JP2011208200A - 耐候性に優れた表面処理耐食性鋼材 - Google Patents

耐候性に優れた表面処理耐食性鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】飛来塩分の多い環境において、高い耐候性を長期間にわたって維持し得る表面処理鋼材を提供する。
【解決手段】化学組成が,質量%で,C:0.001%以上0.20%以下,Si:2.5%以下,Mn:0.5%超2.5%以下,P:0.03%以下,S:0.005%以下,Ni:0.05%以下,Cr:0.01%以上3.0%以下,Al:0.003%以上0.1%以下,N:0.001%以上0.1%以下,Sn:0.01%以上0.50%以下,並びに残部Fe及び不可避的不純物からなる基材と,当該基材上に,全被膜質量に基づいて,5質量%以上19質量%以下の3価クロムイオン,1質量%以上のアニオン,およびバインダー成分を有する保護性さび層の生成を促進する被膜とを備える。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材に表面処理を施した防食表面処理鋼材に関する。さらに詳しくは、本発明は、景観性を維持しつつ、鋼材の表面に保護性を有する緻密なさび層を形成させることにより大気腐食の抑制を図った防食表面処理鋼材に関する。
一般に、鋼にCu、Cr、Ni、P等の合金元素を添加することにより大気中での腐食に対する抵抗性(耐候性)を向上させることができ、これらの元素を含有した鋼は“ 耐候性鋼”と呼ばれている。耐候性鋼からなる部材である耐候性鋼材では、大気腐食環境中に曝露されることにより鋼表面に保護性を有するα−FeOOH(鉱物名:ゲーサイト)を主体とする緻密な鉄系オキシ水酸化物および酸化物からなるさび層(以下、「保護性さび層」という。)が形成され、その後の鋼材の腐食の進行が抑制される。そのため、耐候性鋼材は、無塗装で使用できるメンテナンスミニマム鋼材として橋梁等の構造物に多く用いられている。しかし、保護性さび層が形成されるまで数年から10年以上かかり、その間赤さび、流れさび等が発生すると言う景観上の問題がある。
さらに、海浜地域や融雪塩を散布する地域など、飛来塩分粒子(以下、「飛来塩分」ともいう。)の量が多い地域においては、大気中で耐候性鋼材でも保護性のあるさび層が形成されず、降雨や結露により鋼材が激しく腐食するという問題点がある。即ち、塩化物環境では、塩化物イオンを取り込むことで結晶構造が安定になるβ−FeOOH(鉱物名:アカガネアイト)が生成し易い。そのため、α−FeOOHを主体とする保護性さび層が生成する代わりに、層状剥離さびの1種として知られるβ−FeOOHを多く含む保護性の乏しいさびが形成される結果、腐食が進行することになる。電気化学的に不活性なα−FeOOHとは異なり、β−FeOOHは電気化学的に活性であるため、β−FeOOHの生成は、Feの溶出反応(酸化反応)の対反応としてカソード反応(還元反応)を担う可能性があり、これが腐食を促進すると考えられている。
保護性さび層を早期に生成することができる鋼材として、特許文献1には硫酸クロムまたは硫酸銅を1〜65質量%含む有機樹脂塗料を被覆した表面処理鋼材が、特許文献2には、下層に硫酸クロムを0.1〜15質量%含む乾燥膜厚5〜50μmの有機樹脂塗膜を有し、上層に硫酸クロムを含まない乾燥膜厚5〜20μmの有機樹脂塗膜を有する表面処理鋼材が開示されている。これらのいずれの手法も、保護性さび層の生成を促進し、早期に高耐食性を示すため、耐候性の著しい改善が可能であることが実証されている。
塩化物が飛来する地域で効果を発揮する耐候性鋼材として、例えば、特許文献3に示されるように、Niを添加した鋼材が知られている。さらに近年では特許文献4に示されるように飛来塩分の多い環境でも使用できるSnを含有した鋼材が発明されている。
特開平6−226198号公報 特開2001−81575号公報 特開平11−172370号公報 特開2008−163374号公報
上記の特許文献1、2に記載される鋼材では、クロムイオンを含む有機樹脂塗膜を鋼材表面に塗布し、保護性さびを早期に生成させる。しかしながら、飛来塩分の多い環境では腐食が進行しやすいという問題がある。また、塗膜にキズが生じた場合には塗膜の剥離が進展し、このため耐食性が長期にわたって維持されないという問題点が生じる。
また特許文献3で提案されたニッケル(Ni)含有量を増加させた耐候性鋼材の場合には、耐候性はある程度改善されるが、鋼材自体のコストが高くなり、橋梁等の用途に使用される材料としては高価なものになる。これを避けるため、Ni含有量を少なくすると、耐候性はさほど改善せず、飛来塩分が多い環境では、鋼材の表面に層状の剥離さびが生成し腐食が著しく、長期間の使用に耐えられないという問題が生じる。
特許文献4は、鋼材の耐食性もよく、一般的な塗装に対する耐剥離性を著しく高めたものであるが、保護性さび生成により耐食性を向上させるわけではない。
