JP5402120B2 - 車体構造体 - Google Patents
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<第1実施形態>
本発明者達は、車室内にこもる音に着目して、車室内における種々の場所における音圧を測定した。その結果、屋根を支える支柱(以下、ピラーという)の部分で、音圧が比較的大きくなっていることを検知した。そこで、このピラーに吸音構造体を設けることに着目した。
(1−1−1)車両
図1は、本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100は車体構造体の基台となるシャーシ110に対してボンネット101、4枚のドア102、トランクドア103が開閉可能に取り付けられる。
図2は、シャーシ110を模式的に示す図である。シャーシ110はベース111と、このベース111から上側に延びる一対のフロントアウタパネル112・センタアウタパネル113・リアアウタパネル120と、アウタパネル112,113,120によって支えられる天井114と、車両100内を車室105とエンジン室106とに分けるエンジン仕切隔壁115と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁116とを有する。
また、ピラーにはフロントピラー、センタピラー、リアピラーがあり、フロントアウタパネル112とインナパネル(図示せず)によってフロントピラーを構成し、センタアウタパネル113とインナパネル(図示せず)によってセンタピラーを構成し、リアアウタパネル120とリアインナパネル130によってリアピラー140を構成する。そして、このリアピラー140は、天井114とリアガラス117支える中空状の支柱となる。また、リアピラー140の空間には、天井114側の電気装置(例えば、アンテナ等)に接続されるケーブルが挿入される場合もある。
本実施形態の特徴は、リアピラー140に箱形の板吸音体10を設けたことにある。なお、図3および図4には、板吸音体10は1個しか図示していないが、実際には、図6に示すように、形状の異なった板吸音体10をリアピラー140に設けるようにしてもよい。
図3は、図1中の矢視III−III方向から見た拡大断面図である。
リアピラー140は、シャーシ110の一部をなすリアアウタパネル120と、このリアアウタパネル120に取り付けられるリアインナパネル130とを具備する。
リアアウタパネル120は、平板部121を有する断面が略台形となった角柱状に形成される。平板部121には、リアインナパネル130を取り付けるためのパネル取付孔122と、板吸音体10を取り付けるための吸音体取付孔123が穿設される(図4、参照)。また、リアアウタパネル120の一端にはリアガラス117が、他端にはドアガラス118が、それぞれシール部材(図示せず)を介して固定される。
次に、板吸音体10の構造について説明する。
板吸音体10は、開口部12を有する矩形状の筐体11と、開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する。筐体11は合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)によって形成され、振動板13は高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)によってシート状に形成される。本発明においては、振動板13は、弾性を有する素材を膜状に形成してもよい。
また、板吸音体10の底部には吸音体取付孔123に挿入される先端が傘状の抜止部15Aとなった取付突起15が突出形成される。この取付突起15を吸音体取付孔123に無理嵌めすることにより、取付突起15の抜止部15Aがリアアウタパネル120の平板部121に係止されることにより、板吸音体10はリアアウタパネル120に対して抜け止めされた状態で固定される。
ここで、板吸音体10の設定条件について説明する。
一般に、板状または膜状の振動体(振動板)と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc
0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さ
をL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
(数3)
0.05≦fa/fb≦0.65
(数4)
0.05≦fa/fb≦0.40
このように、上記した数3,4の条件を満足するように各種パラメータを設定することにより、吸音のピークとなる周波数を低くした吸音体が構成できる。
本実施例による板吸音体10においては、車室105内にこもる音が挿通孔134を通して振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。例えば、板吸音体10の設定を上記パラメータの数値に設定することにより、ロードノイズのような低周波数の音(車室105内の固有振動に対応した音圧が局所的に高くなる音の周波数(500Hz以下))を効率良く吸音することができる。
ここで、比較的低い周波数とは、車室内の固有振動のうちその振動数が最も低い周波数である基本振動の周波数(通常の車室では約80Hz)と、当該車室が拡散音場とみなせる周波数帯域(通常の車室では約500Hz以上の帯域)との間の周波数帯域であって、当該車室において離散的にモードがあるとみなせる周波数をいう。
この図5に示すように、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが0.7〜2.4dB低減され、騒音(ロードノイズ等)が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。
具体的には、図6に示すように、筐体11の大きさの異なった板吸音体10を配置する。各板吸音体10の筐体11の大きさは以下のようになる。
板吸音体10aの筐体:160mm×160mm×20mm
板吸音体10bの筐体:115mm×105mm×30mm
そして、筐体の寸法によって板吸音体10の共振周波数が異なる。例えば、リアピラー140に、寸法の小さい板吸音体10bと寸法の大きい板吸音体10aを配置する。
これにより、タイヤ音等のロードノイズに応じて適した共振周波数を有する板吸音体10を配置することができ、吸音される周波数の範囲を広げることができ、より確実に吸音を行うことができる。
