JP2010037607A - アルミニウム合金部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】自己摩耗が抑えられ、且つ、相手攻撃性が抑えるのに有利な表面処理を施されたアルミニウム合金部材およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金を母材とする本体と、本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備する。電解酸化セラミックス被膜は、本体に近い内側の方が電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、電解酸化セラミックス被膜の最表面の方が本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量がリッチとなる被膜で構成されている。電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられている。電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されている。
【選択図】図13

Description

本発明はアルミニウム合金部材およびその製造方法に関する。
近年、自動車などの車両、産業機器においては、アルミニウム合金化が進んでいる。使用環境が過酷化されているため、耐摩耗性、高強度化の要請から陽極酸化処理が使用されつつある。特許文献1には、ピストン母材の表面に陽極酸化皮膜を成膜した内燃機関用ピストンが開示されている。このものによれば、ピストンのランド部に成膜したランド溝の下面にシリコン粒が除去されており、その除去部分に陽極酸化皮膜が形成されている。更に特許文献2には、ピストンのリング溝の壁面に陽極酸化被膜を形成する技術が開示されている。なお陽極酸化膜の硬度は一般的にはHv200〜400程度とされている。
更に、近年、陽極酸化被膜よりも更に耐摩耗性・高強度かつ面粗度に優れた被膜を有するプラズマ電解酸化処理とも電解酸化処理が注目を浴びている。この電解酸化処理によれば、アルミニウム部材の表面部がα−アルミナを主体とする硬質な電解酸化セラミックス被膜で形成されているため、耐摩耗性、高強度かつ面粗度において優れた特性を与えることができる。
特許文献3には、プラズマ電解酸化処理とも呼ばれる電解酸化処理が開示されている。この電解酸化処理は、交流電圧を用い、ジルコニウム化合物を配合したアルカリ電解液に被処理物を浸漬させた状態で、母材元素の金属元素とジルコニウムを含有する電解酸化セラミックス被膜を被処理物に生成する。この電解酸化セラミックス被膜は、分散したジルコニウム酸化物の微結晶の分散相により被膜硬度がHv800以上を有する。
特許第3129494号公報 特開平8−209389号公報 国際公開番号WO2005/118919
上記した特許文献3に係る技術により生成された電解酸化セラミックス被膜においては、大きな表面突起物が表面層に生成され易いため、表面粗さが粗いものであった。このため表面突起物が摩耗の起点となり易く、酸化膜の自己摩耗量が大きく、摩耗粉等により相手攻撃性も高いものであった。殊に、アルミニウム合金の母材にシリコンが存在するときには、シリコン上にシリコン酸化物が生成され、その上にジルコニウム酸化物が積層されるため、大きな表面突起物が電解酸化セラミックス被膜に生成される傾向が強い。このため電解酸化セラミックス被膜が相手材と摺動するとき、表面突起物が摩耗の起点となり易く、電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が大きく、且つ、相手攻撃性も高いものであった。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、摩耗の起点となり易い表面突起物の生成が抑制され、これにより電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗が抑えられると共に相手攻撃性が抑えられ、更に、電解酸化セラミックス被膜の硬度の過剰化が抑えられ、これにより相手攻撃性が一層抑えられるアルミニウム合金部材およびその製造方法を提供することを課題とする。
(1)本発明者は、アルミニウム合金部材の表面に形成される電解酸化セラミックス被膜の開発を進めている。そして、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を配合した電解液またはチタン化合物を配合した電解液を用い、アルミニウム合金を母材とする本体および相手極を電解液に浸漬させた状態で、本体と相手極との間に電圧を印加して放電を発生させつつ電解酸化処理すれば、本体の表面に成膜される電解酸化セラミックス被膜の硬度を適度な値に低下させ得ると共に、成膜された電解酸化セラミックス被膜における表面突起物の生成が抑制され、電解酸化セラミックス被膜の平滑度が向上することを知見し、本発明方法を開発した。上記した電解酸化処理は、本体と相手極との間に放電を発生させつつ成膜させるため、プラズマ電解酸化処理とも呼ばれている。
(2)本発明に係るアルミニウム合金部材は、アルミニウム合金を母材とする本体と、本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、
電解酸化セラミックス被膜は、本体に近い内側の方が電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、電解酸化セラミックス被膜の前記最表面の方が前記本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との含有量がリッチとなる被膜で構成されており、
電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とする。
本発明において、アルミニウム酸化物がリッチとは、アルミニウム酸化物の面積比率が、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量の面積比率よりも大きいことを意味する。チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量がリッチとは、チタニウム酸化物、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計の面積比率がアルミニウム酸化物の面積比率よりも大きいことを意味する。従って電解酸化セラミックス被膜の断面の厚み方向における成分を電子線マイクロアナライザ(EPMA)、エネルギ−分散型蛍光X線分析(EDX)、蛍光X線等により分析したとき、面積比率が大きいことを意味する。従って、上記した分析法等で分析したとき、電解酸化セラミックス被膜においては、本体に近い内側の方が電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物の面積比率が大きくなる。且つ、電解酸化セラミックス被膜の最表面の方が、本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量の面積比率が大きくなる。
