JP2010052632A - 車体構造体およびインストルメントパネル - Google Patents

車体構造体およびインストルメントパネル Download PDF

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Abstract

【課題】吸音構造体が、音波を振動に変換して、音波エネルギーを機械エネルギーとして消費して吸音を行う。例えば、吸音構造体が吸音する周波数を低い値に設定した場合には、例えばエンジン音のような低周波数の音を効率良く吸音することができる。
【解決手段】車両100は、インストルメントパネル200を備えている。このインストルメントパネル200には、音圧駆動によって吸音を行う板吸音体が設けられている。この板吸音体10は、インストルメントパネル200内や車室105内にこもる音が板吸音体に伝達され、その振動板を振動させる。この振動により、インストルメントパネル200内や車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、エンジン音やロードノイズ等の比較的低い周波数の音を吸音することが可能な車体構造体に関する。
車体構造体において、車室に浸入する音を吸収する技術が知られている。例えば、特許文献1には、インストルメントパネルにおいて、基材と、基材の表面に配置された表皮との間に形成される空隙に、発泡樹脂を注入して吸音層を形成した吸音構造が開示されている。
特開平9−281974号公報
しかし、特許文献1に開示されている、発泡樹脂等の多孔質吸音体を使用する技術においては、粒子速度駆動に基づく吸音機構を利用しているため、低周波数領域の音に対しては大きな背後空気層が必要であるから、エンジン音、走行中の風切り音、タイヤや路面からひろうロードノイズ等のように、比較的低い周波数領域における音に対しては減衰させることができなかった。連通した空隙を有する樹脂発泡体やフェルト等の多孔質吸音材は、音響粒子速度が最大となる位置に、その速度が最大となる方向と垂直に配設されたときに、吸音率が最大になる。このため、対象周波数のおよそλ/4の空間を背後に有する必要があり、低音域を吸音するためには大きな空気層(例えば、315Hzで27cm)が必要となり、車室内に設置することは現実的でない。よって、背後空気層が少ない多孔質吸音構造で低周波数領域の吸音をすることはできず、低周波の音響エネルギーを消散することはできなかった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低周波領域における音を効率良く吸音することにある。
上述した課題を解決するために、本発明が採用する車体構造体は、フロントガラスの下方に設けられたインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルに設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備することを特徴とする。
上記車体構造体において、前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記インストルメントパネルにおける音圧が高い部位に配置されることが望ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体であることが望ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体であることが望ましい。
前記菅吸音体は、複数の前記空洞を有することが好ましい。
前記菅吸音体は、長さの異なる複数の前記空洞を有することが好ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、閉空間と、この閉空間と車室の空間とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体であることが望ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体と、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体と、閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体との、いずれかの吸音体の組み合わせによって構成されることが望ましい。
上述した課題を解決するために、本発明が採用するインストルメントパネルは、車両におけるフロントガラスの下方に設けられたインストルメントパネルであって、前記インストルメントパネルの基台をなすインストルメントパネル基材と、前記インストルメントパネル基材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、吸音構造体が、音波を振動に変換して、音波エネルギーを機械エネルギーとして消費して吸音を行う。例えば、吸音構造体が吸音する周波数を低い値に設定した場合には、例えば、エンジン室等から到来するエンジン音等の音で、インストルメントパネルを透過して車室に侵入する音や、インストルメントパネルを透過した音であって、フロントガラスを反射する低周波数の音を効率良く吸音することができる。
以下、吸音構造体を備えた車体構造体について説明する。
<第1実施形態>
本発明者達は、車両におけるフロントガラスの下方に設けられたインストルメントパネルに吸音構造体を設けることに着目した。一般に、車室の境界面においては、音波の粒子速度が大きな値をとらないのに対し、音圧は高いところと低いところが生じる(所謂、音圧分布)。そこで、音圧駆動による吸音機構を有する吸音構造体は、吸音される音響エネルギーが、吸音効率とそこに入射する音響エネルギーの積で決まるため、高音圧の部位に前記音圧駆動の吸音構造を優先的に配置することで、効率的に車室内の音響エネルギーを消散することが可能となる。また、音圧駆動に基づく吸音構造体では、λ/4の背後空気層を構成することなく実現できるため、壁面近傍での吸音を可能とし、低周波数領域における音に対しても大きな背後空気層を必要としないという利点がある。
なお、本実施形態におけるインストルメントパネルは、車両におけるフロントガラスの下方に設けられ、運転席及び助手席の前面に取り付けられた内装部全体のことである。
(1−1)構成
(1−1−1)車両
図1は、本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100においては、車体構造体の基台となるシャーシ110に対して、ボンネット101、車両100の出入り口となる4枚のドア102、トランクドア103が開閉可能に取り付けられる。
