JP2010007109A - 耐食性およびz方向の靭性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents

耐食性およびz方向の靭性に優れた鋼材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高塩化物環境において、耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05%未満、Ni:0.05%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、Cu/Sn比が1以下である組成を有するスラブの表面温度を1050〜1200℃に加熱した後、900℃以上の温度域で全圧下量のうち70%以上の圧延を行い、かつ、800℃以上の温度域で圧延を終了したのち、冷却することを特徴とする耐食性および塗膜剥離性に優れた鋼材の製造方法。ここで、800℃以上の温度域で圧延を終了した後、500℃以下の温度域まで冷却してから、650℃以下の温度域で焼鈍してもよい。なお、鋼材は、Ti、Nb、Mo、Co、W、V、Ca、Zr、Mg、BおよびREMのうちの1種または2種以上を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、海浜地域や融雪塩が散布される地域等で飛来塩分量が多い環境下の橋梁等の土木鋼構造物ならびに船舶等の鋼構造物に使用した場合に、欠陥部位等からの腐食を著しく抑制するためメンテナンスミニマム化に寄与する材料として広く適用することができる耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法に関する。
一般に、耐候性鋼材を大気腐食環境中に暴露すると、その表面に保護性のあるさび層が形成され、それ以降の鋼材腐食が抑制される。そのため、耐候性鋼材は、塗装せずに裸のまま使用できるミニマムメンテナンス鋼材として橋梁等の構造物に用いられている。
ところが、海浜地域はもちろんのこと、内陸部でも融雪塩や凍結防止剤が散布される地域のように飛来塩分量が多い地域では、耐候性鋼材の表面に保護性のあるさび層が形成されにくく、腐食を抑制する効果が発揮されにくい。そのため、これらの地域では、裸のままの耐候性鋼材を用いることができず、普通鋼に塗装を施して使用する普通鋼の塗装使用が一般的である。しかし、このような普通鋼の塗装使用の場合には、腐食による塗膜劣化のため約10年毎に再塗装する必要があり、そのため維持管理に要する費用は莫大なものとなる。
近年、日本工業規格(JIS)で規格化された耐候性鋼(JIS G 3114:溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)は、飛来塩分量がNaClとして0.05mg/dm/day(0.05mdd)以上の地域、たとえば海浜地域では、ウロコ状錆や層状錆等の発生により腐食減量が大きいため、無塗装では使用できないことになっている(建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会:耐候性鋼の橋梁への適用に関する共同研究報告書(XX)−無塗耐候性橋梁の設計・施工要領(改訂版−1993.3)参照)。
このため、海浜地域などの塩分の多い環境下では、通常普通鋼材に塗装を行って対処している。しかしながら、河口付近の海浜地域や融雪塩を撒く山間部等の道路に建設される橋梁は腐食が著しく、再塗装せざるを得ないのが現状である。これらの再塗装には多大な工数がかかることから、無塗装で使用できる鋼材への要望が強い。
最近、Niを1〜3%程度添加したNi系高耐候性鋼が開発されたが、このようなNi添加だけでは、飛来塩分量が0.3〜0.4mddを越える地域では適用が難しいことが判明してきた。
鋼材の腐食は、飛来塩分量が多くなるにしたがって激しくなるため、耐食性と経済性の観点からは、飛来塩分量に応じた耐候性鋼材が必要になる。また、橋梁といっても、使用される場所や部位により鋼材の腐食環境は同じではない。例えば、桁外部では、降雨、結露水および日照に曝される。一方、桁内部では、結露水に曝されるが雨掛かりはない。一般に、飛来塩分量が多い環境では、桁外部より桁内部の方が腐食が激しいと言われている。
また、融雪塩や凍結防止剤を道路に撒く環境では、その塩が走行中の車に巻き上げられ、道路を支える橋梁に付着するので、厳しい腐食環境となる。さらに、海岸から少し離れた軒下等も厳しい塩害環境に曝され、このような地域では、飛来塩分量が1mdd以上の厳しい腐食環境になる。
このような問題に対応するため、飛来塩分量が多い環境での腐食を防止する鋼材の開発が従来から進められている。
