JP2004362842A - 透明導電膜付き透明基体、その製造方法、および光電変換素子用基板ならびに光電変換素子 - Google Patents

透明導電膜付き透明基体、その製造方法、および光電変換素子用基板ならびに光電変換素子 Download PDF

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康徳 瀬戸
Akira Fujisawa
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Abstract

【課題】可視光域から近赤外域迄の光波長範囲に渡って、低減された光吸収性(高度の光透過性)を有し、かつ、光電変換層が形成される側の表面に適度の凹凸を有しており、さらに、高度の導電性を有する透明導電膜付き透明基体、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】800〜1100nmの光波長範囲に渡って、低い光吸収性であって、表面に適度な凹凸を有し、かつ、低い電気抵抗率である透明導電膜付き透明基体とする。透明な導電膜を、成膜温度600℃以上、640℃未満では、成膜速度3000〜7000nm/min、成膜温度640℃以上では、成膜速度3000〜8000nm/minの条件で制御することによって、前記透明導電膜付き透明基体を製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明な基体とその上に形成された透明な導電膜を包含する透明導電膜付き透明基体およびその製造方法に関する。特に、本発明は、可視光域から近赤外域における光吸収性が少なく、かつ、その表面に適度な表面の凹凸を有し、なおかつ、導電性が優れている透明導電膜付き透明基体およびその製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、前記透明導電膜付き透明基体を構成要素として包含する光電変換素子用基板および前記光電変換素子用基板を構成要素として包含することによって、その性能が改善された、太陽電池などの光起電力デバイスに好適な光電変換素子に関する。
【0003】
【従来の技術】
透明導電膜付き透明基体は、ガラスなどの透明な基体と、その上に形成された透明な導電膜とを包含し、建築物用および店舗用冷蔵庫の窓ガラス、あるいは複写機の原稿台として利用されている。Low−Eガラス、電磁波遮蔽ガラス、あるいは、くもり止め機能付きガラスなどと呼ばれる。
【0004】
さらに、透明導電膜付き透明基体は、その上に機能性薄膜を形成されて、光電変換素子とし、光センサー、太陽電池、省エネルギー型画像表示装置、あるいは、省エネルギー型発光装置等に利用されている。前記画像表示装置としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が例示される。また、前記発光装置としては、FED、発光ダイオード、固体レーザー等が例示される。
【0005】
光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、あるいは、その逆の変換をおこなう変換素子である。薄膜シリコン系太陽電池用素子は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する。前記太陽電池用素子は、前記透明導電膜付き透明基体、その導電膜の上に形成されたシリコン層(光電変換層)、さらに前記シリコン層上に形成した裏面電極(銀やアルミニウムなど)を順次形成して構成される。前記透明導電膜付き透明基体の基体側から入射した太陽光が、その導電膜を通して光電変換層に達して、光電変換層内で電気エネルギーに変換される。そして、発生した電気エネルギーは、前記導電膜と前記裏面電極の両電極を介して外部に取り出されて、利用される。
【0006】
太陽電池の発電性能を向上するために、透明導電膜付き透明基体に要求される主要な要件は次のものである。そして、これらを同時に達成できる透明導電膜付き透明基体が待望されている。
1.透明導電膜付き透明基体の光吸収性を低減して、入射した太陽光エネルギーを光電変換層に多く送り込み、多くの電気エネルギーに変換させる。
2.透明な導電膜の表面に凹凸を設けて、光電変換層の表面に凹凸を持たせることによって、光電変換層に送り込まれた光エネルギーを光電変換層内に閉じ込めて、光電変換効率をあげる。
3.透明な導電膜の電気抵抗を低減して、変換された電気エネルギーを外部に多く取り出す。
【0007】
透明導電膜付き透明基体の光吸収性を減少する対象となる光波長範囲は、光電変換層の材質によって異なり、光電変換に利用できる光波長範囲に合わせて設定する必要がある。光電変換層がアモルファスのシリコンである場合は、主に可視光域の光吸収性の減少が重要である。一方、光電変換層が結晶質を含む、非単結晶型シリコン(微結晶シリコン)である場合には、可視光域に加えて近赤外域の光吸収性の減少が重要である。
【0008】
透明な導電膜の導電性を改善する方法として、導電膜中に、電荷キャリアとして働くドーパントを含有させる方法が知られている。ドーパントの含有量、つまりキャリア濃度を調整して、導電性あるいは光吸収性を変更する場合、両者は両立できない関係にあることが知られている。
【0009】