これら上記特許文献に示された鋼材は、飛来塩分の多い環境において大気中で長期間曝されると十分な耐候性が得られないという問題点があった。したがって、このような環境において高耐食性を維持する鋼材が強く望まれていた。すなわち、長期の耐食性が必要とされる橋梁においても、ライフサイクルコストのミニマム化の要求が高く、ライフサイクルマネジメントを考える上で非常に重要となる。
本発明は、従来の鋼材が内包する上述のような問題を解決すべく、飛来塩分の多い環境において、高い耐候性を長期間にわたって維持し得る表面処理鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、飛来塩分量の多い環境の腐食進行メカニズムについて検討した。その結果、このような環境下では、FeCl溶液の乾湿繰り返しが腐食の本質的な条件となり、Fe3+の加水分解によりpHが低下した状態で、かつFe3+が酸化剤として作用することによって腐食が加速されることを見出した。このときの腐食反応は、以下に示すとおりである。
カソード反応としては、主として、次の反応(2)が起こる。
Fe3++e→Fe2+ (Fe3+の還元反応) ・・・・(2)
そして、この反応以外にも、次のカソード反応(3)、(4)も併発する。
2HO+O+4e→4OH ・・・・(3)
2H+2e→H ・・・・(4)
一方、上記のFe3+の還元反応に対して、次のアノード反応(5)が起こる。
アノード反応:Fe→Fe2++2e (Feの溶解反応) ・・・(5)
従って、腐食の主な総括反応は、次の(6)式のとおりである。
2Fe3++Fe→3Fe2+ ・・・・(6)
上記(6)式の反応により生成したFe2+は、空気酸化によってFe3+に酸化され、生成したFe3+は再び酸化剤として作用し、腐食を加速する。この際、Fe2+の空気酸化の反応速度は低pH環境では一般に遅いが、濃厚塩化物溶液中では加速され、Fe3+が生成され易くなる。このようなサイクリックな反応のため、飛来塩分量が非常に多い環境では、Fe3+が常に供給され続け、鋼の腐食が加速され、耐食性が著しく劣化することになることが判明した。
上述の塩分環境における腐食メカニズムを基に、種々の合金元素の耐食性への影響について検討した結果、下記の(a)〜(h) に示す知見を得た。
(a)Snは、Sn2+として溶解し、2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+なる反応によりFe3+の濃度を低下させることで、(6)式の反応を抑制する。Snには、さらに(5)式に示されたアノード溶解を抑制するという作用もある。
(b)Cuは、従来から飛来塩分の多い環境において耐候性改善効果を発揮する基本元素であり、比較的濡れ時間が長い環境において耐候性改善効果は見られる。しかしながら、塩化物濃度がさらに高くなり、局部的にpHが下がるような環境、例えば塩分が付着し、湿度が変化することにより乾湿が繰り返され、β−FeOOHが生成するような比較的ドライな環境では、Cuはむしろ腐食を促進するという新たな知見が得られた。
(c)さらに、NiはSnと複合添加した場合には、飛来塩分の多い環境における耐食性改善効果が無く、多量に添加すると、逆に耐候性を劣化させることが判明した。このNiの挙動は、Ni添加量が増すほど耐候性が向上するという従来の知見とは相反するものである。
(d)Crは、単独添加した場合には、飛来塩分の多い環境において耐候性を劣化させるが、Snと複合添加した場合には、飛来塩分の多い環境での耐候性を向上させる効果を発揮する数少ない元素である。
(e)Alを含有させると海浜耐候性が向上する。
(f)Nはアンモニアとして溶解し、腐食界面のpHを上昇させる作用を有する。飛来塩分量の多い環境では、上記Fe3+の加水分解によりpHが低下するが、Nを含有させることにより、腐食界面のpHは中和により低下が抑制され、耐候性および塗膜剥離性が向上する。
(g)上記(a)〜(f)で述べた合金元素を含有させた材料に、さらに、Ti、Nb、Mo、W、V、CaおよびMgから選んだ1種または2種以上を含有させると、飛来塩分の多い環境下での耐候性がさらに改善する。
(h)さらに、REM(ランタニドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称。)の一種または二種以上を含有させると、鋼材の溶接性が改善されるとともに、鋼中にREMの硫化物が形成されるため、腐食の起点となる非金属介在物MnSの生成量が減少する。
上述したように、飛来塩分の多い環境では、塩化物イオンを取り込むことで結晶構造が安定になるβ−FeOOHが生成し易いが、β−FeOOHは、さびの保護性を著しく低下させる上、電気化学的に活性で酸化剤として作用するため腐食反応を促進する。したがって、飛来塩分の多い環境下における鋼材の耐候性を改善するには、このような環境下においてもβ−FeOOHが生成しないようにして、保護性の高いα−FeOOHを主体とする保護性さび層を早期に生成させることが有効である。
