JP2010012504A - レーザ溶接構造部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】折り曲げ部に続くフランジ7を有する鋼板4と、他の一の鋼板5とをフランジ7で重ね合わせ、重ね合わせ部に、第1のレーザ溶接を行って第1のレーザ溶接部Aを形成し、第1のレーザ溶接部Aの温度がMf点未満に低下した後に、形成された第1のレーザ溶接部Aに関して折り曲げ部の反対側となる第1のレーザ溶接部Aの近傍の領域に、第2のレーザ溶接を行って第2のレーザ溶接部Bを形成するとともに、第2のレーザ溶接により第1のレーザ溶接部Aの熱影響部を焼き戻し処理して第1の熱影響部の硬さを第2のレーザ溶接部の熱影響部の硬さの90%以下とする。
【選択図】図2
Description
本実施の形態では、折り曲げ部、およびこの折り曲げ部に続くフランジを有する一の鋼板と、他の一の鋼板(または複数の鋼板)とをこのフランジで重ね合わせ、この重ね合わせ部に、第1のレーザ溶接を行って第1のレーザ溶接部を形成した後に第2のレーザ溶接を行う。このようにして、上述した一の鋼板と、他の一の鋼板(または複数の鋼板)とをフランジで重ね合わせて構成され、この重ね合わせ部に形成される第1のレーザ溶接部および第2のレーザ溶接部を有するレーザ溶接構造部材を製造する。
(i)引張せん断強度に関して
溶接継手に付与されるせん断荷重は、接合界面全体の広い範囲により分担されることとなるため、ひずみが接合界面全体に発生し、溶接継手は接合界面で破断することが多い。このため、引張せん断強度は、接合界面における「溶接金属の硬さ」と「接合幅」との積によって支配される。すなわち、引張せん断強度は、溶接金属の硬度の上昇もしくは接合幅の増加によって、増加する。
(ii)剥離強度
溶接継手に剥離方向の荷重が負荷されると、溶接部の熱影響部の近傍に部分的にひずみが集中するため、溶接継手はこの熱影響部付近で破断することが多い。このように、剥離強度は、ひずみが集中する熱影響部の部分的な延性によって、支配される。つまり、ひずみの集中部が変形して限界ひずみに達すると、溶接継手が破断する。熱影響部が硬化してその延性が低下すると、少ないひずみ量で破断に達するので、剥離強度が低下する。すなわち、剥離強度は、熱影響部の硬さの低下により、増加する。
この基礎試験では、供試材として980MPa材(JSC980Y)からなる板厚1.2mmの高張力鋼板4、5を重ね合わせ、この重ね合わせ部にYAGレーザ溶接機を用いて、出力3.5kW、溶接速度1.8m/min、集光スポット径0.6mm、連続発振モードで第1のレーザ溶接および第2のレーザ溶接を行うことにより、図1に示す引張せん断強度の評価用試験片2、および図2に示す剥離強度の評価用試験片3を製作した。なお、試験片2、3の幅はいずれも30mmとした。
図5(a)は、ビード中心間距離dが0mmである場合における、板厚方向の中央部における溶接部およびその周辺部の溶接方向に直交する方向の硬度分布を示すグラフであり、図5(b)は、ビード中心間距離dが1.0mmである場合における、板厚方向の中央部における溶接部およびその周辺部の溶接方向に直交する方向の硬度分布を示すグラフであり、さらに、図5(c)は、ビード中心間距離dが2.5mmである場合における、板厚方向の中央部における溶接部およびその周辺部の溶接方向に直交する方向の硬度分布を示すグラフである。なお、図5の横軸は、溶接方向に直交する方向の溶接部Aの中心からの距離を表す。
以降の説明は、図8(b)に示すダブルハット形状の断面を有するレーザ溶接構造部材6bを参照しながら行うが、図8(a)、図8(c)〜図8(f)に示すレーザ溶接構造部材6a、6c〜6fについても同様に適用される。図8(b)に示すレーザ溶接構造部材6bの溶接状況を、図2も参照しながら説明する。
図8(b)に示すレーザ溶接構造部材6bは、ハット型断面に加工した2枚の部材4、5同士を、それぞれの底部が反対側となるようにフランジ7で重ね合わせ溶接したダブルハット状のものである。
図8(e)は,ハット型断面に加工した2枚の部材4−1、4−2同士を、それぞれの底部が同じ方向となるように配置し、さらに板状の部材5をフランジ7で重ね合わせて溶接したものである。
なお、図8(a)〜図8(f)に示すレーザ溶接構造部材6a〜6fは、いずれも、長手方向に一様な断面を有する場合であるが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、長手方向で断面形状が変化する部材についても同様に適用できることはいうまでもない。
次に、本実施の形態のレーザ溶接構造部材の溶接形態を説明する。ここでは、レーザ溶接構造部材が、両ハット部材により構成される場合で説明する。
