JP2010080136A - 収差補正装置および該収差補正装置を備える荷電粒子線装置 - Google Patents

収差補正装置および該収差補正装置を備える荷電粒子線装置 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な構成により球面収差と六回非点収差を補正する荷電粒子線装置用の収差補正装置を提供する。
【解決手段】各極31a〜31lに励磁コイル32a〜32lを設置した二段の十二極子12、13を設ける。各極31a〜31lを順次1乃至12番目の極、並びにn=0、1、2として、(4n+1)番目の極の励磁コイルと(4n+2)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸11に垂直な平面において、絶対値が等しく且つ当該光軸11に向かって互いの方向が反対となる磁場を発生する。(4n+3)番目の極の励磁コイルと(4n+4)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸11に垂直な平面において、絶対値が等しく且つ当該光軸11に向かって互いの方向が反対となる磁場を発生する。これにより、光軸11の周りに回転可能な三回対称磁場及び六回対称磁場の重畳場を発生する。
【選択図】図2

Description

本発明は、収差補正装置及び荷電粒子線装置に関するものであり、特に、球面収差及び六回非点収差を補正する収差補正装置及び当該収差補正装置を備える荷電粒子線装置に関する。
電子顕微鏡等の荷電粒子線装置において、軸対称レンズによる正の球面収差は空間分解能を制限する本質的な要因である。
この正の球面収差による影響を抑制する技術が非特許文献1〜3に開示されている。この技術では基本的に、軸対称レンズ(例えば電子顕微鏡の対物レンズ)の前又は後に、三回対称場を発生させる多極子(例えば六極子)を二段配置する。さらに、多極子間及び多極子‐軸対称レンズ間に転送レンズを配置する。各多極子は光軸に沿って厚みを有し、それぞれが三回非点収差と負の球面収差を生じるが、後段の多極子は前段の多極子の三回非点収差を相殺するように三回対称場を生じさせることで、二段の多極子の系として負の球面収差のみを取り出すことが出来る。これにより、軸対称レンズを含めた全体の光学系として球面収差が低減されることになる。
A. V. Crew and D. Kopf, Optik, vol. 55 (1980) p.1-10 H. Rose, Optik, vol. 85 (1990) p.19-24 F. Hosokawa, et al., Proc. ImC 16 (2006) p.582
しかしながら、上述の収差補正技術は四次の収差までの補正であり、更に高次の収差に対しては完全な補正が出来ていない。例えば、五次の球面収差は対物レンズと収差補正装置の距離を光学的に制御すれば補正できるが、同次数の非点収差(即ち六回非点収差)の補正は実現できていない。これが収差補正の制限要因となっているため、更なる空間分解能の向上が期待できない。
また、実際の多極子は光軸に沿って有限な厚みを有する。この多極子が三回対称の磁場或いは電場を生じる場合、その多極子によって球面収差を補正すると、逆に上記の厚みに依存した高次の収差が現れる。このため、収差補正が可能となる電子線の入射角の範囲が制限されてしまう。更に、この制限によって回折収差の低減が困難になる。
この角度制限については、図10に示したロンチグラム(Ronchigram)図を用いて説明する。この図は、光軸に対して三回対称となる磁場を生じる1段の多極子を通過する電子線に対して収差補正を行ったときに得られたものである。図の中央に現れたコントラストの少ない領域は、適切に収差補正された電子線の多極子に対する入射角に対応している。この入射角の最大値を概算する場合は、当該領域の中央を中心として、同領域のみを含む最大の円を当てはめ、更にこの円の半径から電子線の入射角を換算する。この図10によれば、収差が適正に行われた電子線の最大入射角は約50mradであることがわかる。
しかしながら、この円の周りの領域に着目すると、中央のコントラストの少ない領域が六角形になっていることが判別できる。これは、五次の非点収差で現れる六回非点収差の残留によるものである。図10を得た多極子の場合、収差補正が可能な電子線の最大入射角はせいぜい50mradであり、それ以上の入射角を有する電子線に対して適切な収差補正は困難になる。従って、回折収差の低減を図ろうとしても、この入射角の制限があるために空間分解能が制限されてしまう。
この六回非点収差は、N極とS極の磁極を交互に並べた十二極子によって補正できる。しかしながら、この十二極子により生じた磁場分布を、補正するべき六回非点収差を含む像に合わせて回転させる必要がある。即ち、十二極子自体を回転させなければならず、現実的ではない。一方、この回転は二十四極子を用いることで達成できるが、二十四極子は加工精度及び組立精度等の困難性が伴う。また、六回非点収差補正に必要なコイルは球面収差補正に用いるコイルと同程度、或いはそれ以上の巻数が必要であり、一本の極にこれらを設置して磁極とするには空間の確保が非常に困難である。