図2は、シャーシ110及びドア102の内側を模式的に示す図である。このシャーシ110は、ベース111と、このベース111から上側に延びるフロントピラー112、センターピラー113、リアピラー114と、ピラー112,113,114によって支えられる天井115と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁117と、車両100内の車室105に設けられたインストルメントパネル200と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁117と、ピラー112などによって支持されるフロントガラス118とを有する。インストルメントパネル200は、車室105において車両100の車体によって支持されている。インストルメントパネル200は、フロントガラス118の下方に設けられており、図2に示すエンジン室106に比較的近い位置に設けられている。
(1−1−2)インストルメントパネル
本実施形態の特徴は、インストルメントパネル200に箱型の板吸音体を設けたことにある。
図3は、図2に示す領域aの位置に設けられた、本実施形態のインストルメントパネル200の外観を示した図である。インストルメントパネル200の内側に形成される空間には、スピードメータや燃料計、距離計等の計器類のほか、各種スイッチ、空調ユニット、オーディオ機器等が収容されている。なお、インストルメントパネル200内部に形成され、上記のような収容物が設けられる収容空間のことを、以下では「インストルメントパネル200内」と称する。具体的には、インストルメントパネル200内は、インストルメントパネル200とエンジン仕切障壁116との間に形成される収容空間のことである。
インストルメントパネル200の前面には、図3に示すように、これらの計器類やスイッチ、オーディオ機器の一部を構成するスピーカ201,202、冷暖房風が吹き出る冷暖房風吹出口203等が設けられている。インストルメントパネル200の上面には、複数のデフロスタ吹出口204が設けられており、後述する空調ユニット205から送られてくる温風がこのデフロスタ吹出口204から吹き出される。インストルメントパネル200の左下部にはグローブボックス207が設けられており、その中には車検証や地図等が収容されている、同図においては、グローブボックス207の蓋208は閉じられた状態である。
図4は、図2に示す領域aにあって、インストルメントパネル200内、及びその周辺構造を模式的に表した図である。この図4は、図3の切断線x−xで切断したときの断面を表している。同図に示すように、インストルメントパネル200内には、空調ユニット205、デフロスタダクト206、及び複数の板吸音体群1が設けられている。なお、図示したもの以外にも、上記のような収容物が収容されるが、ここではその図示を省略する。また、同図において点線で図示した板吸音体群1及び孔Hは、本実施形態では設けられていないものとし、これについては変形例にて説明する。
空調ユニット205は、フロントガラス118の車外側の霜と、車室105側の曇りを取るための温風を送るデフロスタとして機能したり、車室105に冷暖房風を送る冷暖房装置として機能したりする。デフロスタとしての空調ユニット205から送られる温風は、デフロスタダクト206を介して、デフロスタ吹出口204からフロントガラス118に向かって吹き出される。一方、空調ユニット205から送られる冷暖房風は、図示せ
ぬ暖房風ダクトを介して、図3に示した冷暖房風吹出口203から吹き出される。複数の板吸音体群1は、インストルメントパネル200内に複数設けられている。ここで、図5は、インストルメントパネル200を図4に示す矢印I方向(上方)から見たときの、板吸音体群1の配置態様を説明する図である。同図に示すように、インストルメントパネル200内の上側の内壁には、複数の板吸音体群1が広範囲に亘って設けられている。また、これ以外にも、図4に示すように、インストルメントパネル200において、デフロスタダクト206や、その他の位置の内壁に板吸音体群1が設けられている。
板吸音体群1は、それぞれ複数の板吸音体10によって構成されている。
図6は、板吸音体群1の構造を示す平面図である。同図(a)に示すように、インストルメントパネル200内に設けられる板吸音体群1は、同様の形状を有する6つの板吸音体10によって構成されている。各板吸音体10の大きさは、次の通りである。
板吸音体10の大きさ:高さ100mm×幅100mm×厚さ10mm
次に、板吸音体10の取り付け構造について、図7を参照しつつ説明する。板吸音体群1が備える各々の板吸音体10は、それぞれ同様の取り付け構造を有している。そのため、ここでは、板吸音体群1が備える板吸音体10の1つを例に挙げて、その取り付け構造について説明する。
図7(a)は、インストルメントパネル200を、図4中の切断線b−bで切断したときの断面図である。なお、図では、板吸音体10が1個しか示されていないが、実際には、紙面奥方向又は紙面手前方向に向かって3つの板吸音体10が凹部122に並べて配置されている。同図に示すように、インストルメントパネル200は、合成樹脂などで形成されたインストルメントパネル基材120と、音圧透過性がある不織布状の布材によって形成され、インストルメントパネル基材120の表面を覆う表面材135とによって構成されている。この表面材135のうち、板吸音体10に対応する部分が、インストルメントパネル200内の音圧を板吸音体10に伝達する音圧透過部136となる。
インストルメントパネル基材120は、平板部121と、この平板部121から表面材135の方向と反対側に凸設させることにより、インストルメントパネル200内に開口して形成される矩形状の凹部122とを有している。また、凹部122の底部には、複数個のピン穴124が形成され、このピン穴124の開口部には穴径を縮径した抜止部125が形成される。このピン穴124には、板吸音体10の底部に突出形成された樽状のピン15が挿入される。このピン15をピン穴124に嵌め込むことにより、ピン15の縮径部分が抜止部125に係止され、板吸音体10が凹部122に固定される。
また、板吸音体10の取り付け構造が図7(b)に示したようになっているものもある。つまり、同図(b)に示すようにインストルメントパネル基材120に凹部122が設けられずに、その表面が平らなインストルメントパネル基材120にピン穴124が設けられ、板吸音体10が突出して取り付けられる。この場合、表面材135は設けられておらず、板吸音体10において、インストルメントパネル200内(空間)に接する部分が、インストルメントパネル200内の音圧を伝達する音圧透過部となる。乗員がインストルメントパネル200内を見るときというのは、そこに収容しておいた機器を取り外したり、交換したりする等の場合であり、そのような機会はあまりない。よって、車両100のデザイン性にほとんど影響を与えないし、ユーザにとって邪魔にならないため、このような取り付け構造を採りうるのである。