これらのレーザ溶接構造部材8a〜8jは、重ね合わせたフランジ9、10に第1のレーザ溶接を行って第1のレーザ溶接部11を形成し、次いで第2のレーザ溶接を行って第2のレーザ溶接部12を形成することにより、製造される。第1のレーザ溶接部11および第2のレーザ溶接部12それぞれのビード中心間距離は、いずれも、{0.2Ln(t)+0.3}(mm)以上{Ln(t)+1.5}(mm)以下となるようにした。
図9(b)に示すレーザ溶接構造部材8bは、フランジ9、10の端部に沿い連続した曲線状の第1のレーザ溶接部11および第2のレーザ溶接部12が形成される。
図9(d)に示すレーザ溶接構造部材8dは、フランジ9、10の端部に平行に非連続の直線状の第1のレーザ溶接部11および第2のレーザ溶接部12が形成される。
図9(f)、図9(g)に示すレーザ溶接構造部材8f、8gは、C字状の第1のレーザ溶接部11の中に第2のレーザ溶接部12が形成される。
図9(i)に示すレーザ溶接構造部材8iは、楕円状の第1のレーザ溶接部11の中に、楕円状の第2のレーザ溶接部12が形成される。
なお、第1のレーザ溶接と第2のレーザ溶接との間の時間間隔は10秒間とした。また、溶接部Aの縦壁側の熱影響部のビッカース硬さと、溶接部Bの鋼板端部側の熱影響部のビッカース硬さとを測定した。ビッカース硬さの測定荷重は1kgfとし、鋼板の重ね面の表面から0.2mm離れた位置を、重ね面と平行に、溶接金属のボンド部から0.2mm、0.4mm離れた2点の熱影響部の硬さを測定し、その平均値を求めることにより行った。後述する表1には、「溶接部A側の熱影響部の硬さ/溶接部Bの鋼板端部側の硬さ」をパーセント表示した。
1 溶接継手
2 引張せん断強度の評価用試験片
3 剥離強度の評価用試験片
4、4−1、4−2、5 高張力鋼板
6a〜6f、8a〜8j レーザ溶接構造部材
7 フランジ
9、10 フランジ
11 第1のレーザ溶接部
12 第2のレーザ溶接部
Claims (8)
- 折り曲げ部、および該折り曲げ部に続くフランジを有する一の鋼板と、他の一または複数の鋼板とを前記フランジで重ね合わせ、該重ね合わせ部に、
第1のレーザ溶接を行って第1のレーザ溶接部を形成し、該第1のレーザ溶接部の温度がMf点未満に低下した後に、形成された前記第1のレーザ溶接部に関して前記折り曲げ部の反対側となる前記第1のレーザ溶接部の近傍の領域に、第2のレーザ溶接を行って第2のレーザ溶接部を形成するとともに、該第2のレーザ溶接により前記第1のレーザ溶接部の熱影響部を焼き戻し処理して当該熱影響部の硬さを前記第2のレーザ溶接部の熱影響部の硬さの90%以下とすること
によってレーザ溶接構造部材を製造することを特徴とするレーザ溶接構造部材の製造方法。 - 前記第2のレーザ溶接部は、その中心が前記第1のレーザ溶接部の中心から{0.2Ln(t)+0.3}(mm)以上{Ln(t)+1.5}(mm)以下離れて、形成される請求項1に記載のレーザ溶接構造部材の製造方法。
ただし、tは重ね合わせた全ての鋼板の合計の板厚(mm)を示す。 - 前記第2のレーザ溶接により、前記第1のレーザ溶接部の熱影響部は400℃以上Ac1点以下の温度に加熱される請求項1または請求項2に記載のレーザ溶接構造部材の製造方法。
- 前記一の鋼板は、前記フランジが縁部をなすハット状の断面を有する請求項1から請求項3までのいずれかに記載のレーザ溶接構造部材の製造方法。
- 折り曲げ部、および該折り曲げ部に続くフランジを有する一の鋼板と、他の一または複数の鋼板とを前記フランジで重ね合わせて構成され、該重ね合わせ部に形成された、第1のレーザ溶接部および第2のレーザ溶接部を有するレーザ溶接構造部材であって、
前記第2のレーザ溶接部は、前記第1のレーザ溶接部に関して前記折り曲げ部の反対側となる前記第1のレーザ溶接部の近傍の領域に形成されるとともに、
前記第1のレーザ溶接部の熱影響部の硬さは、前記第2のレーザ溶接部の熱影響部の硬さの90%以下であること
を特徴とするレーザ溶接構造部材。 - 前記第2のレーザ溶接部は、その中心が前記第1のレーザ溶接部の中心から{0.2Ln(t)+0.3}(mm)以上{Ln(t)+1.5}(mm)以下離れて、形成される請求項5に記載のレーザ溶接構造部材。
ただし、tは重ね合わせた全ての鋼板の合計の板厚(mm)を示す。 - 前記一の鋼板は、前記フランジが縁部をなすハット状の断面を有する請求項5または請求項6に記載のレーザ溶接構造部材。
- 前記フランジが延びる方向へ負荷される衝撃荷重によって当該方向へ圧潰する機能を有する自動車用衝撃吸収部材である請求項5から請求項7までのいずれかに記載のレーザ溶接構造部材。
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