JP2011210499A - 透明導電膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低抵抗でかつ高透過率な透明電極膜を簡易な工程で製造する方法を提供すること。
【解決手段】 基体上に透明導電膜を形成する熱CVD(化学気相成長)法であって、固体原料(R)を直接加熱により気化させる工程(S1)と発生した原料ガスを加熱基体に堆積させる工程(S2)により透明導電性酸化スズ(SnO2)膜(P)を得ることができる。この方法は、スプレーノズルや真空設備等を必要とせず大気下で成膜可能であり、簡易設備での高品位な導電性酸化スズ膜の製造を可能にする。
【選択図】 図1
【解決手段】 基体上に透明導電膜を形成する熱CVD(化学気相成長)法であって、固体原料(R)を直接加熱により気化させる工程(S1)と発生した原料ガスを加熱基体に堆積させる工程(S2)により透明導電性酸化スズ(SnO2)膜(P)を得ることができる。この方法は、スプレーノズルや真空設備等を必要とせず大気下で成膜可能であり、簡易設備での高品位な導電性酸化スズ膜の製造を可能にする。
【選択図】 図1
Description
本発明は透明導電膜およびその製造方法に係り、特に、低抵抗でかつ高透過率な透明電極膜を簡易な工程にて得ることを可能とする、透明導電膜の製造方法等に関するものである。
酸化スズ膜の形成方法としては、CVD(化学気相成長)法によるものが従来から知られている。この方法では加熱した基体上に原料ガスを接触させ、基体表面にて原料ガスの熱分解・酸化反応を起こして基体表面に酸化スズ膜を形成させる。詳しくは、四塩化スズ(SnCl4)、有機スズガス、または四塩化スズもしくは有機スズ化合物を水や有機溶媒等に溶解させた液体原料を、ノズルにて噴霧し基体上に酸化スズ膜を堆積させる。以下、より詳しく従来技術について述べる。
特許文献1には、フロート法によるガラス製造工程において、窒素と水素からなる非酸化性雰囲気中でガラスリボン上にジメチルスズジクロライド等の有機スズガス原料を供給するCVD法により、透明導電膜を形成する方法が記載されている。これによれば、有機スズ原料を用いた場合、原料に含まれる炭素が透明導電膜中に残存することで、波長400〜550nmの吸収係数が上昇して透過率の低下を招くことから、膜中の炭素量一定範囲に収めることで透過率の低下が抑えられることが開示されている。
特許文献2には、窒素ガスをキャリアガスとして四塩化スズと水との反応を用いたCVD法により、酸化スズ透明導電膜を形成する方法が記載されている。これによれば、四塩化スズ等の無機系ガス源は反応速度が速く、前述の有機物を含まない等の利点がある反面、ガス濃度の制御が困難なことや、成膜装置やガスインジェクタへの未反応原料の堆積などの問題があり、これを解決するために、原料ガスに臭化水素ガスを加えて供給することが開示されている。
特許文献3には、有機スズ原料をアルコール等に溶解させた原料液を加熱基体上に噴霧し、導電性酸化スズ膜を形成するスプレー熱分解法による方法が記載されている。これによれば、スプレー熱分解法を用いて、有機スズ原料の組成を制御することで高配向性を有するスズ膜結晶を得、それにより低抵抗な導電膜を得ることが特徴である旨開示されている。
特許文献4には、二塩化スズ、硝酸、酢酸、メタノールの混合溶液を加熱により気化させ、加熱された基体に供給する方法が記載されている。
特許文献5には、四塩化スズを原料とし、各種フッ化化合物を添加した液体原料を、特許文献3開示技術同様にスプレー熱分解法により作製する手法が記載されている。これによれば、四塩化スズを原料として用いた場合、スズ原子に対して2倍以上の多量のフッ化アンモニウムを添加しなくては所望の導電性能が得られないのに対し、フッ素源としてフッ化水素アンモニウムやフッ化水素を用いることで、各種フッ化化合物の添加量を低減させつつ低抵抗な導電性酸化スズ膜が得られることが開示されている。
しかし、これら従来技術にはそれぞれ、次のような問題があった。
<特許文献1開示技術_有機スズ原料による膜中への炭素残存と有害性>
特許文献1には上述のとおり、膜中の炭素量一定範囲に収めることで透過率の低下が抑えられることが記載されている。しかし、透明導電膜原材料としては炭素成分をほとんど含有しないものが望ましい。また、有機スズ化合物は毒性・有害性の高い物質が多く、さらには材料コストの面で比較的高価であり、量産においては好ましい原料であるとはいえない。