そこで本発明は、簡便な構成により球面収差と六回非点収差を補正する荷電粒子線装置用の収差補正装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は荷電粒子線の収差補正装置であって、二段の十二極子と、前記各十二極子の各極に設置された励磁コイルとを備え、前記各十二極子の前記各極を順次1乃至12番目の極、並びにn=0、1、2として、(4n+1)番目の極の励磁コイルと(4n+2)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生し、(4n+3)番目の極の励磁コイルと(4n+4)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生し、以って三回対称磁場及び六回対称磁場の重畳場を発生することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は荷電粒子線の収差補正装置であって、各前記十二極子の前記各極は電極を兼ね、前記各極を順次1乃至12番目の極、並びにm=0、1、2として、(4m+1)番目の極は全て電気的に接続され、(4m+2)番目の極は全て電気的に接続され、(4m+3)番目の極は全て電気的に接続され、(4m+4)番目の極は全て電気的に接続され、前記(4m+1)番目の極と前記(4m+2)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、前記(4m+3)番目の極と前記(4m+4)番目の極は、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、以って三回対称電場及び六回対称電場の重畳場を発生することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は荷電粒子線の収差補正装置であって、二段の十二極子を備え、前記各十二極子の各極を順次1乃至12番目の極、並びにs=0、1、2として、(4s+1)番目の極は全て電気的に接続され、(4s+2)番目の極は全て電気的に接続され、(4s+3)番目の極は全て電気的に接続され、(4s+4)番目の極は全て電気的に接続され、前記(4s+1)番目の極と前記(4s+2)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、前記(4s+3)番目の極と前記(4s+4)番目の極は、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、以って三回対称電場及び六回対称電場の重畳場を発生することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は荷電粒子線装置であって、請求項1に記載の収差補正装置を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は荷電粒子線装置であって、請求項2に記載の収差補正装置を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は荷電粒子線装置であって、請求項3に記載の収差補正装置を備えることを特徴とする。
本発明によれば、簡便な構成により球面収差と六回非点収差を同時に補正でき、より広い集束角のプローブを形成できる。このため、回折収差が低減されて微小な径のプローブが形成可能となり、空間分解能が向上する。
<原理>
三回対称の磁場または電場、若しくはその重畳場を生じる二段の多極子と対物レンズとによる光学系を想定する。この光学系において、二段の多極子によって生じた六回非点収差及び三回非点収差は、次の(1)式で表される関係を有する。
ここで、Aは単位長さ当たりの六回非点収差係数、Aは単位長さ当たりの三回非点収差係数、mは二段の多極子と対物レンズの縮小率、tは各多極子の光軸に沿った厚み、fは対物レンズの焦点距離である。一方、a3を三回非点収差強度、θ a3を三回非点収差方位角とすると、三回非点収差係数Aは、
と表すことが出来るので、三回非点収差係数Aと六回非点収差係数Aとの間には、
という一定の角度関係があることが分かる。つまり、係数A及びAの三回非点収差方位角θ a3に対する変化に着目すると、発生した三回非点収差に対して2倍細かい間隔の六回非点収差が原点を同じくして(即ち、光軸の周りに)生み出されている。そのため、三回非点収差を生み出す磁場に対して、位相関係はゼロの(即ち、位相差のない)、2倍細かい間隔の六回非点収差を生み出す磁場を用いれば、六回非点収差を補正・低減できる。従って、上記両磁場を生じる多極子として十二極子を用い、三回非点収差の発生にその十二極のうちの六極を用い、六回非点収差に十二極全てを用いれば、六回非点収差を補正・低減できる。上記両磁場は、後述するように、十二極子の各極に設けられる励磁コイルの組み合わせによって発生させることができる。
