JP2010069504A - プレス体 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋭利な角部を有するプレス体を提供する。
【解決手段】プレス体Fは、金属板1をプレス成形してなり、天板部20と、天板部10から立設される側壁部21とを具える箱体である。天板部20の外側面20oと側壁部21の外側面21oとを繋ぐ角部22の外側曲げ半径Rが金属板1の厚さt以下である。プレス体Fは、多段の温間プレス加工により形成することができる。第一のプレス加工では、肩部の曲げ半径Rpが実質的に0mmのパンチ53を用いて、角部12の内側曲げ半径r0が実質的に0mmであるプレス材Pを形成する。第二のプレス加工では、プレス材Pの側壁部11の端面11eとプレス材Pの内角部12iとを押圧する段差パンチ55を用いて、R≦tの角部22を有するプレス体Fを形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、モバイル電気機器の筐体などに利用されるプレス体に関するものである。特に、角部が鋭利であるプレス体に関するものである。
携帯電話やノート型PCといったモバイル電気機器類の筐体材料として、アルミニウムやその合金といった金属が利用されている。金属は、一般に、樹脂よりも強度が高く、衝撃に強い。
上記筐体材料として、マグネシウムに種々の添加元素を含有したマグネシウム合金が利用されてきている。マグネシウム合金は、比強度、比剛性に優れるが、六方晶の結晶構造(hcp構造)を有するため常温での塑性加工性に乏しい。従って、筐体などには、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材が主流である。昨今、マグネシウム合金にプレス加工を施すことが検討されている(特許文献1,2)。
特開2002-239644号公報 特開2007-098470号公報
筐体の形態は、矩形状の天板と、天板の周縁から立設される四つの側壁とを具える断面]状の箱型が代表的である。この箱型の成形体として、天板と側壁とを繋ぐ角部や、二つの側壁を繋ぐ角部が鋭利な筐体が望まれている。樹脂の射出成形や鋳造を利用すれば、鋭利な角部を有する筐体が形成できると考えられる。しかし、樹脂材や鋳造材は、一般に、金属のプレス体に比較して強度が低い。
ここで、箱型の成形体が落下して地面などに衝突する際、衝突時の衝撃が上記角部に加わることが多い。そのため、強度が低い樹脂材や鋳造材では、角部が変形する(潰れる)などして、角部が鋭利な状態を維持することが難しい。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、鋭利な角部を有し、強度が高い成形体を提供する。具体的には、本発明は、金属板をプレス成形したプレス体であって、このプレス体を構成する外周面のうち、二面を繋ぐ角部を有する。そして、上記角部の外側曲げ半径Rが、上記金属板の厚さt以下である。
上記構成によれば、金属板にプレス成形を施すことで、塑性加工による加工硬化により角部の硬度を高められ、角部などに衝撃が加わっても変形し難く、鋭利な角部を長期に亘り維持することができる。また、本発明プレス体は、金属板にプレス成形を施してなることで、素材自体の強度に加えて、塑性加工による強度の向上が得られ、プレス体全体の強度も高い。更に、本発明プレス体は、上記鋭利な角部を有することで、デザイン的にも洗練されたスタイリッシュな印象を与えることができ、商品として外観に優れ、商品価値が高められると期待される。
上記鋭利な角部を有する本発明プレス体は、例えば、以下の多段階のプレス加工を金属からなる素材板に施すことで製造することができる。具体的には、金属板にプレス加工を施して、角部を有するプレス体を製造する方法であって、以下の工程を具える。
素材板の準備工程:金属からなる素材板を用意する。
第一のプレス工程:素材板を200℃以上300℃以下の温度に加熱した状態にして、外周面のうち、二面を繋ぐ角部を少なくとも一つ有するプレス材を製造する。特に、肩部の曲げ半径Rpが実質的に0mmであるパンチを用いて、上記角部のうち、少なくとも一つの角部の内側曲げ半径rが実質的に0mmとなるように第一のプレス加工を施す。
第二のプレス工程:上記プレス材を200℃以上300℃以下の温度に加熱した状態にして、第二のプレス加工を施し、少なくとも一つの角部の外側曲げ半径Rが、金属板の厚さt以下であるプレス体を製造する。特に、プレス材の端面、及び第一のプレス工程で内周面に形成されたr≒0の角部を押圧する段差形状のパンチを用いて、上記内側曲げ半径rが実質的に0mmである角部における外側曲げ半径Rが、上記厚さt以下となるように第二のプレス加工を施す。