<特許文献1開示技術_有機スズ原料による膜中への炭素残存と有害性>
特許文献1には上述のとおり、膜中の炭素量一定範囲に収めることで透過率の低下が抑えられることが記載されている。しかし、透明導電膜原材料としては炭素成分をほとんど含有しないものが望ましい。また、有機スズ化合物は毒性・有害性の高い物質が多く、さらには材料コストの面で比較的高価であり、量産においては好ましい原料であるとはいえない。
<特許文献2開示技術_毒性、四塩化スズ原料による装置の汚染>
特許文献2には上述のとおり、原料ガスに臭化水素ガスを加えて供給することが記載されている。しかしながら、臭化水素ガスは毒性・腐食性を持ち、工業的に大量に使用するには好ましくない。また、四塩化スズを原料とした場合、熱分解の過程において、化学量論的にはスズ1モルに対し4倍モルの塩素ガスが生成する。塩素ガスも高い腐食性を有することから、成膜装置への腐食等の負荷が大きくなるという問題がある。
特許文献2には上述のとおり、原料ガスに臭化水素ガスを加えて供給することが記載されている。しかしながら、臭化水素ガスは毒性・腐食性を持ち、工業的に大量に使用するには好ましくない。また、四塩化スズを原料とした場合、熱分解の過程において、化学量論的にはスズ1モルに対し4倍モルの塩素ガスが生成する。塩素ガスも高い腐食性を有することから、成膜装置への腐食等の負荷が大きくなるという問題がある。
<特許文献3開示技術_製造工程上の不都合、爆発の危険性>
特許文献3に開示された方法では、液体原料を加熱基体に噴きつけるために、噴霧毎に基体の温度が低下する恐れがあり、低下した基体温度が復旧するまで噴霧を中止しなければならない。このことは、製造工程において成膜時間の延長を来すものであり、さらには基体の温度サイクルが多くなることから、基体が変形、破損する恐れがあり、安定して製造する上では好ましくない。さらには、使用する溶媒が引火性の有機溶媒を含む場合、500℃以上の加熱基体に直接噴霧した際に、それら有機溶媒の気化により引火性ガスが発生し、爆発を引き起こすことも考えられ、安全上好ましくない。
特許文献3に開示された方法では、液体原料を加熱基体に噴きつけるために、噴霧毎に基体の温度が低下する恐れがあり、低下した基体温度が復旧するまで噴霧を中止しなければならない。このことは、製造工程において成膜時間の延長を来すものであり、さらには基体の温度サイクルが多くなることから、基体が変形、破損する恐れがあり、安定して製造する上では好ましくない。さらには、使用する溶媒が引火性の有機溶媒を含む場合、500℃以上の加熱基体に直接噴霧した際に、それら有機溶媒の気化により引火性ガスが発生し、爆発を引き起こすことも考えられ、安全上好ましくない。
<特許文献4開示技術_爆発の危険性>
特許文献4開示の方法においても、これが引火性のガスを高温基体に吹き付ける方法であることから、特許文献3開示技術と同様に安全上好ましくない。
特許文献4開示の方法においても、これが引火性のガスを高温基体に吹き付ける方法であることから、特許文献3開示技術と同様に安全上好ましくない。
なお、特許文献5においては四塩化スズを用いた実施例が挙げられているが、二塩化スズを用いた実施例は記載されていない。これは、二塩化スズ原料を用いた際、別の問題が発生するからであると推測される。つまり、二塩化スズを用いた場合、水またはアルコールに溶解した際に、空気中の酸素と反応して不溶性のオキシ塩化物が生成されることが知られている。
したがって、長時間大気と接触させると噴霧原料液に白色沈殿物が生成し、均一な導電性酸化スズ膜を形成することが困難になることが、容易に予想される。かかる事態を防ぐためには、原料液体を不活性ガスにて置換し、原料酸素との接触を遮断することが必要となる。しかし、設備的には全く好ましくない。
そこで本発明が解決しようとする課題は、このような従来技術の問題点を解消するために、有害な有機スズガスを使用せず、四塩化スズ等の使用による腐食ガス発生も低減でき、さらに有機溶剤等の噴霧を不要として爆発の危険性を排除し、原料ガスの供給ノズル等の複雑な設備機構を省略することも可能な、しかも簡易な工程による、透明導電膜の製造方法を提供することである。
