JP4683896B2 - スポット溶接用電極 - Google Patents
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また、Al材は従来より難溶接材料として知られている。熱伝導性がよいために、溶融状態を保つことが難しいために、急激に温度を上げて溶融状態とし、一気に加圧してスポット溶接する必要がある。このために溶接電流を高くする必要があり、それに伴う温度上昇により、電極材料は被溶接材料と化学反応を起こして酸化物や合金を作り易くなって、電極とAl板の溶着が起こり易くなる。
そこで、電極の高寿命化を狙って、電極本体をW−Mo合金、或いは各種ドープ剤を添加したW−Mo合金材料で構成したものや、電極先端中央部に埋め込んだ材料とその周囲の材料とが異なる二重構造の電極等が提案されている。
二重構造の電極としては、例えば、特許文献2に、高強度高導電性のCu合金からなる電極本体の被溶接材に当接する当接面に、その20〜70%の面積領域を占めるように、前記被溶接材と合金化し難い、或いは溶着し難い、例えばAl2O3分散Cu合金等の金属を埋設したものが提案されている。
また、特許文献3には、電極本体が被溶接材に当接する面に、電気伝導度及び熱伝導度に優れ、しかもCu若しくはCu合金からなる電極本体よりも高強度の、例えばWやMoからなる芯材を、当接面の5〜20%の面積を占めるように埋設したものが提案されている。
すなわち、特許文献1に記載の電極は、W材料の周囲にCuのような比較的軟らかい高熱伝導性がないために、温度上昇時の熱が伝導され難く、当接面と外周部とで温度差が生じる。この温度差とスポット溶接時の加圧により、当接面付近からW材料にクラックが発生する。そして電極寿命は急激に低下する。
Cu若しくはCu合金からなる電極本体の当接面にWやMoを埋設した特許文献3に記載の電極では、前記のような当接面と外周部とに生じる温度差に起因したクラック発生はある程度は抑制することができる。しかしながら、当接面がWやMoの単体で構成されていると、繰り返しの使用で熱及び衝撃によりクラックが発生しやすくなる。その結果、電極寿命は従来の、例えばアルミナ分散銅電極と比べて大きく延びない。
本発明のスポット溶接用電極は、一般的な鋼板には勿論好適であるが、その他にも、他の金属と合金化しやすく難溶接材とされる含アルミニウムめっき鋼板やアルミニウム部材の溶接等にも好適に用いられる。
また、特にMg成分を含有するZn−Al系合金めっきを施した鋼板やZn系めっき鋼板のように、金属との溶着が激しく、溶接に大電流が必要な場合でも対応できる電極を得ることも目的の一つである。
スポット溶接時に当接面では発熱が起こり、当接面を中心として熱膨張が生じる。温度が急激に変化するとき、Wのように熱伝導率が低い材料であると当接面に近いところが膨張するのに対して、外径に近い部分は熱が伝わらないために膨張しない。その結果、電極の当接面近傍に割れや剥離が生じる。
熱膨張差に起因する弊害を回避するためには、当接面及びその周辺のみをWのような高融点金属部分とし、電極本体はCuのような高熱伝導性金属とすればよいことになる。
本発明のスポット溶接用電極は、Wの焼結体中に分散させた高融点物質微粒子の作用により、前記微細なクラックの発生やその成長を最小限に止めることができ、その結果、電極寿命を大幅に延ばすことができたものである。
融点が2400℃に満たない微粒子を分散させた場合、芯材の製造工程での焼結時に2000℃を超える温度まで加熱するため、微粒子が蒸発又は溶融或いは偏析して均一に分散されず、微粒子を分散させた効果が得られない。
本発明者等は前記特許文献3で提案されている、Cu又はCu合金からなる電極本体が被溶接材に当接する面に、電気伝導度及び熱伝導度に優れ高強度のW芯材を埋設した二重構造の電極に着目し、その電極を構成する各材質を種々に変更して鋼板のスポット溶接を実施して、電極寿命を調査した。
その結果、電極本体にCu又はCu合金を用い、芯材に平均粒子径が2μm以下であって、融点が2400℃以上の2a族元素,4a族元素,5a族元素,6a族元素,希土類元素の酸化物,窒化物,炭化物,ホウ化物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物微粒子を0.5〜10体積%の割合で分散させたWの焼結体を用いた場合、電極自体にW−Mo系合金を用いた場合以上に芯材の耐溶着性を向上させることができるばかりでなく、さらに、溶接時に電極の当接面近傍に生じやすいクラックの発生とその進展を抑制し、電極が長寿命化できることを確認した。
そこで、芯材として、耐溶着性に優れる前記微粒子含有のW焼結体を用い、電極本体である周囲材を純Cuとした電極を使用してスポット溶接するとき、従来の単なるW系やMo系の合金を用いた電極を使用してスポット溶接したときよりも、電極先端部への被溶接金属の堆積が抑制され、長期間にわたっても安定したスポット溶接部が得られることを確認した。
