JPH08209389A - 耐凝着性に優れるAl合金表面処理部材 - Google Patents

耐凝着性に優れるAl合金表面処理部材

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JPH08209389A
JPH08209389A JP1623695A JP1623695A JPH08209389A JP H08209389 A JPH08209389 A JP H08209389A JP 1623695 A JP1623695 A JP 1623695A JP 1623695 A JP1623695 A JP 1623695A JP H08209389 A JPH08209389 A JP H08209389A
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alloy surface
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anodized
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JP1623695A
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Kazuhiko Mori
和彦 森
Taisuke Miyamoto
泰介 宮本
Kouta Kodama
幸多 児玉
Koji Saito
浩二 斉藤
Shigeru Kurihara
繁 栗原
Yasutoshi Nakada
康俊 中田
Ryuichi Uchino
龍一 内野
Shoji Kanai
昌二 金井
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Art Kinzoku Kogyo KK
Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Toyota Motor Corp
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Art Kinzoku Kogyo KK
Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】クラックの発生を抑えつつ陽極酸化層の厚膜化
することを可能とし、耐摩耗性及び耐凝着性を向上させ
る。 【構成】金属間化合物が面積率20〜60%の範囲で分
散されたAl合金表層部と、このAl合金表層部の表面
を陽極酸化処理することにより形成された陽極酸化層と
を備えていることを特徴とする。陽極酸化層自体は靱性
が低いが、金属間化合物の存在により陽極酸化層が細か
く分断させた組織となるため、靱性が向上してクラック
の発生を抑えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Al合金表面を陽極酸
化処理することにより耐摩耗性、特に耐凝着性を向上さ
せたAl合金表面処理部材に関する。本発明の耐凝着性
に優れるAl合金表面処理部材は、車両用エンジンのピ
ストン等の耐摩耗性が要求される部位、部品等に好適に
適用することができる。
【0002】
【従来の技術】Al又はAl合金は鉄鋼材料に比較し
て、軽量で熱伝導性、耐食性が優れていることから、自
動車部品をはじめ広い分野で使用されている。しかし、
Al合金は一般に鉄鋼材料に比べ強度、耐摩耗性、耐熱
性の面で劣っており、Al合金素材そのままでは鉄鋼材
料の代替材料として適用できる部位、部品は限られてい
る。また、既にAl、Al合金が使用さている場合で
も、近年、使用環境が過酷になるにつれ、更に耐久性の
向上が求められている。
【0003】その対策として、Al合金そのものの改良
の他に、Al合金表面を陽極酸化処理して、表面に陽極
酸化層を形成させることが行われている(特開昭64−
79398号公報参照)。この陽極酸化層の形成によ
り、母材がAl合金であるにもかかわらず耐摩耗性をか
なり向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記陽極酸化
皮膜は、靱性が低いため、厚膜化するとクラックが発生
し易くなるという欠点がある。このため、十分な耐摩耗
性を得るべく陽極酸化層の膜厚を20μm程度以上にし