本願発明者は上記課題について検討した結果、二塩化スズ水和物(SnCl2・2H2O)または二塩化スズ無水物(SnCl2)を固体状のまま加熱して発生させた二塩化スズガスを、加熱基体上に接触させることで、低抵抗かつ高透過率の導電性酸化スズ膜を堆積可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上課題を解決するための手段として、本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は以下のとおりである。
〔1〕 二塩化スズ固体原料を加熱し二塩化スズ蒸気を発生させる第一工程と、その蒸気を加熱された基体に接触させて基体上に導電性酸化スズ膜を形成させる第二工程とからなる、透明導電膜の製造方法。
〔2〕 前記二塩化スズ固体原料は、フッ素を含有させたフッ素含有二塩化スズ固体原料であることを特徴とする、〔1〕に記載の透明導電膜の製造方法。
〔3〕 前記第一工程における加熱温度が350℃以上であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の透明電極膜の製造方法。
〔2〕 前記二塩化スズ固体原料は、フッ素を含有させたフッ素含有二塩化スズ固体原料であることを特徴とする、〔1〕に記載の透明導電膜の製造方法。
〔3〕 前記第一工程における加熱温度が350℃以上であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の透明電極膜の製造方法。
〔4〕 前記第二工程における基体温度が350℃以上であることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の透明電極膜の製造方法。
〔5〕 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜からなる、透明導電膜。
〔6〕 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜を使用してなる、下記(A)記載のいずれかの製品。
(A) 導電膜、保護膜、反射防止膜、太陽電池、タッチパネル、ガスセンサー、電熱ガラス、調光窓、紫外線吸収材。
〔5〕 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜からなる、透明導電膜。
〔6〕 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜を使用してなる、下記(A)記載のいずれかの製品。
(A) 導電膜、保護膜、反射防止膜、太陽電池、タッチパネル、ガスセンサー、電熱ガラス、調光窓、紫外線吸収材。
つまり本発明は、酸化スズ透明導電膜の原材料ガスとして、従来のような有機スズや四塩化スズではなく、二塩化スズ水和物(SnCl2・2H2O)または二塩化スズ無水物(SnCl2)を用い、しかも、これらを水や有機溶媒に溶解した液体を噴霧することなく、前記二塩化スズ原料を固体のまま加熱し、発生したガスを加熱基体に接触させる手法である。そして、これにより、高透過率で低抵抗な導電性酸化スズ膜を得ることを可能とするものである。
本発明の透明導電膜の製造方法等は上述のように構成されるため、これによれば、有害な有機スズガスを使用せずに済み、四塩化スズ等の使用による腐食ガス発生も低減できる。また固体原料から二塩化スズ蒸気を発生させる方式であるため、水や有機溶媒に溶解した液体として噴霧することも不要であり、基体の変形・破損や工程中断など液体噴霧による製造工程上の各種不都合も排除できる。さらに有機溶剤等の噴霧も不要であるために爆発の危険性を排除でき、原料ガスの供給ノズル等の複雑な設備機構も不要とすることができ、しかも簡易な工程によって、透明導電膜を得ることができる。
さらに本発明によれば、下記の効果が得られる。
<1>有機スズ等の毒性の高い原材料を用いる必要がなく、したがって、従来のような導電性酸化スズ膜への炭素成分の混入が不要となるため、透過率の低下が抑えられる。
<2>四塩化スズを用いない成膜方法であるため、腐食性ガスの発生が比較的少なくなり、成膜装置への負荷が低減できる。
<1>有機スズ等の毒性の高い原材料を用いる必要がなく、したがって、従来のような導電性酸化スズ膜への炭素成分の混入が不要となるため、透過率の低下が抑えられる。
<2>四塩化スズを用いない成膜方法であるため、腐食性ガスの発生が比較的少なくなり、成膜装置への負荷が低減できる。
<3>液体原料の噴霧を行わない方法であるため、成膜時の基体温度の低下を抑えることができ、また基体の温度サイクルを低減できるため、基体の変形・破損を低減することができる。さらには有機溶剤の揮発による爆発等の危険性を軽減できる。
