JP5376851B2 - リサイクルジルコニア粉末の製造方法、当該製造方法によるリサイクルジルコニア粉末、およびそれを用いたジルコニア焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の第一発明は、ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)当該第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を酸で溶解する工程(ジルコニア溶解工程)
(C)当該ジルコニア溶解工程で得られた溶解液を、共沈法、加水分解法、水熱合成法または噴霧乾燥法によりジルコニア粉末前駆体を調製する工程(前駆体調製工程)
(D)前駆体調製工程で得られた前駆体を、乾燥・仮焼してリサイクルジルコニア粉末とする工程(仮焼工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法である。
また、ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(A’)当該第1セル溶解工程に次いで、アルカリで更に電極材料を溶解する工程(第2セル溶解工程)
(B)当該第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を酸で溶解する工程(ジルコニア溶解工程)
(C)当該ジルコニア溶解工程で得られた溶解液を、共沈法、加水分解法、水熱合成法または噴霧乾燥法によりジルコニア粉末前駆体を調製する工程(前駆体調製工程)
(D)前駆体調製工程で得られた前駆体を、乾燥・仮焼する工程(仮焼工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法である。なお、本発明では第1セル溶解工程の前に燃料電池用セルを前粉砕して粉砕セル片とすることが好ましい。また、当該燃料電池用セルに含まれるジルコニアが、Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなることが好ましい。
本発明の第二発明は、第一発明にかかる製造方法によって得られるリサイクルジルコニア粉末であり、その平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする。また、当該リサイクルジルコニア粉末が、Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなることが好ましい。
本発明の第四発明は、第三発明にかかる製造方法によって得られることを特徴とするジルコニア焼結体である。特に、当該の焼結体がジルコニア焼結体シートである場合は、その厚さが0.03〜0.5mmであることが好ましい。
本発明の第五発明は、第四発明により得られるジルコニア焼結体を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質である。
本発明の第七発明は、第二発明により得られるリサイクルジルコニア粉末からなる原料ジルコニア粉末と、あるいは当該リサイクルジルコニア粉末と未使用ジルコニア粉末とからなる原料ジルコニア粉末と、NiO粉末とからなる原料燃料極粉末を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極または燃料極基板である。
ジルコニアを含む燃料電池用セル中の電極材料を酸で溶解し、電極材料が溶解されたジルコニア材料を得る工程である。ジルコニアを含む燃料電池用セルとは、電解質支持型燃料電池用セルあるいは燃料極支持型燃料電池用セルのうち、電解質がジルコニア材料からなるセル、および/または燃料極や空気極の電極材料の一部にジルコニア材料を含むセルであって、当該セル製造時あるいは製造後に生じる寸法等の規格外セル、破損したセルの破片や、発電終了後の使用済みセルのことを言う。その形状は平板状、ディンプル付平板状、円筒状、平板円筒状、あるいはそれらの破損形状や一部破損形状など特に制限はない。その大きさは平板状セルで最大30cm角、通常は10cm角や12cm丸であり、その厚さは0.03〜1cmである。また、円筒状セルの場合は最大外径3cm丸で最大厚さが1cm、その最大長さが120cm、平板円筒状セルは最大長径が20cm、最大短径が3cmで最大厚さが1cm、その最大長さが120cmなど特に制限はないが、大きさが3cm以上で厚さが1cm以上の三次元形状セルは、後の粉砕工程において多大のエネルギーを消費して粉砕効率が悪くなると共に粉砕に伴う不純物の混入が問題となるおそれがある。したがって、燃料電池用セルとしては、一般的に厚さが3mm未満、特に厚さが1mm以下の平板状、シート状セルが好ましい。これら燃料電池用セルは、セル溶解工程を促進するためにプラスチックハンマーや下記の粉砕工程の方法によって前粉砕しておくことが好ましい。この前粉砕によって得られる燃料電池用セル片の大きさはより小さくする方が好ましく、具体的にはセル片の片最大長が10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、特に好ましくは1mm以下である。