外側曲げ半径Rが金属板の厚さt以下というような鋭利な角部を形成するには、プレスに供する素材板の厚さをできるだけ薄くすると形成し易くなる。しかし、素材板自体を薄くし過ぎると、プレス体の強度が低くなり、モバイル電気機器の筐体に望まれる強度や剛性を満たせなくなる。一方、落下などの際に衝撃が加わり易いプレス体の角部を加工硬化により硬度を増すには、角部を高い加工度で形成することが考えられる。しかし、高い加工度で曲げ成形や絞り成形を行うと、素材板において角部の形成箇所が部分的に引き延ばされて薄くなり、この薄肉化により、強度の低下を招く。
そこで、上記製造方法では、高い加工度のプレス成形を一度に行うのではなく、上述のように多段階に分けて行うことで、角部が極端に薄くなることが無く、薄肉化による強度の低下を抑えられる。そのため、上記製造方法によれば、鋭利な角部を有するプレス体が得られるだけでなく、鋭利な角部を長期に亘り維持することができる。
また、上記製造方法によれば加熱状態でプレス加工を行うため、冷間加工ではスプリングバックが生じたり、割れなどが生じるような塑性加工性に劣る金属、例えば、常温での伸びが最大でも20%程度であるマグネシウム合金といった金属であっても、プレス時における加工対象(素材板やプレス材)の伸びを100%以上にすることができる。そして、加工対象が十分な伸びを有することで、角部の外側曲げ半径Rが非常に小さいプレス体を精度良く製造することができる。
更に、上記製造方法によれば、外周面がつくる角部、即ち、外観をつくる角部が鋭利であるだけでなく、内周面がつくる角部も鋭利になるため、プレス体の内部空間が広い。従って、上記製造方法により得られたプレス体を筐体に利用する場合、筐体の内部に各種の部品を十分に収納することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
<プレス体>
《組成》
本発明プレス体を構成する金属は、200℃以上300℃以下の温度域においてプレス成形性に優れる種々のものが利用できる。特に、マグネシウムやその合金は、軽量で、かつ強度も高く、耐衝撃性にも優れ、軽量化が望まれるモバイル電子機器の筐体などの構成材料に好ましい。
マグネシウム合金は、Mgに添加元素を含有した種々の組成のもの(残部:Mg及び不純物)が利用できる。例えば、Mg-Al系、Mg-Zn系、Mg-RE(希土類元素)系、Y添加合金などが挙げられる。特に、Alを含有するMg-Al系合金は、耐食性が高い。Mg-Al系合金は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15〜0.5質量%)、AS系合金(Mg-Al-Si系合金、Si:0.6〜1.4質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金などが挙げられる。Al量は、1.0〜11質量%以下が好ましく、特に、Alを8.3〜9.5質量%、Znを0.5〜1.5質量%含有するMg-Al系合金、代表的にはAZ91合金は、AZ31合金といった他のMg-Al系合金と比較して、耐食性や強度、耐塑性変形性といった機械的特性に優れる。Znを含有するMg-Zn系合金は、例えば、ASTM規格におけるZK系合金(Mg-Zn-Zr系合金、Zn:3.5〜6.2質量%、Zn:0.45質量%以上)などが挙げられる。
《形状》
本発明プレス体は、金属板に曲げ加工や絞り加工といったプレス加工を施されてなり、外周面のうち、二面を繋ぐ角部を少なくとも一つ有する。代表的には、天板部(底面部)と、天板部の周縁から立設される側壁部とを有する形状が挙げられる。より具体的には、矩形板状の天板部と、対向する一対の側壁部のみを有する]状体、対向する一対の側壁部を二組有する断面]状の箱体や、天板部が円板状で、側壁部が円筒状の有蓋筒状体などが挙げられる。天板部や側壁部は、実質的に平行な外側面と内側面とで構成され、本発明プレス体は、二つの外側面を繋ぐ角部が鋭利である。
