JP7211491B2 - 重ねレーザスポット溶接継手とその製造方法および自動車車体用構造部材 - Google Patents

重ねレーザスポット溶接継手とその製造方法および自動車車体用構造部材 Download PDF

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Description

本発明は、重ねレーザスポット溶接継手とその製造方法ならびに上記重ねレーザスポット溶接継手を有する自動車車体用構造部材に関するものである。
フランジ部を有する自動車車体の構造部材(強度部材)の溶接には、一般的に抵抗スポット溶接が用いられている。しかし、抵抗スポット溶接は、溶接に時間が掛かる、分流により発熱量が低下するため溶接ピッチを狭くすることができない、さらには、溶接ガンをセットするためにある程度の空間が必要となる等、種々の問題がある。これらの問題を解決するため、近年では、従来の抵抗スポット溶接に代えて、重ねレーザスポット溶接を適用することが検討・実用化されている。ここで、上記重ねレーザスポット溶接とは、重ね合わせた複数枚の鋼板の片側表面にレーザビームを照射して鋼板を溶融し、接合する溶接方法のことをいう。
従来、重ねレーザスポット溶接継手は、重ね合わせた複数枚の鋼板の表面にレーザビームを断続的に照射し、レーザビームを照射した部位の鋼板を溶融し、凝固させて直線状または円形状の接合部が連続的に列状に配列した溶接部を形成することで、複数の鋼板を接合していた。しかし、重ねレーザビーム溶接には、接合部が直線状の場合、接合部の溶接終端部側にある最終凝固部に割れが発生し易いという問題がある。また、接合部が円形状場合も、接合部の中央部にある最終凝固部に割れが発生し易いという問題がある。割れが発生すると、接合部の全長に亘って伝播するため、溶接継手部の剪断強度や剥離強度といった静的強度が低下するだけでなく、疲労強度も著しく低下することになる。近年、自動車車体用部材、特に骨格部材となる構造部材(強度部材)では、車体の強度や剛性の向上を図るため、高張力鋼板が多く採用されるようになってきており、接合部に発生した割れによる溶接継手の静的強度や疲労強度の低下は重大な問題となる。
そこで、重ね合わせた鋼板をレーザビーム溶接したときに生じる接合部の溶接終端部の割れを防止する方法が種々検討されている。例えば、特許文献1には、重ね溶接の下側の鋼板を突出させ、かつ、溶接開始位置をフランジ端部から離れた位置にすることで、溶接割れを防止する技術が開示されている。また、特許文献2には、重ね面の端部に斜めからレーザを照射して、溶接割れを防止する技術が開示されている。また、特許文献3および4には、一度溶接した部分やその溶接した部分の周囲を再加熱する、あるいは、溶接することで、溶接割れを防止する技術が開示されている。また、特許文献5には、重ね面を楕円形に溶接して溶接割れの発生を防止する技術が開示されている。さらに、特許文献6には、鋼板成分を適正化し、かつ、溶接ビード幅とビード厚の比を適正化することで溶接割れの発生を防止する技術が開示されている。
特開2007-229740号公報 特開2008-296236号公報 特開2012-240083号公報 特開2012-240086号公報 特開2017-113781号公報 特開2018-001197号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、重ね溶接の下側の鋼板を突出させているため、突出させる部分が余分となり、部品設計が制約されるという問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、斜めからレーザを照射するため、重ね合わせた板に隙間が空いているときに、重ね面に溶融部がうまく形成されずに溶込み不足となり、十分な強度確保が難しいという問題がある。また、特許文献3および4に記載の方法では、一度溶接した部分や溶接した部分の周囲を再加熱したり溶接したりする必要があるため、溶接時間が長くなるという問題がある。また、特許文献5に記載の方法は、溶接部の形状が円形または円形に近い楕円形の限定されるため、十分な溶接強度を確保できないという問題がある。さらに、特許文献6に記載の方法では、溶接終端部に応力が集中し易くなるため、長さが短い直線状の接合部の溶接終端部における割れの発生を防止することができないという問題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザビームを断続的に照射して接合部(溶接スポット)を列状に形成した溶接部を有する重ね溶接継手であって、接合部の最終凝固部に割れの発生がなく、かつ、溶接部の剥離強度にも優れる重ねレーザスポット溶接継手を提供し、その製造方法を提案するとともに、この重ねレーザスポット溶接継手を有する自動車車体用構造部材を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するため、レーザ溶接によって形成される溶接部を構成する個々の接合部(溶接スポット)の形状と大きさに着目して鋭意検討を重ねた。その結果、接合部の最終凝固部の割れを防止するためには、上記接合部を従来の線状や円形状または楕円形状よりも大きな長円形状とし、かつ、上記長円形接合部の各種寸法を適正範囲に制御することが有効であることを見出し、本発明を開発するに至った。
上記知見に基づく本発明は、複数の鋼板を重ねてなる溶接部を有する重ねレーザスポット溶接継手において、上記溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gが、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tの0~15%の範囲内にあり、上記溶接部が、断続的に配列した長円形接合部からなり、かつ、上記長円形接合部が、下記(1)~(5);
