JP6885523B2 - スポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2019年05月24日に、日本に出願された特願2019−097703号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
抵抗スポット溶接される上記部材のフランジの一部には、自動車の衝突時に面内引張応力が負荷されることがある。一般に、HAZ軟化部のような硬さが低い領域があると部材の耐衝突性能が低下する。このようなHAZ軟化部は、抵抗スポット溶接の継手評価に用いられる引張せん断試験、及び十字引張試験(JIS Z3137)の評価結果への影響は小さい。しかしながら、面内引張応力が負荷された場合には、HAZ軟化部に局所的にひずみが集中してHAZ軟化部に破断を生じる場合がある。そのため、母材を高強度化し、スポット打点を増加しても、前述のHAZ軟化部が生じると、母材の強度と部品の形状とから想定される耐衝突性能を得られない場合がある。
従って、高強度鋼板からなる鋼板部材を自動車車体の構造部材に適用する場合には、ナゲットの周辺領域が破断の起点となるのを抑制することが求められる。
[1]本開示の一態様に係るスポット溶接継手は、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、前記第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合している2つのスポット溶接金属と、を含み、前記2つのスポット溶接金属を含む前記第1の鋼板の板厚方向の全ての断面において、前記第1の鋼板が、前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面から前記第1の鋼板の板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第1の領域と、前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から前記板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第2の領域と、を有し、前記第1の領域の金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、前記第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たし、前記第2の領域の金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
[2][1]に記載のスポット溶接継手では、前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80HV以下であってもよい。
[3][1]または[2]に記載のスポット溶接継手では、前記第1の領域の、前記板厚方向の厚みが、前記第1の鋼板の板厚の30〜70%であってもよい。
[4]本開示の別の態様に係るスポット溶接継手の製造方法は、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する2つのスポット溶接金属を形成し、レーザー照射によって、前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う。
図1に示すように、本実施形態に係るスポット溶接継手1は、第1の鋼板11と、第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板12と、第1の鋼板11と第2の鋼板12とを接合する2つのスポット溶接金属2とを備える。図1、図2においては、スポット溶接金属2は抵抗スポット溶接によって形成されたナゲットである。このようなスポット溶接継手は、第1の鋼板11と第2の鋼板12とを重ね合わせて抵抗スポット溶接を行うことによって得られる。
抵抗スポット溶接に供する第1の鋼板11は、Bピラー等の自動車骨格部品への適用を考慮し、平均ビッカース硬さ(HVbase)が350HV以上である鋼板である。また、第1の鋼板は、硬質マルテンサイトのような焼入れ組織を含む組織からなる。一方、第2の鋼板12については、限定されない。
第1の鋼板11の平均ビッカース硬さ(単純に硬度という場合がある)は、溶接に供される第1の鋼板11の溶接前の平均ビッカース硬さを意味する。スポット溶接後に測定する場合には、溶接熱影響を受けていない位置で測定された平均ビッカース硬さを意味する。
また、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、第1の領域51の金属組織が、焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、第1の領域51の平均ビッカース硬さHV1と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たす。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
さらに、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、前記第2の領域52の金属組織が、硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域52の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす。
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
第1の領域51の外側にまで第1の領域51と同様の焼き戻しマルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。また、第2の領域52の外側にまで第2の領域52と同様の硬質マルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。
以下、各構成の限定理由について説明する。