<4>二塩化スズを溶液原料として用いないことにより、原料液自体の変質・劣化を抑えることができる。
<4>二塩化スズを溶液原料として用いないことにより、原料液自体の変質・劣化を抑えることができる。
本発明によれば、これに加えて、成膜における必須の設備機構を、(1)基体および蒸発源の加熱機構と、(2)原料ガスを基体に接触させるための気流制御機構の2点のみとすることができる。これにより、製造設備の簡素化を図ることができ、設備の導入コストを大幅に低減することが可能となる。つまり、スプレーノズルや真空設備等は一切不要であり、大気下で高品質の成膜が可能であり、簡易設備による高品位な導電性酸化スズ膜を製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の透明導電膜製造方法を示すフロー図である。図示するように本発明の透明導電膜の製造方法は、二塩化スズ固体原料(または「二塩化スズ固体蒸発源」ともいう。)Rを加熱して二塩化スズSnCl2蒸気を発生させる第一工程(または「蒸発源気化工程」ともいう。)S1と、その蒸気を加熱された基体に接触させて、基体上に導電性酸化スズ膜Pを形成させる第二工程(また「は成膜工程」ともいう。)S2とからなることを、基本的な構成とする。
図1は、本発明の透明導電膜製造方法を示すフロー図である。図示するように本発明の透明導電膜の製造方法は、二塩化スズ固体原料(または「二塩化スズ固体蒸発源」ともいう。)Rを加熱して二塩化スズSnCl2蒸気を発生させる第一工程(または「蒸発源気化工程」ともいう。)S1と、その蒸気を加熱された基体に接触させて、基体上に導電性酸化スズ膜Pを形成させる第二工程(また「は成膜工程」ともいう。)S2とからなることを、基本的な構成とする。
二塩化スズ固体原料(または、二塩化スズ固体蒸発源)Rとしては、二塩化スズ水和物(SnCl2・2H2O)、または二塩化スズ無水物(SnCl2)のいずれをも用いることができる。つまり本発明は、酸化スズ透明導電膜の原材料ガスとして二塩化スズ原料を用いることに特徴があり、さらに、これらを水や有機溶媒に溶解した液体を噴霧することなく、二塩化スズ原料を固体のまま加熱し、発生したガスを加熱基体に直接接触させて成膜することを特徴としている。なお、二塩化スズ二水和物、二塩化スズ無水物のいずれも「二塩化スズ(固体)蒸発源」という。
本発明において、透明導電膜は、酸素の体積濃度15%以上の雰囲気で成膜することが好ましい。酸素濃度が低い条件では原料ガスの熱分解反応が抑制され、得られる透明導電膜の抵抗が増加するからである。製造工程に鑑みれば、大気組成(酸素濃度21%程度)を用いることでもよい。また、本発明の成膜時における圧力は特に限定されない。たとえば大気圧下で行うことも、もちろん可能である。
本発明において、酸化スズ蒸発源から発生した原料ガスを基体に接触させる具体的方法は、特に限定されない。たとえば、固定した基体の表面に沿って原料ガスを流動させ、基体表面に膜を生成することができる。あるいはまた、固定した基体の上部から原料ガスを接触させて基体表面に膜を生成してもよい。同様に、たとえば、加熱基体を固定する必要加熱基体をメッシュベルト等により移動させながら、基体の表面に沿って原料ガスを流動させてもよいし、基体上部から原料ガスを接触させてもよい。
二塩化スズ固体原料としては、フッ素を含有させたフッ素含有二塩化スズ固体原料を用いることができる。具体的には、二塩化スズ水和物または二塩化スズ無水物に対し、フッ素原子を含む化合物を添加することにより、フッ素含有二塩化スズを得る。フッ素原子を含む化合物は、透明導電膜の低抵抗化を促すための添加剤として、二塩化スズ蒸発源に対してフッ素を導入するものである。フッ素源としては、たとえばフッ化水素酸(HF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、フッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)、トリフルオロ酢酸、ブロモトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタンを好適に使用することができる。
