JP2010027359A - リサイクルジルコニア粉末の製造方法、当該製造方法によるリサイクルジルコニア粉末、およびそれを用いたジルコニア焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明の第一発明は、ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法である。
また、ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(A’)当該第1セル溶解工程に次いで、アルカリで更に電極材料を溶解する工程(第2セル溶解工程)
(B)第2セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法である。なお、本発明では第1セル溶解工程の前に燃料電池用セルを前粉砕して粉砕セル片とすることが好ましい。また、当該燃料電池用セルに含まれるジルコニアが、Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなることが好ましい。
本発明の第七発明は、第二発明により得られるリサイクルジルコニア粉末からなる原料ジルコニア粉末と、あるいは当該リサイクルジルコニア粉末と未使用ジルコニア粉末とからなる原料ジルコニア粉末と、NiO粉末とからなる原料燃料極粉末を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極または燃料極基板である。
ジルコニアを含む燃料電池用セル中の電極材料を酸で溶解し、電極材料が溶解されたジルコニア材料を得る工程である。ジルコニアを含む燃料電池用セルとは、電解質支持型燃料電池用セルあるいは燃料極支持型燃料電池用セルのうち、電解質がジルコニア材料からなるセル、および/または燃料極や空気極の電極材料の一部にジルコニア材料を含むセルであって、当該セル製造時あるいは製造後に生じる寸法等の規格外セル、破損したセルの破片や、発電終了後の使用済みセルのことを言う。その形状は平板状、ディンプル付平板状、円筒状、平板円筒状、あるいはそれらの破損形状や一部破損形状など特に制限はない。
さらに電解質と空気極との間に、これらの固相反応防止のために中間層が配置されていても良い。その中間層材料としては、上記セリア系酸化物であり、好ましくは15〜30モル%のGd2O3、Y2O3、Sm2O3でドープされたセリアである。
ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セル中のセリア以外の電極材料を酸で溶解する上記第1セル溶解工程に次いで、第1セル溶解工程で残存しているセリアを溶解してジルコニア材料を得る工程である。上記燃料電池用セルの電解質材料、燃料極材料、空気極材料、中間層材料および/または燃料極基板材料中に存在する安定化ジルコニアとセリアは第1セル溶解工程の酸では溶解が非常に困難であり、そのうちセリアは酸に溶解しないで未溶解のまま残存している。この残存CeO2はアルカリに溶解するので、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液、アンモニア水等のアルカリを使用する。特に水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液が好適である。アルカリの濃度は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの場合は1〜10規定、好ましくは1〜5規定、アンモニア水では、5〜35質量%、好ましくは8〜15質量%である。
上記第1セル溶解工程あるいは第2セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕して、本発明の平均粒子径が0.1〜35μmであるリサイクルジルコニア粉末を得る工程である。なお、上記ジルコニア材料とともに、燃料極、空気極および/または燃料極基板中に安定化ジルコニアが含有されている場合は、これらもジルコニア材料に含まれる。
上記で得られたジルコニア材料は前記のように高硬度・高強度・高靭性であるので、下記のような乾式粉砕、あるいは複数の乾式粉砕、さらには乾式粉砕あるいは複数の乾式粉砕後湿式粉砕方法等があるが、粗大粒子割合が少なくより微細に、且つ効率的に短時間で粉砕してリサイクルジルコニア粉末を得るためには、複数の乾式粉砕(例えば1次乾式粉砕、2次乾式粉砕)後に湿式粉砕することが好ましい。
先ず、当該原料ジルコニア粉末、溶媒、バインダー、可塑剤等を混合し、原料スラリーまたは原料混練物を調製する。原料スラリーまたは原料混練物に用いられるバインダーの種類にも格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系およびメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。これらの中でも、ジルコニアグリーンシートの成形性や打抜き加工性、強度、焼成時の収縮率バラツキを抑制する観点から、熱可塑性で、且つ数平均分子量が20,000〜250,000、より好ましくは50,000〜200,000の(メタ)アクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。