上記天板部及び側壁部の形態は、代表的には、平坦な面からなり、形状・大きさは特に問わない。ボスなどを一体に成形又は接合していたり、表裏に貫通する孔や厚さ方向に凹んだ溝を有していたり、段差形状になっていたり、塑性加工や切削加工などにより局所的に厚さが異なる部分を有していてもよい。角部以外の箇所は、上記ボスや凹み、厚さが異なる部分を除くと、厚さが概ね一定である。従って、プレス体を構成する金属板の厚さtとは、上記ボスなど、及び角部を除く部分全体の平均厚さとする。具体的には、上記ボスなどを除く部分から測定点を5点以上選択し、その平均とする。天板部が平坦な面からなる場合、上記厚さtは、天板部全体の平均厚さとしてもよい。この厚さtは、素材板の厚さに概ね依存し、プレス加工により圧縮されていない場合、実質的に素材板の厚さと同じである。
上記金属板の厚さtが0.4mm以上2.0mm以下であると、強度に優れるプレス体となり、0.4mm未満であると、素材板が薄いことから、外側曲げ半径Rがより小さいものを形成し易いため、スタイリッシュ感などの外観により優れるプレス体となる。また、金属板の厚さtが2.0mm以下、特に、1.5mm以下、更に0.6mm以下であると、本発明プレス体をモバイル電子機器の筐体などに好適に利用できると期待される。
そして、本発明プレス体は、外周面のうち、二面を繋ぐ角部の少なくとも一つの角部の外側曲げ半径RがR≦tを満たすところを最大の特徴とする。従来の金属板からなるプレス体は、外側曲げ半径が金属板の厚さよりも大きなものであり、従来、R≦tを満たすものは無かった。これに対し、本発明プレス体は、R≦tを満たす角部を少なくとも一つ有する。本発明プレス体に存在する全ての角部がR≦tを満たす場合、スタイリッシュ感を更に高められると期待される。
特に、外側曲げ半径RがR≦(2/3)×tを満たすと、角部の硬度を角部以外の箇所、例えば、天板部よりも高め易く、角部の耐衝撃性を向上することができる。R≦(1/2)×tを満たすと、角部の耐衝撃性の向上、スタイリッシュ感の向上を更に高められる。より具体的には、外側曲げ半径Rが0.1〜0.3mmであることが好ましい。外側曲げ半径Rを0.1mm以上とすることで、鋭利な角部により切創などが生じる恐れを低減でき、0.3mm以下とすることで、良好な外観を有しつつ、耐衝撃性に優れる角部とすることができる。外側曲げ半径Rを小さくするには、例えば、第二のプレス工程でのプレス圧力を高めることなどが挙げられる。
上記製造方法により得られたプレス体は、R≦tを満たす角部において、内側曲げ半径rが実質的に0mmになる。即ち、内周面のうち、上記角部の内側に位置する二面が実質的に直交した状態にある。このようなプレス体は、内側曲げ半径r>0のプレス体と比較して、内部空間が広く、内部に種々の部品を収納する筐体に好適に利用することができる。
《製造方法》
[素材板の用意]
素材板として、マグネシウム合金からなるものを利用する場合、双ロール法といった連続鋳造法、特に、WO/2006/003899に記載の鋳造方法で製造した鋳造板に複数回の圧延を施した圧延板を利用することが好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、酸化物や偏析などを低減でき、圧延加工性に優れる鋳造板が得られる。鋳造板には、溶体化処理(加熱温度:380〜420℃、加熱時間:60〜600分)や時効処理といった熱処理を施すと、組成を均質化することができる。特に、Alの含有量が高いマグネシウム合金の場合、長時間溶体化を行うことが好ましい。鋳造板の大きさは特に問わないが、厚過ぎると偏析が生じ易いため、10mm以下、特に5mm以下が好ましい。
上記鋳造板に複数回の圧延を施すことで、所望の板厚とすると共に、平均結晶粒径を小さくしたり、AZ91合金などのAlを多く含むマグネシウム合金の場合、粗大な晶析出物といった欠陥を消滅することができ、プレス加工性を高められる。圧延は、公知の条件、例えば、マグネシウム合金の場合、特許文献2に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。また、圧延加工途中に中間熱処理(加熱温度:250〜350℃、加熱時間:20〜60分)を行い、中間熱処理までの加工により加工対象に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減すると、その後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止して、より円滑に圧延を行える。得られた圧延板に300℃以上の熱処理を行って、圧延による加工歪みを除去すると共に、完全に再結晶化させたり、得られた圧延板を加熱した状態でロールレベラなどにより歪みを付与して、プレス加工時に再結晶化されるようにしてもよい。
[プレス加工]