本発明者らは、上述のようなSnを含有する鋼の表面にCrイオンを含有する樹脂を塗布し、早期に保護性さび層を形成したところ、形成した保護性さび層にCrが含有され、さらに鋼材から溶出したSnもさび層に含有することになり、Snを含まない耐候鋼材上に表面処理を施した場合に比べ、想定を上回る効果が発揮されることが判明した。
すなわち、次のように考えられる。塗膜から供給されたCrイオンと鋼材から溶けだしたSnイオンとが飛来塩分の多い環境下においてSnおよびCrを含有するオキシ水酸化鉄あるいは酸化物を形成する。形成されたこれらの物質が塗膜下におけるさびの保護性を高め、さび層中におけるβ−FeOOHの生成を抑制する。その結果、長期にわたり耐候性が維持される。塗膜キズ部においても、キズ部周辺の塗膜から供給されるCrイオンと鋼材から溶出したSnイオンとが、SnおよびCrを含有する保護性の高いさび層を形成する。このさび層が腐食の進行を抑制し、腐食に伴う塗膜の剥離を抑制することで、長期にわたり耐候性が維持される。
以上の知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)化学組成が、質量%で、C:0.001%以上0.20%以下,Si:2.5%以下,Mn:0.5%超2.5%以下,P:0.03%以下,S:0.005%以下,Ni:0.05%以下,Cr:0.01%以上3.0%以下,Al:0.003%以上0.1%以下,N:0.001%以上0.1%以下,Sn:0.01%以上0.50%以下,ならびに残部Feおよび不可避的不純物からなる基材と、当該基材上に、全被膜質量に基づいて、5質量%以上19質量%以下の3価クロムイオン、1質量%以上のアニオン、およびバインダー成分を有する保護性さび層の生成を促進する被膜とを備えることを特徴する表面処理鋼材。
(2)前記基材の化学組成が、さらに質量%で、Cu:0.05%以下を有するとともに、Sn含有量に対するCu含有量の比が1以下である、上記(1)記載の表面処理鋼材。
(3)前記基材の化学組成が、さらに質量%で、Ti:0.3%以下,Nb:0.1%以下,Mo:1.0%以下,W:1.0%以下,V:1.0%以下,Ca:0.1%以下,Mg:0.1%以下の元素のうち1種または2種以上を有する上記(1)または(2)に記載の表面処理鋼材。
(4)前記基材の化学組成が、さらに質量%で、REM:0.02%以下を有する上記(1)から(3)のいずれかに記載の保護性さび層生成促進する表面処理鋼材。
(5)前記被膜の膜厚が5μm以上50μm以下である上記(1)から(4)のいずれかに記載の表面処理鋼材。
(6)膜厚が20μm以上1000μm以下であって3価クロムイオンを含まない塗膜層を、前記被膜層上に備える上記(1)から(5)のいずれかに記載の表面処理鋼材。
本発明の耐食性に優れた鋼材は、飛来塩分量が多い環境下においても十分な耐候性を有する。海浜耐候性に優れた材料として最適であり、海浜地域における橋梁等の鋼構造物や、融雪塩や凍結防止剤が散布される地域における橋梁等の構造物に使用するミニマムメンテナンス材料として、土木および建築分野等において広く適用することができる。
以下に、本発明に係る表面処理鋼材について詳しく説明する。
本発明に係る表面処理鋼材は、下記の化学組成を有する鋼材を基材とし、さらに、下記の成分を含有する被膜をその基材上に備える。
1.基材
本発明に係る表面処理鋼材の基材をなす鋼材に含まれる合金元素の作用効果を、その含有量の限定理由とともに、説明する。なお、合金元素の含有量「%」は、いずれも「質量%」を意味する。
C:0.001%以上0.20%以下
Cは、鋼の強度を確保するために必要な合金元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.20%を上限とする。また、0.001%未満になると所定の強度が確保できないので、下限は0.001%とする。望ましい範囲は、0.005%以上0.15%以下である。
Si:2.5%以下
Siは、製鋼時の脱酸に必要な合金元素である。同じく脱酸剤としての働きをするAlを含有する場合には、特に添加をしなくてもよいが、Al含有量が0.005%未満の場合には、0.4%以上含有させるのが望ましい。一方、2.5%を超えてSiを含有させると、鋼の靱性が損なわれる。したがって、Siの含有量は2.5%以下とする。また、Siには耐候性を向上させる効果もある。この効果を得たい場合には、0.1%以上添加するのが好ましい。
Mn:0.5%超2.5%以下
