JP2010040439A - リチウム電池 - Google Patents

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健太郎 吉田
Ryoko Kanda
良子 神田
Mitsuyasu Ogawa
光靖 小川
Taku Kamimura
卓 上村
Yukihiro Ota
進啓 太田
Katsuji Emura
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Abstract

【課題】固体電解質を用いながらも、高容量で生産性に優れ、充放電に伴い性能の劣化し難いリチウム電池を提供する。
【解決手段】正極層13と、負極層14と、これら両層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する硫化物固体電解質層(SE層)15とを備える。この電池1は、正極層13とSE層15との間に、これら両層の界面近傍におけるリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層16を備える。そして、緩衝層16により正極層13が被覆されている領域の面積をSc、緩衝層16により正極層13が被覆されていない領域の面積をSuとした場合、ScとSuが0.000001<Su/(Sc+Su)<0.001を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、硫化物固体電解質層を備えるリチウム電池に関するものである。
携帯機器といった比較的小型の電気機器の電源に、リチウムイオン二次電池(以下、単にリチウム電池と呼ぶ)が利用されている。リチウム電池は、正極層と負極層と、これらの層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する電解質層とを備える。
近年、このリチウム電池として、正・負極層間のリチウムの伝導に有機電解液を用いない全固体型リチウム電池が提案されている。全固体型リチウム電池は、電解質層として固体電解質層を使用しており、有機溶媒系の電解液を用いることに伴う問題、例えば、電解液の漏れによる安全性の問題、高温時に有機電解液がその沸点を超えて揮発することによる耐熱性の問題などを解消することができる。この固体電解質層には、リチウムイオン伝導性が高く、絶縁性に優れる硫化物系の物質が広く利用されている。
上述した利点を有する一方で、固体電解質層を用いた全固体型リチウム電池は、有機電解液を使用したリチウム電池と比較して、容量が低い(即ち、出力特性が悪い)という問題を有していた。このような問題点の原因は、リチウムイオンが、固体電解質層の硫化物イオンよりも正極層の酸化物イオンに引き寄せられ易いため、硫化物固体電解質層の正極層側領域に、リチウムイオンが欠乏した層(空乏層)が形成されるためである(非特許文献1を参照)。この空乏層は、リチウムイオンが欠乏しているために電気抵抗値が高く、電池の容量を低下させる。
このような問題点を解決する技術として、非特許文献1では、正極活物質粒子の表面にリチウムイオン伝導性の酸化物をコーティングしている。このコーティングにより、リチウムイオンの移動を抑制し、硫化物固体電解質層において空乏層が形成されることを抑制することで、リチウム電池の出力特性の向上を実現している。
一方、特許文献1には、全固体型リチウム電池における負極層の材料として、例えば、グラファイト、ハードカーボンなどの炭素材料や、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx(0<X<2))、スズ合金、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、Li金属、リチウム合金(例えば、LiAl)などを利用できることが開示されている。
Advanced Materials 2006.18,2226−2229 特開2004−335455号公報
しかし、上記非特許文献1のリチウム電池は、生産性が悪いため、近年の携帯機器の発達に伴うリチウム電池の需要拡大に対して不利である。具体的には、この文献では、静電噴霧法により活物質粒子の表面にコーティングを形成しているが、この静電噴霧法によるコートは、技術的に難しく、また煩雑である。つまり、この文献に記載されるリチウム電池は、生産コストが高く、生産効率も悪いので、リチウム電池の需要拡大の要請に応えることが難しい。