透明導電膜付き透明基体、その製造方法、および光電変換素子用基板、ならびに光電変換素子に関しては次の特許文献に開示されているが、上記の要求を全て満足する透明導電膜付き透明基体を提供するものはない。
【0010】
特許文献1には、ガラス基体が非酸化性雰囲気下、溶融金属浴上で高温に維持されている間に、酸素含有キャリヤーガスと共に、蒸気状の有機錫化合物を接触させて、熱分解酸化反応によって、酸化錫膜をガラス表面上に形成する技術が開示されている。
【0011】
特許文献2には、四塩化錫と水ならびに塩化水素を事前混合し、ガラス上に酸化錫膜を形成する方法が開示されている。
【0012】
特許文献3には、薄膜シリコン系太陽電池素子用基板として、有機錫化合物と酸化原料から形成された、光波長域400〜1100nmにおいて、1200cm−1以下の光吸収係数を有する、酸化錫膜の形成方法が開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特公平6−47482号公報
【特許文献2】
特開平9−40442号公報
【特許文献3】
特開2001−35262号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、可視光域から近赤外域迄の光波長範囲に渡って、低減された光吸収性(高度の光透過性)を有し、かつ、光電変換層が形成される側の表面に適度の凹凸を有しており、さらに、高度の導電性を有する透明導電膜付き透明基体の提供、および、その製造方法の提供を目的とする。
【0015】
本発明は、また、前記の透明導電膜付き透明基体を構成要素として包含する光電変換素子用基板の提供を目的とする。本発明は、さらに、前記の光電変換素子用基板を構成要件として包含する、優れた光電変換性能を有する光電変換素子の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明な基体およびその上に形成された透明な導電膜を包含し、透明な基体側から光を入射したとき、800〜1100nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が400〜800cm−1であり、可視光線域におけるヘイズ率が10%以上であって、かつ、抵抗率が7×10−4〜13×10−4Ω・cmの範囲である透明導電膜付き透明基体である。
【0017】
本発明は、また、透明な導電膜を、3000〜7000nm/minの成膜速度で、かつ、表面温度が600℃以上、640℃未満の透明な基体の上に形成する、前記の透明導電膜付き透明基体を効率よく、そして、安定的に製造する方法である。
【0018】
さらに本発明は、透明な導電膜を、3000〜8000nm/minの成膜速度で、かつ、表面温度が640℃以上の透明な基体の上に形成する、前記の透明導電膜付き透明基体を効率よく、そして、安定的に製造する方法である。
【0019】
本発明を別の観点から述べれば、透明な導電膜の成膜速度および成膜時の透明な基体の表面温度(以後、成膜温度という。)を制御することによって得られる、可視光域から近赤外域迄の光波長範囲に渡って、高度の光透過性を有し、かつ、光電変換層が形成される側の表面に適度の凹凸を有しており、さらに、高度の導電性を有する透明導電膜付き透明基体、および、その製造方法である。
【0020】
本発明は、さらに、前記の透明導電膜付き透明基体を構成要素として包含する光電変換素子用基板である。本発明は、またさらに、前記の光電変換素子用基板を構成要素として包含する光電変換素子である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の透明導電膜付き透明基体は、透明な基体上に透明な導電膜を形成して得られ、基体側から光を入射したとき、800〜1100nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が400〜800cm−1であって、可視光域から近赤外域迄の光波長範囲に渡って、高度の光透過性を有する。また、前記透明導電膜付き透明基体は、可視光線域におけるヘイズ率が10%以上であって、光電変換層が形成される側の表面に適度の凹凸を有する。さらに、前記透明導電膜付き透明基体は、抵抗率が7×10−4〜13×10−4Ω・cmの範囲であって、高度の導電性を有する。
【0022】
すなわち、本発明の前記透明導電膜付き透明基体は、高度の光透過性と前記導電膜表面に形成された適度な凹凸を両立して有し、さらに、高度の導電性を兼ね備えている。
【0023】
本発明の透明導電膜付き透明基体の光透過性は、前記に加えて、400〜500nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が700cm−1以下であることが好ましい。
【0024】
上記の800〜1100nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値は400〜750cm−1であることが、さらに好適であり、また、上記の可視光線域におけるヘイズ率は13%以上であることが、またさらに好適である。
【0025】
前記透明な導電膜は、金属酸化物を主体とした薄膜であることが好適である。前記金属酸化物としては、酸化インジウム、微少量の錫をドープした酸化インジウム(ITO)、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化錫、あるいは、微少量のフッ素やアンチモンなどをドープした酸化錫等の金属酸化物が、好ましく使用される。
