JP2010047788A - 鉄基合金水アトマイズ粉末とその鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法 - Google Patents

鉄基合金水アトマイズ粉末とその鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形される圧粉磁心の強度が高いという水アトマイズ粉末特有の効果を備えた上で、保磁力と、その保磁力に比例するヒステリシス損を低減することができ、高効率の圧粉磁心を製造することができる鉄基合金水アトマイズ粉末を提供することを課題とする。
【解決手段】Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Feおよび不可避的不純物からなり、その平均結晶粒径が50μm以上であって、表面から10μmの表層領域に存在する、アスペクト比が10以上の窒素化合物の個数が、表層の断面積100μmあたり10個以下である。また、前記各元素の合計含有率は、15at%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、交流で使用されるモータなどの電磁気部品の圧粉磁心等に用いられる鉄基合金水アトマイズ粉末と、その鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法に関するものである。
従来から交流で使用されるモータなどの電磁気部品の磁心には、電磁鋼板や電気鉄板を積層した磁心が用いられていたが、近年は、形状自由度が高く、空間の有効活用による小型化が可能なことから、純鉄粉や軟磁性鉄基合金粉末を圧粉成形した圧粉磁心が用いられるようになってきた。この圧粉磁心には、純鉄粉が用いられることが一般的であるが、より磁気特性に優れる軟磁性鉄基合金粉末の適用も検討されている。その軟磁性鉄基合金粉末の製造には、粉砕のほか、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法などが採用されていた。
通常、ガスアトマイズ法で製造されるガスアトマイズ粉末は球形であり、水アトマイズ法で製造される水アトマイズ粉末は異形状となるが、軟磁性鉄基合金粉末の形状が異形状であると、粉末同士の絡み合いによる効果と接触面積が増える効果により、成形される圧粉磁心の強度が高くなるため、圧粉磁心の製造には水アトマイズ法を用いる方が好ましいといえる。
しかしながら、水アトマイズ粉末は、水でアトマイズを行うプロセスであり、粉末表面に酸化物が生成するため、次工程で、水素などの還元性ガスによる高温での還元処理が必要となる。その際、シールドガスとして窒素ガスが用いられるため、水アトマイズ粉末の合金成分が窒素と反応して、微細な針状の窒素化合物を析出する。その窒素化合物が、磁壁移動の阻害因子となるため、保磁力が高くなり、鉄損、特にヒステリシス損が大きくなる。そのため、強度面からは有利であるはずの水アトマイズ法による粉末は、その一方で、低保磁力の軟磁性鉄基合金粉末を製造することは困難であるという問題を併せ持っていた。
こうした軟磁性鉄基合金粉末、特に磁気特性の向上に効果があるAlやSiを合金元素として含んだ軟磁性鉄基合金粉末を用いて圧粉磁心を製造する技術として、特許文献1、2、3、4に記載された技術が従来から知られていた。特に、特許文献1には水アトマイズ法で軟磁性鉄基合金粉末を製造する技術が、特許文献2にはガスアトマイズ法で軟磁性鉄基合金粉末を製造する技術が記載されているが、その何れもが、強度面或いは低保磁力といった片方の効果は奏しているものの、他方の効果を兼ね備えているものではなかった。
尚、軟磁性鉄基合金粉末中のAlやSiといった合金元素は、雰囲気中に窒素を含むとその粉末中の特に表面付近に、微細な針状の窒素化合物を析出する。この窒素化合物が、磁壁移動を阻害するピンニングサイトとなり、軟磁性鉄基合金粉末の磁気特性、特に保磁力を悪化させる原因となっている。
特公平6−82577号公報 特公平7−50648号公報 特開昭62−222002号公報 特開昭58−221204号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、成形される圧粉磁心の強度が高いという水アトマイズ粉末特有の効果を備えた上で、保磁力と、その保磁力に比例するヒステリシス損を低減することができ、高効率の圧粉磁心を製造することができる鉄基合金水アトマイズ粉末を提供することを課題とするものである。
また、還元工程における窒素化合物の生成の抑制によって、製造する鉄基合金水アトマイズ粉末の保磁力を低減させることで、製造される鉄基合金水アトマイズ粉末の磁気特性を向上させることができる鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Feおよび不可避的不純物からなり、その平均結晶粒径が50μm以上であって、表面から10μmの表層領域に存在する、アスペクト比が10以上の窒素化合物の個数が、表層の断面積100μmあたり10個以下であることを特徴とする鉄基合金水アトマイズ粉末である。