また、特許文献1のリチウム電池を含む全固体型リチウム電池では、一般的に、電池の充放電に伴い電池の容量が低下するという問題もある。例えば、シリコン材料からなる負極層は、電池の充放電に伴う体積変化が大きいため、負極層が固体電解質層から剥離して容量の低下が起こる虞がある。その他、Li自身やLi合金で負極層を形成する場合、負極層と固体電解質層との界面で、電池の充電時にはLiの析出が生じ、放電時にはLiが溶解することを繰り返すため、負極層と固体電解質層との接合を保持することが困難になる。このように負極層と固体電解質層との接合が途切れてしまうと、電池の実効面積が減少して、電池の容量が低下することになる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、硫化物固体電解質を利用したリチウム電池であっても、放電容量の低下し難いリチウム電池を提供することにある。また、本発明の他の目的は、電池の充放電を繰り返しても、負極層と固体電解質層との接合を維持することができ、放電容量の低下し難いリチウム電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが種々検討した結果、正極層と硫化物固体電解質層との界面に緩衝層を形成することで、正極層と硫化物固体電解質層との界面近傍における空乏層の形成を抑制できることを見いだした。
さらに、本発明者らが、緩衝層の形成条件を種々検討した結果、固体電解質層に対向する正極層の一面を覆う緩衝層の面積の割合を規定することにより、固体電解質層からの負極層の剥離をも防止できることを見いだした。通常、正極層と固体電解質層との間で空乏層の形成を抑制するという観点からすれば、正極層の一面を緩衝層により完全に覆ってしまうことが好ましい。しかし、本発明者らの検討の結果によれば、正極層は緩衝層により完全に覆ってしまうよりも、緩衝層に覆われていない部分を有する方が、固体電解質層を挟んで正極層とは反対側にある負極層が、固体電解質層から剥離することを防止できることが明らかになった。緩衝層による正極層の被覆の割合を規定することで負極層の剥離を防止できる理由は以下のように推察される。
緩衝層で被覆されている正極層の領域では、空乏層の形成が抑制されるため、緩衝層で被覆されていない正極層の領域よりもイオンの移動抵抗が小さくなる。このイオンの移動抵抗の面内分布は、充放電電流に面内分布を生じさせ、その結果、充放電に伴う負極層の体積変化にも面内分布を生じさせる。この面内分布が生じることにより、負極層内部の応力を緩和させる何らかの作用が生じ、ひいては負極層と固体電解質層との間に作用する応力が緩和され、固体電解質層からの負極層の剥離が抑制されるのではないかと考えられる。
以上の知見に基づいて本発明を以下に規定する。
本発明リチウム電池は、正極層と、負極層と、これら両層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する硫化物固体電解質層とを備える。この電池は、正極層と硫化物固体電解質層との間に、これら両層の界面近傍におけるリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層を備える。そして、緩衝層により正極層が被覆されている領域の面積をSc、緩衝層により正極層が被覆されていない領域の面積をSuとした場合、ScとSuが0.000001<Su/(Sc+Su)<0.001を満たすことを特徴とする。
正極層と硫化物固体電解質層との間に緩衝層を設けることにより、硫化物固体電解質層における空乏層の形成を抑制することができるので、有機電解液を使用した従来のリチウム電池に匹敵する容量を備えるリチウム電池とすることができる。
また、正極層を覆う緩衝層の割合を上記範囲とすることにより、固体電解質層からの負極層の剥離を防止することができるので、充放電に伴う容量の低下が生じ難いリチウム電池、即ち、サイクル特性に優れたリチウム電池とすることができる。
以下、本発明のリチウム電池の好ましい態様について説明する。
<緩衝層>
本発明のリチウム電池に備わる緩衝層の材料としては、LiLa(2−X)/3TiO(X=0.1〜0.5)、Li7+XLaZr12+(X/2)(−5≦X≦3)、LiTi12、Li3.6Si0.60.4、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、Li1.8Cr0.8Ti1.2(PO)、Li1.4In0.4Ti1.6(PO)、LiTaOおよび、LiNbOの少なくとも一種以上を挙げることができる。特に、緩衝層はLiNbOからなることが好ましい。緩衝層として、LiNbOを使用するので、空乏層の形成を抑制しつつ、リチウム電池の容量を向上させることができる。ところで、緩衝層は、空乏層の形成を抑制し電池の性能を向上させることができる一方で、電池の内部抵抗を増加させる要素でもあるが、上記化合物はリチウムイオン伝導度に優れるので、電池の内部抵抗を大幅に増加させることがない。
<正極層>
本発明リチウム電池に備わる正極層は、Mn,Fe,CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとを含む酸化物を含有することが好ましい。特にLiCoOを含む正極層とすると、リチウム電池の性能を向上させることができる。
<負極層>
