを設置するのが、装置が簡潔になり好ましい。光源から石英ファイバーなどの紫外線を透過できる光ファイバーを用いて照射してもよい。前記酸化錫膜が形成される際に、基体上堆積していく前記酸化錫膜に紫外線が照射されることで、前記酸化錫膜の表面が活性化され、酸化錫膜表面に接する原料ガスが分解、酸化が促進される。また、前記酸化錫膜が形成される基体位置で照射するとは、酸化錫膜の所定の厚さの一部を成膜した後に、成膜を行わないで紫外線を照射し、その後、光励起効果の持続している間に前記酸化錫膜を再度積み重ねても構わない。連続して成膜を行う際に紫外線を照射し続けても構わない。また、ガラス基体を透過して、膜の成膜する表面で紫外線照射強度が前述の強度を満たすことができれば、ガラス基体の裏面から照射してもよい。
また、本発明は酸化錫膜の光励起作用を利用して基体上で反応が進むことを特徴としている。このために、特許文献3,4のような気相中の原料ガスを励起し、励起された原料ガスが基体に堆積するものと比べると、本発明は基体上に紫外線を照射することで、その基体の表面のみで原料ガスは紫外線で励起され、膜が基体上のみに堆積する。これに対して、特許文献3,4のような気相中で原料ガスを励起した場合、最初に触れた表面に堆積する。不要な部分に付着した酸化錫膜は、定期的な清掃作業が必要になる。
本発明で使用できる錫原料としては、四塩化錫などの無機錫化合物、モノメチル錫クロライド、ジメチル錫クロライド、テトラメチル錫、モノブチル錫クロライド等の有機錫を使用することができる。この内、四塩化錫は有機錫のような環境に対する汚染懸念が小さく、結晶化しやすい、紫外線照射による結晶化促進効果が大きいなどの理由により、使用原料として好ましい。
以下、本発明の実施例を示す。
(実施例1)
図1のようなCVD装置を用いて行った。錫原料として無水の四塩化錫を用いた。原料の四塩化錫をシリンジ1に入れ、これをシリンジポンプ2で1.2cc/hrの速度で気化器3へ導入した。導入された四塩化錫は150℃に加熱された気化器で気化され、搬送用窒素ライン4より窒素ガス2.5NL/minを加えCVD反応器へ導入した。CVD反応器には酸素ライン5から酸素ガス0.3NL/minが導入され、先の原料ラインと混合した後、大気圧下で直径3cmのヒーター6で550℃に加熱した2.5cm角の石英基体7上に1分間吹き付けた。紫外線は紫外線照射装置8(モリテックス社製MUV−250U−L:高圧水銀灯タイプ:ピーク波長250〜320nm、365nm)を用いて発生させ、石英ファイバー9を通して、成膜中に基体面に0.24mW/cm2の強度で照射した。紫外線の強度は基体を加熱する前に、計測器(東京光学機械(株)製UVR−254ならびにUVR−365)を用い基体面で測定した。ヘイズ値はヘイズメーター(スガ試験機製HZ−2)で測定した。抵抗値は4端子法の測定器を用いて測定した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。ここで、NL/minのNLとは標準状態でのリットル単位をあらわす。
図1のようなCVD装置を用いて行った。錫原料として無水の四塩化錫を用いた。原料の四塩化錫をシリンジ1に入れ、これをシリンジポンプ2で1.2cc/hrの速度で気化器3へ導入した。導入された四塩化錫は150℃に加熱された気化器で気化され、搬送用窒素ライン4より窒素ガス2.5NL/minを加えCVD反応器へ導入した。CVD反応器には酸素ライン5から酸素ガス0.3NL/minが導入され、先の原料ラインと混合した後、大気圧下で直径3cmのヒーター6で550℃に加熱した2.5cm角の石英基体7上に1分間吹き付けた。紫外線は紫外線照射装置8(モリテックス社製MUV−250U−L:高圧水銀灯タイプ:ピーク波長250〜320nm、365nm)を用いて発生させ、石英ファイバー9を通して、成膜中に基体面に0.24mW/cm2の強度で照射した。紫外線の強度は基体を加熱する前に、計測器(東京光学機械(株)製UVR−254ならびにUVR−365)を用い基体面で測定した。ヘイズ値はヘイズメーター(スガ試験機製HZ−2)で測定した。抵抗値は4端子法の測定器を用いて測定した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。ここで、NL/minのNLとは標準状態でのリットル単位をあらわす。
(実施例2〜4)
紫外線照射強度を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。
紫外線照射強度を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。
