JP5428170B2 - 車体構造体 - Google Patents
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Description
<第1実施形態>
本発明者達は、車室内にこもる音に着目して、車室内における種々の場所における音圧を測定した。その結果、車室と荷室とを区切る板体としてのトランク仕切板の部分で、音圧が比較的大きくなっていることを検知した。そこで、トランク仕切板に吸音構造体を設けることに着目した。
(1−1−1)車両
図1は、本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100は車体構造体の基台となるシャーシ110に対してボンネット101、4枚のドア102、トランクドア103が開閉可能に取り付けられる。
図2は、シャーシ110を模式的に示す図である。シャーシ110はベース111と、このベース111から上側に延びるフロントピラー112、センターピラー113、リアピラー114と、ピラー112,113,114によって支えられる天井115と、車両100内を車室105とエンジン室106とに分けるエンジン仕切隔壁116と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁120とを有する。
このトランク仕切隔壁120は、図2に示すように、リアシートの背もたれに部分に対向する部分も含むため、断面が略「L」字状に折曲した形状となっている。
なお、以下の説明においては、特に特定しない場合には、トランク仕切隔壁120は、車室105と荷室107とを分ける部分とする。
本実施形態の特徴は、シャーシ110のトランク仕切隔壁120に箱形の板吸音体10を設けたことにある。なお、図3および図4には、板吸音体10は1個しか図示していないが、実際には、図1に示すように、形状の異なった板吸音体10をトランク仕切隔壁120に設けるようにしている。また、板吸音体10の形状は、トランク仕切隔壁120のうち車室105と荷室107とを分ける部分と類似或いは同一の形状としてもよい。
図3は、図2中のa部を拡大した断面図である。トランク仕切隔壁120には、リアパッケージトレイ130が取り付けられて、トランク仕切板140を構成する。
このリアパッケージトレイ130は、例えば木質繊維板によって形成された基台となす芯材131と、音圧透過性を有する布材によって形成され、芯材131の表面を覆う表面材135とを有する。芯材131のうち板吸音体10が対向する部分には矩形状の貫通孔132が形成される。これにより、表面材135のうち、この貫通孔132の部分が車室105側の音圧を板吸音体10に伝達する音圧透過部136となる。なお、貫通孔132は、矩形状に限らず円形でもよく、要は、車室105側の空気を板吸音体10に伝達できればよい。
次に、板吸音体10の構造について説明する。
板吸音体10は、開口部12を有する矩形状の筐体11と、開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する。筐体11は合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)によって形成され、振動板13は高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)によってシート状に形成される。本発明においては、振動板13は、弾性を有する素材を膜状に形成してもよい。
また、板吸音体10の底部にはピン穴124に挿入される樽状のピン15が突出形成される。このピン15をピン穴124に無理嵌めすることにより、ピン15の縮径部分が抜止部125に係止されることにより、板吸音体10は凹部122に対して抜け止めが図られる。
ここで、板吸音体10の設定条件について説明する。
一般に、板状または膜状の振動体と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
空気の密度ρ0 ;1.225[kg/m3]
音速c0 ;340[m/s]
振動体の密度ρ ;1440[kg/m3]
振動体の厚さt ;0.00085[m]
空気層の厚さをL ;0.03[m]
筐体の長さa ;0.3[m]
筐体の長さb ;0.3[m]
振動体のヤング率E ;0.4[GPa]
ポアソン比をσ ;0.4
モード次数 ;p=q=1
本実施例による板吸音体10においては、車室105内にこもる音が音圧透過部136を通して振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。例えば、板吸音体10の設定を上記パラメータの数値に設定することにより、ロードノイズのような低周波数の音(車室105内の固有振動に対応した音圧が局所的に高くなる音の周波数(500Hz以下))を効率良く吸音することができる。
ここで、比較的低い周波数とは、車室内の固有振動のうちその振動数が最も低い周波数である基本振動の周波数(通常の車室では約80Hz)と、当該車室が拡散音場とみなせる周波数帯域(通常の車室では約500Hz以上の帯域)との間の周波数帯域であって、当該車室において離散的にモードがあるとみなせる周波数をいう。
この図5に示すように、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが1〜1.5dB低減され、騒音(ロードノイズ等)が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。
具体的には、図6に示すように、トランク仕切隔壁120の凹部122に筐体11の大きさの異なった板吸音体10を配置する。各板吸音体10の筐体11の大きさは以下のようになる。
板吸音体10aの筐体:300mm×300mm×30mm
板吸音体10bの筐体:300mm×200mm×30mm
板吸音体10cの筐体:200mm×200mm×30mm
これにより、音圧に応じて適した共振周波数を有する板吸音体10を配置することができ、吸音される周波数の範囲を広げることができ、より確実に吸音を行うことができる。
