JP6885523B2 - スポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法 - Google Patents

スポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、スポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法に関する。
本願は、2019年05月24日に、日本に出願された特願2019−097703号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
複数の鋼板部材を重ねて構成される構造物では、鋼板部材同士を重ね合わせた重ね合わせ部に対して、抵抗スポット溶接による接合が広く行われている。
例えば、特許文献1では、ハット材とクロージングプレートとがスポット溶接により互いに接合されるエネルギー吸収部材が記載されている。
現在、自動車用の高強度鋼板として、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板が広く用いられている。近年では引張強さが1100MPa以上の高強度鋼板も適用されはじめている。引張強さが1100MPa以上の高強度鋼板は、一般に高い強度を得るために焼入れ組織を含む。抵抗スポット溶接を行うと、鋼板を溶接するナゲット(スポット溶接金属)が形成され、ナゲットの周囲に熱影響部(heat affected zone)(以下、HAZという)が生じる。一般にHAZは焼き入れ組織を含む。但し、焼入れ組織を有する高強度鋼板に、抵抗スポット溶接を行った場合、焼き入れ組織である母材より硬さが低い領域(HAZ軟化部)が形成される。母材の焼き入れ組織が抵抗スポット溶接の熱により焼き戻されるからである。
自動車が衝突した際には、キャビン内の乗客を保護する必要がある。このため、Aピラー、Bピラー、ルーフレール、サイドシルといった自動車車体を構成する構造部材(重ね溶接部材)は、高い強度を備える必要がある。一般に自動車車体を構成する構造部材は、複数の鋼板部材を重ね合わせてフランジ(重ね合わせ部)を抵抗スポット溶接により接合して筒状の閉断面を形成して製造される。衝突時の変形抵抗を向上させ、少ない変形量でより多くの衝突エネルギーを吸収させるには、素材(母材)の高強度化や溶接(スポット)打点の増加といった手法がとられる。
抵抗スポット溶接される上記部材のフランジの一部には、自動車の衝突時に面内引張応力が負荷されることがある。一般に、HAZ軟化部のような硬さが低い領域があると部材の耐衝突性能が低下する。このようなHAZ軟化部は、抵抗スポット溶接の継手評価に用いられる引張せん断試験、及び十字引張試験(JIS Z3137)の評価結果への影響は小さい。しかしながら、面内引張応力が負荷された場合には、HAZ軟化部に局所的にひずみが集中してHAZ軟化部に破断を生じる場合がある。そのため、母材を高強度化し、スポット打点を増加しても、前述のHAZ軟化部が生じると、母材の強度と部品の形状とから想定される耐衝突性能を得られない場合がある。
従って、高強度鋼板からなる鋼板部材を自動車車体の構造部材に適用する場合には、ナゲットの周辺領域が破断の起点となるのを抑制することが求められる。
従来、抵抗スポット溶接によって形成された溶接部材の特性を改善するための検討がなされてきた。例えば、特許文献2には、スポット溶接部の特性を改善した溶接継手として、スポット溶接部を100〜400℃で熱処理し、L字引張継手強度を向上させた溶接継手が記載されている。また、特許文献3には、スポット溶接部に後通電を行い、十字引張継手強度を改善させる方法が記載されている。特許文献4には、スポット溶接電極の周囲をコイルで巻いたもので溶接後速やかに高周波誘導加熱してスポット溶接部及び溶融部を焼き戻すことで、TSSと材料強度との比及び、CTSと材料強度との積から評価される接合強度を改善する溶接方法が記載されている。
しかしながら、これらの特許文献2〜4に開示された技術によれば、TSSやCTSの向上には一定の効果が得られるものの、これらの特許文献2〜4では、鋼板に面内引張応力が負荷された際のHAZ軟化部での破断について考慮されていない。
このような課題に対し、特許文献5には、スポット溶接に供されるフランジ部の一部または全部にソフトゾーンと呼ばれる1100MPa未満の強度を有する領域を有することで、エネルギー吸収能力を高めたBピラーが記載されている。
しかしながら、特許文献5に開示されたBピラーでは、サイドフランジを軟化させる必要があるので、部材の耐衝突性能である曲げ性能が低下するおそれがある。また、特許文献5では溶接の前に部品内で軟化領域を設けるので、部品の形状精度が低下するという課題もある。部品の形状精度が低下すると、溶接時に部品間に隙間が生じることになり、溶接が難化する。
日本国特開2006−142905号公報 日本国特開2010−059451号公報 日本国特開2015−093282号公報 日本国特許第5459750号公報 日本国特許第5894081号公報