多段に亘るプレス加工はいずれの段階も、加工対象(素材板、プレス材)が塑性変形性を高められるように200〜300℃の温度域で行うことが好ましい。
第一のプレス加工では、肩部の曲げ半径Rp≒0(好ましくは、曲げ半径Rpが0.3mm以下)のパンチを用いて、内側に鋭利な角部(実質的に直角)を有するプレス材、即ち、内周面のうち、二面がつくる角部が直交したプレス材を形成する。第二のプレス加工では、プレス材の端面と共に、上記内側の角部を段差形状のパンチにより押圧して、ダイの角部に素材板の構成材料を押し集めて、プレス材の外側に鋭利な角部が形成されるように、押し集めた構成材料を変形させる。プレス加工の際には、可動ダイや凹状ダイなど、適宜なダイを用いる。
プレス成形後に熱処理を施し、プレス加工により導入された歪みや残留応力の除去、機械的特性の向上を図ってもよい。熱処理条件は、加熱温度:100〜450℃、加熱時間:5分〜40時間程度が挙げられる。また、プレス後に得られたプレス体は、防食、保護、装飾などを目的とした被覆層を具えると、耐食性や商品価値などを更に高められる。
本発明プレス体は、角部が鋭利であり、強度が高い。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[試験例1]
マグネシウム合金からなり、角部を有するプレス体を複数作製し、角部の外側曲げ半径R、プレス体の硬度を調べた。
AZ91合金相当の組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn(全て質量%))を有するマグネシウム合金からなり、双ロール連続鋳造法により得られた鋳造板(厚さ4mm)を複数用意した。得られた各鋳造板に、ロール温度:150〜250℃、板温度:200〜400℃、1パスあたりの圧下率を10〜50%の圧延条件で、厚さが0.6mmになるまで複数回圧延を施した。得られた板材に抜打ち加工を行い、プレス成形用のブランク板(素材板)を用意した。
用意したブランク板に二段に亘ってプレス加工を施した。図1は、プレス加工の手順を説明する断面模式図である。なお、図1では、ブランク板を強調して示す。
第一のプレス加工では、図1(B),(C)に示すような平坦な天板部10と、天板部10から立設する一対の平坦な側壁部11を二組有する断面]状のプレス材P(外寸:45mm×95mm×6mmの箱体)を製造する。具体的には、図1(A)に示すように、板厚t:0.6mmのブランク板Bをプレート51及びダイプレート52の上に配置して、パンチ53及び押さえプレート54で挟み、プレート51とパンチ53とでブランク板Bを挟持した状態でパンチ53を図1において下方に移動させて、断面]状に成形する。パンチ53は、肩部の曲げ半径Rpが実質的に0mmであり、肩部を構成する二面が直交した構成である。このプレス加工により得られたプレス材Pは、天板部10の外側面10oと、側壁部11の外側面11oとを繋ぐ角部12の外側曲げ半径R0が、天板部10の厚さt0よりも大きく(R0>t0)、天板部10の内側面10iと、側壁部11の内側面11iとは、直交している。即ち、角部12の内側曲げ半径r0が実質的に0mmである。なお、プレート51,ダイプレート52,パンチ53,押さえプレート54、後述する段差パンチ55,ダイ56は、図示しない加熱手段により加熱可能である。第一のプレス加工では、加熱温度を200℃以上とした。
第二のプレス加工では、例えば、図1(C),(D)に示すような凸状の段差パンチ55と、断面]状の凹部を有するダイ56とを用いてプレス材Pの側壁部11の端面11eを押圧して、外側曲げ半径Rが金属板1の厚さt以下である鋭利な角部を有するプレス体Fを製造する。段差パンチ55は、側壁部11の端面11eを押圧する端部押圧面55pと、プレス材Pの内周面において、ほぼ直角な内角部12iに接触して、この内角部12iを押圧する肩部55sとを有する。ダイ56の凹部は、底面56bと側面56sとが直交しており、角部が直角である。
図1(C),(C’)に示すように、箱型のプレス材Pの外形に嵌合する凹部を有するダイ56にプレス材Pを配置した状態で、段差パンチ55によりプレス材Pの内側を押圧する。このとき、段差パンチ55の端部押圧面55pがまず側壁部11の端面11eを押圧し、更に、段差パンチ55を下方に押圧し続けると、段差パンチ55の主押圧面55mが天板部10の内側面10iに接触して押圧する。そして、プレス材Pの内角部12iが段差パンチ55の肩部55sにより押圧されることで、側壁部11の一部及び天板部10の一部の構成材料がダイ56の凹部の角部に押し集められて、凹部の角部に倣って、プレス材Pに鋭角な角部が形成される。なお、側壁部11の端面11eを均一的に押圧し易いように、第一のプレスにより得られたプレス材の側壁部の一部をサイドカット加工して、プレス材の側壁部の高さを5.5mmに揃えてから、第二のプレス加工を行った。また、第二のプレス加工では、プレス時の圧力を異ならせることで、外側曲げ半径Rの大きさを異ならせた。