なお、上記両磁場は、それぞれ、電場、又は磁場と電場の重畳場であっても良い。電場を発生する場合、十二極子の各極は電極として機能し、重畳場を発生する場合、各極は励磁コイルを併用することで磁極及び電極として機能する。その効果は磁場のみを用いる場合と同様である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を述べる。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の収差補正装置を、荷電粒子線装置の1つである透過型電子顕微鏡に用いた場合を想定して説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の収差補正装置の構成の一例を示す模式図、図2は本発明の第1実施形態に係る十二極子の一例を示す模式図である。図3は本発明の第1実施形態に係る回路の一例を示す図、図4は本発明の第1実施形態に係る十二極子を励磁した時の各極の極性の一例を示す図であり、(a)及び(c)は三回対称磁場を発生した場合、(b)及び(d)は六回対称磁場を発生した場合を示す。
本実施形態の収差補正装置10は、図1に示すように、電子線の光軸11に沿って設けられた二段の十二極子12、13を備える。十二極子12、13は光軸方向に沿ってそれぞれ厚みtとtを有するが、各厚みは同一でも、異なっていても良い。
より具体的には、図2に示すように、十二極子12、13は光軸11から放射状に配置された12本の極31a〜31lを有する。即ち、極31a〜31lは光軸11の周りに30度毎に配置される。各極には励磁コイル32a〜32lが設置されており、光軸11の周囲に三回対称の静磁場とそれに重畳する六回対称の静磁場とを発生する。
各励磁コイルの結線の一例を図3に示す。図3(a)に示すように、励磁コイル32a、32d、32e、32h、32i、32lは電源33と直列に接続され、回路35を構成する。励磁コイル32a、32e、32iは光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に対する方向、並びにその強度が共に等しい磁場B、B、Bを発生する。極31a〜31lが光軸11の周りに30度毎に配置されていることを考慮すると、磁場B、B、Bは光軸11に垂直な平面において、当該光軸11の周りに120度毎に分布することになる。一方、励磁コイル32d、32h、32lも光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に対する方向、並びにその強度が共に等しい磁場B、B、B12を発生するが、この方向は励磁コイル32a、32e、32iが発生する磁場B、B、Bの方向と逆向きである。極31a〜31lの配置を考慮すると、磁場B、B、B12は光軸11に垂直な平面において、当該光軸11の周りに120度毎に分布することになる。
即ち、図3(a)に示す回路35において、各励磁コイルから発生する磁場の方向は、光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって交互にその向きを変えている。なお、電源33は電流方向を任意に変えられるようなバイポーラ出力の電源である。
同様に、図3(b)に示すように、励磁コイル32b、32c、32f、32g、32j、32kは電源34と直列に接続され、回路36を構成する。励磁コイル32b、32f、32jは光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に対する方向、並びにその強度が共に等しい磁場B、B、B10を発生する。極31a〜31lの配置を考慮すると磁場B、B、B10は光軸11に垂直な平面において、当該光軸11の周りに120度毎に分布することになる。一方、励磁コイル32c、32g、32kも光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に対する方向、並びにその強度が共に等しい磁場B、B、B11を発生するが、この方向は励磁コイル32b、32f、32jが発生する磁場B、B、B10の方向と逆向きである。極31a〜31lの配置を考慮すると、磁場B、B、B11は光軸11に垂直な平面において、当該光軸11の周りに120度毎に分布することになる。
即ち、図3(b)に示す回路において、各励磁コイルから発生する磁場の方向は光軸11に向かって交互にその向きを変えている。なお、電源34は電流方向を任意に変えられるようなバイポーラ出力の電源である。以上により、各十二極子12、13はそれぞれ2つの回路35、36から構成される。
なお、図3(a)、(b)に示す磁場の向きは電源33、34から流れる電流の方向に依存するので、両図に示す方向と逆の方向の磁場が発生可能であることは勿論である。
以上をまとめると、各十二極子12、13において、基準となる極(例えば極31a)から順次1乃至12番目の極とし、n=0、1、2とした場合、(4n+1)番目の極の励磁コイルと(4n+2)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生する。さらに、(4n+3)番目の極の励磁コイルと(4n+4)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生する。