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、面内引張応力が負荷された場合でも、スポット溶接金属の間に挟まれる領域からの破断を抑制できるスポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、HAZ軟化部が形成された部品に面内引張応力が生じた際のひずみ分布を解析した。その結果、重ね合わせ溶接を行った高強度鋼板の、溶接金属同士の間の表面(重ね合わせ面とは反対側)付近を焼入れると同時に、重ね合わせ面付近を焼き戻すことで、部品強度の低下を最低限に抑えつつ、面内引張応力が負荷された場合であっても、HAZ軟化部に局所的にひずみが集中してHAZ軟化部に破断を生じることを回避できることを見出した。
本開示は、上記の知見に基づいてなされた。本開示の要旨は以下の通りである。
[1]本開示の一態様に係るスポット溶接継手は、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、前記第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合している2つのスポット溶接金属と、を含み、前記2つのスポット溶接金属を含む前記第1の鋼板の板厚方向の全ての断面において、前記第1の鋼板が、前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面から前記第1の鋼板の板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第1の領域と、前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から前記板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第2の領域と、を有し、前記第1の領域の金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、前記第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たし、前記第2の領域の金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
[2][1]に記載のスポット溶接継手では、前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80HV以下であってもよい。
[3][1]または[2]に記載のスポット溶接継手では、前記第1の領域の、前記板厚方向の厚みが、前記第1の鋼板の板厚の30〜70%であってもよい。
[4]本開示の別の態様に係るスポット溶接継手の製造方法は、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する2つのスポット溶接金属を形成し、レーザー照射によって、前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う。
本開示の上記態様によれば、面内引張応力が負荷された場合でも、スポット溶接金属の間に挟まれる領域からの破断を抑制できるスポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法が得られる。
本実施形態に係るスポット溶接継手の板厚方向断面図である。 本実施形態に係るスポット溶接継手を第1の鋼板側から上面視した場合の図である。 本実施形態に係るスポット溶接継手にレーザー照射を行った場合の、到達温度とビッカース硬さの測定との関係を示す模式図である。 実施例で用いた試験片を示す模式図である。
本開示の一実施形態に係るスポット溶接継手(本実施形態に係るスポット溶接継手)、及び本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るスポット溶接継手1は、第1の鋼板11と、第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板12と、第1の鋼板11と第2の鋼板12とを接合する2つのスポット溶接金属2とを備える。図1、図2においては、スポット溶接金属2は抵抗スポット溶接によって形成されたナゲットである。このようなスポット溶接継手は、第1の鋼板11と第2の鋼板12とを重ね合わせて抵抗スポット溶接を行うことによって得られる。
抵抗スポット溶接に供する第1の鋼板11は、Bピラー等の自動車骨格部品への適用を考慮し、平均ビッカース硬さ(HVbase)が350HV以上である鋼板である。また、第1の鋼板は、硬質マルテンサイトのような焼入れ組織を含む組織からなる。一方、第2の鋼板12については、限定されない。
第1の鋼板11の平均ビッカース硬さ(単純に硬度という場合がある)は、溶接に供される第1の鋼板11の溶接前の平均ビッカース硬さを意味する。スポット溶接後に測定する場合には、溶接熱影響を受けていない位置で測定された平均ビッカース硬さを意味する。