さらに電解質と空気極との間に、これらの固相反応防止のために中間層が配置されていても良い。その中間層材料としては、上記セリア系酸化物であり、好ましくは15〜30モル%のGd2O3、Y2O3、Sm2O3でドープされたセリアである。
第1セル溶解工程で使用する酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等であり、特にそれらが水で希釈された希酸が好適である。これら酸の濃度は、硫酸の場合は10〜92質量%、好ましくは20〜80質量%、硝酸の場合は10〜98質量%、好ましくは20〜67質量%、塩酸の場合は3〜37質量%、好ましくは5〜30質量%である。第1セル溶解工程における操作は特に制限されないが、上記燃料電池用セルと上記酸を容器に入れ、室温下で燃料電池用セルや上記酸を攪拌棒や超音波振動等でたえず動かせながら処理して電極材料の溶解を促進させることが好ましい。このときの酸の添加量は、燃料電池用セルが酸に浸る程度であればよく、燃料電池用セル100gに対して100〜1000ml、好ましくは200〜500mlである。また、攪拌時間や超音波振動時間は10分〜16時間、好ましくは20分〜3時間であり、攪拌や超音波振動終了後に上記電極材料が溶解した電極溶解液を除去して再度酸を添加する同様の操作を繰り返してジルコニア材料を得る。このとき、各電極材料溶解物のICPで測定した濃度が元素換算で500ppm以下、好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下になるまで繰り返すことが好適である。なお、ジルコニア材料とは、上記のように燃料電池用セルの電極材料が酸で溶解除去されたあとのセル、あるいは下記第2セル溶解工程のように、燃料電池用セルの電極材料が酸、次いでアルカリで溶解除去されたセルを言う。
ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セル中のセリア以外の電極材料を酸で溶解する上記第1セル溶解工程に次いで、第1セル溶解工程で残存しているセリアを溶解してジルコニア材料を得る工程である。上記燃料電池用セルの電解質材料、燃料極材料、空気極材料、中間層材料および/または燃料極基板材料中に存在する安定化ジルコニアとセリアは第1セル溶解工程の酸では溶解が非常に困難であり、そのうちセリアは酸に溶解しないで未溶解のまま残存している。この残存CeO2はアルカリに溶解するので、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液、アンモニア水等のアルカリを使用する。特に水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液が好適である。アルカリの濃度は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの場合は1〜10規定、好ましくは1〜5規定、アンモニア水では、5〜35質量%、好ましくは8〜15質量%である。
当該ジルコニア溶解工程は、上記第1セル溶解工程(A)や第2セル溶解工程(A’)で得られたジルコニア材料を酸で溶解する工程であり、酸分解法、加圧分解法、融解法等の公知の方法によりジルコニア溶解液やペースト状のジルコニア融解物を得ることができる。また、当然のことながら上記で得たジルコニア材料をさらに粉砕したものを使用することも可能である。
上記溶解工程で得られた溶解液を中和法、均一沈殿法、共沈法、加水分解法、水熱合成法または噴霧乾燥法等の公知の方法によりジルコニア粉末前駆体を調製する工程である。得られた溶解液や融解物はpHが2以下、多くの場合pHが1以下の強酸であるので、次の前駆体調製工程で扱いやすいように希釈液でpHが4.0〜7.0の希釈することが好ましい。好ましい希釈はpHが5.0〜7.0、より好ましくは6.0〜7.0である。希釈に際しては、希釈による急激な発熱を避けるために、水中に当該溶解液を攪拌させながら徐々に滴下することが好ましい。また、当該希釈において、希釈によるジルコニア濃度の低下を防ぎリサイクルジルコニア粉末の生産性を高めることを目的に、水の代わりにジルコニウム塩水溶液、ジルコニアゾル、ジルコニア分散液を用いて希釈することも可能である。さらには、水で希釈した後さらに、下記のように定義される未使用ジルコニア粉末、ジルコニア水酸化物、ジルコニア含水物を添加することも可能である。このとき、ジルコニア材料の組成と同じになるように、当該ジルコニウム塩、ジルコニアゾル、未使用ジルコニア粉末の組成に前記のようなSc2O3、Yb2O3、Y2O3を安定化剤として加えられているもの、あるいは安定化剤を別途単独で加えることが好ましい。
