JP2007260718A - シーム溶接用電極 - Google Patents

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博 朝田
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Abstract

【課題】Zn系めっき鋼板等のシーム溶接に用いる電極の長寿命化を図る。
【解決手段】Cu又はCu合金からなる電極本体の被溶接材に当接する当接面2に、W又はMo若しくはそれらを基材とする合金からなる芯材4を埋設した二重構造のシーム溶接用電極1において、前記当接面の幅寸法をW0、芯材の幅寸法をW1とするとき、幅寸法比率W1/W0を0.7〜3.0の範囲とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、めっき鋼板等の難溶接材料のシーム溶接に適した電極に関する。
従来から、自動車用燃料タンクや灯油タンクの組立てラインにおいては、抵抗溶接法の一種であるシーム溶接法が多用されており、大量生産ラインでは、連続的にシーム溶接が実施されている。このため、シーム溶接用の電極は、高熱、高負荷を繰り返し受ける状況下にあり変形しやすいので、その素材としては変形に耐え得るものでなければならない。しかも、抵抗溶接用電極の本来の必要条件である、高電気伝導度、高熱伝導性及び高強度、高耐摩耗性を備えていることが要求される。このような背景のもと、シーム溶接用電極としてはCu−Cr、Cu−Cr−Zr等のCu合金や、Al23等の硬質物質を分散させたCu材が用いられている。熱伝導特性や強度、コスト等の総合的な観点から、Cu−Cr合金が用いられる場合が多い。
また一方で、耐久性向上のために自動車用燃料タンクや灯油タンクの素材として、Znめっき又はZn合金めっき等が施されためっき鋼板が多く使用されるようになっている。これらのめっき鋼板をシーム溶接する際には、冷延鋼板をシーム溶接する際と比較して、大電流を通電することになるため、電極先端部がさらに過酷な条件下におかれることになる。溶接中の電極先端では、めっき層の成分であるZnやAl、或いはめっき鋼板の母材成分であるFeと電極の主成分であるCuとが合金化反応を起こし、Cu−ZnやCu−Zn−Al−Fe等の金属間化合物を形成してしまう。これらの金属間化合物は非常に脆いため、溶接時の加圧で剥離してしまい、結果として電極先端径が拡大して電流密度が低下することになる。このように、めっき鋼板の溶接では、普通鋼やステンレス鋼等の冷延鋼板を溶接する場合と比較すると、電極寿命が短いという欠点がある。
そこで、電極の高寿命化を狙って、電極先端部の構造を検討した各種提案がなされている。例えば、特許文献1では、高強度、高導電性のCu合金で電極本体を作り、被溶接材が当る当接面に20〜70面積%で被溶接材と合金化や溶着し難いAl23分散銅合金等の複合材料を埋め込んだ二重構造のシーム溶接用電極が提案されている。
また、特許文献2、3では、導電率が70IACS%以上でビッカース硬さが90〜160の材料の本体に、導電率が20IACS%以上でビッカース硬さが130〜200である銅合金の芯材を被溶接材との当接面幅に対して0.4〜0.85の範囲で埋め込んだ構造のシーム溶接用電極が提案されている。
特公昭63−33949号 特開平1−113182号 特開平1−258875号
しかしながら、引用文献1で提案されたシーム溶接用電極であっても、当接面に占める芯材の割合が小さいと、芯材周囲のCu又はCu合金がめっき金属と拡散・合金化しやすく、電極先端径が拡大しやすくなる。芯材もCu合金製であるので、当接面に占める芯材の割合を大きくしようとしても、めっき金属との合金化は避け難い。また、特許文献2、3で提案されたシーム溶接用電極も、芯材が銅合金であるために、めっき金属と拡散・合金化しやすく、芯材の損耗が大きくなって電極先端径も拡大しやすくなる。
本発明は上記の従来電極における欠点を解消すべく、めっき金属との難反応性や高強度特性、高熱伝導特性などを考慮して、長期間の使用にわたって安定した品質の溶接部を形成できるシーム溶接用電極を提供することを目的とする。
本発明のシーム溶接用電極は、その目的を達成するため、Cu又はCu合金からなる電極本体の被溶接材に当接する当接面に、W又はMo若しくはそれらを基材とする合金からなる芯材を埋設した二重構造を持ち、前記当接面の幅寸法をW0、芯材の幅寸法をW1とするとき、幅寸法比率W1/W0が0.7〜3.0の範囲であることを特徴とする。