また、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、2つのスポット溶接金属2,2を含む第1の鋼板11の板厚方向の全ての断面において、第1の鋼板11が、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板12側の面(すなわち重ね合わせ面)から0.1mmの範囲に形成された第1の領域51と、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板12側の面とは反対の面(すなわち継手の表面)から0.1mmの範囲に形成された第2の領域52と、を有する。
また、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、第1の領域51の金属組織が、焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、第1の領域51の平均ビッカース硬さHV1と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たす。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
さらに、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、前記第2の領域52の金属組織が、硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域52の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす。
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
第1の領域51の外側にまで第1の領域51と同様の焼き戻しマルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。また、第2の領域52の外側にまで第2の領域52と同様の硬質マルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。
以下、各構成の限定理由について説明する。
上述したように、平均ビッカース硬さが350HV以上(引張強さに換算すると約1100MPa以上)の高強度鋼板は、硬質マルテンサイトのような焼入れ組織を含む(例えば50面積%以上である)組織を有していることが多い。このような組織は、焼入れ工程を含む製造方法によって得られる。
焼入れ組織を含む鋼板に溶接を行った場合、溶接の熱により溶接金属の周囲に形成されるHAZにおいて、硬質マルテンサイトが焼戻しマルテンサイト等の軟質な組織に変化する。すなわち、母材より硬さが低い領域(HAZ軟化部)が形成される。溶接部を有する板の面内に引張応力が生じた際、このHAZ軟化部が破断の起点となる場合がある。
本発明者らの検討の結果、(i)面内引張応力がかかる2つの溶接金属の間において、局所的な強度低下部が生じないようにすること、(ii)強度が劣位な部位や伸びやすい部位をHAZ軟化部の他に設ける形状にすること、(iii)HAZ軟化部を含む熱影響部のある領域の、破断までの伸び量が大きくなるように当該領域の組織を改質すること、によって、HAZ軟化部であった箇所への歪の集中を緩和できることが分かった。
局所的な強度低下部が生じないようにする場合、例えばスポット溶接金属2の間のHAZ軟化部を含む領域を焼戻して、HAZ軟化部の周辺の硬度を、HAZ軟化部の硬度と同程度まで低下させることが考えられる。しかしながら、この場合、HAZ軟化部からの破断は抑制できるものの、部品全体としては軟化部が大きくなることから、部品の耐衝突性能(曲げ性能)が低下することが懸念される。
本実施形態に係るスポット溶接継手1は、継手強度の低下を最低限に抑えつつHAZ軟化部での割れを防止するため、重ね合わせ溶接を行った第1の鋼板11の、スポット溶接金属2,2同士の間の、重ね合わせ面3付近を焼き戻すとともに、スポット溶接金属2,2同士の間の第1の鋼板の表面(重ね合わせ面3とは反対側)付近を焼入れることによって、所望の金属組織と平均ビッカース硬さとを備えた第1の領域と第2の領域とを形成する。
<第1の領域>
[金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230を満たす]
本発明者らの検討の結果、平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板11にスポットを行った際、溶接の熱影響によって生じるHAZ軟化部の硬度(ビッカース硬さ)は、(溶接前の第1の鋼板11の硬度×0.33+150)〜(溶接前の第1の鋼板11の硬度×0.33+230)程度になる。そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手では、HAZ軟化部を含むスポット溶接金属2,2間の第1の領域を焼戻して焼戻しマルテンサイトが50面積%以上の組織とし、また、そのビッカース硬さが、下記式(1)を満たすように制御する。