なお、アルミニウム酸化物の面積比率、ジルコニウム酸化物、チタニウム酸化物の面積比率が電解酸化セラミックス被膜の厚み方向において連続的に変化する形態でも良いし、厚み方向において不連続性を伴って変化する形態でも良い。
電解酸化セラミックス被膜がアルミニウム酸化物だけで形成されていると、相手材に対して硬度が過剰になり易い。本発明によれば、ジルコニウム酸化物は電解酸化セラミックス被膜全体の靱性を高めると共に、電解酸化セラミックス被膜の過剰な硬度の増加を抑え、且つ、耐食性を向上させる。チタニウム酸化物も同様である。本発明に係る電解酸化セラミックス被膜では、摩耗の起点となり易い表面突起物の生成が抑えられているため、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されている。このため、電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が少なく、且つ、電解酸化セラミックス被膜の硬度は適度であるため、相手攻撃性が小さい。
なお、摺動の際には、表面突起物が摩耗の起点となり易いことを考慮すると、電解酸化セラミックス被膜に表面突起物が存在せず、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは小さい方が好ましい。この意味において、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さの下限としては、Ra=0.1μm、Ra=0.2μm、Ra=0.3μmが例示される。
(3)本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法は、アルミニウム合金を母材とする本体を用意し、且つ、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を配合した電解液またはチタン化合物を配合した電解液を用意する工程と、本体および相手極を電解液に浸漬させた状態で、本体と相手極との間に電圧を印加することにより、本体の表面の少なくとも一部に電解酸化セラミックス被膜を形成する工程とを実施し、
電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とする。
(4)本発明方法に係る電解酸化セラミックス被膜では、表面突起物の生成が抑制されており、電解酸化セラミックス被膜の平滑度は向上している。その理由としては、電解液に含まれているチタン化合物またはチタンが電解酸化時に触媒として作用し、電解酸化セラミックス被膜に含まれるアルミニウム酸化物の生成、ジルコニウム酸化物の生成、チタニウム酸化物の生成が促進され、表面突起物の生成が抑制されるためと推察される。これにより電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが小さくなるものと推察される。なおアルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物は結晶質でも良いし、非晶質でも良く、チタン系化合物(酸化物)を含んでいても良い。
電解酸化セラミックス被膜の平均硬度はHv600以下であり、本体を構成する母材の硬度よりも硬く設定されていることが好ましい。従って電解酸化セラミックス被膜の平均硬度は、Hv400〜Hv600にすることができる。これにより電解酸化セラミックス被膜の靱性が確保されると共に、相手攻撃性が低下する。電解酸化セラミックス被膜の平均硬度の下限値としては、Hv400、Hv425、Hv450が例示され、電解酸化セラミックス被膜の平均硬度の上限値としては、Hv600、Hv575、Hv550が例示される。
本体としては摺動部品が例示される。本体の母材を構成するアルミニウム合金としては、鋳造品でも良いし、鍛造品でも良いし、焼結品でも良い。焼結品は、急冷凝固粉末等の合金粉末を固結した圧密成形体を焼結した焼結品を意味する。アルミニウム合金は、シリコンを含むアルミニウム−シリコン系合金、アルミニウム−シリコン−マグネシウム系合金、アルミニウム−シリコン−銅系合金、アルミニウム−シリコン−銅−マグネシウム系合金が例示される。この場合、不可避不純物を含むことができる。この場合、質量比でシリコンを10%以下、15%以下、20%以下、30%以下含むことができる。シリコン含有量が高いほど、電解酸化セラミックス被膜の均一性は低下する傾向にある。シリコンとアルミニウム系基地との間の電気抵抗が異なるためと推察される。上記したアルミニウム合金は銅を10%以下、15%以下含むことができ、また、マグネシウムを5%以下、10%以下含むことができる。本発明方法によれば、母材にシリコンが存在していたとしても、成膜中における表面突起物の生成が抑えられ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが抑えられるため、シリコンを含有するアルミニウム合金に電解酸化セラミックス被膜を形成するのに有効である。
電解酸化セラミックス被膜については、摩耗の起点となり易い表面突起物の生成が抑制されており、表面粗さがRa=0.7μm以下に設定されていることが好ましい。このように摩耗の起点となり易い表面突起物の生成が抑制されているため、電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が少なくなり、相手攻撃性が抑制される。更に、電解酸化セラミックス被膜の硬度が過剰ではなく適度となるため、相手攻撃性が一層抑制される。上記した効果を維持するためには、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さについては、Ra=0.6μm以下、Ra=0.5μm以下、あるいは、Ra=0.4μm以下、Ra=0.3μm以下に設定されている形態が例示される。
ジルコニウム酸化物がリッチなセラミックス被膜の場合には、上記した電解液は、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を含む電解液とすることが好ましい。チタニウム酸化物がリッチなセラミックス被膜の場合には、上記した電解液は、チタン化合物を含む電解液とすることが好ましい。
ジルコニウム化合物は水溶性のジルコニウム化合物が好ましい。水溶性であると、電解酸化セラミックス被膜の緻密化に有利である。ジルコニウム化合物としては、酢酸ジルコニウム、ギ酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム等の有機酸のジルコニウム塩が挙げられる。また、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムナトリウム等のジルコニウム錯塩が挙げられる。具体的には炭酸ジルコニウムカリウム(K[Zr(OH)(CO])が例示される。電解液におけるジルコニウム化合物の濃度としては、2〜35g/L、6〜10g/Lが例示される。チタン化合物はシュウ酸塩、炭酸塩、珪酸塩のうちの少なくとも1種が挙げられ、具体的にはシュウ酸チタンカリウム(K[TiO(C]・2HOが例示される。チタン化合物またはチタンは、成膜処理において触媒として作用し、酸化物生成を促進させる効果があるため、電解酸化セラミックス被膜がより緻密となり、電解酸化セラミックス被膜の面粗度が向上し、更に成膜速度も高くなると考えられる。