なお、以下では、特に断りのない限り、図7(a)に示す取り付け構造を採った場合の構成について説明する。その場合において、図7(b)に示す取り付け構造を採った場合であっても、図7(a)に示す取り付け構造の場合と、同様の構成を採用することができる。これらには、インストルメントパネル基材120の凹部122に板吸音体10が嵌め込まれるか、又はインストルメントパネル基材120から板吸音体10が突出しているかの差異しかないからである。
(1−1−3)板吸音体
次に、板吸音体10の構造について説明する。各々の板吸音体10は、同様の構成を備えているため、ここでは、図7(a)に示した板吸音体10の構造を例に挙げて説明する。図7(a)に示すように、板吸音体10は、開口部12を有する矩形状の筐体11と、開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する。筐体11は合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)によって形成され、振動板13は高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)によってシート状に形成される。本発明においては、振動板13は、弾性を有する素材を膜状に形成してもよい。
板吸音体10は、後述する条件に設定することで、音圧透過部136を通して振動板13に伝わるインストルメントパネル200内の音圧と、空気層14側の音圧との差(即ち、振動板13の前後の音圧差)によって振動板13が駆動される。これにより、当該板吸音体10に到達する音波のエネルギーは、この振動板13の振動により消費されて音が吸音されることになる。即ち、板吸音体10は、音圧駆動により励振された振動により吸音効果を発揮する。
(1−1−4)板吸音体の設定条件
ここで、板吸音体10の設定条件について説明する。
一般に、板状または膜状の振動体と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
(数1)
Figure 2010052632
また、板・膜振動型吸音構造において振動体が弾性を有して弾性振動をする場合には、弾性振動による屈曲系の性質が加わる。建築音響の分野においては、振動体の形状が長方形で一辺の長さをa[m]、もう一辺の長さをb[m]、振動体のヤング率をE[Pa]、振動体のポアソン比をσ[−]、p,qを正の整数とすると、以下の数2の式で板・膜振動型吸音構造の共振周波数を求め、求めた共振周波数を音響設計に利用することも行われている(周辺支持の場合)。
(数2)
Figure 2010052632
そして、本実施形態においては、上記数式から160〜315Hzバンド(1/3オクターブ中心周波数)を吸音するよう、以下のようにパラメータが設定される。
Figure 2010052632
一方、上記数2において、バネマス系の項(ρ00 2/ρtL)と屈曲系の項(バネマス系の項の後に直列に加えられている項)とが加算される。このため、上記式で得られる共振周波数は、バネマス系の共振周波数より高いものとなり、吸音のピークとなる周波数を低く設定することが難しい場合がある。
このような吸音体においては、バネマス系による共振周波数と、板の弾性による弾性振動による屈曲系の共振周波数との関連性は十分に解明されておらず、低音域で高い吸音力を発揮する板吸音体の構造が確立されていないのが実情である。
そこで、発明者達は鋭意実験を行った結果、屈曲系の基本振動周波数の値をfa、バネマス系の共振周波数の値をfbとし場合、以下の数3の関係を満足するように、上記パラメータを設定すればよいことがわかった。これにより、屈曲系の基本振動が背後の空気層のバネ成分と連成して、バネマス系の共振周波数と屈曲系の基本周波数との間の帯域に振幅の大きな振動が励振されて(屈曲系共振周波数fa<吸音ピーク周波数f<バネマス系基本周波数fb)、吸音率が高くなる。
(数3)
0.05≦fa/fb≦0.65
さらに、以下の数4に設定する場合、吸音ピークの周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さくなる。この場合、低次の弾性振動のモードにより屈曲系の基本周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さく、300[Hz]以下の周波数の音を吸音する吸音構造として適していることも分かった。
(数4)
0.05≦fa/fb≦0.40
このように、上記した数3,4の条件を満足するように各種パラメータを設定することにより、吸音のピークとなる周波数を低くした吸音体が構成できる。
(1−2)第1実施形態の作用・効果
本実施例による板吸音体10においては、インストルメントパネル200内に、エンジン室106から到来するエンジン音やフロントガラスを通過してくるロードノイズ等の音が、振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、インストルメントパネル200内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行い、インストルメントパネル200を透過して車室105へ伝達する音の伝搬が抑制される。例えば、板吸音体10の設定を上記パラメータの数値に設定することにより、エンジン室105からのエンジン音やロードノイズのような低周波数の音(インストルメントパネル200内の固有振動に対応した音圧が局所的に高くなる音の周波数(160Hz〜315Hzの帯域))を効率良く吸音することができる。これにより、インストルメントパネル200を透過した音のうち、従来はフロントガラス118を反射してしまっていた音に対しても、その吸音の効果が発揮されるのである。
ところで、通常はインストルメントパネル200には、何らかの開口部(音圧透過部)がある。よってインストルメントパネル200内に設けられた板吸音体10は、車室105からインストルメントパネル200内に伝搬した音波エネルギーを消費して吸音するので、車室105へ伝達した音を吸音することになる。これに対し、インストルメントパネル200内を遮音層等で密閉して、上記開口部(音圧透過部)がなくなるようにした場合、インストルメントパネル200内に設けられた板吸音体10は、車室105を介さずインストルメントパネル200内へ伝達した音を吸音することになる。ただし、この場合も、板吸音体10は、エンジン室106からエンジン仕切障壁116を介して伝達する放射音を吸音するので、車室105の静粛性を高めることに寄与する。つまり、インストルメントパネル200に設けられた音圧駆動の吸音体10は、インストルメントパネル200が開口部を有するか否かの態様によって作用効果が異なるのである。
本実施形態においては、車両100のインストルメントパネル200に箱形の板吸音体10を設けている。エンジン音等の比較的周波数の低い音はその板吸音体10に効率良く吸音される。