芯材となるW又はMo若しくはそれらを基材とする合金には、2A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素又は希土類元素の酸化物、窒化物、炭化物及び硼化物から選ばれる少なくとも一種以上の微粒子を分散させた複合材を使用することができる。また、微粒子は、その分散割合を0.5〜10体積%の範囲で選定し、平均粒子径を2μm以下としたものを分散させることが好適である。
本発明のシーム溶接用電極は、電極本体をCu又はCu合金製とし、被溶接材に接触する電極本体の当接面にW又はMo若しくはそれらを基材とする合金からなる芯材を埋め込んでいる。そして、当接面の幅に対する芯材の幅を0.7〜3.0とすることにより、めっき金属と合金化しやすいCu又はCu合金製電極本体と被溶接材との接触面積を少なくしている。これにより、電極とめっき金属との溶着・合金化が抑えられて電極の長寿命化が図られる。
本発明者等は、Zn系めっき鋼板をシーム溶接する際の電極の材質・形状について種々の検討を重ねた。
先ず、Cu又はCu合金製電極本体が被溶接材に当接する面に、電気伝導性、熱伝導性に優れた高強度のWやMoからなる芯材を埋設した二重構造電極に着目し、電極構成材料および芯材と周囲材との大小関係を種々変更した溶接用電極を用いてZn系めっき鋼板をシーム溶接し、電極寿命を調査した。
その結果、電極本体にCu又はCu合金を、芯材にW、W合金、Mo又はMo合金を用いたシーム溶接用電極では、被溶接材に接触する当接面の幅寸法をW0、芯材の幅寸法をW1とするとき、W1/W0=0.7〜3.0の範囲に設定することが電極の長寿命化に有効であることを確認した。
二重構造の埋め込み型電極の電極寿命が長い理由は、溶接打点を重ねても埋め込んだ芯材により一定面積の通電路が確保され、安定したナゲットの形成ができる点にある。そのため、芯材の性質としては、WやMoのように硬質でめっき金属と合金化反応し難い材料が好適である。
そこで、Wを芯材に用い、芯材を取り囲む電極本体を純Cu製とした溶接用電極において、芯材の幅を種々変更し、純Cu製周囲材の被溶接材への当接状況の違い、すなわち、芯材/当接面の幅寸法比率と電極寿命の関係を調査した。
なお、連続溶接する場合の初期ナゲット幅、すなわち溶接開始時に形成されるナゲットの電極幅方向の寸法を何れの電極でも同一になるような溶接条件とした。
ところで、MoもWとほとんど同じ挙動を示す金属であるから、Wで得られた結果は、Mo、W合金、Mo合金でも援用できる。
詳細は後記の実施例に記載するが、二重構造の電極1(図1)にあって、被溶接材に接触する当接面2の幅W0と周囲材3に埋め込んだ芯材4の幅W1との比率W1/W0を0.7〜3.0の範囲に設定する必要がある。
W、W合金、Mo又はMo合金は、Cuと比較してめっき金属に対する合金化反応性が低い。このため、当接面2の幅W0より芯材4の幅W1が大きい場合、Cu製周囲材3がめっき金属と接触せず、Cuとめっき金属との合金化反応が生じない。W1/W0≧0.7の幅W1の芯材4であれば、周囲材3がめっき金属と多少接触するものの、接触面積が少ないため周囲材3とめっき金属との合金化による変形が幅を大きくするまでには到らず、電極全体として先端部形状を変形させることにはならない。
しかも、W、W合金、MoやMo合金は、酸化物等を分散させた銅材よりもめっき金属と合金化反応しにくく、常温・高温での強度が高い。そのため、W1/W0=0.7であっても、電極寿命が延びるものと予測される。ただし、幅寸法比率が3.0を超えるようになると、周囲材3による芯材4の冷却作用が非常に小さくなり、芯材4の表面に堆積するめっき金属が増量して電極/被溶接材間の電気抵抗が高くなり過ぎナゲットが形成しにくくなる。
W、W合金、Mo又はMo合金製の芯材をCu又はCu合金製の電極本体で取り囲んだ二重構造は、芯材の割れ発生を防止する上でも有効である。
すなわち、溶接時には当接面が発熱し、その面を中心に熱膨張するが、温度変化が急激でW、W合金、Mo又はMo合金の熱伝導率が低いため熱膨張が当接面付近に留まり、熱が伝わりにくい外周近傍では熱膨張量が少ない。当接面とその外周で異なる熱膨張は熱応力の発生原因であり、結果として当接面付近で芯材に割れを誘発させる。かかる熱膨張差に起因する欠陥は、当接面やその周辺を高融点材料であるWやMoとし、電極本体を熱伝導性の良好なCu又はCu合金とすることにより防止できる。