電解液にはリン化合物が配合されていることが好ましい。リン化合物は水溶性リン化合物が好ましい。リン化合物は、アルミニウム酸化物の生成を促進させ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さの平滑化、電解液の安定化に貢献する。リン化合物としてはリン酸塩、重合リン酸塩、有機ホスホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アミノカルボン酸塩が挙げられ、具体的にはピロリン酸ナトリウム(Na・10HO)等の少なくとも1種が例示される。電解液において水溶性リン化合物の濃度としては、10〜100g/L、20〜30g/Lが例示される。
電解液に含まれるチタンが過少であると、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さの平滑性は高まるものの、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が低下する。電解液に含まれるチタンが過剰であると、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が増加するものの、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さの平滑性が低下する傾向が見られる。そこで、電解液に含まれるリン化合物、ジルコニウム化合物およびチタン化合物については、原子数比で相対表示すると、ジルコニウム(Zr):チタン(Ti)=(0.8〜1.2):(0.8〜1.2)が例示される。また、原子数比で相対表示すると、リン(P):ジルコニウム(Zr):チタン(Ti)=(2.5〜6):(0.8〜1.2):(0.8〜1.2)が例示される。
電解液の温度が高温過ぎると、成膜速度が増加するものの、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが増加する傾向が見られる。電解液との温度としては特に限定されないが、一般的には、60℃以下、40℃以下が例示され、殊に10℃以下が好ましい。必要であれば、電解液を冷却することができる。
本体と相手極との間に電圧が印加されるとき、放電(アーク放電またはグロー放電など)が発生することが好ましい。放電時に本体の表層の一部が溶融し、凝固するものと考えられる。陽極で発生した酸素を取り込みながら、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物およびチタニウム酸化物を主要成分とする電解酸化セラミックス被膜が形成されている。
本体と相手極との間に印加される電圧としては、交流電圧でも、直流電圧でも良い。但し、正電位のみ印加する直流電圧のときには、電解酸化セラミックス被膜の表面が荒れる傾向がある。
交流電圧を印加するときのように、正電位および負電位を併用して印加するときには、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が速く、電解酸化セラミックス被膜の表面性状が良好となる。従って、電解酸化セラミックス被膜の平滑度を高めるためには、交流電圧が好ましい。このように交流電圧を印加するとき、正電位のパルスと負電位のパルスとの間に非通電時間が設けられていることが好ましい。その理由としては、電解酸化セラミックス被膜の生成を一旦停止させて冷却させるためである。なお、正電位のパルスを印加するとき、または、負電位のパルスを印加するとき、本体の被成膜部において発熱が発生する。上記した正電位または負電位のパルスとしては正弦波、矩形波、三角波が例示される。
交流電圧の周波数としては、正電位のパルスと負電位のパルスとを有するものであれば、適宜選択できるが、5〜1500Hz、10〜1000Hz、20〜100Hz、45〜65Hzが例示される。交流電圧を構成する正電位のパルスと負電位のパルスとの間に非通電時間が設けられていることが好ましい。正電位としては、50〜600ボルトの範囲内、80〜500ボルトの範囲内が例示される。負電位としては、−10ボルト〜−400ボルトの範囲内、−20ボルト〜−300ボルトの範囲内が例示される。
印加する電圧のデューティ比としては0.1〜0.8の範囲内、0.2〜0.7の範囲内または0.2〜0.5の範囲内にすることができる。このデューティ比によれば、適度な電圧印加時間および非通電時間が得られ、良好な電解酸化セラミックス被膜が形成される。ここで、デューティ比は、[(本体と相手極との間に電圧を印加する電圧印加時間)/通電時間]を意味する。ここで、電圧印加時間は、正電位の印加時間と負電位の印加時間とを含む。
一例を説明する。即ち、印加する最大電圧を430ボルト以下とし、通電開始より1〜10ミリ秒(1〜3ミリ秒)までの間に電圧を最大値まで上昇させる。また正電位のパルスと負電位のパルスとの間の通電休止時間を1〜15ミリ秒(5〜8ミリ秒)とし、負電位のパルスの電圧の絶対値は、正電位のパルスの絶対値に対して2/3〜1/10(1/6〜1/4)とすることができる。継続周波数は10〜200Hz(50〜60Hz)が例示される。これにより正電位のパルスのパワーが高くなり過ぎないため、電解酸化セラミックス被膜(ジルコニウム酸化物)の表面平滑性が向上する。正電位のパルスのパワーが低下するぶん、正電位のパルスと負電位のパルスとの非通電間隔を短くすることで、表面の活性な状態を維持し、成膜速度の低下を抑制しつつ成膜処理を行うことができる。
また、本体と相手極との間に印加する電圧としては、パルス的な直流電圧としても良い。パルス的な直流電圧は、本体と相手極との間にプラス電圧を印加している通電時間(ON時間)と、電圧を印加していない非通電時間(OFF時間)とが交互に併用されている電圧を意味する。
成膜処理のときにおいて、本体の被成膜部分と相手極との間の距離としては、本体と相手極との間に印加される電圧、本体の被成膜部分と相手極との間における放電性の確保、電解液の組成、電解液の濃度などを考慮して適宜設定することができる。一般的には、本体と相手極との間の平均距離が短いと、本体の被成膜部分と相手極との間において電流が流れ易くなり、大きな放電が起こり易くなり、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが荒れる傾向にある。これに対して本体の被成膜部分と相手極との間の平均距離が長いと、本体の被成膜部分と相手極との間において放電が小さくなり、凹部等の表面においては放電が弱くなり、成膜性が低下するおそれがあり、更に、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が低下し、生産性が低下する傾向がある。このため本体の被成膜部分と相手極との間の平均距離としては、0.05〜10センチメートル、1〜10センチメートルに設定されていることが好ましい。但しこれらに限定されるものではない。殊に、印加する正電位が350〜430ボルトである場合には、本体の被成膜部分と相手極との間の平均距離としては、1.3〜6センチメートルに設定されていることが好ましい。