上記工程により、図1(E)に示すように、天板部20の外側面20oと、側壁部21の外側面21oとを繋ぐ角部22の外側曲げ半径Rが、天板部20の厚さt以下であるプレス体Fが得られる。なお、天板部20及び側壁部21の厚さは、ポイントマイクロメータを用いて測定したところ、ブランク板Bの厚さに概ね等しく、0.6mmであった。
得られたプレス体について、外側曲げ半径R、角部の硬度、天板部の硬度を測定した。その結果を表1に示す。
外側曲げ半径R(mm)は、天板部の外側面と側壁部の外側面との稜線に対して直交方向にプレス体を切断し、この断面をバフ研磨(ダイヤモンド砥粒♯200使用)した後、光学顕微鏡(400倍)にて観察し、この観察像を用いて測定した。なお、同様にして、角部の内側曲げ半径r(mm)を測定したところ、実質的に0mmであり、天板部の内側面と側壁部の内側面とが実質的に直交していた。
角部の硬度Hvは、天板部の外側面と側壁部の外側面との稜線に対して直交方向にプレス体を切断し、得られた切断片を用いて埋め込み試料を作製し、切断面を鏡面研磨した後、プレス体の切断面において板厚の中央部から測定点を3個選択し、マイクロビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定した。3個の測定点の平均を表1に示す。
天板部の硬度Hvは、プレス体から天板部の一部を切断し、得られた切断片を用いて埋め込み試料を作製し、切断面を鏡面研磨した後、天板部の切断面において板厚の中央部から測定点を3個選択し、マイクロビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定した。3個の測定点の平均を表1に示す。なお、角部と天板部とを含む埋め込み試料を作製して、硬度Hvの測定を行ってもよい。
Figure 2010069504
表1に示すように、上記多段に亘る温間プレス加工を行うことで、外側曲げ半径RがR≦tを満たすプレス体が精度良く得られることが分かる。特に、このようなプレス加工を金属板に施すことで、角部と天板部とが同等の硬度を有することが分かる。従って、これらのプレス体は、角部の強度が高く、落下などの衝撃を受けた際に変形し難いと期待される。
また、外側曲げ半径RがR≦(2/3)×tを満たすと、角部の硬度が向上していることが分かる。この理由は、多段に亘るプレス加工による加工硬化に起因すると考えられる。更に、外側曲げ半径RがR≦(1/2)×tを満たすと、角部の硬度が非常に向上していることが分かる。このようなプレス体では、角部が耐衝撃性に優れて、長期に亘り、鋭利な状態を維持することができると期待される。
なお、上記試験例1では、一対の側壁部を二組有する箱型の成形体において、天板部と側壁部とを繋ぐ角部の外側曲げ半径RがR≦tを満たす場合を説明したが、側壁部同士を繋ぐ角部の外側曲げ半径RがR≦tを満たすプレス体を製造することもできる。また、一対の側壁部しかない]状のプレス体を製造することもできる。更に、上記試験例1では、段差パンチとして一体成形されたものを説明したが、分割片を組み合わせて利用してもよく、例えば、天板部を主として押圧する分割片と、側壁部の端面及び天板部の一部を押圧する分割片とを具えるものを利用してもよい。
[試験例2]
種々の厚さの素材板を用意して、マグネシウム合金からなるプレス体を作製し、強度及び外観を調べた。
試験例1で用意したAZ91合金相当の組成の鋳造板と同様のもの(厚さ4mm)を用意し、圧延回数を変化させて厚さが異なる圧延板を得た(厚さ:0.3〜0.8mm)。得られた各圧延板に試験例1と同様に抜打ち加工を行って、ブランク板を用意した。各ブランク板に、試験例1と同様にして、二段に亘る温間のプレス加工を施し(プレス時の加熱温度は、200〜250℃から適宜選択)、平坦な天板部と、天板部から立設する一対の平坦な側壁部を二組有する断面]状のプレス体を作製した。
得られた各プレス体について、試験例1と同様にして角部の外側曲げ半径R(mm)を測定した。その結果を表2に示す。