前記金属酸化物の中でも、酸化錫あるいは酸化チタンを主体とした金属酸化物薄膜は、耐薬品性などに優れ、安価な原料を用いて形成できるという利点を有する。また、微少量のフッ素をドープした酸化錫とすることによって、さらに、好ましい結果が得られる。
【0026】
ここで、「主体とした」とは、慣用に従って、当該成分を含有する比率が50重量%以上であることをいう。当該成分を含有する比率が70重量%以上であることが、金属酸化物の特徴を反映するために好ましい。当該成分を含有する比率が、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
かかる優れた性能の透明導電膜付き透明基体は、透明な基体上に形成される透明な導電膜の成膜速度を3000〜7000nm/min、かつ、成膜温度を600℃以上、640℃未満の範囲で制御して、製造されるのが好ましい。
【0028】
さらに、かかる優れた性能の透明導電膜付き透明基体は、透明な基体上に形成される透明な導電膜の成膜温度を640℃以上とすることによって、成膜速度を3000〜8000nm/minの範囲で制御して製造するようにできる。
【0029】
金属酸化物の薄膜を、上記の成膜速度および成膜温度の範囲に制御して形成すると、前記金属酸化物薄膜中の導電性が改善されるのである。そして、前記金属酸化物薄膜の厚さを薄くすることが可能になり、その結果、高度の光透過性と高度の導電性とを兼ね備えた透明導電膜付き透明基体が得られるのである。すなわち、本発明における透明な導電膜の厚さは、1000nm以下であることが、高度の光透過性と高度の導電性とを兼ね備えた透明導電膜付き透明基体を得るために好ましい。
【0030】
前記透明な導電膜はスパッタリング法、真空蒸着法などのいわゆる物理蒸着法や、スプレー法、あるいは、化学気相法(CVD法)など熱分解酸化反応を伴う化学蒸着法によって、前記透明な基体上に形成される。これらの透明な導電膜の形成方法において、熱分解酸化反応によって形成された金属酸化物、特に酸化錫あるいは酸化チタンを主体とした薄膜が、良好な性能を有していて好ましい。
【0031】
前記透明な導電膜は、高温に加熱された、前記透明な基体上で形成することによって、金属酸化物の薄膜を結晶化させるのに有利である。また、前記金属酸化物の薄膜が、600℃以上の温度の前記基体上で形成されることが、速い成膜速度で前記金属酸化物薄膜を形成するために好ましい。ガラス板製造工程における、温度が600℃以上のガラスリボン上で、前記導電膜が形成される方法は、ガラスを高温にするための熱エネルギーを省略できるので、さらに好ましい製造方法である。
【0032】
熱分解酸化反応により形成される金属酸化物の薄膜は、金属の塩化物を原料として、透明な基体上で形成される。酸化錫の薄膜を形成する原料としては、四塩化錫、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、テトラメチル錫、テトラブチル錫、ジオクチル錫ジクロライド、モノブチル錫トリクロライド、ジブチル錫ジアセテートなどが挙げられる。そして、酸化チタンの薄膜を形成する原料としては、四塩化チタン、チタンイソプロポキシドなどが挙げられる。
【0033】
しかしながら、有機金属塩化物は、熱分解酸化反応によって生成される炭化物が金属酸化物薄膜の透明性を阻害し、また、生成される有機成分が環境負荷となる問題がある。従って、金属の塩化物としては、塩化第一錫、塩化第二錫、塩化チタン、塩化亜鉛または塩化インジウム等の無機金属塩化物が好適である。熱分解法において、金属酸化物薄膜の原料としては、錫およびチタンの化合物を使用することが好ましく、特に、本発明においては四塩化錫を原料とした場合に効果が大きい。
【0034】
また、結晶性金属酸化物薄膜として酸化錫を主成分とする薄膜を成形する場合は、その導電性を向上させるために、原料中にアンチモンやフッ素の化合物を添加するのが好ましい。アンチモンの化合物としては、三塩化アンチモンや五塩化アンチモンなどが挙げられる。そして、フッ素の化合物としては、フッ化水素、トリフルオロ酢酸、ブロモトリフルオロメタンあるいはクロロジフルオロメタンなどが挙げられる。
【0035】
錫原料から酸化錫を成形するために用いられる酸化原料としては、酸素、水蒸気または乾燥空気などが挙げられる。
【0036】
金属の塩化物は、透明な導電体を形成する、透明な基体近傍においては、気体であることが望ましい。しかし、前記基体近傍までの途中経路では、固体あるいは液体であってもかまわない。すなわち、金属の塩化物を含有する流れは、途中経路において液体である溶液スプレー法、固体状態である粉末スプレー法であってもよいが、気体状態で供給するCVD法が望ましい。
【0037】
CVD法においては、気体状態の金属の塩化物と水蒸気などの酸化原料などを供給経路途中でプレミックスすることが望ましい。金属塩化物と水蒸気を基板近傍までプレミックスなしで供給した場合には、原料ガスの混合および反応が充分でないために、形成された薄膜に組成ムラや膜厚ムラが起こりやすい。
【0038】