成膜時間としては、本体の被成膜部分と相手極との間の距離、本体と相手極との間に印加させる電圧の大きさ、電解液の濃度、電解液の組成、要請される電解酸化セラミックス被膜の厚み、本体のサイズ等の要因に応じて適宜設定されるものの、10秒間〜30分間程度、20秒間〜10分間程度、30秒間〜3分間程度が例示される。但しこれらに限定されるものではない。
成膜速度としては、本体の被成膜部分と相手極との間の距離、本体と相手極との間に印加させる電圧の大きさ、電解液の濃度、電解液の成分、要請される電解酸化セラミックス被膜の厚み、本体のサイズ等の要因に応じて適宜設定されるものの、特に限定されないが、0.2〜100μm/min、1〜50μm/min、特に1〜20μm/min、2〜10μm/minが例示される。
なお、上記した電解酸化セラミックス被膜には、ピンホール状の細孔が形成されていても良い。10000μmの顕微鏡視野において、細孔は30〜2000個、100〜1000個、150〜500個が例示される。
本発明によれば、摩耗の起点となり易い表面突起物の生成が抑制される。これにより電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が抑えられると共に相手攻撃性が抑えられる。更に電解酸化セラミックス被膜の硬度の過剰化が抑えられるため、相手攻撃性が一層抑えられる。
本発明者が実施した各実施例について説明する。
まず、アルミニウム合金を母材とする試験片1(本体に相当)と、アルカリ電解液2(電解液)を収容する容器3とを用意した。試験片1はアルミニウム合金鋳物を熱処理(T6処理)して形成した。試験片1のサイズは、15.75ミリメートル×6.35ミリメートル×10.16ミリメートルとした。アルミニウム合金はJIS−AC8A(アルミニウム合金鋳物,アルミニウム−シリコン−銅−マグネシウム系合金)とした。このアルミニウム合金は質量比でシリコン12%、銅1%、マグネシウム1%含む。
アルカリ電解液2は、リン化合物、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を水に溶解させたものである。リン化合物はピロリン酸ナトリウム(Na・10HO)とした。リン化合物は電解酸化セラミックス被膜の表面粗さの平滑化、電解液の安定化に貢献する。ジルコニウム化合物は、炭酸ジルコニウムカリウム(K[Zr(OH)(CO])とした。ジルコニウム化合物は、電解酸化セラミックス被膜の構成成分となる。チタン化合物はシュウ酸チタンカリウム(K[TiO(C]・2HO)とした。チタン化合物は成膜時における触媒として機能すると考えられている。上記したリン化合物、ジルコニウム化合物およびチタン化合物は水溶性をもつ。
アルカリ電解液2において、ピロリン酸ナトリウムの濃度は25.92g/Lとし、炭酸ジルコニウムカリウムの濃度は8.51g/Lとし、シュウ酸チタンカリウムの濃度は10.27g/Lとした。アルカリ電解液2において、原子数比で相対表示すると、ジルコニウム(Zr):チタン(Ti)=1:1とし、且つ、リン(P):ジルコニウム(Zr):チタン(Ti)=4.4:1:1とした。
そして、図1及び図2に示すように、直方体状をなす試験片1(本体)を電極として、容器3内のアルカリ電解液2(容積:約20リットル)に第1固定治具10を介して浸漬させた。角リング状の相手極5を容器3内のアルカリ電解液2に浸漬させた。試験片1は、電極治具4を介して電源装置の端子により繋がれている。相手極5は電極治具6を介して電源装置の別の端子により繋がれている。相手極5の材質は、金属であるステンレス鋼(SUS304)とした。このようにして試験片1および相手極5を浸漬させることによりアルカリ電解液2に接触させた。図2は容器3で成膜している状態の平面視を示す。図2に示すように、相手極5は、試験片1の回りを連続的に1周する角形のリング形状をなしている。後述するように正電位のパルスの絶対値は負電位のパルスの絶対値よりも大きいため、相手極5を陰極と称し、試験片1を陽極と称する。
この状態で、試験片1と相手極5との間に、前記した電源装置により電圧(交流電圧)を印加した。この場合、放電(グロー放電またはアーク放電)を発生させつつ成膜処理した。なお、グロー放電およびアーク放電の双方が発生しても良いし、いずれか一方でも良い。
電解酸化セラミックス被膜の目標厚みは5.0μmとした。試験片1の被成膜部分と相手極5との間の平均距離K(図1参照)は、2.5センチメートルートルに設定した。成膜中、電解液2の温度には5℃以下に熱交換器により冷却し、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さを抑えた。試験片1の温度は成り行きとした。なお、成膜速度は3.1〜3.2μm/minとした。
図3は、実施例1において、試験片1と相手極5との間に印加した交流電圧の波形(デューティ比=2/6≒0.33)を示す。図3において特性線Aは一般的な60Hzの交流電圧のサイン波形を示す。交流電圧の1周期T(16.67ミリ秒)を6等分し、時刻t0,時刻t1,時刻t2,時刻t3,時刻t4,時刻t5,時刻t6を設定した。+Sin1/6は、1/6周期において正電位のパルスを印加している時間領域を示す。−Sin1/6は、1/6周期において負電位のパルスを印加している時間領域を示す。
そして実施例1では、通電開始時刻である時刻t0から時刻t1(2.78ミリ秒)までの間に、最大電圧が+424ボルトとなるように正電位のパルスを印加した。正電位のパルスは、アルミニウム合金で形成されている母材からの溶出を促進させて電解酸化セラミックス被膜を生成する作用があると推察される。その後、時刻t1(2.78ミリ秒)〜時刻t3(8.34ミリ秒)までの間、電圧の印加を中止して非通電時間とした。更に、時刻t3(8.34ミリ秒)から時刻t4(11.12ミリ秒)経過するまでの間、最大電圧が−85ボルトとなるように負電位のパルスを印加した。負電位のパルスは、母材及び生成された電解酸化セラミックス被膜を溶かす作用があると推察される。その後、時刻t4(11.12ミリ秒)〜時刻t6(16.67ミリ秒)までの間、電圧の印加を中止して非通電時間とした。このようなサイクル的な交流電圧を繰り返して印加した。上記したように試験片1と相手極5との間に交流電圧を印加させることにより、試験片1の表面に電解酸化セラミックス被膜を成膜した。成膜時間は90秒とした。
ここで、本発明者による試験によれば、次のような知見が確認されている。
(1)正電位のパルスの終了時点(時刻t1)から負電位のパルスの開始時点(時刻t3)までの時間間隔が長いほど、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが抑えられるものの、成膜速度が遅くなる傾向がみられる。これに対して、正電位のパルスの終了時点(時刻t1)から負電位のパルスの開始時点(時刻t3)までの間隔が短いほど、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が速い傾向がみられる。但し、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが増加する傾向がみられる。