Mnは、低コストで鋼の強度を高める作用効果を有する元素であり、鋼中のSの含有量が低い場合には、一般に高飛来塩分環境における耐候性を向上させる作用を有する。しかしながら、鋼中のSと結合してMnSを形成し、このMnSが腐食の起点となり、耐食性、ひいては耐候性を劣化させる。また、機構は不明であるが、Niと共存する場合にはMnの含有量が2.5%を超えると耐候性が劣化する。したがって、Mnの含有量は2.5%以下とする。望ましくは1.5%以下とする。なお、構造用鋼としての強度を維持するためには、Mnを0.5%を超えて含有させる必要がある。
P:0.03%以下
Pは、不純物として含有されるが、濃厚な塩化物環境での過度のPの含有は耐候性を劣化させるため、できるだけ少なくする必要がある。したがって、その含有量は0.03%未満とする。
S:0.005%以下
Sは、不純物として含有されるが、Mnと結合すると非金属介在物のMnSを形成して腐食の起点となり易く、耐候性を劣化させる。したがって、Sの含有はできるだけ少なくする必要があるので、その上限は0.005%とする。
Ni:0.05%以下
Niは、一般的に飛来塩分の多い環境下での耐候性を著しく向上させる元素として従来から鋼中に添加され、Ni系高耐候性鋼として開発・実用化されてきている。しかし、理由は定かではないが、Snと複合添加した場合には、耐食性の改善効果がないばかりか、Snによる耐候性改善効果を低下させるという悪影響が現れる。したがって、Niの含有はできるだけ少なくする必要があり、不純物として含有されるとしても、Ni含有量は0.05%未満とする必要がある。
Cr:0.01%以上3.0%以下
Crは、飛来塩分がそれほど多くない環境では保護性さびの形成による耐候性の向上が期待できるが、飛来塩分量が多い環境において鋼のアノード溶解反応を促進し耐候性を劣化させる。ところが、Snを含有する場合には、飛来塩分量が多い環境においても、Cr含有による耐候性の向上効果が発揮される。この効果は含有量0.01%以上で発揮されるが、3.0%を超えると局部腐食感受性が高まるとともに、溶接性が劣化する。したがって、Cr含有量は0.01%以上3.0%以下とする必要がある。なお、Crの含有量の望ましい範囲は0.05%以上1.0%以下である。
Al:0.003%以上0.1%以下
Alは、鋼の耐候性の向上に寄与するとともに、脱酸剤の役割を果たす。耐候性を向上させるために、0.003%以上含有させる。一方、Al含有量が0.1%を超えると鋼が脆化しやすくなる。したがって、Al含有量は0.003%以上0.1%以下とする。
N:0.001%以上0.1%以下
Nは、アンモニアとなって溶解し酸と中和する作用があり、飛来塩分の多い環境におけるFe3+の加水分解によるpH低下を抑制することで、塩分環境における耐候性を向上させる効果を有する。この効果はNを0.001%以上含有させることにより得られ、0.1%を超えると飽和する。したがって、Nの含有量は0.001〜0.1%とする。含有量の望ましい範囲は0.002%以上0.08%以下である。
Sn:0.01%以上0.50%以下
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性の塩化物溶液中でのインヒビター作用によりpHの低下したアノードでの腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減する作用を有することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、飛来塩分の多い環境における耐候性を向上させる。これらの作用は、Snを0.01%以上含有させることにより得られ、0.50%を超えると飽和する。したがって、Snの含有量は0.01%以上0.50%とする。Snの含有量の望ましい範囲は0.03%以上0.20%である。
本発明に係る鋼材は、下記の条件を満たす範囲でCuを含有していもよい。
Cu:0.05%以下
Cuは、一般的に耐候性を向上させる基本元素とされ、ほとんどの高耐候性鋼や耐食鋼に添加されているが、高飛来塩分下の比較的ドライな環境においては、むしろ耐食性を低下させる。また本発明で規定する含有量のSnと共存すると鋼材製造時に割れが生じる原因にもなる。したがって、Cuの含有はできるだけ少ないことが好ましく、不純物として含有されるとしても、Cu含有量は0.05%以下とする必要がある。
Cu/Sn比:1以下
本発明のようにSnを含有する鋼の場合には、Cuと共存すると耐候性の低下がする場合がある。また、鋼材を製造する際、Cuの含有による圧延割れの原因ともなる。このため、Sn含有量に対するCu含有量の比(Cu/Sn比)を1以下とする必要がある。
本発明の橋梁用鋼材は、上記の合金元素の他に、さらにTi、Nb、Mo、W、V、CaおよびMgよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有してもよいし、REMを含有してもよい。本発明に係る鋼材がこれらの元素を含有してもよい理由とそのときの含有量は、次の通りである。