第1の領域51の平均ビッカース硬さ(HV1)が式(1)を満たすことで、HAZ軟化部とその周囲との硬度差が80HV以下になる。この場合、HAZ軟化部への歪の集中を緩和できる。
HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
第1の領域51は、平均ビッカース硬さが式(1)を満たすことに加えて、領域内におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80HV以下であることが好ましい。第1の領域51における硬度の最大値と最小値との差を小さくすることで、歪の集中をさらに緩和することができる。換言すると、第1の領域51内の硬度分布が均質であると、局所的な歪の集中を避けることができる。より好ましくは、ビッカース硬さの最大値と最小値との差が50HV以下である。
[2つのスポット溶接金属の間、かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に形成されている]
第1の領域51は、第1の鋼板11の板厚断面の、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板12側の面から0.1mmの範囲(厚さ)に形成されている。上記の硬度を有する領域の板厚方向の厚さが0.1mm未満であると、局所的な強度低下部であるHAZ軟化部が残存し、十分な効果が得られない可能性がある。上記の第1の領域51の硬度及び組織の条件を満たす領域が第1の領域51の外側にまで広がっていてもよい。その場合、上記の第1の領域51の硬度と組織を満たす領域は、第2の鋼板側の面から第1の鋼板の板厚の30%以上の範囲に広がっていることが好ましい。但し、上記の第1の領域51の硬度と組織を満たす領域が、第2の鋼板側の面から第1の鋼板の板厚の90%超の範囲にまで広がっていると、継手部全体の平均硬度が低下し、曲げ耐力が低下することが懸念されるので好ましくない。
<第2の領域>
[金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、HVbase−30≦HV2≦HVbase+30を満たす]
第1の本実施形態に係るスポット溶接継手1に対し面内引張応力が付与された場合、2つのスポット溶接金属2,2間にHAZ軟化部のような局所的な強度低下部が形成されていると歪が集中するが、本発明者らの検討の結果、特に第1の鋼板11の表面(重ね合わせ面とは反対の面)付近に強度低下部が存在すると、歪が集中しやすいことが分かった。
そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手1では、HAZ軟化部を含む2つのスポット溶接金属2,2間の第1の鋼板11の表面付近に対し、焼入れを行い、焼入れした領域の硬さを、溶接熱影響を受けていない第1の鋼板11の平均ビッカース硬さと同等にする。
具体的には、第2の領域52の平均ビッカース硬さHV2と第1の鋼板11の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たすようにする。
HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
第2の領域52の平均ビッカース硬さと、第1の鋼板11の平均ビッカース硬さとの差が30超であると、面内引張応力負荷時の歪の集中を十分に抑制することができない。
第1の領域51が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含む焼き戻し組織であって、第2の領域が硬質マルテンサイトを50面積%以上含む焼き入れ組織であることから、第1の領域51の平均ビッカース硬さ(HV1)より第2の領域52の平均ビッカース硬さ(HV2)は大きい。
[2つのスポット溶接金属の間、かつ第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に形成されている]
第2の領域52は、第1の鋼板11の板厚断面の、2つのスポット溶接金属2,2の間、かつ第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲(厚さ)に形成されている。上記の硬度を有する領域の板厚方向の厚さが0.1mm未満であると、局所的な強度低下部であるHAZ軟化部が残存し、十分な効果が得られない可能性がある。上記の第2の領域52の硬度と組織の条件を満たす領域が第2の領域52の外側にまで広がっていてもよい。その場合、上記の第2の領域52の硬度と組織を満たす領域は、第2の鋼板12側の面とは反対の面から第1の鋼板の板厚の10%以上の範囲に形成されていることが好ましい。但し上記の第2の領域52の硬度と組織を満たす領域が、第2の鋼板12側の面から第1の鋼板11の70%超の範囲にまでひろがっていると、第2の領域側が曲げ外になる引張曲げ荷重が負荷された際に、破断伸びが低下することが懸念されるので好ましくない。