上記前駆体調製工程で得られた前駆体を仮焼する工程である。仮焼の条件、特にその温度は求めるリサイクルジルコニア粉末の比表面積によって決定されるが、一般的に500〜1100℃、ハンドリングに適した比表面積である3〜30m2/gに調整するためには好ましくは600〜1000℃である。また、仮焼時間は、1〜20時間であり、好ましくは2〜10時間である。仮焼の雰囲気は酸化性ガス雰囲気であり、好ましくは空気雰囲気である。以上の工程を順に行うことにより、本発明のリサイクルジルコニア粉体を得ることができる。当該リサイクルジルコニア粉末は微細であるために凝集しやすいので、仮焼後のリサイクルジルコニア粉末を、その後の取扱いをさらに容易にするために、噴霧乾燥して球状に弱く凝集した粉末にすることが好ましい。
先ず、当該原料ジルコニア粉末、溶媒、バインダー、可塑剤等を混合し、原料スラリーまたは原料混練物を調製する。原料スラリーまたは原料混練物に用いられるバインダーの種類にも格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系およびメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。これらの中でも、ジルコニアグリーンシートの成形性や打抜き加工性、強度、焼成時の収縮率バラツキを抑制する観点から、熱可塑性で、且つ数平均分子量が20,000〜250,000、より好ましくは50,000〜200,000の(メタ)アクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。
原料スラリーまたは原料混練物は、上記成分を適量混合することにより調製する。その際、各粒子の微細化や粒子径を均一化するために、ボールミル等により粉砕しつつ混合してもよい。また、各成分の添加の順番は特に制限されず、従来方法に従えばよい。
次に、上記のようにして得られた原料スラリーまたは原料混練物を成形する。成形方法は特に制限されないが、ドクターブレード法や押出成形法を用いて、適切な厚さのシートとすることが好ましい。その後、乾燥することによりジルコニアグリーンシートとする。乾燥条件は特に制限されず、例えば室温〜150℃の一定温度で乾燥してもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。
得られたジルコニアグリーンシートは、任意の方法で適当な大きさに打抜き若しくは切断加工してもよい。このグリーンシートの形状としては、円形、楕円形、角形、R(アール)を持った角形など何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、角形、Rを持った角形などの穴を1つもしくは2つ以上有するものであってもよい。また、グリーンシート厚も特に制限されるものではないが、例えば35〜1000μm程度とすることがきる。
ジルコニアグリーンシートを焼成する際には、1枚づつ棚板に当該グリーンシートを載置して焼成することも可能であるが、量産化のために当該ジルコニアグリーンシートと多孔質スペーサーシートとを交互に積み重ねた積層体として焼成することが好ましい。通常は再下段にスペーサーシートを置き、その上にジルコニアグリーンシートとスペーサーシートを交互に積み重ね、再上段にはスペーサーシートを載せる。再下段のスペーサーシートはジルコニアグリーンシートと棚板との接合を防ぎ、最上段のスペーサーシートは重しとなりジルコニアグリーンシートの反りやうねりの発生を低減する。
具体的な焼成の条件は特に制限されず、常法によればよい。例えば、当該ジルコニアグリーンシートからバインダーや可塑剤等の有機成分を除去するために150〜600℃、好ましくは250〜500℃で5〜80時間程度処理する。次いで、1000〜1600℃、好ましくは1200〜1500℃で2〜10時間保持焼成することによりジルコニア粉末を焼結し、本発明の厚さが0.03〜0.5mmのジルコニア焼結体シートを得る。その全面積は5〜2000cm2、好ましくは50〜1000cm2、さらに好ましくは100〜500cm2である。
燃料電池用セルの製造