二塩化スズ蒸発源にフッ素を導入する方法としては、二塩化スズ蒸発源とフッ素源とを適当な溶媒に溶解混合し、再析出させたものを、フッ素含有二塩化スズ蒸発源として使用してもよい。また、二塩化スズに対し、フッ素源を乾式混合したものをフッ素含有二塩化スズ蒸発源として使用してもよい。
フッ素源の添加量は特に限定されないが、フッ素の添加量が高過ぎる場合には、得られた透明導電膜の透過率が低下する恐れがあるため、過度に高濃度のフッ素の添加は推奨されない。
第一工程(蒸発源気化工程)における二塩化スズ蒸発源、すなわち二塩化スズ水和物、二塩化スズ無水物、またはフッ素含二塩化スズの加熱温度は、350℃以上とすることが望ましい。350℃以下の場合には、二塩化スズガスの発生量が安定しないため、得られる透明導電膜の均質性が不充分となる場合があるからである。つまり当該温度を350℃以上とすることによって、得られる透明導電膜を充分に均質なものとすることができる。
二塩化スズ蒸発源またはフッ素含有二塩化スズ蒸発源の加熱の方法は特に限定されない。たとえば、350℃以上の加熱に耐えられる容器または基体に、二塩化スズ蒸発源またはフッ素含有二塩化スズ蒸発源蒸発源を配置し、加熱する方法によって、充分な効果が得られる。
第二工程(成膜工程)における基体温度は、350℃以上とすることが望ましい。350℃以下の場合には、基体上での反応ガスの熱分解反応が進行しにくく、得られる酸化スズ膜構造の緻密さが不充分となる場合があるからである。この場合には、得られる酸化スズ透明導電膜の抵抗が増大する恐れがある。つまり、当該温度を350℃以上とすることによって、得られる酸化スズ膜構造を充分に緻密なものとすることができ、得られる酸化スズ透明導電膜の抵抗増大を防止することができる。
本発明において用いる基体は、成膜時の高温に耐えられるものであればよく、特に限定されない。たとえば種々のガラス基体(結晶化ガラスを含む)、セラミック基体、金属基体は、好適に使用可能な例として挙げられる。
以上説明したように、二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜からなる透明導電膜は、本発明により初めて実現できる、新規な透明導電膜である。本発明の透明導電膜は上述のように簡易な工程および簡易な設備によって製造可能であるため、これを用いた導電膜、保護膜、反射防止膜、太陽電池、タッチパネル、ガスセンサー、電熱ガラス、調光窓あるいは紫外線吸収材等は、従来技術以上の品質を備えつつ、コストを低減することができる。
以下、本発明の実施例として酸化スズ透明導電膜の製造について説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。
<成膜方法>
本実施例においては、固定した基体の表面に沿って原料ガスを流動させる方法を例に挙げるが、既に述べたとおり、原料ガスの接触の方法はかかる実施例に限定されない。たとえばガスを基体に対し垂直上方、または斜め上方から供給する機構を用いてもよい。
<成膜方法>
本実施例においては、固定した基体の表面に沿って原料ガスを流動させる方法を例に挙げるが、既に述べたとおり、原料ガスの接触の方法はかかる実施例に限定されない。たとえばガスを基体に対し垂直上方、または斜め上方から供給する機構を用いてもよい。
ガラス基体を加熱用ホットプレート上で加熱し、大気キャリアガスを加圧ポンプと流量計によって流量を調節し、加熱基体上へ供給した。キャリアガスはガラス基体の表面に対し水平に接触するように流動させた。ホットプレート上のキャリアガスの流路手前上流側に二塩化スズ蒸発源を配置し、基体と同時に蒸発源を加熱し二塩化スズガスを発生させることで、キャリアガス内に二塩化スズガスを導入し、加熱された基体上での熱分解反応により酸化スズ膜を形成した。
本実施例における成膜方法は、前記成膜装置を用いて、大気圧下での成膜を行った。100×100mm、厚さ1.1mmのソーダライムガラス基体をホットプレート上で400℃に加熱し、蒸発源0.5gをキャリアガスの流路手前上流に配置し、大気キャリアガスを20L/minの流量で20min供給して、透明導電膜を得た。
<評価方法>
得られた透明導電膜付きの基体(以下、「導電膜基体」)の膜厚の測定は、日立製走査型電子顕微鏡S−4000を用いて行った。導電膜基体の抵抗値の測定は、三菱化学製ロレスタ−GP MCP−T610を用いて四端子法により、表面抵抗(Ω/□)と比抵抗(Ω・cm)を測定することにより行った。また透過率の測定は、日立製分光光度計U−2001を用いて、透明導電膜なしのガラス基体をリファレンスとして光の透過曲線を求め、波長550nmにおける透過率を測定することにより行った。