ここで、比較的低い周波数とは、車室内の固有振動のうちその振動数が最も低い周波数である基本振動の周波数(通常の車室では約80Hz)と、当該車室が拡散音場とみなせる周波数帯域(通常の車室では約500Hz以上の帯域)との間の周波数帯域であって、当該車室において離散的にモードがあるとみなせる周波数をいう。
図8に、板吸音体10をインストルメントパネル200内に設けた場合の騒音低減効果を調べる実験の結果を示す。このグラフは、運転席における音圧を示した周波数特性であり、実線が吸音構造体なし、点線が吸音構造体有りを示している。同図に示すように、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが低減され、騒音が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。また、これよりも高い周波数域でも騒音レベルの低下が認める。この結果、本実施形態における車体構造体においては、インストルメントパネル200内に設けられた板吸音体10によって、例えばエンジン音やロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
(1−3)第1実施形態の変形例
本発明は、前述した第1実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(1−3−1)
前述した第1実施形態では、図4に示したように、板吸音体群1は、インストルメントパネル200内に複数設けられていたが、板吸音体群1が設けられる位置や数は実施形態で述べた態様に限らない。特に、板吸音体10は、インストルメントパネル200内に限らずに、インストルメントパネル200に設けられる構成であればよい。
例えば、図3に示すグローブボックス207の蓋208に、板吸音体群1が設けられてもよい。なお、この蓋208もインストルメントパネル基材120の一部を構成する。
図9は、グローブボックス207の蓋208に取り付けられる板吸音体群1の、取り付け構造を模式的に表した図である。同図に示すように、蓋208には、車室105側に開口するように凹部127が形成されている。この凹部127に、図6(b)に示すような、同様の形状を有する3つの板吸音体10によって構成からなる板吸音体群1が嵌め込まれる。さらに、この板吸音体群1の表面が表面材135に覆われる。なお、この板吸音体群1の構造は、第1実施形態の図7(a)で示したものとほぼ同じで、図示せぬピンをピン穴に嵌め込むことにより取り付けられる。この場合において、音圧透過部136は車室105側の音圧を板吸音体10に伝達する。また、ここでの各板吸音体10の大きさは、次の通りである。
板吸音体10の大きさ:高さ100mm×幅100mm×厚さ10mm
次に、図10に、上記のようにして板吸音体群1をグローブボックス207の蓋208に設けた場合の、騒音低減効果を調べる実験の結果を示す。このグラフは、助手席における音圧を示した周波数特性であり、実線が吸音構造体なし、点線が吸音構造体有りを示している。同図に示すように、この場合も、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが低減され、騒音が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。
また、インストルメントパネル200の車室105側の位置であって、グローブボックス207以外の位置に板吸音体群1が設けられてもよい。例えば、図4に二点鎖線で示したような、インストルメントパネル基材120の運転席前面における下方側の位置(外壁)に設けられても良い。図11に、板吸音体10をインストルメントパネル200に設けた場合の騒音低減効果を調べる実験の結果を示す。なお、この場合の各板吸音体10の大きさは、高さ100mm×幅100mm×厚さ20mmで、板吸音体群1は同様の形状を有する6つの板吸音体10によって構成されている。また、このグラフは、運転席における音圧を示した周波数特性であり、実線が吸音構造体なし、点線が吸音構造体有りを示している。図11に示すように、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが低減され、騒音が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。また、これよりも高い周波数域でも騒音レベルの低下が認められた。
以上説明したように、インストルメントパネル200内だけでなく、インストルメントパネル200の車室105側に板吸音体10を設けることでも、期待する吸音効果を得ることができた。このことから、インストルメントパネル200に板吸音体200を設けることが、車室105内の静粛感を高めることに貢献するといえる。
(1−3−2)
前述した第1実施形態において、インストルメントパネル200の上面であって、図4に示すように、例えばデフロスタダクト206よりも座席側の位置に孔Hを設けておいてもよい。孔Hを設けることにより、車室105にこもる音がこの孔Hを導入口としてインストルメントパネル200内に浸入する。この浸入した音は、インストルメントパネル200内の板吸音体10に吸音されるため、この吸音による吸音効果を期待することもできる。なお、この孔Hの幅方向の大きさは、例えばデフロスタダクト206の幅方向の大きさと同じくらいあれば十分である。
(1−3−3)
前述した第1実施形態では、板吸音体10の筐体11内に空気層14が形成されていたが、振動板13の吸音特性を高めるために、発泡ポリウレタンなどの連続気泡の発泡樹脂、あいは、フェルトやポリエステルウールなどの綿状繊維を筐体11内に充填させてもよい。
また、前述した第1実施形態では、図7に示したように、インストルメントパネル基材120のピン穴124に板吸音体10のピン15が嵌めこまれることによって板吸音体10が取り付けられていたが、板吸音体10の取り付け方法はこれに限らない。例えば、第1実施形態におけるデフロスタダクト206の取り付け方と同様で、接着剤などで板吸音体10をインストルメントパネル基材120(蓋208を含む)に固着させてもよい。
また、図12に示すように、板吸音体10と表面材135との間に、複数の挿通孔120Aが設けられた平板部121Aが設けられてもよい。この場合、インストルメントパネル200内の空気は挿通孔120Aを通って板吸音体群1に伝達するため、この複数の挿通孔120Aが音圧透過部となる。
(1−3−4)
前述した第1実施形態では、インストルメントパネル基材120と板吸音体10とが別体で設けられていたが、これに限らない。図13に示すように、インストルメントパネル基材120一部を板吸音体10Aの筐体としてもよい。具体的には、インストルメントパネル200内に開口する矩形状の凹部122Aを形成し、この凹部122Aの開口部12に直接振動板13を固着し、凹部122Aと、振動板13と、凹部122Aおよび振動板13によって画成される空気層14とによって板吸音体10Aを構成する。この場合、表面材135のうちこの振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