請求項2記載の発明は、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素の合計含有率は、15at%以下であることを特徴とする請求項1記載の鉄基合金水アトマイズ粉末である。
請求項3記載の発明は、表面に絶縁被膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の鉄基合金水アトマイズ粉末である。
請求項4記載の発明は、前記絶縁被膜は、リン酸を主成分とする被膜、シリコーン樹脂被膜、或いはリン酸を主成分とする被膜とシリコーン樹脂被膜で成る二層の被膜であることを特徴とする請求項3記載の鉄基合金水アトマイズ粉末である。
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法であって、合金元素の窒素化合物の標準生成自由エネルギー以下の雰囲気で還元焼鈍を行い、鉄基合金水アトマイズ粉末を得ることを特徴とする鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法である。
本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末によると、成形される圧粉磁心の強度が高いという水アトマイズ粉末特有の効果を備えた上で、保磁力と、その保磁力に比例するヒステリシス損を低減することができ、高効率の圧粉磁心を製造することができる。特に、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素の合計含有率を15at%以下に止めることで、これらの効果を備えた上で、磁性を担うFe原子の量の減少や、製造される圧粉磁心の密度低下による、磁束密度の低下を防ぐことができる。
また、表面に絶縁被膜を形成することで、電気絶縁性を確保することができ、渦電流損の増大を抑止することができる。また、絶縁被膜を、リン酸を主成分とする被膜とすることで、電気絶縁性を更に向上させることができ、また、シリコーン樹脂被膜を形成することで、絶縁被膜の熱的安定性を向上させ、高温での熱処理が可能になる。
また、本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法によると、還元工程において窒素化合物の生成を抑制することができ、その窒素化合物の生成の抑制によって、製造される鉄基合金水アトマイズ粉末の保磁力を低減させることができ、鉄基合金水アトマイズ粉末の磁気特性を向上させることができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末は、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Feおよび不可避的不純物からなる。
FeへのAl、Si、Ti、Cr、MoおよびGeといった合金元素の添加は、結晶磁気異方性定数を低下させ、保磁力を低減させることができ、それに伴いヒステリシス損を低減できるという効果がある。この結晶磁気異方性定数を低下させるという作用を出現させるためには、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeといった合金元素の添加量は、少なくとも1at%以上とすることが望ましい。しかしながら、それらの添加量が多すぎると、磁性を担うFe原子の量が少なくなり、飽和磁束が低下する。また、固溶強化によって粉末が硬くなりすぎ、圧縮成形後の圧粉磁心の密度低下を引き起こすことにもなる。その結果、圧粉磁心の飽和磁束密度が低下することとなるので、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeといった合金元素の添加量は、15at%以下とする必要がある。
また、本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末の平均結晶粒径は、50μm以上とする必要がある。その平均結晶粒径が50μm未満であると、結晶粒界が増え、ヒステリシス損が増大するので好ましくない。
尚、平均結晶粒径が50μm以上の鉄基合金水アトマイズ粉末を得るためには、まず、篩に通すことで微細な粉末を除去する方法がある。日本粉末治金工業会で規定される「金属粉のふるい分析試験方法」(JPMA P02−1992)には、目開きが、250μm、180μm、150μm、106μm、75μm、63μm、45μmの篩を用いて分級する方法があるが、例えば、目開き63μmの篩に通した後、その篩上に残った粉末を採取することで、微細な粒子径の粉末を除去することができる。更に高温、例えば変態温度を超えない変態点直下の温度で長時間焼鈍することにより結晶粒を成長させ、粗大化することができる。この方法で得られた粉末の平均粒径は50μm以上である。