上述の通り、両回路35、36では、各励磁コイルが個別の電源に接続されるのではなく、1つの電源によって通電される。また、光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に対して同じ方向と同じ強度の磁場が光軸11の周りに120度毎に発生することになる。この三回対称性により、電源の出力に不安定性があったとしても、非回転対称となる電子線の形状が現れ難くなる。即ち、電子線の形状は安定化する。
このような回路を備える十二極子12、13は三回対称の磁場と六回対称の磁場を同時に発生させることが出来る。例えば、図4(a)に示すように、極31a、31e、31iがN極となるように回路35に電流を流す。すると、極31d、31h、31lはS極となる。更に、極31b、31f、31jがN極となるように回路36に電流を流す。すると、極31c、31g、31kはS極となる。従って、光軸11の周囲には極31aから極31lの順番に(NNSSNNSSNNSS)の磁極が配列することになり、以って三回対称の磁場が発生する。
この状態から回路35に流れる電流の方向を逆にする。すると、極31a、31e、31iはS極になり、極31d、31h、31lはN極となる。従って、光軸11の周囲には図4(b)に示すように、極31aから極31lの順番に(SNSNSNSNSNSN)の磁極が配列することになり、以って六回対称の磁場が発生する。
上記三回対称の磁場の極性を逆にすることも可能である。これを換言すれば、上記三回対称の磁場を60度、光軸11の周りに回転させるとも言える。その場合、極31a、31e、31iがS極となるように回路35に電流を流す。すると、極31d、31h、31lはN極となる。更に、極31b、31f、31jがS極となるように回路36に電流を流す。すると、極31c、31g、31kはN極となる。従って、光軸11の周囲には極31aから極31lの順番に(SSNNSSNNSSNN)の磁極が配列することになり、図4(c)に示した、上記と逆の極性の三回対称磁場が発生する。この状態から回路35に逆方向の電流を流せば、図4(d)に示す極性の配列(即ち、極31aから極31lの順番に(NSNSNSNSNSNS))となり、これは上記と逆の極性の六回対称磁場となり、換言すれば上記の六回対称磁場を30度回転させることになる。
この構成によって、十二極子12、13自体を光軸11の周りに回転させること無く、六回非点収差の補正が可能になる。また、対物レンズが生じる正の球面収差も同時に補正できる。
さらに、収差補正装置10には、図8に示すように、両十二極子12、13の間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対14a、14bと、対物レンズ16と十二極子13との間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対15a、15bとを設けても良い。
転送レンズ対14a、14bは十二極子12において形成された電子線17の逆空間像を十二極子13に転送する。さらに、転送レンズ対15a、15bは十二極子13に現れる電子線17の逆空間像を対物レンズのコマフリー面16aに転送する。この面は対物レンズの前方焦点面にほぼ等しく、コマフリー面16aに転送された逆空間像は対物レンズの試料面16bにおいて実空間像となる。
このような構成においても、対物レンズの正の球面収差は、十二極子12、13から発生した三回対称磁場による負の球面収差によって相殺されるので、試料面16bにおける電子線17の実空間像には球面収差の影響が現れない。さらに、十二極子12、13から発生した六回対称磁場によって六回非点収差も併せて低減される。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。
図5は本発明の第2実施形態に係る十二極子の一例を示す模式図である。図6は本発明の第2実施形態に係る回路の一例を示す図である。図7は本発明の第2実施形態に係る十二極子に電圧を印加した時の各極の極性の一例を示す図であり、(a)は三回対称電場を発生した場合、(b)は六回対称電場を発生した場合を示す。
本発明の第2実施形態に係る収差補正装置20は、図1に示すように、電子線の光軸11に沿って設けられた二段の十二極子22、23を備える。十二極子22、23は光軸方向に沿ってそれぞれ厚みtとtを有するが、各厚みは同一でも、異なっていても良い。
本実施形態に係る十二極子22、23の光軸11に対する配置は図1に示すように第1実施形態と同様であり、その具体的な構成は図5に示すように、光軸11の周りに放射状に設けられる極41a〜41lを備える。即ち極41a〜41lは光軸11の周りに30度毎に配置される。