1.0≦T≦6.0 ・・・(1)
2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
1.1≦D/D≦5.0 ・・・(4)
0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
ここで、T:溶接部を構成する鋼板の総板厚(mm)
:長円形接合部の短軸幅(mm)
:長円形接合部の長軸幅(mm)
u:長円形接合部の最終凝固部の最小厚(mm)
式のすべてを満たすことを特徴とする重ねレーザスポット溶接継手である。
本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、上記鋼板のうちの少なくとも1つが、C:0.07~0.4mass%、Si:0.2~3.5mass%、Mn:1.8~5.5mass%、P+S:0.03mass%以下、Al:0.08mass%以下およびN:0.010mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする。
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手における上記鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、以下のA群およびB群;
・A群;Ti:0.0005~0.01mass%およびNb:0.005~0.050mass%のうちから選ばれる1種または2種
・B群;Cr:1.0mass%以下、Mo:0.50mass%以下およびB:0.10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
のうちの少なくとも1群の成分を含有することを特徴とする。
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、上記鋼板のうちの少なくとも1つが、引張強さが980MPa以上の高張力鋼板であることを特徴とする。
また、本発明は、複数の鋼板を上下に重ね合わせ、該重ね合わせた鋼板の片側表面にレーザビームを断続的に照射して、列状に連続して配列した長円形接合部からなる溶接部を形成して重ねレーザスポット溶接継手を製造する方法において、上記溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gを、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tの0~15%の範囲内とし、上記長円形接合部は、レーザビームを半円と直線を組み合わせた細長い円形を描くようにスピンさせながら長円形の外側から内側に向かって螺旋状に走査するとともに、上記長円形接合部が、下記式(1)~(5)式;
1.0≦T≦6.0 ・・・(1)
2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
1.1≦D/D≦5.0 ・・・(4)
0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
ここで、T:溶接部を構成する鋼板の総板厚(mm)
:長円形接合部の短軸幅(mm)
:長円形接合部の長軸幅(mm)
u:長円形接合部の最終凝固部の最小厚(mm)
のすべてを満たすよう、レーザ出力、焦点位置、溶接速度、スピン半径および1スピンあたりの移動量およびビーム径のうちの少なくとも1つを制御することを特徴とする重ねレーザスポット溶接継手の製造方法を提案する。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の重ねレーザスポット溶接継手を有する自動車車体用構造部材である。
本発明によれば、重ね合わせた複数の鋼板をレーザビーム溶接した重ねレーザスポット溶接継手の溶接部を構成する接合部を従来よりも大きな長円形接合部とすることで、最終凝固部における割れの発生を確実に抑止することができるだけでなく、溶接部の剥離強度に優れる重ねレーザスポット溶接継手を製造することができる。また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、幅広い長軸-短軸比の長円形接合部を形成できるので、部品設計の自由度を高めて、より軽量・高剛性・高強度な部材の開発を可能とする。したがって、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、自動車車体の骨格となる構造部材(強度部材)に好ましく適用することができる。
従来の重ねレーザスポット溶接継手の一例を示す斜視図である。 従来の重ねレーザスポット溶接継手の溶接部を説明する概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。 本発明の重ねレーザスポット溶接継手の溶接部を説明する概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B断面図である。 本発明の溶接継手の製造に用いる溶接方法を説明する図である。 本発明の長円形接合部を得るためのレーザビームの走査軌跡の一例を説明する図である。 本発明の重ねレーザスポット溶接継手の溶接位置を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC-C断面図である。 本発明の実施例に用いた重ねレーザスポット溶接継手を有する剥離試験片を説明する斜視図である。