鉄基合金水アトマイズ粉末の平均結晶粒径は以下に示す手順で測定することができる。鉄基合金水アトマイズ粉末を樹脂に埋め込み、これを切断して鉄基合金水アトマイズ粉末の断面を露出させ、その断面を鏡面研磨した後、ナイタールでエッチングし、その断面を光学顕微鏡で例えば100〜400倍で観察撮影した写真から対象となる結晶粒をトレースして画像解析する。画像解析は、画像処理プログラム「Image−Pro Plus」(米国 Media Cybernetics製)を用い、解析対象とするオブジェクトの重心を求め、この重心を通るように、そのオブジェクト上に直線を引き、オブジェクトの外周線との交点間距離を測定し、それを2度刻みに180点測定し、その測定結果を平均したものを平均結晶粒径とする。
尚、平均結晶粒径を測定するための鉄基合金水アトマイズ粉末の個数は少なくとも50個とする。平均結晶粒径を測定するための鉄基合金水アトマイズ粉末の個数は、できるだけ多い方が良く、60個以上や70個以上であっても良い。従って、結晶粒径を測定する個数も同様に少なくとも50個とする。当然、60個以上や70個以上であっても良い。測定した結晶粒径の個数平均を平均結晶粒径とする。
鉄基合金水アトマイズ粉末の表面から10μm以内の表層領域に存在する窒素化合物の個数を本発明の要件としたのは、還元焼鈍の際に、Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeといった合金成分が雰囲気中の窒素と反応して形成されるが、窒素の拡散が早いため、粉末の表層付近を評価することで、粒子内部全体の窒化物の存在を評価できるからである。従って、表面から10μm以内の表層領域に存在する窒素化合物の個数を本発明の要件とした。
窒素化合物は微細な針状であるため、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した際の形状が、アスペクト比(長径/短径)が10以上であれば、窒素化合物であると判断することができる。よって、本発明では、走査型電子顕微鏡(SEM)で、アスペクト比(長径/短径)が10以上と確認できたものは、窒素化合物であると判断した。
表面から10μmの表層領域に存在する窒素化合物の個数が、その領域における断面積100μmあたり10個以下であるという要件を、本発明の要件としたのは、後記する実施例でも明らかなように、磁壁移動を阻害するピンニングサイトである窒素化合物の数が10個以下であれば、還元後の鉄基合金水アトマイズ粉末の保磁力を、適正な保磁力とすることができるからである。尚、窒素化合物の数を10個以下とするには、窒素濃度を100ppm以下とするのが望ましい。
このような鉄基合金水アトマイズ粉末の原粉末は、水アトマイズ法により製造することができる。水アトマイズ法とは、金属を高周波誘導炉や電気炉等で溶解後、タンディッシュの底のノズルから流出する溶湯に、水のジェット流を吹き付けて溶湯を粉砕して液滴として凝固させて金属粉末(原粉末)を得る方法である。尚、水アトマイズ粉末の原粉末は、水でアトマイズして製造されるため、脱水乾燥した後に、水素などの還元性ガスや真空中で高温で還元処理する必要がある。その還元処理後に解砕すれば、本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末を得ることができる。
本発明の鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法は、真空或いは還元性ガスによる高温での還元処理は、合金元素の窒素化合物の標準生成自由エネルギー以下に雰囲気を制御することで還元焼鈍を行うことで実施される。尚、一般に還元性ガスである水素気流中では、シールドガスとして窒素ガスを用いることが多く、その窒素ガスが合金元素と反応して窒素化合物を析出することとなる。特に、窒素化合物を生成しやすい400℃以上で窒素ガス雰囲気とすることは、合金元素の窒素化合物の標準生成自由エネルギー以下の雰囲気とならないので好ましくはない。
前記したように、還元処理は高温で行われるが、その熱処理温度は、結晶粒の成長が起こる温度に設定すれば良く、特に限定はされないが、例えば600〜1100℃程度の熱処理温度とすれば良い。600℃未満では、結晶粒の成長に時間がかかり過ぎるため好ましくはない。一方、1100℃を超えると、短時間で結晶粒が成長するため結晶粒は粗大化するが、結晶粒の成長に伴い焼結も進むため、還元処理後の解砕に多大なエネルギーを必要とし、好ましくはない。
熱処理時間も同様に特に限定はされないが、結晶粒の結晶粒径が所望の大きさに成長する範囲で設定すれば良く、例えば、30分〜5時間とすれば良い。