(1−3−5)
また、板吸音体10の設置態様は、上述した第1実施形態で説明したものに限らない。ここで、図14は、別の形態のインストルメントパネル200の外観を示した図である。図14に示すように、インストルメントパネル200の左右両側付近の上面には、それぞれスピーカSP及び2つの板吸音体10が設けられている。図15は、図14の切断線y−yで切断したときの断面を表している。図15に示すように、インストルメントパネル200の凹部230にスピーカSP及び2つの板吸音体10が収められており、凹部230の開口部はネットNで覆われている。このような構成であっても、板吸音体10は車室105から伝搬する音響エネルギーや、エンジン室106からのエンジン音がエンジン仕切障壁116を介して放射される放射音のエネルギーを消費して吸音を行う。また、板吸音体10の取り付け構造は図7(b)と同じである。また、ここでは、スピーカSPが収容される凹部230に板吸音体10を収容する構成について説明したが、その他の装置類が収容される空間に一緒に収めてもよいし、ネットNに限らず、グリルや、メッシュ又はスリット越しに車室105を臨むように、板吸音体10が設けられてもよい。なお、図15においても、インストルメントパネル200内に収用される収容物の図示を省略する。
(1−3−6)
前述した実施形態では、各板吸音体群1が備える複数の板吸音体10が、いずれも同様の形状を有していたが、これらの板吸音体10がそれぞれ異なった形状を有していてもよい。板吸音体10の筐体11の寸法によって板吸音体10の共振周波数が異なるため、吸音される周波数の範囲を広げることができ、より確実に吸音を行うことができる。
また、各々の板吸音体群1が、設けられた位置の音圧に応じて適した共振周波数を有する板吸音体10を備えていてもよい。この場合、音圧が高くなる部位(インストルメントパネル200内あるいは車室内の固有振動姿態(モード)に対応して音圧が高くなる(音圧の腹となる)部位。具体的にはガラスなどの反射性の部材で構成された、凹んだ空間など。)に配置される板吸音体群1は、板吸音体群1が寸法の大きい板吸音体10を備え、音圧が低くなる部位に配置される板吸音体群1は、寸法の小さい板吸音体10を備えるとよい。
(1−3−7)
前述した第1実施形態では、板吸音体10の構成を、矩形状の筐体11と、筐体11の開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に限らず、円形状や多角形状であってよい。また、いずれの形状の筐体であっても、振動板13に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動板13の中央部に設けることが望ましい。
板吸音体10は、先にも説明した通り、バネマス系と屈曲系で吸音メカニズムが形成されている。ここで、発明者達は、振動板13の面密度を変えた際の共振周波数における吸音率の実験を行った。
図16は、空気層14の縦と横の大きさが100mm×100mmで厚さが10mmの筐体11に振動板13(大きさが100mm×100mm、厚さ0.85mm)を固着し、中央部(大きさが20mm×20mm、厚さ0.85mm)の面密度を変化させた際の板吸音体10の垂直入射吸音率のシミュレート結果を示した図である。なお、シミュレート手法は、JIS A 1405−2(音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法)に従って、上記板吸音体10を配置した音響室の音場を有限要素法により求め、その伝達関数より吸音特性を算出した。
具体的には、中央部の面密度を、(1)399.5[g/m2]、(2)799[g/m2]、(3)1199[g/m2]、(4)1598[g/m2]、(5)2297[g/m2]とし、周縁部材の面密度を799[g/m2]とし、振動板13の平均密度を、(1)783[g/m2]、(2)799[g/m2]、(3)815[g/m2]、(4)831[g/m2]、(5)863[g/m2]とした場合のシミュレーション結果である。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
700[Hz]付近で吸音率が高くなっているのは、振動板13のマスと空気層14のバネ成分によって形成されるバネマス系の共振によるものである。板吸音体10においては上記バネマス系の共振周波数での吸音率をピークとして音が吸音されており、中央部の面密度大きくしても、振動板13全体のマスは大きく変わらないので、バネマス系の共振周波数も大きく変わらないことが分かる。
また、300〜500[Hz]の間で吸音率が高くなっているのは、振動板13の屈曲振動によって形成される屈曲系の共振によるものである。板吸音体10においては、屈曲系の共振周波数での吸音率が低音域側のピークとして表れており、中央部の面密度を大きくしてゆくと屈曲系の共振周波数だけが低くなっていることが分かる。
一般に、屈曲系の共振周波数は、振動板13の弾性振動を支配する運動方程式で決定され、振動板13の密度(面密度)に反比例する。また、前記共振周波数は、固有振動の腹(振幅が極大値となる場合)の密度により大きく影響される。このため、上記シミュレーションでは、1×1の固有モードの腹となる領域を中央部で異なる面密度に形成したので、屈曲系の共振周波数が変化したものである。
このように、シミュレーション結果は、中央部の面密度を周縁部の面密度より大きくすると、吸音のピークとなる周波数のうち、低音域側の吸音率のピークがさらに低音域側へ移動することを表している。従って、中央部の面密度を変更することにより吸音のピークとなる周波数の一部をさらに低音域側または高音域側に移動(シフト)させることができることを表している。
上述した板吸音体10においては、中央部の面密度を変えるだけで、吸音される音のピークの周波数を変える(シフトさせる)ことができるため、振動板13を板吸音体10全体と同じ素材で板状に形成し、板吸音体10全体の質量を重くして吸音する音を変更する場合と比較して、板吸音体10全体の質量を大きく変えることなく吸音させる音を低くできる。
このように、車室内や荷室内の吸音力の変更(人や荷物の数量、形状の変化等)や発生騒音の変更(タイヤの変更、路面状況の変化等)により車室内の騒音特性の変化に対応できる。
さらに、板吸音体10の空気層14内には、多孔質吸音材(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)を充填することにより、吸音率ピーク値を増加させてもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、インストルメントパネル200に設けられる吸音構造体に管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