焼入れ組織を含む鋼板に溶接を行った場合、溶接の熱により溶接金属の周囲に形成されるHAZにおいて、硬質マルテンサイトが焼戻しマルテンサイト等の軟質な組織に変化する。すなわち、母材より硬さが低い領域(HAZ軟化部)が形成される。溶接部を有する板の面内に引張応力が生じた際、このHAZ軟化部が破断の起点となる場合がある。
局所的な強度低下部が生じないようにする場合、例えばスポット溶接金属2の間のHAZ軟化部を含む領域を焼戻して、HAZ軟化部の周辺の硬度を、HAZ軟化部の硬度と同程度まで低下させることが考えられる。しかしながら、この場合、HAZ軟化部からの破断は抑制できるものの、部品全体としては軟化部が大きくなることから、部品の耐衝突性能(曲げ性能)が低下することが懸念される。
本実施形態に係るスポット溶接継手1は、継手強度の低下を最低限に抑えつつHAZ軟化部での割れを防止するため、重ね合わせ溶接を行った第1の鋼板11の、スポット溶接金属2,2同士の間の、重ね合わせ面3付近を焼き戻すとともに、スポット溶接金属2,2同士の間の第1の鋼板の表面(重ね合わせ面3とは反対側)付近を焼入れることによって、所望の金属組織と平均ビッカース硬さとを備えた第1の領域と第2の領域とを形成する。
[金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230を満たす]
本発明者らの検討の結果、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板11にスポットを行った際、溶接の熱影響によって生じるHAZ軟化部の硬度(ビッカース硬さ)は、(溶接前の第1の鋼板11の硬度×0.33+150)〜(溶接前の第1の鋼板11の硬度×0.33+230)程度になる。そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手では、HAZ軟化部を含むスポット溶接金属2,2間の第1の領域を焼戻して焼戻しマルテンサイトが50面積%以上の組織とし、また、そのビッカース硬さが、下記式(1)を満たすように制御する。
第1の領域51の平均ビッカース硬さ(HV1)が式(1)を満たすことで、HAZ軟化部とその周囲との硬度差が80HV以下になる。この場合、HAZ軟化部への歪の集中を緩和できる。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
第1の領域51は、第1の鋼板11の板厚断面の、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板12側の面から0.1mmの範囲(厚さ)に形成されている。上記の硬度を有する領域の板厚方向の厚さが0.1mm未満であると、局所的な強度低下部であるHAZ軟化部が残存し、十分な効果が得られない可能性がある。上記の第1の領域51の硬度及び組織の条件を満たす領域が第1の領域51の外側にまで広がっていてもよい。その場合、上記の第1の領域51の硬度と組織を満たす領域は、第2の鋼板側の面から第1の鋼板の板厚の30%以上の範囲に広がっていることが好ましい。但し、上記の第1の領域51の硬度と組織を満たす領域が、第2の鋼板側の面から第1の鋼板の板厚の90%超の範囲にまで広がっていると、継手部全体の平均硬度が低下し、曲げ耐力が低下することが懸念されるので好ましくない。
[金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、HVbase−30≦HV2≦HVbase+30を満たす]
第1の本実施形態に係るスポット溶接継手1に対し面内引張応力が付与された場合、2つのスポット溶接金属2,2間にHAZ軟化部のような局所的な強度低下部が形成されていると歪が集中するが、本発明者らの検討の結果、特に第1の鋼板11の表面(重ね合わせ面とは反対の面)付近に強度低下部が存在すると、歪が集中しやすいことが分かった。
そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、HAZ軟化部を含む2つのスポット溶接金属2,2間の第1の鋼板11の表面付近に対し、焼入れを行い、焼入れした領域の硬さを、溶接熱影響を受けていない第1の鋼板11の平均ビッカース硬さと同等にする。
具体的には、第2の領域52の平均ビッカース硬さHV2と第1の鋼板11の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たすようにする。
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
第2の領域52の平均ビッカース硬さと、第1の鋼板11の平均ビッカース硬さとの差が30超であると、面内引張応力負荷時の歪の集中を十分に抑制することができない。
第1の領域51が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含む焼き戻し組織であって、第2の領域が硬質マルテンサイトを50面積%以上含む焼き入れ組織であることから、第1の領域51の平均ビッカース硬さ(HV1)より第2の領域52の平均ビッカース硬さ(HV2)は大きい。
第2の領域52は、第1の鋼板11の板厚断面の、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲(厚さ)に形成されている。上記の硬度を有する領域の板厚方向の厚さが0.1mm未満であると、局所的な強度低下部であるHAZ軟化部が残存し、十分な効果が得られない可能性がある。上記の第2の領域52の硬度と組織の条件を満たす領域が第2の領域52の外側にまで広がっていてもよい。その場合、上記の第2の領域52の硬度と組織を満たす領域は、第2の鋼板12側の面とは反対の面から第1の鋼板の板厚の10%以上の範囲に形成されていることが好ましい。但し上記の第2の領域52の硬度と組織を満たす領域が、第2の鋼板12側の面から第1の鋼板11の70%超の範囲にまでひろがっていると、第2の領域側が曲げ外になる引張曲げ荷重が負荷された際に、破断伸びが低下することが懸念されるので好ましくない。