たとえば、特許文献1にはクロム(Cr)の含有量を増加させた耐候性鋼材が提案され、そして、特許文献2にはニッケル(Ni)含有量を増加させた耐候性鋼材が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1で提案されたクロム(Cr)の含有量を増加させた耐候性鋼材は、ある程度以下の飛来塩分量の領域においては耐候性を改善することができるものの、それを超える厳しい塩分環境においては逆に耐候性を劣化させる。
また、上記特許文献2で提案されたニッケル(Ni)含有量を増加させた耐候性鋼材の場合、耐候性はある程度改善されるが、鋼材自体のコストが高くなり、橋梁等の用途に使用される材料としては高価なものになる。これを避けるため、Ni含有量を少なくすると、耐候性はさほど改善されず、飛来塩分量が多い場合には、鋼材の表面に層状の剥離さびが生成し、腐食が著しく、長期間の使用に耐えられないという問題が生じる。
そこで、本発明者らは、さらに、Snおよび/またはSbを含有させると、飛来塩分量が多い環境で耐候性が著しく改善されることを見いだし、Cr、NiおよびCuを含有する鋼材に、さらに、Snおよび/またはSbを含有させることを試みた。しかしながら、NiをSnおよび/またはSbと複合して含有させると、飛来塩分量が多い環境で耐候性の改善が認められないどころか、逆に劣化させる場合があることが判明した。なお、Cuは飛来塩分量が多い環境でも耐候性改善に効果があり、その効果はSnおよび/またはSbの共存下でも発揮されるが、反面、Cu脆化によって熱間加工性を劣化させるおそれがある。そして、Cu脆化の抑制のためにNiを含有させることが有効であるが、Niの含有量をCuの含有量の1/2以下に制限することによって、Cu脆化を抑制した上で、海浜耐候性を向上させた鋼材を提案した(特許文献3)。
特開平9−176790号公報 特開平5−51668号公報 特開2006−118011号公報
船舶分野や橋梁分野における耐塗装剥離性が大きな問題となる。すなわち上記に示したように、多量の塩化物が飛来する海岸環境や、融雪剤や凍結防止剤を散布する環境においては、塗装を施しても塗装が早期に剥離し、且つ腐食が進行するという問題があり、数年から十数年毎に塗装の塗り替えを実施する必要がある。塗装の塗り替えを実施するためには、一度腐食した橋梁に足場を組んで再ブラスト処理を施す必要があるので多大なコストがかかる。そして、再ブラスト処理を施してもさびを完全に除去できるわけではなく、さびを完全には除去しきれていない鋼材上に再度、塗装しても、塗装寿命が著しく短くなる。耐塗装剥離性は下地である鋼材の耐食性を含めた特性によるところも大きい。
たとえば、タンカーや貨物輸送船等の船舶においては、空荷の時でも船体が安定するようバラストタンクに海水を注入積載している。海水は、鋼に対し腐食作用を有しており、バラストタンクを構成する鋼材の腐食を促進させる。このバラストタンクを構成する鋼材の腐食は、バラストタンク内に注入積載された海水が直接に接するタンク内壁部ではそれほどでなく、海水面上の空間部分(気相部)に接する部分で激しいことが知られている。これは、空間部のタンク内壁が、常に湿潤状態にあり腐食を起こす(促進する)酸素が空気中から十分に供給され続けられることによる。
バラストタンク内壁面の腐食抑制対策として、従来、タールエポキシ塗料をバラストタンクの内壁面に200μm程度と比較的厚い膜厚で被覆して防食することとしていた。しかし、この方法では腐食環境が厳しく塗膜寿命も約10年と短く、補修塗装が必要になるという欠点を有している。
したがって、塗装の寿命を延長し、補修塗装間隔を大きく延ばすことが強く望まれていた。すなわち、塗装が必要とされる船舶分野や橋梁分野においても、ライフサイクルコストのミニマム化の要求が高く、塗装寿命を延長することは橋梁のライフサイクルマネジメントを考える上で非常に重要となる。
さらに、橋梁分野や船舶分野の鋼材の機械的特性として、靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性に優れることも非常に重要となる。
本発明は、高塩化物環境における耐食性(塗装が剥離せず且つ塗装欠陥部における腐食が抑制され耐食性が維持されること(耐塗装剥離性)および無塗装時の耐候性を含む)、さらには、Z方向の靭性にも優れた鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、飛来塩分量の多い環境での腐食について検討した結果、このような環境下では、FeCl溶液の乾湿繰り返しが腐食の本質的な条件となり、Fe3+の加水分解によりpHが低下した状態で、かつFe3+が酸化剤として作用することによって腐食が加速されることを見出した。
このときの腐食反応は、以下に示すとおりである。
カソード反応としては、主として、次の反応が起こる。
Fe3++e→Fe2+ (Fe3+の還元反応)
そして、この反応以外にも、次のカソード反応も併発する。
2HO+O+2e→4OH
2H+2e→H
一方、上記のFe3+の還元反応に対して、次のアノード反応が起こる。