本発明は、前述した第1実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(1−3−1)
この変形例による構成は、リアインナパネルに板吸音体10を設ける一例である。具体的には、図8(a)に示すように、リアインナパネル130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の凹部136を設け、この凹部136内に板吸音体10を挿入する。凹部136の底部に吸音体取付孔136Aを穿設する。板吸音体10の取付突起15が吸音体取付孔136Aに挿入されることにより、板吸音体10は、凹部136内に固定される。
また、図8(b)は、円弧部132´を有するリアインナパネル130´の場合を図示している。
この変形例による構成は、リアインナパネルに板吸音体10を設ける一例であり、リアインナパネル130の一部を板吸音体10とする例である。具体的には、図9(a)に示すように、リアインナパネル130の芯材131に形成した矩形状の凹部136の開口部に直接振動板13を固着し、凹部136と、振動板13と、凹部136および振動板13によって画成される空気層14とによって板吸音体10´を構成する。
また、図9(b)は、円弧部132´を有するリアインナパネル130´の場合を図示している。
この変形例による構成は、リアインナパネルに板吸音体10を設ける一例であり、図10(a)に示すように、リアインナパネル130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の貫通孔137を穿設し、この貫通孔137を塞ぐように板吸音体10がリアアウタパネル120側から接着剤等で固定される。
また、図10(b)は、円弧部132´を有するリアインナパネル130´の場合を図示している。
一方、芯材131に貫通孔137を穿設する代わりに、第1実施形態と同様に、複数個の挿通孔134を穿設し、車室側の音圧を振動板13に伝わるようにしてもよい。
この変形例による構成は、リアインナパネルに板吸音体10を設ける一例であり、図11(a)に示すように、リアインナパネル130の芯材131に段部137Aが形成された矩形状の貫通孔137を穿設し、前記段部137Aに係合する鍔部11Aを板吸音体10の筐体11に形成する。鍔部11Aを段部137Aに係合させることで、板吸音体10が位置決めされる。なお、鍔部11Aと段部137Aとは接着剤等によって固定しても、前述したように、鍔部11Aに取付突起、段部137Aに取付孔を形成して固定してもよい。
また、図11(b)は、円弧部132´を有するリアインナパネル130´の場合を図示している。
この変形例による構成は、リアインナパネルに板吸音体10を設ける一例であり、図12(a)に示すように、リアインナパネル130の芯材131に矩形状の貫通孔137を穿設し、この貫通孔137の周囲から取付突起137Bを突出形成し、この取付突起137Bが挿入される取付孔11Bが穿設された鍔部11Aを板吸音体10の筐体11に形成する。リアインナパネル130の取付突起137Bに板吸音体10の取付孔11Bを挿入することで、リアインナパネル130に対して板吸音体10が固定される。
また、図12(b)は、円弧部132´を有するリアインナパネル130´の場合を図示している。
一方、芯材131に貫通孔137を穿設する代わりに、第1実施形態と同様に、複数個の挿通孔134を穿設し、車室側の音圧を振動板13に伝わるようにしてもよい。
また、変形例(1−3−1)〜(1−3−5)にあっては、リアインナパネル130に板吸音体10を備える構成となっているため、リアアウタパネル120に板吸音体10を取り付けるための構造を形成する必要がないため、既に走行している車両100であっても、リアインナパネル130を交換することで、上記効果を得ることができる。
本発明による構成は、上記実施形態および変形例(1−3−1)〜(1−3−5)に限らず、リアアウタパネル120に板吸音体10が設けられる構造であれば、他の構造であってもよい。
また、板吸音体10の構成は、矩形状の筐体11、筐体11の開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に円形状、多角形状であっても、振動板13に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動板13の中央部に設けるようにしてもよい。
シミュレーションの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、リアピラーに設けられる吸音構造体に管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図14は、第2実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100のリアインナパネル130には、管吸音体30が設けられる。
図15は、管吸音体30の構造を示す図である。説明の都合上、パイプ31の開口部33を揃えて描写しているが、実際には、図14に示すように、リアガラスの傾斜に対して平行となるように配置されている。
そして、管吸音体30を備えたリアインナパネル130をリアアウタパネル120に取り付けることにより、管吸音体30のパイプ31−1〜31−9の開口部がリアガラス側に開口するようになる。
ここでは、空洞の長さL(=パイプの長さ)が0.5m、0.34m、0.2mの3種類のパイプが用いられており、これらはそれぞれ170Hz,250Hz,425Hz(つまり1/3オクターブバンドピッチ)を中心に吸音する(音速=340m/s)。
各パイプ31の開口部33のネック部分(開口部33またはその近傍)は、グラスウール、クロス、ガーゼ等の通気性を有する流れ抵抗材(流れ抵抗を有する材料)34で塞がれている。
次に、管吸音体30による吸音原理について説明する。
図16は、図15に示す管吸音体30のうち隣接する2本のパイプ31−j,31−kを示したものである。各パイプ31−j,31−kの空洞の長さをL1,L2とする。車室105内の音波は、開口部33−j,33−kから空洞内に入射され、他端の閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから再び室内に放出される。このとき、空洞の長さL1,L2の4倍に相当する波長λ1,λ2(L1=λ1/4,L2=λ2/4)の音波が定在波S1,S2を作り、振動を繰り返すうちに空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、この波長λ1,λ2を中心に吸音が行なわれる。例えば、L1=1.35m、L2=0.53mとすると、λ1=5.4m、λ2=2.12mとなり、それぞれで吸音される音波の中心の周波数f1,f2は、f1=63Hz、f2=160Hzとなる。