(2)負電位の絶対値が小さいほど、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が遅い傾向がみられる。これに対して負電位の絶対値が大きいほど、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が速い傾向がみられる。但し、負電位の大きさが過剰であると、急激な発熱が試験片(本体)に発生し、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが増加する傾向が見られる。
(3)試験片1と相手極5との間の距離が短いほど、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が速いが、表面粗さが増加する傾向が見られる。これに対して試験片1と相手極5との間の距離が長いほど、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が遅い傾向が見られる。
(4)正電位のパルスのみを印加する場合でも良いが、この場合には、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が遅く、且つ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが増加する傾向がみられる。しかし実施例1のように正電位のパルスと負電位のパルスとを組み合わせれば、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が一層速くなり、且つ、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが一層小さくなり、平滑度が一層向上する。
図6および図7は、実施例1に係る電解酸化セラミックス被膜(請求項1に対応する)の構造の一例を示す。図6は電解酸化セラミックス被膜の表面の一例を示す(倍率:×1000)。図7は電解酸化セラミックス被膜の断面の一例を示す(倍率:×3000)。図10は請求項1に対応する実施例1に係る電解酸化セラミックス被膜の断面を模写したものである。
図7および図10に示すように、電子顕微鏡(SEM)で観察した実施例1に係る電解酸化セラミックス被膜によれば、電解酸化セラミックス被膜は、アルミニウム合金を母材とする本体(試験片1)の表面に被覆されたアルミニウム酸化物(Al,灰色っぽい部分)がリッチな内層と、最表層を形成するようにジルコニウム酸化物(ZrO)およびチタン酸化物(TiO)がリッチな外層と、両者の層の間に位置しておりアルミニウム酸化物(Al)とジルコニウム酸化物(ZrO)とチタン酸化物(TiO)とが共存する中間層とを備えている。リッチとは面積比率が大きいことをいう。なお、内層、外層および中間層は明確に区別できる形態でも良いし、必ずしも明確に区別できない形態でも良い。
アルミニウム酸化物層である内層は、アルミニウム合金を母材とする本体(試験片1)の表面に成膜されており、アルミニウム酸化物(Al)がリッチであるが、ジルコニウム酸化物(ZrO)およびチタン酸化物(TiO)のうちの少なくとも一つを含んでいても良い。
外層においては、ジルコニウム酸化物(ZrO)およびチタン酸化物(TiO)がリッチであるが、アルミニウム酸化物(Al)を含んでいても良い。
この電解酸化セラミックス被膜においては、本発明者らが行ったX線回折によれば、アルミニウム酸化物については、α−Alの存在割合が少なめであり、γ−Alが存在割合がα−Alよりも多かった。一般的には、γ−Alはα−Alよりも硬度が低く、靱性に優れている。このため実施例1に係る電解酸化セラミックス被膜の硬度は一般的な電解酸化処理法に比較して抑えられている。電解酸化セラミックス被膜にチタン成分を含んでいても良い。
実施例1によれば、アルミニウム合金の母材表面にシリコンが存在していたとしても、ジルコニウム酸化物において大きな表面突起物の発生は抑えられており、つまり、大きな表面突起物は存在せず、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.424μm、Rzjis=2.64μmに設定されており、電解酸化セラミックス被膜の平滑度は高いものであった。電解酸化セラミックス被膜の硬度はHv500〜550の範囲内に納まっており、殊にHv515〜535の範囲内に納まっており、良好であった。
比較例1についても基本的には同様の条件で、試験片1に電解酸化セラミックス被膜(目標厚み:実施例1と同様に5マイクロメートル)を成膜した。比較例1として、実施例1と同様のリン化合物およびジルコニウム化合物を含むもののチタン化合物を含まないアルカリ電解液を用い、実施例1と基本的には同様の条件で、プラズマ電解酸化処理と呼ばれる電解酸化処理を行った。
図8および図9は、電子顕微鏡(SEM)で観察した比較例1に係る電解酸化セラミックス被膜の構造を示す。図8は電解酸化セラミックス被膜の表面(倍率:×1000)を示す。図9は電解酸化セラミックス被膜の断面(倍率:×3000)を示す。図11は比較例1に係る電解酸化セラミックス被膜の断面をより明確にするため模写したものである。比較例1に係る電解酸化セラミックス被膜は、実施例1と同様に、アルミニウム合金を母材とする本体の表面に被覆されたアルミニウム酸化物(Al、灰色っぽい部分)がリッチなアルミニウム酸化物層と、電解酸化セラミックス被膜の最表層を形成するようにジルコニウム酸化物(ZrO、白色っぽい部分)がリッチなジルコニウム酸化物層と、両者の間にジルコニウム酸化物およびアルミニウム酸化物が共存する中間層とを備えていた。本体である試験片1の表面からアルミニウムが供給されるため、試験片1の表面側においてアルミニウム酸化物がリッチとなる。ジルコニウムは電解液2に含まれており、電解液2から補給されるため、電解酸化セラミックス被膜の最表面側においてジルコニウム酸化物がリッチとなる。
図7および図9から理解できるように、実施例1および比較例1共に、本体である試験片1の表面に向かうにつれてアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、電解酸化セラミックス被膜の最表面に向かうにつれてジルコニウム酸化物がリッチとなるように構成されている。即ち、実施例1および比較例1共に、電解酸化セラミックス被膜は、本体である試験片1の表面に近い内側の方が電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、電解酸化セラミックス被膜の最表面の方が、本体である試験片1に近い内側よりもジルコニウム酸化物がリッチとなるように構成されている。
試験片1の母材であるアルミニウム合金はシリコンを含むため、アルミニウム合金を母材とする本体のアルミニウム系の基地には、シリコン粒子が含有されていた。比較例1では、アルミニウムの母材表面のシリコンが隆起した部分において、大きな表面突起物(ZrO、白色っぽい部分)が存在していた(図9参照)。このように表面突起物が生成される比較例1に係る電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.85μm程度であり、電解酸化セラミックス被膜の平滑度は満足できるものではなかった。