熱分解酸化反応によって、透明な基体上に金属酸化物の薄膜を形成する方法において、前記金属酸化物の薄膜を、無機金属塩化物および水蒸気ならびに塩化水素を使用するのは、好ましい方法である。無機金属塩化物と水蒸気がプレミックスされると、熱分解酸化反応が急速に進行し、金属酸化物が生成される。塩化水素は、前記熱分解酸化反応による金属酸化物の生成を抑制して、前記金属酸化物による原料ガス配管の閉塞を防止するために使用される。塩化水素は、前記無機金属塩化物と前記水蒸気とが混合される前に、どちらかの原料と混合されることが望ましい。
【0039】
ガラス板製造工程において、温度が600℃以上、特に、640℃以上のガラスリボン上で、透明な導電膜が形成される方法において、無機金属塩化物および水蒸気ならびに塩化水素を使用すると、長時間連続して、安定的に、さらに高速で、金属酸化物の薄膜を形成でき、大面積の透明導電膜付きガラス板を生産できる。前記金属酸化物を酸化錫とする場合、四塩化錫および水蒸気ならびに塩化水素を用いて、熱分解酸化反応によって生成されるのが好ましい。
【0040】
四塩化錫に対する塩化水素の混合比率は、モル比で0.2未満であることが、さらに好ましい。前記モル比が0.2以上である場合には、本発明における、高度の光透過性と高度の導電性が両立されないことがある。
【0041】
前述のとおり、金属酸化物薄膜の成膜速度および成膜温度を制御することによって、前記金属酸化物薄膜の導電性が改善される。前記の導電性が改善される理由は明らかではないが、前記薄膜中における電荷の移動度が改善されるものと推定される。電荷の移動度が改善される理由についても、また、明らかではない。しかし、前記金属酸化物に酸化錫を用いた場合、成膜速度および成膜温度を制御することにより、前記酸化錫薄膜中の塩素の残留濃度が減少していることから、減少した前記残留塩素濃度が電荷の移動度の改善に寄与している可能性がある。
【0042】
酸化錫にドープされたフッ素は、前記酸化錫薄膜中で電荷のキャリアとなって、前記酸化錫の酸素と置換しながら電荷を移動させる。フッ素と酸素は、ほぼ同じイオン半径を有するから、電荷の移動がスムースに進む。一方、塩素のイオン半径は、フッ素や酸素のそれよりも大きいため、前記酸化錫薄膜中に塩素が存在すると、前記塩素によって酸素を置換された前記酸化錫は、その格子に歪みを生じ、電荷の移動に対する障害が発生する。
【0043】
酸化錫薄膜の成膜速度および成膜温度を制御することによって、前記酸化錫薄膜中の残留塩素濃度が減少している事実と併せると、前記成膜速度および成膜温度を制御することによって、前記残留塩素濃度が減少して、塩素による障害が減少し、電荷の移動度が改善されたものと推察される。
【0044】
上記のごとく、前記導電膜における電荷の移動度の改善が、高い光透過性と高い導電性を得るために必要であり、薄膜中の残留塩素を減少することが電荷の移動度の向上に必要であると考えられる。
【0045】
前記特許文献2において、酸化錫の薄膜が、四塩化錫および水ならびに塩化水素を原料として、成膜速度が制御された状態で形成される技術が開示されている。しかし、四塩化錫に対する塩化水素の混合比率(塩化水素/四塩化錫)が、モル比で0.2以上という、高濃度であるために、前記酸化錫薄膜中の塩素の排除が不十分であって、電荷の移動度の改善が得られない。
【0046】
金属塩化物に対する塩化水素の割合が高いと、原料ガス配管の閉塞を抑制する効果が大きい。しかし、前記金属塩化物と水蒸気の反応自体が抑制されるために、金属酸化物薄膜の成膜速度が大きく低下する。前記塩化水素の割合が大きすぎると、熱分解酸化反応が著しく阻害されて、きれいな前記薄膜が形成されないこともある。
【0047】
金属塩化物に対する塩化水素の混合比率が、モル比で1未満であれば、原料ガス配管が長時間閉塞せず、しかも成膜速度が低下しない条件を満たすことができる。しかしながら、金属酸化物薄膜中の残留塩素を減少して、本発明の高度の透明性と高度の導電性を両立させるためには、前記金属塩化物に対する前記塩化水素の混合比率が、モル比で0.2未満であることが望ましい。
【0048】
金属酸化物薄膜は、透明な基体上に直接形成できる。一方、予め、基体上に下地膜を設け、その下地膜の上に前記金属酸化物薄膜を形成する方法は、好ましい方法である。前記下地膜は、前記基体および前記金属酸化物薄膜の有利な性能を生かし、それぞれの不利な性能、あるいは、両者の組合せによって発生する不利な性能を減殺するために形成される。さらに、他の有利な性能を付与するように形成することもできる。前記下地膜は、その目的に応じて、1層または多層構造から適宜選択して形成できるが、前記下地膜が、光透過性を低下させる要因となりうることには、注意が必要である。
【0049】
透明な基体がガラスの場合、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素または酸炭化ケイ素などを主体とする下地膜が、ガラスに含まれるアルカリ成分が金属酸化物薄膜に熱拡散することを防止する薄膜(パッシベーション膜)として形成されるのは好ましい。前記基体と前記パッシベーション膜とを強く接着するために、前記基体と前記パッシベーション膜との間に、金属酸化物下地膜を形成することもできる。
【0050】
前記基体に近い方(第1層)の下地膜が、厚さ20〜100nmの酸化錫または酸化チタンを主体とする薄膜であり、前記基体から遠い方(第2層)の下地膜が、同程度の厚さの酸化ケイ素または酸化アルミニウムを主体とする薄膜である、2層の下地膜を形成することによって、前記金属酸化物薄膜の干渉色を低減させることができる。
