JP2005353429A - 荷電粒子線色収差補正装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の色収差補正装置よりも、構造が簡易で調整操作の容易な色収差補正装置を実現する。
【解決手段】2枚の電磁重畳四極子と、これらに挟まれたトランスファーレンズとなる2枚の球面レンズで、色収差補正の可能な簡易な構造と操作性実現した。本発明の色収差補正器は、上記の電子光学要素の組み合わせでスティグマティック結像を維持しつつ、電磁重畳四極子の色消し性を利用して“負”の色収差を発生し、対物レンズ等の光学装置で色収差を打ち消すことで色収差補正を行う。
【選択図】図1
【解決手段】2枚の電磁重畳四極子と、これらに挟まれたトランスファーレンズとなる2枚の球面レンズで、色収差補正の可能な簡易な構造と操作性実現した。本発明の色収差補正器は、上記の電子光学要素の組み合わせでスティグマティック結像を維持しつつ、電磁重畳四極子の色消し性を利用して“負”の色収差を発生し、対物レンズ等の光学装置で色収差を打ち消すことで色収差補正を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は荷電粒子線装置のビームスポット径を最小化する技術に関するものであり、特に電磁重畳四極子の色消し性を用いた色収差補正装置に関する。
従来の各種電子顕微鏡等、回転対称な電磁レンズを用いる荷電粒子線装置ではレンズにおける色収差の発生は不可避であり、球面収差と共に分解能を制限する主因となってきた。この問題を回避するために、一つには電子線ホログラフィや能動的収差補正のように通常の電子顕微鏡で得られる像の解析から収差補正を行う後処理的な手法が研究され、また一方では非回転対称電磁レンズや薄膜レンズを利用する新電子光学装置で収差の直接除去を狙う手法が研究されている。特に後者において非回転対称な多極子レンズを用いた収差補正器は、近年透過電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で、対物レンズの球面収差を打ち消してサブÅオーダーの分解能を実現できる見込みを示し、大きな注目を集めている。また、球面収差より色収差が重要となる低加速粒子線を用いる装置、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)においても、多極子レンズを用いる収差補正が実用化されつつある。
多極子レンズを用いる色収差補正の基本原理は一つは、静電四極子場と磁気四極子場を重畳したレンズの色消し性を利用することである。図3に、電磁重畳四極子の構成を示す。(時に実用の収差補正器においては、高次の寄生収差や派生収差の影響も考慮して四極子場形成に四極子より極子数の多い12極子等を用いることがあるが、これは本発明の本質ではないのでここでは単純な四極子を用いて説明する。)電磁重畳四極子レンズは、14a〜dの電極がつくる静電四極子場と、これと45°回転した14e〜hの磁極がつくる磁気四極子を同一空間で重ねて形成されている。図3で電極14a〜dに付したVは電極電位、磁極14e〜hのMは磁極磁化を示し、各電磁極に符号の極性で与えられる。
適切なVは実際には外部の電圧源(不図示)から各電極に供され、またMは磁極に接続された励磁コイルを外部電流源(不図示)で励起することによって得ることができる。電子線はこのレンズの中心を紙面に垂直に前面から後面の向きに透過するが、この時の電子線の軌道方程式は磁場と電場に対して同形となり、合わせて(1)、(2)の様に書くことができる。
E2B2は電場四極子、磁場四極子の強度を表すパラメータで、eは素電荷、mは電子質量、V0は加速電圧。E2とB2は、それぞれ実測定や電磁場シミュレーションによって、電極電位Vと磁極磁化Mにそれぞれ関連付けることができる。 (2)式で見る通り、電場と磁場で加速電圧V0に対する依存次数がことなるので、総和β2が一定となるようにE2、B2を調整すればレンズの強度β2とは独立にV0への依存性、すなわちレンズの“色消し性”或は色収差の調整が可能となる。この時、
(3)
であり、ここでV0→V0+δVの変分を考えると、βは
(4)
特に(4)式2項目においてE2<−2β2V0 の時、2項目はδVへの応答が負となりすなわち“負”の色収差が実現できる。