本発明は、前述した第1実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(1−3−1)
この変形例による構成は、図7に示すように、トランク仕切隔壁120の荷室107側に板吸音体10を設けたことにある。具体的には、平板状のトランク仕切隔壁120に複数の挿通孔120Aが形成され、トランク仕切隔壁120の荷室107側の面で、かつ各挿通孔120Aを通して車室105側に振動板13が連通する位置に、板吸音体10が接着剤20等で固定される。複数の挿通孔120Aは、トランク仕切り隔壁120の音圧透過部となる。
この場合、芯材の貫通孔132と、表面材135のうちこの貫通孔132に対応する部分とにより形成されるリアパッケージトレイの音圧透過部136と、複数の挿通孔120Aがトランク仕切り隔壁120に形成されたトランク仕切り壁の音圧透過部136により、車室105側の空気が板吸音体10に伝達されることになる。
この変形例による構成は、図8に示すように、トランク仕切隔壁120の一部を板吸音体10Aの筐体としてしたことにある。具体的には、トランク仕切隔壁120の凹部122の開口部122Aに直接振動板13を固着し、凹部122と、振動板13と、凹部122および振動板13によって画成される空気層14とによって板吸音体10Aを構成する。なお、図7と同様に、表面材135のうちこの貫通孔132に対応する部分が音圧透過部136となる。
この変形例による構成は、図9に示すように、リアパッケージトレイ130の一部を板吸音体10Bの筐体としたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の凹部131Aを形成し、この凹部131Aの開口部131Bに直接振動板13を固着し、凹部131Aと、振動板13と、凹部131Aおよび振動板13によって画成される空気層14によって板吸音体10Bを構造する。なお、トランク仕切隔壁120には凹部131Aに対応する位置が突出する挿通孔120Bが穿設されている。なお、表面材135のうち開口部131Bに対応する部分が音圧透過部136となる。
この変形例による構成は、図10に示すように、板吸音体10をトランク仕切隔壁120に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131に複数の挿通孔131Aを形成する。そして、各挿通孔131Cに振動板13が対向するように、板吸音体10がトランク仕切隔壁120に取り付けられる。一方、表面材135のうち各挿通孔131Cに対向する部分が音圧透過部136が形成される。
なお、スペーサ134は、リアパッケージトレイ130の芯材131と一体に形成しているが、これに限らず、スポンジ等でスペーサを形成し、このスポンジの上下面を、芯材131・トランク仕切隔壁120に接着剤で接着するようにしてもよい。
この変形例による構成は、図11に示すように、板吸音体10をリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131には板吸音体10を収容するための凹部131Dが形成される。
この場合、音圧を透過する材料からなる表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
この変形例による構成は、図12に示すように、板吸音体10Cをリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131には、車室105側に段部131Fを有する矩形状の挿通孔131Eを形成する。
一方、板吸音体10Cは、鍔部15Aを有する矩形状の筐体15と、この筐体15の開口部16を閉塞し、筐体15内に空気層14を画成する振動板13とを有する。そして、板吸音体10Cは、車室105側から芯材131の挿通孔131Eに挿入されることにより、段部131Fに鍔部15Aを一致させて位置決めした状態で、芯材131に固定される。
また、音圧を透過する材料からなる表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
この変形例による構成は、図13に示すように、リアパッケージトレイ130の一部を板吸音体10Bの筐体としたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。
また、リアパッケージトレイ130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の凹部131Aを形成し、この凹部131Aの開口部131Bに直接振動板13を固着し、凹部131Aと、振動板13と、凹部131Aおよび振動板13によって画成される空気層14によって板吸音体10Bを構造する。
なお、表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
この変形例による構成は、図14に示すように、板吸音体10Cをリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、芯材131には、車室105側に段部131Fを有する矩形状の挿通孔131Eを形成され、トランク仕切隔壁120には挿通孔131Eに連通する挿通孔120Bが穿設される。
一方、板吸音体10Cは、鍔部15Aを有する矩形状の筐体15と、この筐体15の開口部16を閉塞し、筐体15内に空気層14を画成する振動板13とを有する。そして、板吸音体10Cは、車室105側から挿通孔131E,120Bに挿入されることにより、段部131Fに鍔部15Aを一致させて位置決めした状態で、芯材131に固定される。
なお、表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
本発明による構成は、上記実施形態および変形例(1−3−1)〜(1−3−8)に限らず、トランク仕切隔壁120に板吸音体10が設けられる構造であれば、他の構造であってもよい。