また、プレス体の強度を以下のように測定した。プレス体の天板部が上方を向くように、側壁部を支持脚としてプレス体を配置し、この状態で、天板部の中央に、直径φ38mmの超硬合金球を1kgf(9.8N)の荷重で押し込み、プレス体を永久変形させる。この変形量(天板部の外周面において最も突出した箇所と最も凹んだ箇所との差)を接触式形状測定器により測定し、この変化量をプレス体の強度として評価する。変化量が1mm以上の場合、強度不足と見なし、×と評価し、変化量が1mm未満の場合、十分な強度を有していると見なし、○と評価し、変化量が0.3mm未満の場合、良好な強度を有していると見なし、◎と評価する。この結果を表2に示す。
外観は、任意の10人を対象としてパネルテストを行い、外側の角部が鋭利で際立っており、スタイリッシュ感があり、意匠性に優れると判断した人が5人以下の場合を×、6〜8人の場合を○、9人以上の場合を◎と評価する。この結果を表2に示す。
Figure 2010069504
表2に示すように、天板部の厚さtが厚くなるにつれて強度を高められることが分かる。また、外側曲げ半径RがR≦(1/2)tであると、強度が高く、かつ外観にも優れることが分かる。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、金属板として、マグネシウム合金の他、アルミニウムやその合金、その他種々の金属からなるものに変更することができる。
本発明プレス体は、各種の電子機器、特に、モバイル電気機器類の筐体に好適に利用することができる。
鋭利な角部を有するプレス体の製造工程において、プレス加工の手順を説明する断面模式図であって、(A)は、素材板を金型に配置した状態、(B)は、第一のプレス加工により、断面]状のプレス材を形成した状態、(C)は、第二のプレス加工においてパンチにより押圧している状態、(C’)は、(C)において角部の部分拡大図、(D)は、第二のプレス加工により、鋭利な角部を有するプレス体を形成した状態、(E)は、得られたプレス体を示す。
符号の説明
1 金属板
10 天板部 10o 天板部の外側面 10i 天板部の内側面 11 側壁部
11o 側壁部の外側面 11i 側壁部の内側面 11e 側壁部の端面 12 角部
12i 内角部
20 天板部 20o 天板部の外側面 21 側壁部 21o 側壁部の外側面
22 角部
51 プレート 52 ダイプレート 53 パンチ 54 押さえプレート
55 段差パンチ 55m 主押圧面 55p 端部押圧面 55s 肩部 56 ダイ
56b 底面 56s 側面
B ブランク板 P プレス材 F プレス体

Claims (9)

  1. 金属板をプレス成形したプレス体であって、
    前記プレス体を構成する外周面のうち、二面を繋ぐ角部を有しており、
    前記角部の外側曲げ半径Rが、前記金属板の厚さt以下であることを特徴とするプレス体。
  2. 前記外側曲げ半径Rは、R≦(2/3)×tを満たすことを特徴とする請求項1に記載のプレス体。
  3. 前記外側曲げ半径Rは、R≦(1/2)×tを満たすことを特徴とする請求項2に記載のプレス体。
  4. 前記角部の硬度が、角部以外の箇所の硬度よりも高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス体。
  5. 前記角部の内側曲げ半径rが実質的に0mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレス体。
  6. 前記プレス体は、Al又はZnを含むマグネシウム合金からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレス体。
  7. 前記プレス体は、Al及びZnを含むマグネシウム合金からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレス体。
  8. 前記マグネシウム合金は、質量%でA1を8.3%以上9.5%以下、Znを0.5%以上1.5%以下含有し、残部がMg及び不純物からなることを特徴とする請求項7に記載のプレス体。
  9. 前記外側曲げ半径Rが0.1mm以上0.3mm以下であり、
    前記厚さtは、0.4mm以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプレス体。
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