以下、本発明の重ねレーザスポット溶接継手と、その製造方法、および、その重ねレーザスポット溶接継手を有する自動車車体用構造部材について説明する。
<重ねレーザスポット溶接継手>
図1は、従来の重ねレーザスポット溶接継手の一例を示す斜視図である。重ねレーザスポット溶接継手1は、少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせたものであり、図1に示した例では、縦壁部2aおよび縦壁部2aの先端から外側へ延びるフランジ部2bを有する断面形状が略ハット状の鋼板2と、平らなパネル状の鋼板3の2枚の鋼板が、フランジ部2bと鋼板3とが対向するように重ね合わせられて接合面を形成しており、フランジ部2bの上方からフランジ部2bの表面にレーザビームを照射し、少なくとも鋼板2を貫通する溶融部(溶融金属部)を形成し、凝固させて接合部(溶接スポット)を形成することで溶接が行われている。なお、上記溶融部の周辺には熱影響部(HAZ)が存在するが、本発明の接合部は、熱影響部を除いた溶融部のみのことをいう。
上記重ねレーザスポット溶接継手1の溶接部は、レーザビーム源である溶接ヘッドを縦壁部2aの長さ方向(図1中の矢印方向)に沿って移動しながら、レーザビームをフランジ部2bの表面に断続的に照射することで形成される。その結果、鋼板2の接合面上には、図1に示すように、楕円形状の接合部(溶接スポット)が列状に連続的に形成されている。
図2は、図1に示した重ねレーザスポット溶接継手のフランジ部2b上に形成された従来の溶接部を示す概略図であり、(a)は、上記溶接部を構成する接合部をフランジ部2bの上方から見た平面図、(b)は、上記(a)中に示されたA-A断面を示す断面図である。
従来のレーザビーム溶接では、細長い楕円形すなわち溶融部の短軸-長軸比が大きい接合部14を形成すると、最終凝固部となる中心部14aから溶接割れ5が発生するため、溶融部の短軸-長軸比を小さくする必要があり、溶接強度の向上が難しいという問題があった。これは、図2の(b)に示したように、従来のレーザビーム溶接では、多量のスパッタが発生するため、最終凝固部となる中心部14aが、過度に薄くなるため、溶融部外周部分から外側に向かう引張応力(図2の(a)に示した矢印σa方向の力)が集中して掛かることによる。一方、溶接強度を向上するため、接合部の溶融径を大きくしようとすると、溶落ちが発生するという別の問題が発生する。
なお、上記溶接終端部の割れは、接合部の最終凝固部に表面から裏面まで貫通して発生し、その発生有無は、目視でも確認することができるが、より確実に判定するには、溶接後の接合部の最終凝固部を幅方向に切断し、その切断面を、例えば光学顕微鏡で10倍程度に拡大して観察して判定するのが好ましい。
そこで、発明者らは、レーザビーム溶接において、接合部の最終凝固部に発生する応力集中を軽減するため、接合部の最終凝固部となる中心部の厚さの低減を防止する方策について検討を重ねた。
その結果、後述するように、レーザビームを半円と直線を組み合わせた細長い円形を描くようスピンさせながら長円形の外側から内側に向かって螺旋状に走査させて、図3(a)に示したような、長円形接合部を形成することで、スパッタの発生を抑制することができ、ひいては、図3の(b)に示すように、最終凝固部となる接合部の中心部4aの最小厚さuを厚くすることができる。したがって、上記長円形接合部を形成することで、接合部の最終凝固部4aにかかる溶融部外周部分から外側に向かう引張応力(図3(a)に示した矢印σb)を、従来の溶接方法よりも大幅に軽減することができるので、最終凝固部の割れを防止することが可能となる。ここで、本発明における「長円形」とは、半径の等しい2つの円を共通外接線でつないだ形のことをいう。
上記のような従来よりも大きな長円形接合部を採用することで、接合部の最終凝固部の割れを大幅に低減することができる。しかし、発明者らのさらなる研究によれば、接合部の最終凝固部の割れをより確実に防止し、かつ、溶接部の剥離強度を十分な強度とするためには、上記した長円形接合部を採用することに加えてさらに、上記長円形接合部が、後述する0≦G/T≦0.15を満たすとともに、下記式(1)~(5)式;
1.0≦T≦6.0 ・・・(1)
2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
1.1≦D/D≦5.0 ・・・(4)
0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
ここで、T:溶接部を構成する鋼板の総板厚(mm)
:長円形接合部の短軸幅(mm)
:長円形接合部の長軸幅(mm)
u:長円形接合部の最終凝固部の最小厚(mm)
のすべてを満たしていることが必要であることがわかった。
以下、具体的に説明する。
0≦G/T≦0.15
本発明の重ねレーザビーム溶接継手は、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tに対する溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gの比(G/T)が0~0.15、すなわち、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tに対する溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gの比率が0~15%の範囲内にあることが必要である。上記GのTに対する比率が15%を超えると、溶接終端部のクレータの深さが深くなり、より応力が集中し易くなるからである。好ましくは0~10%の範囲である。
1.0≦T≦6.0