本発明リチウム電池に備わる負極層は、リチウム金属やリチウム合金、あるいは炭素やシリコンなどの周期律表第14族元素などで形成することができる。本願発明のリチウム電池では、特に、周期律表第14族元素、なかでもSiを使用することが好ましい。第14族元素を含有する負極層とすると、容量の高いリチウム電池とすることができるし、リチウム系の負極層とした場合のリチウムの析出と溶解による負極層の剥離の問題も生じ難い。このような負極層は、気相法で形成すると、非常に薄くすることができるので、充放電に伴い負極層に生じる応力を小さくすることができる。また、気相法によれば、固体電解質層に対する負極層の密着性を向上させることができる。
<固体電解質層>
本発明リチウム電池に備わる固体電解質層としては、LiとPとを含有するものが好ましい。特に、LiSとPとからなるLi−P−Sで構成した固体電解質層とすると、この固体電解質層と負極層との間の界面抵抗値を低下させることができ、その結果、電池の性能を向上させることができる。
本発明リチウム電池は、正極層と固体電解質層との間に緩衝層が配置されていることにより、固体電解質層における空乏層の形成が抑制されており、その結果、従来の全固体型電池よりも容量が高く、有機電解液を使用した従来の電池に匹敵する容量を備える。また、本発明リチウム電池は、正極層、緩衝層および負極層の厚さが規定されていることにより、内部抵抗の増加が抑制されており、その結果、放電特性に優れる。
以下、一般的なコインセル型のリチウム電池を例にして本発明の実施形態を説明する。
≪全体構成≫
図1は、本実施の形態におけるリチウム電池の縦断面図である。このリチウム電池1は、正極集電体層11の上に、正極層13、緩衝層16、固体電解質層(SE層)15、負極層14、負極集電体層12の順に積層された構成を有している。
≪各構成部材≫
(正極集電体層)
正極集電体層11は、所定の厚さを有する金属製の薄板であり、後述する各層を支持する基板の役割を兼ねている。正極集電体層11としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレスから選択される1種が好適に利用できる。なお、絶縁性の基板上に金属膜を形成し、この金属膜を正極集電体層11としても良い。
(正極層)
正極層13は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層である。特に、Mn,Fe,CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとを含む酸化物、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiCo0.9Al0.1またはLiNi0.5Mn0.5、若しくはこれらの混合物を好適に使用することができる。このような正極層13の平均厚さは、0.2〜20μm程度とすると良い。平均厚さは、異なる3点以上の膜厚の平均を利用すれば良い(正極層13以外の層でも同じ)。なお、正極層13は、さらに導電助剤(例えば、カーボンブラックや金属繊維など)を含んでいても良い。
(負極集電体層)
負極集電体層12は、負極層14の上に形成される金属膜である。負極集電体層12としては、Cu、Ni、Fe、Cr、及びこれらの合金から選択される1種が好適に利用できる。
(負極層)
負極層14は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。例えば、負極層14として、Li金属及びLi金属と合金を形成することのできる元素よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物又は合金が好適に使用できる。Liと合金を形成することのできる元素としては、C、Si、Sn、Pbなどの周期律表第14族元素、特にSiを利用することが好ましい。このような負極層14の平均厚さは、0.3〜8μm程度とすると良い。なお、負極層14自体に集電体としての機能を持たせてもかまわない。
(固体電解質層)
固体電解質層(SE層)15は、硫化物で構成されるリチウムイオン伝導体である。このSE層15は、リチウムイオン伝導度(20℃)が10-5S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.999以上であることが好ましい。また、SE層15は、電子伝導度が10-8S/cm以下であることが好ましい。SE層15の材質としては、硫化物、例えば、Li、P、S、OからなるLi−P−S−Oや、LiSとPとからなるLi−P−Sのアモルファス膜あるいは多結晶膜などで構成することが好ましい。特に、LiSとPとからなるLi−P−Sで構成したSE層とすると、このSE層15と負極層14との間の界面抵抗値を低下させることができ、その結果、電池の性能を向上させることができる。SE層15のLi/Pの範囲は、1.2〜4.0が好ましい。より好ましい範囲は、1.9〜3.7である。また、SE層15の平均厚さは、2〜20μm程度とすると良い。
(緩衝層)