【0051】
熱分解酸化法によって、酸化ケイ素薄膜を形成する原料は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2−ジメチルシラン、1,1,2−トリメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等が挙げられる。また、この場合の酸化原料としては、酸素、水蒸気、乾燥空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素またはオゾン等が挙げられる。
【0052】
なお、シランは反応が早く、ガラス表面に到達するまでに、酸化ケイ素となって、薄膜形成が困難になることがある。そんな時には、エチレン、アセチレンまたはトルエンなどの不飽和炭化水素ガスを併用するとよい。
【0053】
熱分解酸化法によって、酸化アルミニウムの下地膜を形成する原料は、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリイソポプロポキサイド、塩化ジエチルアルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネートまたは塩化アルミニウム等が挙げられる。また、この場合の酸化原料としては、酸素、水蒸気または乾燥空気等が挙げられる。
【0054】
金属酸化物薄膜を形成する前に、金属含有粒子または金属含有薄膜が形成されるとよい。前記金属含有粒子または前記金属含有薄膜が、前記金属酸化物の結晶が成長する起点となって、金属酸化物の結晶が、薄膜全体で比較的均一に成長できる。前記金属含有粒子または前記金属含有薄膜が、金属酸化物形成のためのバッファ層であり、前記結晶が成長する起点を多数形成していることが好ましい。
【0055】
バッファ層が存在することによって、前記金属酸化物の結晶成長が、多数の個所からほぼ同時に始まるため、巨大結晶粒生成が抑制されて、前記金属酸化物薄膜の厚さが均一にできる。バッファ層は、結晶性金属酸化物の薄膜であることが好ましい。結晶性金属酸化物の薄膜は、その表面に結晶による微細な凹凸を多数有し、その凹凸が、前記金属酸化物薄膜の結晶成長の起点となる。
【0056】
バッファ層は、透明な導電層となる金属酸化物と同じ種類の金属酸化物の薄膜であってもよく、また、違う種類の金属酸化物の薄膜であってもよい。バッファ層の金属酸化物が、透明な導電層となる金属酸化物と同じ種類の金属酸化物であると、後者の結晶成長がより促進される。すなわち、バッファ層を形成する金属含有粒子の粒径を小さくしたり、その付着量を少なくしたり、あるいは金属含有薄膜におけるその金属の含有率を下げることができる。
【0057】
すなわち、透明な導電膜となる金属酸化物薄膜が、ルチル構造を示す酸化錫を主体とした薄膜である場合には、バッファ層が、同じルチル構造をとる酸化錫を主体とした薄膜であることが望ましい。
【0058】
前記下地膜の第1層が、酸化錫等の結晶性金属酸化物の薄膜である場合には、前記第1層の表面が結晶による微少な凹凸を有し、その凹凸によって、前記下地膜の第2層が、表面に凹凸を形成される。そして、その上に形成される金属酸化物薄膜が、その成膜速度を速められ、また、巨大結晶粒生成防止によって、結晶の白濁化を起こすことなく、前記金属酸化物薄膜の膜厚を厚くすることが可能となる。すなわち、下地膜第1層が、結晶性金属酸化物薄膜である場合には、下地膜第2層が、アルカリパッシベーション膜である、酸化ケイ素等の非晶質薄膜であっても、バッファ層の役目を果たすこともある。
【0059】
また、透明な基体がアルカリ成分を含有しないガラスである場合、アルカリパッシベーション膜が、必ずしも必要ではない。そして、前記下地膜第1層が、結晶性金属酸化物の薄膜とされれば、バッファ層が省略できて、工程が簡略にできる。また、アルカリ成分を含有しないガラスは、アルカリ成分を含有するソーダライムガラスよりもガラス転移点などの熱特性が高いので、より高温で前記金属酸化物薄膜が形成できる。
【0060】
前記下地膜およびバッファ層は、透明な導電膜と同様に、スパッタリング法、真空蒸着法などのいわゆる物理蒸着法や、スプレー法、あるいは、化学気相法(CVD法)など熱分解酸化反応を伴う化学蒸着法から選ばれた方法によって、形成される。透明な導電膜の形成方法と同じ方法を採用すると、一連の工程として形成できるので、効率的である。
【0061】
バッファ層は、前記の透明な導電膜と同様に、金属化合物の熱分解酸化反応によって形成するのが好ましい。熱分解酸化反応によって形成する場合、前記の透明な導電膜と同様に、有機金属酸化物を原料とすることもできるが、無機金属塩化物および水蒸気ならびに塩化水素を使用して、形成されることが好ましい。この時、金属塩化物に対する塩化水素の混合比率が、モル比で1未満であることが好ましく、0.2未満であることが、さらに好ましい。
【0062】
また、バッファ層をCVD法などで形成する場合は、供給するガスの金属成分含有濃度が小さいことが好ましい。濃度を小さくすることによって、金属酸化物薄膜の白濁が生じにくくなり、バッファ層の成膜速度を速くし、あるいは、バッファ層の膜厚を厚くできる。高濃度に金属成分を含有するガスが局所的に滞留した場合、結晶成長が急速に進み、白濁が生じてしまう。濃度を小さくして、結晶成長を防止するのである。