本実施形態に係るスポット溶接継手1では、上記第1の領域51及び第2の領域52は、2つのスポット溶接金属を含む第1の鋼板の板厚方向の全ての断面において、形成されている。すなわち、第1の鋼板について、2つの溶接金属が含まれるように板厚方向断面を観察した場合、全ての断面において、上述した第1の領域51及び第2の領域52が観察される。
言い換えれば、スポット溶接金属2の重ね合わせ面3における径をDとしたとき、第1の領域51及び第2の領域52の第1の鋼板11の板厚方向断面に垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向、図2の紙面上の上下方向)の幅は、1.0×Dである。第1の領域51の幅方向外側にまで第1の領域51と同様の焼き戻しマルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。第2の領域52の幅方向外側にまで第2の領域52と同様の硬質マルテンサイトの面積%及び平均ビッカース硬さの条件を満たす金属組織が広がっていてもよい。
自動車の衝突が生じた場合、面内引張応力の方向は、スポット溶接金属2,2間を結ぶ方向(スポット溶接金属2,2の中心同士を結ぶ方向)に対して必ずしも平行ではない。すなわち、一定の角度を有する(斜め方向に応力がかかる)場合がある。第1の領域51及び第2の領域52の幅が1.0×Dあれば、面内引張応力の付加方向がスポット溶接金属2,2間を結ぶ方向に対し一定の角度となった場合(斜め方向に応力がかかった場合)であっても、歪が集中しうるHAZ軟化部のへの歪集中が抑制される。その結果、HAZ軟化部での破断がさらに抑制される。
一方、第1の領域51、第2の領域52の幅が1.0×D未満であると、面内引張応力の方向が、スポット溶接金属2,2間を結ぶ方向に対して一定の角度を有する(斜め方向に応力がかかる)場合には、十分な効果が得られないことが懸念される。
第1の鋼板11の平均硬度は、荷重を1.0kgfとしたビッカース硬さ計を用いて測定する。
硬質マルテンサイト組織を含む鋼板では、溶接熱影響を受けた部分の硬度は、溶接前の硬度より低くなる。このため、第1の鋼板11の硬度は、第1の鋼板11の溶接による熱影響を受けていない位置の硬度を測定し、その平均値を用いる。溶接による熱影響を受けていない位置として、例えば、スポット溶接金属2から、他の溶接金属のない方向へ15mm以上離れた位置の硬度を測定すればよい。
具体的には、ビッカース硬さ計を用いて、荷重を1.0kgfとして、溶接による熱影響を受けていない10ヶ所の、第1の鋼板11の表面から板厚の1/8の位置、3/8の位置、5/8の位置、7/8の位置の硬度を測定し、その平均値を用いる。
第1の領域51及び第2の領域52の第1の鋼板11の表面からの厚さ及びそれらの平均ビッカース硬さについては、荷重100gfとしたビッカース硬さ計を用いて、第1の鋼板の板厚方向断面に対して、研磨とビッカース硬さの測定を繰り返して、スポット溶接金属2,2に挟まれる範囲のビッカース硬さの分布を得る。この分布に基づき、第1の領域51及び第2の領域52の厚さ及びそれらの平均ビッカース硬さを算出する。
ビッカース硬さの分布は、具体的には、以下の方法で測定する。
まず、2つのスポット溶接金属の中心を通る第1の鋼板11の板厚方向断面(図2に示すA−A断面)が測定面となるようにサンプルを採取する。
この測定面に対し、第1の鋼板11の板厚方向には、第1の鋼板11の表面及び重ね合わせ面からそれぞれ0.1mmの位置、及びその間を5等分した位置に対してビッカース硬さの測定を行う。この測定を、幅方向(スポット溶接金属2ともう一方のスポット溶接金属2とを結ぶ方向)に0.5mm間隔で繰り返して行う。
その後、サンプルを0.5mm研磨し、現出した断面(図2に示すB−B断面)に対し、上記と同様のビッカース硬さ測定を行う。
さらに、断面にスポット溶接金属2が含まれなくなるまで研磨及びビッカース硬さの測定を行い、スポット溶接金属2,2間における第1の鋼板11のビッカース硬さ分布を得る。硬度は反対側の断面も同等であると考えられるため、上記の通り半分の断面について測定を行えばよい。
溶接に供する第1の鋼板11が硬質マルテンサイトを含むかどうかは、第1の鋼板11の溶接による熱影響を受けていない位置の表面から板厚の1/8の位置、3/8の位置、5/8の位置、7/8の位置の各5ヶ所から採取したサンプルについて、レペラ腐食液を用いてエッチング処理し、光学顕微鏡により1000倍の倍率で100μm四方の視野を観察して判断すればよい。観察視野内で、白色〜赤褐色に見えるものがマルテンサイトであり、マルテンサイトのうち、炭化物が含まれているマルテンサイトを硬質マルテンサイト、炭化物が含まれていないマルテンサイトを焼き戻しマルテンサイトであると判断する。