Ti:0.3%以下
Tiは、TiCを形成してCを固定することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐候性を向上させる。また、TiSの形成によりSを固定することによって、腐食の起点となるMnSの形成を抑える。しかしながら、Tiの含有量が0.3%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.3%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Tiを0.01%以上含有させることが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbには、Tiと同様、NbCを形成することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐候性を向上させる効果がある。しかしながら、Nbの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Nbを0.01%以上含有させることが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、溶解してオキシ酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐候性を向上させる効果がある。しかしながら、Moの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Moを0.01%以上含有させることが好ましい。
W:1.0%以下
Wは、Moと同様、溶解して酸素酸イオンWO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Wの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Wを0.01%以上含有させることが好ましい。
V:1.0%以下
Vは、MoやWと同様、溶解して酸素酸イオンVO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐候性を向上させる効果がある。しかしながら、Vの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Vを0.01%以上含有させることが好ましい。
Ca:0.1%以下
Caは、鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える効果がある。しかしながら、Caの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Caを0.0001%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.1%以下
Mgは、Caと同様、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Mgの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Mgを0.0001%以上含有させることが好ましい。
REM:0.02%以下
REM(ランタニドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称)の一種または二種以上を鋼の溶接性を向上させる目的で含有させることができる。しかしながら、REMの総含有量が0.02%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その総含有量の上限は0.02%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、REMを0.0001%以上含有させることが好ましい。
本発明に係る表面処理鋼材の基材をなす鋼材は、上記の必須元素あるいはさらに上記の任意元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。なお、鋼中にオキサイド等の介在物が微細分散されている鋼も本発明に係る基材をなす鋼材に含まれる。
2.保護性さび層の生成を促進する被膜
本発明に係る表面処理鋼材は、上記の基材上に次の成分を含有し、保護性さび層の生成を促進する被膜を備える。ここで、この被膜は、基材の表面に直接形成されていてもよいし、被膜と基材との間に保護性さび層が形成されていてもよい。
(1)被膜組成
A)3価クロムイオン
本発明に係る被膜は3価クロムイオン(以下、「Cr3+」と記す。)を含有する。このCr3+は次のように、基材と被膜との間(被膜が部分的に剥離した部分においては基材上)に形成される保護性さび層の生成を促進する機能を有する。