アノード反応:Fe→Fe2++2e (Feの溶解反応)
従って、腐食の総括反応は、次の(1)式のとおりである。
2Fe3++Fe→3Fe2+・・・・・・(1)式
上記(1)式の反応により生成したFe2+は、空気酸化によってFe3+に酸化され、生成したFe3+は再び酸化剤として作用し、腐食を加速する。この際、Fe2+の空気酸化の反応速度は低pH環境では一般に遅いが、濃厚塩化物溶液中では加速され、Fe3+が生成され易くなる。このようなサイクリックな反応のため、飛来塩分量が非常に多い環境では、Fe3+が常に供給され続け、鋼の腐食が加速され、耐食性が著しく劣化することになることが判明した。
本発明者らは、このような塩分環境における腐食のメカニズムを基に、種々の合金元素の耐候性への影響について検討した結果、下記の(a)〜(j)に示す知見を得た。
(a)Snは、Sn2+として溶解し、2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+なる反応によりFe3+の濃度を低下させることで、(1)式の反応を抑制する。Snには、さらにアノード溶解を抑制するという作用もある。
(b)Cuは、従来から飛来塩分量の多い環境において耐食性改善効果の基本とされていた元素であり、比較的濡れ時間が長い環境において耐食性改善効果は見られる。しかしながら、塩化物濃度がさらに大きくなり、局部的にpHが下がるような環境、例えば塩分が付着し、湿度が変化することにより乾湿が繰り返され、β−FeOOHが生成するような比較的ドライな環境では、Cuはむしろ腐食を促進することが判明した。
(c)NiをSnと複合して含有させると、飛来塩分量が多い環境で耐候性の改善が認められないどころか、逆に劣化させる場合があることは、特許文献3において、すでに開示したとおりである。このNiの挙動は、Ni添加量が増すほど耐候性が向上するという従来の知見とは相反するものである。
(d)Crは、単独添加した場合には、飛来塩分量の多い環境において耐候性を劣化させるが、Snと複合添加した場合には、飛来塩分量の多い環境での耐候性を向上させる効果を発揮する。
(e)Alを含有させると海浜耐候性が向上する。
(f)Nはアンモニアとして溶解し、腐食界面のpHを上昇させる作用を有する。飛来塩分量の多い環境では、上記Fe3+の加水分解によりpHが低下するが、Nを含有させることにより、腐食界面のpH低下が抑制され、耐候性が向上する。
(g)上記(a)〜(f)で述べた合金元素を含有させた材料に、さらに、Ti、Nb、Mo、W、V、CaおよびMgから選んだ1種または2種以上を含有させても、海浜耐候性の改善に効果がある。さらに、REMを含有させると、鋼材の溶接性が改善される。
(h)このように、この鋼材は、高い耐食性が期待できる。さらに耐食性が高いことから、鋼材に塗装を行っても、鋼材の腐食に起因する塗装の剥離が少なく塗装欠陥部の腐食を抑制する一方、塗膜による防食効果も期待できるため、塗装をした場合には、より一層の耐食性の効果が期待できる。したがって、耐食性のほかに、塗装の寿命を延長化でき、補修塗装間隔を大きく延ばす作用をも有する。特に、船舶分野や橋梁分野における耐塗装剥離性の改善において、効果を発揮する。
(i)しかしながら、これらの鋼材はSnを含有しているために、靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性が低下することが問題であった。前述したとおり、靭性は、橋梁分野や船舶分野の鋼材の機械的特性として、靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性に優れることも非常に重要である。
(j)本発明者らは、Snを含有していても、靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性に優れる鋼材を得るべく検討したところ、その熱間圧延に際しての仕上げ温度、すなわち圧延終了温度が大きく影響することを見出した。すなわち、靭性は、仕上げ温度と大きく関係があり、特定の温度域で仕上げると、靭性に優れた鋼材が得られることが判明した。
具体的には、熱間圧延に際して、スラブの表面温度を1050〜1200℃に加熱した後、900℃以上の温度域で、全圧下量のうち70%以上の圧延を終了し、800℃以上で圧延を終了させたのち、冷却することにより靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性を著しく改善できることが判明した。ここで、800℃以上で圧延を終了させたのち、500℃以下の温度域まで冷却してから、650℃以下の温度域で焼鈍してもよい。
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、その要旨は、次の(1)〜(5)の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法にある。以下、総称して、本発明ということがある。