緩衝層16は、上記SE層15から正極層13にリチウムイオンが大量に移動することを防止して、SE層15と正極層13との界面において電荷の偏りを緩衝し、この界面近傍のSE層15に空乏層が生じることを防止する層である。緩衝層16は、酸化物からなることが好ましく、具体的には、LiLa(2−X)/3TiO(X=0.1〜0.5)、Li7+XLaZr12+(X/2)(−5≦X≦3)、LiTi12、Li3.6Si0.60.4、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、Li1.8Cr0.8Ti1.2(PO)、Li1.4In0.4Ti1.6(PO)、LiTaOおよび、LiNbOなどを単独あるいは組み合わせて使用できる。このような緩衝層16の平均厚さは、2〜40nm程度とすると良い。
上段に列挙した緩衝層を構成するための化合物の一部、例えば、LiLa(2−X)/3TiO(X=0.1〜0.5)、LiNbO、LiTaOは、アモルファスの状態とすると、リチウムイオン伝導度が向上する。上記酸化物の中でも、LiNbOは、アモルファスの状態でリチウムイオン伝導度が10-5S/cm以上という非常に優れたリチウムイオン伝導性を有する。
緩衝層16による正極層13の被覆割合は、緩衝層16により正極層13が被覆されている領域の面積をSc、被覆されていない領域の面積をSuとしたときに、Su/(Sc+Su)が0.000001超、0.001未満とする。Su/(Sc+Su)が下限以下であれば、負極層14とSE層15との界面に作用する応力が緩和されず、SE層15から負極層14が剥離し易い。Su/(Sc+Su)が上限以上であれば、緩衝層16により覆われていない領域が大きいため(Suが大きいため)、電池の充放電に伴い正極層13とSE層15との界面近傍における空乏層の形成が顕著になり、電池が駆動しなくなる虞がある。より好ましいSu/(Sc+Su)の範囲は、0.000002以上0.0005以下、さらに好ましいSu/(Sc+Su)の範囲は、0.000005以上0.00001以下である。
正極層13における緩衝層16の非形成領域は、正極層13の面全体に分散して存在することが好ましい。例えば、Suの1/100〜1/200ぐらい微小な緩衝層16の非形成領域が、正極層13の全面にほぼ均等に配置されていると良い。
≪本発明リチウム電池の効果≫
以上の構成を備えるリチウム電池1は、正極層13とSE層15との間に緩衝層16を設けるだけで、正極層13とSE層15との界面近傍におけるリチウムイオンの偏りを抑制し、SE層15において空乏層が形成されることを抑制することができる。また、正極層13を覆う緩衝層16の面積割合を規定することにより、充放電に伴うSE層15からの負極層14の剥離を防止することができ、その結果、放電特性に優れたリチウム電池1とすることができる。
以下、実施の形態において説明した構成のコインセル型のリチウム電池(試料1〜8)を実際に作製し、電池における種々の抵抗値を測定することで電池の性能を評価した。
正極集電体層11として、平均厚さ100μmのSUS316Lからなる8つの薄板を用意した。この薄板は、各層を支持する基板の役割も兼ねる。
電子ビーム蒸着法により、正極集電体層11の上にLiCoOからなる正極層13を形成した。電子ビーム蒸着法は、蒸発源としてLiCoO粉末とCo粉末の混合原料を用いて実施した。正極層13の平均厚さは、1μmであった。
この正極層13の上に緩衝層16を形成する前に、正極層13の表面に対してArイオンミリング処理を行った。Arイオンミリング処理は、圧力1PaのAr雰囲気下で200Wの電力を投入して発生させたArプラズマにより、正極層13の表面を平滑にする処理である。このミリング処理の時間を8段階に変化させることで、緩衝層16を形成する側の表面粗さが異なる8種類の正極層13を作製した。表面粗さは、正極層13の断面を走査型顕微鏡で観察することにより測定した。ミリング時間は、試料1から順に6秒、12秒、30秒、1分、5分、10分、50分、100分であり、表面粗さRaは、試料1から順に4nm、8nm、20nm、40nm、200nm、400nm、2000nm、4000nmであった。
表面粗さの異なる正極層13のそれぞれに対して、エキシマレーザーアブレーション法によりLiNbOを蒸着することで緩衝層16を形成した。緩衝層16の平均厚さは、20nmであった。
緩衝層16の形成状態を走査型顕微鏡で観察したところ、正極層13の表面粗さの粗いものほど、緩衝層16により覆われていない正極層13の領域が多かった。また、緩衝層16に覆われていない領域は、正極層13の全面に分散していた。この顕微鏡観察から、緩衝層16に覆われている正極層13の領域の面積Scと、緩衝層16に覆われていない正極層13の領域の面積Suとを測定した。具体的には、異なる10点以上の視野(視野面積0.01mm)において、緩衝層16に覆われている正極層13の面積の合計をSc、覆われていない面積の合計をSuとみなした。各視野における緩衝層16が被覆されていない領域は、画像解析により決定した。測定結果は、後段の表1に示す。
エキシマレーザーアブレーション法により、緩衝層16の上に、Li−P−S組成のSE層15を形成した。SE層15の形成の際は、硫化リチウム(LiS)及び五硫化リン(P)を原料とした。SE層15の平均厚さは、5μmであった。