また、第1の領域51の焼戻しマルテンサイトの面積率及び第2の領域52の硬質マルテンサイトの面積率は、上述したビッカース硬さの測定面と同じ面において、対象となる領域(第1の領域であれば式(1)を満たす領域、第2の領域であれば式(2)を満たす領域)に対し、5ヶ所から採取したサンプルについて、レペラ腐食液を用いてエッチング処理し、光学顕微鏡により1000倍の倍率で100μm四方の視野を観察し、観察視野内で、白色〜赤褐色に見えるものがマルテンサイトであるとしてマルテンサイトの面積率を測定する。観察した視野のマルテンサイトの面積率を平均することで、第1の領域51及び第2の領域52のマルテンサイト面積率が得られる。その後、同じサンプルを用いて、ピクラールを用いてエッチング処理し、光学顕微鏡により1000倍の倍率で100μm四方の視野を観察し、観察視野内で、炭化物が含まれているマルテンサイトを硬質マルテンサイト、炭化物が含まれていないマルテンサイトを焼き戻しマルテンサイトであるとして、マルテンサイトのうちの焼戻しマルテンサイト及び硬質マルテンサイトのそれぞれの割合を求める。
本実施形態では、スポット溶接によって溶接金属が形成されたスポット溶接継手を対象としている。スポット溶接は、点溶接とも呼ばれ、重ね合わされた二枚の鋼板を点でつなぐ溶接のことである。スポット溶接の手段としては、アークスポット溶接、抵抗スポット溶接、レーザースポット溶接が挙げられる。これに対し、線状に行われる溶接を連続溶接という。連続溶接の手段としては、アーク溶接、レーザー溶接、シーム溶接等が挙げられる。点溶接は、連続溶接に比べ、溶接面積が少ないため、施工時間が短時間であり、また省電力である。すなわち、点溶接は生産性に優れる。
上記では、スポット溶接金属2が抵抗スポット溶接のナゲットである場合について説明したが、本実施形態に係るスポット溶接継手1はスポット溶接金属2が抵抗スポット溶接のナゲットである抵抗スポット溶接継手に限定されない。例えば、スポット溶接金属2がレーザースポット溶接によって形成されてもよく、スポット溶接金属2がアークスポット溶接によって形成されてもよい。
本実施形態に係るスポット溶接継手1では、例えば、第1の鋼板11がハット部材であり、第2の鋼板12がクロージングプレートであり、2つのスポット溶接金属2は、ハット部材のフランジ部とクロージングプレートとの重ね合わせ部に形成されていることが好ましい。このような構成であれば、構造部材としての強度及び耐衝突性能の向上に特に有効に作用する。
また、本実施形態に係るスポット溶接継手1は、2つのスポット溶接金属2を有し、2つのスポット溶接金属2,2同士の間の領域が上記の関係を満足していれば、その効果は得られる。自動車骨格部品等へ適用される場合、複数の(2またはそれ以上の)スポット溶接金属が形成される。2を超えるスポット溶接金属が形成される場合でも、対象とする2つのスポット溶接金属の間の領域が上記の関係を有していれば、その領域については効果が得られる。2を超えるスポット溶接金属を有する場合には、特に面内引張応力がかかることが想定される部位において、2つのスポット溶接金属2同志の間が上記の関係を満足するように制御することが好ましい。全てのスポット溶接金属2間において、上記のような硬さの関係を満足すれば、高強度鋼板の面内のいずれの方向と場所に引張応力が負荷されてもHAZ軟化部での破断を抑制することができるのでより好ましい。
本実施形態に係るスポット溶接継手1は、Aピラーやサイドシル、またはBピラー等に適用することができる。例えばBピラーでは、ハット部材のフランジ部において、クロージングプレートと、スポット溶接金属によって接合される。Bピラーのスポット溶接金属間において、上記の関係を満足すれば、自動車の衝突時にフランジ部に面内引張応力が負荷された場合であっても、HAZ軟化部であった部位での破断を抑制できる。
第1の鋼板11及び/または第2の鋼板12は、めっき鋼板であってもよい。この場合耐食性が向上する。めっき鋼板としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板等が例示される。
次に、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法について説明する。
本実施形態に係るスポット溶接継手は、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。すなわち、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、
(I)平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、
(II)重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する複数のスポット溶接金属を形成し、
(III)前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う
工程を有する。
平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板11と、第2の鋼板12とは、それぞれ公知の鋼板を用いることができる。