(1) 質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05%未満、Ni:0.05%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、Cu/Sn比が1以下である組成を有するスラブの表面温度を1050〜1200℃に加熱した後、900℃以上の温度域で全圧下量のうち70%以上の圧延を行い、かつ、800℃以上の温度域で圧延を終了したのち、冷却することを特徴とする耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
(2) 800℃以上の温度域で圧延を終了した後、500℃以下の温度域まで冷却してから、650℃以下の温度域で焼鈍することを特徴とする、上記(1)の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
(3) さらに、質量%で、Ti:0.3%以下、Nb:0.1%以下、Mo:1.0%以下、Co:1.0以下、W:1.0%以下、V:1.0%以下、Ca:0.1%以下、Zr:0.2%以下、Mg:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有するスラブを用いることを特徴とする、上記(1)または(2)の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
(4) さらに、質量%で、Bを0.01%以下含有するスラブを用いることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
(5) さらに、質量%で、REMを0.02%以下含有するスラブを用いることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかの耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
本発明の製造方法によれば、高塩化物環境において、耐食性に優れ、かつ、靭性、特にZ方向(板厚方向)の靭性に優れた鋼材を提供することができる。鋼材の形状は特に限定されるものではないので、たとえば、船舶用、橋梁用等の厚板に広く用いることができる。
以下に、本発明の橋梁用鋼材に含まれる合金元素の作用効果を、その含有量の限定理由とともに、説明する。なお、合金元素の含有量「%」は、いずれも「質量%」を意味する。
C:0.001〜0.15%
Cは、鋼の強度を確保するために必要な合金元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.15%を上限とする。また、0.001%未満になると所定の強度が確保できないので、下限は0.001%とする。望ましい範囲は、0.005%〜0.15%である。
Si:2.5%以下
Siは、製鋼時の脱酸に必要な合金元素である。同じく脱酸剤としての働きをするAlを含有する場合には、特に添加をしなくてもよいが、Al含有量が0.005%未満の場合には、0.4%以上含有させるのが望ましい。一方、Siを2.5%を超えて含有させると、鋼の靱性が損なわれる。したがって、Siの含有量は2.5%以下とする。また、Siには耐候性を向上させる効果もある。この効果を確実に得たい場合には、0.1%以上添加するのが好ましい。
Mn:0.5%を超え2.5%以下
Mnは、低コストで鋼の強度を高める作用効果を有する元素であり、鋼中のSの含有量が低い場合には、一般に高飛来塩分環境における耐候性を向上させる作用を有する。しかしながら、鋼中のSと結合してMnSを形成し、このMnSが腐食の起点となり、耐食性、ひいては耐候性を劣化させる。また、機構は不明であるが、Niと共存する場合にはMnの含有量が2.5%を超えると耐候性が劣化する。したがって、Mnの含有量は2.5%以下とする。望ましくは1.5%以下とする。なお、構造用鋼としての強度を維持するためには、Mnを0.5%を超えて含有させる必要がある。
P:0.03%未満
Pは、不純物として含有されるが、濃厚塩化物環境での過度のPの含有は耐候性を劣化させるため、できるだけ少なくする必要がある。したがって、その含有量は0.03%未満とする。
S:0.005%以下
Sは、不純物として含有されるが、Mnと結合すると非金属介在物のMnSを形成して腐食の起点となり易く、耐候性を劣化させる。したがって、Sの含有はできるだけ少なくする必要があるので、その上限は0.005%とする。
Cu:0.05%未満
Cuは、一般的に耐候性を向上させる基本元素とされ、全ての海浜耐候性鋼や耐食鋼に添加されているが、高飛来塩分下の比較的ドライな環境においては、むしろ耐食性を低下させる。したがって、Cuの含有はできるだけ少なくする必要があり、不純物として含有されるとしても、Cu含有量は0.05%未満とする必要がある。