【0063】
一連の工程の中でバッファ層および透明な導電膜を形成することは、好ましい方法である。CVD法は上記の条件に合致する方法である。バッファ層を形成した後、引き続いて、金属酸化物薄膜を連続して形成できる。
【0064】
以下、フロート法ガラスが透明な基体である、オンラインCVD法による実施の形態について、さらに詳細に説明する。
【0065】
図1は、オンラインCVD法で使用する装置の一例を示す。ガラス材料が、熔融炉(フロート窯)11からフロートバス12内に流れ出し、ガラスリボン10となって、溶融錫浴15上を移動して、固形となった後、ローラ17により引き上げられて、徐冷炉13へと送り込まれる。なお、徐冷炉13で徐冷されたガラスリボンは、図示を省略する切断装置により、所定の大きさのガラス板へと切断される。
【0066】
溶融錫浴15上にある、高温状態のガラスリボン10の表面から所定距離を隔て、所定個数のコータ16(図示した形態では3つのコータ16a,16b,16c)が錫フロート槽15内に配置される。これらのコータからは、ガス状の原料が供給され、ガラスリボン10上に連続的に下地膜、バッファ層および透明な導電膜が、順次形成される。
【0067】
また、コータが3つ以上配置されて、複数のコータから原料が供給され、下地膜が2層であり、あるいは、金属酸化物薄膜が多層であるように形成することができる。さらに、金属酸化物薄膜が形成されたガラスリボン10がフロートバス12を出た後、前記ガラスリボン上にスプレー法によって、金属酸化物薄膜が追加して形成されることができる。
【0068】
オンラインCVD法においても、塩化水素が、金属塩化物と水蒸気が接触する前に混合され、続いて金属塩化物と水蒸気がプレミックスされることが望ましい。原料ガスが、ガラスリボン上に到達する前に、十分混合されて、原料の組成ムラが軽減され、形成された金属酸化物薄膜の膜厚ムラが軽減される。
【0069】
図2は、本願における透明導電膜付き透明基体の断面積層構造を示す。透明な基体1の上に、第1下地層2、第2下地層3、バッファ層4が順次形成され、前記バッファ層の上に、透明な導電膜5が形成されて、透明導電膜付き透明基体が製造される。
【0070】
本発明における光電変換素子は、本発明の透明導電膜付き基体を基板とし、前記基板の上に、光電変換ユニットを形成して構成される。光電変換ユニットは光電変換層と背面電極層とで構成される。光電変換層が、前記透明導電性基板の導電層の上に形成され、背面電極層が前記光電変換層の上に形成されて、光電変換素子となる。
【0071】
透明な基体側から太陽光が入射し、透明な導電膜を介して、光電変換層に達し、光電変換によって電力を発生する。発生した電力が、上記背面電極層と前記透明な導電層とを電極として外部に取り出されて、利用される。
【0072】
光電変換層は、光反応性の半導体薄膜層により形成するのが好ましい。アモルファスシリコン系の半導体薄膜層、非単結晶シリコン系の結晶性半導体薄膜層、あるいは、それらを組み合わせた半導体薄膜層が一般的に使用される。透明な導電膜側からp型層/i型層/n型層の順に積層した、多層構造のシリコン系半導体薄膜層の光電変換層を構成するのが、さらに好ましい。
【0073】
図2は、本願における光電変換素子の断面積層構造を示す。透明導電膜付き透明基体(基板)1〜5の透明な導電膜5の上に、先ずp型層6、次いでi型層7、n型層8、そして、裏面電極層9が形成されて、光電変換素子が製造される。
【0074】
光電変換層は、水素ガスなどを用いた平行平板型プラズマCVD装置を用いて形成し、前記透明導電性基板を加熱しないで、プラズマによる熱のみで、前記透明導電性基板とカソードの間に高周波電圧を印加して、プラズマを発生させ、シリコン系薄膜を順次形成するとよい。
【0075】
背面電極層は、金属薄膜が一般的に使用されるが、シリコン系半導体薄膜層と金属薄膜との間に、金属酸化物の薄膜を形成することによって、金属薄膜の安定性を強化することは好ましい。背面電極層は、酸素を含まない雰囲気中で、スパッタリング法で形成するとよい。
【0076】
光電変換装置は、外部に電力を取り出す配線を除いて、光電変換素子全体を外部雰囲気と遮断するように封止することが、素子の安定性を維持するのに好ましい。
【0077】
本発明の透明導電性基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の省エネルギー型ディスプレイ装置、FED、発光ダイオードや固体レーザー等の省エネルギー型発光装置、太陽電池等の地球環境対応装置や光センサー等に使用される光電変換素子用の基板として使用することができる。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0079】
まず、光吸収係数および抵抗率の測定方法を説明する。
(光吸収係数の測定)
透明導電膜付き透明基体の透明な導電膜上に、屈折率が1.79のヨウ化メチレンを塗布する。さらにその上に、厚さ1mmのカバーガラス(コーニング社製#7059)を密着させる。これで、透明な導電膜の表面凹凸による散乱の影響を防止する。こうして得たサンプルを、分光光度計にセットして、各光波長における透過率と反射率を求め、光吸収係数を計算して求めた。
【0080】
(抵抗率の測定)