一例として、Wと添加物の粉末を混合し、円柱状に冷間静水圧プレスした後、両端に電極を取り付けて水素ガス中で通電焼結を行う方法が挙げられる。その後、得られた焼結体に熱間回転鍛造を施し、長さ方向に伸ばしつつ密度を高める。所望の径になった時点で回転鍛造を終了し、切断及び加工することにより所望のW焼結体を得ることができる。
別の例として、Wと添加物の粉末を混合後に柔軟性を有する密封容器に充填し、冷間静水圧プレスを行った後に、水素雰囲気中にて焼結を行い、その後に熱間静水圧プレスを行って焼結体を得る方法も挙げられる。
以上二例を示したが、良好なW焼結体を得ることができれば、その製造法は問わない。
芯材をCu材からなる周囲材に埋め込む態様も、従来法をそのまま適用できる。両者が強固、且つ電気や熱が充分に伝わるように密着されるような態様であれば、その方法は問わない。穿った孔に芯材を圧入しても良いし、ロウ材を介して挿し込んでも良い。或いは焼き嵌めを行っても良いし、Cuを非酸化性雰囲気下で溶融してW材と接触した状態で冷却して一体化しても良い。熱伝導や接合強度を考慮すると、溶融法で一体化する方法が最も好ましい。
Zn−6%Al−3%Mg合金めっきを片面当り30g/m2で施した板厚0.7mmの2枚のZn−Al−Mgめっき鋼板を、当接面の直径が6mm,全体直径が16mmのDR型で、当接面直径6mmの部分に曲率半径40mmの円弧と他の部分に曲率半径8mmの円弧を付与した電極であって、純度99.95%のW粉末に粒径0.05〜3μmのTaC粉末を種々の配合割合で分散させた混合粉末を仮成形後、通電焼結した後にスエージング加工とセンターレス研磨を行った径6mmのW材を還元雰囲気中で溶融した純Cuと一体化した電極を上下に用い、表1に示す条件で連続打点の溶接を行った。そして、形成されたナゲット径を測定し、ナゲット径が4√t=3.35(tは板厚)を下回るものを溶接不良として、電極寿命を求めた。
その結果を表2に示す。
また微粒子の平均粒子径が3μmであった試験No.4では、電極寿命が比較的短かった。分散させた微粒子が数的に少ないために、当接面近傍でのクラックの発生や進展を抑制する作用を充分に発揮することができず、寿命の改善にはつながらなかったものと思われる。しかも分散粒子が大きすぎたために、Wとの熱膨張差により分散粒子がクラックの起点にもなり得る。さらに、試験No.5では、電極寿命は延びたものの、W材に分散させた微粒子量が少ないために、めっき成分と電極との濡れが大きく、MgOの堆積が比較的多かった。このMgOによって電極とめっき鋼板間の抵抗が上昇してめっき金属との溶着が起こりやすい状態であったと思われる。
このように、分散させる微粒子には、大きさと分散量を考慮する必要があることがわかる。すなわち、大きさ及び分散量が適切でないと、所期の目的が達成されない。
W材に分散させる微粒子としてTaCの代わりに各種微粒子を用い、実施例1で使用したものと同じ2枚のZn−Al−Mgめっき鋼板を、実施例1と同じ条件で連続打点溶接し、電極寿命を調査した。
そして、実施例1と同じ評価方法で電極寿命を求めた。
その結果を表3に示す。
2a族元素,4a族元素,5a族元素,6a族元素,希土類元素の化合物であれば、微粒子の種類に拘わらず、電極寿命の改善に有効であることがわかる。
いずれも実施例1で検討したと同様の機能を発揮していると思われる。
被溶接材としてAlめっきを片面当り30g/m2で施した板厚0.8mmの2枚のAlめっき鋼板を用い、表4に示す条件以外は実施例1で使用した電極と同じ電極を用いて連続打点溶接し、電極寿命を調査した。
そして、実施例1と同じ評価方法で電極寿命を求めた。
その結果を表5に示す。
TaC微粒子は、実施例1と検討したのと同様の機能を発揮していると思われる。
実施例1で用いたものと同じ電極を使用し、板厚1.0mmの5000系の自動車用アルミニウム板を次の表6に示す条件で連続打点溶接し、電極寿命を調査した。
そして、実施例1と同じ評価方法で電極寿命を求めた。
その結果、表7に示す評価結果が得られた。
Claims (1)
- Cu又はCu合金からなる電極本体の被溶接材に当接する当接面に、Wを基材とする焼結体が芯材として埋設された電極であって、
前記芯材には、2a族元素,4a族元素,希土類元素の窒化物,炭化物,ホウ化物及び5a族元素,6a族元素の酸化物,窒化物,炭化物,ホウ化物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物からなり融点が2400℃以上で、平均粒子径が2μm以下の微粒子が、合計で0.5〜10体積%分散されていることを特徴とするスポット溶接用電極。
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