最後に、抵抗加熱蒸着法により、Siを蒸着することで負極層14を形成した。負極層14の平均厚さは、1μmであった。
<電池の性能評価>
上記試料1〜8の電池について、100サイクル後の容量維持率(100サイクル時の放電容量/サイクル試験中の最大放電容量)を測定した。サイクル試験は、電流密度を0.05mA/cm、電圧範囲を3.0V〜4.2Vとして実施した。各試料の構成とサイクル試験の結果を表1に示す。
Figure 2010040439
表1の結果から、Su/(Sc+Su)が0.000001超、0.001未満である試料2〜7は、100サイクル後の容量維持率が90%を超えていた。これに対して、Su/(Sc+Su)が0.000001である試料1は、容量維持率が71%と低く、Su/(Sc+Su)が0.001の試料8にいたっては電池として動作しなかった。
上記サイクル試験後に、試料1〜8を解体して、電池における各層の様子を観察したところ、試料1ではSiからなる負極層14に剥離が認められたのに対して、試料2〜8では負極層14の剥離は認められなかった。一方、試料8が電池として駆動しなかったのは、緩衝層16の形成が不十分であるため、電池の充放電に伴い空乏層の形成が顕著となったからであると推察される。
なお、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。具体的には、リチウム電池を構成する正極層、固体電解質層、負極層の配置には、上述した実施の形態以外のものも考えられるが、どのような配置を選択しても、正極層と固体電解質層との間に緩衝層を設けると共に、緩衝層による正極層の被覆割合を規定すると良い。そして、正極層、固体電解質層及び負極層の組が複数積層されたリチウム電池にあっては、複数ある正極層のすべてについて本発明が開示する被覆割合の条件式が満たされることが良いのは勿論であるが、そうでなくても、たとえば複数ある正極層のいずれか1枚の正極層について本願発明で開示する被覆割合の条件式が満たされていれば本発明の効果は奏される。それゆえ、そのようなリチウム電池も本願発明の発明特定事項を満たすものである。
本発明リチウム電池は、携帯機器などの電源として好適に利用することができる。
実施形態に記載の本発明リチウム電池の縦断面図である。
符号の説明
1 リチウム電池
11 正極集電体層 12 負極集電体層
13 正極層 14 負極層
15 固体電解質層(SE層) 16 緩衝層

Claims (7)

  1. 正極層と、負極層と、これら両層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する硫化物固体電解質層とを備えるリチウム電池であって、
    前記正極層と前記硫化物固体電解質層との間に、これら両層の界面近傍におけるリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層を備え、
    前記緩衝層により前記正極層が被覆されている領域の面積をSc、前記緩衝層により前記正極層が被覆されていない領域の面積をSuとした場合、ScとSuが以下の式を満たすことを特徴とするリチウム電池。
    0.000001<Su/(Sc+Su)<0.001
  2. 前記負極層は、少なくとも周期律表第14族元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池。
  3. 前記周期律表第14族元素は、Siであることを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池。
  4. 前記負極層は、気相法により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム電池。
  5. 前記緩衝層は、LiLa(2−X)/3TiO(X=0.1〜0.5)、Li7+XLaZr12+(X/2)(−5≦X≦3)、LiTi12、Li3.6Si0.60.4、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、Li1.8Cr0.8Ti1.2(PO)、Li1.4In0.4Ti1.6(PO)、LiTaOおよび、LiNbOの少なくとも一種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム電池。
  6. 前記正極層は、Mn,Fe,CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとを含む酸化物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム電池。
  7. 前記硫化物固体電解質層は、少なくともLiSとPを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム電池。
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