(3)
であり、ここでV0→V0+δVの変分を考えると、βは
(4)
特に(4)式2項目においてE2<−2β2V0 の時、2項目はδVへの応答が負となりすなわち“負”の色収差が実現できる。
このように、電磁重畳四極子レンズを用いれば、負の色収差をつくることが可能であるが、四極子レンズ一枚では(1)式で明らかなとおりスティグマティック結像ができないため、電子顕微鏡の像もしくはプローブ形成を目的とする光学系では使えない。そこで、その他の四極子と組み合わせて用いることになる。
これまで色収差補正の為に提案されている代表的なシステムは、Rose(1970)(非特許文献1)によるもので、Zachらが1995年に試作器を低加速SEMに搭載し、その実効性を実証した(非特許文献2)。2004年現在、同構成の収差補正器を搭載したSEMの製品化も始められている。Roseの収差補正器の概略を図4に示す。このRoseらの補正器は、4段の多極子レンズ15〜18からなり、色収差補正の為にそれぞれで四極子場を形成するが、うち16と17が前述の電磁重畳四極子場である。この補正器に入射する電子線は、それぞれ4段の四極子場を用いて19、20の基準軌道をもって補正器内を通過するように設定される。
すなわち、
(1) 初段15の静電四極子によってアスティグマティックにx軌道20と、y軌道21に分離される。
(2) x軌道20が電磁重畳四極子16の中心を通る。
(3) y軌道21が電磁重畳四極子17の中心を通る。
(4) x軌道20とy軌道21は静電四極子18で再びアスティグマティックに統合され、像面でスティグマティックな結像を得る。
(1) 初段15の静電四極子によってアスティグマティックにx軌道20と、y軌道21に分離される。
(2) x軌道20が電磁重畳四極子16の中心を通る。
(3) y軌道21が電磁重畳四極子17の中心を通る。
(4) x軌道20とy軌道21は静電四極子18で再びアスティグマティックに統合され、像面でスティグマティックな結像を得る。
レンズの中心を通る軌道は収差を含めて当該レンズの作用を受けないので、上記基準軌道によれば四極子16、17においてそれぞれx軌道20とy軌道21の収差を独立して調整することが可能となる。16、17に電磁重畳四極子を用いることで、前述の電磁重畳四極子場の色消し性を利用しx、y軌道に各々に適当な負の色収差を付与することができ、この大きさを調整することで装置全系の色収差を打ち消すことができる。
収差補正装置は2000年に入ってようやく実用化の段階を迎えつつあるが、1970年のRoseによる発案から現在まで実現が遅れた主な理由は、構造の複雑さと要求される製作精度の高さ、また前期の基準軌道設定等操作面で要求される厳密さであった。今日までの加工技術の進歩と、コンピュータを用いた精密制御が可能となってようやく実用的な収差補正器の実現が可能となったのである。
H. Rose, Optik vol.33 (1971),p.1-24
J. Zach, and M.Haider, Nucl. Inst. and Methods in Phys. Res. A vol.363 (1995), p316-325; J. Zach, Optik col.83 (1989),p30-40
現在実用化されている荷電粒子線用の色収差補正装置は、図4に示したRoseらの4段四極子システムもしくは、その派生的な構造をもつ装置であって、これら装置の問題点は前項に記述の通り、構造と制御の複雑さならびにそれらに要求される精度の高さである。本文では原理説明のために単純な四極子場を説明に用いたが、実際Zachが制作した補正器は色収差に加え球面収差の補正と寄生収差、派生収差の影響を考慮して各段の多極子は12極子、すなわち48の電極と24の磁極(2、3段目の電磁極は併用)で構成された。さらに同補正器で目的とする収差補正を行う為には、各極子の位置決めに〜μmの精度が必要であり、また補正器の駆動には〜10-6の安定度(δV/V)をもつ高精度電源が最大で極子数(すなわち電極48+磁極24=72)必要であった。
そこで本発明では、色収差補正に注目し、Rose、Zachらの構成とは根本的に異なる、より簡易な構造、操作の荷電粒子用色収差補正装置を提供することを目的とする。