た場合、クラックの発生により陽極酸化層の一部がAl
合金表面から剥離し易くなるという問題点がある。
【0005】また、本発明者等の研究によれば、Al合
金基材の表面に陽極酸化層を形成した場合、陽極酸化処
理無しのものと同程度以上の凝着摩耗が生じることが判
明した。これは、Al合金基材と陽極酸化層との熱物性
(熱膨張率)の差により、また下地のAl合金基材が柔
らかいことにより、Al合金基材と陽極酸化層との界面
に一部剥離が発生し、この剥離部が摩擦面に存在するた
めと考えられる。
【0006】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、クラックの発生を抑えつつ陽極酸化層を厚膜化す
ることを可能とし、厚膜化された陽極酸化層により十分
な耐摩耗性を得ることができ、しかも耐凝着性も効果的
に向上させることのできるAl合金表面処理部材を提供
することを解決すべき技術課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の耐凝着性に優れるAl合金表面処理部材は、金属間
化合物が面積率20〜60%の範囲で分散されたAl合
金表層部と、該Al合金表層部の表面を陽極酸化処理す
ることにより形成された陽極酸化層とを備えていること
を特徴とするものである。
【0008】好適な態様において、前記Al合金表層部
にはさらにセラミックス硬質粒子が面積率5〜20%の
範囲で分散されている。好適な態様において、前記陽極
酸化層の平均膜厚は5〜100μmである。
【0009】
【作用】本発明のAl合金表面処理部材は、金属間化合
物が特定の割合で分散されたAl合金表層部の表面を陽
極酸化処理して陽極酸化層を形成したものである。この
ように、金属間化合物が特定の割合で分散されたAl合
金表層部に陽極酸化処理を施すと、金属間化合物以外の
部分、すなわち初晶及び共晶のAl−α相部分にのみ陽
極酸化層が形成されるため、陽極酸化層は金属間化合物
の存在により細かく分断された組織となる。このため、
本発明のAl合金表面処理部材では、陽極酸化層自体の
靱性は低いが、該陽極酸化層が金属間化合物により細か
く分断された組織となっているためクラックの発生を効
果的に抑えることができる。したがって、クラックの発
生を抑えつつ、陽極酸化層を厚膜化することが可能とな
り、十分な耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0010】また、本発明のAl合金表面処理部材は、
上記陽極酸化層により、耐凝着性の向上を図ることがで
きる。すなわち、Al合金表層部中の初晶及び共晶のA
l−α相部分は活性かつ軟質であるため、相手部材の摺
動により凝着し易いが、このAl−α相部分が選択的に
陽極酸化処理されて硬質な陽極酸化層(Al2 3 層)
となっているため、耐凝着性が向上する。しかも、金属
間化合物が分散された本発明に係るAl合金表層部は、
初晶及び共晶のAl−α相部分より硬質な金属間化合物
の存在により硬化されており、陽極酸化層との界面にお
ける耐剥離性が向上している。また、上記したように本
発明のAl合金表面処理部材では、陽極酸化層が金属間
化合物により細かく分断された組織となっているため、
陽極酸化層中に金属間化合物が分散している分だけ、A
l合金表層部と熱物性(熱膨張率)の異なる陽極酸化層
の占める面積が小さくなり、その結果Al合金表層部と
陽極酸化層との熱膨張率の差に基づく剥離を抑えること
ができる。したがって、本発明のAl合金表面処理部材
では、Al合金表層部と陽極酸化層との界面における剥
離を抑えることができ、摩擦面に剥離部が存在すること
により発生する凝着を効果的に防止することが可能とな
る。
【0011】ここで、Al合金表層部中に分散される金
属間化合物の面積率の数値限定理由は以下のとおりであ
る。すなわち、金属間化合物の面積率が小さ過ぎると、
金属間化合物を分散させることによる効果が不十分とな
り、従来と同様に陽極酸化層を厚膜化するとクラックが
発生し易くなる。一方、金属間化合物の面積率が大き過
ぎると、Al合金表層部が脆くなり、切削加工時等に割
れが発生する。したがって、Al合金表層部中に分散さ
れる金属間化合物の面積率は20〜60%の範囲とし
た。
【0012】また、本発明に係るAl合金表層部にさら
にセラミックス硬質粒子が面積率5〜20%の範囲で分