なお、図6に示すように、実施例1に係る電解酸化セラミックス被膜では、ピンホール状の細孔が多数分散して形成されていた。図6の横寸法は約120μm、図6の縦寸法は約84μmである。よって、図6が示す顕微鏡視野の面積は約10000μmである(120μm×84μm=10080μm≒10000μm)。図6に示す顕微鏡視野(約10000μm)において、直径が5μm以下の細孔(電解酸化セラミックス被膜の表面に開口している)の数は、200〜400個形成されていた。このような適度なサイズの細孔は、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さを荒らすことを抑制しつつ、電解酸化セラミックス被膜の表面に潤滑オイルなどの潤滑剤を保持する能力を期待することができる。なお、細孔が形成されるメカニズムは必ずしも明確ではないものの、ガスの放出により電解酸化セラミックス被膜に生成されるものと推察される。
上記した試験片1について摺動試験(図12参照)を行った。相手材はリング形状とした。相手材の材質は鉄系(ピストンリング相当材,SWOSC−V)であり、高周波焼き入れされて焼き入れ組織を有しており、相手材の表面粗さはRzjis2.44μmとした。
上記した摺動試験においては、相手材の材質としては鉄系(SWOSC−V)としているが、相手材の材質としてはこれに限定されるものではない。従って、相手材の材質としては実際の使用条件などを考慮し、SWO−A、SWO−B、SWO−V、SWOSC−B、SWOSM−A、SWOSM−B、SWOSM−C、SWOCV−V、SUP6、SUP7、SUP9、SUP10、SUP11A、SUP12、S55C、S45C等を採用しても良い。
上記した摺動試験の条件としては、図12に示すように、リング形状の相手材の下部を潤滑オイルに浸漬させた状態で、相手材をこれの軸芯回りで回転させつつ、相手材の外周面に試験片1を所定の荷重であてがい、試験片1の電解酸化セラミックス被膜を摺動させた。この場合、荷重は588N、平均摺動速度は0.3メートル/秒、回転数は50〜250rpmで適宜設定し、潤滑オイルはエンジンオイル(5w−30)とし、潤滑油の温度は成り行きとし、摺動時間は30分間とした。そして、摺動試験前と後の外観表面について肉眼および電子顕微鏡(SEM)について観察、比摩耗量の測定を行った。比摩耗量は次のように求めた。比摩耗量={摩耗量(mm)/(総摺動距離(m)×荷重(N))}により求めた。
比較例2として、従来より用いられている陽極酸化処理により陽極酸化皮膜(硬質アルマイト被膜)を成膜した。陽極酸化処理の基本条件としては、硫酸水溶液中で直流電源を用いて、電圧40ボルト、電流密度2アンペア/dmで一定電流、成膜速度1マイクロメートル/分間で処理した。比較例1,2についても同様に摺動試験を行った。図13は摺動試験の結果を示す。図13に示すように、実施例1では試験片1の比摩耗量、相手材の比摩耗量共に少なかった。つまり、実施例1では耐摩耗性が向上していると共に相手攻撃性が低いため、試験片1の比摩耗量、相手材の比摩耗量共に少なかった。比較例1に係る電解酸化セラミックス被膜については、硬度はHv800以上であったため、かなり硬く、相手攻撃性がかなり高い。また比較例1の電解酸化セラミックス被膜は硬度が高いにもかかわらず、電解酸化セラミックス被膜の表面に形成されている表面突起物が摩耗の原因となり、電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が多かった。また、比較例2に係る陽極酸化皮膜(硬質アルマイト被膜)については、硬度はHv400前後であり、試験片1自体の比摩耗量がかなり大きく、且つ、摩耗粉により相手材の比摩耗量も大きかった。
(電圧波形の変更)
更に、実施例2〜実施例4を実施した。実施例2では、基本的には実施例1と同様の条件で成膜し、交流電圧を印加して電解酸化セラミックス被膜を形成した。実施例3および実施例4では、試験片1と相手極5との間に印加される交流電圧の波形を変更した。即ち、実施例3では、図4(デューティ比=2/6≒0.33)に示すように、通電開始時刻である時刻t0から時刻t1(2.78ミリ秒)までの間に、最大電圧が+424ボルトとなるように正電位のパルスを印加した。その後、時刻t1(2.78ミリ秒)〜時刻t2(5.56ミリ秒)までの間、最大電圧が−85ボルトとなるように負電位のパルスを印加した。その後、時刻t2(5.56ミリ秒)から時刻t6(16.67ミリ秒)経過するまでの間、電圧印加を停止し非通電とした。このようなサイクル的な交流電圧を繰り返して印加した。
実施例4では、図5(デューティ比=2/6≒0.33)に示すように、通電開始時刻である時刻t0から時刻t1(2.78ミリ秒)までの間に、最大電圧が+424ボルトとなるように正電位のパルスを印加した。その後、時刻t1(2.78ミリ秒)〜時刻t5(13.90ミリ秒)までの間において非通電とした。その後、時刻t5(13.90ミリ秒)から時刻t6(16.67ミリ秒)までの間、最大電圧が−85ボルトとなるように負電位のパルスを印加した。このようなサイクル的な交流電圧を繰り返して印加した。
表1は実施例2〜実施例4の試験結果を示す。実施例2〜実施例4によれば、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さ、電解酸化セラミックス被膜の膜厚、成膜速度、硬度は良好であった。各実施例においてはビッカース硬度(Hv)は荷重5gで測定した。このように実施例2〜実施例4においても、摩耗の起点となる表面突出部の発生が抑えられ、電解酸化セラミックス被膜の平滑度が向上するため、電解酸化セラミックス被膜の自己摩耗量が抑えられると共に相手攻撃性も低下する。更に、電解酸化セラミックス被膜の硬度はHv500〜Hv600であり、電解酸化セラミックス被膜が適度な硬度となるため、相手攻撃性を一層低下させるのに有利である。
図5に示す実施例4では、正電位のパルスの終了時点(時刻t1)から負電位のパルスの開始時点(時刻t5)までの時間間隔が長い。このような実施例4によれば、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが抑えられるものの、成膜速度1.72(μm/分間)が遅くなる傾向がみられた。これに対して実施例3によれば、正電位のパルスの終了時点(時刻t1)から負電位のパルスの開始時点(時刻t2)までの間隔が短い。このような実施例3によれば、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度が3.56(μm/分間)と速かった。但し、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが0.612μmと増加する傾向がみられた。
なお、本発明者らが行った試験によれば、試験片1と相手極5との間の距離が短いときには、当該距離が長いときに比較して、電解酸化セラミックス被膜の成膜速度は速いものの、電解酸化セラミックス被膜の表面粗さが増加する傾向が得られた。
(実施例8)