このような鉄基合金水アトマイズ粉末の表面には、絶縁被膜を形成することが望ましい。この絶縁被膜としては、リン酸系化成被膜等のリン酸を主成分とする被膜やクロム系化成被膜などの無機物、或いは様々な樹脂を用いて形成することができる。樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンなどのオレフィン樹脂、カーボネート樹脂、ケトン樹脂、フッ化メタクリレートやフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、PEEKなどのエンジニアリングプラスッチックまたはその変性品などを被膜として用いることができる。
このような絶縁被膜の中でも、リン酸系化成被膜を形成することが推奨される。リン酸系化成被膜は、オルトリン酸(HPO)などの化成処理によって生成するガラス状の被膜であり、特に電気絶縁性に優れている。このリン酸系化成被膜の膜厚は1〜250nmが好ましい。膜厚が1nmより薄いと絶縁効果が発現し難く、250nmを超えると絶縁効果が飽和する上、成形される圧粉磁心の高密度化を阻害するためである。また、その付着量は、0.01〜0.8質量%程度が好ましい。尚、リン酸系化成被膜には、Na、S、Si、W、Mg、B、Co等の元素を含有させることができる。これらの元素は、リン酸系化成被膜中の酸素が高温での歪取焼鈍中にFeと半導体を形成することを阻害し、歪取焼鈍による被抵抗の低下を抑制するのに有効に作用する。
鉄基合金水アトマイズ粉末の表面に、リン酸系化成被膜を形成するには、水性溶媒にオルトリン酸(HPO)などを溶解して、固形分0.1〜10質量%程度の処理液とし、鉄基合金水アトマイズ粉末:100質量部に対して、その処理液を1〜10質量部添加して、ミキサー、ボールミル等の混合機で混合し、大気中、減圧下、或いは真空下で、150〜250℃で乾燥すれば形成できる。
また、このリン酸系化成被膜の表面に、シリコーン樹脂被膜が形成されていることが推奨される。シリコーン樹脂被膜は単独で形成しても良いが、電気絶縁性の熱的安定性を向上させる上に、成形される圧粉磁心の機械的強度も高めるという作用を有する。このシリコーン樹脂としては、硬化が遅くなると粉末がべとついて被膜形成後のハンドリング性が悪くなる二官能性のD単位(RSiX:Xは加水分解性基)よりは、三官能性のT単位(RSiX:Xは加水分解性基)を多く含有する方が好ましい。また、四官能性のQ単位(SiX:Xは加水分解性基)が多く含まれていると、予備硬化の際に粉末同士が強固に結着してしまい、後の成形が行えなくなるので好ましくない。よって、T単位が60モル%以上、好ましくは80モル%以上、最も好ましくは全てがT単位のシリコーン樹脂被膜が形成されていることが推奨される。尚、シリコーン樹脂としては、前記Rがメチル基またはフェニル基となっているメチルフェニルシリコーン樹脂が一般的である。
このシリコーン樹脂被膜の膜厚は1〜200nmが好ましい。より好ましい膜厚は1〜100nmである。また、その付着量は、リン酸系化成被膜が形成された鉄基合金水アトマイズ粉末と、シリコーン樹脂被膜の合計を100質量%としたとき、0.05〜0.3質量%であることが好ましい。0.05質量%より少ないと絶縁性に劣り、0.3質量%より多いと圧粉磁心の高密度化ができにくくなる。
また、シリコーン樹脂被膜とリン酸系化成被膜を合わせた厚みは250nmであることが好ましい。合計膜厚が250nmを超えると磁束密度の低下が大きくなることがある。尚、リン酸系化成被膜をシリコーン樹脂被膜より厚めに形成すれば、鉄損を小さくすることができる。
リン酸系化成被膜の表面に、シリコーン樹脂被膜を形成するには、アルコール類やトルエン、キシレン等の石油系有機溶剤などにシリコーン樹脂を溶解させて、固形分が2〜10質量%になるように調製した樹脂溶液を、リン酸系化成被膜が表面に形成された鉄基合金水アトマイズ粉末:100質量部に対して、その樹脂溶液を0.5〜10質量部添加して、混合して乾燥すれば形成できる。
Al、Si、Ti、Cr、Moの何れかを添加元素とした粒子径が75〜106μmの鉄基合金水アトマイズ粉末の原粉末を、還元温度:800℃、還元時間:30分で還元処理した。実施例では、還元焼鈍雰囲気を一度1.3×10−3Pa真空に引き、800℃で99.9%以上の純度の高純度水素ガスを用いて30分還元して窒素化合物の標準生成自由エネルギー以下の雰囲気とした。これに対し、比較例では、Hガス:90vol%、Nガス:10vol%の混合ガス雰囲気とした。
粒子径が75〜106μmの鉄基合金水アトマイズ粉末を得るためには、まず、鉄基合金水アトマイズ粉末を、日本粉末治金工業会で規定される「金属粉のふるい分析試験方法」(JPMA P02−1992)に示された目開き106μmの篩に通し、通過した粉末を、更に目開き75μmの篩に通し、その篩上に残った粉末を採取することで、得ることができる。尚、この試験で、実施例、比較例共に、粒子径が75〜106μmの鉄基合金水アトマイズ粉末を用いたのは、粒子径が保磁力に与える影響を除外するためである。