得られた透明導電膜付きの基体(以下、「導電膜基体」)の膜厚の測定は、日立製走査型電子顕微鏡S−4000を用いて行った。導電膜基体の抵抗値の測定は、三菱化学製ロレスタ−GP MCP−T610を用いて四端子法により、表面抵抗(Ω/□)と比抵抗(Ω・cm)を測定することにより行った。また透過率の測定は、日立製分光光度計U−2001を用いて、透明導電膜なしのガラス基体をリファレンスとして光の透過曲線を求め、波長550nmにおける透過率を測定することにより行った。
以下に記載する実施例は、前記成膜方法において、二塩化スズ蒸発源の調製条件を変えたものである。また、四塩化スズを蒸発源として同様に作製したものを比較例とした。
〔実施例1〕
二塩化スズ二水和物を蒸留水に溶解し、これにフッ素源としてフッ化水素(HF)水溶液を二塩化スズ二水和物に対しF/Sn原子比で1になるように添加してフッ素含有二塩化スズ前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を120℃に設定したホットスターラー上で3時間加熱攪拌し、水分を蒸発させて得られた固体を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、実施例1とした。
〔実施例1〕
二塩化スズ二水和物を蒸留水に溶解し、これにフッ素源としてフッ化水素(HF)水溶液を二塩化スズ二水和物に対しF/Sn原子比で1になるように添加してフッ素含有二塩化スズ前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を120℃に設定したホットスターラー上で3時間加熱攪拌し、水分を蒸発させて得られた固体を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、実施例1とした。
〔実施例2〕
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F)とした以外は実施例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、実施例2とした。
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F)とした以外は実施例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、実施例2とした。
〔実施例3〕
添加するフッ素源をフッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)とした以外は実施例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、実施例3とした。
添加するフッ素源をフッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)とした以外は実施例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、実施例3とした。
〔実施例4〕
二塩化スズ二水和物を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、実施例4とした。
二塩化スズ二水和物を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、実施例4とした。
〔比較例1〕
四塩化スズ五水和物を蒸留水に溶解し、これにフッ素源としてフッ化水素(HF)水溶液を四塩化スズ五水和物に対しF/Sn原子比で1になるように添加してフッ素含有四塩化スズ前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を120℃に設定したホットスターラー上で3時間加熱攪拌し、水分を蒸発させて得られた固体を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、比較例1とした。