散されている場合、このセラミックス硬質粒子の存在に
よりさらに耐摩耗性を向上させることができる。ここ
で、Al合金表層部中に分散されるセラミックス硬質粒
子の面積率の数値限定理由は以下のとおりである。すな
わち、セラミックス硬質粒子の面積率が5%未満では、
セラミックス硬質粒子を分散させることによる耐摩耗性
向上の効果が不十分となる。一方、セラミックス硬質粒
子の面積率が20%を越えると、相手材への攻撃性が急
激に増大する。
【0013】また、Al合金表層部にセラミックス硬質
粒子が分散されていることにより、上記金属間化合物と
同様に、陽極酸化層を細かく分断された組織としてクラ
ックの発生を抑えたり、陽極酸化層の下地となるAl合
金表層部を硬化等して剥離を抑えたりすることができ
る。さらに、陽極酸化層の平均膜厚が5〜100μmで
ある場合には、耐摩耗性、耐凝着性を効果的に向上させ
ることができる。すなわち、陽極酸化層の膜厚は摩耗特
性及び凝着特性に大きな影響を及ぼし、これを適当な範
囲とすることにより耐摩耗性及び耐凝着性を効果的に向
上させることが可能となる。陽極酸化層の平気膜厚が5
μm未満では、陽極酸化層を形成することによる耐摩耗
性及び耐凝着性の効果が不十分となる。一方、陽極酸化
層の平気膜厚が100μmを越えるとAl合金表層部と
陽極酸化層との熱物性(熱膨張率)の差による影響が大
きくなり、両者間の界面での剥離が発生し易くなる。
【0014】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)図1に示すように、合金化材料としてのC
u基材料(JIS C1020)よりなる外皮1と、外
皮1内に充填されたAl基(JIS A1050)芯材
2とからなる各種の複合ワイヤ(直径:φ1.6mm)
を準備した。
【0015】なお、Cu基材料よりなる外皮1の膜厚
は、後述するMIG合金化処理後の合金化処理部(本発
明のAl合金表層部に相当する)において、AlとCu
との金属間化合物(CuAl2 )の面積率が表1に示す
範囲となるようにそれぞれ調整した。また、上記複合ワ
イヤは、外皮1にフープを使用し、このフープを湾曲し
ながらAl基芯材2を挿入した後、該フープの両端部を
TIG溶接、レーザー又は抵抗溶接により塞ぎ、その後
所定の径まで圧延、伸線加工することにより製造するこ
とができる。あるいは、外皮1にパイプを使用し、この
パイプを振動させながらパイプ端部からAl基芯材2を
挿入し、その後所定の径まで圧延、伸線加工することに
よっても製造することができる。
【0016】そして図2に示すように、MIG合金化法
により、上記各種の複合ワイヤを用いてAl合金鋳物板
(JIS AC8A材)3の表面をMIG合金化処理し
た。なお、処理条件は以下のとおりである。 電流 :120〜200A 電圧 :20〜30V トーチ移動速度 :900mm/min シールドガス :25リットル/min 予熱 :150℃ その後、上記合金化処理部(Al合金表層部)の表面
に、以下の条件の陽極酸化処理により、膜厚:40μm
の陽極酸化層を形成した。
【0017】電解液組成 :硫酸(10vol%) 電流密度 :4A/dm3 (直流) 電圧 :35V 温度 :30℃ 処理時間 :30〜49min
【0018】
【表1】 得られた試料No.1〜5について、陽極酸化層におけ
るクラック発生状況を調べた。これは、荷重を順に上げ
てビッカース圧痕を陽極酸化層に打ち、陽極酸化層に亀
裂が発生する際の荷重を調べることにより行った。その
結果を図3に示す。なお、図3中、○印は圧痕を打った
とき陽極酸化層に亀裂が発生しなかったことを示し、×
印は亀裂が発生したことを示す。
【0019】図3から明らかなように、合金化処理部
(Al合金表層部)において、AlとCuとの金属間化
合物(CuAl2 )の面積率が20%以上である本発明
材に係る試料No.1〜3では、ビッカース荷重20k
gでも亀裂の発生はなかった。これに対し、上記金属間
化合物の面積率が20%より少ない比較材に係る試料N
o.4,5では、ビッカース荷重5kgあるいは10k
gで亀裂が発生した。このように、合金化処理部(Al
合金表層部)において、AlとCuとの金属間化合物
(CuAl2 )の面積率を20%以上とすることによ
り、陽極酸化層のクラックの発生や剥離が効果的に抑え
られることができ、したがって後述するように陽極酸化