これらの鉄基合金水アトマイズ粉末を、φ5.6mm×厚み4.0mmの円柱状容器に約0.1g充填し、その原粉末を瞬間接着剤で固定したものを試験片とし、理研電子製の振動試料型磁力計「BHV−5」を用いて、設定温度を25℃、最大印加磁場(B)を50Oe、Sweep Speedを5min/loopとして、還元処理後の鉄基合金水アトマイズ粉末の保磁力を測定した。尚、コイルはヘルムホルツコイルを使用した。測定結果を表1に示す。合格判定基準は、保磁力が1.0Oe未満であったものを合格(○)とし、1.0Oe以上のであったものを不合格(×)とした。
また、この測定に併せ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて鉄基合金水アトマイズ粉末の写真撮影を行い、析出したアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数を調べた。調査の対象は、各鉄基合金水アトマイズ粉末の表層の断面積100μmあたりの、表面から10μmの表層領域に存在するアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数である。
Figure 2010047788
実施例1〜9の何れもが、測定された保磁力は1.0Oe未満であった。また、表層の断面積100μmあたりの、表面から10μmの表層領域に存在するアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数は、全て10個以下であった。この試験結果により、鉄基合金水アトマイズ粉末の表層の断面積100μmあたりの、表面から10μmの表層領域に存在するアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数が10個以下であれば、適正な保磁力とすることができることが確認できた。尚、図1に実施例1の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真を示す。
これに対し、比較例10〜18では、測定された保磁力は全て1.0Oe以上であった。また、表層の断面積100μmあたりの、表面から10μmの表層領域に存在するアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数も、全て10個を超えていた。この結果から、鉄基合金水アトマイズ粉末の表層の断面積100μmあたりの、表面から10μmの表層領域に存在するアスペクト比(長径/短径)が10以上の窒素化合物の個数が10個を超えれば、保磁力が高くなり不適正になることが分かる。尚、図2に比較例10の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真を示す。
実施例1の鉄基合金水アトマイズ粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真である。 比較例10の鉄基合金水アトマイズ粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真である。

Claims (5)

  1. Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Feおよび不可避的不純物からなり、
    その平均結晶粒径が50μm以上であって、表面から10μmの表層領域に存在する、アスペクト比が10以上の窒素化合物の個数が、表層の断面積100μmあたり10個以下であることを特徴とする鉄基合金水アトマイズ粉末。
  2. Al、Si、Ti、Cr、MoおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の元素の合計含有率は、15at%以下であることを特徴とする請求項1記載の鉄基合金水アトマイズ粉末。
  3. 表面に絶縁被膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の鉄基合金水アトマイズ粉末。
  4. 前記絶縁被膜は、リン酸を主成分とする被膜、シリコーン樹脂被膜、或いはリン酸を主成分とする被膜とシリコーン樹脂被膜で成る二層の被膜であることを特徴とする請求項3記載の鉄基合金水アトマイズ粉末。
  5. 請求項1または2記載の鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法であって、合金元素の窒素化合物の標準生成自由エネルギー以下の雰囲気で還元焼鈍を行い、鉄基合金水アトマイズ粉末を得ることを特徴とする鉄基合金水アトマイズ粉末の製造方法。
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