Ni:0.05%未満
Niは、一般的に飛来塩分量の多い環境下での海浜耐候性を著しく向上させる元素として従来から鋼中に添加され、Ni系耐候性鋼として開発・実用化されてきている。しかし、理由は定かではないが、Snと複合添加した場合には、耐食性の改善効果がないばかりか、Snによる耐候性改善効果を低下させるという悪影響が現れる。したがって、Niの含有はできるだけ少なくする必要があり、不純物として含有されるとしても、Ni含有量は0.05%未満とする必要がある。
Cr:0.01〜3.0%
Crは、飛来塩分量がそれほど多くない環境では保護性さびの形成による耐食性の向上が期待できるが、飛来塩分量が多い環境において鋼のアノード溶解反応を促進し耐候性を劣化させる。ところが、Snを含有する場合には、飛来塩分量が多い環境においても、Cr含有による耐候性の向上効果が発揮される。この効果は含有量0.01%以上で発揮されるが、3.0%を超えると局部腐食感受性が高まるとともに、溶接性が劣化する。したがって、Cr含有量は0.01〜3.0%とする必要がある。なお、Crの含有量の望ましい範囲は0.05〜1.0%である。
Al:0.003〜0.1%
Alは、0.003%以上含有させると耐候性が向上するが、含有量が0.1%を超えると鋼が脆化し易くなる。したがって、Alの含有量は0.003〜0.1%とする。
N:0.001〜0.1%
Nは、アンモニアとなって溶解し、飛来塩分量の多い環境におけるFe3+の加水分解によるpH低下を抑制することで、塩分環境における耐候性を向上させる効果を有する。この効果はNを0.001%以上含有させることにより得られ、0.1%を超えると飽和する。したがって、Nの含有量は0.001〜0.1%とする。含有量の望ましい範囲は0.002〜0.08%である。
Sn:0.03〜0.50%
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減する作用を有することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高飛来塩分環境における耐候性を向上させる。また、Snには鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用がある。さらに、Snを含有することにより、飛来塩分が多い環境においてもCrの耐候性を向上させる効果が発揮される。これらの作用は、Snを0.03%以上含有させることにより得られ、0.50%を超えると飽和する。したがって、Snの含有量は0.03〜0.50%とする。Snの含有量の望ましい範囲は0.03〜0.20%である。
Cu/Sn比:1以下
Snを含有する鋼の場合には、Cuの含有による耐食性の低下が著しい。また、鋼材を製造する際、Cuの含有による圧延割れの原因ともなる。このため、Cu/Sn比、すなわち、Si含有量に対するCu含有量の比を1以下とする必要がある。
本願発明の製造方法により製造される鋼材は、上記の合金元素の他に、さらにTi、Nb、Mo、Co、W、V、Ca、ZrおよびMgよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有してもよい。また、Bおよび/またはREMを含有してもよい。これらの元素を含有させてもよい理由とそのときの含有量は、次の通りである。
Ti:0.3%以下
Tiは、TiCを形成してCを固定することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐食性を向上させる。また、TiSの形成によりSを固定することによって、腐食の起点となるMnSの形成を抑える。これらの効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Tiの含有量が0.3%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.3%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Tiを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbには、Tiと同様、NbCを形成することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐食性を向上させる効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Nbの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Nbを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Moの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Moを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Co:1.0%以下