Wの通電焼結体からなる電極にあっては、10〜200ppm程度のK(カリウム)を、酸化物、窒化物、金属K、炭化物或いは硼化物の形態でドープされたものが多用されている。本明細書中では、Wは上記ドープWをも包含していることを付言しておく。
芯材のW、W合金、Mo又はMo合金は、CuやCu合金と比べるとめっき金属との合金化反応性は低いが、皆無ではない。また、W、W合金、Mo又はMo合金は硬質であるため加圧時の衝撃で割れ発生しやすい欠点もある。そこで、めっき金属との合金化反応性を低く、かつ耐衝撃性に優れるように改良したW、W合金、Mo又はMo合金を芯材に使用すると電極寿命の延びが予測される。
改良手段としては、Be、Mg、Ca、Sr等の2A族元素、Ti、Zr、Hf等の4A族元素、V、Nb、Ta等の5A族元素、Cr、Mo、W等の6A族元素又はYを含む希土類元素の酸化物、窒化物、炭化物及び硼化物から選ばれる少なくとも一種以上の微粒子を0.5〜10体積%の割合で分散させることが好ましい。
微粒子分散は、芯材に生じがちな微細割れを抑制する上でも有効である。これらの微粒子は、AlやZnとの反応性に乏しいため、シーム溶接時に芯材であるW、W合金、Mo又はMo合金にめっき金属が濡れ難くし、W、W合金、Mo又はMo合金とめっき金属との合金化反応を抑制する。
特に酸化しやすいMgを含むZn−Al−Mg合金めっき鋼板の溶接にあっては、シーム溶接中に生成したMgOが電極先端に堆積し、電極/めっき鋼板間の抵抗を高くして被溶接部が過熱される結果、更なるMgOの生成・堆積が懸念される。しかし、微粒子を分散させたW、W合金、Mo又はMo合金の場合は、MgOの付着・堆積が抑えられるので長期にわたって溶接部品質が安定する。
めっき金属の溶着を確実に抑制するためには、芯材に分散させる微粒子、めっき金属成分の双方の物性に着目する必要がある。例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、Y、Ce等の酸化物は、MgOより標準生成自由エネルギーが低い又は同レベルであるため、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板をシーム溶接する際にめっき金属中のMgが金属酸化物の還元反応で酸化することはない。その結果、MgOの生成・堆積が抑制される。
また、La23、BeO、SrO、CeO2、Ce23、ZrO2、MgO、CaO、Y23、TiC、WC、TaC、ZrC、HfC、ZrB2、ZrN、TiN等は、高融点でめっき金属との反応性が特に低いため、W、W合金、Mo又はMo合金中に分散させても焼結体の強度を維持でき、電極寿命の延長に好適である。さらに、W、W合金、Mo又はMo合金に分散させた微粒子は、芯材が衝撃を受けた際の割れの伝播をピン止めする作用を発揮し、結果的に耐衝撃性に優れ、割れ発生を抑制する。
微粒子は改良効果を得る上で0.5体積%以上分散させることが好ましいが、10体積%を超えると電気伝導性が大きく低下し、電極先端へのめっき金属の堆積量が多くなり、これによって電極と被溶接材での電気抵抗が高くなって被溶接材間に十分な溶接電流が通電しにくくなるためナゲット形成が不十分になってしまう。
また、含有させる微粒子の粒子径は、2μm以下にすることが好ましい。2μmを超える微粒子を含有させると熱膨張率の差によって芯材の破壊の起点になりやすい。
一般に、W、W合金、Mo又はMo合金は、焼結法で製造される。本発明の芯材であるW、W合金、Mo又はMo合金も焼結法で製造される。
芯材の形状にするには、必要に応じて微粒子を加えたW、W合金、Mo又はMo合金の酸化物粉末あるいは金属粉末を還元雰囲気で熱処理し、得られた粉末を適宜形状に成形して仮焼結、通電焼結した後、焼結体をプレス加工して板状にする。その後、機械加工を施して必要形状・寸法の芯材を得る。
電極本体である周囲材のCuまたはCu合金にも、通常のものが用いられる。市販の純Cu、あるいはCu−Cr合金、Cu−Cr−Zr合金等が使用される。
芯材を周囲材に埋め込む態様も、従来法をそのまま適用できる。穿った孔に芯材を圧入しても良いし、ロウ材を介して挿し込んでも良い。或いは焼き嵌めを行っても良いし、芯材を周囲材で鋳包んだ後冷間鍛造を施しても良い。芯材と周囲材が密に接合されていれば、電気伝導、熱伝導の点で問題になることはない。