四端子を用いたJIS K7194に準ずる測定法により、シート抵抗を測定し、別途測定した膜厚より、導電膜の抵抗率を算出した。
【0081】
(実施例1)
オンラインCVD法を利用して、ガラスリボン上に下地膜、バッファ層および透明な導電膜(結晶性金属酸化物薄膜)をこの順で形成した。具体的には、フロートバス内がバス外よりもやや高圧に維持されるように、フロートバス空間内に98体積%の窒素と2体積%の水素とを供給した。フロートバス内を非酸化性雰囲気に保持した状態で、最上流側に位置する第1のコータから、四塩化錫(蒸気)、水蒸気、塩化水素、窒素およびヘリウムからなる混合ガスを供給し、のガラスリボン上に厚さ55nmの酸化錫薄膜(第1下地層)を形成した。引き続き、第2のコータから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からなる混合ガスを供給し、第1下地層上に厚さ30nmの酸化ケイ素薄膜(第2下地層)を形成した。さらに、第3のコータから、四塩化錫(蒸気)0.53mol%、水蒸気42.4mol%、塩化水素0.03mol%、および窒素からなる混合ガスを供給し、第2下地層上に、厚さ90nmの酸化錫(SnO)からなる薄膜(バッファ層)を成膜速度1830nm/minで形成した。さらに下流側に設置したコータを使って、表面温度630℃のバッファ層上に、四塩化錫(蒸気)2.62mol%、水蒸気45.7mol%、塩化水素0.05mol%、窒素およびフッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜厚900nmのフッ素含有酸化錫(SnO:F)からなる透明な導電膜(結晶性金属酸化物薄膜)を成膜速度5400nm/minで形成して、透明導電膜付きガラス板を製造した。
【0082】
この透明導電膜付きガラス板は、光波長800〜1100nmの吸収係数平均値が597cm−1、光波長400〜500nmの吸収係数平均値が500cm−1、可視光線域におけるヘイズ率が19.1%、抵抗率が7.79×10−4Ω・cmであった。また、膜中のハロゲン濃度はF濃度が0.16重量%、Cl濃度が0.12重量%であった。
(実施例2)
オンラインCVD法を利用して、実施例1と同様にガラスリボン上に下地膜およびバッファ層をこの順で形成した。続いて、表面温度650℃のバッファ層上に、四塩化錫(蒸気)4.40mol%、水蒸気75.8mol%、塩化水素0.05mol%、窒素およびフッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜厚900nmのフッ素含有酸化錫(SnO:F)からなる透明な導電膜(結晶性金属酸化物薄膜)を成膜速度7400nm/minで形成して、透明導電膜付きガラス板を製造した。
【0083】
この透明導電膜付きガラス板は、光波長800〜1100nmの吸収係数平均値が703cm−1、光波長400〜500nmの吸収係数平均値が657cm−1、可視光線域におけるヘイズ率が20.7%、抵抗率が11.00×10−4Ω・cmであった。また、膜中のハロゲン濃度はF濃度が0.08重量%、Cl濃度が0.12重量%であった。
【0084】
(比較例1)
オンラインCVD法を利用して、実施例1と同様にガラスリボン上に下地膜およびバッファ層をこの順で形成した。続いて、表面温度630℃のバッファ層上に、四塩化錫(蒸気)4.4mol%、水蒸気75.8mol%、塩化水素0.05mol%、窒素およびフッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜厚990nmのフッ素含有酸化錫(SnO:F)からなる透明な導電膜を、成膜速度9260nm/minで形成して、透明導電膜付きガラス板を製造した。
【0085】
この透明導電膜付きガラス板は、光波長800〜1100nmの吸収係数平均値が1160cm−1、光波長400〜500nmの吸収係数平均値が512cm−1、可視光線域におけるヘイズ率が34.6%、抵抗率が8.08×10−4Ω・cmであった。また、膜中のハロゲン濃度はF濃度が0.10重量%、Cl濃度が0.19重量%であった。
【0086】
(比較例2)
オンラインCVD法を利用して、実施例1と同様にガラスリボン上に下地膜およびバッファ層をこの順で形成した。表面温度630℃のバッファ層上に、四塩化錫(蒸気)3.8mol%、水蒸気72.8mol%、塩化水素0.05mol%、窒素およびフッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜厚900nmのフッ素含有酸化錫(SnO:F)からなる透明な導電膜を成膜速度7300nm/minで形成して、透明導電膜付きガラス板を製造した。
【0087】
この透明導電膜付きガラス板は、光波長800〜1100nmの吸収係数平均値が872cm−1、光波長400〜500nmの吸収係数平均値が473cm−1、可視光線域におけるヘイズ率が20.2%、抵抗率が8.08×10−4Ω・cmであった。また、膜中のハロゲン濃度はF濃度が0.08重量%、Cl濃度が0.14重量%であった。
【0088】
以上の結果をまとめて表1に示す。実施例1と比較例1とを比較すると、同じ成膜温度において、成膜速度を抑制することによって、低い抵抗率(高度の導電性)かつ低い吸収性(高度の光透過性)の透明導電膜付き透明基体が得られることがわかる。そして、透明な導電膜中のCl濃度が減少するのである。また、実施例2と比較例2とを比較することによって、成膜温度を高くすることによって、低い抵抗率(高度の導電性)かつ低い吸収性(高度の光透過性)の透明導電膜付き透明基体が得られることがわかる。そして、透明な導電膜中のCl濃度が減少するのである。