荷電粒子線の色収差補正法に関し、既存の4段四極子(うち2、3段目が電磁重畳四極子)による手段に代えて、反対称電磁重畳四極子対とこれらにはさまれる2枚の対称な球面レンズによって提供する。
前述したように、Roseらの補正器は4段の四極子15〜18を備えるが、実質的に収差補正に寄与するのは、16、17の電磁重畳四極子2枚で、前後15と18は収差補正の為の基準軌道設定に用いられる。そこで、色収差補正の本質である2枚の電磁重畳四極子のみで色収差補正効果を実現できないかが検討される課題となる。
前述したように、Roseらの補正器は4段の四極子15〜18を備えるが、実質的に収差補正に寄与するのは、16、17の電磁重畳四極子2枚で、前後15と18は収差補正の為の基準軌道設定に用いられる。そこで、色収差補正の本質である2枚の電磁重畳四極子のみで色収差補正効果を実現できないかが検討される課題となる。
しかし、この発想の問題点は、直接2枚の四極子を並べたのでは透過後のスティグマティック結像を実現できないことである。例えば、図5に示すように、反対称に励起された四極子(反対称四極子)を、間隔Sをおいて並べることを考える。励起が反対称であるとは、すなわち2つの四極子24と25で対抗する電極(24aと25a、24bと25b…)と磁極(24eと25e、24fと25f…)に、大きさは等しいが極性の反転した電圧もしくは磁化が付与されるように調整されることを意味する。これら励起調整は、前述3図の説明に準じて行うことができる。図5で24と25が反対称電磁重畳四極子であり、27、28はこれらを透過する電子のx軌道とy軌道。図5の下部は、電磁重畳四極子24、25の電位(V)、磁化(M)分布を示している。
この系で第1四極子24の入射面から第2四極子25の出射面への電子軌道に対応する写像行列は、x、y方向それぞれに対して、
x方向
y方向
(5)
ここで、
(6)
βは(1)、(2)式で定義される四極子強度、Lは四極子の長さ、Sは前述の通り四極子の間隔である。
x方向
y方向
(5)
ここで、
(6)
βは(1)、(2)式で定義される四極子強度、Lは四極子の長さ、Sは前述の通り四極子の間隔である。
入射電子線として、x、y、それぞれに離軸1の平行ビーム、すなわち、
(7)
を選ぶと、出射する電子線は、
(8)
となる。ここで、反対称四極子対の性質によって、
は自動的に保証されるので、スティグマティック結像を得る為には、xf=yfを満たすSを見つければ良い。実際にこの条件を解くと、
(9)
(1)、(2)、(6)式における定義からβとθは正であり、(9)式のSは実用的な四極子強度βの範囲で、負となって実現できない(θが大きい時Sを正値で得られる範囲が存在するが、過剰な四極子強度と軌道離軸増大のため現実的ではない。)。実際、(9)式は、θ<1の範囲で
を与える。従って、反対称四極子対のみでスティグマティック結像を実現することは、現実的な条件で不可能である。
(7)
を選ぶと、出射する電子線は、
(8)
となる。ここで、反対称四極子対の性質によって、
は自動的に保証されるので、スティグマティック結像を得る為には、xf=yfを満たすSを見つければ良い。実際にこの条件を解くと、
(9)
(1)、(2)、(6)式における定義からβとθは正であり、(9)式のSは実用的な四極子強度βの範囲で、負となって実現できない(θが大きい時Sを正値で得られる範囲が存在するが、過剰な四極子強度と軌道離軸増大のため現実的ではない。)。実際、(9)式は、θ<1の範囲で
を与える。従って、反対称四極子対のみでスティグマティック結像を実現することは、現実的な条件で不可能である。
この反対称四極子対のスティグマティック結像条件をほぼそのまま利用する為に、本発明は四極子対の間にトランスファーレンズとして働く2枚の球面レンズを導入し、(9)式で得られた負間隔を電子光学的に実現するものである。
スティグマティック結像条件が満たされれば、以後の色収差補正操作はRoseらの収差補正装置と同様に、前述の電磁重畳四極子の色消し操作を用いて、対物レンズなどの全光学系の色収差を打ち消す負の色収差を生み出すように調整する。
スティグマティック結像条件が満たされれば、以後の色収差補正操作はRoseらの収差補正装置と同様に、前述の電磁重畳四極子の色消し操作を用いて、対物レンズなどの全光学系の色収差を打ち消す負の色収差を生み出すように調整する。