層の膜厚を100μm程度に厚膜化する場合でも陽極酸
化層のクラックの発生を抑えることができる。
【0020】一方、上記金属間化合物の面積率が60%
を越えるように調整して、上記実施例1と同様に合金化
処理したところ、合金化処理部(Al合金表層部)が脆
くなり、これを切削加工したら割れが発生した。また、
上記試料No.3の合金化処理部(Al合金表層部)及
び陽極酸化層における金属組織を示す顕微鏡写真を図4
に示すように、陽極酸化層(図4中、黒く見える部分が
陽極酸化された部分)中に金属間化合物が分散している
様子がわかる。
【0021】(実施例2)表2に示すように、合金化材
料としてCu基材料の代わりにNi基材料(工業的純N
i99.9%)、Co基材料(工業的純Co99.9
%)、Mn基材料(工業的純Mn99.9%)、Ti基
材料(工業的純Ti99.9%)を用い、MIG合金化
処理後の合金化処理部(Al合金表層部)において、A
lとの金属間化合物の面積率が表2に示すものとなるよ
うに調整して実施例1と同様に合金化処理及び陽極酸化
処理した。ただし、Ni、Co、Mn、Tiは二重パイ
プの伸線化が困難なため、「より線」とした。
【0022】
【表2】 得られた試料No.6〜9について、実施例1と同様に
陽極酸化層におけるクラック発生状況を調べた結果、ビ
ッカース荷重20kgでも亀裂の発生はなかった。
【0023】また、前記実施例1で得られた試料No.
3と、実施例2で得られた試料No.6〜9とについ
て、凝着摩耗試験を行った。これは、円筒状の相手材
(外径:φ25mm、内径:φ20mm、17Crステ
ンレス鋼を窒化処理したもの)の端面を各試料の表面で
一定の面圧で上下作動させるた後の最大摩耗深さを調べ
ることにより行った。その結果を図5に示す。なお、試
験条件は以下のとおりである。
【0024】試験温度:250℃(Alの融点の0.5
8倍に相当し、また運転中のピストン溝温度に相当する
温度) 面圧:30kg/cm2 上下作動:2Hz 回転:なし(但し、拘束していないため多少発生してい
る) 図5から明らかなように、最大摩耗深さはいずれも11
μm程度以下と少なく、またいずれも凝着の発生はなか
った。
【0025】なお、Alと金属間化合物を形成する金属
として、上記Cu、Ni、Co、Mn、Tiの他にF
e、Cr等を用いることも可能である。 (実施例3)図6に示すように、合金化材料としてのC
u基材料(JIS C1020)よりなる外皮1と、外
皮1内に充填されたAl基(JIS A1050)パイ
プ4と、Al基パイプ4内に充填されたセラミックス硬
質粒子としてのTiC粉末5とからなる各種の複合ワイ
ヤ(直径:φ1.6mm)を準備した。
【0026】なお、Cu基材料よりなる外皮1の膜厚
は、MIG合金化処理後の合金化処理部(本発明のAl
合金表層部に相当する)において、AlとCuとの金属
間化合物(CuAl2 )の面積率が35%となるように
調整した。また、Al基パイプ4のパイプ径やTiC粉
末5の充填量は、MIG合金化処理後の合金化処理部
(本発明のAl合金表層部に相当する)において、Ti
C粉末5の分散量が表3に示す範囲となるようにそれぞ
れ調整した。また、上記複合ワイヤは、外皮1にフープ
を使用し、このフープを湾曲しながらTiC粉末5が充
填されたAl基パイプ4を挿入した後、該フープの両端
部をTIG溶接、レーザー又は抵抗溶接により塞ぎ、そ
の後所定の径まで圧延、伸線加工することにより製造す
ることができる。あるいは、外皮1にパイプを使用し、
このパイプを振動させながらTiC粉末5が充填された
Al基パイプ4をパイプ端部から挿入し、その後所定の
径まで圧延、伸線加工することによっても製造すること
ができる。
【0027】そして、前記実施例1と同様に、MIG合
金化法により被処理材(基材)3の表面を合金化処理し
た後、該合金化処理部(Al合金表層部)の表面を陽極
酸化処理して膜厚40μmの陽極酸化層を形成した。
【0028】
【表3】 前記実施例1で得られた試料No.3(合金化材:C
u,金属間化合物の面積率:38%、TiC粉末な
し)、及び上記実施例3で得られた試料No.10〜1
5について、摩耗試験を行った。これは、円筒状の相手
材(外径:φ25mm、内径:φ20mm、17Crス
テンレス鋼を窒化処理したもの)の外周側面を各試料の
表面で一定の面圧で回転させた後の摩耗深さ及び相手材