原料スラリーまたは原料混練物は、上記成分を適量混合することにより調製する。その際、各粒子の微細化や粒子径を均一化するために、ボールミル等により粉砕しつつ混合してもよい。また、各成分の添加の順番は特に制限されず、従来方法に従えばよい。
次に、上記のようにして得られた原料スラリーまたは原料混練物を成形する。成形方法は特に制限されないが、ドクターブレード法や押出成形法を用いて、適切な厚さのシートとすることが好ましい。その後、乾燥することによりジルコニアグリーンシートとする。乾燥条件は特に制限されず、例えば室温〜150℃の一定温度で乾燥してもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。
得られたジルコニアグリーンシートは、任意の方法で適当な大きさに打抜き若しくは切断加工してもよい。このグリーンシートの形状としては、円形、楕円形、角形、R(アール)を持った角形など何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、角形、Rを持った角形などの穴を1つもしくは2つ以上有するものであってもよい。また、グリーンシート厚も特に制限されるものではないが、例えば35〜1000μm程度とすることがきる。
ジルコニアグリーンシートを焼成する際には、1枚づつ棚板に当該グリーンシートを載置して焼成することも可能であるが、量産化のために当該ジルコニアグリーンシートと多孔質スペーサーシートとを交互に積み重ねた積層体として焼成することが好ましい。通常は再下段にスペーサーシートを置き、その上にジルコニアグリーンシートとスペーサーシートを交互に積み重ね、再上段にはスペーサーシートを載せる。再下段のスペーサーシートはジルコニアグリーンシートと棚板との接合を防ぎ、最上段のスペーサーシートは重しとなりジルコニアグリーンシートの反りやうねりの発生を低減する。
燃料電池用セルの製造
市販の8モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(東ソー株式会社製、商品名「TZ−8YS」、平均粒子径:0.52μm、比表面積:8.5m2/g、以下8YSZ粉末と記す)100質量部、溶媒であるトルエン/イソプロパノール混合液(トルエン/イソプロパノール質量比=3/2)50質量部、および分散剤であるソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部とから成る混合物を、ボールミルを用いて8YSZ粉末を解砕しつつ均一混合した。当該混合物へ、バインダーとしてメタクリレート系共重合体(数平均分子量:100,000、ガラス転位温度:−8℃、固形分濃度:50%)を固形分換算で15質量部と、可塑剤であるジブチルフタレート3質量部を添加し、さらにボールミルにより混合してスラリーとした。得られたスラリーを濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。この塗工用スラリーをドクターブレード法によりPETフィルム上に塗工し、塗工部に続く乾燥機中を0.2m/分の速度で通過させて乾燥し、厚さ320μmの長尺8YSZグリーンシートを得た。この長尺グリーンシートを120mm角づつに切断して、120mm角の8YSZグリーンシートを得た。
参考に、当該8YSZ焼結体シートの物性を測定すると、シート理論密度に対するアルキメデス法による密度から求めた気孔率は97.2%、JIS−1601に準拠した焼結体シートの3点曲げ強度試験による強度の20枚の平均値は348MPaであった。
次に、当該燃料電池セル前駆体を上記と同様に積層し、大気雰囲気下で最高温度950℃3時間焼成して焼付け、中間層が形成されたジルコニアとセリアを含む燃料電池用セル(Y)を作製した。
(A)第1セル溶解工程
上記参考例1で得られた燃料電池用セル(X)をプラスチックハンマーで最大長が1mm以下になるように前粉砕して燃料電池用セル片を得た。
得られたセル片100gと50%硝酸水溶液200mLとをビーカーに入れ攪拌機で攪拌しながら超音波照射した。20分後、電極成分が一部溶解した50%硝酸水溶液を排出し、新たに50%硝酸水溶液200mLを加え、攪拌しながら20分間超音波を照射した。この操作を5回繰り返した後の超音波照射した50%硝酸水溶液はほとんど無色になったので、この溶液を希釈後、希釈液中のY、Ni、La、Sr、Mnの濃度をICP分析装置(島津製作所社製、型式「ICPE−9000」)で測定した。これら5つの元素の濃度(金属換算)はすべて100ppm以下になっており、上記セル片は電極が除去されたことが確認されジルコニア材料を得た。
上記第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を蒸留水の流水中で洗浄して乾燥して回収した後、カッティングミル(フリッチュ社製、型式「P−25」、篩目:0.75mm梯形目)に順次投入し、回転数2800rpmで回転刃付きローターを回転させて乾式で1次粉砕し、受け皿にジルコニア粉末を回収した。この時の回収率は98%であった。
次いで、この1次粉砕ジルコニア粉末を、振動式試料供給装置から連続的に高速ローターミル(フリッチュ社製、型式「P−14」、篩目:0.12mm梯形目)に投入し、回転数20000rpmで12枚刃のローターを回転させて乾式で2次粉砕し、ジルコニア粉末を回収した。この時の回収率は96%であった。得られた2次粉砕ジルコニア粉末の平均粒子径は6.9μm、最大粒子径は30μmであった。
(A)第1セル溶解工程