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、複数の鋼板の総板厚Tが、1.0~6.0mmの範囲であることが必要である。総板厚が1.0mmより薄い場合および6.0mmより厚い場合には、レーザビームを照射した際、溶落ちが発生し易くなり、重ね溶接を行うことが難しくなる。そのため、本発明の溶接継手は、継手を構成する鋼板の総板厚Tを1.0~6.0mmの範囲とする。好ましくは2.0~5.0mmの範囲である。
2.0≦D≦8.0
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、溶接部を構成する長円形接合部の短軸幅Dが2.0~8.0mmの範囲であることが必要である。Dが、8.0mmより大きいと、溶落ちが発生するようになる。好ましくは6.0mm以下である。一方、D1は、十分な接合強度を確保する観点から、2.0mm以上とする。好ましくは4.0mm以上である。
6.0≦D≦15.0
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、溶接部を構成する長円形接合部の長軸幅Dが6.0~15.0mmの範囲であることが必要である。上記Dが、15.0mmより大きいと、溶接割れが発生するようになる。好ましくは13.0mm以下である。一方、Dの下限値は、規定しないが、十分な接合強度を確保する観点から、6.0mmとする。好ましくは8.0mm以上である。
1.1≦D/D≦5.0
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、溶接部を構成する長円形接合部の短軸幅Dに対する長軸幅Dの比(D/D)が、1.1~5.0範囲であることが必要である。上記比(D/D)が5.0より大きいと、溶接割れが発生するようになる。好ましくは4.0以下である。一方、比(D/D)が1.1倍より小さい場合も、溶接割れが発生し易くなる。好ましくは1.5以上である。
0.6≦u/T≦1.0
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、接合部を構成する鋼板の総板厚Tに対する接合部の最終凝固部の中心部4aに発生する溶融部の最小厚uの比(u/T)が、0.6~1.1の範囲であることが必要である。上記比(u/T)が、0.6より小さくなると、最終凝固部の中心部4aにかかる溶融部外周部分から外側に向かう引張応力が大きくなり、割れを防止することができなくなる。好ましくは0.7以上である。一方、比(u/T)は、スパッタにより最終凝固部となる中心部の溶融部厚さuは、通常、複数の鋼板の総板厚Tより小さくなるため、1.0以下とする。
次に、本発明の重ねレーザスポット溶接継手を構成する鋼板について説明する。
なお、図1~4には、2枚の鋼板を重ねて重ねレーザスポット溶接継手を構成した例について示したが、3枚以上の鋼板を重ね合わせて溶接継手を構成してもよいことは勿論である。
鋼板の板厚
本発明の重ねレーザスポット溶接継手を構成する鋼板の合計厚については前述したが、個々の鋼板の板厚は、自動車車体の外板や構造部材(強度部材)として一般的に用いられている0.5~3.2mmの範囲内のものであればよく、特に制限はない。また、複数の鋼板は、全て同じ板厚であってもよいし、個々に異なる板厚であってもよい。例えば、図1に示した形状の重ねレーザスポット溶接継手1の場合には、上側の鋼板2の板厚tを0.6~1.8mm、下側の鋼板3の板厚tを1.0~2.5mmの範囲としてもよいし、上側の鋼板2の板厚tおよび下側の鋼板3の板厚tを同じ0.5~3.2mmの板厚としてもよい。
鋼板の成分組成
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手を構成する複数の鋼板の成分組成は、特に制限しないが、少なくとも1つの鋼板は、以下に説明するように、C:0.07~0.4mass%、Si:0.2~3.5mass%、Mn:1.8~5.5mass%、P+S:0.03mass%以下、Al:0.08mass%以下およびN:0.010mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有するものであることが好ましい。
C:0.07~0.4mass%
Cは、鋼の強度向上に有効な元素であり、0.07mass%以上含有させることによって、析出強化や変態強化の効果を得ることができる。また、C含有量を0.4mass%以下とすることで、粗大な炭化物の析出を招くことなく、所望の強度と加工性を確保することができる。そのため、C含有量は0.07~0.4mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.15~0.3mass%の範囲である。
Si:0.2~3.5mass%
Siは、固溶強化能に優れる元素であり、0.2mass%以上含有させることで鋼の強度を高めることができる。また、Si含有量を3.5mass%以下とすることで、溶接熱影響部の過度の硬化を抑制し、溶接熱影響部の靱性および耐低温割れ性の劣化を防止することができる。そのため、Si含有量は0.2~3.5mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、1.0~2.5mass%の範囲である。
Mn:1.8~5.5mass%
Mnは、焼入性を向上し、粗大な炭化物の析出を抑止するのに有効な元素であり、1.8mass%以上含有させることが好ましい。また、Mn含有量を5.5mass%以下とすることで、粒界脆化感受性の上昇を抑制し、靱性および耐低温割れ性の劣化を防止することができる。そのため、Mn含有量は1.8~5.5mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、2.0~3.5mass%の範囲である。