各十二極子22、23において、各極41a〜41lには電源43又は電源44が接続され、電圧が印加される。後述するように、これにより、光軸11の周囲に三回対称の静電場とそれに重畳する六回対称の静電場とを発生する。
各極の結線の一例を図6に示す。図6(a)に示すように、3つの極41a、41e、41iは共に電源43の一方の出力に接続され、3つの極41d、41h、41lは共に電源43の他方の出力に接続され、回路45を構成する。従って、極41a、41e、41iは同電位であり、これらは光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって強度が共に等しい電場を発生する。
一方、極41d、41h、41lも同電位であり、光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって強度が共に等しい電場を発生するが、その極性は極41a、41e、41iが発生する電場の方向と逆向きである。即ち、図6(a)に示す回路45において、各極から発生する電場の方向は光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって交互にその向きを変えている。なお、電源43は出力の極性を任意に変えられるようなバイポーラ出力の電源である。
同様に、図3(b)に示すように、極41b、41c、41f、41g、41j、41kは電源34と直列に接続され、回路46を構成する。極41b、41f、41jは光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって方向・強度が共に等しい磁場を発生する。一方、極41c、41g、41kも光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって方向・強度が共に等しい磁場を発生するが、この方向は極41b、41f、41jが発生する磁場の方向と逆向きである。即ち、図3(b)に示す回路において、各極から発生する磁場の方向は光軸11に垂直な平面において、当該光軸11に向かって交互にその向きを変えている。なお、電源44は出力電圧の極性を任意に変えられるようなバイポーラ出力の電源である。以上により、各十二極子22、23はそれぞれ2つの回路45、46から構成される。
以上をまとめると、各十二極子22、23において、基準となる極(例えば極41a)から順次1乃至12番目の極とし、s=0、1、2とした場合、(4s+1)番目の極は全て電気的に接続され、(4s+2)番目の極は全て電気的に接続される。(4s+1)番目の極と(4s+2)番目の極は、光軸11に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸11に対して方向が互いに反対となる電場を発生する。即ち、(4s+1)番目の極の電位と(4s+2)番目の極の電位とは絶対値が等しく且つその極性が異なっている。さらに、(4s+3)番目の極は全て電気的に接続され、(4s+4)番目の極は全て電気的に接続される。(4s+3)番目の極と(4s+4)番目の極は、光軸11に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸11に対して方向が互いに反対となる電場を発生する。即ち、(4s+3)番目の極の電位と(4s+4)番目の極の電位とは絶対値が等しく且つその極性が異なっている。
上述の通り、両回路45、46では、各極が個別の電源に接続されるのではなく、1つの電源によって電圧が印加される。また、同じ方向と同じ強度の電場が光軸11の周りに120度毎に発生することになる。この三回対称性により、電源の出力に不安定性があったとしても、非回転対称となる電子線の形状が現れ難くなる。即ち、電子線の形状は安定化する。
このような回路を備える十二極子22、23は三回対称の電場と六回対称の電場を同時に発生させることが出来る。例えば、図7(a)に示すように、極41a、41e、41iが+極、極41d、41h、41lが−極となるように電圧を印加する。更に、極41b、41f、41jが+極、極41c、41g、41kは−極となるように電圧を印加する。すると、光軸11の周囲には極41aから極41lの順番に(++−−++−−++−−)の電極が配列することになり、以って三回対称の電場が発生する。
この状態から電源43の出力極性を逆にする。すると、極41a、41e、41iは−極になり、極41d、41h、41lは+極となる。従って、光軸11の周囲には図7(b)に示すように、極41aから極41lの順番に(−+−+−+−+−+−+)の電極が配列することになり、以って六回対称の電場が発生する。
上記三回対称の電場の極性を逆にすることも可能である。これを換言すれば、上記三回対称の電場を60度、光軸11の周りに回転させるとも言える。その場合、極41a、41e、41iが−極、極41d、41h、41lが+極となるように電圧を印加する。更に、極41b、41f、41jが−極、極41c、41g、41kが+極となるように電圧を印加する。すると、光軸11の周囲には極41aから極41lの順番に(−−++−−++−−++)の電極が配列することになり、図7(a)に示した極性と逆の極性の三回対称電場が発生する。この状態から電源43の出力極性を逆にすると、図7(d)に示す極性の配列(即ち、極41aから極41lの順番に(+−+−+−+−+−+−))となり、これは上記と逆の極性の六回対称電場となり、換言すれば上記の六回対称電場を30度回転させることになる。