市販の8モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(東ソー株式会社製、商品名「TZ−8YS」、平均粒子径:0.52μm、比表面積:8.5m2/g、以下8YSZ粉末と記す)100質量部、溶媒であるトルエン/イソプロパノール混合液(トルエン/イソプロパノール質量比=3/2)50質量部、および分散剤であるソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部とから成る混合物を、ボールミルを用いて8YSZ粉末を解砕しつつ均一混合した。当該混合物へ、バインダーとしてメタクリレート系共重合体(数平均分子量:100,000、ガラス転位温度:−8℃、固形分濃度:50%)を固形分換算で15質量部と、可塑剤であるジブチルフタレート3質量部を添加し、さらにボールミルにより混合してスラリーとした。得られたスラリーを濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。この塗工用スラリーをドクターブレード法によりPETフィルム上に塗工し、塗工部に続く乾燥機中を0.2m/分の速度で通過させて乾燥し、厚さ320μmの長尺8YSZグリーンシートを得た。この長尺グリーンシートを120mm角づつに切断して、120mm角の8YSZグリーンシートを得た。
参考に、当該8YSZ焼結体シートの物性を測定すると、シート理論密度に対するアルキメデス法による密度から求めた気孔率は97.2%、JIS−1601に準拠した焼結体シートの3点曲げ強度試験による強度の20枚の平均値は348MPaであった。
次に、当該燃料電池セル前駆体を上記と同様に積層し、大気雰囲気下で最高温度950℃3時間焼成して焼付け、中間層が形成されたジルコニアとセリアを含む燃料電池用セル(Y)を作製した。
(A)第1セル溶解工程
上記参考例1で得られた燃料電池用セル(X)をプラスチックハンマーで最大長が1mm以下になるように前粉砕して燃料電池用セル片を得た。
得られたセル片100gと50%硝酸水溶液200mLとをビーカーに入れ攪拌機で攪拌しながら超音波照射した。20分後、電極成分が一部溶解した50%硝酸水溶液を排出し、新たに50%硝酸水溶液200mLを加え、攪拌しながら20分間超音波を照射した。この操作を5回繰り返した後の超音波照射した50%硝酸水溶液はほとんど無色になったので、この溶液を希釈後、希釈液中のY、Ni、La、Sr、Mnの濃度をICP分析装置(島津製作所社製、型式「ICPE−9000」)で測定した。これら5つの元素の濃度(金属換算)はすべて100ppm以下になっており、電極材料が除去されたジルコニア材料片を得た。
上記で得られたジルコニア材料片100gを平底白金皿に入れ、次いで、市販の硫酸(98%)500mLと市販の硫酸アンモニウムを200g入れた。これに上蓋をして250℃で1時間加熱してペースト状の融解物を得た。これを10%硫酸で洗い流して溶解液を得た。この溶解液中のジルコニア固形分濃度は10%、そのpHは1以下であった。
攪拌機付き反応槽に蒸留水を入れ、シールレスポンプによりオーバーフロー管を通し循環させた。この反応層に上記ジルコニア溶解工程で得られた溶解液を徐々に滴下してジルコニアとしての濃度が0.5モル/Lまで希釈した。得られた希釈液を毎分50mLの割合で、またアンモニア水(28質量%水溶液)を毎分40mLの割合で、100L反応槽に定量ポンプで注入・攪拌しながらオーバーフロー管より反応液の一部を流出させる流通方式によって、反応槽内のpHは5.5±0.5に保ちつつ中和沈殿生成反応を行った。流出液中の水酸化物を限外ろ過機でろ過分離し水洗することによって硫酸アンモニウム等を除去した後、ロータリーフィルタープレス機で水分を除去して、120℃で20時間乾燥してジルコニア前駆体を調製した。
上記前駆体調製工程で得られたジルコニア前駆体を800℃で5時間仮焼することにより、平均粒子径が0.4μm、最大粒子径が1.5μm、比表面積が12m2/gの8YSZリサイクルジルコニア粉末(I)を得た。
(A)第1セル溶解工程
上記参考例1で得られた燃料電池用セル(Y)をプラスチックハンマーで最大長が3mm以下になるように前粉砕して燃料電池用セル片を得た。得られた用セル片100gと50%硫酸水溶液200mLを用いた以外は実施例1の第1セル溶解工程と同様にして電極材料の溶解操作を5回繰り返した。50%硫酸水溶液はほとんど無色になったので、この溶液を希釈後、希釈液中のY、Ni、La、Sr、Co、Feの濃度をICP分析装置で測定した。これら6つの元素の濃度(金属換算)はすべて100ppm以下になっており、上記セル片はCeO2以外の電極が除去されて、CeO2以外の電極なしジルコニア材料を得た。