塩化物環境における鋼材の腐食では、鉄の溶出反応によってまずFe2+が生成し、これが大気中の酸素によりFe3+に酸化された後、主に、保護性に乏しいβ−FeOOHとして沈殿して、鋼材の腐食が促進されると考えられる。同時に、Fe3−δも多量に生成する。このFe3−δは電子伝導性が高く、腐食反応におけるカソード反応(酸素還元反応)のサイトして働くため、腐食を加速する。また、前述した通り、β−FeOOHは、塩化物イオン(Cl)を取り込むことで結晶構造が安定化する。
本発明では、表面処理鋼材の表面をなす被膜にCr3+を含有させることによって、鉄がイオン化した際に生ずるβ−FeOOHが微細化され、さらにその生成も抑制され、かつFe3−δへの転換が抑制される。このため、優先的にα−FeOOHが生成して、α−FeOOHを主体とする保護性さび層の早期形成が可能となり、塩化物環境下での表面処理鋼材の耐候性が著しく高まる。
本発明に係る被膜におけるCr3+の含有量は、全被膜質量に対して、5質量%以上19質量%以下とする。上記のCr3+の作用を安定的に発揮させ、保護さび層の生成促進効果を安定的に得るためには被膜中のCr3+の量が5質量%以上は必要である。一方、Cr3+の含有量が19質量%を超えると、被膜のバインダーとなる成分が相対的に不足して被膜が脆くなるとともに、表面処理鋼材における被膜と基材をなす鋼材または保護性さび層との界面に到達する貫通孔が被膜内に形成されて、流れさびが発生しやすくなる。また、表面処理鋼材の表面に白色系の析出物が生成し、景観性を劣化させる。Cr3+の含有量は全被膜質量に対して、好ましくは、10質量%以上18質量%以下とする。
B)アニオン
飛来塩分の多い環境においてβ−FeOOHの生成抑制のさらなる効果を得るためには、被膜が1質量%以上のアニオンを含有する必要がある。含有するアニオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオンに加え、クエン酸やプロピオン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸のイオンうち1種類または2種類以上を使用することができる。好ましいアニオンは、有機酸、特にクエン酸や酒石酸などのヒドロキシポリカルボン酸のアニオンである。
本発明に係る被膜におけるアニオンの含有量が1質量%未満の場合には、アニオンを含有させたことに基づくβ−FeOOHの生成抑制効果が得られにくくなる。一方、アニオンの含有量が40質量%を超えると、表面処理剤中の可溶分が多くなりすぎて、被膜の崩壊が早まり、十分な保護性さび層が形成される前に、表面処理鋼材の基材が腐食因子に曝されることになってしまう。このため、厳しい腐食環境における耐候性を保証することが困難となる。アニオンの含有量の好ましい範囲は3〜35質量%である。
C)バインダー成分
本発明に係る被膜は、上記のCr3+およびアニオンに加えて、被膜が被膜形状を維持するために、バインダーとなる成分(本発明において、「バインダー成分」という。)を含有する。
バインダー成分の種類は特に制限されず、有機材料から構成されていてもよいし、無機材料から構成されていてもよい。さらに、有機材料と無機材料との複合材料から構成されていてもよい。有機材料からなるバインダー成分として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が使用できる。特に、ブチラール樹脂単独、またはブチラール樹脂とそれに相溶性のある他の樹脂(例えば、メラミン樹脂やフェノール樹脂等)との混合物が、適度の透湿性がある(それにより保護性さび層がより早期に形成される)点で望ましい。無機材料としてコロイダルシリカが例示され、複合材料としてエチルシリケート樹脂のような無機樹脂が例示される。
バインダー成分の被膜中の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましい。10質量%未満では、被膜の均一性が低下し、被膜強度および基材への付着力が小さくなることがある。一方、50質量%を超えると、被膜を通して浸透する水分量が少なくなり、保護性さび層の生成が遅延する。バインダー成分のより好ましい含有量は20〜40質量%である。
D)その他の成分
本発明に係る被膜は、上記成分以外に、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、α−FeOOH、酸化鉄等の着色顔料ならびにタルク、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料をそれぞれ1種または2種以上を含有してもよい。
その他、チキソ剤、分散剤、酸化防止剤等、慣用されている添加剤を含有していてもよい。また、リン酸を含有させることも可能であり、初期の流れさび流出防止には有効である。
これらの任意配合成分の含有量は、上記の必須成分の機能を阻害しない範囲で、その被膜に求められる特性などに応じて適宜設定される。