この構成によって、十二極子22、23自体を光軸11の周りに回転させること無く、六回非点収差の補正が可能になる。また、対物レンズが生じる正の球面収差も同時に補正できる。
さらに、収差補正装置20には、第1実施形態と同様に、両十二極子22、23の間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対14a、14bと、対物レンズ16と十二極子13との間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対15a、15bとを設けても良い(図8参照)。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態は、上記第1及び第2実施形態の収差補正装置10及び20を複合したものであり、光軸11の周囲に、三回対称の磁場及び電場、並びに六回対称の磁場及び電場を発生する十二極子を二段設け、六回非点収差と球面収差を補正するものである。
具体的な構成としては、第1実施形態の項で述べた十二極子12、13(図1および図2参照)の各極31a〜31lに図6に示す電源43、44を接続する。これにより第1実施形態でのべた三回対称及び六回対称の磁場と、第2実施形態で述べた三回対称及び六回対称の電場との重畳場を発生することができる。従って、第1・第2実施形態で述べた効果と同様の効果が得られる。
なお、両磁場と両電場との回転対称性は任意であり、電源43、44が接続する極は図6に限定されない。
即ち、第1実施形態の十二極子12、13において、任意の極を1番目の極(例えば極31a)から順次1乃至12番目の極とし、m=0、1、2とした場合、(4m+1)番目の極は全て電気的に接続され、(4m+2)番目の極は全て電気的に接続される。(4m+1)番目の極と(4m+2)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生する。即ち、(4m+1)番目の極の電位と(4m+2)番目の極の電位とは絶対値が等しく且つその極性が異なっている。さらに、(4m+3)番目の極は全て電気的に接続され、(4m+4)番目の極は全て電気的に接続される。(4m+3)番目の極と(4m+4)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生する。即ち、(4m+3)番目の極の電位と(4m+4)番目の極の電位とは絶対値が等しく且つその極性が異なっている。
また、第1・第2実施形態で述べた2つの転送レンズ対(14a、14b)、(15a、15b)を設けても良い(図8参照)。この効果も第1・第2実施形態で述べた効果と同様である。
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について説明する。
図9は本発明の第4実施形態に係る荷電粒子線装置の一例であり、第1乃至第3実施形態に係る収差補正装置を照射系収差補正装置63として用いた透過型電子顕微鏡60の例である。
電子銃61は、高圧制御部68からの制御によって電子線(図示せず)を発生し、併せて電子線を所望のエネルギーに加速する。第1集束レンズ62及び第2集束レンズ64は加速された電子線を集束する。対物レンズ及び試料ステージ65において電子線は更に集束され、試料ステージ上の試料に照射される。
このとき、第1集束レンズ62と第2集束レンズ64の間に設けられた照射系収差補正装置63は、三回対称の磁場(または電場)とそれに重畳する六回対称の磁場(又は電場)を発生する。前述の通り、この収差補正装置は負の球面収差をもつので、対物レンズによって現れる正の球面収差を相殺するように補正する。また六回非点収差も補正する。
試料を透過した電子線は中間・投影レンズ66によって拡大され、観察室67の蛍光板(図示せず)に入射する。この蛍光板に投影された試料像は、カメラ等によって撮像される。
照射系収差補正装置63によって、球面収差および六回非点収差が補正されているので、透過型電子顕微鏡60の空間分解能は向上する。
また、照射系収差補正装置63を用いた収差補正によって、収差補正が可能な電子線の入射角の範囲が広がる。電子線の角度の範囲が広がると絞り(図示せず)等による回折収差が低減されるので、透過型電子顕微鏡の空間分解能が更に向上する。
なお、上記構成において、結像系収差補正装置65の代わりに、同様の構成の収差補正装置(図示せず)を対物レンズの後段に設けても良い。或いは、両収差補正装置を搭載しても良い。
本発明の収差補正装置は、球面収差補正及び六回非点収差補正が必要なあらゆる荷電粒子線装置に設置可能である。上記の透過型電子顕微鏡の他、例えば、走査型電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡、イオン顕微鏡、集束イオンビーム装置などにも搭載可能である。