Coは、湿潤・乾湿繰り返し環境での耐食性、低pH環境における耐食性、Cl含有時の耐酸性酸性環境における耐食性を向上させる元素であり、母材の耐食性とさびの防食性の両方の効果により腐食を抑制する作用を有する。これらの効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかし、Coを1.0%を超えて含有させてもコスト上昇に見合う耐食性が得られないばかりか、Snの析出を抑制してSnによる耐食性改善効果を低下させることから、Coの含有量を1.0%以下とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Coを0.01%以上含有させるのが好ましい。
W:1.0%以下
Wは、Moと同様、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Wの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Wを0.01%以上含有させるのが好ましい。
V:1.0%以下
Vは、MoやWと同様、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Vの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Vを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Ca:0.1%以下
Caは、鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Caの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Caを0.0001%以上含有させるのが好ましい。
Zr:0.2%以下
Zrは、Tiと同様に、鋼中のSと結合することによりZrSを形成して、腐食の起点となるMnSの形成を抑制する、いわゆる形態調整の役割を担い、耐食性の低下を抑制する。これらの効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかし、Zrの含有量が0.2%を超えると、効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇する。したがって、Zrを含有させる場合、その含有量は0.2%以下とする。なお、この効果を確実に得るためには、Zrの含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Mg:0.1%以下
Mgは、Caと同様、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、Mbの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Mgを0.0001%以上含有させるのが好ましい。
B:0.01%以下
Bは、鋼材の強度を上昇させる。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかし、Bの含有量が0.01%を越えると、鋼材の靭性が劣化する。したがって、Bを含有させる場合、その含有量は0.01%以下とする。なお、この効果を確実に発現させるためには、Bを0.002%以上含有させるのが好ましい。
REM:0.02%以下
REMは、鋼の溶接性を向上させる。この効果を得たいときは、必要に応じて、含有させることができる。しかしながら、REMの含有量が0.02%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.02%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、REMを0.0001%以上含有させるのが好ましい。なお、REMとは、ランタニドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種または2種以上を含有させることができる。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
本発明の鋼材は、上記の必須元素あるいはさらに上記の任意元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼材である。なお、鋼中にオキサイド等の介在物が微細分散されている鋼も本発明の鋼材に含まれる。