(2−1)構成
図17は、第2実施形態における図2に示す領域aであって、インストルメントパネル200内の構造、及びその周辺構造を模式的に表した図である。この図17は、図3の切断線x−xで切断したときの断面を表している。インストルメントパネル200内には、紙面奥方向に向かって複数の管吸音体30が設けられている。管吸音体30の開口部は、デフロスタ吹出口204の一部から車室105に向けて配置されている。空調ユニット205から送られる温風は、デフロスタ吹出口204の他の部分から吹き出されることになる。
図18は、インストルメントパネル200のデフロスタ吹出口204に開口部が設けられた、管吸音体30の構造を示した図である。なお、同図では図が煩雑になるのを防ぐため、後述する開口部33及び抵抗材34についてはパイプ31−1にのみ付しているが、その他のパイプについても同じ構成である。また、同図では、パイプ31−2〜31−11については符号を付していないが、パイプ31−1からパイプ31−12に向かって順にこれらは設けられている。管吸音体30は、長さの異なる複数本のパイプ31(31−1〜31−12)からなり、これらはデフロスタ吹出口204に開口部33を向けて配置されている。これらのパイプ31は、3本ずつ相互に連結、或いは別途専用の部材で相互に連結させて一体に構成されている。各パイプ31は、所定の肉厚(例えば、約2mm)および所定の内径(例えば、直径60mm)を有する合成樹脂製等の断面円形の直線状剛性パイプで構成される。各パイプ31の一端部は閉じられて閉塞部32となり、他端部は開かれて開口部33となる。開口部33の位置は、連結された3本のパイプ31毎に一列に揃えられることにより、開口部33同士が隣接して配置される。これにより、インストルメントパネル基材120に音圧透過部136が形成されることになる。
各パイプ31内の長さは、パイプ31の空洞単体で吸収される音波の中心の周波数の1/4の波長に相当する。
ここでは、空洞の長さL(=パイプの長さ)が0.5m,0.34m,0.2mの3種類のパイプが用いられており、これらはそれぞれ170Hz,250Hz,425Hzを中心に吸音する(音速=340m/s)。
各パイプ31の開口部33のネック部分(開口部33またはその近傍)は、グラスウール、クロス、ガーゼ等の音圧透過性を有する流れ抵抗材(流れ抵抗を有する材料)34で塞がれている。
(2−2)管吸音体の動作原理
次に、管吸音体30による吸音原理について説明する。
図19は、図18に示す管吸音体30のうち隣接する2本のパイプ31−j,31−kを示したものである。各パイプ31−j,31−kの空洞の長さをL1,L2とする。車室105内の音波は、開口部33−j,33−kから空洞内に入射され、他端の閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから再び室内に放出される。このとき、空洞の長さL1,L2の4倍に相当する波長λ1,λ2(L1=λ1/4,L2=λ2/4)の音波が定在波S1,S2を作り、振動を繰り返すうちに空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、この波長λ1,λ2を中心に吸音が行なわれる。例えば、L1=1.35m、L2=0.53mとすると、λ1=5.4m、λ2=2.12mとなり、それぞれで吸音される音波の中心の周波数f1,f2は、f1=63Hz、f2=160Hzとなる。
一方、閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから放出される音波は、開口部33−j,33−kで回折してエネルギーを放射する。そのエネルギーの一部は相互に隣接する他方のパイプ31−k,31−jの開口部33−k,33−jから空洞内に入射される。このようにして、隣接するパイプ31−j,31−k相互間で連成振動を生じ、エネルギーの授受が行なわれる。この連成振動の際に、空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、吸音が行なわれる。この連成振動は、パイプ31−j,31−kを一連のパイプとみなした両端閉管モードとして捉えることができ、L1+L2=λ3/2として定まる波長λ3を中心に吸音が行なわれる。例えばL1=1.35m、L2=0.53mの場合には、λ3=3.76mとなり、連成振動で吸音される音波の中心の周波数f3はf3=90Hzとなる。図18の配列の場合、隣接するパイプs間での連成振動の周波数は次のようになる。
L1(m) L2(m) 連成振動周波数(Hz)
0.5 0.34 202
0.5 0.2 243
0.34 0.2 314
これによれば、各パイプ31−1〜31−12単体での吸音(200,250,315Hzが中心)とあわせて約100〜160Hzの範囲で平均的に吸音力が得られることになる。
(2−3)第2実施形態の作用・効果
このように、インストルメントパネル200に管吸音体30を設けることにより、エンジン音やロードノイズ等の比較的周波数の低い騒音を管吸音体30によって効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。また、インストルメントパネル200内で、デフロスタ吹出口204に開口部33を向けて収容しているので、乗員からは管吸音体30の開口部33が見えず、車両100内部のデザイン性を損なうことがない。
(2−4)第2実施形態の変形例
本発明は、前述した第2実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(2−4−1)
前述した第2実施形態では、図17,18に示すように、開口部が車室105に向かっうように菅吸音体30が設けられていた。これに対し、図20に示すように、管吸音体30を、図7(a)に示した、インストルメントパネル基材120の凹部122内において、開口部33がインストルメントパネル200内に向かうように収容させてもよい。このようにすれば、インストルメントパネル200内の音が管吸音体30に吸音されるので、インストルメントパネル200を透過する音のうち、フロントガラス118に反射する音を効率よく吸音することができる。
また、図21(a)に示すように、管吸音体30の開口部33が、スピーカ201,202のスピーカーネットNの内側であって、振動板Dの周りに開口するように設けられていてもよい。この場合、菅吸音体30の複数のパイプ31Aは、スピーカ構造の妨げとならないように配置される。同図(b)は、同図(a)のスピーカ201,202を矢印III方向から見た図で、パイプ31Aの開口部33は、スピーカ201,202内において車室105側に向いており、インストルメントパネル200内の方向に直線状に延びている。この場合において、管吸音体30の形状は述べたものに限らず、インストルメントパネル200内の収容物の妨げになるようであれば、適宜パイプを曲げて、その妨げとならないような方向にパイプ31Aが伸びるようにしてもよい。