摩耗量を調べることにより行った。その結果を図7に示
す。なお、試験条件は以下のとおりである。
【0029】荷重:20kg 回転:400rpm 潤滑:エンジンオイル滴下 図7から明らかなように、TiC面積率が増大するにつ
れて耐摩耗性が向上するが、TiC面積率が5%未満で
はその硬化があまり見られなかった。一方、TiC面積
率が20%を越えると相手材摩耗量が急激に増大した。
このため、合金化処理部(Al合金表層部)において、
TiC粉末5の分散量は5〜20%とすることが好まし
い。
【0030】(実施例4)表4に示すように、セラミッ
クス硬質粒子としてTiC粉末の代わりに、ZrC、S
iC、NbC、WC、Cr2 3 粉末を用い、MIG合
金化処理後の合金化処理部(Al合金表層部)におい
て、セラミックス硬質粒子の分散量が面積率で15%と
なるように調整すること以外は実施例3と同様に肉盛溶
接及び陽極酸化処理した。
【0031】
【表4】 前記実施例3で得られた試料No.12(炭化物:Ti
C、面積率:15%)、及び上記実施例4で得られた試
料No.16〜20について、実施例3と同様の摩耗試
験を行った。その結果を図8に示す。
【0032】図8から明らかなように、セラミックス硬
質粒子として、ZrC、SiC、NbC、WC、Cr2
3 粉末を用いた場合も、TiC粉末を用いた場合と同
様に耐摩耗性の向上を図ることができた。また、セラミ
ックス硬質粒子として、上記した炭化物の他に、Fe3
C、VC等を用いることも可能である。 (実施例5)表5に示すように、MIG合金化処理後の
合金化処理部(Al合金表層部)でのTiC粉末の分散
量が面積率で15%となるように調整し、かつ、陽極酸
化層の膜厚が表5に示す範囲となるように調整すること
以外は前記実施例3と同様に合金化処理及び陽極酸化処
理した。
【0033】
【表5】 前記実施例3で得られた試料No.12(炭化物:Ti
C、面積率:15%、陽極酸化層の膜厚:40μm)、
及び上記実施例5で得られた試料No.21〜25につ
いて、実施例1と同様の凝着摩耗試験を行った。その結
果を図9に示す。比較のため、陽極酸化処理をしないこ
と以外は実施例5と同様に得た試料No.26、及び肉
盛溶接していない被処理材(JIS AC8A材)3の
表面に直接陽極酸化処理して40μmの陽極酸化層を形
成した試料No.27についても同様に凝着摩耗試験を
行い、その結果を図9に併せて示す。
【0034】図9から明らかなように、陽極酸化層の膜
厚は凝着特性に大きな影響を及ぼす。陽極酸化層の平均
膜厚が5μm未満では、処理ばらつきのため、Al相が
表面に露出することがあり、凝着が局部的に生じている
ものがあった。一方、陽極酸化層の平均膜厚が厚くなる
ほど耐摩耗性も向上するが、120μm以上になると合
金化処理部(Al合金表層部)と陽極酸化層との界面に
物性の違いによる剥離が存在し、表面には亀甲状のクラ
ックが観察された。したがって、陽極酸化層の平均膜厚
は5〜100μmとすることが好ましい。
【0035】なお、前述の実施例では、いずれもMIG
合金化処理により基材としての被処理材3の表面にAl
合金表層部としての合金化処理部を形成する例について
説明したが、合金化処理方法としてはMIG合金化法の
他にTIG合金化法等を用いることも勿論可能である。
また、基材としてのAl合金基材の表面に、Alと金属
間化合物を形成する所定の肉盛材料(Cu、Ni、C
o、Mn、Ti等)を粉末又はシート状に配し、レーザ
又は電子ビーム加熱溶融より肉盛溶接してAl合金表層
部を形成することも可能である。
【0036】(適用例)図10に示すように、基材とし
てのアルミニウム合金鋳物(JIS AC8A材)より
なる内燃機関用ピストン10のトップリング溝穴11付
近の耐摩耗性を向上させるべく、図11に示すように、
トップリング溝穴11の表面に、上記実施例3の試料N
o.12(合金化材:Cu、金属間化合物の面積率:3
5%、炭化物:TiC、面積率:15%、陽極酸化層の
膜厚:40μm)と同様の条件で、合金化処理及び陽極
酸化処理を施して、Al合金表層部12及び陽極酸化層
13を形成した。
【0037】このように、Al合金基材としてのピスト
ン等の表面にAl合金表層部を肉盛又は合金化により形
成することにより、耐摩耗性、耐凝着性が要求される摺
動、摩擦面のみに、本発明に係るAl合金表層部及び陽