P+S:0.03mass%以下
PおよびSは、鋼の延性や靭性に悪影響を及ぼす有害元素であり、PとSの合計含有量を0.03mass%以下とすることで、延性や靱性の低下を防止し、所望の強度と加工性を確保することができる。そのため、PとSの含有量は、合計で0.03mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.02mass%以下である。
Al:0.08mass%以下
Alは、製鋼の段階で脱酸剤として添加される元素であり、0.01mass%以上添加されるのが一般的である。しかし、Al含有量が0.08mass%を超えると、アルミナなどの介在物が増大し、耐疲労特性への悪影響が顕在化するようになる。したがって、Al含有量は0.08mass%以下とする。好ましくは0.02~0.07mass%の範囲である。
N:0.010mass%以下
Nは、鋼の耐時効性を大きく劣化させる元素であり、極力低減するのが好ましい。特に、Nが0.010mass%を超えると、耐時効性の劣化が顕著となるため、N含有量は0.010mass%以下とする。なお、Nの下限は特に限定しないが、製造コストの上昇を防止する観点から、0.001mass%程度とするのが好ましい。
また、本発明の溶接継手を構成する少なくとも1つの鋼板は、上記した成分組成に加えてさらに、鋼板強度や溶接部の剥離強度をより向上させることを目的として、以下のA群およびB群のうちの少なくとも1群の成分を含有することが好ましい。
A群;Ti:0.0005~0.01mass%およびNb:0.005~0.050mass%のうちから選ばれる1種または2種
TiおよびNbはいずれも、炭化物や窒化物を形成して析出し、鋼板製造時の焼鈍中におけるオーステナイトの粗大化を抑制する効果がある。上記効果を得るためには、TiおよびNbのうちから選ばれる1種または2種を、Tiは0.0005mass%以上、Nbは0.005mass%以上含有させることが好ましい。しかし、TiおよびNbを過剰に含有させても、上記効果が飽和し、原料コストの上昇を招くだけである。また、再結晶温度を上昇させるので、鋼板製造時の焼鈍後の金属組織が不均一となり、伸びフランジ性が損なわれる虞がある。さらに、炭化物または窒化物の析出量が増大して降伏比が上昇し、形状凍結性が劣化する虞もある。よって、Tiおよび/またはNbを含有させる場合には、Tiは0.01mass%以下、Nbは0.050mass%以下とするのが好ましい。より好ましい含有量は、Ti:0.0006~0.0080mass%、Nb:0.010~0.040mass%の範囲である。
B群;Cr:1.0mass%以下、Mo:0.50mass%以下およびB:0.10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
Cr,MoおよびBは、鋼の焼入性を向上させるのに有効な元素であり、上記効果を得るためには、Cr:0.01mass%以上、Mo:0.004mass%以上およびB:0.0001mass%以上のうちの1種以上を含有させることが好ましい。しかし、これらの元素を過剰に含有させても、上記効果は飽和し、原料コストの上昇を招くだけである。よって、Cr,MoおよびBを含有させる場合には、Cr:1.0mass%以下、Mo:0.50mass%以下、B:0.10mass%以下として添加するのが好ましい。より好ましくは、Cr:0.02~0.50mass%、Mo:0.010~0.10mass%、B:0.001~0.03mass%の範囲である。
本発明の溶接継手を構成する少なくとも1つの鋼板は、上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
鋼板の引張強さ
また、本発明の重ねレーザスポット溶接継手を構成する複数の鋼板のうち、少なくとも1つの鋼板は、引張強さTSが980MPa以上の高張力鋼板とすることが好ましい。少なくとも1つの鋼板が上記した高張力鋼板であれば、重ねレーザスポット溶接継手は、高い接合強度を得ることができるとともに、従来の楕円形接合部では溶接欠陥が発生する場合でも、本発明の長円形接合部であれば、最終凝固部への応力集中が小さいので、溶接割れの発生を防止することができる。したがって、例えば、複数の鋼板のうち少なくとも1つの鋼板を、上記した成分組成を有し、かつ、引張強さTSが980MPa以上とするのが好ましい。なお、本発明の重ねレーザビーム溶接継手を構成する複数の鋼板は、同一の成分、同一の強度の鋼板であってもよいし、異なる成分、異なる強度の鋼板であってもよい。
<重ねレーザスポット溶接継手の製造方法>
次に、本発明の重ねレーザスポット溶接継手の製造方法について図4~6を用いて説明する。
本発明の重ねレーザスポット溶接継手の製造方法は、複数の鋼板を上下に重ね合わせ、その重ね合わせた複数の鋼板のうち、最も上側の鋼板表面にレーザビームを断続的に照射して接合部4を順次形成することにより溶接部を形成して溶接継手を製造する。図4に示した例では、本発明の重ねレーザ溶接継手1は、複数の鋼板2、3を重ね合わせ、最上層の鋼板2の表面に、レーザビーム6を断続的に照射し、鋼板2と3の接合部4を列状かつ連続的に形成することで重ねレーザビーム溶接を行っている。
上述したように、本発明では、重ね合わせた複数の鋼板に対して片側溶接を行う。片側溶接を採用することで、溶接に要する作業スペースを小さくすることができる。