言い換えれば、スポット溶接金属2の重ね合わせ面3における径をDとしたとき、第1の領域51及び第2の領域52の第1の鋼板11の板厚方向断面に垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向、図2の紙面上の上下方向)の幅は、1.0×Dである。第1の領域51の幅方向外側にまで第1の領域51と同様の焼き戻しマルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。第2の領域52の幅方向外側にまで第2の領域52と同様の硬質マルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。
自動車の衝突が生じた場合、面内引張応力の方向は、スポット溶接金属2,2間を結ぶ方向(スポット溶接金属2,2の中心同士を結ぶ方向)に対して必ずしも平行ではない。すなわち、一定の角度を有する(斜め方向に応力がかかる)場合がある。第1の領域51及び第2の領域52の幅が1.0×Dあれば、面内引張応力の付加方向がスポット溶接金属2,2間を結ぶ方向に対し一定の角度となった場合(斜め方向に応力がかかった場合)であっても、歪が集中しうるHAZ軟化部のへの歪集中が抑制される。その結果、HAZ軟化部での破断がさらに抑制される。
一方、第1の領域51、第2の領域52の幅が1.0×D未満であると、面内引張応力の方向が、スポット溶接金属2,2間を結ぶ方向に対して一定の角度を有する(斜め方向に応力がかかる)場合には、十分な効果が得られないことが懸念される。
硬質マルテンサイト組織を含む鋼板では、溶接熱影響を受けた部分の硬度は、溶接前の硬度より低くなる。このため、第1の鋼板11の硬度は、第1の鋼板11の溶接による熱影響を受けていない位置の硬度を測定し、その平均値を用いる。溶接による熱影響を受けていない位置として、例えば、スポット溶接金属2から、他の溶接金属のない方向へ15mm以上離れた位置の硬度を測定すればよい。
具体的には、ビッカース硬さ計を用いて、荷重を1.0kgfとして、溶接による熱影響を受けていない10ヶ所の、第1の鋼板11の表面から板厚の1/8の位置、3/8の位置、5/8の位置、7/8の位置の硬度を測定し、その平均値を用いる。
ビッカース硬さの分布は、具体的には、以下の方法で測定する。
まず、2つのスポット溶接金属の中心を通る第1の鋼板11の板厚方向断面(図2に示すA−A断面)が測定面となるようにサンプルを採取する。
この測定面に対し、第1の鋼板11の板厚方向には、第1の鋼板11の表面及び重ね合わせ面からそれぞれ0.1mmの位置、及びその間を5等分した位置に対してビッカース硬さの測定を行う。この測定を、幅方向(スポット溶接金属2ともう一方のスポット溶接金属2とを結ぶ方向)に0.5mm間隔で繰り返して行う。
その後、サンプルを0.5mm研磨し、現出した断面(図2に示すB−B断面)に対し、上記と同様のビッカース硬さ測定を行う。
さらに、断面にスポット溶接金属2が含まれなくなるまで研磨及びビッカース硬さの測定を行い、スポット溶接金属2,2間における第1の鋼板11のビッカース硬さ分布を得る。硬度は反対側の断面も同等であると考えられるため、上記の通り半分の断面について測定を行えばよい。
上記では、スポット溶接金属2が抵抗スポット溶接のナゲットである場合について説明したが、本実施形態に係るスポット溶接継手1はスポット溶接金属2が抵抗スポット溶接のナゲットである抵抗スポット溶接継手に限定されない。例えば、スポット溶接金属2がレーザースポット溶接によって形成されてもよく、スポット溶接金属2がアークスポット溶接によって形成されてもよい。
本実施形態に係るスポット溶接継手は、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。すなわち、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、
(I)平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、
(II)重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する複数のスポット溶接金属を形成し、
(III)前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う
工程を有する。
これらの鋼板を重ね合わせてスポット溶接を行い、スポット溶接金属を形成して溶接継手とする。スポット溶接条件は限定されず、通常の条件とすればよい。
焼入れを行う場合には、対象とする領域の温度をAc1℃超に高める必要がある。好ましくはAc1+30℃以上である。ただし、焼き入れ領域の温度を高くし過ぎると、熱伝導によって、焼戻しを行う必要のある領域もまた焼き入れ領域となってしまう。そのため、板厚に応じた入熱コントロールが必要である。
一方、焼戻しを行う場合には、対象とする領域の温度をAc1℃未満の温度に加熱する必要がある。図3に示すように、加熱された領域は、焼戻しマルテンサイトとなり、Ac1℃までは温度上昇につれて硬度が減少する。一方、加熱温度がAc1℃を超えると、組織がオーステナイトに変態する。このオーステナイトは、冷却時に再度硬質マルテンサイトに変態するので、Ac1℃超に加熱された部位では、高い硬度を示す。
このことを利用して、第1の鋼板の表面(第2の鋼板とは反対の面)側からレーザー照射を行い、第1の鋼板の表面付近の温度をAc1℃超になるように加熱し、その反対の面付近の温度をAc1℃以下となるように加熱すれば、所定の第1の領域及び第2の領域を形成することができる。
上記のような加熱を行う場合、板厚方向へ硬さ分布を与えるためには、極表層へのみ入熱させ、深さ方向には熱伝導によって熱を与える必要がある。また、狙いの領域外まで加熱すると狙いの領域での抜熱が不十分となり焼き戻し組織が得られない場合がある。
例えば、高周波誘導加熱では、一定の深さまで入熱されてしまうので、好ましい硬さ分布が得られない。また、ガス加熱やアーク加熱では、特定の領域だけを狙って加熱することが困難である。
そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、レーザービームの照射によって加熱を行う。溶接金属間全体を加熱するため、溶接金属径以上のビーム幅を有するレーザービームを一定の速度で移動させながら加熱することが好ましい。
レーザーの照射条件は、特に限定されず、第1の鋼板の板厚、得たい第1の領域または第2の領域の厚さ等によって決定すればよいが、例えば以下の条件が例示される。
例示される条件
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:500〜3000W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:4〜10mm、進行方向:0.5〜3mmの矩形
・レーザー移動速度:50〜500cm/min
電極:DR型電極(先端φ6mm R40)
加圧力:400kgf
通電時間:24cyc
抵抗スポット溶接により、引張試験片とタブ板との間には、ナゲット径が4×√t(t:引張試験片の板厚(mm))である溶接金属が二か所形成された。
継手No.1〜5へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:1200W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:250cm/min
また、継手No.11へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:700W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:130cm/min
また、継手No.12へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:750W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:80cm/min
また、各試験体に対して引張試験を実施し(面内引張応力を負荷し)、破断位置を調査した。引張試験時の引張速度は10mm/minとした。
結果を表1に示す。
一方、継手No.6〜10(比較例)はレーザー照射を行わなかったことで、継手No.1〜5の第1の領域または第2の領域に相当する範囲において、式(1)、式(2)を満たさなかった。その結果、引張試験において、HAZ軟化部での割れとなった。
継手No.11〜12(比較例)はレーザー照射を行ったが、レーザー照射条件が好ましくなかった。その結果、比較例11は入熱不足により第一の領域でHAZ軟化部が明瞭に残存しており、HAZ軟化部での破断となった。比較例12もまた入熱不足であり、第2の領域は式(2)を満たすように焼き入れされたものの、第1の領域では焼き戻し不足となり、第1の領域において式(1)を満たさず、また前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80以上となった。その結果、引張試験において、HAZ軟化部での割れとなった。
2 スポット溶接金属
3 重ね合わせ面
11 第1の鋼板
12 第2の鋼板
51 第1の領域
52 第2の領域
Claims (4)
- 平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、
前記第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板と、
前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合している2つのスポット溶接金属と、
を含み、
前記2つのスポット溶接金属を含む前記第1の鋼板の板厚方向の全ての断面において、
前記第1の鋼板が、
前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面から前記第1の鋼板の板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第1の領域と、
前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から前記板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第2の領域と、を有し、
前記第1の領域の金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、前記第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たし、
前記第2の領域の金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす、
ことを特徴とするスポット溶接継手。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2) - 前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80HV以下であることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接継手。
- 前記第1の領域の、前記板厚方向の厚みが、前記第1の鋼板の板厚の30〜70%である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスポット溶接継手。 - 平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、
重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する2つのスポット溶接金属を形成し、
レーザー照射によって、前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う、
ことを特徴とするスポット溶接継手の製造方法。
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