これらの鋼板を重ね合わせてスポット溶接を行い、スポット溶接金属を形成して溶接継手とする。スポット溶接条件は限定されず、通常の条件とすればよい。
スポット溶接後、レーザー照射によって第1の鋼板の一部に焼入れを行うとともに一部に焼戻しを行い、第1の領域及び第2の領域を形成する。
焼入れを行う場合には、対象とする領域の温度をAc1℃超に高める必要がある。好ましくはAc1+30℃以上である。ただし、焼き入れ領域の温度を高くし過ぎると、熱伝導によって、焼戻しを行う必要のある領域もまた焼き入れ領域となってしまう。そのため、板厚に応じた入熱コントロールが必要である。
一方、焼戻しを行う場合には、対象とする領域の温度をAc1℃未満の温度に加熱する必要がある。図3に示すように、加熱された領域は、焼戻しマルテンサイトとなり、Ac1℃までは温度上昇につれて硬度が減少する。一方、加熱温度がAc1℃を超えると、組織がオーステナイトに変態する。このオーステナイトは、冷却時に再度硬質マルテンサイトに変態するので、Ac1℃超に加熱された部位では、高い硬度を示す。
このことを利用して、第1の鋼板の表面(第2の鋼板とは反対の面)側からレーザー照射を行い、第1の鋼板の表面付近の温度をAc1℃超になるように加熱し、その反対の面付近の温度をAc1℃以下となるように加熱すれば、所定の第1の領域及び第2の領域を形成することができる。
上記のような加熱を行う場合、板厚方向へ硬さ分布を与えるためには、極表層へのみ入熱させ、深さ方向には熱伝導によって熱を与える必要がある。また、狙いの領域外まで加熱すると狙いの領域での抜熱が不十分となり焼き戻し組織が得られない場合がある。
例えば、高周波誘導加熱では、一定の深さまで入熱されてしまうので、好ましい硬さ分布が得られない。また、ガス加熱やアーク加熱では、特定の領域だけを狙って加熱することが困難である。
そのため、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、レーザービームの照射によって加熱を行う。溶接金属間全体を加熱するため、溶接金属径以上のビーム幅を有するレーザービームを一定の速度で移動させながら加熱することが好ましい。
レーザーの照射条件は、特に限定されず、第1の鋼板の板厚、得たい第1の領域または第2の領域の厚さ等によって決定すればよいが、例えば以下の条件が例示される。
例示される条件
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:500〜3000W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:4〜10mm、進行方向:0.5〜3mmの矩形
・レーザー移動速度:50〜500cm/min
このようなレーザー照射によって、第1の鋼板の、2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行うことができる。
以下に、本開示を図及び表を参照して実施例により具体的に説明する。これらの実施例は、本開示の効果を確認するための一例であり、本開示を限定するものではない。
まず、板厚2.0mmの鋼板を950℃の炉に5分保持した後、水冷金型にてホットスタンプすることで焼き入れ処理をした。焼き入れ後には、ショットブラストを用いて鋼板表面の酸化スケールを除去した。用いた鋼板の焼き入れ後のビッカース硬さは表1に示す通りであった。また、この鋼板は、硬質マルテンサイトを含む組織を有していた。
次に、前記鋼板から、図4に示すような標点間距離が50mm、平行部幅25mmである引張試験片を採取した。また、同鋼板から25mm角のタブ板を採取した。
図4に示すように、採取した引張試験片の平行部にタブ板を乗せ、各タブ板中央部に対し、単相交流スポット溶接機を用いて、以下に示す条件で抵抗スポット溶接を行った。
電極:DR型電極(先端φ6mm R40)
加圧力:400kgf
通電時間:24cyc
抵抗スポット溶接により、引張試験片とタブ板との間には、ナゲット径が4×√t(t:引張試験片の板厚(mm))である溶接金属が二か所形成された。
スポット溶接後の試験体(継手No.1〜5、11、12)に対し、引張試験片側からレーザーを照射し、平行部の幅方向中央部がビームの中心と一致するように長手方向に対しては平行部全体に亘って熱処理を施した。継手No.6〜10に対してはレーザー照射を行わなかった。
継手No.1〜5へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:1200W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:250cm/min
また、継手No.11へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:700W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:130cm/min
また、継手No.12へのレーザー照射条件は以下の通りとした。
・発振器の種類:半導体レーザー
・出力:750W