なお、片側溶接においては、溶接時の溶落ちを防止する観点からは、重ね合わせた複数の鋼板のうち、板厚が大きい方の鋼板側からレーザビームを照射するのが好ましい。一方、未貫通による未接合を防止する観点からは、板厚が薄い方からレーザビームを照射するのが好ましい。なお、鋼板の板厚が同一の場合には、いずれの鋼板側からレーザビームを照射してもよい。
ここで、本発明において重要なことは、本発明の重ねレーザビーム溶接継手は、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tに対する溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gの比(G/T)が0~0.15、すなわち、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tに対する溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gの比率が0~15%の範囲内に設定するということである。上記GのTに対する比率が15%を超えると、溶接終端部のクレータの深さが深くなり、より応力が集中し易くなるからである。好ましくは0~10%の範囲である。
さらに、本発明において最も重要なことは、図5(a)に示したように、レーザビーム6を半円および直線を組み合わせた細長い円形を描くようにスピンさせながら長円形の外側から内側に向かって螺旋状に走査させることで、通常よりも大きな長円形の接合部を形成することである。上記のように、レーザビームをスピンさせながら溶接することで、スパッタの発生を抑制することができるので、図3(b)に示したように、接合部の最終凝固部となる中心部4aの厚さuを大きくすることができ、同部に掛かる過大な応力集中を防ぐことができるため、割れ発生を防止することができる。
ここで、上記長円形接合部の大きさは、図5(a)および(b)に示すように、レーザビームをスピンさせるときのスピン半径r、スピン1回転あたり進む距離である進展量c、および、レーザビームが描く長円形の直線部の長さLと円弧部の半径Rを調整することにより変化させることができる。なお、上記したスピン半径r、進展量c、長円形の直線部の長さLおよび円弧部の半径Rは、前述した長円形接合部の短軸幅D、長軸幅Dおよび最終凝固部の最小厚uが、下記(2)~(5)式;
2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
1.1≦D/D≦5.0 ・・・(4)
0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
を満たすようを調整することが必要である。
ここで、本発明が上記レーザビーム溶接に用いるレーザビームの種類としては、例えば、ファイバーレーザ、ディスクレーザ等を用いることができる。また、上記(2)~(5)式を満たすためには、上記レーザビームの照射は、出力:1.0~6.0kW、焦点位置:レーザビームを照射する鋼板表面から-5mm~鋼板表面+5mm、ビーム径:0.2~0.6mmおよびレーザビームの走査速度:5.0~10.0m/minの範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、レーザ出力:3.0~5.0kW、焦点位置:レーザビームを照射する鋼板表面~鋼板表面+5mm、ビーム径:0.3~0.5mmおよびレーザビームの走査速度:6.0~9.0m/minの範囲である。
なお、上記説明では、本発明の溶接部を構成する接合部の形状が長円形の場合について説明してきたが、上述した(2)~(5)式を満たす限り、楕円形であってもよい。
<自動車車体用構造部材>
次に、本発明の自動車車体用構造部材について説明する。
本発明の重ねレーザスポット溶接継手を好ましく用いることができる例として、自動車車体の骨格部分となる構造部材(強度部材)がある。前述した図1に示した部材は、断面形状が略ハット形状のフレーム部品である鋼板2と、パネル部品の鋼板3とから構成され、鋼板2のフランジ部2bと、このフランジ部2bに対向して配置された鋼板3とが、上記したレーザビーム溶接によって形成された列状に連続した長円形接合部4からなる溶接部により接合されて、閉断面を構成している。このような形状を有する部材を自動車車体の強度部材に適用するためには、衝突安全性を確保する観点から、溶接部の強度に優れていることが重要であるが、本発明の重ねレーザスポット溶接継手は、接合部の最終凝固部に割れがなく、かつ、十分な剥離強度を有するので、例えば、自動車車体のセンターピラーやルーフレールなどの構造部材に好適に用いることができる。
ここで、本発明の重ねレーザビーム溶接継手を適用して自動車車体用の構造部材等を製造する際、溶接部を形成する好適位置について、図6のように、フランジ部2b、3bを有するL字型断面を有する2つの鋼板2,3を、フランジ部が対向するように重ね合わせて、片側からレーザビーム溶接を行う場合を例にとって説明する。図6の(a)は、重ね合わせたフランジ部を上から見たときの平面図であり、上記フランジ部には、列状に連続した長円形接合部からなる溶接部が形成されていることを示したものであり、図6の(b)は、上記(a)に示されたC-C断面の断面図である。
図6において、溶接部を形成する好適位置は、鋼板2および3の板厚の中心線を基点(0点)とし、そこからフランジ部に形成された長円形接合部の幅中央部までの距離を溶接位置Xと定義したとき、上記溶接位置Xは、下記(5)式;
5t≦X≦8t ・・(5)
ここで、t:溶接部を構成する鋼板の中で最も厚い鋼板の板厚(mm)
を満たすことが好ましい。例えば、最も厚い鋼板の板厚tが2mmであった場合、溶接位置Xは10~16mmの範囲とするのが好ましいことになる。