上記のような組成を含有するスラブは、慣用の方法で溶製され、例えば連続鋳造方法によりスラブが製造される。熱間圧延を行うに当たり、スラブの表面温度は、1050℃〜1200℃とする。スラブの表面温度が1050℃未満であると、次工程である所定温度範囲での圧延プロセスに時間的制約がでる。スラブの表面温度が1200℃を超えるとスケール脱落による表面の形状が保てなくなり、且つスケールロスが大きくなるため経済的でない。したがって、スラブの表面温度は1050〜1200℃とする。
表面温度は、放射温度計等一般の機器で測定することも可能である。スラブ加熱時の時間(在炉時間=予熱帯、加熱帯、均熱帯)と時間によって予め、計算により表面温度を予想制御することも可能であるが、炉で加熱する際の在炉時間は、通常の範囲の20分〜4時間で実施できる。
スラブの加熱後は熱間圧延を行う。圧延は、900℃以上の温度域で、全圧下量のうち70%以上の圧延を終了させるように行う。これは、圧延を低温で実施し、また仕上げ温度を低温にすることにより、高強度を得る事が可能となるが、特性、特に靱性に特性異方性が生じるため、Cu/Sn比が1以下のスラブの際には、オーステナイトの未再結晶温度域での圧下量を過剰にすることは不適である。オーステナイトの未再結晶での圧下量を増加させると、細粒化により高強度が得られるものの、板厚の全方向において高靱性を得ることができない。このため、900℃以上での圧下量を70%以上とし、80%以上とすることが好ましい。さらに、圧延仕上げ温度を800℃以上とする必要があり、850℃以上とすることが好ましい。
冷却は、空冷以上で良い。しかしながら、800℃以下500℃以上の温度域での冷却速度を5℃/sとすることが望ましい。これは、5℃/s以上とすることで、ベイナイトなどの低温変態生成物を利用することが可能となり、冷却中の化学成分の偏析を抑え特性異方性を軽減することが出来る。冷却速度を5℃/s以上とする場合には、5℃/s以上での冷却停止温度を500℃以下とすることが望ましい。これは、ベイナイト等の低温変態生成物を一層活用するのに有効である。
さらに500℃以下の温度域に冷却した後に、650℃以下の温度域で焼鈍することが好ましい。焼鈍を行うことにより靭性を向上し、強度と靭性のバランスを調整することができる。なお、焼鈍は550℃以上で行うことが好ましい。
以上のような製造方法で製造した鋼材には、さらにブラスト処理、一次防錆処理、塗装など、用途に応じて公知の処理を実施してもよい。特に、より高い耐食性を求める場合には、その表面を防食皮膜で覆うのが望ましい。ここで、防食皮膜とは、鋼材の防食目的で施される皮膜を意味する。具体的には、耐食性鋼材において周知の各種のさび安定化処理皮膜(化成処理系と塗装系とを含む);Znめっき、Alめっき、Zn−Alめっき等の防食めっき皮膜;Zn溶射、Al溶射等の金属溶射皮膜;ビニルブチラール系、エポキシ系、ウレタン系、フタル酸系などの一般の防食塗装皮膜、さらにいわゆるC系塗装系、I系塗装系等を包含する。いずれの防食皮膜を施した場合であっても、優れた耐食性と高い防食性能を発揮することができる。これらの防食皮膜の膜厚または付着量は特に制限されず、通常の範囲内でよい。
さらに本鋼材は、さび付き鋼材、すなわち補修時に表面さびが除去しきれない状況で、特に塗装部耐食性を発揮するので、ケレン等でさびを完全に除去出来ない場合、例えば電動工具、ワイヤーブラシによるケレン程度で上記塗装を施しても著しく寿命を延長することができる。これは、塗装した場合に、キズ部がアノードと成りやすく、特にさび付き状態で塗装する場合に、局部的にpHが低下する現象が顕著になるために、本発明の鋼材の性能が発揮されるものと考えられる。
本発明により製造される鋼材は、飛来塩分量が多い環境下において優れた海浜耐候性を発揮するので、海浜地域や融雪塩が散布される地域における橋梁等の構造物に、塗装を必要としないミニマムメンテナンス材料として使用することができる。
本発明により製造される鋼材は、板材、管材、棒材、H型鋼などの異形材を含む多様な形状とすることができる。厚みは一般に3mm以上とすることが好ましい。
上述の通り、本発明の製造方法で製造した鋼材は、飛来塩分量が多い環境下において優れた耐食性を発揮し、かつ優れたZ方向における靭性を有するので、海浜地域や融雪塩が散布される地域における橋梁等の構造物に、また船舶用、特にバラストタンク等の厳しい腐食環境に適した材料を提供することができる。
表1に示した化学組成を有する鋼No.a〜No.nの鋼について、150Kg真空溶解炉で溶製し、スラブを作製した。スラブは放射温度計によりその表面温度を測定しながら加熱し、所定の表面温度になった後、圧延を開始して、長さ約1000mm×幅約150mm×厚さ約20mmの寸法の鋼板を形成した。その後、いくつかの鋼材については熱処理を施した。このときの鋼材の製造条件を表2に示す。なお、本実施例で作製した鋼材の酸素含有量は0.0001〜0.005%の範囲であった。
Figure 2010007109
Figure 2010007109