(2)被膜の厚さ
本発明に係る被膜の厚さは5〜50μmとすることが好ましい。被膜の厚みがこの範囲であると、塩化物環境でも適切な保護性さび層が早期に生成する。より好ましい被膜厚みは20〜50μmの範囲内である。
(3)被膜を形成するための表面処理剤
上記の本発明に係る被膜を形成するための表面処理剤の組成および表面処理剤を用いた皮膜形成方法について説明する。
本発明に係る表面処理剤は、Cr3+の供給源、アニオンの供給源、およびバインダー成分の供給源、ならびに必要に応じて上記の任意配合成分またはその供給源が媒体に溶解および/または分散したものである。
Cr3+の供給源はクロム塩の形態でよい。クロム塩としては、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロムが例示され、供給するクロム塩は1種でもよいし、2種以上でもよい。表面処理剤へのCr3+の添加量は、表面処理剤中の全固形分に基づく添加量として5〜19質量%である。この添加量は、化合物(塩)全体の質量ではなく、その化合物に含まれるCr質量に換算しての添加量、つまりCr換算添加量である。
ここで、表面処理剤の全固形分に基づく添加量(単位:質量%)とは、溶剤等の揮発成分を除外した全成分(不揮発分)の合計質量に基づく質量比率(単位:質量%)を意味し、その表面処理剤から形成された被膜における、全被膜質量に基づく含有量(単位:質量%)と実質的に等しい。したがって、以下の表面処理剤の成分の添加量の好適範囲は被膜における好適含有量と同一であるから、説明を省略する。
アニオンの供給源として、アニオンに対応する酸および塩が例示される。これらのアニオンの供給源がクロム塩である場合には、アニオンとCr3+の両方を表面処理剤に供給することができる。
バインダー成分の供給源は、有機材料または複合材料からなる場合にはポリマーならびにそのモノマーおよびオリゴマーが例示され、無機材料からなる場合にはその材料の微粒子が例示される。バインダー成分の供給源は、媒体に溶解していてもよく、あるいはエマルジョン状態であってもよい。
本発明に係る表面処理液は、本発明に係る被膜に含有される任意配合成分をそのまま、または被膜において所定の任意配合成分になるように適切に設計された物質を供給源として含有してもよい。
本発明に係る表面処理剤の媒体は、水、有機溶剤、およびこれらの混合媒体のいずれでもよい。また、使用時に塗装作業に適した粘度になるよう有機溶剤で希釈して濃度を調整してもよい。
本発明に係る表面処理剤の基材となる鋼材表面への塗布方法は、常法に従って、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法で行うことができる。このため、場所を選ばずに施工することができ、既存の構造物にも適用可能である。工場で塗装する場合には、ロールコート、浸漬等の他の塗装方法も採用できる。
処理される基材は、適当な方法でさびを除去しておくことが好ましい。媒体は塗装後に自然乾燥により蒸散させることが好ましいので、そのような媒体を選択することが好ましい。但し、塗布後の基材を加熱乾燥することも可能である。
(4)上層の塗膜層
こうして形成された被膜の上に、上層として通常の塗装を乾燥膜厚で20〜1000μmになるように行うことも可能であり、特に飛来塩分量が高い場合には好適である。すなわち、従来の重防食塗装の下地処理として本発明の表面処理剤を用いると、塗装寿命の延長が可能である。上層の塗膜層の組成は特に制限されないが、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂塗料をこの塗膜層の形成に使用できる。上層の塗膜層には、公知の体質顔料、着色顔料も添加することができる。さらに公知の防錆顔料も添加することもできる。なお、この上層の塗膜層の下層をなす被膜がCr3+を含有するため、塗膜層はCr3+を含有していなくてもよい。環境保護の観点からクロム成分の使用量の規制が厳しくなっている現状を考慮すれば、被膜に比べて膜厚が大きくなる傾向を有する上層の塗膜層はCr3+を含有しないことが好ましい。
表1に示す化学組成の試験鋼材について150kg真空溶解炉で溶製し、インゴットに鍛造した後、1100℃に加熱後、圧延を行って、厚さ4mm×幅150mm×長さ1000mmの寸法の鋼材を作製した。次いで、この鋼材の表裏面を機械研削し、厚さ3mm×幅60mm×長さ100mmの試験片を切り出しショットブラストにより除錆して、表面処理に供した。なお、本実施例で作製した鋼材の酸素含有量は0.0001〜0.005%の範囲であった。
Figure 2011208200