上記溶接位置Xが、5tよりも小さいと、剥離試験の際に、溶接金属部より破断し易くなり、剥離強度が低下することがある。一方、溶接位置Xが8tよりも大きいと、剥離試験で第1接合部4や後続接合部5にかかるモーメントが大きくなり過ぎ、やはり剥離強度が低下するからである。より好ましいXの範囲は6t≦X≦7tの範囲である。上記の位置に溶接部を形成することで、鋼板の合計板厚が2~5mmの2枚重ねの溶接接合部の剥離強度を12.0kN以上とすることができる。
なお、上記溶接位置Xに関する(5)式は、上記した図6に示したように、2枚のL字型断面を有する鋼板を重ね合わせたT字型の重ねレーザビーム溶接継手に限定されるものではなく、例えば、図1に示したような断面形状が略ハット型のフレーム部品(鋼板2)とパネル部品(鋼板3)とをレーザビーム溶接した重ねレーザスポット溶接継手にも適用することができ、この場合の溶接位置Xの基点(0点)は、断面形状が略ハット型のフレーム部品の縦壁部2aの板厚中心とすればよい。
表1に示したA~Jの成分組成を有し、板厚が1.2mm、1.6mmおよび2.0mmのいずれかであり、引張強さTSが590~1180MPa級の高張力鋼板から、幅:100mm、長さ:150mmの試料を採取し、これを長辺が120mm、短辺が30mmのL字状に曲げ加工し、L字状鋼板とした。ここで、上記L字状鋼板の長辺は、図1(図4)の縦壁2aに、短辺は、図1(図6)のフランジ部2bに相当する。次いで、図7に示したように、上記2枚のL字状鋼板7の短辺を対向するように重ね合わせた後、その重ね合わせた部分に大気中でレーザビームを照射して断続的に配列した長円形接合部を形成し、T字型の剥離試験片8を作製した。
なお、上記重ねレーザビーム溶接を行うに際しては、レーザビームには、焦点位置のビーム径が0.4mmφのファイバーレーザを用い、焦点位置は重ね合わせた鋼板の上側表面(図7に示す上側の鋼板7の表面)と設定した上で、表2に示したように、2枚の鋼板間の間隙G、照射するレーザビームの出力P、走査速度v、レーザビームがスピンするときの半径r、1スピンあたりの進展量c、および、レーザビームが描く長円形の直線部の長さLと円弧部の半径Rを種々に変えて、長円形接合部の短軸幅D、長軸幅Dおよび最終凝固部の最小厚uを表2に示したように種々に変化させた。この際、溶接部を形成する溶接位置Xは、最も厚い板厚tの6.5倍(一定)に設定した。
斯くして得たT字型の剥離試験片について、溶接部、特に接合部との最終凝固部における割れの発生有無と、溶落ちの有無を、目視および浸透探傷試験で判定した。
次いで、上記T字型の剥離試験片について、2枚のL字型鋼板の長辺の長さ方向を引張方向する引張試験を、速度10mm/minで行い、剥離強度(最大荷重)を測定した。なお、本実施例では、剥離強度が12.0kN以上の場合を「合格」と判定した。
Figure 0007211491000001
Figure 0007211491000002
Figure 0007211491000003
Figure 0007211491000004
上記溶接割れ有無の判定結果および剥離強度の測定結果を表2に併記した。
この結果から、本発明に適合する条件で重ねレーザビーム溶接した試験片(No.1,9,17,25,33,41,49,57,65および73)は、いずれも接合部の最終凝固部に割れの発生がなく、溶落ちもなく、剥離強度も12.0kN以上であった。
これに対して、No.2,10,18,26,34,42,50,58,66および74の試験片は、いずれも最終凝固部の最小厚uが合計板厚Tの60%より小さかったため、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生し、剥離強度も12.0kN未満であった。
また、No.3,11,19,27,35,43,51,59,67および75の試験片は、いずれも溶接部の間隙Gが、鋼板の合計厚Tの15%より大きかったため、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生し、剥離強度も12.0kN未満であった。
また、No.4,12,20,28,36,44,52,60,68および76の試験片は、いずれも接合部の短軸幅Dが2mmより小さかったため、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生し、剥離強度も12.0kN未満であった。
また、No.5,13,21,29,37,45,53,61,69および77の試験片は、いずれも接合部の短軸幅Dが8mmより大きかったため、接合部の最終凝固部に割れはなかったが、溶落ちが発生した。
また、No.6,14,22,30,38,46,54,62,70および78の試験片は、いずれも接合部の短軸幅Dが15mmより大きかったため、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生した。
また、No.7,15,23,31,39,47,55,63,71および79の試験片は、いずれも接合部の短軸幅Dに対する長軸幅Dの比(D/D)が5.0より大きかったため、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生した。
また、No.8,16,24,32,40,48,56,64,72および80の試験片は、いずれも接合部の短軸幅Dに対する長軸幅Dの比(D/D)が1.1より小さかったため、やはり、溶落ちはなかったが、接合部の最終凝固部に割れが発生した。