本発明によれば、従来よりも簡単な構造で、収差補正操作も容易な荷電粒子線用色収差補正器を実現できる。
以下、図に従って発明の実施の形態例を説明する。
図1は、本発明の色収差補正器を搭載した、走査型電子顕微鏡(SEM)の電子光学概略を示している。SEMにおいて電子は、電子源1aから放出され、加速電極1bで与えられる電位で適当なエネルギーに加速され、さらに収束レンズ2と対物絞り9によって電流量とビーム開き角度を調整された後、対物レンズ11によって試料13表面上に集束されプローブとなるスポットを形成する。このスポットを走査コイル10で試料面上を走査し、試料13各位置で発生する二次電子を検出器12により検出することによって、走査電子顕微鏡像(SEM像)が得られる。なお図1で、軸調整等を行うための各種アライナーや、リターディング、ブースティング電極等付加的な装置の表示は省略した。また、電子銃1や、収束レンズ2、対物レンズ11、検出器12等は方式によって構造や位置が異なる場合がある。
図1は、本発明の色収差補正器を搭載した、走査型電子顕微鏡(SEM)の電子光学概略を示している。SEMにおいて電子は、電子源1aから放出され、加速電極1bで与えられる電位で適当なエネルギーに加速され、さらに収束レンズ2と対物絞り9によって電流量とビーム開き角度を調整された後、対物レンズ11によって試料13表面上に集束されプローブとなるスポットを形成する。このスポットを走査コイル10で試料面上を走査し、試料13各位置で発生する二次電子を検出器12により検出することによって、走査電子顕微鏡像(SEM像)が得られる。なお図1で、軸調整等を行うための各種アライナーや、リターディング、ブースティング電極等付加的な装置の表示は省略した。また、電子銃1や、収束レンズ2、対物レンズ11、検出器12等は方式によって構造や位置が異なる場合がある。
図1からも明らかな通り、SEMにおいてより高い分解能を得る為には、試料面上のプローブスポットをいかに小さく絞るかが重要である。このスポットの集束を妨げボケを生じさせる主原因が対物レンズなど電子レンズの色収差であり、収差補正器は前述の色消し原理をもとに“負”の色収差を発生しそれらを打ち消すことを目的機能とする装置である。そのために収差補正器3は、収束レンズ2と対物レンズ11の間に挿入される形で置かれる。
本発明の収差補正器の動作原理は、図2によって説明される。図2は、図1の点線で囲まれた収差補正器3の範囲を表している。本収差補正器は、2枚の電磁重畳四極子5、8ならびにこれらに挟まれた2枚の球面レンズ6、7、さらに補正器入射面にあるコリメータレンズ(球面レンズ)4から成る。2枚の電磁重畳四極子は反対称四極子を成すように、図2の下図にそれぞれ示す様式で静電・磁場の四極子を重畳して励起される。反対称四極子はつまり、電磁重畳四極子5と8の対抗する各電極(5aと8a、5bと8b…)と磁極(5eと8e、5fと8f…)が、絶対値は等しいが逆極性の電位もしくは磁化を持つように調整される。
各電極電位Vと磁化Mの表記と実際の調整法は前述の図3説明に準ずる。電子線は図左方よりまずコリメータレンズ4に入射し平行化され、次に第一の四極子5でスティグマティックに分岐されx、yそれぞれ実線12、破線11の軌道で以下補正器内部を通過する。これらが第2の四極子8で再びスティグマティックに統合される(すなわちx、y軌道の出射位置・角度が等しくなる)為には、第1の四極子5出射面と、第2の四極子8入射面が(9)式で決められる距離sに置かれなければならない。sは前述の通り一般には負の値であり、この距離で指定される面13は第一の四極子5入射面よりさらにやや入射側に現れる。このような負の距離に四極子を物理的に併置することはできないが、電子光学的には像面13を第2四極子8入射面に転写することで等価な状態を実現することができる。