また、これと同様にして管吸音体30をパイプの開口部33が冷暖房風吹出口203から車室側を向くように、図示せぬ冷暖房風吹出口203の内側に設けられても良い。
これらの構成によれば、菅吸音体30の開口部33を、目立ち難くすることができる。
(2−4−2)
前述した第2実施形態では、菅吸音体30の一方の端部が開口部33となり、他方の端部が閉塞部32となる、いわゆる閉管であったが、パイプ31の形状はこれに限らない。例えば、各パイプ31の両端部が開かれて開口部32、開口部33(いわゆる開管)をなす管で構成してもよいし、これら閉管と開管とを混合して配置してもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明による第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、インストルメントパネル200に設けられる吸音構造体にヘルムホルツ吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図22は、第3実施形態(インストルメントパネル200にヘルムホルツ吸音体40が設けられる)に係るインストルメントパネル200を図4中の切断線b−bで切断したときの断面図である。
本実施形態に用いられるヘルムホルツ吸音体40は、内部に空間が形成された直方体状の筐体41と、この筐体41のインストルメントパネル200内の側に穿設された挿入孔42に挿入された管状部材43と、を有している。筐体41の内側には密閉空間44が画成され、管状部材43の内側には密閉空間44と車室105とを連通する開口45が形成されている。管状部材43は、インストルメントパネル基材120に穿設された挿通孔120Gにも挿入されている。
筐体41は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)によって直方体状に形成されている。管状部材43は、例えば塩化ビニール製のパイプを使用でき、空気との摩擦が生じやすいように、内面を粗くしておく。このヘルムホルツ吸音体40は、寸法の小さい空洞である密閉空間44の中の空気がバネとして働くことにより、インストルメントパネル200内に発生した音を減衰するように作用する。
このとき、密閉空間44に設けられた小さな開口45がインストルメントパネル200内に通じているため、開口45内の空気の塊をマスとして1質点系バネ・マスモデルが形成される。そして、この系の共振周波数においては、開口45内の空気の塊が車室105の音圧によって振動し、開口45の周壁と空気の塊との摩擦によって、音のエネルギーが熱エネルギーに変換される。つまり、音が減衰される。
いま、開口45の長さをL、開口45の横断面積をS、密閉空間44の容積をV、音速をC、開口45の有効長さをLe(Le≒L+0.8・S1/2)とすると、ヘルムホルツ吸音体40の共鳴周波数f0は、f0=1/2π(C2 S/Le・V)1/2となる。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さLを変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
このように、インストルメントパネル200にヘルムホルツ吸音体40を設けることにより、エンジン音等の比較的周波数の低い騒音は、ヘルムホルツ吸音体40によって効率良く吸音される。
本発明は、前述した第3実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
ヘルムホルツ吸音体40の取り付け構造は、前述した第3実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。また、ヘルムホルツ吸音体40の筐体41をインストルメントパネル基材120と一体形成してもよい。また、第1実施形態の変形例と同じようにして、インストルメントパネル基材120の車室105側(蓋208やインストルメントパネル200の外側)に設けてもよい。
また、ヘルムホルツ吸音体40の筐体41の形状は、直方体に限らず、円柱状等、他の形状であってもよい。
また、管状部材43は、その長さが自在に変えられるよう構成されていてもよい。図23はこの態様の管状部材43の構成の一例を示す図であり、(a)は図23と同じ方向に管状部材43を見たときの断面図であり、(b)は管状部材43を(a)の矢線から見た図である。
同図に示すように、管状部材43は、内管43a及び外管43bからなる。内管43aは、管状の部材で、その外周面に雄螺子を構成する溝が設けられている。この内管43aは、図22と同様にして、インストルメント基材120に穿設された挿通孔120Gに挿入され、インストルメントパネル基材120に回り止めされた状態で固定されている。外管43bは、内径が内管43aのそれよりも大きい管状の部材であり、その内周面に雌螺子を構成する溝が設けられている。管状部材43は、外管43bに対して内管43aがねじ込まれることによって構成されており、管状部材43の全長、すなわち開口45の長さLは、内管43aに対する外管43bのねじ込み具合によって決まる。同図(b)に示すように、外管43bの外周は六角柱状であり、ユーザはスパナ等の工具を用いてねじ込み具合を調整することにより、開口45の長さLを自在に変えることができる。上述したように、ヘルムホルツ吸音体40の共鳴周波数f0は管状部材43の長さによって決まるから、ユーザはいつでも、必要に応じて共鳴周波数f0を調整することができる。
なお、管状部材43の長さを変えるために、内管43a及び外管43bが螺子部材を構成するようにしていたが、3つ以上の螺子部材から構成されていてもよいし、蛇腹状の菅を用いてもよく、管状部材43を伸縮可能にする種々の構成を用いることができる。また、外管43bの外周は六角柱状でなくてもよいが、ユーザが管状部材43の長さを調整しやすいように加工されていることが好ましい。
また、管状部材43の長さの調整を自動化してもよい。この場合、管状部材43の長さを調整する、例えばマイクと、周波数解析装置と、コントローラと、駆動装置かならなる自動調整機構を設ける。自動調整機構にあっては、マイクによって音を収音し、周波数解析装置がこの収音された音を表す信号を解析して、特に騒音が大きい周波数を特定する。コントローラは、特定された周波数に応じたヘルムホルツ吸音体40の管状部材43の長さを算出し、ソレノイド等からなる駆動装置に、その長さに応じた駆動信号を出力する。駆動装置は、駆動信号に応じてヘルムホルツ吸音体40の管状部材43の長さを調整し、特に騒音が大きい周波数の吸音特性が改善されるようにする。なお、管状部材43の長さに応じた駆動をする際に、コントローラはフィードバック制御を行ってもよい。
<第4実施形態>