【0089】
【表1】
Figure 2004362842
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、可視光域から近赤外域迄の光波長範囲に渡って、低減された光吸収性(高度の光透過性)を有し、かつ、光電変換層が形成される側の表面に適度の凹凸を有しており、さらに、高度の導電性を有する透明導電膜付き透明基体が得られる。
【0091】
さらに、本発明の、制御された成膜速度および成膜温度で透明な導電膜を形成する製造方法によって、透明導電膜付き透明基体が、効率よく、安定して生産できる。
【0092】
上記の透明導電膜付き透明基体を基板として用いることによって、光電変換率の改良された、光電変換素子が得られる。
【0093】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、オンラインCVD法で使用する装置の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本願における透明導電膜付き透明基体の積層構造を示す断面の概念図である。
【図3】図3は、本願における光電変換素子の積層構造を示す断面の概念図である。
【符号の説明】
1 透明な基体
2 第1下地層
3 第2下地層
4 バッファ層
5 透明な導電膜
6 p型シリコン半導体層
7 i型シリコン半導体層
8 n型シリコン半導体層
9 裏面電極層
10 ガラスリボン
11 溶融炉
12 フロートバス
13 徐冷炉
15 溶融錫浴
16(16a、16b、16c) コータ
17 ローラ

Claims (13)

  1. 透明な基体およびその上に形成された透明な導電膜を包含し、透明な基体側から光を入射したとき、800〜1100nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が400〜800cm−1であり、可視光線域におけるヘイズ率が10%以上であって、かつ、抵抗率が7×10−4〜13×10−4Ω・cmの範囲であることを特徴とする透明導電膜付き透明基体。
  2. 400〜500nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が700cm−1以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き透明基体。
  3. 前記800〜1100nmの光波長範囲に渡って、50nmピッチで求めた光吸収係数の平均値が400〜750cm−1であり、可視光線域におけるヘイズ率が13%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜付き透明基体。
  4. 前記透明な導電膜が、金属酸化物を主体とした薄膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透明導電膜付き透明基体。
  5. 前記金属酸化物が、酸化錫を主体とした金属酸化物であることを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜付き透明基体。
  6. 前記酸化錫が、四塩化錫および水蒸気ならびに塩化水素を用いて、熱分解酸化反応によって生成されることを特徴とする請求項5に記載の透明導電膜付き透明基体。
  7. 前記四塩化錫に対する前記塩化水素の混合比率(塩化水素/四塩化錫)が、モル比で0.2未満であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜付き透明基体。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電膜付き透明基体における透明な導電膜が、3000〜7000nm/minの成膜速度で、かつ、表面温度が600℃以上、640℃未満の透明な基体の上で形成されることを特徴とする透明導電膜付き透明基体の製造方法。
  9. 請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電膜付き透明基体における透明な導電膜が、3000〜8000nm/minの成膜速度で、かつ、表面温度が640℃以上の透明な基体の上で形成されることを特徴とする透明導電膜付き透明基体の製造方法。
  10. 前記透明な導電膜の厚さが1000nm以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 前記透明な導電膜が、温度が600℃以上のガラス板上で、あるいは、ガラス板製造工程におけるガラスリボン上で形成されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電膜付き透明基体を構成要素として包含することを特徴とする光電変換素子用基板。
  13. 請求項12に記載の光電変換素子用基板を構成要素として包含することを特徴とする光電変換素子。
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