本発明の収差補正装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る十二極子の一例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る回路の一例を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る十二極子を励磁した時の各極の極性の一例を示す図であり、(a)及び(c)は三回対称磁場を発生した場合、(b)及び(d)は六回対称磁場を発生した場合を示す。 本発明の第2実施形態に係る十二極子の一例を示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係る回路の一例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る十二極子に電圧を印加した時の各極の極性の一例を示す図であり、(a)は三回対称電場を発生した場合、(b)は六回対称電場を発生した場合を示す。 図8は本発明の収差補正装置の変形例である。 本発明に係る収差補正装置を備えた透過型電子顕微鏡の構成の一例を示す模式図である。 光軸に沿って厚みを有する二段の多極子に電子線を通過させて得られたロンチグラム図である。
符号の説明
10:電子線
11:光軸
12、13:十二極子
22、23:十二極子
31a〜31l、41a〜41l:極
32a〜32l:励磁コイル
33、34、43、44:電源
60:透過型電子顕微鏡
63:照射系収差補正装置

Claims (6)

  1. 荷電粒子線用の収差補正装置であって、
    二段の十二極子と、
    前記各十二極子の各極に設置された励磁コイルとを備え、
    前記各十二極子の前記各極を順次1乃至12番目の極、並びにn=0、1、2として、
    (4n+1)番目の極の励磁コイルと(4n+2)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生し、
    (4n+3)番目の極の励磁コイルと(4n+4)番目の極の励磁コイルは交互に直列に接続され、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる磁場を発生し、
    以って三回対称磁場及び六回対称磁場の重畳場を発生することを特徴とする収差補正装置。
  2. 各前記十二極子の前記各極は電極を兼ね、前記各極を順次1乃至12番目の極、並びにm=0、1、2として、
    (4m+1)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4m+2)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4m+3)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4m+4)番目の極は全て電気的に接続され、
    前記(4m+1)番目の極と前記(4m+2)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、
    前記(4m+3)番目の極と前記(4m+4)番目の極は、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、以って三回対称電場及び六回対称電場の重畳場を発生する
    ことを特徴とする請求項1に記載の収差補正装置。
  3. 荷電粒子線用の収差補正装置であって、
    二段の十二極子を備え、
    前記各十二極子の各極を順次1乃至12番目の極、並びにs=0、1、2として、
    (4s+1)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4s+2)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4s+3)番目の極は全て電気的に接続され、
    (4s+4)番目の極は全て電気的に接続され、
    前記(4s+1)番目の極と前記(4s+2)番目の極は、光軸に垂直な平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、
    前記(4s+3)番目の極と前記(4s+4)番目の極は、前記光軸に垂直な前記平面において絶対値が等しく且つ該光軸に対して方向が互いに反対となる電場を発生し、以って三回対称電場及び六回対称電場の重畳場を発生する
    ことを特徴とする収差補正装置。
  4. 請求項1に記載の収差補正装置を備える荷電粒子線装置。
  5. 請求項2に記載の収差補正装置を備える荷電粒子線装置。
  6. 請求項3に記載の収差補正装置を備える荷電粒子線装置。
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