上記参考例2で得られた燃料電池用セル(Y)をプラスチックハンマーで最大長が3mm以下になるように前粉砕して燃料電池用セル片を得た。
得られた用セル片100gと50%硫酸水溶液200mLを用いた以外は実施例1の第1セル溶解工程と同様にして電極材料の溶解操作を5回繰り返した。50%硫酸水溶液はほとんど無色になったので、この溶液を希釈後、希釈液中のY、Ni、La、Sr、Co、Feの濃度をICP分析装置で測定した。これら6つの元素の濃度(金属換算)はすべて100ppm以下になっており、上記セル片はCeO2以外の電極が除去されて、CeO2以外の電極なしジルコニア材料を得た。
上記第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料100gと5規定の水酸化ナトリウム水溶液200mLとをビーカーに入れ攪拌機で攪拌しながら超音波照射した。20分後、CeO2成分が一部溶解した水酸化ナトリウム水溶液を排出し、新たに5規定の水酸化ナトリウム水溶液2000mLを加え、攪拌しながら20分間超音波を照射した。この操作を3回繰り返した後の超音波照射した後、この溶液を希釈して希釈液中のCeの濃度をICP分析装置で測定した。Ce元素の濃度(金属換算)は100ppm以下になっており、CeO2が除去されたジルコニア材料を得た。
上記第2セル溶解工程で得られたジルコニア材料を蒸留水の流水中で洗浄して乾燥して回収した後、カッティングミル(フリッチュ社製、型式「P−25」、篩目:0.75mm梯形目)に順次投入し、回転数2800rpmで回転刃付きローターを回転させて乾式で1次粉砕し、受け皿にジルコニア粉末を回収した。この時の回収率は98%であった。
次いで、この1次粉砕ジルコニア粉末を、振動式試料供給装置から連続的に高速ローターミル(フリッチュ社製、型式「P−14」、篩目:0.12mm梯形目)に投入し、回転数20000rpmで12枚刃のローターを回転させて乾式で2次粉砕し、ジルコニア粉末を回収した。この時の回収率は96%であった。得られた2次粉砕ジルコニア粉末の平均粒子径は4.6μm、最大粒子径は28.3μmであった。
実施例1で得た8YSZリサイクルジルコニア粉末(I)40質量%と、参考例1で使用した未使用の8YSZジルコニア粉末60質量%の混合物を原料ジルコニア粉末とした以外は、参考例1の燃料電池用セルの製造に記載した8YSZ焼結体シートの製法と全く同様にして8YSZ焼結体シート200枚を製造した。
実施例2で得た8YSZリサイクルジルコニア粉末(II)15質量%と、参考例1で使用した未使用の8YSZジルコニア粉末85質量%の混合物を原料ジルコニア粉末とした以外は、参考例1の溶解用セルの製造に記載した8YSZ焼結体シートの製法と全く同様にして8YSZ焼結体シート200枚を製造した。
Claims (11)
- ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法。 - ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(A’)当該第1セル溶解工程に次いで、アルカリで更に電極材料を溶解する工程(第2セル溶解工程)
(B)第2セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法。 - 当該燃料電池用セルに含まれるジルコニアが、Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなる粉末である請求項1または2記載のリサイクルジルコニア粉末の製造方法。
- 請求項1〜3に記載の方法を用いて得られるリサイクルジルコニア粉末の平均粒子径が0.1〜35μmであることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末。
- Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなる粉末である請求項4記載のリサイクルジルコニア粉末。
- 請求項4または5に記載のリサイクルジルコニア粉末を原料ジルコニア粉末とし、または当該リサイクルジルコニア粉末と未使用ジルコニア粉末とからなる原料ジルコニア粉末として成形し、焼成して得られることを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。
- 請求項6において、請求項4または5記載の原料ジルコニア粉末を、ドクターブレード法または押出成形法によってシートに成形した後、焼成して得られることを特徴とする厚さが0.03〜0.5mmのジルコニア焼結体シートの製造方法。
- 請求項6に記載の方法を用いて得られることを特徴とするジルコニア焼結体。
- 請求項8に記載のジルコニア焼結体を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質。
- 請求項8に記載のジルコニア焼結体または請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
- 請求項4または5に記載の原料ジルコニア粉末と、NiO粉末とからなる原料燃料極粉末を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極または燃料極基板。
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