また、No.81および82は、強度レベルが異なる2枚の鋼板を、本発明に適合する条件で重ねレーザビーム溶接した試験片についての試験結果を示した結果であり、590MPa級と980MPa級との組み合わせでも、鋼の成分組成が本発明の好適範囲内であるNo.81は、溶接割れもなく、優れた剥離強度が得られるが、鋼の成分組成が本発明の好適範囲外であるNo.82は、溶接割れが発生し、剥離強度も12.0kN未満であった。
上記したように、本発明に従い重ねレーザビーム溶接を行った本発明例では、いずれも本発明が目的とする特性を有する良好な重ねレーザビーム溶接継手が得られているのに対し、本発明の条件を外れる比較例では、良好な重ねレーザビーム溶接継手を得ることができなかった。
本発明の技術は、高速かつ低歪な溶接が可能であるため、フランジ部を有した自動車用構造部材に好ましく適用することができる。
1:重ねレーザスポット溶接継手
2、3:鋼板
2a:鋼板2の縦壁部
2b:鋼板2のフランジ部
4、14:接合部(溶接スポット)
4a、14a:接合部の最終凝固部(中心部)
5:接合部の最終凝固部の割れ
6:レーザビーム
7:L字鋼板
7a:L字鋼板長辺
7b:L字鋼板の幅
8:剥離試験片
S:接合部を形成するときのレーザビームの照射開始部
E:接合部を形成するときのレーザビームの照射終了部
σa、σb:接合部の最終凝固部に掛かる応力
T:接合部を構成する鋼板の合計厚
u:接合部の最終凝固部の最小厚
:長円形接合部の短軸幅
:長円形接合部の長軸幅
G:接合部を構成する鋼板間の合計間隙
X:溶接位置
0:溶接位置の基点

Claims (6)

  1. 複数の鋼板を重ねてなる溶接部を有する重ねレーザスポット溶接継手において、
    上記溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gが、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tの0~15%の範囲内にあり、
    上記溶接部が、断続的に配列した長円形接合部からなり、かつ、
    上記長円形接合部が、下記(1)~(5)式のすべてを満たすことを特徴とする重ねレーザスポット溶接継手。

    1.0≦T≦6.0 ・・・(1)
    2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
    6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
    2.2≦D/D≦5.0 ・・・(4)
    0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
    ここで、T:溶接部を構成する鋼板の総板厚(mm)
    :長円形接合部の短軸幅(mm)
    :長円形接合部の長軸幅(mm)
    u:長円形接合部の最終凝固部の最小厚(mm)
  2. 上記鋼板のうちの少なくとも1つが、C:0.07~0.4mass%、Si:0.2~3.5mass%、Mn:1.8~5.5mass%、P+S:0.03mass%以下、Al:0.08mass%以下およびN:0.010mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項1に記載の重ねレーザスポット溶接継手。
  3. 上記鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、以下のA群およびB群のうちの少なくとも1群の成分を含有することを特徴とする請求項2に記載の重ねレーザスポット溶接継手。

    ・A群;Ti:0.0005~0.01mass%およびNb:0.005~0.050mass%のうちから選ばれる1種または2種
    ・B群;Cr:1.0mass%以下、Mo:0.50mass%以下およびB:0.10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
  4. 上記鋼板のうちの少なくとも1つが、引張強さが980MPa以上の高張力鋼板であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の重ねレーザスポット溶接継手。
  5. 複数の鋼板を上下に重ね合わせ、該重ね合わせた鋼板の片側表面にレーザビームを断続的に照射して、列状に連続して配列した長円形接合部からなる溶接部を形成して重ねレーザスポット溶接継手を製造する方法において、
    上記溶接部を構成する鋼板間の合計間隙Gを、溶接部を構成する鋼板の合計厚Tの0~15%の範囲内とし、
    上記長円形接合部は、レーザビームを半円と直線を組み合わせた細長い円形を描くようにスピンさせながら長円形の外側から内側に向かって螺旋状に走査するとともに、
    上記長円形接合部が、下記式(1)~(5)式のすべてを満たすよう、レーザ出力、焦点位置、溶接速度、スピン半径および1スピンあたりの移動量およびビーム径のうちの少なくとも1つを制御することを特徴とする重ねレーザスポット溶接継手の製造方法。

    1.0≦T≦6.0 ・・・(1)
    2.0≦D≦8.0 ・・・(2)
    6.0≦D≦15.0 ・・・(3)
    1.1≦D/D≦5.0 ・・・(4)
    0.6≦u/T≦1.0 ・・・(5)
    ここで、T:溶接部を構成する鋼板の総板厚(mm)
    :長円形接合部の短軸幅(mm)
    :長円形接合部の長軸幅(mm)
    u:長円形接合部の最終凝固部の最小厚(mm)
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載の重ねレーザスポット溶接継手を有する自動車車体用構造部材。
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