極酸化層を形成することができ、基材部分において、他
の特性をもたせたり、部材全体をAl合金表層部と同じ
組成とする場合と比較して低コスト化を図ったりするこ
とができる。
【0038】
【発明の効果】以上詳述したように本発明のAl合金表
面処理部材は、金属間化合物が特定の割合で分散された
Al合金表層部の表面を陽極酸化処理して陽極酸化層を
形成したものであるから、陽極酸化層の組織を金属間化
合物により細かく分断された組織とすることができクラ
ックの発生を効果的に抑えることができる。したがっ
て、クラックの発生を抑えつつ、陽極酸化層を厚膜化す
ることが可能となり、十分な耐摩耗性及び耐凝着性の向
上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に係るMIG合金化処理に用いる複
合ワイヤの断面図である。
【図2】 実施例1に係るMIG合金化法を模式的に説
明する図である。
【図3】 実施例1において、陽極酸化層のクラック発
生状況を調べた結果を示す図である。
【図4】 実施例1において、合金化処理部(Al合金
表層部)及び陽極酸化層の金属組織を示す顕微鏡写真を
示す図である。
【図5】 実施例2において、凝着摩耗試験の結果を示
す図である。
【図6】 実施例3に係るMIG合金化処理に用いる複
合ワイヤの断面図である。
【図7】 実施例3において、摩耗試験の結果を示す図
である。
【図8】 実施例4において、摩耗試験の結果を示す図
である。
【図9】 実施例5において、凝着摩耗試験の結果を示
す図である。
【図10】 本発明を自動車エンジン用ピストンに適用
した例を示す断面図である。
【図11】 図10のA部を拡大して示す断面図であ
る。
【符号の説明】
10はピストン、11はトップリング溝穴11、12は
Al合金表層部、13は陽極酸化層である。
【手続補正書】
【提出日】平成7年2月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 和彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 宮本 泰介 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 児玉 幸多 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 斉藤 浩二 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 栗原 繁 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐡溶 接工業株式会社研究所内 (72)発明者 中田 康俊 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐡溶 接工業株式会社研究所内 (72)発明者 内野 龍一 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 金井 昌二 長野県上田市下之郷813−6 アート金属 工業株式会社研究開発センター内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属間化合物が面積率20〜60%の範
    囲で分散されたAl合金表層部と、該Al合金表層部の
    表面を陽極酸化処理することにより形成された陽極酸化
    層とを備えていることを特徴とする耐凝着性に優れるA
    l合金表面処理部材。
  2. 【請求項2】 前記Al合金表層部にはさらにセラミッ
    クス硬質粒子が面積率5〜20%の範囲で分散されてい
    ることを特徴とする請求項1記載の耐凝着性に優れるA
    l合金表面処理部材。
  3. 【請求項3】 前記陽極酸化層の平均膜厚は5〜100
    μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐凝
    着性に優れるAl合金表面処理部材。
JP1623695A 1995-02-02 1995-02-02 耐凝着性に優れるAl合金表面処理部材 Pending JPH08209389A (ja)

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