(比較例1)
紫外線照射強度を0.01mW/cm2とした以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。
紫外線照射強度を0.01mW/cm2とした以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成した。作成した酸化錫膜の物性値を表1〜3に示した。
(比較例2)
紫外線を照射しない以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成し、その物性値を表1〜3に示した。
紫外線を照射しない以外は、実施例1と同様に酸化錫膜を作成し、その物性値を表1〜3に示した。
成膜された酸化錫膜の膜厚をビーコ社製触針式膜厚計DEKTAKで測定したところ、いずれの場合も膜厚は300nm程度で顕著な変化は無かった。膜の結晶性は薄膜X線回折装置(リガク社製RU200B)を使って測定した。成膜された酸化錫膜は表3に示すようにいずれも(200)面が主要ピークであったため、(200)面の積分強度を計算した。ここでは、(200)面の積分強度を結晶性とし、紫外線照射強度と結晶性を表1にまとめ、グラフを図2に示した。
表1では、紫外線照射強度が高くなると、成膜速度はほぼ変化無いが、(200)面の積分強度(結晶性)が増加することが分かった。図2より、(200)面の積分強度は紫外線照射強度が、特に0.03mW/cm2以上の紫外線照射強度では、(200)面の積分強度はほぼ一定値になる。このために、0.03mW/cm2以上の紫外線照射強度とした実施例1〜4は、酸化錫膜が十分に結晶化し、比較例に比べ結晶性が増すことが分かった。
また、従来の紫外線を照射しない方法では、成膜速度を遅くした場合に結晶性の高い酸化錫膜が得られることが分かっている。本発明では、従来の方法に比べ同程度の結晶性の酸化錫膜を、高い成膜速度で作成することができると考える。このことは、製造コストの減少となり、本発明により低コストの酸化錫膜を作ることができる。
表2に実施例1〜4、比較例1、2の酸化錫膜付き基体の物性を測定した結果を示す。比較例2(紫外線をまったく照射しない例)のヘイズ率、シート抵抗を基準として規格化して表示した。また、表2の結果を図3にグラフで示す。ヘイズ率は紫外線照射強度の増加とともに上昇し、0.03mW/cm2以上になるとほぼ一定値になる。また、シート抵抗値は紫外線照射強度の増加とともに減少し、0.03mW/cm2以上になるとほぼ一定値になる。
表1のように、同じ成膜速度で比較した場合、本発明の方法を用いると比較例に比べ、ヘイズ率の高い酸化錫膜が得られ、この基板を太陽電池へ適用した場合、発電効率を上昇させることができる。
また、同じ成膜速度で比較した場合、本発明の方法を用いると比較例に比べ、シート抵抗の低い酸化錫膜が得られ、この基板を太陽電池に適用した場合、発電効率を改善することができる。また、同じシート抵抗を得るには、成膜時間を短くすることができるために、酸化錫膜の成膜コストを低減できる。
酸化錫膜をガラス基体上に作る際、結晶性が良好な膜を成膜速度を速く作ることができ、酸化錫膜成膜プロセスの生産性を向上させることができる。
1 シリンジ
2 シリンジポンプ
3 原料気化器
4 搬送用窒素
5 酸素
6 基体加熱ヒーター
7 基体
8 紫外線照射器
9 石英ファイバー
10 排気ライン
11 CVD装置
2 シリンジポンプ
3 原料気化器
4 搬送用窒素
5 酸素
6 基体加熱ヒーター
7 基体
8 紫外線照射器
9 石英ファイバー
10 排気ライン
11 CVD装置
Claims (4)
- 気相化学成長反応を利用して酸化錫膜を基体上に形成する薄膜形成方法であって、
前記形成中に基体を加熱すると同時に、紫外線照射強度が0.03mW/cm2以上1mW/cm2以下の紫外線を基体に照射することを特徴とする薄膜形成方法。 - 前記加熱の基体加熱温度が450℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
- 前記紫外線がピーク波長220nm〜400nmの紫外線であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜形成方法。
- 前記酸化錫膜の主原料の錫原料が四塩化錫であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の薄膜形成方法。
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