また、板吸音体10の構成は、矩形状の筐体11、筐体11の開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に円形状、多角形状であっても、振動板13に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動板13の中央部に設けるようにしてもよい。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体に管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図16は、第2実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100のトランク仕切隔壁120の凹部122内には、管吸音体30が設けられる。
図17は、管吸音体30の構造を示す図である。
この管吸音体30は、トランク仕切隔壁120の凹部122内に収容される。管吸音体30は、長さの異なる複数本のパイプ31(31−1〜31−9)を横一列に並べて、相互に連結、或いは別途専用の部材で相互に連結させて一体に構成されている。各パイプ31は、所定の肉厚(例えば、約2mm)および所定の内径(例えば、直径60mm)を有する合成樹脂製等の断面円形の直線状剛性パイプで構成される。各パイプ31の一端部は閉じられて閉塞部32となり、他端部は開かれて開口部33となる。開口部33の位置は各パイプ31で一列に揃えられることにより、開口部33同士が隣接して配置される。
また、トランク仕切隔壁120にリアパッケージトレイ130を取り付けた状態にあっては、各パイプ31の開口部33が車室105側と連通するように、リアパッケージトレイ130には音圧透過部136が形成される(図2、参照)。
ここでは、空洞の長さL(=パイプの長さ)が0.85m,0.68m,0.53mの3種類のパイプが用いられており、これらはそれぞれ100Hz,125Hz,160Hz(つまり1/3オクターブバンドピッチ)を中心に吸音する(音速=340m/s)。
各パイプ31の開口部33のネック部分(開口部33またはその近傍)は、グラスウール、クロス、ガーゼ等の音圧透過性を有する流れ抵抗材(流れ抵抗を有する材料)34で塞がれている。
次に、管吸音体30による吸音原理について説明する。
図18は、図17に示す管吸音体30のうち隣接する2本のパイプ31−j,31−kを示したものである。各パイプ31−j,31−kの空洞の長さをL1,L2とする。車室105内の音波は、開口部33−j,33−kから空洞内に入射され、他端の閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから再び室内に放出される。このとき、空洞の長さL1,L2の4倍に相当する波長λ1,λ2(L1=λ1/4,L2=λ2/4)の音波が定在波S1,S2を作り、振動を繰り返すうちに空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、この波長λ1,λ2を中心に吸音が行なわれる。例えば、L1=1.35m、L2=0.53mとすると、λ1=5.4m、λ2=2.12mとなり、それぞれで吸音される音波の中心の周波数f1,f2は、f1=63Hz、f2=160Hzとなる。
0.85 0.68 111
0.85 0.53 123
0.68 0.53 140
これによれば、各パイプ31−1〜31−9単体での吸音(100,125,160Hzが中心)とあわせて約100〜160Hzの範囲で平均的に吸音力が得られることになる。
このように、トランク仕切隔壁120に管吸音体30を設けることにより、荷室からトランク仕切板を抜けて後部座席付近に伝達されるタイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、管吸音体30によって、効率良く吸音される。管吸音体30によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
次に、本発明による第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体にヘルムホルツ吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さLを変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
次に、本発明による第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体に板吸音体および管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
このように、トランク仕切隔壁120に板吸音体10および管吸音体30を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態で述べたように、板吸音体10および管吸音体30によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
しかも、2種類の吸音体10,30を用いることにより、吸音効率を前記各実施形態よりも高めることができる。
以上、本発明による実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施可能である。
Claims (1)
- 車両を車室と車室外の空間とに仕切る板体と、
前記板体に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う複数の吸音構造体と、
を具備し、
前記複数の吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記車室における音圧が高い部分に配置され、
前記複数の吸音構造体は、それぞれ、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層とを有する板吸音体であり、
当該車体構造体の基台となるシャーシは、前記複数の吸音構造体の一部を構成し、
前記複数の吸音構造体は、それぞれ寸法が異なり、寸法の大きい吸音構造体ほど、前記板体上においてより音圧の高い部位に配置される
ことを特徴とする車体構造体。
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