図14および図15は実施例8を示す。実施例8は実施例1と基本的には同一の構成および作用効果を有する。この場合、凹部含有部材として機能するピストン100(ピストン本体,本体に相当)に適用した例である。ピストン100には、自動車等の車両の内燃機関に適用される複数のリング溝として機能するピストンリング溝102.103,104が形成されている。ピストン100はアルミニウム合金で形成されている。アルミニウム合金は、質量比でシリコン10〜30%含む鋳造品(ダイカスト鋳造品、砂型鋳造品)または焼結品で形成されている。ピストン100は鋳造品または焼結品を切削加工して形成されている。但し、鍛造品を切削加工して形成しても良いし、あるいは、急冷凝固粉末等の粉末を固めて固化させた成形体に切削加工して形成しても良い。成膜時においては、ピストンリング溝102.103,104のうちヘッド面101に最も近いピストンリング溝102以外の部分には、シリコンゴム等の被覆層(図示せず)を被覆している。そしてピストン100のピストンリング溝102に円リング状の相手極500(材質:ステンレス鋼(SUS304))を対面させた状態で、ピストン100および相手極500をアルカリ電解液2に浸漬させた。ピストン100のうちピストンリング溝102付近の外周面と相手極500との距離KAを0.5〜50ミリメートルの範囲内、殊に10〜20ミリメートルの範囲内に設定した。そして給電部120,520を介してピストン100および相手極500に、実施例1の場合と基本的には同様の条件で、正電位のパルスおよび負電位のパルスを示す交流電圧を30〜600秒間印加し、電解酸化処理を施した。これにより電解酸化セラミックス被膜200(厚み:2〜20μm、3〜10μm)が成膜されている。具体的には、図15に示すように、電解酸化セラミックス被膜200は、ピストンリング溝102のうち互いに対向する溝測面102aと、溝底面102cとに被覆されている。その後、シリコンゴム等のマスキング用の被覆層をピストン100から剥離させた。
ピストンリング溝102には鉄系のピストンリング(図示せず)が装着されるため、電解酸化セラミックス被膜200はピストンリング(相手材)と摺動する。なおピストンリング溝102に限らず、ピストンリング溝103,104に電解酸化セラミックス被膜を形成しても良い。また、図16に示すように、リング状の相手極530を用いても良い。相手極530は、ピストンリング溝102の空間に挿入可能な挿入部531と、ピストン100の外周面に間隔を隔てて対向する対向部532とを有する。相手極530の挿入部531をピストンリング溝102の空間に挿入した状態で、相手極530とピストン100との間に通電し、ピストンリング溝102の壁面に電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。相手極530の挿入部531をピストンリング溝102に挿入するため、相手極530の挿入部531をピストンリング溝102の溝測面102a、溝底面102cに接近させることが可能となる。
(他の実施例)
上記した実施例は内燃機関に使用されるアルミニウム合金を母材とするピストン100に電解酸化セラミックス被膜を成膜したものであるが、外燃機関に使用されるピストンに電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。更には、内燃機関または外燃機関のアルミニウム合金を母材とするシリンダブロックのシリンダボアの内壁面に電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。ブレーキ装置のアルミニウム合金を母材とするシリンダの内周壁面に電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。アルミニウム合金を母材とするスプールバルブの外周壁面に電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。スプールバルブを摺動させるアルミニウム合金を母材とするシリンダのスプール孔の内周壁面に電解酸化セラミックス被膜を成膜しても良い。
上記した実施例1では、交流電圧の周波数の1周期Tを6等分し、1/6周期に正電位のパルスを印加すると共に、1/6周期に負電位のパルスを印加しているが、これに限らず、1周期Tを4等分し、1/4周期に正電位のパルスを印加すると共に、1/4周期に負電位のパルスを印加しても良い。更に1周期Tを8等分し、1/8周期に正電位のパルスを印加すると共に、1/8周期に負電位のパルスを印加しても良い。実施例1では、正電位のパルスを印加する時間と、負電位のパルスを印加する時間とは基本的に同じであるが、正電位のパルスを印加する時間よりも、負電位のパルスを印加する時間を短くしても良い。
本発明に係る電解酸化セラミックス被膜によれば、図10に示す形態に限らず、電解酸化セラミックス被膜は、アルミニウム合金を母材とする本体の表面に被覆されたアルミニウム酸化物(Al)がリッチな内層と、最表層を形成するようにチタン酸化物(TiO)がリッチな外層と、両者の層の間に位置しておりアルミニウム酸化物(Al)とチタン酸化物(TiO)とが共存する中間層とを備えている構造でも良い。
なお、本発明は上記し且つ図面に示した各実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。ある実施例に設けられている特有の構造および機能は、他の実施例においても適用可能である。
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]アルミニウム合金部材と、アルミニウム合金部材と摺動する相手材とを組み合わせた摺動装置であり、前記アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金を母材とする本体と、前記本体の表面の少なくとも一部に被覆され且つ前記相手材と摺動する電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、前記電解酸化セラミックス被膜は、前記本体に近い内側の方が前記電解酸化セラミックス被膜の前記表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、前記電解酸化セラミックス被膜の最表面の方が前記本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量がリッチとなる被膜で構成されており、前記電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、前記電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とする摺動装置。相手材は鉄系、アルミニウム合金等の金属系が例示される。
[付記項2]アルミニウム合金を母材とする本体と、前記本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、前記電解酸化セラミックス被膜は、前記本体に近い内側の方が前記電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、前記電解酸化セラミックス被膜の前記最表面の方が、前記本体に近い内側よりもジルコニウム酸化物およびチタニウム酸化物のうちの少なくとも一方がリッチとなる被膜で構成されており、前記電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、前記電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とするアルミニウム合金部材。