対称な球面レンズ6、7はこの転写の為のトランスファーダブレットレンズであり、第1、第2四極子の間に図に指示する位置関係で配置されている。すなわち球面レンズ6、7の焦点距離をfとして、像面13からfに第1の球面レンズ6、さらに2fをおいて第2のレンズ7、さらに第2四極子8入射面まではf。このトランスファーレンズ6、7によって、像面13と各々A、Bで交差するのx、y軌道は(中心軸に対称に反転されるが)軌道の位置と角度を保持したA'、B'に転写することができる。これは四極子5、8を前述s<0の距離で並べることと等価であるから、結果これらレンズシステムによってスティグマティック結像を得ることができる。
このスティグマティック軌道を元に、 (4)式の電磁重畳四極子の色消し性を用いれば、装置光学系全体色収差を補償するように収差補正器において“負”の色収差を生み出す、すなわち色収差補正を行うことができる。具体的には、色収差に相当する電子線エネルギーの変分V0→V0+dVを考えると、本発明収差補正器の出射電子線(8)式は、dV1次まで残して、
(10)
となる。ただし、xf0、yf0はdV=0の時の出射要素、すなわち(8)のxf、yf等であり、またKx、Kyは
(11)
で、各要素共に通常とり得るb範囲で対して正である。
(10)
となる。ただし、xf0、yf0はdV=0の時の出射要素、すなわち(8)のxf、yf等であり、またKx、Kyは
(11)
で、各要素共に通常とり得るb範囲で対して正である。
電磁重畳四極子の色消し性(4)式から、db/dV0 は、bと独立に正負任意の値を選ぶことができるので、結果(10)各式2項目を用いて、収差補正器の色収差を正負の範囲で任意に調節できる。よりこの効果を明らかにするため収差補正器のつくるクロスオーバで収差補正器自身の色収差を考えると、x、yそれぞれに収差係数は
(12)
ただし、
(13)
db/dV0の符号に応じて、色収差係数を正負にわたって調節可能となる。なお、x、yについて、色収差係数に非対称性が現れるが、θ<1で歪み1−Ccy/Ccxは、50%以下である。
(12)
ただし、
(13)
db/dV0の符号に応じて、色収差係数を正負にわたって調節可能となる。なお、x、yについて、色収差係数に非対称性が現れるが、θ<1で歪み1−Ccy/Ccxは、50%以下である。
本発明の収差補正器の実際的な使用方法は以下の通りである。まず、(9)、(12)式等を元にした電子光学シミュレーションで、図2の色収差補正器に適切な四極子強度βや四極子厚みL、トランスファーレンズ焦点距離fなどが決められ、製作されたとする。実際にこれを動作させる為に初期条件は以下のように設定する。四極子5、8を、所定の強度bで、図2の下に示すように互いに反対称に成るように励起する。この時四極子は磁場を重畳せず静電的に静電極子5a〜d、8a〜dのみ用いて励起してもよい。トランスファーレンズとなる2枚の球面レンズ6、7は対称に励起するが、初期励起はシミュレーション等から予定される焦点距離となるよう決められるか、あるいは転写すべき像面16が第1の四極子5の前面(左面)に近いので6,7でここにフォーカスように決める。
電子線はコリメータレンズ4により平行化して入射せしめる。初期設定状態のままでは色収差を行うために基準電子軌道14、15の精度が不十分であると考えられるが、より精密な軌道設定は電子光学装置で得られる像を見ながら行う。例えばSEMであるなら、SEM像に現れる非点を観察しこれが消えるように四極子5、8と球面レンズ6、7の励起をそれぞれ反対称性と対称性を維持しながら調節する。基準軌道14、15が得られれば、後は5、8において電磁四極子を重畳し、SEM像にあらわれる色収差ボケが最小化される電磁場配分を探し出すことで色収差補正が完了する。
収差補正を得るための調整方法を比較すれば、Zachらの収差補正器はまず前述した(1)〜(4)の手続きで基準軌道22、23を形成し、さらにx、y軌道に分けて2段目多極子19と3段目多極子20の電磁場分配を調整するというプロセスで色収差補正を行う。一方、本発明の色収差補正器でも、同様に基準軌道作成と電磁重畳多極子での電磁場分配調整を行って色収差を補正するが、特に基準軌道作成は前述の通り四極子強度bとトランスファレンズ焦点距離fの調整1過程で済む。また実際この操作は電子顕微鏡一般で行われる非点補正操作と同様に行える(非点補正器の励起に代えて上記のパラメータbとfをもって非点補正を行う。)ので非点補正に経験のある操作者には容易である。また構造についても、Zachらの収差補正器と比べれば多極子の段数が、4段から2段に減る分簡易である。