・ビーム形状:照射面において、幅方向:8mm、進行方向:1mmの矩形
・レーザー移動速度:80cm/min
その後、所定の大きさの第1の領域及び第2の領域が形成されていたかどうか、形成されていた場合には第1の領域及び第2の領域の平均ビッカース硬さ及び、焼戻しマルテンサイトまたは硬質マルテンサイトの面積率を上述の方法で調査した。測定面は、試験体の幅方向中央の厚さ方向断面とした。
また、各試験体に対して引張試験を実施し(面内引張応力を負荷し)、破断位置を調査した。引張試験時の引張速度は10mm/minとした。
結果を表1に示す。
Figure 0006885523
継手No.1〜5(本発明例)では、重ね合わせ面から0.1mmの範囲(第1の領域)が焼き戻され、式(1)を満たしており、また、表面から0.1mmの範囲(第2の領域)は焼き入れされ、式(2)を満たしていた。その結果、HAZ軟化部での割れが見られなかった。
一方、継手No.6〜10(比較例)はレーザー照射を行わなかったことで、継手No.1〜5の第1の領域または第2の領域に相当する範囲において、式(1)、式(2)を満たさなかった。その結果、引張試験において、HAZ軟化部での割れとなった。
継手No.11〜12(比較例)はレーザー照射を行ったが、レーザー照射条件が好ましくなかった。その結果、比較例11は入熱不足により第一の領域でHAZ軟化部が明瞭に残存しており、HAZ軟化部での破断となった。比較例12もまた入熱不足であり、第2の領域は式(2)を満たすように焼き入れされたものの、第1の領域では焼き戻し不足となり、第1の領域において式(1)を満たさず、また前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80以上となった。その結果、引張試験において、HAZ軟化部での割れとなった。
1 スポット溶接継手
2 スポット溶接金属
3 重ね合わせ面
11 第1の鋼板
12 第2の鋼板
51 第1の領域
52 第2の領域

Claims (4)

  1. 平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、
    前記第1の鋼板に重ねられた第2の鋼板と、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合している2つのスポット溶接金属と、
    を含み、
    前記2つのスポット溶接金属を含む前記第1の鋼板の板厚方向の全ての断面において、
    前記第1の鋼板が、
    前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面から前記第1の鋼板の板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第1の領域と、
    前記2つのスポット溶接金属の間、かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から前記板厚方向に0.1mmの範囲に形成された第2の領域と、を有し、
    前記第1の領域の金属組織が焼戻しマルテンサイトを50面積%以上含み、前記第1の領域の平均ビッカース硬さHV1と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(1)を満たし、
    前記第2の領域の金属組織が硬質マルテンサイトを50面積%以上含み、前記第2の領域の平均ビッカース硬さHV2と前記第1の鋼板の平均ビッカース硬さHVbaseとが、下記式(2)を満たす、
    ことを特徴とするスポット溶接継手。
    HVbase×0.33+150≦HV1≦HVbase×0.33+230 式(1)
    HVbase−30≦HV2≦HVbase+30 式(2)
  2. 前記第1の領域におけるビッカース硬さの最大値と最小値との差が80HV以下であることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接継手。
  3. 前記第1の領域の、前記板厚方向の厚みが、前記第1の鋼板の板厚の30〜70%である、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のスポット溶接継手。
  4. 平均ビッカース硬さHVbaseが350HV以上の、硬質マルテンサイトを含む第1の鋼板と、第2の鋼板と、を重ね合わせ、
    重ね合わされた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを接合する2つのスポット溶接金属を形成し、
    レーザー照射によって、前記第1の鋼板の、前記2つのスポット溶接金属同士の間かつ第2の鋼板側の面から0.1mmの範囲に焼戻しを行うと同時に、前記2つのスポット溶接金属の間かつ前記第2の鋼板側の面とは反対の面から0.1mmの範囲に焼入れを行う、
    ことを特徴とするスポット溶接継手の製造方法。
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