[付記項3]アルミニウム合金を母材とする本体と、前記本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、前記電解酸化セラミックス被膜は、前記本体に近い内側の方が前記電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、前記電解酸化セラミックス被膜の前記最表面の方が、前記本体に近い内側よりもジルコニウム酸化物およびチタニウム酸化物のうちの少なくとも一方がリッチとなる被膜で構成されていることを特徴とする
アルミニウム合金部材。
[付記項4]アルミニウム合金を母材とする本体と、前記本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、前記電解酸化セラミックス被膜は、前記本体に近い内側の方が前記電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、前記電解酸化セラミックス被膜の前記最表面の方が前記本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量がリッチとなる被膜で構成されていることを特徴とするアルミニウム合金部材。
本発明は例えば自動車等の車両構成部品、産業機器に使用されるアルミニウム合金部材およびその製造方法に利用できる。
実施例1に係り、電解酸化セラミックス被膜を成膜する電解酸化処理の形態を模式的に示す断面図である。 実施例1に係り、電解酸化セラミックス被膜を成膜する電解酸化処理の形態を模式的に示す平面図である。 実施例1に係り、電解酸化処理において試験片と相手極との間に印加する電圧の波形を示す波形図である。 実施例3に係り、電解酸化処理において試験片と相手極との間に印加する電圧の波形を示す波形図である。 実施例4に係り、電解酸化処理において試験片と相手極との間に印加する電圧の波形を示す波形図である。 実施例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の表面を示す図である。 実施例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の断面を示す図である。 比較例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の表面を示す図である。 比較例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の断面を示す図である。 実施例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の断面を模写して示す図である。 比較例1に係り、電解酸化処理で成膜された電解酸化セラミックス被膜の断面を模写して示す図である。 摺動試験を示す斜視図である。 摺動試験の試験結果を示すグラフである。 電解酸化セラミックス被膜をピストンリング溝の壁面に成膜する状態を模式的に示す側面図である。 電解酸化セラミックス被膜をピストンリング溝の壁面に成膜したピストンを示す側面図である。 電解酸化セラミックス被膜をピストンリング溝の壁面に成膜する状態を模式的に示す側面図である。
符号の説明
1は試験片(本体)、2はアルカリ電解液、3は容器、5は相手極、200は電解酸化セラミックス被膜を示す。

Claims (10)

  1. アルミニウム合金を母材とする本体と、前記本体の表面の少なくとも一部に被覆された電解酸化セラミックス被膜とを具備しており、
    前記電解酸化セラミックス被膜は、前記本体に近い内側の方が前記電解酸化セラミックス被膜の最表面よりもアルミニウム酸化物がリッチとなり、且つ、前記電解酸化セラミックス被膜の前記最表面の方が前記本体に近い内側よりも、チタニウム酸化物の量、あるいは、チタニウム酸化物とジルコニウム酸化物との合計量がリッチとなる被膜で構成されており、
    前記電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、前記電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とするアルミニウム合金部材。
  2. 請求項1において、前記電解酸化セラミックス被膜の平均硬度はHv600以下であり、前記本体を構成する母材の硬度よりも硬く設定されていることを特徴とするアルミニウム合金部材。
  3. 請求項1または2において、前記電解酸化セラミックス被膜の平均厚みは1〜50マイクロメートルであることを特徴とするアルミニウム合金部材。
  4. 請求項1〜3のうちの一項において、前記アルミニウム合金は質量比でシリコンを30%以下含むことを特徴とするアルミニウム合金部材。
  5. アルミニウム合金を母材とする本体を用意し、且つ、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を配合した電解液またはチタン化合物を配合した電解液を用意する工程と、
    前記本体および前記相手極を前記電解液に浸漬させた状態で、前記本体と前記相手極との間に電圧を印加することにより、前記本体の表面の少なくとも一部に電解酸化セラミックス被膜を形成する工程とを実施し、
    前記電解酸化セラミックス被膜において表面突起物の生成が抑えられ、前記電解酸化セラミックス被膜の表面粗さは、Ra=0.7μm以下に設定されていることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 請求項5において、前記電解液において、原子数比で相対表示すると、ジルコニウム1に対してチタンが0.5〜1.5に設定されていることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 請求項5または6において、前記電圧は交流電圧であることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  8. 請求項7において、前記交流電圧を構成する正電位のパルスと負電位のパルスとの間に非通電時間が設けられていることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  9. 請求項5〜8のうちの一項において、デューティ比が0.1〜0.8であることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  10. 請求項5〜9のうちの一項において、前記本体はピストン本体であることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
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