次に、本発明による第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、インストルメントパネル200に設けられる吸音構造体に板吸音体および管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図24は、第4実施形態に係るインストルメントパネル200の構成を示す図である。このインストルメントパネル200において、インストルメントパネル基材120の凹部122内には板吸音体10が設けられ、その開口部33がデフロスタ吹出口204から車室105を向くように、インストルメントパネル200内に管吸音体30が設けられる。
このように、インストルメントパネル200に板吸音体10および管吸音体30を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態で述べたように、板吸音体10および管吸音体30によって、例えばエンジン音やロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
しかも、2種類の板吸音体10,30を用いることにより、吸音効率を前記各実施形態よりも高めることができる。
なお、吸音体の組み合わせは、この第4実施形態に限らず、板吸音体10、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40との組み合わせであってもよい。
<変形例>
なお、前述した第1〜第4実施形態で、インストルメントパネル200に吸音体を設ける種々の態様について説明したが、吸音体の設置態様は上記で述べたものに限らない。例えばインストルメントパネル200内に収容された各種装置の筐体等に取り付けられる場合も含む。
本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両を示す斜視図である。 車両のシャーシを模式的に示す図である。 インストルメントパネルの外観を示した図である。 第1実施形態に係るインストルメントパネルの構成を示す図である。 インストルメントパネルを上方から見たときの板吸音体群の配置態様を示した図である。 板吸音体群の構造を示す平面図である。 板吸音体の取り付け構造を示す断面図である。 騒音低減効果を調べる実験の結果を示す図である。 変形例(1−3−1)に係るグローブボックスに設けられる、板吸音体群の取り付け構造を模式的に表した図である。 変形例(1−3−1)に係る騒音低減効果を調べる実験の結果を示す図である。 変形例(1−3−1)に係る別の騒音低減効果を調べる実験の結果を示す図である。 変形例(1−3−3)に係る構成を示す図である。 変形例(1−3−4)に係る構成を示す図である。 変形例(1−3−5)に係るインストルメントパネルの外観を示した図である。 変形例(1−3−5)に係るインストルメントパネルの構成を示す図である。 変形例(1−3−7)によるシミュレート結果を示した図である。 第2実施形態に係るインストルメントパネルの構成を示す図である。 第2実施形態に係る菅吸音体の構造を示す図である。 上記管吸音体の原理を示す模式図である。 変形例(2−4−1)に係る構成を示す図である。 変形例(2−4−1)に係る別の構成を示す図である。 第3実施形態における図7(a)と同様の断面図である。 第3実施形態の変形例に係る管状部材の構成を説明する図である。 第4実施形態に係るインストルメントパネルの構成を示す図である。
符号の説明
1…板吸音体群、10…板吸音体、11,41…筐体、12…開口部、120…インストルメントパネル基材、13…振動板、135…表面材、136…音圧透過部、14…空気層、200…インストルメントパネル、201,202…スピーカ、203…冷暖房風吹出口、204…デフロスタ吹出口、205…空調ユニット、206…デフロスタダクト、207…グローブボックス、208…蓋、30…管吸音体、31−1〜31−12…パイプ、32…閉塞部、33…開口部、34…抵抗材、40…ヘルムホルツ吸音体、43…管状部材、44…密閉空間。

Claims (9)

  1. フロントガラスの下方に設けられたインストルメントパネルと、
    前記インストルメントパネルに設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
    ことを特徴とする車体構造体。
  2. 請求項1記載の車体構造体において、
    前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記インストルメントパネルにおける音圧が高い部位に配置される
    ことを特徴とする車体構造体。
  3. 請求項1または2記載の車体構造体において、
    前記吸音構造体は、振動板と、
    該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体である
    ことを特徴とする車体構造体。
  4. 請求項1または2記載の車体構造体において、
    前記吸音構造体は、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体である
    ことを特徴とする車体構造体。
  5. 請求項4記載の車体構造体において、
    前記菅吸音体は、複数の前記空洞を有する
    ことを特徴とする車体構造体。
  6. 請求項4記載の車体構造体において、
    前記菅吸音体は、長さの異なる複数の前記空洞を有する
    ことを特徴とする車体構造体。
  7. 請求項1または2記載の車体構造体において、
    前記吸音構造体は、閉空間と、この閉空間と車室の空間とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体である
    ことを特徴とする車体構造体。
  8. .
    請求項1または2記載の車体構造体において、
    前記吸音構造体は、
    振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体と、
    一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体と、
    閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体との、
    いずれかの吸音体の組み合わせによって構成される
    ことを特徴とする車体構造体。
  9. 車両におけるフロントガラスの下方に設けられたインストルメントパネルであって、
    前記インストルメントパネルの基台をなすインストルメントパネル基材と、
    前記インストルメントパネル基材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
    ことを特徴とするインストルメントパネル。
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