四塩化スズ五水和物を蒸留水に溶解し、これにフッ素源としてフッ化水素(HF)水溶液を四塩化スズ五水和物に対しF/Sn原子比で1になるように添加してフッ素含有四塩化スズ前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を120℃に設定したホットスターラー上で3時間加熱攪拌し、水分を蒸発させて得られた固体を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、比較例1とした。
〔比較例2〕
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F)とした以外は比較例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、比較例2とした。
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F)とした以外は比較例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、比較例2とした。
〔比較例3〕
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F・HF)とした以外は比較例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、比較例3とした。
添加するフッ素源をフッ化アンモニウム(NH4F・HF)とした以外は比較例1と同様に行い、得られた蒸発源を用いて、比較例3とした。
〔比較例4〕
四塩化スズ五水和物を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、比較例4とした。
四塩化スズ五水和物を蒸発源とし、後は上述のとおりの成膜方法によって成膜し、比較例4とした。
実施例1ないし4、比較例1ないし4の蒸発源を用いて成膜した透明導電膜の膜厚、表面抵抗、比抵抗値および透過率を、表1に示す。
ここに示すとおり、本発明による実施例1ないし4は、比較例1ないし4と比較して、透過率は90ないし93%程度とほぼ同等であるものの、低い比抵抗を有していることが明らかとなった。すなわち本発明によれば、従来のように四塩化スズを用いた場合との比較において、透過率同等、比抵抗がより高品位の透明導電膜を、従来よりも簡易な工程および設備によって製造できることが明らかとなった。
本発明の透明導電膜の製造方法等によれば、従来技術の種々の問題点を解消し、しかも簡易な工程、簡易な設備によって、従来技術より優れた品質の透明導電膜を得ることができる。したがって、産業上利用性が極めて高い発明である。
P …透明導電膜
R …二塩化スズ固体原料(二塩化スズ固体蒸発源)
S1…第一工程(蒸発源気化工程)
S2…第二工程(成膜工程)
R …二塩化スズ固体原料(二塩化スズ固体蒸発源)
S1…第一工程(蒸発源気化工程)
S2…第二工程(成膜工程)
Claims (6)
- 二塩化スズ固体原料を加熱し二塩化スズ蒸気を発生させる第一工程と、その蒸気を加熱された基体に接触させて基体上に導電性酸化スズ膜を形成させる第二工程とからなる、透明導電膜の製造方法。
- 前記二塩化スズ固体原料は、フッ素を含有させたフッ素含有二塩化スズ固体原料であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 前記第一工程における加熱温度が350℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明電極膜の製造方法。
- 前記第二工程における基体温度が350℃以上であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の透明電極膜の製造方法。
- 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜からなる、透明導電膜。
- 二塩化スズ固体またはフッ素含有二塩化スズ固体を原料とする導電性酸化スズ膜を使用してなる、下記(A)記載のいずれかの製品。
(A) 導電膜、保護膜、反射防止膜、太陽電池、タッチパネル、ガスセンサー、電熱ガラス、調光窓、紫外線吸収材。
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2010
- 2010-03-29 JP JP2010076442A patent/JP2011210499A/ja active Pending
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