上記第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料100gと5規定の水酸化ナトリウム水溶液200mLとをビーカーに入れ攪拌機で攪拌しながら超音波照射した。20分後、CeO2成分が一部溶解した水酸化ナトリウム水溶液を排出し、新たに5規定の水酸化ナトリウム水溶液2000mLを加え、攪拌しながら20分間超音波を照射した。この操作を3回繰り返した後の超音波照射した後、この溶液を希釈して希釈液中のCeの濃度をICP分析装置で測定した。Ce元素の濃度(金属換算)は100ppm以下になっており、CeO2が除去されたジルコニア材料を得た。
実施例1のジルコニア溶解工程と同様にして溶解液を得た。この溶解液中のジルコニア固形分濃度は10%、そのpHは1以下であった。
実施例1の前駆体調製工程と同様にしてジルコニア前駆体を調製した。
上記前駆体調製工程で得られたジルコニア前駆体を900℃で3時間仮焼することにより、平均粒子径が0.6μm、最大粒子径が2.1μm、比表面積が9m2/gの8YSZリサイクルジルコニア粉末(II)を得た。
実施例1および2で得た8YSZリサイクルジルコニア粉末(I)と(II)をそれぞれ原料ジルコニア粉末として用いた以外は、参考例1の溶解用セルの製造に記載した8YSZ焼結体シートの製法と全く同様にして各8YSZ焼結体シート200枚を製造した。当該8YSZ焼結体シートの物性を測定すると、シート理論密度に対するアルキメデス法による密度から求めた気孔率は96.6%、JIS−1601に準拠した焼結体シートの3点曲げ強度試験による強度の20枚の平均値は335MPaであり、参考例1の未使用ジルコニア粉末を原料粉末とした8YSZ焼結体シートとほぼ同性能であった。
Claims (5)
- ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して当該セル組成中の燃料極材料、空気極材料、中間層材料および/または燃料極基板材料中の安定化ジルコニアとセリアを除くその他の電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)当該第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を酸で溶解する工程(ジルコニア溶解工程)
(C)当該ジルコニア溶解工程で得られた溶解液を、共沈法、加水分解法、水熱合成法または噴霧乾燥法によりジルコニア粉末前駆体を調製する工程(前駆体調製工程)
(D)前駆体調製工程で得られた前駆体を、乾燥・仮焼する工程(仮焼工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法。 - ジルコニアおよびセリアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して当該セル組成中の燃料極材料、空気極材料、中間層材料および/または燃料極基板材料中の安定化ジルコニアとセリアを除くその他の電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(A’)当該第1セル溶解工程に次いで、アルカリで更に第1セル溶解工程で残存しているセリアを溶解してジルコニア材料を得る工程(第2セル溶解工程)
(B)当該第2セル溶解工程(A’)で得られたジルコニア材料を酸で溶解する工程(ジルコニア溶解工程)
(C)当該ジルコニア溶解工程で得られた溶解液を、共沈法、加水分解法、水熱合成法または噴霧乾燥法によりジルコニア粉末前駆体を調製する工程(前駆体調製工程)
(D)前駆体調製工程で得られた前駆体を、乾燥・仮焼する工程(仮焼工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法。 - 当該燃料電池用セルに含まれるジルコニアが、Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなる粉末である請求項1または2記載のリサイクルジルコニア粉末の製造方法。
- 当該仮焼工程(D)において、得られたジルコニア粉末前駆体を500〜1100℃で1〜20時間熱処理する請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクルジルコニア粉末の製造方法。
- 当該ジルコニア溶解工程が、酸分解法、加圧分解法、溶融法によるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリサイクルジルコニア粉末の製造方法。
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