本発明は荷電粒子線装置に置ける色収差補正器に関するものであり、特に色収差が分解能制限と成っている比較的低エネルギーな荷電粒子線を用いる装置、例えば各種のSEM装置に適用できる。
1. 電子銃、、1a. 電子源、、1b. 加速電極、、2. 収束レンズ、、3. 収差補正器、、4. 収差補正器 コリメータレンズ、5. 収差補正器 電磁重畳四極子 1
5a〜5d. 静電四極子電極
5e〜5h. 磁気四極子電極、6. 収差補正器 トランスファレンズ 1、7. 収差補正器 トランスファレンズ 2、8. 収差補正器 電磁重畳四極子 2
8a〜8d 静電四極子電極
8e〜8h 磁気四極子電極、9. 対物絞り、10. 走査コイル、11. 対物レンズ、12. 二次電子検出器、13. 試料、14. 収差補正器内部の電子線x軌道、15. 収差補正器内部の電子線y軌道、16. トランスファレンズが転写する物面、17. 電磁重畳四極子
17a〜17d 静電四極子電極
17e〜17h 磁気四極子電極、18. Zachの収差補正器 静電四極子 1
18a〜18d 静電四極子電極、19.Zachの収差補正器 電磁重畳四極子 1
19a〜19d 静電四極子電極
19e〜19h 磁気四極子電極、20. Zachの収差補正器 電磁重畳四極子 2
20a〜20d 静電四極子電極
20e〜20h 磁気四極子電極、21. Zachの収差補正器 静電四極子 2
21a〜21d 静電四極子電極 、22. 四極子、23. 22と反対称な四極子、24. 反対称四極子対の x電子軌道、25. 反対称四極子対の y電子軌道。
5a〜5d. 静電四極子電極
5e〜5h. 磁気四極子電極、6. 収差補正器 トランスファレンズ 1、7. 収差補正器 トランスファレンズ 2、8. 収差補正器 電磁重畳四極子 2
8a〜8d 静電四極子電極
8e〜8h 磁気四極子電極、9. 対物絞り、10. 走査コイル、11. 対物レンズ、12. 二次電子検出器、13. 試料、14. 収差補正器内部の電子線x軌道、15. 収差補正器内部の電子線y軌道、16. トランスファレンズが転写する物面、17. 電磁重畳四極子
17a〜17d 静電四極子電極
17e〜17h 磁気四極子電極、18. Zachの収差補正器 静電四極子 1
18a〜18d 静電四極子電極、19.Zachの収差補正器 電磁重畳四極子 1
19a〜19d 静電四極子電極
19e〜19h 磁気四極子電極、20. Zachの収差補正器 電磁重畳四極子 2
20a〜20d 静電四極子電極
20e〜20h 磁気四極子電極、21. Zachの収差補正器 静電四極子 2
21a〜21d 静電四極子電極 、22. 四極子、23. 22と反対称な四極子、24. 反対称四極子対の x電子軌道、25. 反対称四極子対の y電子軌道。
Claims (3)
- 荷電粒子線源と、荷電粒子線が照射される試料を保持する試料ステージと、前記荷電粒子線源から放射された荷電粒子線を集束する収束レンズと、該収束レンズを通過した荷電粒子線を前記試料に対して照射する対物レンズと、前記収束レンズと対物レンズの間に配置される色収差補正装置と、前記各部品を収容する真空容器とを有し、
前記色収差補正装置は、反対称に励起される1対の多極子レンズを備えたことを特徴とする荷電粒子光学装置。 - 荷電粒子線源と、荷電粒子線が照射される試料を保持する試料ステージと、前記荷電粒子線源から放射された荷電粒子線を集束する収束レンズと、該収束レンズを通過した荷電粒子線を前記試料に対して照射する対物レンズと、前記収束レンズと対物レンズの間に配置される色収差補正装置と、前記各部品を収容する真空容器とを有し、
前記色収差補正装置は、反対称に励起される1対の多極子レンズとその間にあって対称に励起される1対の球面レンズを用いてスティグマティック結像を行うことを特徴とする荷電粒子光学装置。 - 請求項1もしくは請求項2に記載の荷電粒子光学装置において、
当該装置が含む色収差補正装置に用いられる1対の多極子レンズが各々に、静電四極子場とこれに45°位相が回転した磁気四極子場を同一空間で重畳して発生することができる多極子レンズ対を持つ荷電粒子線光学装置。
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