表2に示す組成の表面処理剤(有機樹脂、Cr3+供給源、アニオン種の化合物、顔料[硫酸バリウム/タルク(質量比で4/1)混合物と酸化鉄(ベンガラ)]、その他添加剤(チキソ剤、沈降防止剤)に適量の溶剤(芳香族炭化水素溶剤およびアルコール系溶剤)を加えて、粘度(B型粘度計測定)が200〜1000cpsの表面処理剤を作製した。表中の各成分の含有量は、いずれも溶剤を除外した表面処理剤の全固形分に基づく質量%である。上記試験鋼材の全面にこの表面処理剤をエアスプレーにより塗装し、溶媒を蒸散させて被膜を乾燥させ、表2に示した膜厚の乾燥被膜を形成した。
Figure 2011208200
なお、表1および2における含有量や添加量に下線が付されているものは、本発明の範囲外にあることを意味している。
得られた表面処理試験片をSAE(Society of Automotive Engineers)J2334試験により評価した。SAEJ2334試験は、次に示す乾湿繰り返しの条件で行う加速試験であり、腐食形態が大気暴露試験に類似しているとされている(長野博夫、山下正人、内田仁著:環境材料学、共立出版(2004)、p.74参照)。本試験は、飛来塩分量が1mddを超えるような厳しい腐食環境を模擬する試験である。
湿潤:50℃、100%RH、6時間、
塩分付着:0.5質量%NaCl、0.1質量%CaCl、0.075質量%NaHCO水溶液浸漬、0.25時間、
乾燥:60℃、50%RH、17.75時間
を1サイクル(合計24時間)とした。
SAEJ2334試験を所定サイクル終了後(最大240サイクル)、各試験片の表面の残存処理剤、さび層を除去し、板厚減少量を測定した。試験結果を表1に示す。同表における「腐食減量」は、試験片の平均の板厚減少量であり、試験前後の重量減少と試験片の表面積を用いて算出したものである。
表面処理を施した鋼材の表面に塩化ビニルカッターにてクロスカットを入れて、SAEJ2334試験を240サイクル終了後、各試験片の塗膜剥離部を除去し、剥離面積を測定した。試験結果を表1に示す。同表における「剥離面積」は、クロスカット部における塗膜剥離部の面積であり、試験前の表面積を用いて算出したものである。クロスカット部以外から剥離が発生した場合は、同表の剥離面積に含まず、外観観察の評価に加えた。
本発明の表面処理鋼材は、表2の結果から明らかなように、試験番号No.1〜No.23の鋼材では、いずれも本発明で規定する化学組成の鋼材、処理剤配合量を満足しているので、保護性さび生成により、高い塩化物環境においても優れた長期耐食性を示している。
比較例の試験番号No.24の鋼材は、塗装後の被膜が脆く流れ錆の発生とともに、160サイクル前に表面に白色の析出物が発生したため試験を中止した。No.25の鋼材の母材成分は本発明の範囲内にあり著しい腐食はないものの、保護性さび生成促進成分が不足するため、腐食減量の増大し、さらに160サイクル後に塗膜端部からの剥離が発生したため試験を中止した。比較例No.26、27の鋼材の母材成分は本発明の規定に外れるため、初期は表面処理剤によって耐食性を維持するが、一度腐食が始まると大きく腐食が進行し、クロスカット部の塗膜剥離が進行した。特にNo.26の鋼材には圧延時に微細な割れが観察された。No.28、29の鋼材は優れた耐食性を示すものの、圧延時に微細な割れが観察された。

Claims (6)

  1. 化学組成が、質量%で、C:0.001%以上0.20%以下,Si:2.5%以下,Mn:0.5%超2.5%以下,P:0.03%以下,S:0.005%以下,Ni:0.05%以下,Cr:0.01%以上3.0%以下,Al:0.003%以上0.1%以下,N:0.001%以上0.1%以下,Sn:0.01%以上0.50%以下,ならびに残部Feおよび不可避的不純物からなる基材と、
    当該基材上に、全被膜質量に基づいて、5質量%以上19質量%以下の3価クロムイオン、1質量%以上のアニオン、およびバインダー成分を有する保護性さび層の生成を促進する被膜と
    を備えることを特徴する表面処理鋼材。
  2. 前記基材の化学組成が、さらに質量%で、Cu:0.05%以下を有するとともに、Sn含有量に対するCu含有量の比が1以下である、請求項1記載の表面処理鋼材。
  3. 前記基材の化学組成が、さらに質量%で、Ti:0.3%以下,Nb:0.1%以下,Mo:1.0%以下,W:1.0%以下,V:1.0%以下,Ca:0.1%以下,Mg:0.1%以下の元素のうち1種または2種以上を有する請求項1または2に記載の表面処理鋼材。
  4. 前記基材の化学組成が、さらに質量%で、REM:0.02%以下を有する請求項1から3のいずれかに記載の保護性さび層生成促進する表面処理鋼材。
  5. 前記被膜の膜厚が5μm以上50μm以下である請求項1から4のいずれかに記載の表面処理鋼材。
  6. 膜厚が20μm以上1000μm以下であって3価クロムイオンを含まない塗膜層を、前記被膜層上に備える請求項1から5のいずれかに記載の表面処理鋼材。
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