二重構造の電極構造体を形成した後、先端に研削加工を施して所要の形状に整える。
実施例1:
Zn−6%Al−3%Mg合金めっきを片面当り60g/m2で施した板厚0.8mmの2枚のZn−Al−Mgめっき鋼鈑を、先端幅が6mm、全体幅が20mmのCF形で、全体径が260mmの二重構造の電極輪であって、芯材には純度99.95%のW粉末を通電焼結した後にプレス成形と切削加工を行って高さ6mm、外径260mm、内径250mmのリング形状とし、周囲材の純Cuに埋め込んだ。
表1に示す溶接条件にて溶接を行なって電極寿命を調査した。電極寿命は、溶接距離で10mごとに溶接部の横断面観察を行い、電極輪・幅方向のナゲット幅を測定し、その幅が4√t=3.58mm(t:材料板厚)を下回る距離とした。
Figure 2007260718
表2に当接面幅と芯材幅との幅寸法比率を変更した際の電極寿命の比較を示す。
幅寸法比率が0.7〜3.0の範囲では、一体型の1%Cr−Cu電極輪よりも大幅に電極寿命改善されて、800m以上となっていた。
これに対して、幅寸法比率が0.7に満たなくても、また3.0を上回っていても、電極寿命の延長は見られなかった。
Figure 2007260718
実施例2:
粒子径0.5μmのCeO2粉末を種々の配合割合で分散させたWを芯材とし、電極寿命に及ぼすCeO2粉末の含有量と幅寸法比率の影響を調査した。
芯材にCeO2粉末を含有させた以外は、実施例1と同じである。
結果を表3に示す。
CeO2粉末の含有量が0.5〜10体積%で、幅寸法比率が0.7〜3.0の条件では、800m以上の電極寿命で改善効果が見られた。
これに対して、CeO2粉末含有量が0.5体積%未満でも幅寸法比率の効果で電極寿命は800m以上となったが、芯材先端には比較的多くのめっき金属が堆積していた。また、CeO2粉末含有量が10体積%を超えると寿命改善作用が消滅していた。これは、電極先端へのめっき金属の堆積量が多くなり、電極と被溶接材での電気抵抗が高くなってナゲット形成が不十分になってしまうためと予測される。
Figure 2007260718
実施例3:
粒子径と材質を種々変更した微粒子を、1体積%分散させたWを芯材として電極寿命を調査した。
芯材に微粒子を含有させた場合と幅寸法比率を1.0にしたこと以外は、実施例1と同じである。
結果を表4に示す。
粒子径が2μm以下の微粒子をWに分散させた場合は、電極寿命が大幅に延びた。電極寿命の改善は、2A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素又は希土類元素の化合物である限り、微粒子の種類に拘らず有効であった。
また、CeO2の微粒子の粒子径を0.5〜3μmで変更した場合は,粒子径が2μm以下で電極寿命の改善効果が見られた。
Figure 2007260718
本発明のシーム溶接用電極の構造を模式的に示す全体図(a)及び先端部の拡大図(b)
符号の説明
1:シーム溶接用電極 2:当接面 3:周囲材 4:芯材 W0:当接面幅
W1:芯材幅

Claims (5)

  1. Cu又はCu合金からなる電極本体の被溶接材に当接する当接面に、W又はMo若しくはそれらを基材とする合金からなる芯材を埋設した二重構造を持ち、前記当接面の幅寸法をW0、芯材の幅寸法をW1とするとき、幅寸法比率W1/W0が0.7〜3.0の範囲であることを特徴とするシーム溶接用電極。
  2. 芯材が、W又はMo若しくはそれらを基材とする合金に、2A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素又は希土類元素の酸化物、窒化物、炭化物及び硼化物から選ばれる少なくとも一種以上の微粒子を分散させた複合材で作製されている請求項1記載のシーム溶接用電極。
  3. 芯材が、W又はMo若しくはそれらを基材とする合金に、Be、Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、Y、Ceの酸化物から選ばれた一種又は二種以上の微粒子を分散させた複合材からなるものである請求項1に記載のシーム溶接用電極。
  4. 微粒子を0.5〜10体積%の割合で分散させたものである請求項2又は3に記載のシーム溶接用電極。
  5. 微粒子の平均粒子径が2μm以下である請求項2〜4のいずれかに記載のシーム溶接用電極。
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