得られた鋼材から得た試験片をSAE(Society of Automotive Engineers)J2334試験により評価した。SAE J2334試験は、湿潤:50℃、100%RH、6時間、塩分付着:0.5%NaCl、0.1%CaCl、0.075%NaHCO水溶液浸漬、0.25時間、乾燥:60℃、50%RH、17.75時間を1サイクル(合計24時間)とした加速試験であり、腐食形態が大気暴露試験に類似しているとされている(長野博夫、山下正人、内田仁著:環境材料学、共立出版(2004)、p.74)。なお、本試験は、飛来塩分量が1mddを超えるような厳しい腐食環境を模擬する試験である。
SAE J2334試験120サイクル終了後、各試験片の表面のさび層を除去し、板厚減少量を測定した。ここで、「板厚減少量」は、試験片の平均の板厚減少量であり、試験前後の重量減少と試験片の表面積を用いて算出したものである。いずれの試験片も腐食減少量は0.20mm未満であり、高い耐食性を有することが判明した。
また、耐塗装剥離性を調べるために、試験片にエアースプレーにより変性エポキシ塗料(バンノー200:中国塗料製)を乾燥膜厚で150μmになるように塗装し、鋼材素地に達する深さでクロスカットを入れてから、同じくSAE J2334試験により評価した。この場合も、クロスカット部に腐食は見られたもののいずれの試験片にも塗膜の剥離面積率(試験片寸法100x60 mm中の剥離した面積率)は20%以下であり、良好な耐塗膜剥離性を得られることが判明した。耐塗膜剥離性が良好な場合には、より高い塗膜の効果を合わせた高い耐食性が期待できる。
一方、これらの鋼材に板厚方向(Z方向)のシャルピー衝撃試験を実施した。鋼板の表裏面に鋼板をレーザー溶接により55mmまで板厚を増厚させJIS Z 2202、JIS Z 2242に従いノッチ部が1/2t部となるように4号試験片を作製し、0℃における吸収エネルギーを求めた。なお、レーザー溶接時には1/2t部の組織や性質に変化が至らないように配慮した条件で行った。
本発明の製造方法により製造した鋼板(試験番号1〜14)は、板厚方向0℃における吸収エネルギーは100Jを大きく超える値を示し、良好な靭性を有していた。一方、試験番号15は、スラブ温度が1020℃の場合、時間的に圧延が間に合わず900℃での圧下割合が60%となり靭性の低下が観察された。また試験番号16は、スラブ温度を1150℃したが、圧下割合が60%としても吸収エネルギーは100Jに満たなかった。試験番号17は、スラブ温度を1150℃したが、圧下割合が80%としたが、圧延終了温度が775℃と低いため、吸収エネルギーが低値となった。
以上のとおり、本発明の製造方法によれば、高塩化物環境において、耐食性に優れ、かつ、Z方向の靭性に優れた鋼材を提供することができる。鋼材の形状は特に限定されるものではないので、たとえば、船舶用、橋梁用等の厚板に広く用いることができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05%未満、Ni:0.05%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、Cu/Sn比が1以下である組成を有するスラブの表面温度を1050〜1200℃に加熱した後、900℃以上の温度域で全圧下量のうち70%以上の圧延を行い、かつ、800℃以上の温度域で圧延を終了したのち、冷却することを特徴とする耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  2. 800℃以上の温度域で圧延を終了した後、500℃以下の温度域まで冷却してから、650℃以下の温度域で焼鈍することを特徴とする、請求項1に記載の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.3%以下、Nb:0.1%以下、Mo:1.0%以下、Co:1.0以下、W:1.0%以下、V:1.0%以下、Ca:0.1%以下、Zr:0.2%以下、Mg:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有するスラブを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  4. さらに、質量%で、Bを0.01%以下含有するスラブを用いることを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  5. さらに、質量%で、REMを0.02%以下含有するスラブを用いることを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の耐食性およびZ方向の靭性に優れた鋼材の製造方法。
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