0.5 0.34 202
0.5 0.2 243
0.34 0.2 314
これによれば、パイプ31−1〜31−9単体での吸音(200,250,315Hzが中心)とあわせて約100〜160Hzの範囲で平均的に吸音力が得られることになる。
このように、リアインナパネル130に管吸音体30を設けることにより、荷室107からトランク仕切隔壁116を抜けてリアガラス117で反射されたタイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、リアピラー140に設けられた管吸音体30により効率良く吸音される。この結果、車室105内の静粛感を高めることができる。
一方、図17(b)に示す管吸音体30Bは、パイプ31の両端を開口部とし、一側の各開口部がリアガラスの傾斜に対して平行になり、他方の各開口部がトランク仕切隔壁116と平行となるようにリアインナパネル130に配置される。
このように、配置することにより、リアピラー140において、音圧が比較的高い部分となる、リアガラス側、或いはトランク仕切隔壁116側に開口部を向かせ、効率よく吸音動作を行わせる。
次に、本発明による第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、リアピラーに設けられる吸音構造体にヘルムホルツ吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さLを変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
次に、本発明による第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、リアピラーに設けられる吸音構造体に板吸音体および管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
このように、リアインナパネル130に板吸音体10および管吸音体30´を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態で述べたように、板吸音体10および管吸音体30´によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
しかも、2種類の吸音体10,30´を用いることにより、吸音効率を前記各実施形態よりも高めることができる。
以上、本発明による実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施可能である。
フロントピラー150は、シャーシ110の一部をなすフロントアウタパネル112と、このフロントアウタパネル112に取り付けられるフロントインナパネル160とを具備する。
この図20に示すように、周波数300〜400Hzの範囲において、騒音レベルが0.4dB低減され、騒音(ロードノイズ等)が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。このように、フロントピラー150に設けられた板吸音体10によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができるという結果を得た。
Claims (7)
- 車両の屋根を支える中空状の支柱と、
前記支柱に該支柱とは別の部材で設けられ、音圧駆動によって吸音を行う板吸音体と、
前記板吸音体と前記支柱とを接合する接合手段と、
を具備する車体構造体において、
前記板吸音体は、開口部を有する筐体と、該開口部で該筐体に支持される振動板と、該筐体内に画成される空気層とを有する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1記載の車体構造体において、
前記接合手段は、前記筐体と前記支柱のいずれか一方に設けられた吸音体取付突起と他方に設けられた吸音体取付孔とからなり、前記吸音体取付孔に前記吸音体取付突起が挿入されることにより前記板吸音体と前記支柱とを接合する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1記載の車体構造体において、
前記支柱は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなすアウタパネルと、該アウタパネルを車室側から覆うインナパネルとを有し、
前記接合手段は、前記インナパネルに設けられた段部と、前記筐体に設けられた鍔部とからなり、前記鍔部が前記段部に係合することにより前記板吸音体と前記支柱とを接合する
ことを特徴とする車体構造体。 - 車両の屋根を支える中空状の支柱と、
前記支柱に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う板吸音体と、
を具備する車体構造体において、
前記板吸音体は、開口部を有する筐体と、該開口部で該筐体に支持される振動板と、該筐体内に画成される空気層とを有し、
前記板吸音体の屈曲系の基本周波数の値をfa、前記板吸音体のバネマス系の共振周波数の値をfbとしたとき、faとfbの比が0.05≦fa/fb≦0.65の関係を満足する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1、2、4のいずれかに記載の車体構造体において、
前記支柱は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなすアウタパネルと、該アウタパネルを車室側から覆うインナパネルとを有する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項3または5に記載の車体構造体において、
前記インナパネルは、パネル取付突起を有し、
前記アウタパネルは、前記パネル取付突起が挿入されるパネル取付孔を有する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項3、5、6のいずれかに記載の車体構造体において、
前記インナパネルは、音圧透過部を有する
ことを特徴とする車体構造体。
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